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明細書 :酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-206496 (P2017-206496A)
公開日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発明の名称または考案の名称 酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
C12N   5/20        (2006.01)
C12M   1/34        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61P  11/00        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61K  36/06        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
FI C07K 16/18 ZNA
C12P 21/08
C12N 5/20
C12M 1/34 F
G01N 33/53 G
G01N 33/53 P
C12N 15/00 A
A61P 11/00
A61P 37/06
A61K 36/06 Z
A61K 39/395 J
A61K 39/395 U
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2017-056719 (P2017-056719)
出願日 平成29年3月22日(2017.3.22)
優先権出願番号 2016065437
優先日 平成28年3月29日(2016.3.29)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中田 光
【氏名】中垣 和英
【氏名】田澤 立之
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B064
4B065
4C085
4C087
4H045
Fターム 4B029AA07
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB20
4B029CC01
4B029CC02
4B029FA12
4B029FA15
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA13
4B065AA91X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA46
4C085AA14
4C085AA19
4C085CC23
4C085DD63
4C087AA10
4C087BC11
4C087CA12
4C087MA57
4C087NA20
4C087ZA59
4C087ZB08
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
要約 【課題】酵母由来組換えヒトGM-CSFの吸入療法又は皮下注射による治療法における、酵母由来組換えヒトGM-CSFの濃度を患者体内で産出されたヒトGM-CSFと区別して測定するための、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみに特異的に結合するモノクローナル抗体の提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するCDR-L1,CDR-L2及びCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、特定のアミノ酸配列を有するCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3を含む重鎖可変ドメインを有する抗酵母由来組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子抗体(GM-CSF)又はその抗原結合フラグメント。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、
を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、
を含む重鎖可変ドメインを有することを特徴とする抗酵母由来組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor;GM-CSF)抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有する、請求項1に記載の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマであって、前記ハイブリドーマが受託番号NITE P-02224であることを特徴とするハイブリドーマ。
【請求項4】
酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、
請求項3に記載のハイブリドーマを培養する工程と、
前記ハイブリドーマから生産された抗体を単離する工程と、
を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキットであって、請求項1又は2に記載の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントを含むことを特徴とする検出キット。
【請求項6】
さらに、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を含む、請求項5に記載の検出キット。
【請求項7】
酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するための方法であって、
前記血液試料と、請求項1又は2に記載の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントとを接触させて、抗原抗体反応を行う1次抗原抗体反応工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
さらに、前記1次抗原抗体反応工程の後に、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を接触させて、抗原抗体反応を行う2次抗原抗体反応工程を備える、請求項7に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
肺胞蛋白症(Pulmonary alveolar proteinosis;PAP)とは、サーファクタント(90%のリン脂質と10%のタンパク質とによって構成された生体界面活性剤)の生成又は分解過程に障害があり、そのことが原因で肺胞腔内、又は終末細気管支内にサーファクタントが集積する稀な疾患である。PAP(以下、括弧内は、推定される出現頻度)は、自己免疫性PAP(約90%)、続発性PAP(約9%)、先天性PAP(約1%以下)、未分類PAP(極めて稀)に分類される。
【0003】
PAP患者の中でも、多くを占める自己免疫性PAPでは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor;GM-CSF)に対する中和自己抗体が存在し、肺胞マクロファージ、好中球の機能障害が病態に関与する。GM-CSFとは、マクロファージ、リンパ球、上皮細胞又は血管内皮細胞により産生される糖タンパク質であり、顆粒球又はマクロファージの前駆細胞に作用し、それらの増殖と分化とを促進するものである。
健常者の肺では、肺胞の呼吸上皮を構成する細胞の1種であるII型肺胞上皮細胞から放出されるGM-CSFが未熟な肺胞マクロファージのGM-CSF受容体に結合する。このGM-CSFと受容体との結合によるシグナルの伝達により、血球系転写因子であるPU.1が発現して肺胞マクロファージの終末分化が起こり、成熟マクロファージとなる。成熟マクロファージは、サーファクタントを取り込み、分解することにより肺胞の恒常性を保つ。一方、自己免疫性PAP患者の肺では、II型肺胞上皮細胞から放出されるGM-CSFは肺胞内に豊富にある抗GM-CSF自己抗体により中和され、GM-CSFが未熟な肺胞マクロファージの受容体に結合するのを防ぐ。そのために、肺胞マクロファージの終末分化は起こらず、サーファクタントの分解が障害される。
【0004】
自己免疫性PAPの症状としては、例えば、労作時呼吸困難、咳、喀痰、体重減少、発熱等が挙げられるが、約30%の患者は無症状である。画像所見の割に症状が比較的軽微であることが自己免疫性PAPの特徴である。自己免疫性PAPの5年生存率は96%、10年生存率は88%であるが、患者はこの間繰り返し全肺洗浄等の治療を要する場合が多い。
【0005】
自己免疫性PAPの治療方法としては、洗浄療法(全肺洗浄)、試験的治療法としてGM-CSFの吸入療法、GM-CSFの皮下注射(例えば、非特許文献1参照。)等が挙げられる。
【0006】
吸入又は皮下注射による投与で用いられるGM-CSFは、酵母由来組換えヒトGM-CSFであって、N末端から23番目のアルギニンがロイシンに置き換えられているが、機能は維持されており、ジェンザイム社よりリウカイン(登録商標)という商品名で販売されている。
【0007】
一方で、GM-CSFは様々な疾病状態を導く原因となることが知られている。
GM-CSFによって引き起こされる疾病は多岐に渡るが、代表的なものとしては、(1) 喘息、アトピー、花粉症等のアレルギー疾患、(2)移植片拒絶反応、移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)、(3)関節リウマチ等の自己免疫疾患、等が挙げられる。例えば、アレルギー個体の肺や、慢性関節リウマチ患者の関節においては過剰発現したヒトGM-CSFが検出され、アレルギー個体の皮膚からはヒトGM-CSFのmRNAが過剰に検出されている。また、アトピー性皮膚炎の炎症惹起細胞である単球がGM-CSFの産生により寿命が延長しているとの報告がある。その他、GM-CSFは白血病細胞の増殖を刺激することが示されており、白血病の原因因子とも考えられている。
【0008】
これらの報告から、ヒトGM-CSFが原因となって引き起こされる様々な病気を治療するために、過剰発現したヒトGM-CSFに対して強い親和性及び中和能をもち、且つ拒絶反応を示さない抗ヒトGM-CSF抗体(抗ヒトGM-CSF自己抗体を含む。)を投与することが提案されている(例えば、特許文献1、2及び非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2000-198799号公報
【特許文献2】特開2007-116947号公報
【0010】

【非特許文献1】Mani S. Kavuru et al., “Exogenous Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor Administration for Pulmonary Alveolar Proteinosis”, Am. J. Respir. Crit. Care Med., vol.161, pp1143-1148, 2000.
【非特許文献2】K. Uchida et al., “Granulocyte/macrophage-colony-stimulating factor autoantibodies and myeloid cell immune functions in healthy subjects”, Blood, vol.113, no.11, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
自己免疫性PAP患者に対する酵母由来組換えヒトGM-CSFの吸入療法又は皮下注射による治療法において、酵母由来組換えヒトGM-CSFの最高血中濃度及び半減期を算出するために、患者の体内で産生されたヒトGM-CSFと吸入で体内に入った酵母由来組換えヒトGM-CSFとを、区別して測定する方法が求められている。
特許文献1、2及び非特許文献2に記載の抗ヒトGM-CSF抗体では、患者の体内で産生されたヒトGM-CSFと、酵母由来組換えヒトGM-CSFとは、いずれもヒトGM-CSFであるため、区別して検出することができない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る抗酵母由来組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor;GM-CSF)抗体又はその抗原結合フラグメントは、(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有する。
【0014】
上記態様に係る抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有してもよい。
【0015】
本発明の第2態様に係る酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、受託番号NITE P-02224であるハイブリドーマである。
【0016】
本発明の第3態様に係る酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法は、上記第2態様に係るハイブリドーマを培養する工程と、前記ハイブリドーマから生産された抗体を単離する工程と、を備える方法である。
【0017】
本発明の第4態様に係る酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキットは、上記第1態様に係る抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントを含むものである。
【0018】
上記態様に係る検出キットは、さらに、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を含んでもよい。
【0019】
本発明の第5態様に係る酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するための方法は、前記血液試料と、上記第1態様に係る抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントとを接触させて、抗原抗体反応を行う1次抗原抗体反応工程を備える方法である。
【0020】
上記態様に係る検出方法は、さらに、前記1次抗原抗体反応工程の後に、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を接触させて、抗原抗体反応を行う2次抗原抗体反応工程を備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記態様によれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に検出することができる。また、上記態様に係る検出キットによれば、健常体を対象とする薬物動態試験において、酵母由来組換えヒトGM-CSFの正確な血中濃度を測定することができ、最高血中濃度及び半減期を算出することができる。さらに、自己免疫性PAP患者を対象とする医師主導治験において、正確なトラフ値(薬物を反復投与したときの定常状態における最低血中薬物濃度)を測定することができ、患者の全身クリアランス(薬物を体外に排泄する能力)を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】試験例1におけるNo.1~4の合成ペプチド及び全長の酵母由来組換えヒトGM-CSF(No.5)(別名:サルグラモスチム(sargramostim)、Genzyme社製)を固相化した各ウェルを示す模式図である。
【図2】(A)試験例1における反応停止液を添加直後のNo.1~4の合成ペプチド及び全長の酵母由来組換えヒトGM-CSF(No.5)(別名:サルグラモスチム(sargramostim)、Genzyme社製)を固相化した各ウェルの発色の様子を示す画像である。(B)試験例1におけるNo.1~5の合成ペプチドを固相化した各ウェルでの450nmの吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【図3】試験例2における変性した酵母由来組換えヒトGM-CSF、未変性の酵母由来組換えヒトGM-CSF、大腸菌由来組換えヒトGM-CSF、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞産生組換えヒトGM-CSF及びウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)を固相化した各ウェルでの450nmの吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【図4】試験例4における50mgの酵母由来組換えヒトGM-CSFを吸入投与した健常カニクイザルでの酵母由来組換えヒトGM-CSFの血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪モノクローナル抗体≫
一実施形態において、本発明は、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、
を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、
を含む重鎖可変ドメインを有する、抗酵母由来組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor;GM-CSF)抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。

【0024】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基に特異的に結合することにより、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に検出することができる。さらに、本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントを用いることで、酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFの濃度を正確に測定することができる。

【0025】
本明細書において、「顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor;GM-CSF)」とは、マクロファージ、リンパ球、上皮細胞又は血管内皮細胞により産生される糖タンパク質であり、顆粒球又はマクロファージの前駆細胞に作用し、それらの増殖と分化を促進するものを意味する。
本実施形態における酵母由来組換えヒトGM-CSFのアミノ酸配列(配列番号7)は、N末端から23番目のアミノ酸残基がアルギニンからロイシンに置換している。本発明者らは、このロイシン23残基に特異的に結合するモノクローナル抗体を見出し、本発明を完成するに至った。
尚、本明細書において、N末端からX番目のアミノ酸を「アミノ酸X残基」という。例えば、N末端から23番目のアミノ酸がロイシンの場合には「ロイシン23残基」という。

【0026】
本明細書において、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な特異性を持つ抗体を意味する。また、本明細書において、モノクローナル抗体には、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスが含まれる。
本明細書において、モノクローナル抗体の「抗原結合フラグメント」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、標的タンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体等が挙げられる。

【0027】
本明細書において、「特異的結合」とは、抗体が標的タンパク質(抗原)にのみ結合することを意味し、例えば試験管内におけるアッセイ、好ましくは精製した野生型抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore、GE-Healthcare Uppsala, Sweden等)における抗体の抗原のエピトープへの結合等により定量することができる。結合の親和性は、ka(抗体-抗原複合体からの抗体結合に関する速度定数)、kD(解離定数)、及びKD(kD/ka)によって規定することができる。抗体が抗原に特異的に結合している場合の結合親和性(KD)は、10-8mol/L以下であることが好ましく、10-13mol/L以上10-9mol/L以下であることがより好ましい。

【0028】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、中でも、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを含むことが好ましい。
本明細書において、「CDR」はcomplementarity-determining regionを意味する。

【0029】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基に特異的に結合することにより、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に認識するものである。従って、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基の特異的認識能を保持していれば、前記(a)~(f)の配列番号1~6に示されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよい。
ここで、欠失、置換又は付加されてもよいアミノ酸の数としては、1~3個が好ましく、1~2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。

【0030】
本明細書中において「置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・スレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)等で分類することができる。
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントにおける1~数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列変異体は、抗原への結合活性が対照抗体(例えば、従来の抗ヒトGM-CSF抗体等)よりも高いことが好ましい。

【0031】
更に、発現精製が容易であることから、本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗原を認識するために必要な最小単位である重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインをフレキシブルなペプチドリンカーで結合した単可変ドメインフラグメントであることが好ましい。即ち、scFv抗体であることが好ましい。
具体的には、本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列と、配列番号5に示されるアミノ酸配列と、配列番号6に示されるアミノ酸配列と、配列番号1に示されるアミノ酸配列と、配列番号2に示されるアミノ酸配列と、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、をこの順に有することが好ましい。

【0032】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、ハイブリドーマ法や組換えDNA法等によって作製することができる。

【0033】
ハイブリドーマ法としては、例えば、ケーラー及びミルスタインにより開発された方法(例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256:495,1975. 参照)等が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞としては、例えば抗原(例えば、酵母由来組換えヒトGM-CSF、そのロイシン23残基を含むペプチド断片、又はこれらを発現する細胞等)で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ等)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球等が挙げられる。また、免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞又はリンパ球等に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することができる。ミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、同一の動物種起源のものであることが好ましい。ハイブリドーマを得る方法としては、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、標的タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る方法等が挙げられる。ハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体を得る方法としては、例えば標的タンパク質に対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを移植した哺乳動物の腹水から、取得する方法等が挙げられる。

【0034】
組換えDNA法としては、例えば上記本実施形態の抗体又は抗体の機能的断片をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本実施形態の抗体を組換え抗体として産生させる手法等が挙げられる(例えば、「P. J. Delves, Antibody Production : Essential Techniques, 1997 WILEY」、「P. Shepherd and C. Dean Monoclonal Antibodies, 2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS」、「Vandamme A. M. et al., Eur. J. Biochem. 192 : 767-775 (1990)」参照)。
本実施形態の抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAをそれぞれ別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(例えば、国際特許出願第94/11523号参照)。本実施形態の抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液から分離及び精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離及び精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いた方法では、例えば、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等)を作製し、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得する方法等が挙げられる。

【0035】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメントは、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基に特異的に結合できるものであれば、上述したようなアミノ酸配列変異体であってもかわない。
アミノ酸配列変異体は、抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、又はペプチド合成によって作製することができる。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖又は軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域及びCDR)であってもよい。また、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法等を用いてもよい(例えば、「PNAS, 102 : 8466-8471 (2005)」、「Protein Engineering, Design&Selection, 21 : 485-493 (2008)」、国際公開第2002/051870号、「J. Biol. Chem., 280 : 24880-24887 (2005)」、「Protein Engineering, Design&Selection, 21 : 345-351 (2008)」参照)。

【0036】
本実施形態の抗体又はその抗原結合フラグメント(上述のアミノ酸配列変異体等も含む)の抗原への結合活性は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリー法、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、ラジオイムノアッセイ法、免疫沈降法、免疫染色法等により評価することができる。

【0037】
≪ハイブリドーマ≫
一実施形態において、本発明は、酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマであって、前記ハイブリドーマが受託番号NITE P-02224である、ハイブリドーマを提供する。

【0038】
本実施形態のハイブリドーマによれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、本実施形態のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを含む抗体である。

【0039】
本実施形態におけるハイブリドーマは、上述の≪モノクローナル抗体≫にて例示されたハイブリドーマ法を用いて、製造することができる。
具体的には、酵母由来組換えヒトGM-CSF、そのロイシン23残基を含むペプチド断片、又はこれらを発現する細胞をPBS(Phosphate-Buffered Saline)、生理食塩水等で適当量に希釈及び懸濁し、通常のアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント等)を適量混合し、乳化し、それをマウスに4~21日毎に計2~10回皮下又は腹腔内投与する。また、抗原免疫時に適当な担体を使用してもよい。マウスの血清中の抗体レベルが免疫により上昇するのを確認した後、最終免疫を行い、その面系の2~5日後に免疫した動物の脾臓又はリンパ節を採取する。続いて、採取された細胞をマウスミエローマ細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生マウスハイブリドーマ細胞を作製する。

【0040】
細胞融合は、公知の方法で行うことができる。例えば、免疫した動物から採取した抗体産生細胞(脾臓、リンパ節等の細胞)とミエローマ細胞とを培養液中で1:1~10:1程度の割合でよく混合し、PEG溶液(例えば、平均分子量1,000~6,000程度のもの)を37℃に加温し、両細胞にPEGを30~60%(w/v)の濃度で添加し、混合し、両細胞を融合する。PEGを除去した後、融合細胞を所定濃度で播種する。

【0041】
マウス由来のミエローマ細胞株としては、例えば、P3(P3-X63Ag8)、P3U1(P3-X63Ag8U1)、X63.653(X63Ag8.653)、SP2(Sp2/0-Ag14)、FO、NS-1(NSI/1-Ag4-1)、NSO/1、FOX-NY等が、ラット由来のミエローマ細胞株として、例えば、Y3-Ag1.2.3、YB2/0、IR983F等が挙げられる。

【0042】
次に、例えば、HAT選択培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む培養液)等で数日~数週間培養し、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させてハイブリドーマを選択培養する。

【0043】
次に、選択培養液で生存したハイブリドーマの中から、目的の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングする。スクリーニング方法は特に限定されない。例えば、上述の≪モノクローナル抗体≫において、抗原への結合活性の評価方法として例示された方法を用いて、抗原とハイブリドーマ培養上清中の抗体との結合性の有無を調べることにより、目的のハイブリドーマ株を選抜できる。そして、目的の抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、必要に応じてモノクローニングし、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得ることができる。

【0044】
本実施形態のハイブリドーマは、2016年3月22日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)にプタベスト条約の規定化で受託番号NITE P-02224として国内寄託されている。

【0045】
≪酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法≫
一実施形態において、本発明は、酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合するモノクローナル抗体の製造方法であって、上述のハイブリドーマを培養する工程と、前記ハイブリドーマから生産された抗体を単離する工程と、を備える、製造方法を提供する。

【0046】
本実施形態の製造方法によれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのロイシン23残基に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、本実施形態の製造方法により得られるモノクローナル抗体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを含む抗体である。

【0047】
<培養工程>
まず、上述のハイブリドーマを培養する。培地としては、例えば、10%牛胎児血清加RPMI1640が一般的であり、その他には、ハイブリドーマ用に開発された培地(例えばG.I.T.培地(極東科学社製、和光純薬社製等)等が挙げられる。さらに、ハイブリドーマの選択に用いられる培地としては、例えば、HAT選択培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む培養液)等が挙げられる。培養温度は、例えば、30℃以上40℃以下でよく、培養時間は必要なハイブリドーマの数によって、適宜設定できる。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養し、その培養上清として得ることにより、又は、ハイブリドーマを哺乳動物の腹腔に投与して増殖させ、その腹水として得ることにより、ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得することができる。

【0048】
<単離工程>
モノクローナル抗体の単離及び精製は、通常の免疫グロブリンの分離精製法等により、行うことができる。例えば、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えば、DEAE等)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相又は活性吸着剤(例えば、プロテインA、プロテインG等)を用いた方法等により、モノクローナル抗体を単離及び精製することができる。

【0049】
得られたモノクローナル抗体の抗原への結合活性は、上述の≪モノクローナル抗体≫において、抗原への結合活性の評価方法として例示された方法を用いて、評価することができる。

【0050】
≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫
一実施形態において、本発明は、酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキットであって、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、検出キットを提供する。

【0051】
本実施形態の検出キットによれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に検出することができる。また、健常体を対象とする薬物動態試験において、酵母由来組換えヒトGM-CSFの正確な血中濃度を測定することができ、最高血中濃度及び半減期を算出することができる。さらに、自己免疫性PAP患者を対象とする医師主導治験において、正確なトラフ値を測定することができ、患者の全身クリアランスを推定することができる。

【0052】
<標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体>
本実施形態の検出キットは、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに加えて、さらに、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を含んでいてもよい。標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体としては、上述のモノクローナル抗体の由来動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ等)に対する抗体であることが好ましい。例えば、上述のハイブリドーマに対する抗体である場合、マウス由来のモノクローム抗体であるため、抗マウス抗体を使用することが好ましい。また、標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体には、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスが含まれる。

【0053】
前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を標識する物質としては、例えば、安定同位体、放射性同位体、蛍光物質、酵素、磁性体等が挙げられる、中でも、検出が容易且つ高感度であることから、蛍光物質であることが好ましい。上記標識物質を備えることで、酵母由来組換えヒトGM-CSFが結合しているか否かを簡便且つ高感度に確かめることができる。

【0054】
安定同位体としては、例えば13C、15N、H、17O、18Oが挙げられる。放射性同位体としては、例えばH、14C、13N、32P、33P、35Sが挙げられる。

【0055】
蛍光物質としては、例えばシアニン色素(例えばCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられる。

【0056】
酵素としては、例えばアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ(HRP)等が挙げられる。標識物質が酵素である場合、酵素基質を使用することが好ましい。酵素基質としては、アルカリフォスファターゼの場合、p-ニトロフェニルリン酸(p-nitropheny phosphase;pNPP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸(4-MUP)等を用いることができる。また、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3’-diaminobenzidine(DAB)、3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)、o-phenylenediamine(OPD)、2,2-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(ADHP)等を用いることができる。

【0057】
磁性体としては、例えばガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体若しくはキレート錯体等が挙げられる。

【0058】
<支持体>
本実施形態の検出キットにおいて、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントは支持体上に固定化された状態であってもよい。

【0059】
支持体の形態としては、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、マイクロタイタープレート、チューブ、キャピラリチューブ、ビーズ、粒子、濾紙、フィルター、膜、ディスク、スティック、ストリップ、スライドグラス、チップ等が挙げられる。

【0060】
支持体の材料としては、当該分野において公知のものをいずれも使用でき、例えば、ガラス、樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリビニルブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、レーヨン等)、セルロース及びその誘導体(例えば、ニトロセルロース等)等が挙げられる。
支持体への上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントの固定方法は、例えば、物理的吸着、共有結合又は非共有結合(例えば、イオン結合、静電結合、疎水性相互作用等)等が挙げられる。

【0061】
支持体は非特異的吸着を防止するためにブロッキング処理されていることが好ましい。ブロッキング剤は、当該分野において公知のものをいずれも使用でき、例えば、検出対象の哺乳動物以外の哺乳動物の血清アルブミン(例えば、対象がヒトである場合、例えばウシ血清アルブミン(BSA))、脱脂粉乳、カゼイン等が挙げられる。
上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントが固定され、ブロッキング処理された支持体の表面は、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、或いはヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースのようなセルロースエステル等)、又は非還元多糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ラフィノース等)等でコーディングされていてもよい。このようなコーディングにより、支持体上の上述のモノクローナル抗体を含む固相は非常に安定化し、長期間の保存に適する。

【0062】
<その他>
本実施形態の検出キットは、必要に応じて、反応停止液を更に含んでいてもよい。反応停止液としては、例えば、硫酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。

【0063】
本実施形態の検出キットは、さらに、緩衝液を含んでいてもよい。緩衝液としては、緩衝液は、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。緩衝液は、必要に応じて、NaCl、界面活性剤(例えば、Tween 20、Triton X-100等)及び防腐剤(例えば、アジ化ナトリウム等)のうち少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。緩衝液の具体例としては、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)、PBS-T(PBS-Tween 20)、トリス緩衝生理食塩水(Tris Buffered Saline;TBS)、又はTBS-T(TBS-Tween 20)等が挙げられる。

【0064】
本実施形態の検出キットにおいて、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメント及び標識された前記抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体は、乾燥状態であってもよく、上述の緩衝液に溶解した上であってもよい。中でも、これらの抗体は、保存安定性から、乾燥状態であることが好ましい。

【0065】
本実施形態の検出キットは、さらに、標準曲線(検量線)作成用の標準溶液、標準溶液希釈剤(例えば、上述の緩衝液等)を含んでいてもよい。
本実施形態の検出キットは、さらに、洗浄液(例えば、上述の緩衝液等)や、インキュベーションの間に支持体をシールするシーリング材(例えば、支持体がプレートである場合、プレートシール等)を含んでいてもよい。

【0066】
本実施形態の検出キットは、さらに、検出装置を備えていてもよい。検出装置としては、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、マイクロプレートリーダー、蛍光スキャナー、2光子励起スキャナー等が挙げられる。

【0067】
≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するための方法≫
一実施形態において、本発明は、酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するための方法であって、前記血液試料と、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントとを接触させて、抗原抗体反応を行う1次抗原抗体反応工程を備える、方法を提供する。

【0068】
本実施形態の検出方法によれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に検出することができる。また、健常体を対象とする薬物動態試験において、酵母由来組換えヒトGM-CSFの正確な血中濃度を測定することができ、最高血中濃度及び半減期を算出することができる。さらに、自己免疫性PAP患者を対象とする医師主導治験において、正確なトラフ値を測定することができ、患者の全身クリアランスを推定することができる。

【0069】
<1次抗原抗体反応>
まず、酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体から血液試料を採取する。血液中での酵母由来組換えヒトGM-CSFの濃度のピーク時を測定する場合は、酵母由来組換えヒトGM-CSFの投与から、例えば、15~30分後に血液試料を採取すればよい。

【0070】
本明細書において、「血液試料」としては、例えば、血液、血清、血漿等が挙げられる。
本明細書において、「健常体」及び「被検体」としては、例えば、ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物等が挙げられ、中でも、ヒトが好ましい。

【0071】
また、被検体に酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与する方法としては、例えば、酵母由来組換えヒトGM-CSFを含む製剤を静脈内注射する方法、マイクロスプレーを用いて気管内に噴霧投与する方法、又は膜型ネブライザー或いはジェットネブライザーを用いて、経気道的に投与する方法等が挙げられる。

【0072】
酵母由来組換えヒトGM-CSFを含む製剤は、その他の成分として、薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含んでいてもよい。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤としては、例えば、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。

【0073】
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、酵母由来組換えヒトGM-CSFの生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、酵母由来組換えヒトGM-CSFの移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、例えば、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質等を挙げることができる。

【0074】
薬理学上許容される担体又は希釈剤として、さらに具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。

【0075】
酵母由来組換えヒトGM-CSFを含む製剤が注射剤である場合、無菌組成物は、例えば、注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。また、注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤(例えば、アルコール(具体的には、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等))、又は非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50等)と併用してもよい。

【0076】
また、油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、又は酸化防止剤をさらに配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。

【0077】
また、注射剤は、非水性の希釈剤(例えば、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類等)、懸濁剤、又は乳濁剤として調製することもできる。このような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤等の配合により行うことができる。注射剤は、用事調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法等によって、無菌の固体組成物とし、使用前に注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。

【0078】
酵母由来組換えヒトGM-CSFの投与量は、被検体の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
例えば、マイクロスプレー、膜型ネブライザー又はジェットネブライザーを用いて被検体(ヒト)に吸入させる場合、被検体に対し、1日の投与量として、1kg体重当たり、例えば1ng~5μgの酵母由来組換えヒトGM-CSFの量を投与すればよく、例えば10ng~1μgの酵母由来組換えヒトGM-CSFの量を投与すればよく、例えば50ng~500ngの酵母由来組換えヒトGM-CSFの量を投与すればよい。投与回数としては、1日平均当たり、1回~数回投与すればよい。

【0079】
ピーク時の酵母由来組換えヒトGM-CSFの血中濃度としては、例えば200pg/mL~2ng/mLであればよく、例えば400pg/mL~1.5ng/mLであればよく、例えば500pg/mL~1ng/mLであればよい。

【0080】
続いて、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントと、被検体から採取した血液試料とを接触させて、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントと、血液試料中の抗原(酵母由来組換えヒトGM-CSF)とによる1次抗原抗体反応を行う。この抗原抗体反応は、4℃以上37℃以下にて行うことが好ましい。反応時間については、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントの抗体価及び血液試料中の抗原(酵母由来組換えヒトGM-CSF)の量によって、適宜調整することができる。

【0081】
上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、緩衝液等を用いて溶解又は希釈して用いればよい。使用する緩衝液としては、上述の≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0082】
上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体に、血液試料を滴下し、接触させればよい。また、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがビーズ、粒子等の支持体に固定されている場合、抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を緩衝液等に懸濁し、抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を含む溶液と、血液試料とを混合して接触させればよい。使用する緩衝液としては、上述の≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0083】
また、1次抗原抗体反応前に、血液試料中に含まれる酵母由来組換えヒトGM-CSFを変性させる前処理工程を備えていてもよい。酵母由来組換えヒトGM-CSFを変性させることにより、血液試料中に含まれる抗ヒトGM-CSF自己抗体が酵母由来組換えヒトGM-CSFに結合し複合体を形成するのを防ぐ事ができる。変性される方法としては、例えば、変性剤又は界面活性剤存在下において、例えば90℃以上95℃以下の温度で、例えば3分以上10分以下加熱する方法等が挙げられる。使用する変性剤としては、例えば、ジチオトレイトール (dithiothreitol;DTT)等が挙げられる。使用する界面活性剤としては、例えば、Sodium dodecyl sulfate(SDS)等が挙げられる。

【0084】
標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントを用いることにより、1次抗原抗体反応を検出してもよい。また、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、酵母由来組換えヒトGM-CSFが上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに結合した際に、センサー等により1次抗原抗体反応を検出してもよい。検出感度及び反応特異性の観点から、続く、2次抗原抗体反応工程を行い、酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出することが好ましい。

【0085】
<2次抗原抗体反応>
続いて、血液試料を取り除き、洗浄する。洗浄は、例えば、緩衝液等を用いて行えばよい。使用する緩衝液としては、上述の≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0086】
続いて、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体と、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントとを接触させる。この抗原抗体反応についても、4℃以上37℃以下にて行うことが好ましい。反応時間については、使用する標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体の抗体価によって、適宜調整することができる。

【0087】
使用する標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体としては、上述の≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0088】
標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体は、例えば、緩衝液等を用いて溶解又は希釈して用いればよい。使用する緩衝液としては、上述の≪酵母由来組換えヒトGM-CSFを投与した被検体の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFを検出するためのキット≫において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0089】
上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を含む溶液を滴下し、接触させればよい。また、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがビーズ、粒子等の支持体に固定されている場合、抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を含む溶液と、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を含む溶液とを混合して接触させればよい。

【0090】
また、2次抗原抗体反応後に、1次抗原抗体反応後と同様に洗浄を行ってもよい。また、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体の標識物質が酵素である場合、酵素基質と接触させる工程、反応停止液を添加して反応を停止させる工程等をさらに備えていてもよい。

【0091】
続いて、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体を検出することにより、酵母由来組換えヒトGM-CSFの有無を判断することができる。さらに、標識された上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントを検出することにより、血液試料中に含まれる酵母由来組換えヒトGM-CSFを定量することができる。検出方法としては、標識物質の種類により、当業者が適宜選択することができる。例えば、蛍光物質で標識した抗ヒト抗体を検出する場合、蛍光スキャナー又は2光子励起スキャナー等により検出することができる。

【0092】
本実施形態の検出方法は、上述の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、検出機構やサンプル分注機構等の解析に必要な周辺装置と組み合わせることによって、全自動あるいは半自動の血液試料中の酵母由来組換えヒトGM-CSFの検出システムとして提供することができる。この検出システムによれば、血液試料中に含まれる酵母由来組換えヒトGM-CSFの有無を全自動あるいは半自動で簡便に判断することができる。さらに、血液試料中に含まれる酵母由来組換えヒトGM-CSFを定量することができ、酵母由来組換えヒトGM-CSFの正確な血中濃度を測定することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0094】
[実施例1]ハイブリドーマの樹立
以下に示すハイブリドーマの樹立及びモノクローナル抗体の作製は、ITM社に委託して行った。なお、ITM社では、腸骨リンパ節法(特許第4098796号公報、参照。重井医学研究所からのライセンス許諾により実施。)を用いて、ハイブリドーマの樹立及びモノクローナル抗体を行った。
【実施例】
【0095】
(1)マウスへの免疫
まず、酵母由来組換えヒトGM-CSF(GENZYME社製)を、0.1%ジチオトレイトール (dithiothreitol;DTT)存在下で95℃5分間加熱し、変性させた。続いて、この変性させた酵母由来組換えヒトGM-CSFをマウス尾根部に注射し、免疫した。200μg/注射になるように注射剤を調製し、1回のみ免疫した。
【実施例】
【0096】
(2)ハイブリドーマの作製
続いて、免疫マウスから脾臓を摘出し、ポリエチレングリコールを用いて、摘出した脾臓細胞とミエローマ細胞(P3Ag3.653株、ATCC社製)とを融合し、HAT培地により選別した。続いて、抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体ハイブリドーマをスクリーニングした。スクリーニングは、変性した酵母由来組換えヒトGM-CSFを抗原としたELISA法で行った。
【実施例】
【0097】
スクリーニングでポジティブだった株をモノクローニングし、最終的に、複数の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体酸性ハイブリドーマを樹立した。そのうちの1株のハイブリドーマ株について、酵母由来組換えヒトGM-CSFにのみ特異的に結合するモノクローナル抗体を産生することが後述の試験例1及び2を行うことで判明したため、寄託した(NITE P-02224)。
【実施例】
【0098】
続いて、上記寄託したハイブリドーマを培養し、50%硫酸アンモニウムで沈殿濃縮した免疫グロブリン分画を用いて、IgGをプロテインGカラム(GEバイオサイエンス社製)に結合させ、100mMグリシン(pH2.7)で溶出し、培養上清から分離して、精製抗体を得た。
【実施例】
【0099】
以下、NITE P-02224から得られた抗体を「40-1H抗体」と記載する。
【実施例】
【0100】
[試験例1]抗体特異性の検討1
(1)ペプチドの固相化
以下の表1に示す酵母由来組換えヒトGM-CSFの部分アミノ酸配列からなるペプチド断片4種(No.1~4)をGenScript社に依頼して、合成した。続いて、96ウェルプレートにNo.1~4の合成ペプチド及び全長の酵母由来組換えヒトGM-CSF(No.5)(別名:サルグラモスチム(sargramostim)、Genzyme社製)をそれぞれ1μg/mLの濃度の溶液に調製し、固相化した(図1参照)。
【実施例】
【0101】
【表1】
JP2017206496A_000002t.gif
【実施例】
【0102】
(2)ELISA(Enzyme-linked immuno-sorbent assay)による検出
続いて、PBSに溶解した40-1H抗体を各ウェルに50μL添加し、室温で45分間反応させた。続いて、PBS-Tween 200μLで3回洗浄した。続いて、2次抗体として、ホースラデッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)で標識された抗マウスIgG抗体(Sigma-Aldrich社製)を用いた。各ウェルに2次抗体50μLを添加し、室温で30分間反応させた。続いて、PBS-Tween 200μLで3回洗浄した。続いて、酵素基質剤としてTMB (3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine)50μLを添加し、室温で15分間反応させた。続いて、反応停止液として0.5M硫酸50μLを添加し、直ちに、マイクロプレートリーダー(Bio-Rad社製)を用いて、450nmの吸光度を測定した。結果を図2及び表2に示す。図2(A)は、反応停止液を添加直後の各ウェルの発色の様子を示す画像であり、図2(B)は各ウェルでの450nmの吸光度を測定した結果を示すグラフである。
【実施例】
【0103】
図2(A)及び(B)から、No.1及びNo.5において、発色が検出された。また、1.0以上の吸光度が検出されたが、それ以外のウェルではほとんど検出されなかった。No.1及びNo.5において、このことから、40-1H抗体はNo.1のペプチド断片に特異的に結合することが推察できた。
【実施例】
【0104】
[試験例2]抗体特異性の検討2
(1)ペプチドの固相化
実施例1と同様の方法を用いた変性させた酵母由来組換えヒトGM-CSF、未変性の酵母由来組換えヒトGM-CSF(Genzyme社製)、大腸菌由来組換えヒトGM-CSF(別名:モルグラモスチム、Amytop社製)、CHO(Chinese Hamster Ovary)細胞産生組換えヒトGM-CSF(Humanzyme社製)及びウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)を、公知の方法を用いて調製した。続いて、96ウェルプレートにこれら5種の組換えヒトGM-CSFをそれぞれ1μg/mLの濃度の溶液に調製し、固相化した。
【実施例】
【0105】
(2)ELISAによる検出
試験例1の(2)と同様の方法を用いて、450nmの吸光度を測定した。結果を図3に示す。
【実施例】
【0106】
図3から、No.1及びNo.2において、吸光度が検出されたが、それ以外のウェルではほとんど検出されなかった。このことから、40-1H抗体は酵母由来組換えヒトGM-CSFに特異的に結合することが推察できた。
【実施例】
【0107】
[試験例3]抗体特異性の検討3
(1)ペプチドの固相化
以下の表2に示す酵母由来組換えヒトGM-CSFの部分アミノ酸配列からなるペプチド断片13種(No.6、8~19)及び大腸菌由来組換えヒトGM-CSFの部分アミノ酸配列からなるペプチド断片(No.7)をGenScript社に依頼して、合成した。続いて、96ウェルプレートにNo.6~19の合成ペプチドをそれぞれ1μg/mLの濃度の溶液に調製し、固相化した。
【実施例】
【0108】
【表2】
JP2017206496A_000003t.gif
【実施例】
【0109】
(2)ELISAによる検出
試験例1の(2)と同様の方法を用いて、450nmの吸光度を測定した。結果を上記表2に示す。ペプチドを固相化されていないウェルにおける吸光度をコントロールとしたとき、コントロールと比較して、吸光度が有意に高いものを「○」とし、吸光度に有意な差が見られなかったものを「×」と判定した。
【実施例】
【0110】
表2から、40-1H抗体が認識する酵母由来組換えヒトGM-CSFのアミノ酸配列(すなわち、エピトープ)はN末端から10番目から27番目までの18アミノ酸残基であった。この18アミノ酸残基には、N末端から23番目のロイシン残基が含まれている。よって、40-1H抗体は、N末端から23番目のアルギニン残基を有する自然界のGM-CSFと反応しないことが確かめられた。
また、この18アミノ酸残基には、酵母由来組換えヒトGM-CSFにおける第1番目のαへリックス全体が含まれることから、40-1H抗体はこの三次構造を認識していると推察された。
【実施例】
【0111】
[試験例4]酵母由来組換えヒトGM-CSFの薬物動態試験
(1)健常カニクイザルへの酵母由来組換えヒトGM-CSFの吸入投与
まず、健常カニクイザルに酵母由来組換えヒトGM-CSF 50mgを吸入投与させた。次いで、吸入直後、15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、及び24時間後に採血し、血清を分離した。
【実施例】
【0112】
(2)ELISAによる検出
次いで、40-1H抗体を捕捉抗体として、アルカリフォスファターゼ(ALP)標識されたマウスモノクローナル抗体(33-8F:IgG1)(以下、「33-8F抗体」と称する場合がある。)で検出する、酵母由来組換えヒトGM-CSFの定量的サンドイッチELISA法を用いて、検出を行った。
具体的には、まず(1)で得られた血清をそれぞれSDS存在下で、95℃、30分間加熱変性させた。次いで、加熱変性後の血清と33-8F抗体とを混合し、4℃で一晩静置した。次いで、この混合サンプルを40-1H抗体を固相化させたマイクロプレートに添加し、室温で1時間孵置した。次いで、マイクロプレートを洗浄後、CDP-Star(登録商標) アルカリフォスファターゼ基質(Tropix(登録商標) CDP-Star(登録商標) Sapphire II:Applied Biosystems社製)を加えた。次いで、発光を蛍光・発光マイクロプレートリーダー(Berthold社製)を用いて測定した。結果を図4に示す。図4において、「LEUKINE(登録商標)」は、酵母由来組換えヒトGM-CSFを示す。
【実施例】
【0113】
図4から、酵母由来組換えヒトGM-CSFは吸入直後において血中濃度が急激に上昇し、吸入から15分後にピークが認められた。その後、酵母由来組換えヒトGM-CSFの血中濃度は漸減したが、観察期間中に消失することはなかった。また、酵母由来組換えヒトGM-CSFの半減時間は20.1分であった。
以上のことから、40-1H抗体を用いることで、体内に投与された酵母由来組換えヒトGM-CSFを特異的に検出することができるが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本実施形態の抗酵母由来組換えヒトGM-CSF抗体又はその抗原結合フラグメントによれば、酵母由来組換えヒトGM-CSFのみを特異的に検出することができる。また、本実施形態の検出キットによれば、健常体を対象とする薬物動態試験において、酵母由来組換えヒトGM-CSFの正確な血中濃度を測定することができ、最高血中濃度及び半減期を算出することができる。さらに、自己免疫性PAP患者を対象とする医師主導治験において、正確なトラフ値(薬物を反復投与したときの定常状態における最低血中薬物濃度)を測定することができ、患者の全身クリアランス(薬物を体外に排泄する能力)を推定することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3