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明細書 :卵白粉末の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-205102 (P2017-205102A)
公開日 平成29年11月24日(2017.11.24)
発明の名称または考案の名称 卵白粉末の製造方法
国際特許分類 A23L  15/00        (2016.01)
A23B   5/025       (2006.01)
A61K   8/64        (2006.01)
A61K   8/98        (2006.01)
A61Q  19/10        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
FI A23L 15/00 B
A23B 5/02 A
A61K 8/64
A61K 8/98
A61Q 19/10
A61Q 19/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-096193 (P2017-096193)
出願日 平成29年5月15日(2017.5.15)
優先権出願番号 2016096731
優先日 平成28年5月13日(2016.5.13)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】中里 勉
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100168114、【弁理士】、【氏名又は名称】山中 生太
【識別番号】100133592、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 浩一
【識別番号】100162259、【弁理士】、【氏名又は名称】末富 孝典
審査請求 未請求
テーマコード 4B042
4C083
Fターム 4B042AC10
4B042AD28
4B042AE01
4B042AG06
4B042AH11
4B042AK01
4B042AP17
4C083AD411
4C083CC01
4C083CC07
4C083CC23
4C083FF01
要約 【課題】乾燥後の卵白粉末の粒径をより小さくすることができる卵白粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】卵白粉末の製造方法は、乾燥器内で噴流流動させた粒子の噴流層の温度を制御する温度制御ステップと、噴流層に卵白溶液を滴下する滴下ステップと、粒子との接触によって卵白溶液が乾燥して生じる卵白粉末を回収する回収ステップと、を含み、温度制御ステップでは、噴流層の温度を第1の温度に制御し、噴流層の温度を第1の温度よりも低い第2の温度に制御する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
乾燥器内で噴流流動させた粒子の噴流層の温度を制御する温度制御ステップと、
前記噴流層に卵白溶液を滴下する滴下ステップと、
前記粒子との接触によって前記卵白溶液が乾燥して生じる卵白粉末を回収する回収ステップと、
を含み、
前記温度制御ステップでは、
前記噴流層の温度を第1の温度に制御し、
前記噴流層の温度を前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御する、
卵白粉末の製造方法。
【請求項2】
前記回収ステップでは、
前記噴流層の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度で一定となった場合に前記卵白粉末を回収する、
請求項1に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項3】
前記粒子は、
ガラスビーズである、
請求項1又は2に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項4】
前記卵白溶液における卵白の濃度は、
65重量%以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項5】
前記卵白溶液は、
食品添加物を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項6】
前記卵白溶液における前記食品添加物の濃度は、
0.1~0.15重量%である、
請求項5に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項7】
前記食品添加物は、
二酸化ケイ素である、
請求項5又は6に記載の卵白粉末の製造方法。
【請求項8】
前記卵白粉末は、
粒子の50%径が30~40μmである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の卵白粉末の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工用の素材として卵白粉末が広く利用されている。卵白粉末は、卵白を乾燥させ粉末化することで製造される。例えば、特許文献1には、ポリカルボン酸を添加した卵白液を脱糖処理し、噴霧乾燥することで卵白粉末を製造する方法が開示されている。
【0003】
粉末は、懸濁液を噴流層に滴下する噴流層滴下乾燥法でも得られる。非特許文献1には、噴流層滴下乾燥法によって乾燥粉末を製造する技術が開示されている。噴流層滴下乾燥法に関しては、非特許文献1において、ステアリン酸カルシウム、酒石酸、酵母、豆乳、リポソーム、トマト果肉、生卵及びデンプン等の有機物及び生物試料は炭水化物又は脂肪を含むため、接着の問題があり、乾燥粉末が安定に得られないと指摘されている。
【0004】
一方、非特許文献2には、3~5mmのフッ素樹脂キューブで構成される噴流層で、卵白を薄い膜として乾燥できることが記載されている(36ページ及び37ページ参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-186460号公報
【0006】

【非特許文献1】Zorana Lj.Arsenijevic、外2名、「Drying of Suspensions in the Draft Tube Spouted Bed」、2004年、The Canadian Journal of Chemical Engineering、82、450-464
【非特許文献2】Tadeusz Kudra、外1名、Advanced Drying Technology,2nd Ed.、2009年、CRC Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された噴霧乾燥法では、乾燥された粉末が気流とともに排出されるため、装置内での滞留時間が短いうえに、大量の熱風を必要とし装置が大型化するにも関わらず生産性が低い等、技術上の改善の余地がある。さらに、噴霧乾燥法では、卵白を噴霧するノズル付近の温度が160℃以上と高温になるため、卵白成分の生理活性機能が消失するおそれがある。さらに、噴霧乾燥法で製造された卵白粉末は、水で溶いた後のゲル強度が割卵後の卵白ほどではないといった不都合がある。
【0008】
卵白粉末は、食品加工の材料として使用される場合、小麦粉等の他の材料との混ざり易さ、すなわち粉末の流動性が求められる。卵白粉末の流動性に影響する因子として、卵白粉末の粒径及び形状が挙げられる。乾燥して得られた粉末の形状が球状となる噴霧乾燥法で得られる卵白粉末の場合、流動性が悪いため水に戻す際にダマが形成されやすい。また、卵白粉末の粒径が十分に小さくない場合、流動性に乏しく乾燥後に粉砕等の処理がさらに必要となる。上記非特許文献2における噴流層滴下乾燥法による乾燥で得られる卵白膜は60~200μmである。乾燥後に得られる卵白粉末の粒径をさらに小さくする技術が求められている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、乾燥後の卵白粉末の粒径をより小さくすることができる卵白粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、鋭意研究を重ね、噴流層滴下乾燥法における噴流層の温度を柔軟に制御することによって、従来の噴流層滴下乾燥法よりも粒径の小さい卵白粉末が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の第1の観点に係る卵白粉末の製造方法は、
乾燥器内で噴流流動させた粒子の噴流層の温度を制御する温度制御ステップと、
前記噴流層に卵白溶液を滴下する滴下ステップと、
前記粒子との接触によって前記卵白溶液が乾燥して生じる卵白粉末を回収する回収ステップと、
を含み、
前記温度制御ステップでは、
前記噴流層の温度を第1の温度に制御し、
前記噴流層の温度を前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御する。
【0012】
この場合、前記回収ステップでは、
前記噴流層の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度で一定となった場合に前記卵白粉末を回収する、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記粒子は、
ガラスビーズである、
こととしてもよい。
【0014】
また、前記卵白溶液における卵白の濃度は、
65重量%以下である、
こととしてもよい。
【0015】
また、前記卵白溶液は、
食品添加物を含む、
こととしてもよい。
【0016】
また、前記卵白溶液における前記食品添加物の濃度は、
0.1~0.15重量%である、
こととしてもよい。
【0017】
また、前記食品添加物は、
二酸化ケイ素である、
こととしてもよい。
【0018】
また、前記卵白粉末は、
粒子の50%径が30~40μmである、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、乾燥後の卵白粉末の粒径をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】走査電子顕微鏡で撮像された実施例に係る卵白粒子を示す図である。
【図2】実施の形態に係る製造装置の構成を示す図である。
【図3】実施例に係る卵白溶液の供給速度ごとの非流動化の有無を示す図である。
【図4】実施例に係る卵白溶液の供給速度と水分活性との関係を示す図である。
【図5】実施例に係る卵白粉末及び市販品の粒子径に対する積算分布を示す図である。
【図6】実施例に係る卵白粒子及び市販品の粒子径の頻度分布を示す図である。
【図7】走査電子顕微鏡で撮像された市販の卵白粒子を示す図である。
【図8】実施例A~Dに係る噴流層内及び乾燥器出口の乾燥中の平均温度を示す図である。
【図9】実施例B~Dに係る二酸化ケイ素の濃度に対するAwを示す図である。
【図10】実施例A~Dに係る二酸化ケイ素の濃度に対するフィルタ及び層内の粉末回収量を示す図である。
【図11】実施例1、E、Fに係る原料液中の卵白原液の割合に対する卵白粉末の収率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。

【0022】
本実施の形態に係る卵白粉末は、粒子の50%径が30~40μmである。粒子の50%径は、公知の方法で測定できる。例えば、粒子の50%径の測定方法は、遠心沈降法又はレーザー回折法である。好ましくは、粒子の50%径はレーザー回折法で測定すればよい。レーザー回折法では、粒子群にレーザー光を照射し、粒子から発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求める。50%径は粒度分布から決定できる。レーザー回折法による粒度分布は、市販の装置で測定することができる。なお、50%径は幾何平均径ともいう。

【0023】
上記卵白粉末は、粒子の形状がシート状であることも特徴である。粒子の形状は、顕微鏡、特には電子顕微鏡で観察できる。好ましくは、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて粒子の形状を観察すればよい。上記卵白粉末の形状の一例として、倍率500倍のSEMによる画像を図1に示す。

【0024】
上記卵白粉末の水分活性(以下、単に「Aw」とする)は、好ましくは0.05~0.1である。Awは、卵白粉末に含まれる自由水の割合を示す数値であって、卵白粉末の保存性の指標となる。このため、長期保存の観点から卵白粉末のAwを0.05~0.1に調整すればよい。

【0025】
次に、本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法について説明する。図2は、本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法に好適な卵白粉末の製造装置100の概略を示す。

【0026】
製造装置100は、乾燥器1と、コンプレッサ2と、流量調節バルブ3と、流量計4と、ヒータ5と、温度制御部6と、タンク7と、攪拌器8と、供給ポンプ9と、円筒ろ紙のフィルタ10と、を備える。乾燥器1は、原料である卵白溶液を乾燥する。乾燥器1の材質は、150℃程度の温度に耐える材質であれば特に限定されない。乾燥器1は、好適には、ポリカーボネートで形成される。

【0027】
乾燥器1は、卵白溶液を乾燥するために、乾燥器1内で噴流流動する粒子からなる噴流層11を備える。噴流層11の粒子としては、任意の材質の粒子を用いることができる。噴流層11の粒子は、例えば、セラミックボール及びジルコニアビーズである。好ましくは、噴流層11の粒子は、ガラスビーズである。噴流流動する粒子の粒径は、任意であるが、例えば、0.1~1.5mm、好ましくは0.5~1.2mm、より好ましくは0.7~1.0mmである。噴流層11における粒子の密度は、適宜調整され、例えば、2000~3000kg/m、好ましくは2300~2700kg/mである。

【0028】
乾燥器1内には、コンプレッサ2によって空気が供給される。空気によって、噴流層11の粒子が乾燥器1内を噴流する。コンプレッサ2によって供給される空気の流量は、流量調節バルブ3によって制御される。供給される空気の流量は、流量計4で測定される。乾燥器1内に供給される空気の温度は、ヒータ5によって加熱される。

【0029】
ヒータ5及び乾燥器1内の温度は、温度制御部6によって監視され、制御される。温度制御部6は、乾燥器1内に供給される空気の温度を、ヒータ5を介して制御する。温度制御部6は、空気を80~150℃、90~130℃、好ましくは100~120℃に制御する。

【0030】
タンク7は、原料である卵白溶液を貯留する。タンク7内に貯留された卵白溶液は、タンク7内に配置された攪拌子71を介して、攪拌器8によって撹拌される。これにより、卵白溶液は均一に維持される。供給ポンプ9は、タンク7に貯留された卵白溶液を噴流層11に滴下する。噴流層11への卵白溶液の供給速度は、適宜調整される。例えば、乾燥器1が内径50~55mm、高さ550~650mmの大きさの場合、噴流層11への卵白溶液の供給速度は、好ましくは3.0g/分以下、より好ましくは2.2g/分以上3.0g/分以下である。

【0031】
噴流層11の粒子との接触によって卵白溶液が乾燥して生じる卵白粉末は、円筒ろ紙のフィルタ10によって回収される。

【0032】
上述の卵白溶液は、食品添加物を含んでもよい。食品添加物は、卵白粉末の品質等の維持のために使用される公知の食品添加物であれば特に限定されない。例えば、食品添加物は、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及び二酸化ケイ素等である。好適には、食品添加物は、二酸化ケイ素である。二酸化ケイ素は、微粒二酸化ケイ素であってもよい。

【0033】
卵白溶液における食品添加物の濃度は、噴流層11の粒子の流動化を維持できる範囲であれば特に限定されない。例えば、卵白溶液における食品添加物の濃度は、0.1~0.15重量%、好ましくは0.1~0.12重量%、より好ましくは0.1~0.11重量%である。好適には、卵白溶液における食品添加物の濃度は、円筒ろ紙のフィルタ10によって回収される粉末における食品添加物の濃度に応じて決定される。例えば、食品添加物として二酸化ケイ素を用いる場合、回収される卵白粉末に混入する二酸化ケイ素の濃度が2.0重量%以下になるように卵白溶液における食品添加物の濃度を調整してもよい。

【0034】
卵白溶液が食品添加物を含む場合、噴流層11への卵白溶液の供給速度を拡張できる。食品添加物を含む卵白溶液の噴流層11への供給速度は、4.0g/分以下、好ましくは3.5g/分以下、より好ましくは2.2g/分以上3.5g/分以下である。

【0035】
卵白溶液は、例えば、割卵後、卵黄を除去した卵白と水とを混合及び攪拌することで調製される。この場合、塩酸等で卵白溶液のpHを調整してもよい。さらに、卵白溶液を遠心分離することで、沈殿物を除去してもよい。卵白溶液における卵白の濃度は、卵白粉末を効率よく製造するために高いほうがよいが、噴流層11の粒子の流動化を維持できる範囲で調整される。例えば、卵白溶液における卵白の濃度は、50重量%以上で、65重量%以下又は70重量%以下である。

【0036】
続いて、本実施の形態に係る製造装置100を用いた卵白粉末の製造方法について詳細に説明する。当該卵白粉末の製造方法は、温度制御ステップと、滴下ステップと、回収ステップと、を含む。

【0037】
温度制御ステップでは、乾燥器1内で噴流流動させた粒子の噴流層11の温度を制御する。温度制御ステップは、第1の温度制御ステップ及び第2の温度制御ステップを含む。第1の温度制御ステップでは、噴流層11の温度を第1の温度T1に制御する。T1は、80~100℃、好ましくは90℃である。この場合、例えば、温度制御部6が乾燥器1内に供給される空気を110~120℃に制御することで、噴流層11の温度を90℃に制御できる。

【0038】
第2の温度制御ステップでは、噴流層11の温度をT1より低い第2の温度T2に制御する。T2は、75~85℃、好ましくは80℃である。第2の温度制御ステップでは、例えば、乾燥器1内に水を滴下供給することで、噴流層11の温度をT2に制御できる。

【0039】
滴下ステップは、噴流層11に卵白溶液を滴下する。噴流層11に滴下された卵白溶液は、噴流層11の粒子との接触によって卵白溶液が乾燥して卵白粉末が生じる。

【0040】
回収ステップでは、卵白粉末を回収する。回収ステップにおいては、噴流層11の温度がT2よりも低い第3の温度T3で一定となった場合に卵白粉末を回収してもよい。T3は、65~75℃、好ましくは70~75℃である。卵白溶液が食品添加物を含む場合、T3をさらに低くすることができる。食品添加物を含む卵白溶液を用いた場合のT3は、60~75℃、好ましくは63~72℃、より好ましくは65~70℃である。

【0041】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る卵白粉末は、粒子の50%径が30~40μmである。このため、当該卵白粉末は従来の噴流層滴下乾燥法で製造された卵白膜の大きさ60~200μmよりも細かい粉末として提供される。また、小さい粒径であるため、当該卵白粉末を容器に充填する際のかさ容積を大きくすることができる。さらに、シート状で小さい粒径であるため、粉末の流動性が高く、他の材料と混ざり易いため、食品加工の素材に適している。

【0042】
本実施の形態に係る卵白粉末は、噴霧乾燥法で得られる卵白粉末よりもかなり低いAwを有する。これにより、長期間の保存性に優れる。

【0043】
また、上述の温度制御ステップでは、第1の温度制御ステップ及び第2の温度制御ステップを含む。第1の温度制御ステップで温度をT1にすることで、十分に噴流層11に蓄熱することができる。また、第2の温度制御ステップで温度を、噴霧乾燥法での送風温度である約160℃よりも低いT2にできるので、卵白たんぱく質の熱凝固の程度を自在に制御でき、しかも卵白成分の生理活性機能の消失を抑えた乾燥卵白粉末を得ることができる。本実施の形態に係る卵白粉末の製造方法によれば、噴霧乾燥法での送風温度である約160℃よりも低い温度T2で、上述のようにより低いAwを実現できる。

【0044】
さらに、回収ステップでは、噴流層11の温度がT2よりも低いT3で一定となった場合に卵白粉末を回収してもよいこととした。温度が一定になるまで待つことによって、卵白粉末を十分に乾燥させることができる。

【0045】
本実施の形態に係る卵白粉末の用途は特に限定されず、食品加工及び化粧品等の材料として用いることができる。具体的には、菓子類、麺類、洗顔剤及びパック剤等に利用することができる。

【0046】
なお、上記T1~T3及び供給ポンプ9による噴流層11への卵白溶液の供給速度は、乾燥器1の容量及び回収される卵白粉末の粒径等に応じて好適に調整すればよい。
【実施例】
【0047】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
(噴流層滴下乾燥法による卵白粉末の製造)
割卵後の卵白と蒸留水とを重量比1対1で混合し、スターラーで攪拌しながら0.1N塩酸をpH6付近になるまで添加した。さらに、6000rpmで10分間遠心分離し、沈殿物を除去した卵白溶液(pH6.14)を調製した。
【実施例】
【0049】
次に、内径52mm、高さ550mmのポリカーボネートカラムの底部に頂角45°、ガス入口径12.5mmのステンレス製円錐部をフランジ接続した乾燥器において、常温流量で200L/分の乾燥空気を供給しながら、粒径0.710~0.990mmのガラスビーズ135.71gをカラム内部に注ぎ噴流流動化させた。乾燥空気供給部上流に設置したヒータを用いて乾燥器入口近傍のガス温度が115℃程度になるまで加熱し、噴流層内温度の初期値を90℃程度にした。
【実施例】
【0050】
続いて、塔頂部より蒸留水を滴下供給し層内温度を80℃に冷却後、同じ供給速度で卵白溶液を一定速度で滴下供給した。噴流層内温度は徐々に下がっていき73℃程度で一定となる条件で飛散してくる乾燥卵白粉末を円筒ろ紙のフィルタで回収した。卵白溶液の供給速度を約2.8g/分とし、卵白溶液を52分間で147.75g供給した後のフィルタでの乾燥卵白粉末(実施例1)の回収量は4.58gであった。乾燥卵白粉末の30%程度(2.02g)は層内に存在し、1%程度は装置壁面に付着していた。得られた乾燥卵白粉末のAwを水分活性測定装置(SP-W、アズワン社製)で測定した。
【実施例】
【0051】
(結果)
図3は、卵白溶液の供給速度ごとの非流動化の有無を示す。供給速度が3.12g/分のときに非流動化が起こった。したがって、2.8~3.0g/分以下が連続運転可能な卵白溶液の供給速度であることが示された。
【実施例】
【0052】
図4は、卵白溶液の供給速度とAwとの関係を示す。供給速度が上昇するとAwが減少することが示された。供給速度が約2.2g/分未満の場合に、乾燥卵白粉末のAwが噴霧乾燥法で製造された市販品(乾燥卵白Wタイプ、キューピー社製)のAwの測定値0.26を超える。したがって、図3に示した結果を併せて考慮すると、市販品のAwより低い卵白粉末が効率よく得られる卵白溶液の供給速度は2.2g/分以上3.0g/分以下であることが示された。
【実施例】
【0053】
(粒度分布の測定及び走査電子顕微鏡による観察)
市販品及び卵白溶液の供給速度2.86g/分で実施例1と同様に製造した卵白粉末(実施例2)の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS、Sympatech GmbH社製)を用いて、分散圧2barにて乾式法により測定した。なお、粒度分布の測定における測定範囲はR3:0.5/0.9~175μm、評価はフラウンホーファー HRLD(V3.2 Rel.2)とした。また、実施例2及び市販品を、超高分解能分析走査型電子顕微鏡(SU-70、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて撮像した。
【実施例】
【0054】
(結果)
実施例2及び市販品の粒子径に対する積算分布を図5に示す。積算分布が50%である幾何平均径は、市販品が48.38μmであるのに対し、実施例2は31.6μmであった。なお、実施例2及び市販品の粒子径の頻度分布を図6に示す。
【実施例】
【0055】
図7は、市販品のSEM画像(倍率500倍)を示す。市販品の粒子の形状は球状であるのに対し、実施例2の粒子の形状はシート状であった(図1参照)。
【実施例】
【0056】
(食品添加物の添加による影響の検討)
割卵後の卵白と蒸留水とを重量比1対1で混合し、スターラーで攪拌しながら0.1N塩酸をpH6.5付近になるまで添加した。さらに、5000rpmで10分間遠心分離し、沈殿物を除去した卵白溶液を調製した。
【実施例】
【0057】
得られた卵白溶液に所定の濃度で二酸化ケイ素(SiO)(MICROD KM-386、ケイディコーポレーション製)をそれぞれ添加し、原料液を得た。なお、二酸化ケイ素を添加しない原料液も調製した。次に、上記と同様にガラスビーズを噴流流動化させた乾燥器において、各原料液を一定速度で滴下供給し、乾燥卵白粉末を円筒ろ紙のフィルタで回収した。得られた乾燥卵白粉末のAwを水分活性測定装置(SP-W、アズワン社製)で測定した。
【実施例】
【0058】
(結果)
表1に原料液における二酸化ケイ素の濃度、原料液の供給速度、乾燥器運転時間及び層内の状態を示す。実施例Aでは10分、実施例Bでは50分で非流動化が起こった。一方、実施例C、Dでは非流動化が起こらず、60分間乾燥器を運転できた。実施例C、Dでは、原料液の供給速度が約3.5g/分でも非流動化が起こらなかったことから、二酸化ケイ素を添加することで、連続運転可能な原料液の供給速度を約3.5g/分まで拡張できることが示された。
【実施例】
【0059】
【表1】
JP2017205102A_000003t.gif
【実施例】
【0060】
図8は、実施例A~Dの噴流層内及び乾燥器出口の乾燥中の平均温度を示す。実施例C、Dの噴流層内の平均温度は、それぞれ70℃及び65℃であった。上記の実施例1において卵白粉末を回収する際の噴流層内温度である約73℃と比較すると、二酸化ケイ素を添加することで、約5℃程度低い温度で乾燥できることが示された。
【実施例】
【0061】
図9は、実施例B~Dの二酸化ケイ素の濃度とAwとの関係を示す。実施例CのAwは、上記市販品のAwの測定値0.26を下回った。したがって、原料液中の二酸化ケイ素の濃度は、0.1重量%が好ましい。
【実施例】
【0062】
図10は、実施例A~Dの二酸化ケイ素の濃度とフィルタ及び層内の粉末回収量とを示す。実施例A、Bでは、層内の回収量がフィルタでの回収量を上回った。実施例A、Bでは、層内で粒子が凝集し、飛散回収できず非流動化に至った。原料液中の二酸化ケイ素の濃度が少なすぎる、例えば0.1重量%未満の場合、卵白粉末を効率よく飛散回収できない。
【実施例】
【0063】
(卵白液の希釈による流動化への影響の検討)
割卵後の卵白と蒸留水とを重量比2:1(実施例E)で混合し、上記の実施例A~Dと同様に卵白溶液を調製した。なお、蒸留水で希釈しない卵白原液(実施例F)も調製した。上記実施例1と同様にガラスビーズを噴流流動化させた乾燥器において、卵白溶液又は卵白原液を約2.8g/分の供給速度で滴下供給し、乾燥卵白粉末を円筒ろ紙のフィルタで回収した。
【実施例】
【0064】
(結果)
図11は、卵白と蒸留水とを重量比1:1で混合した卵白溶液から得られた実施例1に加え、実施例E、Fにおける卵白粉末の収率を示す。なお、ここでの収率は、卵白溶液又は卵白原液の供給総量から算出される固形物量に対するフィルタで捕集された卵白粉末量の割合とする。実施例1と同様に、実施例Eでは流動化せずに連続運転が可能であった。一方、実施例Fは、約30分で非流動化が起こり、収率が実施例1、Eと比較して低下した。したがって、卵白溶液における卵白原液の濃度は、約65重量%以下が好ましいことが示された。
【実施例】
【0065】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、卵白粉末の製造に好適である。
【符号の説明】
【0067】
1 乾燥器
2 コンプレッサ
3 流量調節バルブ
4 流量計
5 ヒータ
6 温度制御部
7 タンク
8 攪拌器
9 供給ポンプ
10 円筒ろ紙のフィルタ
11 噴流層
71 攪拌子
100 製造装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10