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明細書 :画像強調処理の方法及び画像強調処理システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-055319 (P2018-055319A)
公開日 平成30年4月5日(2018.4.5)
発明の名称または考案の名称 画像強調処理の方法及び画像強調処理システム
国際特許分類 G06T   5/00        (2006.01)
A61B   1/04        (2006.01)
H04N   1/409       (2006.01)
H04N   7/18        (2006.01)
FI G06T 5/00 710
A61B 1/04 370
H04N 1/40 101D
H04N 7/18 M
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2016-189190 (P2016-189190)
出願日 平成28年9月28日(2016.9.28)
発明者または考案者 【氏名】三池 秀敏
【氏名】長 篤志
【氏名】鈴木 将
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100093687、【弁理士】、【氏名又は名称】富崎 元成
【識別番号】100106770、【弁理士】、【氏名又は名称】円城寺 貞夫
【識別番号】100139789、【弁理士】、【氏名又は名称】町田 光信
審査請求 未請求
テーマコード 4C161
5B057
5C054
5C077
Fターム 4C161CC06
4C161SS21
4C161SS22
4C161WW07
4C161WW08
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE03
5B057CE06
5B057CH09
5B057CH11
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC32
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA05
5C054EE04
5C054EE06
5C054FC07
5C054FC12
5C054HA12
5C077MP01
5C077PP03
要約 【課題】人の視覚作用としての移動する物を鮮鋭化するモーションシャープニング現象を再現し、動画像のうちに移動しない対象についてマッハバンド現象を生成可能にする形で動画像の画像強調処理を提供する。
【解決手段】画像を構成する複数の画素に対応する非線形反応素子が二次元的に配置され、各々の非線形反応素子を特徴づける活性因子濃度及び抑制因子濃度が相互に関連して時間発展するように関連づけられた反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイ3を用いる。非線形反応素子アレイに対して画像強調処理に適切なパラメータを設定し、各々の非線形反応素子に対応する入力画像の画素の画素値を反応拡散モデルを表す式における外部入力として入力し、反応拡散モデルを表す式による時間発展により変化した活性因子濃度の値から各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値を表す出力値を求め、この出力値を各々の画素の画素値とする出力画像を生成する。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
動画像を構成する複数のフレームのうちの特定のフレームまたは連続する複数のフレームの画像に対して画像強調処理を行う方法であって、
画像を構成する複数の画素に対応して非線形反応素子が二次元的に配置された非線形反応素子アレイであって、該非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子を特徴づける活性因子濃度及び抑制因子濃度が相互に関連して時間発展するように関連づけられた反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイを用意することと、
前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対して画像強調処理に適切なパラメータを設定することと、
前記活性因子濃度及び抑制因子濃度を関連づける反応拡散モデルを表す式における外部入力として、前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対応する入力画像の画素の画素値に対応する値を入力することと、
前記各々の非線形反応素子に対して外部入力が入力された上で前記反応拡散モデルを表す式による時間発展により変化した活性因子濃度の値から各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値を表す出力値を求めることと、
前記求められた出力値を各々の画素の画素値とする出力画像を生成することと、
からなることを特徴とする画像強調処理を行う方法。
【請求項2】
請求項2に記載の画像強調処理を行う方法であって、
前記反応拡散モデルを表す式がそれぞれ各非線形反応素子(i,j)に関する活性因子濃度uij及び抑制因子濃度vijの時間発展を表す2つの式
【数1】
JP2018055319A_000013t.gif
で表され、ここでC,a,bは定数パラメータ、D,Dは拡散係数であり、
Iは各非線形反応素子に関する入力I(i,j,t)として
【数2】
JP2018055319A_000014t.gif
で表され、
該外部入力I(i,j,t)に応じた出力fout(i,j,t)が
【数3】
JP2018055319A_000015t.gif
で表されるものであることを特徴とする画像強調処理を行う方法。
【請求項3】
動画像を構成する複数のフレームの画像をうちの特定のフレームまたは連続する複数のフレームの画像のデータを記憶する記憶手段と、
前記特定のフレームまたは連続する複数フレームの各フレームの画像について画像を構成する各画素の画素値を入力する手段と、
前記入力された各画素の画素値に対し非線形フィルタリング処理の演算を行う非線形フィルタリング処理演算手段と、
前記非線形フィルタリング処理演算手段により算出された各画素の画素値を、出力画像を構成する各画素の画素値として出力する出力手段と、
前記求められた出力値を各々の画素の画素値とする出力画像を生成する出力画像生成部と、
を備えた画像強調処理システムであって、前記非線形フィルタリング処理演算手段は、画像を構成する複数の画素に対応して非線形反応素子が二次元的に配置された非線形反応素子アレイであって、該非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子を特徴づける活性因子濃度及び抑制因子濃度が相互に関連して時間発展するように関連づけられ、各々の非線形反応素子に対して画像強調処理に適切なパラメータを設定可能な反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイを有し、反応拡散モデルを表す式における外部入力として入力された前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値に対し前記反応拡散モデルを表す式による時間発展により変化した活性因子濃度の値から各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値を表す出力値を求める演算を行うものであることを特徴とする画像強調処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像強調処理システムであって、
前記反応拡散モデルを表す式がそれぞれ各非線形反応素子(i,j)に関する活性因子濃度uij及び抑制因子濃度vijの時間発展を表す2つの式
【数1】
JP2018055319A_000016t.gif
で表され、ここでC,a,bは定数パラメータ、Du,Dvは拡散係数であり、
Iは各非線形反応素子に関する入力I(i,j,t)として
【数2】
JP2018055319A_000017t.gif
で表され、
該外部入力I(i,j,t)に応じた出力fout(i,j,t)が
【数3】
JP2018055319A_000018t.gif
で表されるものであることを特徴とする画像強調処理システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、画像強調処理の方法及び画像強調処理システムに関し、より詳細には、人の視覚特性に関する近似精度が高く、印象がよい画像となるようにした画像強調処理の方法及び画像強調処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮影により取得された被写体の画像を再生表示装置で見た場合に、直接被写体を見るのと異なる印象を受けることが多い。これは画像の取得-再生表示系の特性と、一般的に人が視認する感性とが必ずしも同等にはなっていないことによるのであるが、再生表示装置で見られる画像が直接被写体を見た時と同じような印象を与えるために、取得された画像に対し、人の感性に応じた効果を与えるように画像処理を行った上で再生表示することになる。
【0003】
一般的には動画を再生表示するテレビジョンについて見れば、放送されている同じ画像データを異なる再生表示装置で見た場合に、再生表示装置ごとに「画質」、「明瞭さ」、「見映え」等に関して異なった印象を受けるのが一般的である。これは再生表示装置のハード的構成によるとともに、取得された画像を再生表示する段階での画像データの処理、調節にも関係し、画質、明瞭さ、見映え等による印象度を高めるためには、取得された画像に対し画像鮮鋭化、画像強調の処理を行うことになる。
【0004】
また、診断、治療で使用される内視鏡で患部を観察する場合、再生表示装置で表示される患部の画像において病変部位が明瞭に識別できるのが望ましいことであり、そのためには、撮像部で得られた画像に対し画像の鮮鋭化、境界部の強調のような画像処理を行うのがよい。
【0005】
従来用いられている鮮鋭化画像処理の手法として、アンシャープマスキング(USM)によるものがある。これは銀塩フィルムの時代から行われている鮮鋭化画像処理の手法であるが、原画像に対しぼかしを加えたネガポジ反転画像をアンシャープ・マスクとし、これを原画像に重ねて合成することで、画像における高空間周波数成分が強調され、物体の境界がより鮮明になり、この手法は静止画像に対する鮮鋭化処理に用いられる。
【0006】
動画像の鮮鋭化に関して種々の画像処理技術が提案されており、特許文献1には、動画像の画像処理のための処理速度を得つつ、画像処理された動画像の画質を安定化させる手法として、動画像のフレーム画像から被写体の動きの位相を解析し、解析された位相に対応する画像処理パラメータに応じて鮮鋭化処理、ノイズ抑制等の画像処理をフレーム画像に対して実行することが記載されている。
【0007】
特許文献2には、動画の複数画像の各画素に対して時間軸方向の平均を算出し、複数画像中で処理対象とする画像の平均値からの偏差を増幅し時間軸方向の平均に加算して強調画像を得ることが記載されており、また、特許文献3には、内視鏡画像の入力画像における散布された色素液に対応する特定の色成分の画像を抽出しこれを強調する色フィルタ処理を施して特定色強調画像を生成し、入力画像に特定色強調画像を合成して内視鏡画像における解像感、コントラストを向上させることについて記載されている。
【0008】
鮮鋭化処理、画像強調処理を行った画像を人が観察する場合、視覚特性に則って画像を強調することが自然な見えを得るために重要であり、人の視覚特性に関し、次のことが注目され、検討されている。
【0009】
(a)マッハバンド現象
濃淡のグラデーション図形を目にした時、濃淡の境界付近で実際には存在しない明るさの帯が見えるというように濃淡値を実際よりも強調する視覚作用である。図5に示すような濃淡画像についてこれを説明すると、上側の濃淡の画像の濃度値は、その下側のような単純な折れ線状に変化しているが、この画像を見た人の視覚上では、一番下の折れ線グラフのように、濃淡の境において帯状に濃度値が変化する部分が感じられるというものであり、それにより人が物体の輪郭をとらえ易くする効果があるという視覚作用が生じることになる。この視覚作用は神経細胞群が互いに抑制し合う視覚の側抑制によって引き起こされると考えられている。
【0010】
(b)モーションシャープニング現象
移動している物体を観察した時、静止した状態を見た時よりも物体の輪郭が鮮鋭に観察されるという現象で、視覚のインパルス応答により説明されると考えられる。
このうち動画に関して人の視覚特性に近似した画像の鮮鋭化を行う上では、(b)モーションシャープニング現象を特に考慮することが重要になる。
【0011】
また、本発明者らは、画像を構成する画素の活性因子濃度及び抑制因子濃度の時間発展を示す反応拡散モデルによって視覚のインパルス応答を再現できることを示しており、このモデルを拡張することによって、人間の視覚特性に近いモーションシャープニング現象を画像処理によって実現できる可能性を示している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2013-176641号公報
【特許文献2】特許第5653082号公報
【特許文献3】特開2014-94175号公報
【0013】

【非特許文献1】長篤志他「FitzHugh-Nagumo方程式による視覚の時間周波数特性の再現とモーションシャープニング現象」(2015年6月26日明治大学中野キャンパスで開催された「自己組織化・錯覚と数理の融合プロジェクト合同セミナー」での発表文書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述した特許文献1による動画像の画像処理では、動画像の画像処理のための処理速度を得つつ画質を安定化させることがなされるが、人の視覚特性に近似した画像鮮鋭化を行うということは考慮されず、画像の印象度を高めるという面では弱点がある。特許文献2による動画像の画像強調処理は、静止画像を基に空間的鮮鋭化を行うアンシャープマスキング(USM)に対して、動画像を基に時空間的鮮鋭化を行うテンポラリー・アンシャープマスキング(t-USM)を用いるものであり、変化・移動する対象の鮮鋭化は可能であるが、静止している対象の鮮鋭化効果はなく、人の視覚特性に対する近似精度は低いものである。
【0015】
特許文献3による内視鏡画像の画像処理では、特定色強調画像を生成するために色素液を観察部位に散布することが前提となり、色素液の散布を前提としない場合には適用できないものであるとともに、人の視覚特性に近似した画像強調処理ということも考慮されていない。
【0016】
さらに、非特許文献1では、反応拡散モデルを用い視覚の時間周波数特性を再現させる手法を適用することが考えられることができるため、このモデルを拡張することによりモーションシャープニングによる画像鮮鋭化技術への応用の可能性を示しているが、その具体的な実現方法は示されていない。そこで、インパルス応答を簡略化して画像処理フィルタとして用いた場合の結果を示しているが、粗い近似になっており、人の視覚に良好に近似した画像鮮鋭化は得られなかった。また、マッハバンド現象の再現については全く考慮されていない。
【0017】
モーションシャープニング現象は、動きのある実物体を見る場合に限らず、撮影された動画像の場合にも現れる。動画像に関し、モーションシャープニング現象による視覚特性を考慮した画像強調処理を行う上での課題としては、次の2つに分けて考えられる。
【0018】
(A)動画を観察中、その被写体はモーションシャープニング現象によって鮮鋭化されていることがあるが、動画中の1フレームを静止して静止画として観察すると、モーションシャープニング現象による鮮鋭化がなくなり、ぼやけた像に知覚されることになる。そこで、動画像中の1フレームを静止がとして観察する際に、静止画として観察する結果失われる鮮鋭感を動画として観察している時と同様、もしくはさらに強調した鮮鋭感を与えるように補償する。
【0019】
(B)動画からフレームを切り出し静止画として観察するのでなく、動画として観察する際に、鮮鋭感をさらに強調する。
本発明は、動画像に関し、フレームを切り出して静止画として観察する場合、動画として観察する場合のいずれにおいても、モーションシャープニング現象を考慮しつつ人の視覚に良好に近似した画像鮮鋭化を行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は前述した課題を解決すべくなしたものであり、本発明1による画像強調処理を行う方法は、動画像を構成する複数のフレームのうちの特定のフレームまたは連続する複数のフレームの画像に対して画像強調処理を行う方法であって、画像を構成する複数の画素に対応して非線形反応素子が二次元的に配置された非線形反応素子アレイであって、該非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子を特徴づける活性因子濃度及び抑制因子濃度が相互に関連して時間発展するように関連づけられた反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイを用意することと、前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対して画像強調処理に適切なパラメータを設定することと、前記活性因子濃度及び抑制因子濃度を関連づける反応拡散モデルを表す式における外部入力として、前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対応する入力画像の画素の画素値に対応する値を入力することと、前記各々の非線形反応素子に対して外部入力が入力された上で前記反応拡散モデルを表す式による時間発展により変化した活性因子濃度の値から各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値を表す出力値を求めることと、前記求められた出力値を各々の画素の画素値とする出力画像を生成することと、からなることを特徴とする。
【0021】
本発明2による画像強調処理を行う方法は、本発明1による画像強調処理を行う方法において、前記反応拡散モデルを表す式がそれぞれ各非線形反応素子(i,j)に関する活性因子濃度uij及び抑制因子濃度vijの時間発展を表す2つの式
【数1】
JP2018055319A_000003t.gif
で表され、ここでC,a,bは定数パラメータ、D,Dは拡散係数であり、
Iは各非線形反応素子に関する入力I(i,j,t)として
【数2】
JP2018055319A_000004t.gif
で表され、
該外部入力I(i,j,t)に応じた出力fout(i,j,t)が
【数3】
JP2018055319A_000005t.gif
で表されるものであることを特徴とする。
【0022】
本発明3による画像強調処理システムは、動画像を構成する複数のフレームの画像をうちの特定のフレームまたは連続する複数のフレームの画像のデータを記憶する記憶手段と、前記特定のフレームまたは連続する複数フレームの各フレームの画像について画像を構成する各画素の画素値を入力する手段と、前記入力された各画素の画素値に対し非線形フィルタリング処理の演算を行う非線形フィルタリング処理演算手段と、前記非線形フィルタリング処理演算手段により算出された各画素の画素値を、出力画像を構成する各画素の画素値として出力する出力手段と、前記求められた出力値を各々の画素の画素値とする出力画像を生成する出力画像生成部と、を備えた画像強調処理システムであって、前記非線形フィルタリング処理演算手段は、画像を構成する複数の画素に対応して非線形反応素子が二次元的に配置された非線形反応素子アレイであって、該非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子を特徴づける活性因子濃度及び抑制因子濃度が相互に関連して時間発展するように関連づけられ、各々の非線形反応素子に対して画像強調処理に適切なパラメータを設定可能な反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイを有し、反応拡散モデルを表す式における外部入力として入力された前記非線形反応素子アレイの各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値に対し前記反応拡散モデルを表す式による時間発展により変化した活性因子濃度の値から各々の非線形反応素子に対応する画素の画素値を表す出力値を求める演算を行うものであることを特徴とする。
【0023】
本発明4による画像強調処理システムは、本発明3による画像強調処理システムにおいて、 前記反応拡散モデルを表す式がそれぞれ各非線形反応素子(i,j)に関する活性因子濃度uij及び抑制因子濃度vijの時間発展を表す2つの式
【数1】
JP2018055319A_000006t.gif
で表され、ここでC,a,bは定数パラメータ、Du,Dvは拡散係数であり、
Iは各非線形反応素子に関する入力I(i,j,t)として
【数2】
JP2018055319A_000007t.gif
で表され、
該外部入力I(i,j,t)に応じた出力fout(i,j,t)が
【数3】
JP2018055319A_000008t.gif
で表されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、活性因子濃度、抑制因子濃度の時間発展を表す非線形反応素子アレイに対し、動画像の画素値データを入力し、それから得られた出力画素値をもとに出力画像を生成することにより、人の視覚作用としての移動する物を鮮鋭化するモーションシャープニング現象を再現する形で画像強調処理を行い、動画像について人の視覚により近似した画像を生成することができるものである。また、動画像のうちに移動しない対象を観察すると、視覚にはモーションシャープニング現象は起こらないが、マッハバンド現象は引き起こされる。本発明では、マッハバンド現象の生成も可能になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は反応拡散モデルによる非線形反応素子アレイの構成を示す図であり、(b)は(a)の一部を拡大して示す図である。
【図2】画像強調処理の例としてのシャーレ内で化学反応する液体の画像を示した図であり、(a)は入力画像、(b)は出力画像、(c)は差分画像である。
【図3】画像強調処理に関し、反応拡散モデルでのパラメータを変えた場合のフレーム画像の空間周波数特性、標準偏差を示すグラフである。
【図4】本発明による画像強調処理システムの構成例を示すブロック図である。
【図5】マッハバンド現象について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による動画像の画像強調処理では非線形反応拡散モデルに基づいて神経軸索に沿って伝播する信号を記述するフィッツ・ヒュー・ナグモ(FitsHugh-Nagumo)方程式(以下、FHN方程式という)を用いており、その点では非特許文献1と同様であるが、このFHN方程式を画像強調処理に応用する方法について概略説明する。

【0027】
本発明の反応拡散モデルとしては、図1に示すように、動画像のM×N個の画素に対応する非線形反応素子pijが相互に間隔をおいて二次元的に配置された反応素子アレイ3を考える。非線形反応素子pijの状態を特徴づける変量として、uij(活性因子濃度)、vij(抑制因子濃度)による{uij,vij}(i=0,2,……,M-1;j=0,1,……,N-1)を考え、このuij,vijが時間発展を示すFHN方程式である式(1a)、(1b)で関係づけられ、隣接する素子間で相互に影響を及ぼし合いながら変化するというのがこの反応拡散モデルの考え方である。

【0028】
【数1】
JP2018055319A_000009t.gif

【0029】
式(1a)右辺の[ ]内で活性因子の拡散係数Dのかかる部分は各因子の単位時間当たりの拡散による流入出量を表す拡散項で、素子相互間での拡散を特徴付けるものであり、それより前の部分は素子自身の生成量を示す反応項で、uij、vijによる項に外部入力I(i,j,t)を加えたものである。式(1b)右辺においても、抑制因子の拡散係数Dのかかる部分は拡散項であり、それより前の部分が反応項である。両式で、a,b,Cは定数パラメータである。拡散の強弱は拡散係数と素子間の距離によって決まるものであり、因子濃度uij,vijが式(1a)、(1b)を満たすように系が動作する。

【0030】
式(1a)では、反応項に外部入力I(i,j,t)を含むことによりuij,vijの時間変化がこの外部入力Iの影響を受けるのであり、その上で、uij,vijは(1a)、(1b)の関係をもって変化する。この外部入力Iは、動画像の入力画素値fin(i,j,t)を次式(2)により変換したものとする。
【数2】
JP2018055319A_000010t.gif

【0031】
in(i,j,t)は反応素子(i,j)の画素値を表し、画素値が8ビットで表される場合は0≦fin(i,j,t)≦255の256段階の値をとる。fin(i,j,t)が最小値0となる入力画像値を全ての画素に入力して各素子のui,jがある値に安定した値がuminであり、fin(i,j,t)が最大値255となる入力画像値を全ての画素に入力して各素子のui,jがある値に安定した値がumaxである。umin、umaxは時間と場所によらず一定値になる。このumin、umaxと、各画素のuij(t)とから次式(3)により出力画素値fout(i,j,t)を求める。fout(i,j,t)は1フレーム前までfin(i,j,t)が入力された計算結果として求められる。
【数3】
JP2018055319A_000011t.gif

【0032】
このように、反応拡散モデルにおいて、各画素値fin(i,j,t)に応じた式(2)による外部入力I(i,j,t)を有する(1a)と、(1b)との関係において系が変化し、式(3)による出力画素値を求めるという形になり、これは、非線形反応拡散モデルを表す式(1a)、(1b)を用いた非線形フィルタリング処理を行うということでもあるが、このような非線形フィルタリングは、常套手段として従来用いられている線形フィルタリング処理とは異なるアルゴリズムで動作するものである。

【0033】
〔鮮鋭化の評価〕
前述した反応拡散モデルに基づくFHN方程式による非線形フィルタリング処理を実際の動画に適用して得られた画像の鮮鋭化の評価をした例について説明する。
図2は、金属塩とカルボン酸を臭素酸塩によりブロモ化する化学反応であるベロウソフ・ジャボチンスキー反応に伴ってシャーレ内の液体内部に発生する対流により生成された螺旋状に回転する波(以下、対流波と呼ぶ)の様子を撮影して得られた動画像を表しており、(a)は入力画像、(b)は出力画像、(c)は差分画像である。入力画像は、各画素値が式(2)のfin(i,j,t)となる画像であり、fin(i,j,t)から式(2)により求められる外部入力I(i,j,t)が式(1a)の反応項を表している。

【0034】
出力画像は、FHN方程式(1a)、(1b)に従って変化するuijとumin、umaxとから式(3)により求められるfout(i、j、t)を各画素とするものである。差分画像は各画素値が出力画素値fout(i,j,t)と入力画素値fin(i,j,t)との差となる画像である。 図示の画像は縦480ピクセル、横550ピクセルからなり、シャーレ内の螺旋状に回転する波が強調しようとする対象になる。シャーレの直径は約500ピクセルになっている。また、パラメータについては、D=3、D=2であり、フレームレートは6(数値計算におけるt=1の時間に6フレームのfinを入力する)である。

【0035】
このように、入力画像、出力画像、差分画像を生成し、それを目視により評価するとともに、画像における標準偏差、空間周波数特性を求め、それを用いて鮮鋭化の評価を行う。
入力画像-出力画像についての標準偏差σin_outは次式(4)
【数4】
JP2018055319A_000012t.gif
で求められる。式(4)において、< >は着目しているフレームにおける全画素についての平均を求める演算である。これは入力画像と出力画像の差の値のばらつき具合を表す量であり、この値が大きいほどコントラストが向上していると言える。

【0036】
図2に示した例について、式(4)により求めた標準偏差は7.41であるが、D=3、フレームレートを6とし、Dを変えた場合を含めて空間周波数特性、標準偏差を求めると図3のようになった。

【0037】
図3の空間周波数特性のグラフにおいて、波数(k)は単位長さ当たりの画像の濃淡を表す波の数であり、単位長さを360/πピクセルとしている。すなわち、波数1は画像の濃淡の波の波長が約115ピクセルとなる波を表している。図3のスペクトルパワーは、波の方向を考慮せずにすべての方向の平均値を示している。

【0038】
図3では、D=3、フレーム数6として、Dを20~24.5に変えた場合の結果を示しており、Dが増大するのに応じて標準偏差も増大している一方で、いずれのDの場合にもk=0.4のピークのパワーが大きくなっており、これは不明瞭な波が強調されているものと考えられる。波数(k)0.4は約280ピクセルに相当し、直径約500ピクセルのシャーレ内に2波長分の濃淡の変化があることを示している。

【0039】
〔画像強調処理システム〕
本発明による画像強調処理を行うための画像強調処理システムについて説明する。図4は本発明による画像強調処理システムの構成例を示すブロック図である。この画像強調処理システムにおいて、画像記憶部1は動画像のデータを記憶するためのものであり、画像データ入力部2は画像記憶部1に記憶された画像データから各フレームの画像データを読み出し、各フレームの画像における各画素値のデータを送出するためのものである。

【0040】
非線形反応素子アレイ3は図1に示すようにM×N個の画素に対応する非線形反応素子pijが二次元的に配置された構成を有するものであり、各非線形反応素子pijを特徴づける活性因子濃度uij、抑制因子濃度vijが式(1a)、式(1b)により関連づけられるように変化するものである。

【0041】
非線形フィルタリング処理演算手段4は、画像データ入力部2から創出された各画素値のデータを受けた上で、各非線形反応素子pijを特徴づける因子濃度uij,vijの時間発展を表す式(1a)において入力画素値fin(i,j,t)から式(2)により求められる外部入力I(i,j,t)を外部入力Iとして与え、それに応じた出力画素値fout(i,j,t)を式(3)から求める演算を行うものである。

【0042】
出力画像生成部5は非線形フィルタリング処理演算部4での演算処理により求められた出力画素値fout(i,j,t)を総合して出力画像を生成するものであり、生成された出力画像は表示部6に表示される。制御部7は画像データの読み出し、外部入力の導出、非線形フィルタリング処理演算、出力画像の生成の動作のシークエンスを全体として制御するものである。

【0043】
非線形反応素子アレイ3は実際の反応拡散モデルによる時間発展を行うようにした個々の素子を配列したハードウエア素子アレイとして構成してもよいが、コンピュータのメモリにおいて反応拡散モデルの作用を実現するソフトウェアとして形成し、入力された画像データに対して作用するという形態としてもよい。

【0044】
本発明による画像強調処理では、活性因子濃度、抑制因子濃度の時間発展を表す非線形反応素子アレイに対し、動画像の画素値データを入力し、それから得られた出力画素値により出力画像を生成するという手法を用いており、人の視覚作用としての移動する物を鮮鋭化するモーションシャープニング現象を再現する形で画像強調処理を行い、動画像について人の視覚により近似した画像を生成することができる。また、動画像のうちの特定フレームの画像について画像強調処理を行うことに関し、ノイズを低減させつつ注目する対象をより強調するということで、マッハバンド現象の再現も可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1 画像記憶部
2 画像データ入力部
3 非線形反応素子アレイ
4 非線形フィルタリング処理演算手段
5 出力画像生成部
6 表示部
7 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4