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明細書 :分光測定装置および分光測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6660634号 (P6660634)
登録日 令和2年2月13日(2020.2.13)
発行日 令和2年3月11日(2020.3.11)
発明の名称または考案の名称 分光測定装置および分光測定方法
国際特許分類 G01J   3/45        (2006.01)
G01N  21/359       (2014.01)
A61B   5/1455      (2006.01)
FI G01J 3/45
G01N 21/359
A61B 5/1455
請求項の数または発明の数 4
全頁数 18
出願番号 特願2016-571942 (P2016-571942)
出願日 平成28年1月15日(2016.1.15)
国際出願番号 PCT/JP2016/051187
国際公開番号 WO2016/121540
国際公開日 平成28年8月4日(2016.8.4)
優先権出願番号 2015015734
優先日 平成27年1月29日(2015.1.29)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年11月6日(2018.11.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】石丸 伊知郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 国際公開第2014/054488(WO,A1)
国際公開第2014/054708(WO,A1)
米国特許出願公開第2006/0092418(US,A1)
特開2012-058068(JP,A)
特開2002-200050(JP,A)
特開2007-010576(JP,A)
特表2013-527469(JP,A)
特開2000-210264(JP,A)
BAHAR E,"Total transmission of incident plane waves that satisfy the Brewster conditions at a free-space-chiral interface",J. Opt. Soc. Am. A,2010年 8月18日,Vol. 27, No. 9,p.2055-2060
調査した分野 G01J 3/00- 3/52
G01N 21/00-21/61
A61B 5/00- 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
a)光入射面と光出射面が平行な第1透過型光学素子及び該第1透過型光学素子と並んで配置された、光入射面及び光出射面の一方が前記第1透過型光学素子の前記光入射面又は前記光出射面と同一面上にあり、入射面及び出射面のうちの一方に対して他方が傾斜する第2透過型光学素子を備え、前記第1透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光と前記第2透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光との間に連続的な光路長差を与える分割光学系と、
b)測定対象の表面に、電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光をブリュースター角で入射させる光照射手段と、
c)前記P偏光が入射された前記測定対象から発せられた測定光を前記第1透過型光学素子の光入射面及び前記第2透過型光学素子の光入射面に導入する導入光学系と、
d)前記測定対象の表面と前記導入光学系の間、又は前記導入光学系と前記分割光学系の間に配置された、前記測定光のうち、電場の振動方向が前記P偏光の電場の振動方向と垂直な直線偏光であるS偏光を通過させ、前記P偏光を通過させない偏光板と、
e)前記第1透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第1測定光と前記第2透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第2測定光の干渉光を形成する干渉光学系と、
f)前記第1測定光と前記第2測定光の連続的な光路長差に対応する前記干渉光の強度分布を検出するための複数の画素を有する干渉光検出部と、
g)前記干渉光検出部で検出される前記干渉光の強度分布から前記測定光のインターフェログラムを求める処理部と、
h)前記インターフェログラムをフーリエ変換することにより前記測定光のスペクトルを求める演算部と
を備え
前記光照射手段が、光源と、該光源と前記測定対象の間に配置され該光源から出射される光のうち電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光のみを透過させる光照射用偏光板とを有しており、
前記光照射用偏光板に対してクロスニコルの条件になるように前記偏光板が配置されていることを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、さらに、
前記測定対象が載置される載置面と、該載置面と反対側の面である光照射面を有する板状の光透過性部材を備えることを特徴とする分光測定装置。
【請求項3】
a)光源から出射された光のうち、該光源と測定対象との間に配置された光照射用偏光板によって電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光のみを透過させ、該P偏光をブリュースター角で測定対象の表面に入射させ、
b)導入光学系により、前記P偏光が入射された前記測定対象から発せられた測定光を、光入射面と光出射面が平行な第1透過型光学素子及び該第1透過型光学素子と並んで配置された、光入射面及び光出射面の一方が前記第1透過型光学素子の前記光入射面又は前記光出射面と同一面上にあり、入射面及び出射面のうちの一方に対して他方が傾斜する第2透過型光学素子を備え、前記第1透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光と前記第2透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光との間に連続的な光路長差を与える分割光学系の前記第1透過型光学素子の入射面と前記第2透過型光学素子の入射面に導入し、
c)前記第1透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第1測定光と前記第2透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第2測定光の干渉光を干渉光学系により形成し、
d)前記第1測定光と前記第2測定光の連続的な光路長差に対応する前記干渉光の強度分布を、複数の画素を有する干渉光検出部により検出し、
e)前記干渉光検出部で検出される前記干渉光の強度分布から前記測定光のインターフェログラムを求め、
f)前記インターフェログラムをフーリエ変換することにより前記測定光のスペクトルを求め、
前記測定対象の表面と前記導入光学系の間、又は前記導入光学系と前記分割光学系の間に、前記光照射用偏光板に対してクロスニコルの条件になるように配置された偏光板により、前記測定光のうち、前記電場が前記P偏光の電場と直交する直線偏光であるS偏光を通過させ、前記P偏光を通過させないことを特徴とする分光測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の分光測定方法において、
前記測定対象が載置される載置面と、該載置面と反対側の面である光照射面を有する板状の光透過性部材を備え、
前記測定対象の表面に前記P偏光がブリュースター角で入射するように前記光透過性部材の光照射面に該P偏光を照射することを特徴とする分光測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖や血中コレステロール等の体内の生体成分を非侵襲で測定したり、半導体の欠陥評価に用いたりすることができる分光測定装置及び分光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病や高脂血症等のさまざまな疾患において、血中グルコース(血糖)や血中コレステロールといった血液中の生体成分の濃度が疾患の指標として用いられている。従って、これら血液中の生体成分の濃度の管理は、疾患の予防や治療のために重要である。血液中の生体成分の濃度の測定は、通常、被検者から採取した血液が用いられる。近年、非常に少量の血液から様々な生体成分の濃度の測定が可能になり、被検者の負担が少なくなってきたものの、血液の採取には苦痛を伴う。また、採血部位の消毒や消耗品の処理などの煩わしい作業が必要であるため、血液を採取せずに生体成分を非侵襲で測定する装置が求められている。非侵襲の測定装置であれば一般家庭でも簡便に使用することができ、例えば疾患の予防や治療のために日常的に生体成分の濃度を測定しなければならない患者にとって有用である。
【0003】
血液中の生体成分の濃度を非侵襲で測定する装置の一つに本願発明者により発明された装置がある(特許文献1参照)。この装置では、生体成分を光学的に構成する各輝点から生じる物体光束の干渉現象を利用することにより生体成分のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性(スペクトル)を取得する。
【0004】
具体的には、図1Aに示すように、光源からの光、例えば生体膜に対する透過性が高い近赤外光を測定対象である指先に照射し、その透過光や指先内の生体成分から生じる拡散光・散乱光等の物体光を対物レンズを介して位相シフタに導入する。そして、位相シフタを構成する固定ミラー部と可動ミラー部によって反射された物体光束を結像レンズによって干渉させ、その干渉光をCCDカメラ等の検出部によって検出する。従って、対物レンズの合焦面を指先内の所定の静脈の位置に設定することにより、その静脈内の目的成分から生じる物体光の干渉光を検出することができる。
【0005】
可動ミラー部はピエゾ素子などにより移動されるようになっており、該可動ミラー部の移動量に応じた位相差が固定ミラー部と可動ミラー部から反射される物体光束に付与される。このため、可動ミラー部を連続的に移動させ、位相差を変化させると、これに伴い所定の波長域に連続して分布する各波長成分の干渉光の強度が変化し、これら干渉光の合成波形であるインターフェログラムが得られる。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性(スペクトル)を取得することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-309707号公報
【特許文献2】WO2013/129519 A1
【0007】

【非特許文献1】尾崎幸洋、河田聡編「近赤外分光法 (日本分光学会 測定法シリーズ32)」株式会社学会出版センター, 1996年5月20日, p. 193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
指先内には多くの静脈が存在する。また、静脈以外にも様々な生体成分が存在する。このため、指先に照射された近赤外光は、指先内に存在する多くの静脈や生体成分を経た後、透過光や散乱光・拡散光として指先から出射する。従って、近赤外光の合焦面を指先内の特定の静脈の位置に設定したとしても、該特定の静脈の近傍に位置する別の静脈やその他の生体成分から生じる物体光が特定の静脈内の目的成分から生じる物体光とともに干渉光を形成するため、インターフェログラムから特定の静脈に含まれる目的成分以外の生体成分の影響を除去することが難しい。そのようなインターフェログラムからは目的成分の正確なスペクトルを得ることができない。例えば、図1Bは、ヒトの人差し指の先端を透過した近赤外光を位相シフタに導入することにより得られたインターフェログラムを示す。図1Bから、インターフェログラムには、目的成分以外の生体成分による干渉光の輝度値の変化や動脈の脈動に伴う干渉光の輝度値の変化が重畳していることが推測される。
【0009】
これに対して、光源からの光を指先に照射したときの内部拡散光を用いた分光測定方法が考えられている。内部拡散光は、指先の表層付近の比較的浅い部分に侵入した光が生体成分によって拡散されたものであるため、指先の深部に存在する生体成分の影響を避けることができる。従って、内部拡散光のみを用いて分光測定を行うことができれば指先の表層付近に存在する生体成分の分光特性を精度良く測定することができる。しかしながら、光源からの光を指先に照射した場合、内部拡散光だけでなく、指先の表面からの反射光も発生する。内部拡散光に比べて表面反射光の強度は非常に大きいため、内部拡散光が表面反射光に埋もれてしまう。
【0010】
表面反射光の影響を小さくするために、図2に示すように斜方照明で指先を照射することが考えられている(特許文献2参照)。この方法では、指先表面における反射光のうち正反射光成分を対物レンズの外に逃がすことにより該正反射光成分の影響を除去している。しかしながら、指先の表面には指紋等の微小な凹凸が多数存在するため、指先表面に照射された光の反射光には正反射光成分だけでなく拡散反射成分が含まれる。正反射成分と同様、拡散反射成分も内部拡散光に比べると強度が非常に大きいため、正反射成分を除去しても内部拡散光の検出が困難であった。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、測定対象の表面における拡散反射光の影響を小さくして該測定対象の内部に含まれる物質の分光特性を精度良く測定することができる分光測定装置および分光測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光測定装置は、
a)光入射面と光出射面が平行な第1透過型光学素子及び該第1透過型光学素子と並んで配置された、光入射面及び光出射面の一方が前記第1透過型光学素子の前記光入射面又は前記光出射面と同一面上にあり、入射面及び出射面のうちの一方に対して他方が傾斜する第2透過型光学素子を備え、前記第1透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光と前記第2透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光との間に連続的な光路長差を与える分割光学系と、
b)測定対象の表面に、電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光をブリュースター角で入射させる光照射手段と、
c)前記P偏光が入射された前記測定対象から発せられた測定光を前記第1透過型光学素子の光入射面及び前記第2透過型光学素子の光入射面に導入する導入光学系と、
d)前記測定対象の表面と前記導入光学系の間、又は前記導入光学系と前記分割光学系の間に配置された、前記測定光のうち、電場の振動方向が前記P偏光の電場の振動方向と垂直な直線偏光であるS偏光を通過させ、前記P偏光を通過させない偏光板と、
e)前記第1透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第1測定光と前記第2透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第2測定光の干渉光を形成する干渉光学系と、
f)前記第1測定光と前記第2測定光の連続的な光路長差に対応する前記干渉光の強度分布を検出するための複数の画素を有する干渉光検出部と、
g)前記干渉光検出部で検出される前記干渉光の強度分布から前記測定光のインターフェログラムを求める処理部と、
h)前記インターフェログラムをフーリエ変換することにより前記測定光のスペクトルを求める演算部と
を備えることを特徴とする。
【0014】
ブリュースター角とは、屈折率が異なる2つの物質の界面に一方の物質(入射側媒質)側から他方の物質(透過側媒質)側に向けて光を入射させたとき、電場の振動方向が入射面(入射光線と反射光線を含む面)に平行な直線偏光成分(P偏光)は物質の内部に入射し、電場の振動方向が入射面に垂直な直線偏光成分(S偏光)だけが反射する角度をいう。ブリュースター角をθ、入射側媒質の屈折率をn、透過側媒質の屈折率をnとすると、角度θは次の式で表される。
tan θ=n/n

【0015】
例えば図3は皮膚の主成分である水(屈折率1.33)と空気(屈折率1.00)の界面におけるP偏光とS偏光の入射角度ごとの反射率を示すグラフである。各偏光の反射率はフレネル反射則による式から求めた。図3から、水と空気の界面におけるブリュースター角は53[deg.]であることが分かる。
【0016】
従って、測定対象とその周りの媒質(通常は空気)の界面である表面にP偏光だけをブリュースター角で入射させるとP偏光の反射率は0となり、測定対象から発せられた測定光の多くは、測定対象の表層付近の比較的浅い部分に侵入したP偏光が該浅い部分に含まれる物質によって拡散された拡散光となる。ここで、空気中から測定対象にP偏光を入射させる場合の入射角は、空気の屈折率(=1)と測定対象の屈折率から求めることができる。
【0017】
測定対象から発せられた測定光は、
導入光学系によって分割光学系に導入されて第1測定光および第2測定光に分割され、両者の間に連続的な光路長差が与えられる。そして、干渉光学系によって2つに分割された測定光の干渉光が形成され、この干渉光の強度分布からインターフェログラムが得られる。そして、インターフェログラムをフーリエ変換することにより測定光のスペクトル(分光特性)、すなわち、測定対象の表層付近に含まれる物質の分光特性が求められるため、この分光特性から該物質の定性分析あるいは定量分析を行うことができる。
【0018】
測定対象の表面が平坦面である場合、該表面にブリュースター角で入射したP偏光の反射率は0になる。しかし、指先のように表面に多数の微小な凹凸がある測定対象の場合、該表面に入射したP偏光の全ての入射角がブリュースター角になるわけではなく、P偏光の一部は測定対象の表面で拡散反射する。このような表面拡散反射光は全てP偏光となる。一方、内部拡散光はP偏光とS偏光を含むランダム偏光となる。
【0019】
上記の分光測定装置においては、測定対象の表面と導入光学系の間、又は導入光学系と分割光学系の間に、前記測定光のうち電場が前記P偏光の電場と垂直な直線偏光であるS偏光を通過させ、前記P偏光を通過させない偏光板を配置している。
このため、本発明では、測定光に含まれる表面拡散反射光を除去することができる。
【0020】
また、上記の分光測定装置においては、前記測定対象が載置される載置面と、該載置面と反対側の面である光照射面を有する板状の光透過性部材を備えることも良い構成である。
上記構成では、前記光透過性部材の載置面に指先等の測定対象を軽く押し当てることにより測定対象の表面を平坦面に近づけることができる。このため、光透過性部材を通して測定対象の表面にP偏光を入射させたときに該測定対象から発せられる表面拡散反射光を減らすことができる。この構成では、ブリュースター角は、光透過性部材の屈折率と測定対象の屈折率から求められる。
【0022】
また、本発明に係る分光測定方法は、
a)測定対象の表面に、電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光をブリュースター角で入射させ、
b)導入光学系により、前記P偏光が入射された前記測定対象から発せられた測定光を、光入射面と光出射面が平行な第1透過型光学素子及び該第1透過型光学素子と並んで配置された、光入射面及び光出射面の一方が前記第1透過型光学素子の前記光入射面又は前記光出射面と同一面上にあり、入射面及び出射面のうちの一方に対して他方が傾斜する第2透過型光学素子を備え、前記第1透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光と前記第2透過型光学素子の光入射面に入射して光出射面から出射した光との間に連続的な光路長差を与える分割光学系の前記第1透過型光学素子の入射面と前記第2透過型光学素子の入射面に導入し、
c)前記第1透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第1測定光と前記第2透過型光学素子の光出射面から出射した測定光である第2測定光の干渉光を干渉光学系により形成し、
d)前記第1測定光と前記第2測定光の連続的な光路長差に対応する前記干渉光の強度分布を、複数の画素を有する干渉光検出部により検出し、
e)前記干渉光検出部で検出される前記干渉光の強度分布から前記測定光のインターフェログラムを求め、
f)前記インターフェログラムをフーリエ変換することにより前記測定光のスペクトルを求め、
前記測定対象の表面と前記導入光学系の間、又は前記導入光学系と前記分割光学系の間に配置された偏光板により、前記測定光のうち、前記電場が前記P偏光の電場と直交する直線偏光であるS偏光を通過させ、前記P偏光を通過させないことを特徴とする。
【0024】
上記分光測定方法においては、前記測定対象が載置される載置面と、該載置面と反対側の面である光照射面を有する板状の光透過性部材を備え、
前記測定対象の表面に前記P偏光がブリュースター角で入射するように前記光透過性部材の光照射面に該P偏光を照射するようにしても良い。
【発明の効果】
【0025】
上記構成の本発明では、光源からの光が測定対象の表面に入射されることにより測定対象から発せられた測定光は、2つに分割されて両者の間に位相差が与えられる。そして、干渉光学系によって、2つに分割された測定光の干渉光が形成され、インターフェログラムが得られる。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより測定光のスペクトル(分光特性)、すなわち、測定対象の表層付近に含まれる物質の分光特性が求められるため、この分光特性から該物質の定性分析あるいは定量分析を行うことができる。このとき、測定対象の表面にP偏光だけをブリュースター角で入射させるため、その反射率が0となり、測定対象から発せられた測定光の多くを、測定対象の表層付近の比較的浅い部分に侵入したP偏光が該浅い部分に含まれる物質によって拡散された拡散光にすることができる。このため、測定対象の表層付近にある物質の分光特性を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】透過光を利用した従来の生体成分測定装置の分光光学系の主要な構成要素を示す概略図。
【図1B】光源からの光をヒトの人差し指に照射したときに得られたインターフェログラムの例。
【図2】反射光を利用した従来の生体成分測定装置の分光光学系の主要な構成要素を示す概略図。
【図3】空気中から皮膚にP偏光およびS偏光を入射させたときの入射角と反射率の関係を示すグラフ。
【図4A】対物レンズの後段に偏光板を設けなかった場合に位相シフタに向かう測定光を示す説明図
【図4B】対物レンズの後段に偏光板を設けた場合に位相シフタに向かう測定光を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【図8】本発明の第4実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【図9】本発明の第5実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【図10】測定対象に照射する光の偏光特性について検証した実験に用いた光学系の概略構成図。
【図11A】P偏光を指先に照射したときに得られる観察画像
【図11B】S偏光を指先に照射したときに得られる観察画像
【図11C】P偏光を指先に照射し、さらに第2偏光板を設置したときに得られる観察画像。
【図12A】第1偏光板及び第2偏光板を設置したときの指先の皮膚表層付近の静脈の観察画像
【図12B】第1偏光板及び第2偏光板を設置した状態で、図12Aの四角の枠で囲んだ領域にP偏光を照射したときに得られるインターフェログラム。
【図13A】図12Aの四角の枠で囲んだ領域のインターフェログラムをフーリエ変換して得られたスペクトル
【図13B】図13Aと同じ条件でラットの血液に光を照射したときに得られたスペクトル。
【図14A】反射照明による指先の表面の観察画像
【図14B】指先の表面の表層付近の静脈に含まれるヘモグロビンのスペクトル
【図14C】一般的な水の吸収スペクトル。
【図15A】窓部が無いときの指先の皮膚表層付近に含まれる静脈のスペクトル
【図15B】窓部が有るときの指先の観察画像。
【図15C】窓部が有るとき、及び無いときの指先の皮膚表層付近に含まれる静脈のスペクトル
【図15D】ラットの血液のスペクトル。
【図16】その他の実施形態に係る分光測定装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る分光測定装置および分光測定方法では、測定対象の表面に、電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光をブリュースター角で該光源からの光を測定対象に入射させ、その結果、測定対象から発せられた測定光を対物レンズ等の導入光学系によって固定反射部および可動反射部、又は位相シフタに導入する。P偏光は、例えば図4Aに示すように、光源と測定対象の間に偏光板1を配置することにより光源から出射される光の中から抽出することができる。
以上により測定光が2つに分割され、これら2つに分割された測定光の干渉光が形成される。可動反射部が移動されることにより、あるいは光路長差付与手段により2つの測定光の間に連続的な位相差が付与されるため、干渉光検出部により検出される干渉光の強度の変化から測定光のインターフェログラムが得られる。そして、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより測定光のスペクトルを求めることで、測定対象に含まれる物質の分光特性を測定する。

【0028】
特に本発明では、電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光のみがブリュースター角θで測定対象の表面に入射され、電場の振動方向が入射面と垂直な直線偏光であるS偏光は測定対象には入射されない。従って、測定対象の表面におけるP偏光の反射率は理論的には0となり、測定対象からは、該測定対象の表層付近の比較的浅い部分に侵入したP偏光が該浅い部分に含まれる物質によって拡散された内部拡散光のみが発せられることになる。

【0029】
ただし、図4Aに示すように、測定対象が指先等の生体の場合、皮膚の表面には多数の凹凸があるため、光源から測定対象に向かう光を構成する各光線の入射点における入射角が必ずしもブリュースター角になるわけではなく、一部の光線はブリュースター角以外の角度で測定対象の表面に入射する。ブリュースター角以外の角度で測定対象の表面に入射したP偏光は該表面で反射されるため、測定対象から発せられる光に内部拡散光と表面拡散反射光の両方が含まれることになる。通常、表面拡散反射光の強度は内部拡散光の強度に比べて非常に大きい。従って、内部拡散光と表面拡散反射光が対物レンズに入射すると、内部拡散光が表面拡散反射光に埋もれてしまう。

【0030】
表面拡散反射光は入射光の偏光特性を維持するが、内部拡散光では偏光が解消されてしまうことが知られている。つまり、表面拡散反射光は入射光と同じP偏光であるが、内部拡散光はランダム偏光になる。そこで、このような光学現象に着目し、測定対象の表面に凹凸がある場合には、図4Bに示すように対物レンズの後段に、偏光板1に対して、いわゆるクロスニコルの条件になるように、偏光板2を設置した。クロスニコルの条件とは、2枚の偏光板のうち一方の偏光板を透過する電場と他方の偏光板を透過する電場が直交するような条件をいう。このような構成により、表面拡散反射光が固定反射部および可動反射部、あるいは位相シフタに導入されることを阻止することができる。この場合、内部拡散光に含まれるP偏光は対物レンズの後段に設置した偏光板2により遮光されるが、内部拡散光の一部(S偏光)は透過するため、内部拡散光のみからなる測定光の干渉光を検出することができる。

【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態について図5~図9を参照して説明する。
[第1実施形態]
図5は本発明の第1実施形態に係る分光測定装置の概略構成図である。分光測定装置は、分光測定部10と、該分光測定部10で得られた測定結果を処理する制御装置20とから構成されている。

【0032】
分光測定部10は、光源101、第1偏光板102、対物レンズ103、第2偏光板104、位相シフタ105、結像レンズ106、検出部107から構成されている。また、図示しないが、分光測定部10はプラスチックや金属などの、光を透過しない材料から作製されたケーシング内に収容されている。ケーシングには開口が形成されており、該開口を通して光源101からの光が測定対象に照射されるようになっている。本実施例では、対物レンズ103及び結像レンズ106がそれぞれ導入光学系及び干渉光学系に相当する。対物レンズ103はケーシングの開口と対向配置されている。一方、結像レンズ106は、対物レンズ103と光軸が直交する向きに配置されている。

【0033】
光源101は、測定対象の表面を透過して該測定対象の内部に侵入する波長の光を出射する光源が用いられており、その出射光が測定対象の表面に対して所定の角度で入射するような向きに配置されている。測定対象が例えば指先の場合は皮膚の透過性が良い、波長が1μm付近の近赤外光を出射する光源が用いられる。前記所定の角度は、測定対象の表面におけるブリュースター角θに相当する角度であり、測定対象の周辺環境である大気の屈折率をn、測定対象の屈折率をnとすると、角度θは次の式で求められる。
tan θ = n/n

【0034】
本実施形態では、測定対象の屈折率に応じて角度θを変更可能できるように、光源101からの出射光の方向を調整可能に構成されている。
検出部107は例えば16×16画素の二次元CCD(Charge Coupled Device)カメラから構成されており、結像レンズ106の結像面に検出部107の受光面が位置するように配置されている。

【0035】
また、検出部107の検出信号は制御装置20に入力されるようになっている。制御装置20は、検出部107の検出信号からインターフェログラムを求める処理部201、このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換し、測定光の波長毎の相対強度である分光特性(スペクトル)を求める演算部202、演算結果等を出力するディスプレイ、プリンタ等の出力装置203を備える。

【0036】
位相シフタ105は、対物レンズ103と結像レンズ106の間に配置されている。位相シフタ105は固定ミラー部51及び該固定ミラー部51と並んで配置された可動ミラー部52、及び可動ミラー部52を移動させる駆動機構53から構成されている。固定ミラー部51及び可動ミラー部52がそれぞれ本発明の固定反射部及び可動反射部に相当する。固定ミラー部51及び可動ミラー部52は、いずれも対物レンズ103の光軸及び結像レンズ106の光軸に対して45°の角度で傾斜する矩形状の反射面を有している。両ミラー部の反射面は、非常に僅かな隙間をおいて並べて配置されている。

【0037】
駆動機構53は、例えば静電容量センサを具備する圧電素子から構成されており、制御装置20からの信号を受けて、光軸に対する反射面の傾斜角度を45°に維持した状態で可動ミラー部52をその反射面と垂直な方向(矢印A方向)に移動させる。このような構成により、固定ミラー部51に対する可動ミラー部52の相対位置が変化し、固定ミラー部51で反射された光束、及び可動ミラー部52で反射された光束の間に位相差が付与される。

【0038】
具体的には、可動ミラー部52の対物レンズ103或いは結像レンズ106の光軸方向の移動量は、可動ミラー部52の矢印A方向の移動量の1/√2となる。また、固定光束と可動光束の間に相対的な位相変化を与える光路長差は、可動ミラー部52の光軸方向の移動量の2倍となる。

【0039】
第1偏光板102は光源101から出射される光のうち電場の振動方向が入射面と平行な直線偏光であるP偏光のみを透過させる。ここで、入射面とは、入射光線と反射光線を含む面をいう。一方、第2偏光板104には、対物レンズ103を透過した光のうちP偏光と電場の振動方向が直交するS偏光のみを通過させ、P偏光を通過させない偏光板が用いられる。

【0040】
[第2実施形態]
図6は本発明の第2実施形態に係る分光測定装置の概略構成図である。本実施形態では窓部を介して光源からの光が測定対象に照射される点が第1実施形態と異なる。なお、図示しないが、第2実施形態に係る分光測定装置においても、検出部107の検出信号は制御装置20に入力される。

【0041】
本実施形態では、ケーシングに設けられた開口に矩形板状の光透過性部材である窓部11が嵌め込まれており、該窓部11の表面のうちケーシングの外側に位置する面に測定対象が載置され、ケーシングの内側に位置する面に光源101からの光が照射される。前記窓部11の両面のうち測定対象が載置される面が本発明の載置面に、光源からの光が照射される面が本発明の光照射面に相当する。窓部11に測定対象を載置するようにしたことにより、例えば指先のような表面が平坦ではない測定対象の場合に、測定対象の表面を平坦面に近づけることができる。

【0042】
光源101からの出射光は、窓部11に入射した後、測定対象の表面に入射する。従って、出射光が窓部11に入射する際、及び窓部11から出射する際に屈折した後、測定対象の表面に入射する。そのため、本実施形態では、測定対象の表面におけるブリュースター角とは、測定対象と窓部11の界面におけるブリュースター角θとなる。光源101からの出射光は窓部11に入射する際に所定の角度で屈折するため、この屈折角を考慮して光源101から窓部11への入射角が設定されている。上記した以外の構成は第1実施形態と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。

【0043】
[第3実施形態]
図7は本発明の第3実施形態に係る分光測定装置の概略構成図である。本実施形態では第2偏光板を設けていない点が第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。なお、図示しないが、第3実施形態に係る分光測定装置においても、検出部107の検出信号は制御装置20に入力される。

【0044】
第3実施形態は、平坦な表面を有する測定対象の分光特性を測定する場合に好適な装置の例である。ほぼ平坦な表面を有する測定対象の場合は、表面拡散反射光がほとんど発生しないため、第2偏光板が無くても測定光に表面拡散反射光が含まれない。本実施形態においても、第2実施形態に示したような窓部を設けても良い。窓部を設けることによりケーシング内に埃等が侵入することを防止することができる。

【0045】
[第4実施形態]
図8は本発明の第4実施形態に係る分光測定装置の概略構成図である。第4実施形態と第2実施形態とは位相シフタの構成及び干渉光学系が異なる。その他の構成は第2実施形態と同じであるため、第2実施形態と同一符号を付して説明を省略する。なお、図示しないが、第4実施形態に係る分光測定装置においても検出部107の検出信号は制御装置20に入力される。

【0046】
この第4実施形態では、干渉光学系としてシリンドリカルレンズ30が用いられている。また、位相シフタ40は、光照射面と光出射面が平行な第1透過部401と、光照射面及び光出射面のいずれか一方が前記第1透過部401の光照射面又は出射面と同一面上にあり、光照射面及び光出射面のうちの一方に対して他方が傾斜するくさび形の第2透過部402から成る光学部材から構成されている。本実施形態では、第2透過部402は、第1透過部401と第2透過部402の境界面における第2透過部402の厚さが一方側から他方側に向かって徐々に小さくなるように光照射面が傾斜している。第2透過部402の光照射面の傾斜角度は、波数分解能により決まる位相シフト量と、検出部107の画素毎のサンプリング間隔により決まるが、多少ずれても問題はない。なお、第1透過部401と第2透過部402はそれぞれ別の光学部材から構成しても良く、一つの光学部材の一面を加工して第1透過部401と第2透過部402としても良い。

【0047】
この実施形態では、位相シフタ40に導入された測定光は、第1透過部401と第2透過部402に分かれて入射し、第1透過部401及び第2透過部402を透過した後、シリンドリカルレンズ30に向かう。このとき、第2透過部402がくさび形であるため、第2透過部402を透過した測定光(第2測定光)と第1透過部401を透過した測定光(第1測定光)の間に連続的な光路長差が付与される。つまり、この実施形態では、位相シフタ40が分割光学系及び光路長差付与手段として機能する。

【0048】
シリンドリカルレンズ30はその凸面部が位相シフタ40側を向き、平面部が検出部107の受光面側を向くように配置されている。検出部107の受光面はシリンドリカルレンズ30の結像面に位置している。このため、シリンドリカルレンズ30に入射した第1及び第2測定光は該シリンドリカルレンズ30によって収束され、検出部107の受光面上の同一直線上に集光することにより干渉像を形成する。上述したように、第1測定光と第2測定光の間に連続的な光路長差が付与されることから、検出部107の受光面に形成される干渉像の強度が、該連続的な光路長差に応じて変化する。従って、検出部107の検出結果から測定光のインターフェログラム(干渉光強度分布)が得られる。このインターフェログラムをフーリエ変換することにより、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、測定対象の表層付近の内部の生体成分の分光特性(スペクトル)を得ることができる。

【0049】
[第5実施形態]
図9は本発明の第5実施形態に係る分光測定装置の概略構成図である。第5実施形態では第2偏光板を設けておらず、この点が第4実施形態とは異なる。その他の構成は第4実施形態と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。

【0050】
[分光測定装置の動作説明]
次に、本発明に係る分光測定装置の動作説明を第1実施形態に係る分光測定装置(図5参照)を例に挙げて説明する。ここでは、被検者の手の指先の内部の分光特性を測定する動作について説明するが、表面が平坦な測定対象の場合もほぼ同じである。
まず、指先をケーシングの開口部の位置に合わせ、この状態で光源101からの光(近赤外光)を第1偏光板102を通して指先の表面に照射する。すると、近赤外光のうちP偏光成分のみが第1偏光板102を通過して指先に入射する。このとき、光源101からの近赤外光はブリュースター角で指先の表面に入射するため、ほとんどのP偏光は指先の皮膚を透過して指先の内部に侵入する。そして、指先の表層近傍に含まれる血管内の生体成分等によって拡散され、その拡散光(内部拡散光)は再び指先の皮膚を透過し、開口を経てケーシング内に至り、対物レンズ103に入射する。指先の内部に侵入して拡散された光は偏光特性が解消されるため、内部拡散光はP偏光成分とS偏光成分の両方を含む。

【0051】
一方、指先の表面には凹凸があるため、指先の表面に入射した近赤外光のP偏光成分の一部はブリュースター角とは異なる角度で指先の表面に入射して拡散反射される。この拡散反射光(表面拡散反射光)は開口部からケーシング内に至り、対物レンズ103に入射する。表面拡散反射光は偏光特性を維持するため、対物レンズ103に入射した表面拡散反射光はP偏光成分から成る。

【0052】
対物レンズ103に入射した内部拡散光及び表面拡散反射光はほぼ平行な光線となって第2偏光板104に入射する。第2偏光板104はP偏光成分を遮断し、S偏光成分のみを通過させるため、第2偏光板104に入射した内部拡散光のP偏光成分及び表面拡散反射光は該第2偏光板104を通過せず、内部拡散光のS偏光成分は第2偏光板104を通過して位相シフタ105の固定ミラー部51及び可動ミラー部52の表面全体に至る。これにより、内部拡散光のS偏光成分の一部は固定ミラー部51の反射面で反射され、残りは可動ミラー部52の反射面で反射され、それぞれ、結像レンズ106に入射する。なお、以下の説明では、固定ミラー部51で反射された光を固定反射光、可動ミラー部52で反射された光を可動反射光とも呼ぶ。

【0053】
結像レンズ106に入射した固定反射光及び可動反射光は、検出部107の受光面において結像し、干渉像を形成する。このとき、手の指先の内部から発せられる内部拡散光には様々な波長の光が含まれることから、可動ミラー部52を移動させて可動反射光と固定反射光の光路長差を連続的に変化させることにより、インターフェログラムと呼ばれる結像強度変化(干渉光の強度変化)の波形が得られる。このインターフェログラムを数学的にフーリエ変換することにより内部拡散光のS偏光成分の分光特性を取得できる。上記の分光測定装置では、指先内部のうち対物レンズ103の特定深度に位置する合焦面から発せられた内部拡散光のみが検出部107の受光面において結像する。従って、合焦面に深度を限定した指先内部の分光特性を得ることができる。

【0054】
[実験結果]
続いて、測定対象に照射する光の偏光特性について検証した実験結果を図10~図15を用いて説明する。図10は実験に用いた光学系を示す。図11A、図11Bは、それぞれP偏光、S偏光を測定対象である指先にブリュースター角で照射したときに得られた画像を示す。これらの画像から、S偏光を照射したときの方が明るい画像が観察されることが分かる。これは、P偏光の方がS偏光よりも指先の表面における拡散反射光が抑えられたためであると考えられる。また、図11Cは、測定対象と導入光学系の間に第1偏光板とクロスニコルの状態となる第2偏光板を配置してP偏光を測定対象に照射したときに得られた画像を示す、図11Cの画像は図11Aよりも更に暗いことから、表面拡散光がさらに抑えられたことが分かる。以上より、P偏光をブリュースター角で測定対象に照射するとともに測定対象と導入光学系の間にクロスニコルとなる偏光板を配置することが、測定対象の表面拡散反射光の低減に有効であることが実証された。

【0055】
図12Aは、第1偏光板及び第2偏光板を設置したときの指先の皮膚表層付近の静脈の観察画像を示す。図12Bは、図12Aの四角で囲んだ領域に、図11Cに示す画像を得たときと同じ光学条件(以下、光学条件Pcという)でP偏光を照射して干渉光の強度を検出した結果、得られたインターフェログラムを示している。図1Bに示すインターフェログラムと異なり、図12Bに示すインターフェログラムには、脈動に伴い干渉光の輝度値の変化が重畳していない。この結果からも、指先の表層近傍の静脈に含まれる生体成分の分光特性のみを測定可能であることが分かる。

【0056】
図13Aは、図12Aの四角で囲んだ領域に、600nm~900nmの波長帯域のP偏光を光学条件Pcで照射することにより得られたインターフェログラムをフーリエ変換して求めたスペクトルを示す。図13Bは、図13Aと同様の条件で600nm~900nmの波長帯域の光をラットの血液に照射したときに得られたスペクトルを示している。図13Bとの比較から、図13Aのスペクトルは、指先内部の静脈に含まれる生体成分の分光特性を表していると推測された。

【0057】
図14Bは、図14Aに示す領域に、900nm~1700nmの波長帯域のP偏光を光学条件Pcで照射することにより得られたインターフェログラムをフーリエ変換して求めたスペクトルを示す。図14Cは、一般的に知られている水の吸収スペクトルを示す(非特許文献1参照)。図14B及び図14Cの比較から、指先の表層付近に存在する水の吸収スペクトルが良好に得られることが分かる。

【0058】
図15A~図15Dは、窓部11の有無による観察画像及びスペクトルの違いを検証した実験結果を示す。図15Aは第1実施形態に係る分光測定装置(窓部無し)を用いて、図15Bは第2実施形態に係る分光測定装置(窓部有り)を用いて、それぞれ指先に600nm~900nmの波長帯域のP偏光を光学条件Pcで照射することにより得られた観察画像を示す。また、図15Cは、そのとき得られたインターフェログラムをフーリエ変換して求めたスペクトルを示す。図15Dは図15Cと同様の条件でラットの血液に600nm~900nmの波長帯域の光を照射したときに得られたインターフェログラムをフーリエ変換して求めたスペクトルを示す。

【0059】
図15Aと図15Bの比較から、窓部を設けた方が指先の観察画像が明るいことが分かる。これは、窓部により指先の表面が平坦化され、表面拡散反射光が低減したためであると推察された。また、図15Cから、窓部有り、窓部無しのいずれの状態においても、指先の表層付近に存在する静脈の吸収スペクトルが良好に得られることが分かる。

【0060】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されない。例えば、第1~第3実施形態では固定ミラー部と可動ミラー部から位相シフタを構成したが、図16に示すように、基準ミラー部601と傾斜ミラー部602から位相シフタ60を構成しても良い。基準ミラー部601の反射面は対物レンズ104の光軸に対して45°傾斜しており、傾斜ミラー部602の反射面は基準ミラー部61の反射面に対して若干傾斜している。これにより、基準ミラー部601に反射された測定光と傾斜ミラー部602に反射された測定光の間には連続的な光路長差が付与された後、シリンドリカルレンズ30に入射する。従って、第4及び第5実施形態と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
10…分光測定部
101…光源
102…第1偏光板
103…対物レンズ
104…第2偏光板
105…位相シフタ
106…結像レンズ
107…検出部
11…窓部
20…制御装置
201…処理部
202…演算部
203…出力装置
30…シリンドリカルレンズ
40…位相シフタ
401…第1透過部
402…第2透過部
51…固定ミラー部
52…可動ミラー部
53…駆動機構
60…位相シフタ
601…基準ミラー部
602…傾斜ミラー部
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11A】
12
【図11B】
13
【図11C】
14
【図12A】
15
【図12B】
16
【図13A】
17
【図13B】
18
【図14A】
19
【図14B】
20
【図14C】
21
【図15A】
22
【図15B】
23
【図15C】
24
【図15D】
25
【図16】
26