【0019】 スパッタリングによって成膜されるRuバリアメタル層(金属膜)の膜質は、スパッタリング時におけるAr圧と成膜温度(成膜時の基板100の温度)の影響を大きく受ける。図2は、Arをスパッタリングガスとしたスパッタリング法によって成膜された金属膜の膜質の、Arガス圧と成膜温度(基板温度Ts)依存性を模式的に示す図である(「Influence of Apparatus Geometry and Deposition Conditions on the Structure and Topopraphy of Thick Sputtered Coatings」、John A.Thomson、Journal of Vacuum Science and Technology A、Vol.11、p666(1974年))。ここで、基板温度Tsは、単位をKとして、金属膜の融点Tm(Ruの融点~2300℃)で規格化されている。この結果に示されるように、得られる金属膜の構造は、ボイドで囲まれた粗い結晶粒からなる構造(Zone I)、密度の高い繊維構造をもつ結晶粒からなる構造(Zone T)、柱状結晶粒からなる構造(Zone II)、再結晶化した粗い結晶粒からなる構造(Zone III)の4種類に大別される。
【0029】 このRu層がバリアメタル層(Ruバリアメタル層)として用いられる場合には、その上に銅(Cu)層が形成された銅配線の一部として用いられる。ここで、例えば「Substrate Temperature Dependence of Electrical and Structural Properties of Ru Films」、Takatoshi Nagano、Kazuya Inokuchi、Kunihiro Tamahashi、Nobuhiro Ishikawa、Yasushi Sasajima、 and Jin Onuki、Thin Solid Films Vol.520(1)、p374(2011年)に記載されるように、Ruの(0001)面((002)面と等価)とCu(111)面との格子ミスマッチは小さく、かつ、これらの間の吸着エネルギーは大きい。このため、(002)配向性の高いRuバリアメタル層上には、(111)配向性の高い銅(Cu)層が高い密着性で形成される。この場合のCu層の(111)配向度(上記のRuにおける(002)配向度と同様に算出)は80%以上となる。