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明細書 :アモルファスカーボンの製造方法及びアモルファスカーボン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-048368 (P2018-048368A)
公開日 平成30年3月29日(2018.3.29)
発明の名称または考案の名称 アモルファスカーボンの製造方法及びアモルファスカーボン
国際特許分類 C23C  16/26        (2006.01)
C01B  32/15        (2017.01)
C01B  32/18        (2017.01)
C01B  32/182       (2017.01)
B01J  21/18        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   8/10        (2016.01)
FI C23C 16/26
C01B 31/02 101Z
B01J 21/18 M
B01J 37/34
H01M 4/90 X
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2016-183910 (P2016-183910)
出願日 平成28年9月21日(2016.9.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成28年6月9日に公開のPRiME2016オンラインプログラム URL:https://ecs.confex.com/ecs/230/webprogram/Session15558.html 1 (2)平成28年6月9日に公開のPRiME2016講演要旨 URL:https://ecs.confex.com/ecs/230/webprogram/Paper89450.html 1 (3)平成28年6月9日に公開のPRiME2016ミーティングプログラム URL:https://issuu.com/ecs1902/docs/2016-ecs-prime?e=15319453/37847425 1
発明者または考案者 【氏名】本多 謙介
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100145920、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 聡
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
4G169
4K030
5H018
5H026
5H126
Fターム 4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AC02B
4G146AC15B
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD02
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4G146AD35
4G146BA11
4G146BC08
4G146BC09
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4G146BC23
4G146BC27
4G146BC32B
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA12
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21C
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BE14C
4G169BE16C
4G169BE18C
4G169BE19C
4G169BE38C
4G169CC32
4G169DA05
4G169EA08
4G169EB15Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB03
4G169FB58
4G169FC02
4K030AA09
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA27
4K030BB05
4K030FA03
5H018AA06
5H018AS03
5H018EE05
5H026AA06
5H126BB06
要約 【課題】本発明の課題は、酸素還元反応の活性が高く、耐久性の高い触媒材料を提供することにある。
【解決手段】特定の構造を有するニトリル、アミド及びアミンである第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを前記反応容器内で反応させて、窒素を含有するアモルファスカーボンを反応容器内に設置した基板上に堆積させることを特徴とする窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを前記反応容器内で反応させて、窒素を含有するアモルファスカーボンを反応容器内に設置した基板上に堆積させることを特徴とする窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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(式(I)~(III)中、R、R、R、R、R、R及びRは、H又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、それぞれの式中で同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
原料ガスをプラズマ化させることを特徴とする請求項1記載のアモルファスカーボンの製造方法。
【請求項3】
第2の化合物が、六員環からなる単環式芳香族化合物又は2個若しくは3個の六員環の縮合環からなる二環式若しくは三環式芳香族化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のアモルファスカーボンの製造方法。
【請求項4】
第2の化合物が、ピリジン、ピラジン及びトリアジンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のアモルファスカーボンの製造方法。
【請求項5】
式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを反応容器内でプラズマ化して反応させ、反応容器内に設置した基板上に堆積させて得られる窒素を含有するアモルファスカーボン。
【化4】
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【化5】
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【化6】
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(式(I)~(III)中、R、R、R、R、R、R及びRは、H又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、それぞれの式中で同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
キノリジニウム構造を有し、対流ボルタンメトリー測定から算出される酸素還元反応に対する反応電子数が1.5以上であることを特徴とする窒素を含有するアモルファスカーボン。
【請求項7】
請求項5又は6記載の窒素を含有するアモルファスカーボンを含む触媒。
【請求項8】
キノリジニウム構造を有するアモルファスカーボン酸素還元触媒。
【請求項9】
請求項7又は8記載の触媒を備える電極。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法、該製造方法により得られるアモルファスカーボン、及び該アモルファスカーボンを含む触媒等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高活性かつ低コストな光・電気化学触媒材料の開発は、エネルギー問題や環境問題の進展に伴い急務となっている。例えば、酸素と水素を使用し生成物が水だけであるため、クリーンな発電装置として期待されている固体高分子燃料電池(PFFC)では、一般的に白金が触媒として使われている。しかし、白金表面での酸素還元反応速度(O+4H+4e→2HO)は比較的低いため、多量の白金触媒が必要となる。燃料電池自動車を例にとると1台あたり100gの白金が必要とされ、これは、コストが高く経済的な面及び資源的な面からみて現実的な値ではなく、固体高分子燃料電池の実用化に向けての大きな障害となっている。また、白金は有機物などによって被毒されてしまい、電極として利用した場合に反応性の低下が起こり長期作動信頼性にも問題がある。そこで、白金を使用しない触媒の開発が望まれている。
【0003】
そのため、炭素粒子に白金を担持した触媒が提案されているが、これは白金を使用することにかわりはなく大きなコスト低下は期待できない。また、炭素材料そのものを触媒として使用することも検討され、グラフェンのエッジにキノリジニウム構造を導入した材料が報告されている(非特許文献1)。しかし、グラフェンやグラフェンが積層したグラファイトでは、エッジの数が少なく、酸素還元反応の反応点となるキノリジニウム構造を多く導入することができない。また、グラファイトは層間が酸化され剥離するため、長時間の使用に対する耐久性が低い等の問題がある。一方、ダイヤモンドライクカーボンに窒素を添加して導電性を付与することが提案されているが(非特許文献2、特許文献1)、得られるダイヤモンドライクカーボンの酸素還元反応性は低く、触媒として使用することは難しかった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-189997号公報
【0005】
<nplcit num="1"> <text>Haibo Wang et.al.ACS Ctal.,2,781-794,(2012)</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Yoriko Tanaka et.al.,Electrochimica Acta,56(3),1172-1181(2011)</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記問題を解決し、酸素還元反応の活性が高く、耐久性の高い触媒材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来から炭素材料の研究を行ってきた。そして、アモルファスカーボンに窒素を添加すると導電性を付与できることを見いだした(特許文献1)。そこで、白金を使用しない酸素還元触媒の開発を行うにあたり、アモルファスカーボンに触媒活性を付与できないかと考え様々な検討を行った。その結果、sp混成軌道結合からなる相(グラファイト構造相)とsp混成軌道結合からなる相(ダイヤモンド構造相)とからなるアモルファスカーボンの合成時に、sp混成軌道結合からなるクラスター相(以下、spCクラスターともいう。)にキノリジニウム構造を導入できることを見いだした。そして、合成過程の条件を調整することにより、spクラスターの大きさとキノリジニウム構造の導入割合を調整することができ、酸素還元反応の活性が高いアモルファスカーボンが得られることを見いだした。また、こうして得られたアモルファスカーボンは、酸素還元反応の活性が高く、耐久性に優れた触媒として使用できることを見いだした。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを前記反応容器内で反応させて、窒素を含有するアモルファスカーボンを反応容器内に設置した基板上に堆積させることを特徴とする窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法。
【化1】
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【化2】
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【化3】
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(式(I)~(III)中、R、R、R、R、R、R及びRは、H又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、それぞれの式中で同一でも異なっていてもよい。)
(2)原料ガスをプラズマ化させることを特徴とする上記(1)記載のアモルファスカーボンの製造方法。
(3)第2の化合物が、六員環からなる単環式芳香族化合物又は2個若しくは3個の六員環の縮合環からなる二環式若しくは三環式芳香族化合物であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のアモルファスカーボンの製造方法。
(4)第2の化合物が、ピリジン、ピラジン及びトリアジンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のアモルファスカーボンの製造方法。
(5)式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを反応容器内でプラズマ化して反応させ、反応容器内に設置した基板上に堆積させて得られる窒素を含有するアモルファスカーボン。
【化4】
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【化5】
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【化6】
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(式(I)~(III)中、R、R、R、R、R、R及びRは、H又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、それぞれの式中で同一でも異なっていてもよい。)
(6)キノリジニウム構造を有し、対流ボルタンメトリー測定から算出される酸素還元反応に対する反応電子数が1.5以上であることを特徴とする窒素を含有するアモルファスカーボン。
(7)上記(5)又は(6)記載の窒素を含有するアモルファスカーボンを含む触媒。
(8)キノリジニウム構造を有するアモルファスカーボン酸素還元触媒。
(9)上記(7)又は(8)記載の触媒を備える電極。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアモルファスカーボンの製造方法は、アモルファスカーボンにキノリジニウム構造を効果的に導入することができ、酸素還元反応の活性が高いアモルファスカーボンを製造することができる。また、本発明のアモルファスカーボンは、酸素還元反応の活性が高く、耐久性が高い。そのため酸素還元反応の活性が高く、耐久性に優れた触媒として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアモルファスカーボンに導入されたキノリジニウム構造部位への酸素吸着を示す模式図である。
【図2】実施例8で得られたアモルファスカーボンのXPS測定結果を示す図である。
【図3】実施例8で得られたアモルファスカーボンのXPS測定結果を示す図である。
【図4】実施例8で得られたアモルファスカーボンのラマンスペクトルを示す図である。
【図5】実施例7で得られたアモルファスカーボンについて、対流ボルタンメトリー測定を1セットを50回サイクルとして3セット行った結果を示す図である。
【図6】実施例8及び比較例1でそれぞれ得られたアモルファスカーボン、並びにグラッシーカーボン及びプラチナを用いた対流ボルタンメトリー測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法は、式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを反応容器内で反応させて、窒素を含有するアモルファスカーボンを反応容器内に設置した基板上に堆積させることを特徴とする。

【0012】
【化7】
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【0013】
【化8】
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【0014】
【化9】
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【0015】
式(I)~(III)中、R、R、R、R、R、R及びRは、H又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、それぞれの式中で同一でも異なっていてもよい。前記アルキル基は、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数が1~6のアルキル基を挙げることができる。炭素数が1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、n-へキシル基、イソへキシル基等を挙げることができる。前記置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エステル基、水酸基等を挙げることができる。本発明では、第1の化合物は、アモルファスカーボンを合成しやすくするだけでなく、アモルファスカーボン中に3つのsp混成炭素と結合する窒素を導入し、前記窒素上に余る電子によるホッピング伝導を利用してアモルファスカーボンに導電性を付与する働きをする。触媒として固体高分子燃料電池等の電極に使用する場合、導電性が高い方が電極としての性能が向上すると考えられる。そのため、第1の化合物としては、窒素原子を含みsp混成炭素からなる化合物が好ましく、ニトリル、アミド及びアミンにおいて、有機基をアルキル基とした式(I)~(III)で表される化合物を使用している。また、炭素数が小さい方が窒素を導入しやすい傾向があるため、式(I)で表される化合物におけるR、式(II)で表される化合物におけるR~Rの少なくとも一つ、及び式(III)で表される化合物におけるR~Rの少なくとも一つは、メチル基、エチル基、又はプロピル基であることが好ましい。

【0016】
第1の化合物である式(I)~(III)で表される化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、式(I)で表される化合物としては、シアン化水素、アセトニトリル、エタンシアニド、プロパンシアニド等を挙げることができ、式(II)で表される化合物としては、ホルムアミド、アセトアミド等を挙げることができ、式(III)で表される化合物としては、メチルアミン、エチルアミン等を挙げることができる。なかでも、アセトニトリル、メチルアミンが好ましい。

【0017】
第2の化合物としては、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物であれば、特に限定されるものではなく、窒素原子を1個含んでいてもよく、2個以上含んでいてもよい。また、単環式化合物及び多環式化合物のいずれでもよく、多環式化合物は縮合環式化合物であってもよい。また、置換基を有していてもよい。本発明では、第2の化合物は、アモルファスカーボン中のspCクラスターにキノリジニウム構造を形成する働きをする。spCクラスターを形成し、キノリジニウム構造を形成しやすくする観点から、不飽和結合を有する複素環式芳香族化合物が好ましく、六員環を有する化合物が好ましい。六員環中で炭素と窒素がsp結合で結合しつつ、分子サイズが小さいものの方が窒素原子をspCクラスター中に導入しやすいとの観点から、六員環からなる化合物又は2個若しくは3個の六員環の縮合環からなる化合物が好ましい。一個の六員環からなる、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む単環式の複素環式芳香族化合物としては、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、テトラジン等を挙げることができる。また、二個の六員環の縮合環からなる、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む二環式の複素環式芳香族化合物としては、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン等を挙げることができ、三個の六員環の縮合環からなる、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む三環式の複素環式芳香族化合物としては、フェナントロリン、アクリジン等を挙げることができる。なかでも、ピリジン、ピラジン及びトリアジンが好ましい。

【0018】
本発明の製造方法では、式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物と、環内に窒素原子を1個又は2個以上含む複素環式化合物である第2の化合物とを含む原料ガスを反応容器内に導入し、前記原料ガスを反応容器内で反応させて、窒素を含有するアモルファスカーボンを反応容器内に設置した基板上に堆積させる。この方法は、CVD法といわれる方法であり、反応容器内への原料ガスの導入量、反応容器内の温度、圧力、基板の温度等は適宜選択できるが、プラズマを利用したプラズマCVD法が好ましい。本発明において原料ガスを反応容器内に導入するとは、第1の化合物と第2の化合物の両方を含む原料ガスを調製して反応容器内に導入すること、及び第1の化合物を含む原料ガスと、第2の化合物を含む原料ガスを別々に反応容器内に導入することにより、両者を含む原料ガスを反応容器内に導入することの両方を意味する。また、式(I)、(II)又は(III)で表される第1の化合物は、これらを単独で原料として用いてもよく、2種以上を原料として用いてもよい。第2の化合物も、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。第1の化合物と第2の化合物との混合比率は、特に限定されるものではないが、[第1の化合物]:[第2の化合物]が8:2~2:8が好ましく、6:4~3:7がより好ましい。また、プラズマCVD法の場合、添加ガスとして、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや水素などを原料ガスと共に反応容器内へ導入することが好ましい。電極に印加する電力(プラズマ出力)を低くするとアモルファス構造を維持できるが、キノリジニウム構造の導入割合を高くし難く、プラズマ出力を高くするとspCクラスターを細分化できるが、高くしすぎるとsp混成結合炭素化が進行し剥離しやすくなる。また、反応容器内の温度を高くするほど、sp混成結合炭素比率が上昇しspCクラスターが拡大してグラファイト化が進む。プラズマ出力及び反応容器内の温度は、これらを考慮して適宜選択することができる。アモルファス構造を維持したままspCクラスターを細分化し、キノリジニウム構造の導入比率を高める観点から、プラズマ出力は、150~500Wが好ましく、成膜中の基板温度は、200~300℃が好ましい。

【0019】
本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、本発明の製造方法により製造することができる。本発明の製造方法により得られる窒素を含有するアモルファスカーボンは、キノリジニウム構造を有し、優れた酸素還元反応活性を示す。これは、本発明の製造方法によると、窒素を含有させたアモルファスカーボンを合成する際に、サイズの小さなspCクラスターを多数形成することができ、spCクラスターのエッジ部に形成されるキノリジニウム構造の割合を多くできるためと考えられる。このため、本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、酸素4電子還元の活性サイト数が増加するので、優れた酸素還元反応活性を示す。図1に、本発明のアモルファスカーボンにおけるキノリジニウム構造と酸素の吸着に関する模式図を示す。本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、対流ボルタンメトリー測定の結果から算出される酸素還元反応に対する反応電子数が1.5以上が好ましく、1.8以上が更に好ましく、2.0以上がより好ましい。本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンにおけるspCクラスターサイズは、キノリジニウム構造の割合を多くする観点及びアモルファス構造を維持する観点から、2~5nmが好ましく、3~4nmがより好ましい。また、本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンにおける三つのsp混成結合炭素と結合した窒素(C-N(=C)-C;第4級窒素)の割合は、キノリジニウム構造の割合を多くする観点から0.4~4.0原子%が好ましく、0.6~3.0原子%がより好ましい。本発明のアモルファスカーボンにおけるsp混成結合炭素(spC)とsp混成結合炭素(spC)の比率(spC:spC)は60:40~80:20が好ましく、70:30~80:20がより好ましい。前記反応電子数、spCクラスターサイズ、三つのsp混成結合炭素と結合した窒素の割合、及びspCとspCの比率は、実施例に記載した方法で測定及び算出することができる。また、本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、グラファイトのように剥離することなく耐久性に優れる。そのため、本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、酸素還元反応の活性が高く、長期間安定して使用できる触媒として用いることができる。本発明の触媒は、本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンを含み、該アモルファスカーボンのみからなってもよく、触媒活性に影響のない範囲で他の成分を含んでもよい。本発明の触媒は、固体高分子燃料電池等の電極に使用することができ、本発明の触媒を備えた電極は、酸素還元反応の活性が高く、長期間安定して使用できる。
【実施例】
【0020】
実施例で得られたアモルファスカーボンは、以下の測定方法で評価した。
(XPS測定)
実施例で得られたアモルファスカーボンの元素組成をXPS測定装置(Thermo Scientific, Model. K-AlphaTM+ X-ray Photoelectron Spectrometer System)を使用してXPS法により調べた。X線源は単色化されたAlKα線(1468.6eV)とし、測定角は90°とした。結合エネルギー分解能は、0.5eVであった。0~1100eVの範囲を、10eV/min(0.1eV/step)の掃引速度で測定した。測定した結果、285eV、398eV及び531eVの位置に、それぞれC 1s、N 1s及びO 1sのピークが確認された。各ピーク強度から元素組成比を算出した。また、測定範囲を391~408eVの範囲とし、掃引速度を1eV/minとして測定し、測定されたデータのピーク分離を行い、sp混成結合炭素と結合した窒素(N-C;ピロール型窒素)、sp混成結合炭素と結合した窒素(N-C)、二つのsp混成結合炭素と結合した窒素(C-N-C;ピリジン型窒素)及び三つのsp混成結合炭素と結合した窒素(C-N(=C)-C;第4級窒素)の各ピークに分離し、アモルファスカーボンに含まれる窒素における第4級窒素の割合を算出した。各ピークのピーク位置は、それぞれ398.3eV、398.9eV、399.9eV、401.8eVであり、実施例で得られたアモルファスカーボンの全てで401.8eVにキノリジニウム構造由来の成分が観測された。アモルファスカーボン中の窒素元素比(原子%)に第4級窒素の割合を乗じてアモルファスカーボン中の第4級窒素元素比(原子%)を算出した。
【実施例】
【0021】
(ラマンスペクトル測定)
励起源としてArレーザー(波長514.5nm)を用いるラマン顕微鏡システム(Jasco Cop. RPM-500)を使用して、実施例で得られたアモルファスカーボンのラマンスペクトルを得た。観察されたラマンスペクトルは、アモルファスカーボンで典型的に観察されるGピーク及びDピークから構成されていた。これは、得られたアモルファスカーボンにおけるsp混成結合炭素は、クラスターを形成していることを示す。sp/sp混成結合炭素の元素比率は、次式(a)により求め、sp混成結合炭素のクラスター(以下、spCクラスターともいう。)の直径は、次式(b)により求めた。
式(a):spcontent = 0.24-48.9(ω-0.1580)
ここで、ωは、ラマン散乱測定において観測されたGピークのピーク位置を周波数に換算したものである。アモルファスカーボンでは、アモルファスカーボンを構成するsp/sp炭素比とラマン散乱測定におけるGピーク位置に相関性があり、式(a)は様々なsp/sp炭素比をもつアモルファスカーボンのラマン散乱測定におけるGピーク位置のプロットから求められた経験的な等式として、当該技術分野で通常用いられている。ラマン測定で得られたスペクトルを、GピークとDピークにピーク分離し分離したGピークのピーク位置を式(a)に代入してsp成分量を算出した。
式(b):La = C(I/I-1
ここで、スケーリング係数Cは、44Åである。アモルファスカーボン中のsp炭素凝集部分(spCクラスター)の結晶化度が高いほど、Gピーク強度Iは高くなり、これに反してspカーボン部位の欠陥に比例するDピークのピーク強度Iは低くなる。したがって結晶化度はI/Iに反比例する。式(b)は、様々なspCクラスターサイズをもつアモルファスカーボンのラマン散乱測定より算出したI/Iのプロットから求められた経験的な等式として、当該技術分野で通常用いられている。ラマン測定で得られたスペクトルを、GピークとDピークにピーク分離し、GピークとDピークのピーク強度を式(b)に代入してspCクラスターサイズを算出した。
【実施例】
【0022】
(対流ボルタンメトリー測定)
不導体被覆金属棒の先端に、中心に直径1cmの円形の穴のあいたポリプロピレンキャップにより実施例で得られたアモルファスカーボンを装着し、金属棒の導体部分とアモルファスカーボンの導通をとって回転電極を作製した。アモルファスカーボンは直径1cmの円形の穴部分で溶液と接し、アモルファスカーボン層の厚みは1μmであった。作製した電極を回転ディスク電極測定ユニット(Hokuto, Dynamic electrode system; HR-201 and 202, Potentio/Galvanostat; HSV-100)に装着して、酸素で過飽和された0.1MKOH溶液中に室温で浸漬し、対極に白金線を用いて、回転速度500rpmで回転させながら、掃引レート5mVs-1で電極電位0.5V vs.Ag|AgClから3.0V vs.Ag|AgClまで掃引しボルタモグラムを得た。同じ実験を10回繰り返し、-1.7 vs.Ag|AgClにおける電流値の10回の平均値を試料のiとして式(c)に代入し、酸素の還元に対する電子数nを算出した。
式(c): i = 0.62nFAD2/3ω1/2-1.5
ここで、iは観測される電流値、Aは電極面積、Dは電解液中の酸素分子の拡散係数、vは電解液の粘度、Cは電解液中の酸素飽和濃度、ωは回転電極の回転周波数、Fはファラデー定数(9.6485×10C/mol)であり、式(c)はこれらの関係を表す式として当該技術分野で通常用いられる式である。電極面積Aは0.785cm、電解液中の酸素分子の拡散係数Dは1.9×10-5cm-1、電解液の粘度vは0.01cm/s、電解液中の酸素飽和濃度Cは1.2×10-6mol/cmであった。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
窒素を含有するアモルファスカーボンを、カソードカップリング型高周波プラズマ励起化学蒸着(RF-PeCVD)装置(13.56MHz,SAMCO Co.,Ltd.Model BP-1)により調製した。アセトニトリルとピリジンをモル比で8:2に混合した混合物を原料として用い、アルゴンガスを添加ガスとして用いて、温度50℃、原料ガスの流量1sccm、アルゴンガスの流量20sccmで反応容器内に導入した。高周波出力を175Wとして、原料ガスをプラズマ化し反応させて、基板上にアモルファスカーボンを堆積させた。反応容器内の圧力は20Paであり、反応中の基板温度は250℃であった。堆積時間は40分とした。堆積された薄膜の厚みは2.70μmであった。
【実施例】
【0024】
[実施例2~4]
原料として用いるアセトニトリルとピリジンの混合比を、それぞれモル比で6:4、4:6及び2:8とした以外は実施例1と同じ条件でアモルファスカーボンを堆積させて、実施例2~4の窒素ドープアモルファスカーボンを調製した。実施例1~4で得られたアモルファスカーボンのsp混成結合炭素(spC)及びsp混成結合炭素(spC)の元素比率(%)、spCクラスターサイズ(nm)、第4級窒素(spCNCC)の元素比率(%)及び反応電子数を表1に示す。
【実施例】
【0025】
【表1】
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【実施例】
【0026】
[実施例5~8]
アセトニトリルとピリジンの混合比をモル比で4:6とし、高周波出力をそれぞれ150W、200W、250W及び300Wとした以外は実施例1と同じ条件でアモルファスカーボンを堆積させて、実施例5~8の窒素ドープアモルファスカーボンを調製した。実施例5~8で得られたアモルファスカーボンのspC(%)、spC(%)、spCクラスターサイズ(nm)、spCNCC(%)及び反応電子数を表2に示す。表3に、実施例5~8で得られたアモルファスカーボンにおけるC、N、Oの元素組成比(原子%)及び前記N中の第4級N(spCNCC)の元素組成比(アモルファスカーボンにおける原子%)を示し、表4に、対流ボルタンメトリー試験の結果を示す。また、0~1100eVの範囲を、10eV/min(0.1eV/step)の掃引速度でXPS測定した結果、391~408eVの範囲を、1eV/minの掃引速度でXPS測定した結果とピーク分離した結果、及びラマンスペクトルを実施例8で得られたアモルファスカーボンについて、図2~図4にそれぞれ示す。
【実施例】
【0027】
【表2】
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【実施例】
【0028】
【表3】
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【実施例】
【0029】
【表4】
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【実施例】
【0030】
[実施例9、10]
アセトニトリルとピラジンを原料として用い、アセトニトリルとピラジンの混合比をモル比で8:2とし、高周波出力を175Wとした以外は実施例1と同じ条件でアモルファスカーボンを堆積させて、実施例9の窒素ドープアモルファスカーボンを調製した。また、アセトニトリルとトリアジンを原料として用い、アセトニトリルとトリアジンの混合比をモル比で8:2とし、高周波出力を150Wとした以外は実施例1と同じ条件でアモルファスカーボンを堆積させて、実施例10の窒素ドープアモルファスカーボンを調製した。実施例9及び10で得られたアモルファスカーボンのspC(%)、spC(%)、spCクラスターサイズ(nm)、spCNCC(%)及び反応電子数を表5に示す。
【実施例】
【0031】
【表5】
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【実施例】
【0032】
実施例1~10で得られたアモルファスカーボンは、いずれも反応電子数が1.5以上であり少なくとも2電子還元反応活性を示し、さらに実施例3、7、8及び9で得られたアモルファスカーボンは、反応電子数が2.0以上であり4電子還元反応活性を示した。また、実施例7で得られたアモルファスカーボンについて、対流ボルタンメトリー測定を1セットを50回サイクルとして、3セット行った。その結果を図5に示す。対流ボルタンメトリー測定を150サイクル行っても酸素還元反応の活性が失われず、電気化学反応に対する安定性を有していた。
【実施例】
【0033】
[比較例1]
原料をアセトニトリルとした以外は、実施例1と同じ条件でアモルファスカーボンを堆積させて、比較例1の窒素ドープアモルファスカーボンを調製した。比較例1で得られたアモルファスカーボンについても、実施例と同様にXPS測定、ラマンスペクトル測定及び対流ボルタンメトリー測定を行い、spC(%)、spC(%)、spCクラスターサイズ(nm)、spCNCC(%)及び反応電子数を求めた。その結果を表6に示す。比較例1で得られたアモルファスカーボンでは、spCNCC結合はみられるものの、極めて少ない反応電子数しか観察されなかった。これは、窒素がspCクラスターのエッジ部ではなく、内部の炭素と置換しているため酸素還元反応の反応点となるキノリジニウム構造が形成できなかったためとみられる。
【実施例】
【0034】
【表6】
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【実施例】
【0035】
図6に、実施例8で得られたアモルファスカーボン、比較例1で得られたアモルファスカーボン、グラッシーカーボン及びプラチナを用いて対流ボルタンメトリー測定を行った結果を示す。実施例8で得られた本発明のアモルファスカーボンは、プラチナとほぼ同様の酸素還元反応活性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンの製造方法は、窒素を含有し、酸素還元反応の活性が高く、耐久性の高いアモルファスカーボンを製造することができる。そのため、酸素還元触媒等の触媒として好適に用いることのできるアモルファスカーボンを製造できる。本発明の窒素を含有するアモルファスカーボンは、酸素還元反応の活性が高く、耐久性が高く長期安定性に優れるため、触媒、特に酸素還元反応活性が求められる用途の触媒として好適に用いることができる。特に、固体高分子燃料電池等の燃料電池の電極用の触媒として好適に用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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