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明細書 :低域通過フィルタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-184178 (P2017-184178A)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 低域通過フィルタ
国際特許分類 H01P   1/203       (2006.01)
FI H01P 1/203
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-072949 (P2016-072949)
出願日 平成28年3月31日(2016.3.31)
発明者または考案者 【氏名】石崎 俊雄
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121337、【弁理士】、【氏名又は名称】藤河 恒生
審査請求 未請求
テーマコード 5J006
Fターム 5J006HB01
5J006JA03
5J006JA11
5J006LA03
5J006LA21
5J006NA08
5J006PA01
要約 【課題】低損失であって急峻なフィルタ特性を実現することができ、しかも小型化し易い低域通過フィルタを提供する。
【解決手段】この低域通過フィルタ1は、内部に中空部2aを有する金属筐体2と、中空部2aに保持される誘電体基板3と、を具備し、誘電体基板3の一方側の面3aに、サスペンデッドラインからなる主線路31と、主線路31から分岐するように接続されたサスペンデッドラインからなる分岐線路32A~32Fと、平行平板コンデンサの一方の電極を形成し分岐線路32A~32Fに接続された第1電極パターン33A~33Fと、を有し、誘電体基板3の他方側の面3bに、金属筐体2に接続されるものであって、前記平行平板コンデンサの他方の電極を形成する第2電極パターン34A~34Fを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に中空部を有する金属筐体と、
前記中空部に保持される誘電体基板と、を具備し、
前記誘電体基板の一方側の面に、
サスペンデッドラインからなる主線路と、
該主線路から分岐するように接続されたサスペンデッドラインからなる分岐線路と、
平行平板コンデンサの一方の電極を形成し前記該分岐線路に接続された第1電極パターンと、を有し、
前記誘電体基板の他方側の面に、
前記金属筐体に接続されるものであって、前記平行平板コンデンサの他方の電極を形成する第2電極パターンを有することを特徴とする低域通過フィルタ。
【請求項2】
前記主線路の左右両側に前記分岐線路、前記第1電極パターン、前記第2電極パターンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の低域通過フィルタ。
【請求項3】
前記分岐線路と前記平行平板コンデンサを直列共振させることによって減衰極を有するフィルタ特性としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の低域通過フィルタ。
【請求項4】
前記誘電体基板の外縁の少なくとも一部に配置される金属板を更に具備し、
前記第2電極パターンは、前記金属板を介して前記金属筐体に接続されることを特徴とする請求項1に記載の低域通過フィルタ。
【請求項5】
前記誘電体基板の外縁の少なくとも2辺に配置される金属板を更に具備し、
前記第2電極パターンは、前記金属板を介して前記金属筐体に接続されることを特徴とする請求項2に記載の低域通過フィルタ。
【請求項6】
前記金属板は、リードフレームとなっており、前記第2電極パターンの各々に接続されて前記誘電体基板が実装されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の低域通過フィルタ。
【請求項7】
前記金属板は、前記主線路の入出力端部の位置において前記誘電体基板の厚さ方向に折り曲げられていることを特徴とする請求項6に記載の低域通過フィルタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話基地局の無線通信装置などに用いられるマイクロ波帯の低域通過フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話基地局の無線通信装置では、マイクロ波帯の帯域通過フィルタが使用されている。帯域通過フィルタは、一般的に共振器を用いているので、本来通過させたい帯域よりも高い周波数の高調波スプリアス帯域をも通過させてしまう。そのため、高調波スプリアス帯域を抑制するように、低域通過フィルタが併用されることが多い。低損失な低域通過フィルタとして、従来より、同軸型の低域通過フィルタが多用されている。同軸型の低域通過フィルタは、金属筐体とその内部の中空部に保持された中心導体とを具備し、中心導体は、交互に連続して配置された大径の低インピーダンス線路と小径の高インピーダンス線路とにより構成される。
【0003】
近年、携帯電話基地局の無線通信装置の小型化の必要性から、帯域通過フィルタは、様々な技術開発により小型化が着実になされてきた。しかし、併用する低域通過フィルタの小型化は、それほど進んでおらず、そのため、低域通過フィルタのサイズ、取り付け位置やレイアウトの自由度などによる制約が、無線通信装置全体の小型化を阻む要因になっているのが現状である。
【0004】
特許文献1に開示される低域通過フィルタは、同軸型の低域通過フィルタの一つである。この低域通過フィルタでは、低インピーダンス線路の半径方向の先端部の領域がLC回路となるよう高インピーダンス線路と平行になるように折り曲げられた折り曲げ部が形成されている。このLC回路により、減衰極を有するようにしてフィルタ特性を急峻にし、低域通過フィルタの段数を少なくすることができる、としている。
【0005】
特許文献2に開示される低域通過フィルタは、平面型の低域通過フィルタの一つであり、金属筐体とその内部の中空部に保持される誘電体基板とを具備し、誘電体基板は、交互に連続して配置されたサスペンデッドラインからなる高インピーダンス線路とマイクロストリップラインからなる低インピーダンス線路とを有する構成である。なお、サスペンデッドラインは、誘電体基板の一つの面に設けられた金属層の線路であって、その裏側の面には接地用の金属層が設けられていない構造であり、金属筐体が接地用の電極として機能する。マイクロストリップラインは、誘電体基板の一つ面に設けられた金属層の線路であって、その裏側の面に接地用の金属層が設けられている構造である。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-142394号公報
【特許文献2】特開平10-276006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1などに開示の同軸型の低域通過フィルタは、現状から更に小型化するには限界がある。また、特許文献2に開示の平面型の低域通過フィルタは、同軸型の低域通過フィルタに比べて小型化が可能と考えられるが、携帯電話基地局の無線通信装置で使用するには、更なる低損失及び急峻なフィルタ特性の実現が必要である。
【0008】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、低損失であって急峻なフィルタ特性を実現することができ、しかも小型化し易い低域通過フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の低域通過フィルタは、内部に中空部を有する金属筐体と、前記中空部に保持される誘電体基板と、を具備し、前記誘電体基板の一方側の面に、サスペンデッドラインからなる主線路と、該主線路から分岐するように接続されたサスペンデッドラインからなる分岐線路と、平行平板コンデンサの一方の電極を形成し前記該分岐線路に接続された第1電極パターンと、を有し、前記誘電体基板の他方側の面に、前記金属筐体に接続されるものであって、前記平行平板コンデンサの他方の電極を形成する第2電極パターンを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の低域通過フィルタは、請求項1に記載の低域通過フィルタにおいて、前記主線路の左右両側に前記分岐線路、前記第1電極パターン、前記第2電極パターンが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の低域通過フィルタは、請求項1又は2に記載の低域通過フィルタにおいて、前記分岐線路と前記平行平板コンデンサを直列共振させることによって減衰極を有するフィルタ特性としたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の低域通過フィルタは、請求項1に記載の低域通過フィルタにおいて、前記誘電体基板の外縁の少なくとも一部に配置される金属板を更に具備し、前記第2電極パターンは、前記金属板を介して前記金属筐体に接続されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の低域通過フィルタは、請求項2に記載の低域通過フィルタにおいて、前記誘電体基板の外縁の少なくとも2辺に配置される金属板を更に具備し、前記第2電極パターンは、前記金属板を介して前記金属筐体に接続されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の低域通過フィルタは、請求項4又は5に記載の低域通過フィルタにおいて、前記金属板は、リードフレームとなっており、前記第2電極パターンの各々に接続されて前記誘電体基板が実装されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の低域通過フィルタは、請求項6に記載の低域通過フィルタにおいて、前記金属板は、前記主線路の入出力端部の位置において前記誘電体基板の厚さ方向に折り曲げられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低損失であって急峻なフィルタ特性を実現することができ、しかも小型化し易い低域通過フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る低域通過フィルタの平面図である。
【図2】同上の低域通過フィルタの底面図である。
【図3】同上の低域通過フィルタのA-Aで示す線で切断した断面図である。
【図4】同上の低域通過フィルタのレイアウトの変更の概念(概略)を示す平面図である。
【図5】同上の低域通過フィルタのレイアウトの変更の概念(概略)を示す底面図である。
【図6】同上の低域通過フィルタにおいて金属板がリードフレームの場合を示すものであって、(a)が平面図、(b)が底面図である。
【図7】同上の低域通過フィルタにおいて金属板がリードフレームの場合の折り曲げ部分の状態を示す模式図である。
【図8】同上の低域通過フィルタの等価回路図である。
【図9】従来技術の同軸型の低域通過フィルタの平面図である。
【図10】図9で示した従来技術の低域通過フィルタの等価回路図である。
【図11】本発明の実施形態に係る低域通過フィルタと図9で示した従来技術の低域通過フィルタのフィルタ特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る低域通過フィルタ1は、図1及び図2に示すように、金属筐体2と誘電体基板3とを具備する。この低域通過フィルタ1は、平面型の低域通過フィルタの一つである。なお、図1及び図2(及び後述する図9)は、金属筐体2を透視して示している。

【0019】
金属筐体2は、内部に中空部2aを有するものであり、通常、直方体状をなし、そのうちの互いに対向する2面に入出力端子2A、2A’が取り付けられる。金属筐体2は、接地用の電極として機能する。入出力端子2A、2A’は、中心導体2Aaとそれを囲む略円筒状の外部導体2Abを有する同軸コネクタを用いることができる。金属筐体2は、入出力端子2A、2A’の外部導体2Abに接続される(より詳細には取り付け具2Bを介して接続される)。

【0020】
誘電体基板3は、金属筐体2の内部の中空部2aに保持される。具体的には、後述する金属板4を介して金属筐体2に装着するか、四隅などに脚を付けて支えるか、或いは、誘電体基板3の端面の一部を金属筐体2に接着などすることで、保持することができる。

【0021】
誘電体基板3の一方側の面(表面)である第1面3aは、サスペンデッドラインからなる主線路31を有している。主線路31は、直線状に延伸するものであり、その両端の入出力端部31t、31t’が入出力端子2A、2A’の中心導体2Aaにハンダ付け等で接続される。主線路31は、インダクタンス成分を有する素子である。なお、以下、主線路31が延伸する方向をX軸方向、誘電体基板3の第1面3aに平行でX軸方向に直交する方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向に直交する方向(誘電体基板3の厚さ方向)をZ軸方向とする。

【0022】
誘電体基板3の第1面3aは、また、主線路31から分岐するように接続されたサスペンデッドラインからなる分岐線路32A、32B、32C、32D、32E、32Fを有している。分岐線路の個数は、低域通過フィルタ1のフィルタ特性によって変わり得るが、通常、複数個(図1では6個)である。分岐線路32A~32Fはそれぞれ、インダクタンス成分を有する素子である。

【0023】
主線路31の異なる位置に接続される分岐線路(例えば、分岐線路32A、32C)は、通常、互いにその長さ、幅、又は形状が異なる。それにより、インダクタンス値が異なる。図1に示す分岐線路32Aは、小幅部分と中幅部分とが直列接続されたものとなっており、分岐線路32Cは、小幅部分のみからなっている。

【0024】
誘電体基板3の第1面3aは、また、平行平板コンデンサの一方の電極を形成し、分岐線路32A、32B、32C、32D、32E、32Fのそれぞれに接続された平板状の第1電極パターン33A、33B、33C、33D、33E、33Fを有している。

【0025】
誘電体基板3の他方側の面(裏面)である第2面3bは、図2に示すように、平行平板コンデンサの他方の電極を形成する平板状の第2電極パターン34A、34B、34C、34D、34E、34Fを有している。すなわち、第1面3aの第1電極パターン33A、33B、33C、33D、33E、33Fと第2面3bの第2電極パターン34A、34B、34C、34D、34E、34Fと誘電体基板3とにより、それぞれ、平行平板コンデンサを形成する。例えば、図3に示すように、誘電体基板3の第1面3aに設けられた第1電極パターン33Cと、誘電体基板3の第2面3bに設けられた第2電極パターン34Cとは、誘電体基板3を挟んで対向している。同様に、第1電極パターン33Dと第2電極パターン34Dとは、誘電体基板3を挟んで対向している。なお、第2電極パターン34C、34D(及び34A、34B、34E、34F)は、誘電体基板3の外縁側に、後述する金属板4と重ねてハンダ付け等の接続をするためのパターンを連続して設けることができる(図3参照)。

【0026】
また、分岐線路32A~32F、第1電極パターン33A~33F及び第2電極パターン34A~34Fは、図1及び図2に示すように、主線路31の左右両側(主線路31の延伸方向に対し直交する両方向、図においてはY軸正負両方向)に設けることができる。そうすると、例えば、2個の分岐線路32A、32B、第1電極パターン33A、33B及び第2電極パターン34A、34Bを主線路31の左右両側に設けて互いに対称的なパターン形状とすることで、等価回路では1個の素子であるものをレイアウトするのに2個に分けて並列配置することが可能である。それにより、所望のインダクタンス値や容量値を実現し易くすることができる。また、後述するように第2電極パターン34A~34Fの各々が金属筐体2(より詳しくは、その側壁)に接続されているので、金属筐体2(特に、その側壁)に流れる電流の密度も小さくなるため、損失を低減できる。勿論、主線路31の片側のみに、図4及び図5に示すように、全ての分岐線路32A’、32C’、32E’、第1電極パターン33A’、33C’、33E’、第2電極パターン34A’、34C’、34E’を設けることも可能である。なお、図4及び図5は、単に、レイアウトの変更の概念(概略)を示すものである。

【0027】
第2電極パターン34A~34Fの各々は、金属筐体2に電気的に接続される。第2電極パターン34A~34Fの各々を金属筐体2に確実に電気的に接続することは、低域通過フィルタ1の特性ばらつきを抑えるために非常に重要である。確実にそれを行いつつ量産性を高める方法としては、別に用意された薄い金属板4を誘電体基板3の外縁の少なくとも一部に配置し、第2電極パターン34A~34Fを、金属板4を介して金属筐体2に接続するのが好ましい。この場合、金属板4を、第2電極パターン34A~34Fの各々に予めハンダなどで接続してから、金属筐体2にネジ止めしたり、又は、挟みこんだり(分割された金属筐体2を用いてそれらの間に挟みこんだり)などして装着する。金属板4における金属筐体2への装着部分は、装着し易いように曲げてもよい。また、分岐線路32A~32F、第1電極パターン33A~33F及び第2電極パターン34A~34Fを上述したように主線路31の左右両側に設けた場合は、金属板4を誘電体基板3の外縁の少なくとも2辺に配置し、第2電極パターン34A~34Fを、金属板4を介して金属筐体2に接続するのが好ましい。

【0028】
更には、金属板4は、リードフレーム(薄板の金属枠)となっており(図6参照)、ベルト状の多連(図では2連)のリードフレームから切断によって切り出される構造とするのが、量産性を高め低コスト化を実現するのに好ましい。この場合、金属板4は、全部つながった多連の状態で、図6に示すように、第2電極版34A~34Fの各々にハンダ付け等で接続して誘電体基板3を実装する。その後、図示の破線部LAで切断して分離し、図示の一点鎖線部LB、LB’で誘電体基板3の厚さ方向(Z軸正方向又はZ軸負方向)に折り曲げて金属筐体2に装着する。一点鎖線部LB、LB’は、主線路31の入出力端部31t、31t’の位置であり、金属板4には切欠き部4aが形成されており、そこだけ金属板4に逃げが設けられている。金属板4に切欠き部4aが形成され、一点鎖線部LB、LB’で誘電体基板3の厚さ方向(Z方向)に折り曲げられることによって、図7に示すように、金属板4と入出力端子2A、2A’の中心導体2Aaとのショートが防がれて、主線路31は、入出力端子2A、2A’の中心導体2Aaに接続できることになる。なお、図6に示す金属板4は、挟みこみ(図における上下の部分の挟みこみ)により金属筐体2へ装着するものであり、また、折り曲げられた部分がハンダ付け又はネジ止めなどで金属筐体2へ接続される。また、図7は、Z軸負方向に折り曲げられた場合の模式図である。

【0029】
図8に、低域通過フィルタ1の等価回路を示す。L11は主線路31における入出力端部31tから分岐線路32A(及び32B)の接続部までの部分のインダクタンス成分、L12は主線路31における分岐線路32A(及び32B)の接続部から分岐線路32C(及び32D)の接続部までの部分のインダクタンス成分、L13は主線路31における分岐線路32C(及び32D)の接続部から分岐線路32E(及び32F)の接続部までの部分のインダクタンス成分、L14は主線路31における分岐線路32E(及び32F)の接続部から入出力端部31t’までの部分のインダクタンス成分からなる。また、L21は分岐線路32Aと分岐線路32Bの合成インダクタンス成分、L22は分岐線路32Cと分岐線路32Dの合成インダクタンス成分、L23は分岐線路32Eと分岐線路32Fの合成インダクタンス成分からなる。また、C11は第1電極パターン33Aと第2電極パターン34Aが形成する平行平板コンデンサと第1電極パターン33Bと第2電極パターン34Bが形成する平行平板コンデンサの合成キャパシタンス成分、C12は第1電極パターン33Cと第2電極パターン34Cが形成する平行平板コンデンサと第1電極パターン33Dと第2電極パターン34Dが形成する平行平板コンデンサの合成キャパシタンス成分、C13は第1電極パターン33Eと第2電極パターン34Eが形成する平行平板コンデンサと第1電極パターン33Fと第2電極パターン34Fが形成する平行平板コンデンサの合成キャパシタンス成分からなる。

【0030】
なお、等価回路においては第1電極パターン33A~33F及び第2電極パターン34A~34Fも有限の大きさを持つため、小さいけれどもインダクタンス成分を有する。このインダクタンス成分は、L21~L23に含まれるようにしている。第1電極パターン33A~33F及び第2電極パターン34A~34Fが有するインダクタンス成分の値は、長方形であるパターンの縦横比を変えることによって制御できる。

【0031】
このような低域通過フィルタ1は、分岐線路と前記平行平板コンデンサ、すなわち、L21とC11、L22とC12、L23とC13をそれぞれ、所定の周波数で直列共振させることができ、それによって、低域通過フィルタ1を、減衰極を有するフィルタ特性、つまり楕円関数特性にすることができる。図示の低域通過フィルタ1は、合計10個の素子が7段の楕円関数特性の低域通過フィルタを構成している。

【0032】
次に、低域通過フィルタ1の具体的な設計を、従来技術の低域通過フィルタ101と比較しながら以下説明する。この低域通過フィルタ101は、携帯電話基地局の無線通信装置で従来から使用されてきた同軸型のものである。

【0033】
低域通過フィルタ1の誘電体基板3は、サイズ((X軸方向のサイズ)×(Y軸方向のサイズ))が15.3mm×7.6mmのArlon社製 Diclad 880(比誘電率2.2、誘電正接0.0009、厚さ0.25mm)を用いた。また、低域通過フィルタ1は、L11が0.982nH、L12が2.50nH、L13が2.35nH14が0.581nH、L21が0.183nH、L22が0.806nH、L23が0.713nH、C11が0.914pF、C12が0.865pF、C13が0.684pFとした。

【0034】
従来技術の低域通過フィルタ101は、図9に示すように、金属筐体102とその内部の中空部102aに保持された中心導体103を具備し、中心導体103は、交互に連続して配置された大径の低インピーダンス線路103a、103c、103e、103g、103iと小径の高インピーダンス線路103b、103d、103f、103hとにより構成されている。金属筐体102の内側面には円筒状のテフロン(登録商標)製の絶縁体が配置されている。金属筐体102は、入出力端子102A、102A’の外部導体102Abに接続され(より詳細には取り付け具102Bを介して接続され)、中心導体103は、その両端103t、103t’が入出力端子102A、102A’の中心導体102Aaに接続されている。

【0035】
図10に、従来技術の低域通過フィルタ101の等価回路を示す。C11’は低インピーダンス線路103aのキャパシタンス成分、C12’は低インピーダンス線路103cのキャパシタンス成分、C13’は低インピーダンス線路103eのキャパシタンス成分、C14’は低インピーダンス線路103gのキャパシタンス成分、C15’は低インピーダンス線路103iのキャパシタンス成分からなる。L11’は主に高インピーダンス線路103bのインダクタンス成分、L12’は主に高インピーダンス線路103dのインダクタンス成分、L13’は主に高インピーダンス線路103fのインダクタンス成分、L14’は主に高インピーダンス線路103hのインダクタンス成分からなる。

【0036】
この従来技術の低域通過フィルタ101は、C11’が0.682pF、C12’が1.51pF、C13’が1.60pF、C14’が1.51pF、C15’が0.682pF、L11’が2.99nH、L12’が3.59nH、L13’が3.59nH14’が2.99nHのものである。低域通過フィルタ101は、合計9個の素子が9段の低域通過フィルタを構成している。

【0037】
図11に低域通過フィルタ1と従来技術の低域通過フィルタ101のシミュレーションによるフィルタ特性を示す。曲線a、bはそれぞれ、低域通過フィルタ1の通過特性S(2,1)、反射特性S(1,1)である。低域通過フィルタ1は、周波数約6GHzに減衰極を有するようにすることで周波数約6GHzで通過特性S(2,1)が約-50dBとなるフィルタ特性を得ている。また、曲線c、dはそれぞれ、低域通過フィルタ101の通過特性S(2,1)、反射特性S(1,1)である。低域通過フィルタ101は、チェビシェフ型であり、周波数約6GHzで通過特性S(2,1)が約-50dBとなるフィルタ特性となっている。よって、低域通過フィルタ1は、従来技術の低域通過フィルタ101と同様な、携帯電話基地局の無線通信装置で必要とされる急峻なフィルタ特性を実現できていることが分かる。なお、シミュレーションは、入出力端子2A、2A’(及び入出力端子102A、102A’)にそれぞれ、50オームの抵抗を接地電位の間に接続して行った。

【0038】
低域通過フィルタ1の中空部2aのサイズ((X軸方向のサイズ)×(Y軸方向のサイズ)×(Z軸方向のサイズ))は、15.3mm×7.6mm×6.25mmであり、体積は727mmである。これに対し、低域通過フィルタ101の中空部102aのサイズ((X軸方向のサイズ)×(X軸方向に直交の面積))は、32.4mm×(π×3.5×3.5)mmであり、体積は1246mmである。金属筐体2の肉厚を3mmとすると、低域通過フィルタ1のサイズ((X軸方向のサイズ)×(Y軸方向のサイズ)×(Z軸方向のサイズ))は、21.3mm×13.6mm×12.25mmであり、体積は3549mmである。これに対し、金属筐体102の肉厚を3mmとすると、低域通過フィルタ101のサイズ((X軸方向のサイズ)×(X軸方向に直交の面積))は、38.4mm×(π×6.5mm×6.5)mmであり、体積は5094mmである。これより、低域通過フィルタ1は、低域通過フィルタ101に比べ、中空部2aのサイズが約58%に、金属筐体2の肉厚を3mmとしたときの全体のサイズが約70%に小型化できていることになる。なお、図1に示した低域通過フィルタ1の平面図と図9で示した低域通過フィルタ101の平面図では、縮尺は異なっている。

【0039】
このように、低域通過フィルタ1は、従来技術の低域通過フィルタ101に比べ、小型化し易いものである。これは、低域通過フィルタ101が9段の低域通過フィルタであるのに対し、低域通過フィルタ1は、7段の低域通過フィルタでよく、そのために主線路31が短くなっているのが大きく寄与している。なお、主線路31が短くなっていることは、後述する低損失の実現にも寄与するものである。

【0040】
また、図に示した誘電体基板3は、1枚の平板であるが、フレキシブル誘電体基板を用いれば曲げることが可能になり、その形状を自在に変えることができる。また、誘電体基板3を2枚以上に分けてもよい。金属筐体2等は、このような誘電体基板3の構造に応じた形状にすることが可能である。よって、誘電体基板3の構造、ひいては低域通過フィルタ1の構造は、レイアウトの自由度が高く、マイクロ波帯の上述した帯域通過フィルタと組み合わせたときに隙間の空間に実装することができ、上述した無線通信装置等の全体をより小型化することができる。

【0041】
また、主線路31と分岐線路32A~32Fはそれぞれ、サスペンデッドラインからなるので、マイクロ波帯の通過帯域の伝送線路としての損失を大幅に低減することができる。それは、誘電体基板3上の伝送線路の主たる損失は伝送線路と接地用の電極との間で生じるが、接地用の電極である金属筐体2は、主線路31及び分岐線路32A~32Fから空気層を介して遠く離れているおり、そこを流れる電流の密度が極めて小さくなるためである。従って、低域通過フィルタ1は、マイクロ波帯の通過帯域で低損失のものとすることができる。

【0042】
このように、低域通過フィルタ1は、低損失であって急峻なフィルタ特性を実現することができ、しかも小型化し易いものである。

【0043】
以上、本発明の実施形態に係る低域通過フィルタについて説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載する事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 低域通過フィルタ
2a 中空部
2 金属筐体
2A、2A’ 入出力端子
3 誘電体基板
3a 誘電体基板の一方側の面(第1面)
3b 誘電体基板の他方側の面(第2面)
31 主線路
32A~32F 分岐線路
33A~33F 第1電極パターン
34A~34F 第2電極パターン
4 金属板
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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