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明細書 :股関節鏡手術シミュレーション装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-028152 (P2019-028152A)
公開日 平成31年2月21日(2019.2.21)
発明の名称または考案の名称 股関節鏡手術シミュレーション装置
国際特許分類 G09B  23/28        (2006.01)
G09B   9/00        (2006.01)
FI G09B 23/28
G09B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-145016 (P2017-145016)
出願日 平成29年7月27日(2017.7.27)
発明者または考案者 【氏名】花之内 健仁
出願人 【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098305、【弁理士】、【氏名又は名称】福島 祥人
【識別番号】100108523、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 雅博
【識別番号】100187931、【弁理士】、【氏名又は名称】澤村 英幸
審査請求 未請求
テーマコード 2C032
Fターム 2C032CA04
2C032CA06
要約 【課題】股関節鏡手術の練習を容易かつ適切に行うことを可能にする股関節鏡手術シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】ベース部材10の上面上では、大腿骨頭支持部材20により大腿骨模型30が支持されるとともに、寛骨臼保持部材50により寛骨臼模型60が保持される。大腿骨模型30と寛骨臼模型60とは互いに嵌め合わされた状態で保持される。大腿骨模型30および寛骨臼模型60にシート状の関節包模型70が取り付けられる。大腿骨頭部31には、軸部材40の一端が固定されている。大腿骨頭支持部材20から離間した位置に軸支持機構200が設けられる。軸支持機構200は、大腿骨頭部31を中心として上下方向および水平方向に揺動可能かつ軸部材40の軸心周りで回転可能に軸部材40を支持する。大腿骨模型30および寛骨臼模型60を覆うように皮膚模型92が設けられる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
骨盤の寛骨臼模型と、
大腿骨頭部を有する大腿骨模型と、
前記寛骨臼模型を保持する寛骨臼保持部材と、
前記寛骨臼模型に前記大腿頭骨部が嵌め合わされた前記大腿骨模型を支持する大腿骨頭支持部材と、
前記大腿骨模型に取り付けられた軸部材と、
前記大腿頭骨部を中心として前記軸部材を互いに交差する第1および第2の方向に揺動可能かつ前記軸部材を軸心周りで回転可能に支持する軸支持機構と、
前記軸部材を前記軸支持機構に対して固定する固定手段と、
前記寛骨臼模型および前記大腿骨模型を覆う皮膚模型と、
前記皮膚模型を保持する皮膚保持部材と、
前記寛骨臼模型および前記大腿骨模型に着脱可能に取り付けられる関節包模型とを備えた、股関節鏡手術シミュレーション装置。
【請求項2】
前記寛骨臼保持部材と前記大腿骨頭支持部との相対的な距離を変更可能に前記寛骨臼保持部材および前記大腿骨頭支持部を保持するベース部材をさらに備えた、請求項1記載の股関節鏡手術シミュレーション装置。
【請求項3】
前記大腿頭骨部の手術対象部分は、硬質材料により形成され、前記大腿頭骨部の他の部分に対して着脱可能に構成される、請求項1または2記載の股関節鏡手術シミュレーション装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、股関節鏡手術シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
股関節に発生する痛みの原因の一つとして、大腿骨寛骨臼インピンジメントが知られている。大腿骨寛骨臼インピンジメントは、大腿骨頭および寛骨臼のうち少なくとも一方に隆起変形が生じることにより、股関節の可動時に隆起変形部分が他方の骨に衝突することを意味する。
【0003】
大腿骨寛骨臼インピンジメントの低侵襲治療方法として股関節鏡手術がある。股関節鏡手術では、術者は、患者の皮膚を数箇所2cm程度切開し、切開部に関節鏡および手術器具を挿入することにより隆起変形部分の切削等を行う。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】「SAWBONES SURGICAL CATALOG 2016」,SAWBONES社,2016年,p.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
股関節鏡手術においては、関節鏡の視野内で手術器具を操作する必要があるため、皮膚を大きく切開する直視下手術に比べて高度な手術手技が求められる。手術手技を向上させるために、遺体を用いて股関節鏡手術の練習を行うことが望ましい。しかしながら、手術の練習のために遺体を用意することは難しい。
【0006】
そこで、人体の骨または臓器等を表した医療用モデルが用いられる。非特許文献1には、皮膚、大腿骨、寛骨臼および靭帯等が個別の部材で再現された股関節の医療用モデルが記載されている。このような医療用モデルを用いて股関節鏡手術の練習を行うことが考えられる。
【0007】
股関節鏡手術では、関節鏡の視野内に手術対象部分および手術器具が位置するように、大腿骨頭を適宜動かす必要がある。しかしながら、上記の医療用モデルにおいては、股関節を構成する各部の模型が固定されているので、大腿骨を屈曲、伸展、外転、内転、外旋または内旋したときの股関節の状態を再現させることが難しい。そのため、実際の股関節鏡手術に近い練習を適切に行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、股関節鏡手術の練習を容易かつ適切に行うことを可能にする股関節鏡手術シミュレーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る股関節鏡手術シミュレーション装置は、骨盤の寛骨臼模型と、大腿頭骨部を有する大腿骨模型と、寛骨臼模型を保持する寛骨臼保持部材と、寛骨臼模型に大腿頭骨部が嵌め合わされた大腿骨模型を支持する大腿骨頭支持部材と、大腿骨模型に取り付けられた軸部材と、大腿頭骨部を中心として軸部材を互いに交差する第1および第2の方向に揺動可能かつ軸部材を軸心周りで回転可能に支持する軸支持機構と、軸部材を軸支持機構に対して固定する固定手段と、寛骨臼模型および大腿骨模型を覆う皮膚模型と、皮膚模型を保持する皮膚保持部材と、寛骨臼模型および大腿骨模型に着脱可能に取り付けられる関節包模型とを備える。
【0010】
その股関節鏡手術シミュレーション装置においては、軸部材が大腿骨模型の大腿頭骨部を中心として第1および第2の方向に揺動可能に支持されるとともに、軸部材が軸心周りで回転可能に支持される。それにより、使用者は、軸部材を揺動および回転させることにより、大腿骨の屈曲、伸展、外転、内転、外旋および内旋の操作と同様に、寛骨臼模型に嵌め合わされた大腿頭骨部の位置および向きを調整することができ、固定手段により軸部材を軸支持機構に固定することにより大腿頭骨部の位置および向きを固定することができる。この状態で、使用者は、関節鏡および手術器具を用いて、関節包模型の切開、手術対象部分の切削、および関節包模型の縫合を行うことができる。このようにして、使用者は、股関節鏡手術の練習を容易かつ適切に行うことが可能になる。
【0011】
(2)股関節鏡手術シミュレーション装置は、寛骨臼保持部材と大腿骨頭支持部との相対的な距離を変更可能に寛骨臼保持部材および大腿骨頭支持部を保持するベース部材をさらに備えてもよい。
【0012】
この場合、寛骨臼模型と大腿骨模型との間の距離を変更することにより、大腿骨頭が寛骨臼から脱臼した状態と同様の状態を容易に再現することができる。
【0013】
(3)大腿頭骨部の手術対象部分は、硬質材料により形成され、大腿頭骨部の他の部分に対して着脱可能に構成されてもよい。
【0014】
ここで、硬質材料とは、人体の大腿骨の強度と等しいかまたはほぼ等しい強度を有する材料である。この場合、手術対象部分の形状および強度を患者の実際の手術対象部分の形状および強度に合わせることにより、実際の手術前の模擬手術を有効に行うことができる。また、使用済みの手術対象部分を新たな手術対象部分と交換することができるので、股関節鏡手術の練習を低コストで繰り返し行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、股関節鏡手術の練習を容易かつ適切に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る股関節鏡手術シミュレーション装置の外観斜視図である。
【図2】(a)は大腿骨模型の平面図であり、(b)は(a)の大腿骨模型の側面図であり、(c)は手術対象部分が取り外された状態の大腿骨模型の側面図である。
【図3】図1の大腿骨頭支持部材、寛骨臼保持部材および寛骨臼模型の平面図および側面図である。
【図4】大腿骨模型および寛骨臼模型への関節包模型の取付状態を示す平面図および側面図である。
【図5】股関節鏡手術の基本手順を示す説明図である。
【図6】股関節鏡手術の練習時における股関節鏡手術シミュレーション装置の外観斜視図である。
【図7】寛骨臼模型に関節唇模型が取り付けられた状態を示す平面図である。
【図8】大腿骨模型および寛骨臼模型に軟骨模型および靭帯模型が取り付けられた状態を示す平面図である。
【図9】図8の寛骨臼模型に図8の大腿骨模型の大腿骨頭部が嵌め込まれた状態を表す断面図である。
【図10】他の実施の形態に係る股関節鏡手術シミュレーション装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態に係る股関節鏡手術シミュレーション装置について図面を参照しつつ説明する。

【0018】
(1)股関節鏡手術シミュレーション装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る股関節鏡手術シミュレーション装置の外観斜視図である。図1に示すように、板状のベース部材10の上面に円形の大腿骨頭支持部材20が固定されている。大腿骨頭支持部材20は大腿骨模型30を支持する。また、ベース部材10の上面には、大腿骨頭支持部材20に対して相対的に移動可能に寛骨臼保持部材50が設けられている。寛骨臼保持部材50は寛骨臼模型60を保持する。

【0019】
使用者は、寛骨臼保持部材50を大腿骨頭支持部材20に対して相対的に移動させることにより、大腿骨模型30と寛骨臼模型60との間の距離を調整することができる。

【0020】
大腿骨模型30は、大腿骨頭を表す大腿骨頭部31を有する。大腿骨頭部31は、寛骨臼模型60に対して嵌め込み可能かつ取り外し可能に構成されている。大腿骨頭支持部材20、大腿骨模型30、寛骨臼保持部材50および寛骨臼模型60の詳細は後述する。

【0021】
大腿骨模型30と寛骨臼模型60とは互いに嵌め合わされた状態で保持される。互いに嵌め合わされた大腿骨模型30および寛骨臼模型60にシート状の関節包模型70が取り付けられる。図1では、関節包模型70の外形を一点鎖線で示すとともに関節包模型70にハッチングを付している。

【0022】
大腿骨模型30の大腿骨頭部31には、直線状の軸部材40の一端が固定されている。本例の軸部材40は、丸棒であるが、丸棒に代えて角棒を用いることもできる。

【0023】
ベース部材10の上面には、大腿骨頭支持部材20と離間するように円弧状の外転内転ガイド210が取り付けられている。外転内転ガイド210の円弧の中心は、大腿骨頭支持部材20の中心とほぼ一致する。外転内転ガイド210に沿って移動可能に可動部材220が取り付けられている。

【0024】
可動部材220には、円弧状の屈曲伸展ガイド230が上方に湾曲して延びるように固定されている。屈曲伸展ガイド230の円弧の中心は、大腿骨頭支持部材20の中心とほぼ一致する。屈曲伸展ガイド230は、上下方向に延びるスリット231を有する。屈曲伸展ガイド230には、屈曲伸展ガイド230に沿って移動可能に可動部材240が取り付けられている。

【0025】
可動部材240は貫通孔241を有する。軸部材40の他端は、屈曲伸展ガイド230のスリット231を通して可動部材240の貫通孔241に挿入される。外転内転ガイド210、可動部材220、屈曲伸展ガイド230および可動部材240により軸支持機構200が構成される。

【0026】
可動部材220が外転内転ガイド210に沿って矢印a1で示すように移動可能であり、かつ可動部材240が屈曲伸展ガイド230に沿って矢印a2で示すように移動可能であるので、軸部材40が大腿骨頭部31を中心として水平方向および上下方向に揺動可能である。この場合、可動部材220,240が同時に移動することにより軸部材40が大腿骨頭部31を中心として斜め方向にも揺動可能である。また、軸部材40は、その軸心の周りで矢印a3で示すように回転可能である。

【0027】
可動部材220には、締結部材WS1が取り付けられている。締結部材WS1を締め付けることにより可動部材220が外転内転ガイド210に固定される。締結部材WS1を緩めることにより可動部材220が外転内転ガイド210に沿って移動可能となる。

【0028】
可動部材240には締結部材WS2,WS3が取り付けられている。締結部材WS2を締め付けることにより可動部材240が屈曲伸展ガイド230に固定される。締結部材WS2を緩めることにより可動部材240が屈曲伸展ガイド230に沿って移動可能となる。締結部材WS3を締め付けることにより軸部材40が可動部材240に固定される。締結部材WS3を緩めることにより軸部材40がその軸心周りで回転可能となる。

【0029】
本実施の形態では、締結部材WS1,WS2,WS3が固定手段として機能する。締結部材WS1,WS2,WS3としては、例えば蝶ねじを用いることができる。

【0030】
また、ベース部材10の上面には、2つの半円形状の皮膚保持部材91が固定されている。一方の皮膚保持部材91は軸部材40を跨ぐように配置され、他方の皮膚保持部材91は寛骨臼保持部材50を跨ぐように配置されている。

【0031】
2つの皮膚保持部材91上にシート状の皮膚模型92が着脱可能に取り付られる。図1では、皮膚模型92を太い二点鎖線で示している。これにより、大腿骨模型30および寛骨臼模型60が皮膚模型92により覆われる。皮膚模型92は、布またはゴム等の軟質性材料により形成される。

【0032】
本実施の形態では、皮膚保持部材91に面ファスナのフック面(またはループ面)が取り付けられ、皮膚模型92の裏面に面ファスナのループ面(またはフック面)が取り付けられている。なお、面ファスナの代わりにねじまたはスナップ等により皮膚模型92が皮膚保持部材91に着脱可能に取り付けられてもよい。

【0033】
(2)大腿骨模型30
図2(a)は大腿骨模型30の平面図であり、図2(b)は図2(a)の大腿骨模型30の側面図である。図2(c)は手術対象部分31aが取り外された状態の大腿骨模型30の側面図である。

【0034】
図2(a),(b)に示すように、大腿骨模型30は、大腿骨頭部31、大腿骨頸部32、大転子部33、小転子部34、転子下部35および軸部材取付部38を有する。また、大腿骨頭部31は、手術対象部分31aおよび被支持部分31bから構成される。

【0035】
大腿骨頭部31において、手術対象部分31aは略半球形状を有し、左の大腿骨の大腿骨頭のうち前半部分を表す。被支持部分31bは略半球形状を有し、左の大腿骨の大腿骨頭のうち後半部分を表す。被支持部分31bの外表面は滑らかに形成されている。また、大腿骨頸部32、大転子部33、小転子部34および転子下部35は、人体の左の大腿骨のうちの大腿骨頚、大転子、小転子および転子下をそれぞれ表す。

【0036】
大腿骨頭部31の被支持部分31b、大腿骨頸部32、大転子部33、小転子部34、転子下部35および軸部材取付部38は樹脂等の共通の材料により一体成型されている。これに対して、大腿骨頭部31の手術対象部分31aは、硬質材料により形成され、大腿骨模型30の一部として、被支持部分31bに対して着脱可能に構成される。図2(a),(b)では、手術対象部分31aにドットパターンを付している。

【0037】
ここで、硬質材料とは、人体の大腿骨の強度と等しいかまたはほぼ等しい強度を有する材料である。本実施の形態では、硬質材料として、石粉粘土等の粘土状硬化材料が用いられる。

【0038】
図2(c)に示すように、被支持部分31bの上面には、手術対象部分31aを安定して支持するための複数(本例では3つ)の突起部31pが形成されている。

【0039】
軸部材取付部38には、軸部材40の一端が取り付けられる。大転子部33および小転子部34の各々には、ねじ部材39が取り付けられている。これらのねじ部材39は、図1の関節包模型70を大腿骨模型30に取り付けるために用いられる。

【0040】
(3)大腿骨頭支持部材20、寛骨臼保持部材50および寛骨臼模型60
図3(a),(b)は図1の大腿骨頭支持部材20、寛骨臼保持部材50および寛骨臼模型60の平面図および側面図である。図3(a),(b)では、大腿骨頭支持部材20が太い一点鎖線で示される。また、軸部材40および大腿骨模型30が点線で示される。

【0041】
図3(a),(b)に示すように、大腿骨頭支持部材20の上端面には、大腿骨模型30の被支持部分31b(図2(b))の半球状の外表面に対応する凹状支持面21が形成されている。それにより、被支持部分31bの外表面の一部が安定して凹状支持面21上に支持される。

【0042】
寛骨臼保持部材50は、接地部51および支持柱52から構成される。接地部51は、図1のベース部材10上に載置される。支持柱52は、接地部51から上方に延びるように形成される。支持柱52の上端部に寛骨臼模型60が取り付けられている。

【0043】
寛骨臼模型60には、複数のねじ部材69が取り付けられている。これらのねじ部材69は、図1の関節包模型70を寛骨臼模型60に取り付けるために用いられる。

【0044】
図4(a),(b)は大腿骨模型30および寛骨臼模型60への関節包模型70の取付状態を示す平面図および側面図である。図4(a),(b)では、関節包模型70にハッチングを付している。

【0045】
関節包模型70は、布またはゴム等の軟質性材料により形成される。関節包模型70には、複数の貫通孔が形成され、それらの貫通孔に大腿骨模型30および寛骨臼模型60に取り付けられた複数のねじ部材39,69が挿入される。それにより、関節包模型70が大腿骨模型30および寛骨臼模型60に取り付けられる。

【0046】
(4)股関節鏡手術の練習
股関節鏡手術の概略を説明する。図5は股関節鏡手術の基本手順を示す説明図である。図5(a)~(f)では、人体の腰部およびその周辺の骨格として、左寛骨B1および左大腿骨B2が実線で示される。また、左寛骨B1および左大腿骨B2を覆う皮膚が一点鎖線で示される。

【0047】
図5(a)に初期状態が示される。この股関節鏡手術においては、左大腿骨B2の大腿骨頭B21のうちの一部が手術対象部分B22である。まず、図5(b)に示すように、左寛骨B1の寛骨臼B11から左大腿骨B2の大腿骨頭B21が外される(脱臼される)。また、股関節を覆う皮膚の一部が切開され、複数(本例では2つ)の開口部B3が形成される。

【0048】
次に、図5(c)に示すように、一の開口部B3に関節鏡S1が挿入され、関節鏡S1の先端部が大腿骨頭B21の近傍の位置に到達する。また、他の開口部B3に手術器具S2が挿入され、手術器具S2の先端部が大腿骨頭B21の近傍の位置に到達する。

【0049】
次に、関節包(図示せず)が切開される。ここで、関節鏡S1および手術器具S2が手術器具S2の先端部(カッターまたはリーマー等)および手術対象部分B22が関節鏡S1の視野内に位置するように大腿部が屈曲、伸展、外転、内転、外旋または内旋される。

【0050】
また、図5(d)に示すように、手術器具S2により手術対象部分B22が研削され、除去される。その後、関節包(図示せず)の切開部が縫合され、図5(e)に示すように、左大腿骨B2の大腿骨頭B21が左寛骨B1の寛骨臼B11に嵌め込まれる。最後に、図5(f)に示すように、複数の開口部B3が縫合されることにより股関節鏡手術が終了する。

【0051】
使用者は、股関節鏡手術シミュレーション装置100を用いて上記の股関節鏡手術の練習を行うことができる。図6は股関節鏡手術の練習時における股関節鏡手術シミュレーション装置100の外観斜視図である。

【0052】
使用者は、最初に大腿骨模型30と寛骨臼模型60との間の距離を調整し、大腿骨頭が寛骨臼から脱臼した状態を再現させる。また、使用者は、皮膚模型92の複数の部分を切開し、複数(本例では2つ)の開口部92oを形成する。

【0053】
続いて、使用者は、複数の開口部92oに関節鏡S1および手術器具S2を挿入し、関節包模型70を切開する。また、使用者は、大腿骨頭部31の手術対象部分31aが関節鏡S1の視野内に位置するように、軸部材40を水平方向、上下方向または斜め方向に揺動させ、または軸部材40を軸心周りで回転させる。その後、使用者は、軸部材40を固定し、手術器具S2により手術対象部分31aを切削する。最後に、使用者は、関節包模型70の開口部および皮膚模型92の複数の開口部92oを縫合する。

【0054】
(5)効果
上記の股関節鏡手術シミュレーション装置100においては、軸部材40が大腿骨模型30の大腿骨頭部31を中心として上下方向、水平方向および斜め方向に揺動可能に支持されるとともに、軸部材40が軸心周りで回転可能に支持される。それにより、使用者は、軸部材40を揺動および回転させることにより、大腿骨の屈曲、伸展、外転、内転、外旋および内旋の操作と同様に、寛骨臼模型60に嵌め合わされた大腿骨頭部31の位置および向きを調整することができる。また、複数の締結部材WS1,WS2,WS3により軸部材40を軸支持機構200に固定することにより大腿骨頭部31の位置および向きを固定することができる。この状態で、使用者は、関節鏡S1および手術器具S2を用いて、関節包模型70の切開、手術対象部分31aの切削、および関節包模型70の縫合を行うことができる。このようにして、使用者は、股関節鏡手術の練習を容易かつ適切に行うことが可能になる。

【0055】
大腿骨頭部31の手術対象部分31aは、人体の大腿骨の強度と等しいかまたはほぼ等しい強度を有する硬質材料により形成される。それにより、使用者は、実際の股関節鏡手術に近い状態での手術対象部分の切削の練習が可能となる。

【0056】
上記の例では、大腿骨頭部31の手術対象部分31aを形成する硬質材料として、粘土状硬化材料が用いられる。この場合、手術対象部分31aの形状を容易に調整することができる。したがって、手術対象部分31aの形状を患者ごとに実際の手術対象部分B22と同じ形状に形成することが可能である。

【0057】
例えば、CTスキャナを用いて股関節を含む一部の範囲内の複数の断面画像を取得し、複数の断面画像に基づいて手術対象部分B22の立体データを生成する。この立体データに基づいて粘土状硬化材料用の型を作製し、その型を用いて患者の実際の手術対象部分B22とほぼ同じ形状を有する手術対象部分31aを形成することができる。このようにして、手術対象部分31aの形状を患者の実際の手術対象部分B22の形状に合わせることにより、手術前の模擬手術を有効に行うことができる。また、使用済みの手術対象部分31aを新たな手術対象部分31aと交換することができるので、股関節鏡手術の練習を低コストで繰り返し行うことができる。

【0058】
なお、CTスキャナにより取得される複数の断面画像によれば、大腿骨頭の骨密度を測定することもできる。したがって、手術対象部分31aを石粉粘土で形成する場合には、測定された骨密度に基づいて石粉粘土における石粉の配合割合を調整することにより、手術対象部分31aの強度を患者の実際の骨の強度により近づけることができる。

【0059】
さらに、CTスキャナにより取得される複数の断面画像によれば、関節包の立体データを生成することも可能である。したがって、関節包模型70についても、立体データに基づいて患者の実際の関節包とほぼ同じ形状を有する関節包模型70を作製することができる。

【0060】
(6)股関節鏡手術シミュレーション装置100の他の例
(a)寛骨臼模型60にさらに関節唇模型が取り付けられてもよい。図7は寛骨臼模型60に関節唇模型が取り付けられた状態を示す平面図である。図7に示すように、寛骨臼の外縁を表す寛骨臼模型60の部分に関節唇模型81が取り付けられている。それにより、寛骨臼、大腿骨頭部およびそれらの周辺部の状態がより正確に再現されるので、実際の股関節鏡手術により近い状態での練習が可能となる。

【0061】
(b)大腿骨模型30および寛骨臼模型60にさらに軟骨模型および靭帯模型が取り付けられてもよい。図8は大腿骨模型30および寛骨臼模型60に軟骨模型および靭帯模型が取り付けられた状態を示す平面図である。図9は図8の寛骨臼模型60に図8の大腿骨模型30の大腿骨頭部31が嵌め込まれた状態を表す断面図である。

【0062】
図8および図9に示すように、大腿骨頭部31の外表面のうち、寛骨臼模型60に嵌め込まれる部分を覆うように軟骨模型82が取り付けられている。また、寛骨臼を表す寛骨臼模型60の部分を覆うように軟骨模型83が取り付けられている。さらに、寛骨臼模型60の一部と大腿骨頭部31の一部とをつなぐように靭帯模型84が取り付けられている。それにより、寛骨臼、大腿骨頭部およびそれらの周辺部の状態がより正確に再現されるので、実際の股関節鏡手術により近い状態での練習が可能になる。なお、図8および図9の寛骨臼模型60に、図7の関節唇模型81がさらに取り付けられてもよい。

【0063】
(c)大腿骨頭部31の手術対象部分31aのうち股関節鏡手術で切削すべき部分が他の部分から容易に識別できるように、切削すべき部分と切削すべきでない部分とが異なる色に着色されてもよい。それにより、使用者は、股関節鏡手術の練習時に、切削すべき部分を容易に識別することができるとともに、切削の程度を容易に認識することができる。

【0064】
(7)他の実施の形態
(a)軸支持機構の構成は、図1の軸支持機構200の構成に限定されない。図10は、他の実施の形態に係る股関節鏡手術シミュレーション装置100の外観斜視図である。図10の股関節鏡手術シミュレーション装置100は、軸部材40の一部を支持する軸支持機構300が図1の軸支持機構200とは異なる構成を有する。

【0065】
図10の軸支持機構300では、湾曲した板形状を有する支持フレーム301がベース部材10の上面に取り付けられている。支持フレーム301の中央部には、支持フレーム301の上端部近傍から下端部近傍にかけて上下方向に延びる縦スリット310が形成されている。支持フレーム301には、縦スリット310を中心として水平方向に延びる下段横スリット321、中段横スリット322および上段横スリット323が形成されている。

【0066】
下段横スリット321,中段横スリット322および上段横スリット323の下縁には、複数の支持溝grが形成されている。軸部材40は、縦スリット310、下段横スリット321、中段横スリット322および上段横スリット323内で移動可能である。

【0067】
この場合、使用者は、軸部材40を縦スリット310内で上下方向に揺動させることができ、下段横スリット321、中段横スリット322および上段横スリット323内で水平方向に揺動させることができる。また、使用者は、軸部材40を複数の支持溝grのいずれかの位置で固定することができる。この場合、複数の支持溝grが固定手段として機能する。

【0068】
(b)上記実施の形態では、大腿骨模型30が人体の左の大腿骨のうちの大腿骨頭、大腿骨頚、大転子、小転子および転子下を表し、寛骨臼模型60が人体の左寛骨のうち寛骨臼の一部を表すが、大腿骨模型30が人体の右の大腿骨のうちの大腿骨頭、大腿骨頚、大転子、小転子および転子下を表し、寛骨臼模型60が人体の右寛骨のうち寛骨臼の一部を表すように形成されてもよい。この場合、右の股関節について、股関節鏡手術の練習を行うことが可能になる。

【0069】
(c)上記実施の形態に係る図1の軸支持機構200においては、軸部材40の固定手段として複数の締結部材WS1,WS2,WS3が用いられるが、本発明はこれに限定されない。固定手段として面ファスナ等が用いられてもよい。

【0070】
(d)上記実施の形態では、ベース部材10の上面に大腿骨頭支持部材20が固定されているが、大腿骨頭支持部材20が面ファスナ等の他の固定手段によりベース部材10の上面の任意の位置に取り付けおよび取り外し可能に構成されてもよい。

【0071】
(e)上記実施の形態では、大腿骨頭部31の手術対象部分31aを形成する硬質材料として石粉粘土等の粘土状硬化材料が用いられるが、本発明はこれに限定されない。手術対象部分31aを形成する硬質材料としては、粘土状硬化材料に代えて、人体の大腿骨の強度と等しいかまたはほぼ等しい強度を有する合成樹脂材料により形成されてもよい。あるいは、手術対象部分31aを形成する硬質材料として、人工股関節置換術により人体の大腿骨から切除された大腿骨頭を用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…ベース部材,20…大腿骨頭支持部材,21…凹状支持面,30…大腿骨模型,31…大腿骨頭部,31a…手術対象部分,31b…被支持部分,31p…突起部,32…大腿骨頸部,33…大転子部,34…小転子部,35…転子下部,38…軸部材取付部,39,69…ねじ部材,40…軸部材,50…寛骨臼保持部材,51…接地部,52…支持柱,60…寛骨臼模型,70…関節包模型,81…関節唇模型,82,83…軟骨模型,84…靭帯模型,91…皮膚保持部材,92…皮膚模型,92o…開口部,100…股関節鏡手術シミュレーション装置,200…軸支持機構,210…外転内転ガイド,220…可動部材,230…屈曲伸展ガイド,231…スリット,240…可動部材,241…貫通孔,300…軸支持機構,301…支持フレーム,310…縦スリット,321…下段横スリット,322…中段横スリット,323…上段横スリット,B1…左寛骨,B2…左大腿骨,B3…開口部,B11…寛骨臼,B21…大腿骨頭,B22…手術対象部分,S1…関節鏡,S2…手術器具,WS1,WS2,WS3…締結部材,gr…支持溝
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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