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明細書 :感熱応答性高分子化合物、並びに該化合物を用いた徐放性生体内分解性医用材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-199747 (P2018-199747A)
公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
発明の名称または考案の名称 感熱応答性高分子化合物、並びに該化合物を用いた徐放性生体内分解性医用材料
国際特許分類 C08F 126/02        (2006.01)
A61K  47/32        (2006.01)
A61L  31/04        (2006.01)
A61L  31/14        (2006.01)
FI C08F 126/02
A61K 47/32
A61L 31/04 110
A61L 31/14 500
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-103673 (P2017-103673)
出願日 平成29年5月25日(2017.5.25)
発明者または考案者 【氏名】網代 広治
【氏名】川谷 諒
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C081
4J100
Fターム 4C076AA95
4C076EE02
4C076FF32
4C076FF34
4C081AC16
4C081BA16
4C081BB02
4C081CA061
4C081CB001
4J100AN04P
4J100AN04Q
4J100BA02P
4J100BA04P
4J100BA05P
4J100BA05Q
4J100BA06P
4J100BA08P
4J100BA13P
4J100BA13Q
4J100BA14P
4J100BA14Q
4J100CA04
4J100DA36
4J100DA72
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA51
要約 【課題】相転移温度を制御するために感熱応答性高分子化合物の構造を改変しても、感熱応答性の低下を招かないようにする。
【解決手段】本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部のN-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されて成り、具体的には下記の一般式(1)で表される。
【化1】
JP2018199747A_000015t.gif
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体であって、該重合体又は該共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部のN-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されて成る、感熱応答性高分子化合物。
【請求項2】
N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体であった、該重合体又は該共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部のN-位にオリゴエチレングリコール鎖を介して炭化水素基(アルキル基)が結合して成る、感熱応答性高分子化合物。
【請求項3】
オリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合が50~100%である、請求項1又は2に記載の感熱応答性高分子化合物。
【請求項4】
オリゴエチレングリコール鎖がジエチレングリコール鎖である、請求項1~3のいずれかに記載の感熱応答性高分子化合物。
【請求項5】
以下の一般式(1)で表される、請求項1~4のいずれかに記載の感熱応答性高分子化合物。
【化1】
JP2018199747A_000011t.gif
式中、式中、R1~R6は独立に水素原子又はアルキル基を表し、mは2以上の整数を表す。また、n1、n2は構成単位のモル比を表し、n1:n2=0:100~50:50を満たす。
【請求項6】
以下の一般式(2)で表される、請求項5に記載の感熱応答性高分子化合物。
【化2】
JP2018199747A_000012t.gif

【請求項7】
以下の一般式(3)で表される、請求項5に記載の感熱応答性高分子化合物。
【化3】
JP2018199747A_000013t.gif

【請求項8】
以下の式(4)で表される、請求項5に記載の感熱応答性高分子化合物。
【化4】
JP2018199747A_000014t.gif

【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の感熱応答性高分子化合物を含む徐放性生体分解性医用材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラッグデリバリーシステムの薬物担体等に用いられる高分子材料として有用な新規な感熱応答性高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性(親水性)高分子化合物の中には、温度によって水分子と高分子鎖との相互作用が可逆的に変化するものがある。その一つに、水溶液中の高分子化合物が所定の温度以上になると不溶化して析出し、所定の温度以下になると再び溶解する高分子化合物がある。このような性質は感熱応答性(又は親水性-疎水性熱可逆性)と呼ばれ、薬物送達システム(DDS)の薬物担体や生体内管状組織の閉塞防止剤等の医用材料、温度センサ材料(特許文献4)等、様々な分野での応用が期待されている(特許文献1~4)。
【0003】
感熱応答性を示す高分子化合物の一つにN-ビニルアミド系ポリマーがある。N-ビニルアミド系ポリマーは側鎖が加水分解しても有毒な低分子アミンを放出せず、環境適合性や生体適合性に優れることから、特に環境分野や医療分野で利用される高分子材料の開発が進められている。
【0004】
感熱応答性高分子化合物が水溶液中で不溶化する温度、或いは不溶化したものが再び溶解する温度は相転移温度と呼ばれる。高分子材料の利用目的によって該高分子材料に用いられる高分子化合物に要求される相転移温度が異なるため、感熱応答性高分子化合物のモノマーに疎水性モノマーを共重合したり、感熱応答性高分子化合物の側鎖に疎水性基を導入したりすることにより相転移温度を制御することが行われている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-356088号公報
【特許文献2】特開2002-308946号公報
【特許文献3】特開平11-322941号公報
【特許文献4】特開平10-310614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、N-ビニルアミド系ポリマーの相転移温度の制御は、該N-ビニルアミド系ポリマーを構成するモノマーの疎水性側鎖を親水性のカルボニル基に変化させ、これを重合したり共重合したりすることにより行われてきた。しかしながら、N-ビニルアミド系ポリマーの感熱応答性はアミド構造によるところ、側鎖をカルボニル基に変化させたモノマーを重合すると感熱応答性の発現に必要なアミド構造が形成されなくなるため、感熱応答性の低下を招く。つまり、N-ビニルアミド系ポリマーの感熱応答性とモノマーの骨格構造がトレードオフの関係となり、相転移温度を制御するために導入可能なモノマーの種類に限界があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、相転移温度を制御するために感熱応答性高分子化合物の構造を改変しても、感熱応答性の低下を招かないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る感熱応答性化合物は、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体であって、該重合体又は該共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部のN-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されて成ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体であって、該重合体又は該共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部のN-位にオリゴエチレングリコール鎖を介してアルキル基が結合して成るものと表現することができる。
【0010】
本発明において、N-位にオリゴエチレングリコール鎖を導入すること、N-位にオリゴエチレングリコール鎖を介して炭化水素基(アルキル基)を結合することとは、いずれも、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体を構成する単量体単位、つまりN-ビニルアミド系モノマーの「=NR」構造が「=NXR」構造(Nは窒素原子、Rはアルキル基、Xはオリゴエチレングリコール鎖を表す。)となることをいう。つまり、本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、「=NXR」構造を有する単量体単位の重合体又は共重合体、及び「=NR」構造を有する単量体単位と「=NXR構造」を有する単量体単位の共重合体を含む。このため、本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、主鎖のアミド構造と、側鎖のオリゴエチレングリコール鎖とを有することになる。
【0011】
オリゴエチレングリコールは単独でも感熱応答性を示すため、本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、主鎖のアミド構造と側鎖のオリゴエチレングリコール鎖という2種類の感熱応答性部位を有する。つまり、相転移温度を制御するためにN-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されたN-ビニルアミドを用いても、アミド構造は維持されるため、感熱応答性が低下することはない。しかも、オリゴエチレングリコール鎖を導入したモノマーと該オリゴエチレングリコール鎖が導入されていないモノマーの割合や、オリゴエチレングリコール鎖の長さ(エチレングリコールの繰り返し数)、N-ビニルアミド系モノマーの種類等のパラメータを種々変更することにより、多様な相転移温度、多様な感熱応答性を有する高分子材料を創製することができる。
【0012】
また、本発明者による実験によると、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体を構成する単量体単位のN-位にオリゴエチレングリコールを導入しても感熱応答性を示さなかった。このことから、オリゴエチレングリコール鎖(つまり、2個以上のオリゴエチレングリコールが連なったもの)を導入することによりN-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体の感熱応答性の獲得は、単量体単位のN-位に導入されたオリゴエチレングリコール鎖の長さに依存する可能性、及び、オリゴエチレングリコール鎖の長さによっては、該オリゴエチレングリコール鎖が導入された単量体単位を一つでも含んでいれば感熱応答性を示す可能性が示唆された。従って、本発明に係る感熱応答性高分子化合物においては、N-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合をRaとすると、Raは0%<Ra≦100%となる。
【0013】
さらに、本発明者による実験によると、オリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合が少ないほど相転移温度が高くなり、多いほど相転移温度が低くなる傾向がある。従って、オリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合を調整することにより、任意の相転移温度の感熱応答性高分子化合物を得ることができる。例えば、水溶液の状態において感熱応答性を示すためには相転移温度が0~100℃の範囲内にある必要がある。このような感熱応答性高分子化合物を得るためには、オリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合を50~100%にすると良い。要は、目的とする感熱応答性高分子化合物の相転移温度の範囲が決まっている場合、N-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されている単量体単位の含有割合を増減したり、導入するオリゴエチレングリコール鎖の長さを調整したりすることで、感熱応答性高分子化合物の相転移温度を変化させることができる。
【0014】
一般的にはオリゴマーは単量体が10~100個程度結合した重合体をいうが、本発明においては、単量体が2個結合したダイマー(二量体)、3個結合したトライマー(三量体)等、単量体が2~9個結合したものも含む。つまり、本発明において、オリゴエチレングリコール鎖とは、エチレングリコールが2~100個程度結合した重合体であって、一方の末端にN-ビニルアミド系化合物のN-位に結合する結合端を有し、他方の末端にN-ビニルアミド系化合物のN-位に元々結合していた水素原子又はアルキル基に結合する結合端を有する、直鎖状重合体をいう。
【0015】
本発明に係る感熱応答性高分子化合物の具体的な構成は以下の通りである。
(A)以下の一般式(1)で表される感熱応答性高分子化合物。
【化1】
JP2018199747A_000002t.gif
なお、式中、R1~R6は独立に水素原子又はアルキル基を表し、mは2以上の整数を表す。また、n1、n2は構成単位のモル比を表し、n1:n2=0:100~50:50を満たす。
【0016】
(B)以下の一般式(2)で表される感熱応答性高分子化合物。
【化2】
JP2018199747A_000003t.gif

【0017】
(C)以下の一般式(3)で表される感熱応答性高分子化合物。
【化3】
JP2018199747A_000004t.gif

【0018】
(D)以下の式(4)で表される感熱応答性高分子化合物。
【化4】
JP2018199747A_000005t.gif

【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明においては、相転移温度を制御するために感熱応答性高分子化合物の構造を改変しても、感熱応答性の低下を招くことがなく、多様な相移温度を有する感熱応答性高分子化合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る感熱応答性高分子化合物の具体例の構造式。
【図2】昇温時及び降温時における透過率の変化を示す図。
【図3】昇温時及び降温時における吸光度の変化を示す図。
【図4】比較例の高分子化合物の昇温時における透過率の変化を示す図。
【図5】比較例の高分子化合物の構造式。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、N-ビニルアミド系重合体又はN-ビニルアミド系共重合体であって、該重合体又は該共重合体を構成する単量体単位の少なくとも一部はN-位にオリゴエチレングリコール鎖が導入されていることを特徴とする。このことから、本発明に係る感熱応答性高分子化合物に用いられる単量体の少なくとも一部は、下記一般式(5)で表されるような、N-ビニルアミド誘導体となる。なお、一般式(5)中、R1、R2は独立に水素又はアルキル基を表し、特に、R1及びR2の一方がメチル基、他方が水素、或いは両方がメチル基か両方が水素であることが好ましい。
【化5】
JP2018199747A_000006t.gif

【0022】
一般式(5)で表されるN-ビニルアミド誘導体は、以下の反応式(6)により生成される。すなわち、エチレングリコールを2~100個程度重合させてオリゴエチレングリコールを生成し、該オリゴエチレングリコールをN-ビニルアミドのN-位のプロトンと置換することにより、N-ビニルアミド誘導体が生成される。
【化6】
JP2018199747A_000007t.gif

【0023】
本発明の感熱応答性高分子化合物に用いられる単量体の組み合わせには、全ての単量体が上記一般式(5)で表されるN-ビニルアミド誘導体である場合、一部の単量体が上記一般式(5)で表されるN-ビニルアミド誘導体であり、残りの単量体がN-ビニルアミドである場合が含まれる。
N-ビニルアミドとしては、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド等が例示できるが、その中でも特に下記一般式(7)で表されるものが好ましい。
【化7】
JP2018199747A_000008t.gif
なお、式(7)中、R3、R4は独立に水素又はアルキル基を表す。

【0024】
本発明の感熱応答性高分子化合物の単量体として用いるN-ビニルアミド誘導体は1種類に限らず、オリゴエチレングリコール鎖の長さやR1、R2の組み合わせが異なる複数種のN-ビニルアミド誘導体を用いても良い。同様に、N-ビニルアミドについても、R1、R2の組み合わせが異なる複数種のN-ビニルアミドを用いることができる。

【0025】
本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、以下のような方法により製造することができる。すなわち、前記一般式(5)のN-ビニルアミド誘導体を単量体として、あるいは、前記一般式(5)のN-ビニルアミド誘導体と一般式(7)のN-ビニルアミドを単量体として、重合開始剤の存在下において重合反応を行う。重合反応は、生成される重合体又は共重合体が実質的に溶解しないか、もしくは生成される重合体又は共重合体を溶解する有機溶媒中、有機溶媒含有水溶液中、または水溶液中で行うことができる。

【0026】
使用される有機溶媒の例としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0027】
また、使用される重合開始剤としては、例えばナトリウム、カリウムおよびアンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ラウロイル、過酸化カプロイル、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過酸化ペラルゴニル、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーフタレート、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ナトリウムパーアセテート、ナトリウムパーカーボネート等の過酸素化合物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′
-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド] 、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-カルボキシエチル)アミジノ]プロパン}、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレイン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)等のアゾ化合物等、重合反応で一般的に使用されるものが挙げられるが、特に有機溶媒に溶解可能なアゾビスイソブチロニトリル、水に溶解可能な2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等を使用することが好ましい。

【0028】
N-ビニルアミド誘導体の重合反応、あるいはN-ビニルアミド誘導体とN-ビニルアミドの重合反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。また、重合反応の温度は0~100℃が好ましい。反応温度を調整することにより、生成される重合体や共重合体の質量平均分子量の大きさを或る程度制御することができる。なお、目的とする感熱応答性高分子化合物の質量平均分子量の範囲に調整するために、分子量調整剤を使用しても良い。

【0029】
本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、N-ビニルアミド系ポリマーの基本骨格を維持しつつ、側鎖にオリゴエチレングリコール鎖を導入したものである。N-ビニルアミド系ポリマー及びオリゴエチレングリコール鎖は、いずれも毒性が低く生体適合性、環境適合性に優れるため、生体内で使用される医療材料、例えばDDSを目的とする薬物担体、或いは、血管や尿管の生体内管状組織の閉塞防止剤といった医療材料として有用である。ただし、本発明に係る感熱応答性高分子化合物の利用分野は上述した例に限らず、様々な分野での利用が可能である。

【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
1.RK2-45
タンクに単量体としてN-ビニルホルムアミド(NVF):1.0mmol(0.071g)とジエチレングリコール鎖導入N-ビニルホルムアミド(EOE2ONVF):4.0mmol(0.75g)、開始剤として2,2'アゾイソブチロニトリル(AIBN):0.13mmol(0.022g)、有機溶媒としてトルエン:2.5mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した共重合体をメタノール:10mLに溶解し、ジエチルエーテル:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により共重合体を回収した。共重合体の重量は0.54g、回収率は67%であった。
【実施例】
【0032】
2.RK2-46
タンクにモノマーとしてN-メチル-N-ビニルアセトアミド(MNVA):1.0mmol(0.099g)とEOE2ONVF:4.0mmol(0.78g)、開始剤としてAIBN:0.13mmol(0.022g)、有機溶媒としてトルエン:2.5mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した共重合体をメタノール:10mLに溶解し、ジエチルエーテル/ヘキサンの1:1混合液:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により共重合体を回収した。共重合体の重量は0.18g、回収率は20%であった。
【実施例】
【0033】
3.RK2-47
タンクにモノマーとしてEOE2ONVF:2.0mmol(0.39g)、開始剤としてAIBN:0.13mmol(0.022g)、有機溶媒としてトルエン:4.0mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した共重合体をメタノール:10mLに溶解し、ジエチルエーテル:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により重合体を回収した。重合体の重量は0.17g、回収率は44%であった。
【実施例】
【0034】
4.RK2-63
タンクにモノマーとしてNVF:2.4mmol(0.17g)とEOE2ONVF:9.6mmol(1.8g)、開始剤としAIBN:0.27mmol(0.046g)、有機溶媒としてトルエン:2.4mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した共重合体をメタノール:10mLに溶解し、ジエチルエーテル/ヘキサンの1:1混合液:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により共重合体を回収した。共重合体の重量は1.05g、回収率は53%であった。
【実施例】
【0035】
5.RK2-64
タンクにモノマーとしてMNVA:3.3mmol(0.33g)とEOE2ONVF:13.2mmol(2.5g)、開始剤としてAIBN:0.45mmol(0.079g)、有機溶媒としてトルエン:3.6mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した共重合体をアセトン:10mLに溶解し、ヘキサン:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により共重合体を回収した。共重合体の重量は1.67g、回収率は54%であった。
【実施例】
【0036】
6.RK2-65
タンクにモノマーとしてEOE2ONVF:8.0mmol(1.5g)、開始剤としてAIBN:0.2mmol(0.035g)、有機溶媒としてトルエン:1.6mLをそれぞれ入れ、2分間、窒素ガスでバブリングした後、タンクを60℃のオイルバスに24時間漬けて重合を行った。その後、析出した重合体をメタノール:10mLに溶解し、ジエチルエーテル:500mLで再沈殿させた後、遠心分離により重合体を回収した。重合体の重量は0.28g、回収率は18%であった。
【実施例】
【0037】
上記実施例に係る重合体又は共重合体の製造に用いた単量体及びそのモル比、回収率を表1にまとめて示す。表1には、上記実施例に係る重合体又は共重合体のモル濃度、数平均分子量(Mn)、分子量分布(PDI)を併せて示す。数平均分子量及び分子量分布は、ポリスチレン(PSt)を標準試料とするサイズ排除クロマトグラフィーを用いて求めた。また、上記実施例に係る共重合体及び重合体の構造をH NMRで確認したところ、図1に示す結果が得られた。
【実施例】
【0038】
【表1】
JP2018199747A_000009t.gif
【実施例】
【0039】
次に、上記実施例に係る共重合体及び重合体の下限臨界溶液温度(LCST:Lower Critical Solution Temperature))を次の方法で求めた。
まず、共重合体/重合体を水に溶解して0.2重量%溶液を調製し、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製:UV-2600)を用いて、波長500nmで透過率又は吸光度を測定した。試料を1℃/1.5minで昇温及び降温したときの透過率又は吸光度の変化を調べ、その結果から、LCSTを求めた。
【実施例】
【0040】
RK2-45~47では、水溶液を40℃から95℃まで昇温したとき、及び95℃から40℃まで降温したときの透過率の変化を調べ、それぞれ透過率が50%になるときの温度をLCSTとした。図2に透過率の変化を示す。図2中、試料番号の末尾に「C」がついているものは降温時、「H」がついているものは昇温時の透過率の変化を示している。
【実施例】
【0041】
図2から分かるように、RK2-45~47では、昇温時における透過率の変化曲線(試料中の共重合体又は重合体が固体から液体へ相転移を開始してからほぼ全ての共重合体又は重合体が液体に相転移するまでの透過率の変化曲線)に比べて、降温時における透過率の変化曲線(つまり、試料中の共重合体又は重合体が液体から固体から液体へ相転移を開始してからほぼ全ての共重合体又は重合体が固体に相転移するまでの透過率の変化曲線)は、概ね高温側(右側)にずれていた。また、図2から、RK2-45~47の昇温時及び降温時のLCSTは、それぞれ73℃及び70℃、80℃及び72℃、60℃及び58℃であった。
【実施例】
【0042】
一方、RK2-63~65では、試料を70℃から95℃まで昇温したとき、及び95℃から70℃まで高温したときの吸光度の変化を調べ、それぞれ吸光度の最高値と最低値の中間値における温度をLCSTとした。図3に吸光度の変化を示す。図3中、試料番号の末尾に「C」がついているものは降温時、「H」がついているものは昇温時の吸光度の変化を示している。
【実施例】
【0043】
図3から分かるように、RK2-63、64では、昇温時における吸光度の変化曲線(つまり、試料中の共重合体又は重合体が固体から液体へ相転移を開始してからほぼ全ての共重合体又は重合体が液体に相転移するまでの吸光度の変化曲線)と、降温時における吸光度の変化曲線(つまり、試料中の共重合体又は重合体が液体から固体から液体へ相転移を開始してからほぼ全ての共重合体又は重合体が固体に相転移するまでの吸光度の変化曲線)は、ほぼ一致したが、RK2-65では降温時の方が昇温時よりも変化が緩やかであった。また、RK2-63~65の昇温時及び降温時のLCSTは、それぞれ87℃及び86℃、91℃及び91℃、78℃及び79℃であった。
【実施例】
【0044】
表2に、上記実施例のLCSTをまとめて示す。
【表2】
JP2018199747A_000010t.gif
【実施例】
【0045】
N-ビニルホルムアルデヒドとN-メチル-N-ビニルアセトアミドの共重合体、或いはN-ビニルホルムアルデヒドの重合体は感熱応答性を示さないのに対して、上記実施例に係る共重合体及び重合体(RK2-45~47及びRK2-63~65のLCST)は、いずれもLCSTを有したことから、前記共重合体又は前記重合体の少なくとも一部の単量体単位のN-位にジエチレングリコール鎖を導入することにより、感熱応答性が得られることが示された。また、上記実施例に係る共重合体及び重合体のLCSTの値が異なることから、共重合体又は重合体全体の単量体単位に占める、N-位にジエチレングリコール鎖が導入された単量体単位の割合や単量体単位の組み合わせの違いによりLCSTを制御できることが示された。特に、ジエチレングリコール鎖が導入された単量体と該ジエチレングリコール鎖が導入されていない単量体の共重合体(RK2-45、46、63、64)に比べて、ジエチレングリコール鎖が導入された単量体のみの重合体(RK2-47、65)のLCSTは低かったことから、高分子化合物全体に占めるジエチレングリコール鎖が導入された単量体の割合に応じてLCSTを高くしたり、低くしたりすることが可能であることが推測された。
【実施例】
【0046】
[比較例]
なお、図4は、図5に示す構造式の高分子化合物の昇温時の透過率の変化を示す。図5に示す高分子化合物は、いずれも、N-ビニルホルムアミドのN-位にエチレングリコール鎖が1個導入されて成る単量体の重合体又は共重合体である。
図5から明らかなように、図5に示す高分子化合物N-位に1個のエチレングリコールを導入した高分子化合物はいずれも0~100℃の温度範囲では感熱応答性を示さなかった。このことから、N-ビニルアミド系高分子化合物の感熱応答性を発現させるためには、2個以上のエチレングリコールが結合したオリゴエチレングリコール鎖が必要であることが推測された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る感熱応答性高分子化合物は、ドラッグデリバリーシステムに用いられる徐放性生体内分解吸収性医用材料として用いることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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