TOP > 国内特許検索 > 機能抑制型の遺伝子組換えロドサイチン変異体 > 明細書

明細書 :機能抑制型の遺伝子組換えロドサイチン変異体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-201901 (P2017-201901A)
公開日 平成29年11月16日(2017.11.16)
発明の名称または考案の名称 機能抑制型の遺伝子組換えロドサイチン変異体
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/46        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61P   7/02        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  35/12        (2015.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/46
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 1/15
A61K 37/02
A61K 31/7088
A61P 7/02
A61P 43/00 111
A61K 35/12
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 28
出願番号 特願2016-094203 (P2016-094203)
出願日 平成28年5月9日(2016.5.9)
発明者または考案者 【氏名】佐々木 知幸
【氏名】白井 俊光
【氏名】井上 克枝
出願人 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
Fターム 4B065AA91X
4B065AA99Y
4B065AB01
4B065BA03
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA26
4C084CA43
4C084CA53
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZA541
4C084ZC411
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA54
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA54
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA53
4H045DA65
4H045DA83
4H045EA28
4H045FA74
要約 【課題】CLEC-2の阻害作用は、抗血小板薬及び抗癌転移薬などの適用に期待されているが、これまでに有用な阻害剤は報告されていない。
【解決手段】本発明によれば、血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンが提供される。本発明によれば、上記変異型ロドサイチンを含む医薬組成物が提供される。本発明によれば、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、上記医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【選択図】図16
特許請求の範囲 【請求項1】
血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチン。
【請求項2】
前記変異型ロドサイチンは、2、3又は4つのサブユニットを含む、請求項1に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項3】
前記サブユニットの少なくとも1つは、野生型サブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型サブユニットであり、これによって、前記変異型ロドサイチンのサブユニット数は、野生型ロドサイチンのサブユニット数とは異なる、請求項2に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項4】
前記変異型サブユニットは、野生型βサブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型βサブユニットを含む、請求項3に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項5】
前記変異型βサブユニットは、前記野生型βサブユニットの位置[K53及びR56]、[R58及びK60]並びに[R28及びK31]からなる群より少なくとも1つ選択される位置にアミノ酸変異を有する、請求項4に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項6】
前記変異型βサブユニットは、前記野生型βサブユニットの位置[K53及びR56]又は[R58及びK60]の少なくとも一方の位置に前記アミノ酸変異を有する、請求項4又は5に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項7】
前記変異型ロドサイチンは、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害する、請求項6に記載の変異型ロドサイチン。
【請求項8】
がん転移を抑制する、請求項1から6のいずれかに記載の変異型ロドサイチン。
【請求項9】
請求項3から6のいずれかに記載のサブユニットをコードする構造遺伝子。
【請求項10】
請求項9に記載の構造遺伝子を含むベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを含む形質転換体。
【請求項12】
野生型ロドサイチンのβサブユニットの位置[K53及びR56]、[R58及びK60]並びに[R28及びK31]からなる群より少なくとも1つ選択される位置にアミノ酸変異を有する変異型βサブユニットを含む、変異型ロドサイチン。
【請求項13】
野生型ロドサイチンのβサブユニットの位置[K53及びR56]又は[R58及びK60]の少なくとも一方の位置にアミノ酸変異を有する変異型βサブユニットを含む、変異型ロドサイチン。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の変異型ロドサイチンを含む医薬組成物。
【請求項15】
血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害するための方法であって、
それを必要とする対象に、請求項14に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機能抑制型の遺伝子組換えロドサイチン変異体、特に、血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ロドサイチン(Rhodocytin)[別名アグレチン(Aggretin)]は、マレーマムシ(Calloselasma rhodostoma)の毒腺から単離された、血小板凝集惹起タンパク質である(非特許文献1)。ロドサイチンは、血小板を凝集し血液を凝固する作用があるため、血小板活性化メカニズムを解明するために多くの研究に用いられている。
【0003】
血小板は小さな円板状の血球であり、止血作用および創傷の治癒に欠かせないものである。血小板凝集や血液凝固は、コラーゲンなどが血小板表面のレセプターと結合することでシグナル伝達経路が刺激され起こる。
ロドサイチンは、血小板表面のレセプターの一つであるCLEC-2(C-type lectin-like receptor 2)の発見に大きく寄与している(非特許文献2)。CLEC-2は、血小板凝集のみならず,癌転移,リンパ管新生,炎症応答やHIV播種にも関連することが報告されている。
なお、血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するためには、血小板表面のレセプターとそのシグナル伝達経路の反応を阻止するのに有効な薬剤の同定を可能とする方法が求められている。そのため、血小板表面のレセプターを同定する必要がある。従って、血小板表面のレセプターと結合するリガンド(ロドサイチン等)の研究は、上記の血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するためには必須である。
【0004】
ロドサイチンは、マレーマムシより単離されたロドサイチンの結晶構造解析によって、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットから構成されるヘテロ4量体の分泌タンパク質である(非特許文献3)。
【0005】
なお、ロドサイチンαサブユニットとロドサイチンβサブユニットは、独立した遺伝子にコードされており、それぞれ、クローニングされたことが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Biochem Biophys Res Commun. 1998 Apr 28;245(3):741-5.
【非特許文献2】Blood. 2006 Jan 15;107(2):542-9. Epub 2005 Sep 20.
【非特許文献3】Biochemistry. 2008 Jul 29;47(30):7831-7. doi: 10.1021/bi800528t. Epub 2008 Jul 3.
【非特許文献4】Biochem Biophys Res Commun. 1999 Oct 5;263(3):723-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CLEC-2の阻害作用は、抗血小板薬及び抗癌転移薬などの適用に期待されているが、これまでに有用な阻害剤は報告されていない。本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、野生型ロドサイチンの機能及び構造を調べていたところ、特定の位置のアミノ酸に変異を有するロドサイチンは、CLEC-2と相互作用するものの、血小板凝集を惹起しないことを明らかにした。詳しく調べたところ、特定の位置のアミノ酸に変異を有するロドサイチンのサブユニット数は、野生型ロドサイチンよりも低下していることが明らかとなった。また、野生型ロドサイチンは、4量体であることが報告されていたが、本実験により8量体であることも明らかにした。これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンが提供される。この変異型ロドサイチンによれば、血小板凝集を惹起させることがない。また、本発明によれば、変異型ロドサイチンのサブユニットをコードする構造遺伝子が提供される。これによって、任意のベクターに導入することができる。また、本発明によれば、この構造遺伝子を含むベクターが提供される。これによって、任意の宿主細胞を用いて形質転換体を作成することができる。また、本発明によれば、このベクターを含む形質転換体が提供される。これによって、変異型ロドサイチンを取得することができる。
【0010】
また、本発明によれば、上記変異型ロドサイチンを含む医薬組成物が提供される。これによって、変異型ロドサイチンを、それを必要とする対象に投与することができる。
【0011】
更に、本発明によれば、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、上記医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。これによって、上記医薬組成物を必要とする対象に上記医薬組成物を投与し、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態における野生型ロドサイチンαサブユニットと野生型ロドサイチンβサブユニットの発現のための設計に関する図である。
【図2】図2は、本実施形態におけるロドサイチンの製造方法および血小板凝集能の確認方法の簡単な流れを示す概略図である。
【図3】図3は、本実験例3におけるウエスタンブロットの結果を示す。
【図4】図4は、本実験例4における血小板凝集能の確認実験の結果を示す。
【図5】図5は、本実験例5におけるヒトCLEC-2との結合の確認実験の結果を示す。
【図6】図6は、8量体ロドサイチンを模式的に示している。αは、αサブユニットを示す。βは、βサブニュニットを示す。Cは、CLEC-2を示す。各サブユニットにおけるアミノ酸とその位置は、サブユニット間の相互作用に関与するアミノ酸とその位置を示している。
【図7】図7は、本実験例6におけるウエスタンブロットの結果を示す。
【図8】図8は、本実験例7における変異型ロドサイチンの血小板凝集能の確認実験の結果を示す。
【図9】図9は、変異型ロドサイチンによる、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集の抑制試験の結果を示す。
【図10】図10は、野生型ロドサイチンのサブユニット構造を評価するために実施した電気泳動写真である。
【図11】図11は、変異型ロドサイチンのサブユニット構造を評価するために実施した電気泳動写真である。
【図12】図12は、種々の濃度の変異型ロドサイチンによる、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集の抑制試験の結果を示す。
【図13】図13は、種々の濃度におけるNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンによる、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集の抑制試験の結果を示す。
【図14】図14は、フローサイトメーターによるヒトCLEC-2と変異型ロドサイチンとの結合の確認を示す。
【図15】図15は、変異型ロドサイチンによるがん細胞誘導性血小板凝集抑制の結果を示す。
【図16】図16は、変異型ロドサイチンによるがん細胞の血行性転移抑制の結果を示すマウスの肺の写真である。
【図17】図17は、がん細胞の血行性転移抑制試験におけるマウスの肺の質量、血小板数及び肺結節数を示している。図17Aは、変異型ロドサイチンを投与したマウスとコントロールマウスの肺の質量を比較したグラフを示す。図17Bは、変異型ロドサイチンを投与したマウスとコントロールマウスの血小板数を比較したグラフを示す。図17Cは、変異型ロドサイチンを投与したマウスとコントロールマウスの肺結節数を比較したグラフを示す。
【図18】図18は、がん細胞の血行性転移抑制試験における、免疫染色したマウス肺の写真である。
【図19】図19は、がん細胞の血行性転移抑制試験における、マウスの全肺領域あたりのがん領域の比をグラフとして示す。
【図20A】図20Aは、配列番号42([βS]-[α subunit])の配列を示す。
【図20B】図20Bは、配列番号2([βS]-[β subunit])の配列を示す。
【図20C】図20Cは、配列番号43([βS]-[β subunit] (R28A, K31A))の配列を示す。
【図20D】図20Dは、配列番号44([βS]-[β subunit] (R56A))の配列を示す。
【図20E】図20Eは、配列番号45([βS]-[β subunit] (K53A, R56A))の配列を示す。
【図20F】図20Fは、配列番号46([βS]-[β subunit] (R58A, K60A))の配列を示す。
【図20G】図20Gは、配列番号47([βS]-[β subunit] (R28A, K31A, K53A, R56A))の配列を示す。
【図20H】図20Hは、配列番号48([βS]-[β subunit] (R28A, K31A, R58A, K60A))の配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑をさけるために、摘示説明を省略する。

【0014】
<変異型ロドサイチン>
本実施形態における血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンは、野生型ロドサイチンが有する血小板凝集能が欠失したロドサイチンである。後述する実施例の通り、本実施形態における変異型ロドサイチンは、血小板凝集能が欠失していることから、例えば、ロドサイチンの機能解析の試験に用いることができる。特定の理論に限定されるものではないが、(野生型)ロドサイチンは、血小板上に存在するCLEC-2と相互作用することによって血小板凝集を惹起する。本実施形態において、「血小板凝集能が欠失した」とは、変異型ロドサイチンの血小板凝集能が、野生型ロドサイチンと比較して、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下の場合を意味する。ある実施形態において、変異型ロドサイチンの血小板凝集能は、検出器の検出可能レベルでは血小板を凝集させない。血小板サンプルの吸光度と血小板サンプルにロドサイチンを加えた後(例えば、ロドサイチンを加えた10分後)の吸光度の変化により評価することが可能であるが、これに限定されるものではない。

【0015】
変異型ロドサイチンは、野生型ロドサイチンとアミノ酸配列が異なることを意味するが、本実施形態において、変異型ロドサイチンは、少なくとも血小板凝集能が欠失する位置にアミノ酸変異を有するロドサイチンを意味する。アミノ酸変異は、限定するものではないが、本来のアミノ酸とは異なるアミノ酸が占有するアミノ酸置換であってもよく、本来のアミノ酸が欠失したアミノ酸欠失であってもよい。また、アミノ酸変異は、任意の化合物が修飾されたアミノ酸修飾であってもよい。ある実施形態において、変異型ロドサイチンは、CLEC-2と相互作用することができるが、血小板凝集能は欠失している。

【0016】
本実施形態の変異型ロドサイチンは、野生型ロドサイチンをコードする構造遺伝子を遺伝子工学的に改変させた構造遺伝子を用いて細胞工学的に取得することができる。例えば、変異型ロドサイチンをコードする構造遺伝子を含む適切な発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクトすることによって、その宿主中から又はその培養液から変異型ロドサイチンを回収することができる。また、本実施形態の変異型ロドサイチンは、変異型ロドサイチンを分泌するマレーマムシから、変異型ロドサイチンの構造遺伝子をクローニングすることによっても取得することができる。更には、本実施形態の変異型ロドサイチンは、変異型ロドサイチンを分泌するマレーマムシのへび毒から変異型ロドサイチンを単離して精製することによっても取得することができる。

【0017】
本実施形態において、上記発現ベクターを含む形質転換体を作成するために使用する宿主細胞は、変異型ロドサイチンを生産することができる細胞であれば特に限定しない。宿主細胞として例えば、微生物細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などがあげられる。好ましくは、宿主細胞は動物細胞であり、より好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞である。CHO細胞は、1957年に樹立された細胞株で、成長が早く遺伝子発現プロファイルが安定しておりタンパク質の生産性が高いことから、研究にも、治療用タンパク質の生産にも利用されている。

【0018】
本実施形態の変異型ロドサイチンは、複数のサブユニットを含み、複数のサブユニットには、少なくとも1つのαサブユニットと少なくとも1つのβサブユニットが含まれる。本実施形態の変異型ロドサイチンは、複数のサブユニットを含むことから、各サブユニットをコードする構造遺伝子を含むベクター群を作成してもよい。ある実施形態において、発現ベクターは、変異型ロドサイチンのαサブユニットをコードする構造遺伝子と変異型ロドサイチンのβサブユニットをコードする構造遺伝子を含む。この発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることで、変異型ロドサイチンを取得することができる。別の実施形態において、変異型ロドサイチンのαサブユニットをコードする構造遺伝子と変異型ロドサイチンのβサブユニットをコードする構造遺伝子は、それぞれ、別々の発現ベクター(例えば、第一発現ベクターと第二発現ベクター)に含まれていてもよい。これらの発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることで、変異型ロドサイチンを取得することができる。αサブユニットのためのベクターは、βサブユニットのためのベクターと同一の種類であってもよく、互いに異なる種類であってもよい。また、これらの構造遺伝子は、サブユニットのcDNAを由来とするものであってもよい。ある実施形態において、変異型ロドサイチンをコードする構築遺伝子は、宿主に適したコドンユーセージ(Codon usage)に変更されている。

【0019】
変異型ロドサイチンを培地中に分泌させるために、上記構造遺伝子を含む発現ベクターは、細胞外分泌が可能なシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含んでいてもよい。細胞外分泌が可能なシグナル配列は、特に限定しないが、ロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。一例として、配列番号38、39または40に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。好ましくは、配列番号38に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。より好ましくは、配列番号39に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列である。

【0020】
細胞外分泌が可能なシグナル配列として、配列番号38、39または40に示すロドサイチンβサブユニットのシグナル配列と、
1)95%以上の配列相同性を有する塩基配列である、または、
2)1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列である、または、
3)相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列であっても良い。

【0021】
なお、本明細書において同一性・相同性を示す値は、BLASTなどの公知のプログラムを利用することにより算出することができる。配列番号に示される塩基配列と配列相同性を有する塩基配列は、95%以上の配列相同性を有していればよく、例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.8%以上であっても良い。

【0022】
本明細書において、「1または数塩基が欠失、置換、付加されている塩基配列」における「数塩基」は、例えば、2~10塩基、2~9塩基、2~8塩基、2~7塩基、2~6塩基、2~5塩基、2~4塩基、2~3塩基、2塩基である。欠失、置換、付加した塩基の数は、一般的に少ないほど好ましい。塩基の欠失、置換、付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。なお、塩基の欠失、置換、付加については、公知の技術を用いることができる。

【0023】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば以下の(1)(2)などが挙げられる。
(1)イオン強度が低く洗浄温度が高い状態として、たとえば0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム(チトラート)/0.1%SDSで温度50℃が挙げられる。あるいは
(2)ハイブリッド形成中にホルムアミド等の変性剤を使用して、たとえば、50%(vol/vol)ホルムアミドに、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%polyinylpyrrolidone/50mMリン酸ナトリウムバッファpH6.5、750mMNaCl、75mMクエン酸ナトリウムで温度42℃とすることが挙げられる。別の例としては、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl,0.075Mクエン酸ナトリウム),50mM リン酸ナトリウム(pH6.8), 0.1%ピロリン酸ナトリウム, 5×デンハルト液、超音波処理されたサーモンスパームDNA(50μg/ml),0.1%SDS,10%硫酸デキストラン,温度42度,洗浄温度42℃,0.2×SSC,0.1%SDSが挙げられる。
また、当業者であれば、クリアで検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るべく、ストリンジェントな条件を適宜変更できることは、明らかである。

【0024】
本実施形態における発現ベクターは、クローニングベクターに、所望するポリヌクレオチドを挿入等することで作成することができる。上記のクローニングベクターとしては、例えば、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、フォスミドまたは、人工染色体などがあげられる。具体的には大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19、pSH15)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5、pC194)、動物細胞発現プラスミド(例えばpA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)、λファージなどのバクテリオファージ、HIV、アデノウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどのウイルス由来のベクターや人工染色体などを用いることができる。これらのベクターは、プロモーター、複製開始点、または抗生物質耐性遺伝子など、蛋白質発現に必要な構成要素を含んでいてもよい。

【0025】
本実施形態において、変異型ロドサイチンは、2、3又は4つのサブユニットを含んでいる。後述する実施例において、野生型ロドサイチンは、従来の報告とは異なり、8つのサブユニットを含んでいた(即ち、8量体であった)。一方、本実施形態の変異型ロドサイチンは、野生型ロドサイチンと比較して、サブユニット数が少ない。サブユニット数は、後述するBlue-native PAGEを用いて評価することができる。ある実施形態において、変異型ロドサイチンは、1つのαサブユニットと1つのβサブユニットを含む。別の実施形態において、変異型ロドサイチンは、1つのαサブユニットと2つのβサブユニットを含む。別の実施形態において、変異型ロドサイチンは、2つのαサブユニットと1つのβサブユニットを含む。別の実施形態において、変異型ロドサイチンは、2つのαサブユニットと2つのβサブユニットを含む。

【0026】
本実施形態において、サブユニットの少なくとも1つは、野生型サブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型サブユニットである。これによって、前記変異型ロドサイチンのサブユニット数は、野生型ロドサイチンのサブユニット数とは異なる。「野生型サブユニットと異なるアミノ酸」とは、アミノ酸変異を意味するものであってもよい。ある実施形態において、変異型サブユニットにおけるアミノ酸変異は、野生型ロドサイチンのサブユニット数よりも変異型ロドサイチンのサブユニット数が少なくなるような位置に少なくとも存在する。

【0027】
変異型サブユニット中のアミノ酸変異は、ランダム変異によって生じさせることもできるが、好ましくはPCR法によって特定の位置のアミノ酸を変異させる。即ち、標的位置に変異が形成されるように設計したミスマッチコドンを含むプライマーを利用してPCRを行ない、目的の変異型サブユニットをコードするDNA断片を作成する。変異型サブユニットは、任意のアミノ酸、好ましくはアラニンへの置換によって達成されてもよいし、アミノ酸欠失によって達成されてもよい。例えば、上述したPCR法を用いてアミノ酸変異(アラニン)を導入する場合は、ミスマッチコドンはアラニンとなるように設計する。

【0028】
上記アミノ酸変異は、αサブユニットに存在していてもよく、βサブユニットに存在していてもよく、その両方に存在していてもよい。ある実施形態において、変異型サブユニットは、野生型αサブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型αサブユニットを含む。別の実施形態において、変異型サブユニットは、野生型βサブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型βサブユニットを含む。更に別の実施形態において、変異型サブユニットは、野生型αサブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型αサブユニットと、野生型βサブユニットとは異なるアミノ酸を1又は複数を有する変異型βサブユニットを含む。ある実施形態において、変異型βサブユニットは、野生型βサブユニットの位置[K53及びR56]、[R58及びK60]並びに[R28及びK31]からなる群より少なくとも1つ選択される位置にアミノ酸変異を有する。別の実施形態において、変異型βサブユニットは、野生型βサブユニットの位置[K53及びR56]又は[R58及びK60]の少なくとも一方の位置に前記アミノ酸変異を有する。更に別の実施形態において、変異型βサブユニットは、野生型βサブユニットの位置[K53及びR56]並びに[R58及びK60]の位置にアミノ酸変異を有する

【0029】
本実施形態において、変異型ロドサイチンは、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害する。後述する実施例の通り、本実施形態における変異型ロドサイチンは、血小板凝集物質による血小板凝集を阻害することから、このような血小板凝集を抑制する抑制剤として使用することができる。血小板凝集物質は、生体内に存在する物質であってもよく、生体外の物質であってもよい。ある実施形態において、血小板凝集性物質は、CLEC-2と相互作用する。別の実施形態において、血小板凝集性物質は、CLEC-2との相互作用が変異型ロドサイチンと拮抗する。ある実施形態において、血小板凝集性物質は、トロンビン、コラーゲン、トロンボキサンA2、ADP、アドレナリン、ノルアドレナリン、セロトニン、ポドプラニン、フコイダン、ロドサイチン及びポドプラニンから選択される。別の実施形態において、血小板凝集性物質は、ポドプラニン、フコイダン、ロドサイチン及びポドプラニンから選択される。更に別の実施形態において、血小板凝集性物質は、ロドサイチン及びポドプラニンから選択される。

【0030】
本実施形態において、変異型ロドサイチンは、がん転移を抑制する。後述する実施例の通り、本実施形態における変異型ロドサイチンは、がん転移を抑制することができることから、がん転移を抑制する抑制剤として使用することができる。ある実施形態において、がん転移は、血小板凝集性物質が関与する。別の実施形態において、がん転移は、ポドプラニンが関与する。更に別の実施形態において、がん転移は、血行性転移である。血行性転移とは、がん細胞が血流によって転移することを意味し、血流の流量が多い臓器(例えば、肺、肝臓)に転移巣を形成されやすい。ある実施形態において、がん転移は、癌腫及び/又は肉腫を由来とする転移である。別の実施形態において、がん転移は、肺転移、肝臓転移、脳転移、骨転移、腹膜転移(腹膜播種)から少なくとも1つ選択される。

【0031】
<変異型ロドサイチンを含む医薬組成物>
本実施形態において、変異型ロドサイチンを含む医薬組成物が提供される。この医薬組成物を用いることで、血小板凝集能が欠失した変異型ロドサイチンを、それを必要とする対象に投与することができる。ある実施形態において、この医薬組成物は、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害又は予防するために投与される。別の実施形態において、この医薬組成物は、がん転移を阻害又は予防するために投与される。

【0032】
変異型ロドサイチンを医薬組成物とする場合には、変異型ロドサイチンの結晶を用いて調製してもよい。変異型ロドサイチンを含む医薬組成物を用いて注射剤を調製する場合は、必要に応じて、pH調整剤、緩衝材、安定化剤、可溶化剤などを添加することもできる。

【0033】
この医薬組成物は、単独投与又は他の治療薬との併用投与のいずれであれ、血小板凝集性物質による血小板凝集及び/又はがん転移を阻害又は予防するのに有効量で投与される。しかしながら、変異型ロドサイチンの総投与量は、担当医によって、健全な医学的判断の範囲内で決定される。対象に対する有効量は、対象の重症度;対象の年齢、体重、総体的健康、性別及び食餌;投与時間;投与経路;変異型ロドサイチンの排出又は分解速度;治療期間;上記医薬組成物と併用している又は同時使用している薬物に依存する。医薬組成物の投与量は、投与毎に一定量でなくてもよい。例えば、所望の効果を達成するのに必要な投与量よりも低い投与量で投与し、所望の効果が得られるまで投与量を次第に増大させてもよい。

【0034】
必要に応じて、1日当たりの有効投与量は、投与目的に応じて、複数投与量に分割してもよい。当業者であれば、良好な医療行為及び個々の対象の臨床症状によって、有効投与量及び併用投与処方を容易に最適化することができるだろう。

【0035】
上記医薬組成物の1日当たりの投与量(日用量)は、変異型ロドサイチン換算で、0.01, 0.05, 0.1, 0.5, 1, 5, 10, 50, 100, 150及び200 mg/kg体重からなる群より選択される2点間の範囲内であってもよい。投与形態としては、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、非経口、鼻腔内又は皮内投与が挙げられる。上記医薬組成物は、一定期間、すなわち3日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上、さらに好ましくは1ヶ月以上、例えば6ヶ月又は1年以上にわたって継続的に投与することが好ましい。上記医薬組成物の投与は、毎日おこなってもよいが、期間中継続的に投与する限り、毎日投与しなくてもよい。上記医薬組成物は、日用量を1日に1回投与してもよいし、1日に日用量を数回に分割して投与してもよい。上記医薬組成物の投与は、医師による判断により終了してもよいし、対象の自己判断で終了してもよい。

【0036】
<血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害するための方法>
本実施形態において、血小板凝集性物質による血小板凝集を阻害するための方法であって、それを必要とする対象に、上記医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。上記医薬組成物を対象に投与する場合には、投与量は、対象の症状の重篤さ、年齢、体重、PSA値、尿流量及び健康状態等の諸条件によって異なる。一般的には、上述した用量及び用法で、1日1回若しくはそれ以上の回数にわたって投与すればよく、以上のような諸条件に応じて、投与の回数及び量を適宜増減すればよい。

【0037】
本実施形態における「対象」とは、任意の哺乳動物をいい、ヒト、家畜用動物、ペット用動物、動物園用動物、又はスポーツ用動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等を含む。ある実施形態において、対象は、ヒトである。

【0038】
<変異型ロドサイチンを生産する組換え細胞の製造方法>
本実施形態において、変異型ロドサイチンを生産する組換え細胞は、上述した発現ベクターを宿主細胞に導入し形質転換することで取得することができる。

【0039】
上記ベクターを宿主脂肪に導入し形質転換するには、既製の遺伝子を導入Kitや公知の方法を用いることができる。なお、αサブユニットの構造遺伝子を含む発現ベクターとβサブユニットの構造遺伝子を含む発現ベクターは、同時に宿主細胞に導入してもよく、別々に導入してもよい。

【0040】
なお、本明細書において、分子生物学の手法(例えば、クローニング、プラスミド抽出、DNA断片の切断、連結、ハイブリダイゼーション、部位特異的変異導入法、PCR法、ウエスタンブロット法等々の手法)は、当業者によく知られている通常の方法を採用することができる。これらの方法は、 Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等を参照することができる。

【0041】
<変異型ロドサイチンの製造方法>
本実施形態における変異型ロドサイチンの製造方法は、本実施形態における組換え細胞を培養する工程と、変異型ロドサイチンを採取する工程とを含む、ロドサイチンの製造方法である。

【0042】
本実施形態の変異型ロドサイチンの製造方法における組換え細胞を培養する工程は、本実施形態の組換え細胞が培養できれば特に限定しない。例えば、公知の方法を用いることができる。

【0043】
本実施形態の変異型ロドサイチンの製造方法における変異型ロドサイチンを採取する工程は、変異型ロドサイチンを組換え細胞から得ることができれば、特に限定しない。例えば、公知の方法を用いることができる。一例として、スポイト等によって組換え細胞の培養液を取得する方法や、遠心分離によって、組換え細胞の培養上清を得る方法や組換え細胞を細胞溶解液や超音波等によって破壊して、変異型ロドサイチンを得る方法が挙げられる。また、変異型ロドサイチンは、ゲルろ過法及びイオン交換法によって精製してもよい。

【0044】
<分析方法>
・変異型ロドサイチンαサブユニットタンパク質および変異型ロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現
本実施形態における変異型ロドサイチンαサブユニットタンパク質および変異型ロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現の確認方法は、特に限定しないが、公知の方法を用いることができる。例えば、ウエスタンブロット法が挙げられる。例えば、遺伝子導入後に得られた細胞を培養し培養液あるいは細胞溶解液中に含有するタンパク質を確認することができる。なお、ウエスタンブロット法は、市販の実験書等を参考にした標準的なウエスタンブロット法を行うことができる。

【0045】
なお、ロドサイチンに対してSDS-PAGEを用いてウエスタンブロット法を行った場合は、変異型ロドサイチンαサブユニットタンパク質、変異型ロドサイチンβサブユニットタンパク質の2つのバンドが確認される。後述する実施例の通り、変異型ロドサイチンは、αサブユニットとβサブユニットから構成される。従って、還元剤(例えば、メルカプトエタノールやジチオトレイトールなど)入りのSDSサンプルバッファーによって、変異型ロドサイチンαサブユニットタンパク質と変異型ロドサイチンβサブユニットタンパク質間のジスルフィド結合が切れ、2つのバンドが確認される。

【0046】
血小板凝集能の測定
本実施形態における血小板凝集能の測定方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置を用いて測定することができる。調製したマウスの洗浄血小板またはヒトの洗浄血小板を使用し、試料と混合し凝集率を一定時間継時的に測定する。

【0047】
また、本実施形態における組換え細胞から得られた変異型ロドサイチンは、血小板凝集能が欠失しているので、血小板凝集に関連する疾病の治療に役立つ薬剤を開発するための血小板表面のレセプターに対する拮抗薬や、そのシグナル伝達経路の反応を阻止するのに有効な薬剤の同定をするための実験試薬として用いることができる。

【0048】
上述した製造方法は、野生型ロドサイチンについても適用することができる。

【0049】
<試薬、診断薬、キット>
本実施形態に係る変異型ロドサイチン、または変異型ロドサイチンをコードするポリヌクレオチドもしくはベクターは、それらを含む試薬、診断薬、またはキットとして使用、生産、または販売することができる。これらの試薬、診断薬、またはキットは、例えば、血小板表面のレセプターに対する拮抗薬や、血小板凝集に関するシグナル伝達経路の反応の抑制剤探索実験試薬等に用いることができる。

【0050】
なお上記キットは、本実施形態に係るロドサイチン等の使用方法もしくは使用例を記載した指示書、その指示書の所在を記載した文面、本実施形態に係るロドサイチンを認識する抗体、または種々のバッファーを含んでいてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実験例1
<野生型ロドサイチンのαおよびβサブユニット遺伝子を含む遺伝子組換えベクターの作成>
非特許文献4に記載されたロドサイチンのαおよびβサブユニットの遺伝子配列情報を基として塩基配列を設計した(表1)。設計した塩基配列は、GENEWIZ日本支社にポリヌクレオチド合成および、合成されたポリヌクレオチドを、pUC57-Ampベクター(GENEWIZ社)(配列番号41)に導入することを委託した。得られた組換えベクターは、表2に示す。
【実施例】
【0053】
【表1】
JP2017201901A_000003t.gif
【実施例】
【0054】
【表2】
JP2017201901A_000004t.gif
【実施例】
【0055】
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を用いて、表3に記載する組換え体ベクターを作製した。なお、Overlap extension PCR cloning法(Biotechniques. 2010 June ; 48(6): 463-465.)を参考にして実験を行った。
【実施例】
【0056】
上記組換え体ベクターおよびpCMVベクター(Stratagene社)を鋳型にして、表3に記載するプライマーを用いて、PCR法によってPCR産物を得た。PCR法は、Q5 High-Fidelity DNA polymerase(New Englind Biolab社)を用いて、PCR反応「98℃で30秒、55℃で30秒、72℃で3分」のサイクルを25回繰り返して反応をサーマルサイクラーVeriti 200(Applied Biosystems社)を用いて行った。
【実施例】
【0057】
それぞれ得られた、組換え体ベクターを鋳型にしたPCR産物5μLとpCMVベクターを鋳型にしたPCR産物1μLを、混合した。その混合液を100μLのコンピテントセルEscherichia coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。
【実施例】
【0058】
また、ヒートショック法およびコンピテントセルの作成は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition",Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を基にして行った。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
【実施例】
【0059】
また、表3に記載した組換え体ベクターを用いて、表4に記載する組換え体ベクターを作製した。表3に記載した組換え体ベクターを鋳型として、表4に記載するプライマーを用いて、インバースPCR法によってPCR産物を得た。なおインバースPCR法の条件は上記PCR法と同じである。それぞれ得られたPCR産物6μLを100μLのコンピテントセルE.coli DH5αにヒートショック法を用いて形質導入し,100μg/mLAmpicillin含有LB寒天培地に播種した。形質転換された大腸菌からQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社)を用いて、組換え体ベクターを得た。
【実施例】
【0060】
なお、組換え体ベクターにおけるロドサイチンのαまたはβサブユニット遺伝子のシークエンスは、受注シークエンスサービス(マクロジェンジャパン社)に委託し、上記設計した塩基配列と比較し、欠損、置換、付加等がないことを確認した。
【実施例】
【0061】
【表3】
JP2017201901A_000005t.gif
【実施例】
【0062】
【表4】
JP2017201901A_000006t.gif
【実施例】
【0063】
実験例2
<宿主細胞をCHO細胞とした、発現ベクターを含む組換え細胞の作成>
・培養条件
タンパク質発現用細胞としてCHO細胞を用いた。培養条件については、直径15cm 培養皿を用い、25mLの血清DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Life Technologies社)、10%ウシ胎児血清(FBS、Life Technologies社)、1%P/S溶液(10,000units/mLペニシリンG,10,000μg/mLストレプトマイシン硫酸塩)を加えた培養液にCHO細胞を播種し、直径15cm培養皿に対してCHO細胞が100%占有率になるまで、37℃、5%CO2条件下で培養した。なお、遺伝子導入後のCHO細胞の培養条件も上記と同じである。
【実施例】
【0064】
・エレクトロポレーションによるCHO細胞への遺伝子導入
コンピテントセルの作成
直径15cm培養皿に対して100%占有率となったCHO細胞の培養液を捨て、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液(0.25w/v%トリプシン溶液と1mM EDTA-Na溶液との混合液)を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。
【実施例】
【0065】
インキュベート後、20mLのDMEM培地と0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温(約25℃)で遠心分離し、上清を捨てた後、0.3mLのCytomix溶液(120mM KCl,0.15mM CaCl2,10mM K2HPO4,10mM KH2PO4, 25mM HEPES, 2mM EGTA, 5mM MgCl2, 2mM ATP, 5mM glutathione)を加えて、CHO細胞を再浮遊させた。この状態におけるCHO細胞を計数し、 CHO細胞数が2.5x107cell/mlになるようにCytomix溶液を加えて調整した。(目安として、通常で15cmの培養皿から得られる容量は0.5-0.6mLとなる)。
【実施例】
【0066】
エレクトロポレーション
エレクトロポレーション用キュベット(Cell Projects社,EP-104,GAP:4mm)に、表5にリストするCHO細胞となるように表3または表4から選択した組換え体ベクター40μgを添加し、さらに、2.5x107cell/mlに調整したCHO細胞懸濁液400μLを添加し、キュベットの蓋をして転倒混和した後,10分間、室温でインキュベートした。エレクトロポレーションシステムはBIO-RAD GENE PULSER(R)II Electroporation System(BIO-RAD社)を使用した。なお、遺伝子導入の条件として250mV, 950μFにて設定し、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション後、氷上で10分間インキュベートした。次に、10cm培養皿に13mL血清DMEMを準備し、ここにエレクトロポレーションを行ったCHO細胞を播種し、一昼夜培養した。培養液を除き、培養皿1枚に対して15mLの1×PBSで一回洗浄した後、13mL Opti-MEM培地(Life Technologies社)を添加して、培養を継続した。なお、得られた組換え細胞を表5に示す。
【実施例】
【0067】
【表5】
JP2017201901A_000007t.gif
【実施例】
【0068】
実験例3
<ウエスタンブロット法によるタンパク質の発現確認>
上記組換え細胞におけるロドサイチンの発現の確認をするために、ウエスタンブロット法を用いた。
【実施例】
【0069】
・組換え細胞の培養液の調製
実験例2にて得られた組換え細胞において、Opti-MEM培地にて72時間培養後、培養液を回収し、3,000rpm,30分間の遠心分離を行い浮遊した細胞等を除いた。なお、必要に応じて培養液を-80℃で保存した。
上記組換え細胞の培養液は、15,000rpm, 30分間, 4℃で遠心分離後、培養液を回収した。
【実施例】
【0070】
・組換え細胞の細胞溶解液の調製
培養液回収後の組換え細胞に氷冷1×PBSにて2回洗浄し、細胞溶解バッファー(1% NP40,150 mM NaCl,10 mM Tris,1mM Na3VO3,1mM EGTA, 1mM EDTA,1μg/mL leupeptin,1μg/mL aprotinin,1μg/mL pepstatin,1mM PMSF,pH7.5)を添加し、細胞溶解液を得た。なお、必要に応じて細胞溶解バッファーを加えて細胞溶解液を希釈した。
【実施例】
【0071】
・ウエスタンブロット法
組換え細胞の培養液は、必要に応じてOpti-MEM培地を加えて培養液を希釈した。上記調製した組換え細胞の培養液20μLSDSサンプルバッファーを加えて、SDS-PAGEで電気泳動後、PVDF膜に転写し、一次抗体に抗ロドサイチン抗体(ウサギポリクローナル抗体)、二次抗体にHRP標識ウサギIgGを用い、ECL Prime Western Blottin Detection System(GE Healthcare Life Science)て検出した。画像撮影には,ImageQuant LAS 4000 mini(GE Healthcare Life Science)を使用し、High Resolutionモードで撮影した。なお、図3におけるLow exposureで撮影されたバンドは、露光時間2分で撮影した。また、High exposureは、露光時間10分で撮影をした。
【実施例】
【0072】
上記組換え細胞の培養液を使用して、ロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質の発現を確認した。結果を図3に示す。
【実施例】
【0073】
図3について、No.1およびNo.2の組換え細胞の4倍希釈培養液におけるロドサイチンαサブユニットおよびロドサイチンβサブユニットタンパク質のバンド強度を比べると、No.1のバンド強度の方が強いことが分かる。すなわち、No.1の組換え細胞の方が、No.2の組換え細胞よりロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【実施例】
【0074】
実験例4
<血小板凝集能の確認>
・マウスの洗浄血小板の調整
6-8週齢のC57BL/6(野生型)または6-8週齢のC57BL/6(Clec1b(fl/fl)PF4-Cre(血小板CLEC-2ノックアウトマウス)(J Biol Chem. 2012 Jun 22;287(26):22241-22252.))マウスをジエチルエーテル吸入により全身麻酔し、開腹した。腹部後大静脈より、1mLシリンジ(25G針を付けた1mLシリンジに予め100μLのACD溶液(acid citrate dextrose solution:2.5%クエン酸ナトリウム,1.5%クエン酸,2%グルコース)を抗凝固剤として充填しておく)で900μLの採血を行った。
【実施例】
【0075】
採血した血液を2mLチューブに移し、あらかじめ37℃に温めておいた900μL CFT溶液(Calcium-freen modified Tyrode buffer:137mM NaCl,11.9mM NaHCO3, 0.4mM NaH2PO4, 2.7mM KCl, 1.1mM MgCl2, 5.6mM glucose, pH 7.4)および100μL ACD溶液を、上記チューブに加え、転倒混和した。次にアングルローター式遠心機で100G,10分間,室温で遠心分離した。上清を別の2mLチューブに移し回収した。
【実施例】
【0076】
再度上清が回収された2mLチューブを室温で遠心分離した。その上清を回収し、上清が入っている2mLチューブに移した。その次に上清が入っている2mLチューブに1μg/μL PGI2(Prostaglandin I2)溶液2μLを加え、転倒混和し、スイングローター式遠心機で,2,300rpm,10分間,室温で遠心分離した。
【実施例】
【0077】
上清を除き、沈降した血小板のペレットに215μL CFT溶液を加えて再浮遊させた。そのうちの15μLを採取し後、135μL CFT溶液で10倍希釈し、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。得られた血小板数に従い、20×104 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
【実施例】
【0078】
なお、多項目自動血球分析装置XE-2100は、ヒト用に設定された血球分析装置である。計数は光学方式(PLT-O)とインピーダンス方式(PLT-I)があるが、マウス血小板はヒト血小板よりも小さいため、今回マウス血小板の計数にはPLT-Oを採用した。
【実施例】
【0079】
・ヒトの洗浄血小板の調整
健常人ドナーの肘正中皮静脈より採血し、血液9容に3.8%クエン酸ナトリウム1容を混合して凝固を防いだ。この血液検体を、スイングローター式遠心機で1,100rpm,10分間,室温で遠心して、赤血球および白血球を沈殿させた。上清を回収して多血小板血漿(platelet-rich plasma; PRP)を得た。
【実施例】
【0080】
さらにPRPに終濃度が15%ACD、1μM PGI2になるよう加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分間,室温で遠心して血小板を沈降させた。
【実施例】
【0081】
上清を捨て、5mL CFT溶液と750μL ACD溶液を混合した液を加えてペレットを浮遊させ、さらに20mL CFT,3mL ACD溶液,10μL 1μg/μL PGI2溶液を加え、スイングローター式遠心機で2,500rpm,10分,室温で遠心した。
【実施例】
【0082】
上清を捨て、沈降した血小板にCFT溶液を加えて再浮遊させ、多項目自動血球分析装置XE-2100(シスメックス株式会社)により血小板数を計数した。なお、計数は光学方式(PLT-O)を用いた。
得られた血小板数に従い、20×104 PLT/μLになるようにCFT溶液で希釈し調製した。これを血小板凝集能測定に使用した。
【実施例】
【0083】
・組換え細胞の培養液の調製
実験例3にて調製した組換え細胞の培養液を血小板凝集能試験に用いた。なお必要に応じて、Opti-MEM培地を用いて、1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を調製した。
【実施例】
【0084】
・血小板凝集能の測定
血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置ヘマトレーサー712(MCM HEMA TRACER 712, LMS株式会社)を用いた。調整したマウスの洗浄血小板またはヒトの洗浄血小板100μLを使用し、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液11.1μLを加え、凝集率を10分間、継時的に測定した。またコントロールとして、No.6またはNo.7の組換え細胞の培養液の変わりに、CFT溶液、終濃度が2μg/mlコラーゲンまたは所望する蛇毒精製ロドサイチンの濃度となるように調整した溶液を、洗浄血小板に加えた。結果を図4、図5に示す。
【実施例】
【0085】
<結果の考察>
図4について、組換え細胞の培養液は、希釈せずに用いた。C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に、No.1またはNo.2の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れた。一方、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板にNo.1またはNo.2の組換え細胞の培養液を加えたものは、血小板凝集が現れなかった。なお、コラーゲンは、CLEC-2と異なる血小板表面のレセプターと結合することでシグナル伝達経路を刺激し血小板凝集を起すことが既に報告されている。
【実施例】
【0086】
No.1またはNo.2の組換え細胞の培養液は、C57BL/6(野生型)のマウスの血小板に対して、血小板凝集能を有し、CLEC-2ノックアウトマウスの血小板に対して、血小板凝集能を示さなかった。つまり、No.1またはNo.2の組換え細胞は、血小板活性化能を有するロドサイチンを生産することが分かる。
【実施例】
【0087】
図5について、No.1またはNo.2の組換え細胞の培養液について、それぞれ1倍、2倍、4倍、8倍、16倍希釈した培養液を用いた。No.1またはNo.2の組換え細胞の8倍希釈培養液の血小板凝集能を比べると、No.1の組換え細胞の方が短い時間で高い血小板凝集を示すことがわかった。この結果と実験例3におけるウエスタンブロット法の結果と合わせて、No.2の組換え細胞と比べてNo.1の組換え細胞の方が、ロドサイチン生産能が高いと判断できる。
【実施例】
【0088】
実験例5
<変異型βサブユニット遺伝子を含む遺伝子組換えベクターの作成>
図6は、野生型ロドサイチンの三次元構造のシミュレーションに基づいた、αサブユニットとβサブユニットとが相互作用する位置とアミノ酸を示している。βサブユニットのアミノ酸配列に変異を導入する位置及びアミノ酸は、R28、K31、K53、R58、R56及びK60とした。以下、特に断りがない限り、アミノ酸変異は、βサブユニットに導入している。アミノ酸変異は、アラニンを導入することで実施した。表3に記載の[βS]-[β subunit]/pCMVを用いて、計6種類(R28A及びK31A(配列番号10)、R56A(配列番号11)、K53A及びR56A(配列番号12)、R58A及びK60A(配列番号13)、R28A、K31A、K53A及びR56A(配列番号14)並びにR28A、K31A、R58A及びK60A(配列番号15))の変異型βサブユニット遺伝子を含む遺伝子組換えベクターを作成した(表6)。アミノ酸変異は、目的の位置のアミノ酸がアラニンに置換されているプライマーを使用して、実験例1に記載のOverlap extension PCR cloning法を実行することによって実行した。
【実施例】
【0089】
【表6】
JP2017201901A_000008t.gif
【実施例】
【0090】
作成した組換えベクターに挿入された構造遺伝子を表7及び図20A-Hにリストした。
【実施例】
【0091】
【表7】
JP2017201901A_000009t.gif
【実施例】
【0092】
実験例6
<ウエスタンブロット法によるタンパク質の発現確認>
実験例5において作成したベクターと[βS]-[α subunit]/pCMVを、実験例2に従ってCHO細胞にトランスフェクトした。作成したCHO細胞を表8にリストしている。
【実施例】
【0093】
【表8】
JP2017201901A_000010t.gif
【実施例】
【0094】
実験例3に従って、表5及び8のCHO細胞(組換え細胞No.2を除く)を用いてロドサイチンの発現を確認した。結果を図7に示す。図7におけるレーンと組換え細胞No.との対応関係は、表9に示している。
【実施例】
【0095】
【表9】
JP2017201901A_000011t.gif
【実施例】
【0096】
図7の通り、表8にリストしたCHO細胞は、α及びβサブユニットを培地中に分泌しており、更に、α及びβサブユニットは、いずれも同程度に培地中に分泌することが明らかとなった。
【実施例】
【0097】
実験例7
<変異型ロドサイチンの血小板凝集能の確認>
実験例6において用いたCHO細胞由来のロドサイチンが血小板凝集能を有するか否かを確認した。血小板は、ヒト由来のものを使用し、実験方法は、実験例4に従った。結果を図8に示す。No.4の細胞由来のβサブユニット(R56A)を含むロドサイチンは、ポジティブコントロールであるNo.1の細胞と同様に、血小板凝集能を示した。No.5の細胞(K53A, R56A)、No.6の細胞(R58A, K60A)、No.3の細胞(R28A, K31A)、No.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)及びNo.8の細胞(R28A, K31A, R58A, K60A)由来のロドサイチンは、いずれも血小板凝集能を示さなかった。
【実施例】
【0098】
実験例8
<変異型ロドサイチンによる、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集の抑制試験>
血小板凝集性物質が引き起こす血小板凝集を変異型ロドサイチンが抑制するか否かを試験した。本実験例において、血小板凝集性物質は、野生型ロドサイチンとした。血小板は、ヒト血小板を使用し、実験例4に基づいて調整した。
【実施例】
【0099】
血小板凝集能は、血小板凝集能測定装置ヘマトレーサー712(MCM HEMA TRACER 712, LMS株式会社)を用いた。20μLのヒト血小板溶液と80μLの各組換え細胞の培養液を混合して30分間インキュベートして、No.1のCHO細胞の培養液を11.1μL加えて、10分間、凝集率を継時的に測定した。
【実施例】
【0100】
結果を図9に示す。図9Aは、No.1のCHO細胞の培養液を80μLと11.1μL加えた結果を示しており、図9Bは、80μLの培地と、11.1μLのNo.1のCHO細胞の培養液を加えた結果を示している。No.5の細胞(K53A, R56A)とNo.6の細胞(R58A, K60A)由来のロドサイチンは、野生型ロドサイチンによる血小板凝集を完全に阻害した(図9C及びD)。No.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)とNo.8の細胞(R28A, K31A, R58A, K60A)由来のロドサイチンは、野生型ロドサイチンによる血小板の凝集を遅延させたことから、部分的な血小板凝集阻害能を有することが明らかとなった(図9F及びG)。
【実施例】
【0101】
実験例9
<野生型ロドサイチンのサブユニット構造>
No.1の細胞由来の野生型ロドサイチンとNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンのサブユニット構造を、SDS-PAGE(密度勾配:4-12%)及びBN-PAGE(密度勾配:4-16%)を用いて解析した。No.1の細胞とNo.5の細胞の培養液を、それぞれ、3000rpmで10分間遠心分離した。遠心した培養液から浮遊細胞及び浮遊物質を除去し、上清を取得した。さらに、取得した上清を0.45μmフィルターに通し、沈殿物などの固形物を除き、精製用サンプルとした。精製は、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、そして脱塩処理の3ステップにより行った。ゲルろ過クロマトグラフィーには、HiPrep 26/60 Sephacryl S-200 HRカラム(カラム容量320mL)(GE社製)を使用した。緩衝液は、50 mM Tris-HCl/0.1 M NaCl、pH 8.0で、流速は、1.3mL/minである。溶出サンプルを5mLごとの分画として採取した。溶出サンプルの血小板凝集能あるいは血小板凝集抑制能を指標に基づいて、野生型ロドサイチンあるいは変異型ロドサイチンを含む分画を選定した。続くイオン交換クロマトグラフィーには、HiTrap Q HP(カラム容量5mLを3つ連結)(GE社製)を使用した。ゲルろ過クロマトグラフィーと同じ緩衝液を使用し、NaCl濃度を0.1-0.5Mまで徐々に直線的に上げていき、目的タンパク(即ち、ロドサイチン)を溶出させた。流速は5mL/minである。目的タンパクが溶出される際の電気伝導率(mS/cm)を以下に示す:野生型ロドサイチン及びNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、35-36 mS/cm。さらに、脱塩処理およびPBS交換処理を行なうために、HiTrap Desaltingカラム(カラム容量5mLを4つ連結)(GE社製)と脱塩・緩衝液交換用自然落下/遠心分離型カラムPD-10(GE社製)を用いた。濃度が低いサンプルは、アミコンウルトラ(Amicon Ultra)15 遠心式フィルターユニット(10kDaあるいは30kDa用)(メルク社製)を用いて濃縮した。サンプル中のタンパク質濃度は、吸光光度法により測定した。アプライ量は、各サンプル5μL(SDS-PAGE)又は10μL(BN-PAGE)とし、電気泳動後のゲルは、CBBにより染色した。
【実施例】
【0102】
SDS-PAGE(4-12%)での結果を図10Aに示す。図10Aの通り、No.1の細胞もNo.5の細胞(K53A、R56A)も共に、還元条件(R)下では2本のバンドを示した。アミノ酸配列の長さに基づいて、分子量が高いバンドは、αサブユニットであり、分子量が低いバンドは、βサブユニットであることが明らかとなった。非還元条件(NR)下においては、No.1の細胞もNo.5の細胞(K53A、R56A)も共に、αサブユニットとβサブユニットのヘテロ2量体が検出された。これらの結果から、野生型ロドサイチンも変異型ロドサイチンもジスルフィド結合によって多量体を形成していることが明らかとなった。
【実施例】
【0103】
BN-PAGE(4-16%)での結果を図10Bに示す。図10Bの通り、No.5の細胞(K53A, R56A)は、ヘテロ4量体を示す位置にバンドが現れた一方で、No.1の細胞は、ヘテロ8量体を示す位置にバンドが現れた。これまで、野生型ロドサイチンは、ヘテロ4量体であると報告されていたが、今回の実験で野生型ロドサイチンは、ヘテロ8量体であることが示唆された。
【実施例】
【0104】
更に、他のアミノ酸変異を有する変異型ロドサイチン及びヘビ毒より単離精製したネイティブのロドサイチンに対してBN-PAGEを行なった。精製は、上述の方法を用いた。目的タンパクが溶出される際の電気伝導率(mS/cm)を以下に示す:4番目のDをAに置換した変異型αサブユニット(D4A)の構造遺伝子を含む組換えベクターを含むCHO細胞由来の変異型ロドサイチンは、35-36 mS/cm;No.3の細胞(R28A, K31A)及びNo.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは27-28 mS/cm。No.3の細胞(R28A, K31A)由来の変異型ロドサイチンは、ヘテロ3量体を示す位置にバンドが現れた(図11のレーン4)。No.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、ヘテロ4量体を示す位置にバンドが現れた(図11のレーン5)。No.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、ヘテロ2量体を示す位置にバンドが現れた(図11のレーン6)。ネイティブのロドサイチンもいずれの野生型ロドサイチンも、ヘテロ4量体を示すNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンよりも高分子量の位置にバンドが現れた(図11のレーン2、3、8、9)。レーン7は、4番目のDをAに置換した変異型αサブユニットの遺伝子を含む組換えベクターを含むCHO細胞由来の変異型ロドサイチンであり、野生型ロドサイチンと同様、ヘテロ8量体を示す位置にバンドが現れた。以上の結果、野生型ロドサイチンは、8量体であることが明らかとなった。また、変異型ロドサイチンは、アミノ酸変異の位置によって、サブユニットの数が変化することもあきらかとなった。表10には、図10と11の結果をリストした。
【実施例】
【0105】
【表10】
JP2017201901A_000012t.gif
【実施例】
【0106】
実験例10
<種々の濃度の変異型ロドサイチンによる、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集の抑制試験>
種々の濃度の変異型ロドサイチンを用いて、血小板凝集能を評価した。実験は、実験例8に基づいて行なった。野生型ロドサイチンの濃度は、10nMとした。結果を図12に示す。
【実施例】
【0107】
No.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、1.5625nMの濃度から抑制効果を発揮し、3.125nMの濃度から、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集を完全に抑制した(図12A)。No.3の細胞(R28A, K31A)由来の変異型ロドサイチンは、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集を抑制しなかった(図12B)。No.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、200-400nMの濃度から抑制効果を発揮し、800nMの濃度から、野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集を完全に抑制した(図12C)。
【実施例】
【0108】
さらに、0、1、2、2.5、3、4、5、10、15、20nMのNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンを用いて、血小板凝集能を評価した。図13の通り、No.5の細胞(K53A, R56A)由来の変異型ロドサイチンは、4nM以上の濃度で野生型ロドサイチンが引き起こす血小板凝集を完全に抑制した。
【実施例】
【0109】
実験例11
<フローサイトメーターによるヒトCLEC-2との結合の確認>
変異型ロドサイチンが、CLEC-2とポドプラニン(PDPN)との相互作用を阻害するか否かを評価した。
【実施例】
【0110】
ヒトCLEC-2発現細胞として,ドキシサイクリン(Dox)による発現誘導が可能なT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞(J Biol Chem. 2007 Sep 7;282(36):25993-26001)を使用した。
【実施例】
【0111】
T-REx ヒトCLEC-2発現293細胞は、終濃度10μg/μLドキシサイクリンを含む血清DMEM培地を用いて直径15cm培養皿に対して100%占有率になるまで培養した。培養液を捨て1×PBSで1回細胞を洗浄した。培養皿1枚に対して2mlのトリプシン-EDTA-Na溶液を加え、培養皿全体に行き渡らせた後、トリプシン-EDTA-Na溶液を回収して、培養皿を37℃で2分インキュベートした。インキュベート後、20mLのDMEMと0.2mL P/S溶液とを加えた溶液にてCHO細胞を懸濁し、50mLファルコンチューブに回収し,1,000rpm,5分間,室温で遠心分離し、上清を捨てた後、血清DMEMにてT-REx ヒトCLEC-2発現293細胞を5×106cells/mLに調整した。
【実施例】
【0112】
実験例3に従い、サンプルとして、No.1の細胞(野生型)、No.5の細胞(K53A, R56A)、No.3の細胞(R28A, K31A)及びNo.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)の培養液を使用した。ネイティブのロドサイチンは、....。ネガティブコントロールは、PBSとした。各サンプルは、ロドサイチンが1μM、100nM及び10nMとなるように調整した。
【実施例】
【0113】
ヒトIgG FcをPDPNに融合させて、PDPN-ヒトFc融合タンパク質とした。ネガティブコントロールとして、ヒトIgG Fcを使用した。実験での使用量は、0.5μgとした。
【実施例】
【0114】
T-RExヒトCLEC-2発現293細胞の浮遊液50μLに、種々の濃度(1μM、100nM及び10nM)のロドサイチンを含むサンプルおよび0.5μgのPDPN-human Fc融合タンパク質を同時に混合し、室温で30分間インキュベートした後、洗浄するために400μLの1×PBSを加え、3,000rpm、5分間、室温で遠心分離し、上清を捨て、T-RExヒトCLEC-2発現293細胞を回収した。回収されたT-RExヒトCLEC-2発現293細胞に、抗ヒトIgG抗体Alexa 488(Molecular Probes社)を加え、室温で30分間インキュベートし、サンプルとした。検出にはAccuri C6 Flow Cytometer(Becton, Dickinson and Company社)を使用した。
【実施例】
【0115】
またネガティブコントロールとして、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLにPBS50μLおよびヒトIgG Fcを混合した以外は、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。更に、ポジティブコントロールとして、T-RExヒトCLEC-2発現細胞の浮遊液50μLにPBS50μLおよびPDPN-ヒトFc融合タンパク質を混合した以外は、上記と同様の方法でヒトCLEC-2との結合の確認を行った。
【実施例】
【0116】
結果を図14に示す。No.1の細胞(野生型)の培養液、No.5の細胞(K53A, R56A)の培養液及びネイティブのロドサイチンの領域領域(図14の黒色領域)は、1μM及び100μMの濃度で、ネガティブコントロールの領域(図14の灰色領域)と重なることから、No.5の細胞(K53A, R56A)由来の野生型ロドサイチンは、ヒトCLEC-2と結合して、ヒトCLEC-2とポドプラニンとの結合を阻害することが明らかとなった。また、No.3の細胞(R28A, K31A)は、1μMの濃度で、ネガティブコントロールの領域(図14の灰色領域)と重なることから、No.5の細胞(K53A, R56A)由来の野生型ロドサイチンは、ヒトCLEC-2と結合して、ヒトCLEC-2とポドプラニンとの結合を阻害することが明らかとなった。一方、1μM以下の濃度のNo.7の細胞(R28A, K31A, K53A, R56A)由来の野生型ロドサイチンは、ヒトCLEC-2とポドプラニンとの結合を阻害しなかった。
【実施例】
【0117】
実験例12
<変異型ロドサイチンによるがん細胞誘導性血小板凝集抑制>
変異型ロドサイチンが、がん細胞誘導性の血小板凝集を抑制するか否かを評価した。
【実施例】
【0118】
がん細胞として、ヒトポドプラニン(hPod)発現CHO細胞(hPod-CHO)を使用した(1×106 cells/μLと5×106 cells/μL)。ヒト血小板は、実験例4に基づいて、100×104 PLT/μLとなるように調整した。サンプルとして、No.5の細胞(K53A, R56A)由来の野生型ロドサイチン(100nMと600nM)を使用し、ネガティブコントロールとして、PBSを使用した。
【実施例】
【0119】
結果を図15に示す。1×106 cells/μLと5×106 cells/μLのhPod-CHOの両方において、100nMのNo.5の細胞(K53A, R56A)由来の野生型ロドサイチンは、hPod-CHOが誘導するヒト血小板凝集を抑制した。
【実施例】
【0120】
実験例13
<変異型ロドサイチンによるがん細胞の血行性転移抑制>
変異型ロドサイチンが、がん細胞の血行性転移を抑制するか否かを評価した。
【実施例】
【0121】
がん細胞として、ヒトポドプラニン(hPod)発現CHO細胞(hPod-CHO)を使用した。サンプルとして、終濃度1μMの野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を使用し、ネガティブコントロールとして、PBSを使用した。7週齢のメスBALB/cヌード(nu/nu)マウスを使用した(各群でn=5)。終濃度1μMの野生型ロドサイチン(K53A, R56A)又はPBSと1×106 cells/μLのhPod-CHOをマウスに眼窩投与して実験開始とした。野生型ロドサイチン(K53A, R56A)又はPBSは、一日おきに投与した。実験は、14日間行なった。実験終了後、マウスを屠殺し、肺、血液、肺結節を回収した。
【実施例】
【0122】
結果を図16から19に示す。図16の写真の通り、ネガティブコントロールのPBSでは、がんが肺に転移している一方で、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)は、がんの転移を抑制していることが視覚的に明らかとなった。
【実施例】
【0123】
図17Aは、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスと、PBSを投与したマウスの肺の質量の比較結果を示している。PBSを投与したマウスの肺は、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスの肺と比較して、がんの転移に伴って質量が有意に増加した。図17Bは、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスと、PBSを投与したマウスの血液中に含まれる血小板数の比較を示している。両者において、血小板の数に有意な差は見られなかった。図17Cは、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスと、PBSを投与したマウスの肺結節数の比較を示している。PBSを投与したマウスは、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスと比較して、肺結節数が有意に増加した。
【実施例】
【0124】
図18は、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスと、PBSを投与したマウスの、免疫染色した肺の写真である。PBSを投与したマウスは、肺組織全体に染色された(図18A)一方で、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)を投与したマウスは、肺組織がほとんど染色されなかった(図18B)。図19は、全肺領域あたりのがん領域の比をグラフとして示している。図19から明らかな通り、野生型ロドサイチン(K53A, R56A)は、著しくがんの転移を抑制したことが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20A】
19
【図20B】
20
【図20C】
21
【図20D】
22
【図20E】
23
【図20F】
24
【図20G】
25
【図20H】
26