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明細書 :WDMダイバーシティ伝送システムおよび方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6512660号 (P6512660)
公開番号 特開2017-046062 (P2017-046062A)
登録日 平成31年4月19日(2019.4.19)
発行日 令和元年5月15日(2019.5.15)
公開日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 WDMダイバーシティ伝送システムおよび方法
国際特許分類 H04B  10/2543      (2013.01)
H04J  14/00        (2006.01)
G02F   1/377       (2006.01)
FI H04B 10/2543
H04J 14/00
G02F 1/377
請求項の数または発明の数 7
全頁数 10
出願番号 特願2015-165043 (P2015-165043)
出願日 平成27年8月24日(2015.8.24)
審査請求日 平成30年6月11日(2018.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】古賀 正文
個別代理人の代理人 【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100116001、【弁理士】、【氏名又は名称】森 俊秀
審査官 【審査官】前田 典之
参考文献・文献 米国特許出願公開第2013/0071119(US,A1)
米国特許出願公開第2008/0075472(US,A1)
特開2013-046230(JP,A)
特開平07-312574(JP,A)
特開2004-166306(JP,A)
特開2015-008349(JP,A)
Akira Mizutori et al.,Optical diversity transmission with signal and its phase-conjugate lights through multi-core fiber,Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC),米国,IEEE,2015年 3月22日,Th1D.4,pages.1-3
Masafumi Koga,Q-value improvement by electrical maximum ratio combining in optical diversity transmission through multi-core fiber,2014 OptoElectronics and Communication Conference and Australian Conference on Optical Fibre Technology,米国,IEEE,2014年 9月 1日,pages.697-698
調査した分野 H04B 10/2557
G02F 1/377
H04J 14/00
特許請求の範囲 【請求項1】
光送信器と光受信器との間で、複数の光ファイバ伝送路を介してWDM光をダイバーシティ伝送し、光受信器で最大比合成するWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、
前記光送信器は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した複数の波長の信号光を波長多重した前記WDM光と、各波長の信号光の位相共役光を波長多重した位相共役WDM光とを生成し、前記複数の光ファイバ伝送路の各光ファイバ伝送路へそれぞれ送出するWDM光・位相共役WDM光送信器であり、
前記光受信器は、前記複数の光ファイバ伝送路を介して伝送された前記WDM光および前記位相共役WDM光を入力し、ダイバーシティ伝送した各波長の信号光を最大光合成受信する構成であり、
前記複数の光ファイバ伝送路は、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた光ファイバ伝送路を用いて構成される
ことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、
前記WDM光・位相共役WDM光送信器は、
複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した信号光を合波して前記WDM光として出力するWDM光生成部と、
前記WDM光と、所定の波長のポンプ光を入力し、前記WDM光の各波長と対称の波長に前記位相共役WDM光を発生させる位相共役光生成部と、
前記WDM光と前記位相共役WDM光を前記複数の光ファイバ伝送路の異なる光ファイバ伝送路に結合する手段と
を備えたことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、
前記位相共役光生成部は、4光波混合光発生過程によって前記位相共役WDM光を発生させる高非線形媒質を用いた光回路である
ことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送システム。
【請求項4】
請求項1に記載のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、
前記WDM光・位相共役WDM光送信器は、
複数の波長の搬送波光の直交位相成分をそれぞれ送信データで変調した信号光を出力する第1の光変調器と、
前記複数の波長の搬送波光をそれぞれ入力し、虚軸搬送波成分に対して符号論理反転した送信データで変調して位相共役光を出力する第2の光変調器と、
前記第1の光変調器から出力される各波長の信号光を合波して前記WDM光を生成し、前記第2の光変調器から出力される各波長の位相共役光を合波して前記位相共役WDM光を生成し、それぞれ前記複数の光ファイバ伝送路の異なる光ファイバ伝送路に結合する手段と
を備えたことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送システム。
【請求項5】
請求項1,2,4のいずれかに記載のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、
前記複数の光ファイバ伝送路は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ伝送路であり、複数のコアで前記WDM光および前記位相共役WDM光をそれぞれ伝送する構成である
ことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送システム。
【請求項6】
光送信器と光受信器との間で、複数の光ファイバ伝送路を介してWDM光をダイバーシティ伝送し、光受信器で最大比合成するWDMダイバーシティ伝送方法において、
前記複数の光ファイバ伝送路は、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた光ファイバ伝送路を用い、
前記光送信器は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した複数の波長の信号光を波長多重した前記WDM光と、各波長の信号光の位相共役光を波長多重した位相共役WDM光とを生成し、前記複数の光ファイバ伝送路の各光ファイバ伝送路へそれぞれ送出し、
前記光受信器は、前記複数の光ファイバ伝送路を介して伝送された前記WDM光および前記位相共役WDM光を入力し、ダイバーシティ伝送した各波長の信号光を最大光合成受信する
ことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送方法。
【請求項7】
請求項6に記載のWDMダイバーシティ伝送方法において、
前記複数の光ファイバ伝送路は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ伝送路であり、複数のコアで前記WDM光および前記位相共役WDM光をそれぞれ伝送する
ことを特徴とするWDMダイバーシティ伝送方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いた光ダイバーシティ伝送と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送を組み合わせて、大容量かつ長距離伝送を可能とするWDMダイバーシティ伝送システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコア光ファイバを用いた光ダイバーシティ伝送により、大容量かつ長距離伝送を可能にするダイバーシティ伝送システムが提案されている(特許文献1)。ここで、マルチコア光ファイバは、1本の光ファイバにおける芯線径は変更せず複数のコアを構成するものであり、例えばクラッド径 125μmにコア径9μmの7個のコアをコア間隔40μmで三角配置して構成される。
【0003】
非結合型マルチコア光ファイバでは、コア数がNまで増加できたとすると、1本の光ファイバによって伝送容量がN倍まで増加可能である。既存光ファイバでは、伝送距離1000kmに対して 100Tbit/s 程度が限界になるが、マルチコア光ファイバを用いれば、同条件にてN× 100Tbit/s となる。ただし、コア間結合をゼロにできないので、マルチコア光ファイバでは、N芯線ケーブルに比較すると伝送容量が劣ることが予想される。
【0004】
一方、通信の基本性能指標である光SNRに関しては、伝送容量の飛躍ほど高まってはいないが、直交位相による変調は符号の多値化を可能にして光周波数利用効率(SE)を飛躍的に高めた。2007年に実用化されたRZ-DQPSK方式40Gbit/s DWDM伝送システムのSEは0.4bit/s/Hz であるが、2010年に報告されたSEは5bit/s/Hzを超えている。デジタルコヒーレント受信技術は、光キャリア周波数の不安定性を高速デジタル信号処理(HS-DSP)技術によって補う技術と捉えることができる。
【0005】
図5は、従来のダイバーシティ伝送システムの構成例を示す(特許文献1)。
図5において、光送信器100の半導体レーザ(LD)のような光源101から出力される搬送波光(波長λ)を光変調器102で送信データにより変調し、出力される信号光をカプラ103で複数Nに分割する。N分割された信号光は、マルチコア光ファイバ(MCF)300のそれぞれのコアへ結合させる。各コアを伝搬した信号光は、デジタルコヒーレント受信器200に入力してコヒーレント検波し、ダイバーシティ合成(最大比合成)処理される。ここで、マルチコア光ファイバ300では、各コアを伝搬した信号光間の位相揺らぎが均一であるので、相互位相を揃えることが可能である。
【0006】
このような光ダイバーシティ伝送および最大比合成技術を用いれば、一般には分割前の信号電力によって伝送したSNRまで回復できる。例えば、分割前の信号電力がP0 であるとき、2伝送路に信号電力を分割してP0/2で伝送し、Gaussian白色雑音N1,2 が個々の伝送路で付与され、その後に最大比合成されるダイバーシティ伝送系では、SNR=P0/(N1+N2)を得ることができる。すなわち、3dBの回復が見込める。
【0007】
ただし、最大比合成理論は、線形伝送路であるときに成立する。信号伝搬に際して非線形現象が介在し、雑音が白色雑音としての特性以外の成分を含むとそのままでの適用は困難となり、上記のSNRの達成が困難となる。
【0008】
また、非線形伝送路では、非線形過程で相関雑音成分が発生し、最大比合成後に3dBの回復に到達しないことが知られている。非線形過程で発生した雑音は空間相関を示し、最大比合成条件である雑音は互いに無相関という条件を満足せず、一部相関を有する(非特許文献1)。したがって、2経路で3dBの復元を行うには、図5に示すダイバーシティ伝送システムの構成では不十分であり、新たに位相共役光を用いるダイバーシティ伝送システムが提案されている(非特許文献2)。
【0009】
図6は、位相共役光を用いるダイバーシティ伝送システムの構成例を示す。
図6において、光送信器110の光源111から出力される搬送波光(波長λ)を光変調器112で送信データにより変調し、出力される信号光とポンプ光(波長λp )を位相共役光生成部113に入力する。位相共役光生成部113は、ポンプ光波長λp に対して信号光波長λと対称の波長λ' に位相共役光を発生させる。信号光S(λ)および位相共役光S*(λ')は、光分波器(OBPF)114で分波されてマルチコア光ファイバ300の2つのコアへ結合させる。各コアを伝搬した信号光S(λ)および位相共役光S*(λ')は、デジタルコヒーレント受信器210に入力してコヒーレント検波し、最大比合成処理される。
【0010】
このような位相共役光を用いてダイバーシティ伝送を行うことにより、相関雑音成分を効果的に相殺することが可能になっている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2013-046230号公報
【0012】

【非特許文献1】M. Koga, et al.,"Q-value Improvement by Electrical Maximum Ratio Combining in Optical Diversity Transmission through Multi-core Fiber," OECC/ACOFT 2014
【非特許文献2】M. Koga, et al.,"Optical Diversity Transmission with Signal and its Phase-conjugate Lights through Multi-core Fiber," OFC2015,Th1D.4.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、大容量伝送を行う場合はWDM伝送が有効であるが、WDM伝送では光非線形過程により四光波混合や相互位相変調(XPM)が発生し、干渉性雑音の要因となる。WDM伝送系ではこのような干渉性雑音の影響を抑えるために、搬送波間の位相整合を避ける目的で光ファイバ伝送路の波長分散を大きくする方法がとられている。しかし、位相共役光を用いる光ダイバーシティ伝送装置の構成によりWDM伝送を行う場合に、受信側で一括した波長分散補償が必要になるが、XPMに起因する位相雑音の相殺効果が得られないことがあった。したがって、WDM伝送において干渉性雑音の影響を抑える効果的な方法が必要になっている。
【0014】
本発明は、マルチコア光ファイバを用いて光ダイバーシティ伝送および最大比合成を行うWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、光非線形過程によって発生する雑音およびSNR低下を抑制することができるWDMダイバーシティ伝送システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、光送信器と光受信器との間で、複数の光ファイバ伝送路を介してWDM光をダイバーシティ伝送し、光受信器で最大比合成するWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、光送信器は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した複数の波長の信号光を波長多重したWDM光と、各波長の信号光の位相共役光を波長多重した位相共役WDM光とを生成し、複数の光ファイバ伝送路の各光ファイバ伝送路へそれぞれ送出するWDM光・位相共役WDM光送信器であり、光受信器は、複数の光ファイバ伝送路を介して伝送されたWDM光および位相共役WDM光を入力し、ダイバーシティ伝送した各波長の信号光を最大光合成受信する構成であり、複数の光ファイバ伝送路は、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた光ファイバ伝送路を用いて構成される。
【0016】
第1の発明のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、WDM光・位相共役WDM光送信器は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した信号光を合波してWDM光として出力するWDM光生成部と、WDM光と、所定の波長のポンプ光を入力し、WDM光の各波長と対称の波長に位相共役WDM光を発生させる位相共役光生成部と、WDM光と位相共役WDM光を複数の光ファイバ伝送路の異なる光ファイバ伝送路に結合する手段とを備える。
【0017】
第1の発明のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、位相共役光生成部は、4光波混合光発生過程によって位相共役WDM光を発生させる高非線形媒質を用いた光回路である。
【0018】
第1の発明のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、WDM光・位相共役WDM光送信器は、複数の波長の搬送波光の直交位相成分をそれぞれ送信データで変調した信号光を出力する第1の光変調器と、複数の波長の搬送波光をそれぞれ入力し、虚軸搬送波成分に対して符号論理反転した送信データで変調して位相共役光を出力する第2の光変調器と、第1の光変調器から出力される各波長の信号光を合波してWDM光を生成し、第2の光変調器から出力される各波長の位相共役光を合波して位相共役WDM光を生成し、それぞれ複数の光ファイバ伝送路の異なる光ファイバ伝送路に結合する手段とを備える。
【0019】
第1の発明のWDMダイバーシティ伝送システムにおいて、複数の光ファイバ伝送路は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ伝送路であり、複数のコアでWDM光および位相共役WDM光をそれぞれ伝送する構成である。
【0020】
第2の発明は、光送信器と光受信器との間で、複数の光ファイバ伝送路を介してWDM光をダイバーシティ伝送し、光受信器で最大比合成するWDMダイバーシティ伝送方法において、複数の光ファイバ伝送路は、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた光ファイバ伝送路を用い、光送信器は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した複数の波長の信号光を波長多重したWDM光と、各波長の信号光の位相共役光を波長多重した位相共役WDM光とを生成し、複数の光ファイバ伝送路の各光ファイバ伝送路へそれぞれ送出し、光受信器は、複数の光ファイバ伝送路を介して伝送されたWDM光および位相共役WDM光を入力し、ダイバーシティ伝送した各波長の信号光を最大光合成受信する。
【0021】
第2の発明のWDMダイバーシティ伝送方法において、複数の光ファイバ伝送路は、複数のコアを有するマルチコア光ファイバ伝送路であり、複数のコアでWDM光および位相共役WDM光をそれぞれ伝送する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、WDM光と位相共役WDM光を空間的な複数の光ファイバ伝送路を用いてダイバーシティ伝送する際に、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた光ファイバ伝送路を用いることにより、XPMに起因する位相雑音に対して一定の相殺効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のWDMダイバーシティ伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】WDM光・位相共役WDM光送信器10の構成例1を示す図である。
【図3】WDM光・位相共役WDM光送信器10の構成例2を示す図である。
【図4】本発明のWDMダイバーシティ伝送システムの効果を示す図である。
【図5】従来のダイバーシティ伝送システムの構成例を示す図である。
【図6】位相共役光を用いた従来のダイバーシティ伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明のWDMダイバーシティ伝送システムの構成例を示す。
図1において、WDMダイバーシティ伝送システムは、WDM光・位相共役WDM光送信器10とデジタルコヒーレント受信器20が、MCF・分散補償部30-1~30-mを介して接続される構成である。ここで、MCF・分散補償部30-1~30-mは、波長分散値(CD)が後述する所定値前後のマルチコア光ファイバ伝送路(MCF)を用い、中継区間(スパン)ごとに分散補償を行う構成を想定しているが、分散補償を行う構成は必ずしも必須ではない。

【0025】
WDM光・位相共役WDM光送信器10は、複数の波長の搬送波光をそれぞれ送信データで変調した複数の波長の信号光を波長多重したWDM光と、各波長の信号光の位相共役光を波長多重した位相共役WDM光とを生成し、MCF・分散補償部30-1の複数のコアへそれぞれ結合する構成である。

【0026】
デジタルコヒーレント受信器20は、MCF・分散補償部30-1~30-mの複数のコアを介して伝送されたWDM光および位相共役WDM光を入力し、ダイバーシティ伝送した各波長の信号光を最大光合成受信する構成である。

【0027】
従来のWDM伝送系では、干渉性雑音の影響を抑えるためにCDが大きな光ファイバ伝送路(例えば、20.5ps/nm/km)が用いられてきた。しかし、CDが大きくなると、XPMに起因する位相雑音成分が強度雑音成分に変換され、位相共役光を用いて最大比合成したときの相殺効果を小さくすることがわかってきた。また、分散補償量も大きくなる。一方、CDが小さすぎると、XPMに比べて4光波混合光の発生による干渉性強度雑音が顕在化し、位相共役光による相殺効果が得にくい。本発明では、このようなトレードオフの関係に基づき、マルチコア光ファイバ伝送路のCDには大きすぎず小さすぎず、位相共役光による相殺効果が大きく得られる所定値(例えば、6ps/nm/km付近)が存在することに着目した。

【0028】
一般に、WDM長距離伝送路では、光増幅部によるWDM一括中継伝送によって再生中継間隔の長距離化を図ってきた。また、CDはXPMや4光波混合光の影響を抑えるために、通常のシングルモードファイバが示す16ps/nm/kmを超えるような大きな値が用いられてきた。このような大きなCDに対して、デジタルコヒーレント伝送技術の出現までは、中継ごとに分散補償デバイスによるアナログ補償が行われてきた。一方、デジタルコヒーレント伝送技術の出現以降はDSPによる演算補償が可能となり、分散補償デバイスが不要になった反面、DSPによる処理量が大きくなり、処理負荷の軽減が解決すべき1つの課題になっていた。本実施例では、中継間隔(スパン)ごとに分散補償を行う構成とすることにより、CDを小さく抑えることができるので、分散補償ファイバの長さも長くならず、デジタルコヒーレント受信器のDSPにおける分散補償演算量を極めて小さくすることができる。

【0029】
このように、本発明は、波長分散値が4光波混合光による干渉性高度雑音の影響が顕在化しない程度に抑えられた(例えば、6ps/nm/km前後)のマルチコア光ファイバ伝送路を用いるとともに、スパンごとに分散補償を行うことが特徴であれる。これにより、従来のWDM伝送系に対して約1/4まで波長分散値を小さくできた上で、最大比合成によってQ値は4dB以上の回復を達成できる。すなわち、位相共役WDM光を用いた最大比合成処理おいて、XPMに伴う位相雑音の相殺効果を飛躍的に高めることができる。

【0030】
なお、図1ではWDM光および位相共役WDM光をマルチコア光ファイバの2つのコアで伝送してダイバーシティ合成する構成を示すが、それぞれ2以上のコア(合計4以上のコア)で伝送する構成とすることによりダイバーシティ合成効果を高めることができる。さらに、WDM光および位相共役WDM光のそれぞれについて、複数のコアを用いて偏波多重伝送する構成とすることにより、さらにダイバーシティ合成効果を高めることができる。また、マルチコア光ファイバ伝送路に代えて複芯光ファイバケーブルを用いて構成することも可能である。

【0031】
図2は、WDM光・位相共役WDM光送信器10の構成例1を示す。
図2において、構成例1のWDM光・位相共役WDM光送信器10は、波長λ1 の光源11-1~波長λn の光源11-nと、光変調器12-1~12-nと、光合波器(AWG)13と、4光波混合光発生過程によって位相共役WDM光を発生させる高非線形媒質(HNLF)を用いた位相共役光生成部14と、光分波器(OBPF)15により構成される。nは2以上の整数である。

【0032】
光変調器12-1は、光源11-1から出力される波長λ1 の搬送波光を送信データ1で変調して出力する。同様に、光変調器12-nは、光源11-nから出力される波長λn の搬送波光を送信データnで変調して出力する。各光変調器12-1~12-nから出力される波長λ1 ~λn の信号光は、光合波器13で合波してWDM光として位相共役光生成部14に入力する。位相共役光生成部14は、波長λp のポンプ光を入力し、波長λp に対してWDM光波長λ1 ~λn と対称の波長λ1'~λn'に位相共役WDM光を発生させる。WDM光S(λ1~λn)および位相共役WDM光S*(λ1'~λn') は、光分波器15で分波されてMCF・分散補償部30-1の2つのコアへ結合する。

【0033】
図3は、WDM光・位相共役WDM光送信器10の構成例2を示す。
図3において、構成例2のWDM光・位相共役WDM光送信器10は、波長λ1 の光源11-1~波長λn の光源11-nと、カプラ16-1~16-nと、第1の光変調器12-11~12-n1と、第2の光変調器12-12~12-n2と、光合波器(AWG)17-1,17-2により構成される。nは2以上の整数である。

【0034】
光源11-1から出力される波長λ1 の搬送波光は、カプラ16-1で2分岐してそれぞれ第1の光変調器12-11および第2の光変調器12-12に入力する。第1の光変調器12-11および第2の光変調器12-12は、送信データ1(IQ)およびQ成分の符号を反転させた送信データ1(I)で波長λ1 の搬送波光をそれぞれ直交位相変調し、信号光S1(λ1)および位相共役光S1*(λ1) を出力する。なお、直交位相変調された信号光と位相共役光は、Q軸方向の位相の符号が反転した関係にあるので、第1の光変調器12-11で信号光におけるI,Q軸方向の変調を正論理で行ったとすると、第2の光変調器12-12でQ軸方向に関して負論理で変調すれば位相共役光が生成されることになる。同様に、第1の光変調器12-n1および第2の光変調器12-n2は、送信データn(IQ)およびQ成分の符号を反転させた送信データn(I)で波長λn の搬送波光をそれぞれ変調し、信号光Sn(λn)および位相共役光Sn*(λn) を出力する。

【0035】
第1の光変調器12-11~12-n1から出力される信号光S1(λ1)~Sn(λn)は、光合波器17-1で合波してWDM光S(λ1~λn)としてMCF・分散補償部30-1の一方のコアへ結合する。第2の光変調器12-12~12-n2から出力される位相共役光S1*(λ1) ~Sn*(λn) は、光合波器17-2で合波して位相共役WDM光S*(λ1'~λn') としてMCF・分散補償部30-1の他方のコアへ結合する。

【0036】
図4は、本発明のWDMダイバーシティ伝送システムの効果を示す。
図4において、横軸はファイバ入力光強度(dBm)、縦軸はQ値(dB)である。マルチコア光ファイバ伝送路(MCF)は60km×15スパンとし、波長分散値CDが6ps/nm/km(図中実線)と、20.5ps/nm/km(図中破線)でシミュレーションしたものである。

【0037】
図中のsingleはWDM光を単一コアで伝送したものであり、combine は本発明によりWDM光と位相共役WDM光をダイバーシティ伝送したものであり、それぞれのQ値を左軸で読み取る。また、それぞれのQ値の差分を右軸で読み取る。

【0038】
波長分散値CDが6ps/nm/kmにおいて、WDM光の単一伝送では、ファイバ入力光強度が-5dBm のときにQ値が18.4dBでピークとなる。一方、WDM光と位相共役WDM光をダイバーシティ伝送では、ファイバ入力光強度が0dBm のときにQ値が24dBでピークとなり、WDM光の単一伝送の15dBに比べて9dBの改善になっている。さらに、ファイバ入力光強度が5dBm まで増加しても、本発明のダイバーシティ伝送によって14dBの改善がみられ、しかも波長分散値CDが20.5ps/nm/kmの10dBの改善に比べて6ps/nm/kmの方が良好なことがわかる。

【0039】
このように、本発明のWDMダイバーシティ伝送システムでは、波長分散値が小さいマルチコア光ファイバを用いるとともに、スパンごとに分散補償を行うことにより、光非線形過程によって発生する雑音およびSNR低下を抑制することができ、ファイバ入力光強度に応じて良好なQ値特性が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0040】
10 WDM光・位相共役WDM光送信器
11-1~11-n 光源
12-1~12-n 光変調器
12-11~12-n1 第1の光変調器
12-12~12-n2 第2の光変調器
13 光合波器(AWG)
14 位相共役光生成部(HNLF)
15 光分波器(OBPF)
16-1~16-n カプラ
17-1,17-2 光合波器(AWG)
20 デジタルコヒーレント受信器
30-1~30-m MCF・分散補償部
100 光送信器
200 デジタルコヒーレント受信器
300 マルチコア光ファイバ(MCF)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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