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明細書 :接ぎ木用の育苗部材及び育苗セット、並びに接ぎ木苗の生産方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6270187号 (P6270187)
登録日 平成30年1月12日(2018.1.12)
発行日 平成30年1月31日(2018.1.31)
発明の名称または考案の名称 接ぎ木用の育苗部材及び育苗セット、並びに接ぎ木苗の生産方法
国際特許分類 A01G   2/30        (2018.01)
FI A01G 1/06 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 27
出願番号 特願2016-574866 (P2016-574866)
出願日 平成28年2月12日(2016.2.12)
国際出願番号 PCT/JP2016/054168
国際公開番号 WO2016/129683
国際公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
優先権出願番号 2015026570
優先日 平成27年2月13日(2015.2.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年8月14日(2017.8.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】野田口 理孝
【氏名】柳澤 直樹
【氏名】新田 英之
【氏名】池松 朱夏
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】竹中 靖典
参考文献・文献 実開平01-034590(JP,U)
特開平08-242699(JP,A)
調査した分野 A01G 1/06
特許請求の範囲 【請求項1】
接ぎ木用の育苗部材であって、
少なくとも1つの育苗ユニットを備え、
該少なくとも1つの育苗ユニットは、植物の種子を収容し、前記植物が発芽する空間を有するように構成された種子収容部と、発芽して伸長した前記植物の茎を収容するように構成された茎収容部と、伸長した前記植物の茎を保持するように構成された茎保持部と、を備え、
前記少なくとも1つの育苗ユニットの前記種子収容部の少なくとも一部は、前記植物の成長方向とは異なる方向において、前記少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成され、
前記少なくとも1つの育苗ユニットの前記茎収容部の少なくとも一部は、前記異なる方向において、前記少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されている、接ぎ木用の育苗部材。
【請求項2】
前記少なくとも1つの育苗ユニットの茎保持部は、可動性を有し、伸長した前記植物の茎に接触した状態で、前記植物の茎を保持するように構成されている、請求項1に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項3】
前記少なくとも1つの育苗ユニットは、板状である、請求項1又は2に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項4】
前記少なくとも1つの育苗ユニットは、弾性変形可能な材料を含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項5】
前記少なくとも1つの育苗ユニットは、複数の育苗ユニットを備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項6】
前記複数の育苗ユニットは、一体的に形成されている、請求項5に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項7】
前記複数の育苗ユニットは、該複数の育苗ユニット各々の前記茎収容部が同一の方向を向くように、所定の方向に並んで配置されている、請求項5又は6に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項8】
前記複数の育苗ユニットは、該複数の育苗ユニット各々の前記茎収容部が等間隔に並んで配置されている、請求項7に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項9】
前記育苗部材は、幼植物の接ぎ木に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の接ぎ木用の育苗部材。
【請求項10】
前記種子収容部の少なくとも一部は、前記植物に対して植物育成培地を供給することができるように、前記異なる方向において、前記少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の育苗部材。
【請求項11】
前記茎収容部の少なくとも一部は、前記植物に対して植物育成培地を供給することができるように、前記異なる方向において、前記少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の育苗部材。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の接ぎ木用の育苗部材を複数備えている、接ぎ木用の育苗セット。
【請求項13】
接ぎ木苗の生産方法であって、
各々が請求項1~12のいずれか1項に記載の接ぎ木用の育苗部材である、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を用意することと、
前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記種子収容部に第1の植物の種子を収容し、前記育苗ユニットの前記種子収容部内で前記第1の植物の前記種子を発芽させ、前記育苗ユニットの前記茎収容部内で前記第1の植物の茎を伸長させることと、
前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって前記第1の植物の前記茎を保持することと、
前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第1の植物の前記茎を切断することと、
前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記種子収容部に第2の植物の種子を収容し、前記育苗ユニットの前記種子収容部内で前記第2の植物の前記種子を発芽させ、前記育苗ユニットの前記茎収容部内で前記第2の植物の茎を伸長させることと、
前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって前記第2の植物の前記茎を保持することと、
前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第2の植物の前記茎を切断することと、
前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第1の植物の前記茎の切断面と、前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第2の植物の前記茎の切断面と、を接合することと、を備えている、接ぎ木苗の生産方法。
【請求項14】
前記第1の育苗部材を複数の部分に分割して複数の分割片を形成することと、
前記第2の育苗部材を複数の部分に分割して複数の分割片を形成することと、をさらに備え、
前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第1の植物の前記茎の切断面と、前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第2の植物の前記茎の切断面と、を接合することは、前記第1の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第1の植物の前記茎の切断面と、前記第2の育苗部材における前記育苗ユニットの前記茎保持部によって保持された前記第2の植物の前記茎の切断面と、が当接するように、前記第1の育苗部材における前記複数の分割片のうちの1つの分割片と、前記第2の育苗部材における前記複数の分割片のうちの1つの分割片と、を配置することを含む、請求項13に記載の接ぎ木苗の生産方法。
発明の詳細な説明
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2015年2月13日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2015-026570号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2015-026570号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、接ぎ木用の育苗部材及び育苗セット、並びに接ぎ木苗の生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
接ぎ木は、農業・園芸分野において、連作障害の回避、品質及び収穫数の向上、新品種の増殖等を目的に広く用いられており、ごく一般的に行われている手法である。接ぎ木は業務用及び家庭用を問わず広く普及しているが、接ぎ木の多くが人の手によって施術されている。接ぎ木の施術にはある程度の習練が必要であるため、接ぎ木苗の品質がばらつく、生産速度が遅い等といった問題がある。これらの問題を解決する手法として、下記特許文献1には、全自動接ぎ木装置が開示されている。また、下記特許文献2~7には、様々な接ぎ木用部材が開示されている。また、接ぎ木は、人の手で施術することが前提であるため、手で扱えるサイズにまで成長した植物体にしか適用されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-238805号公報
【特許文献2】実開平2-127149号公報
【特許文献3】実開平3-99930号公報
【特許文献4】特開平7-327498号公報
【特許文献5】特開平8-242699号公報
【特許文献6】特開平8-280265号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第829199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、接ぎ木の施術にはある程度の習練が必要であるため、接ぎ木苗の品質がばらつく、生産速度が遅い等といった問題がある。また、上記特許文献1の全自動接ぎ木装置は、大型であり、価格が高いため、小規模事業体による接ぎ木苗の生産には不向きである。また、上記特許文献2~7の接ぎ木用部材には、例えば、植物の種子を収容する種子収容部とその種子収容部に連通する茎収容部とを備えている接ぎ木用部材があるが、植物の種子を茎収容部から種子収容部に投入しようとすると、茎収容部の内径を種子収容部の内径よりも大きくする必要がある。そのため、茎収容部に収容された植物の茎を十分に保持できず、接ぎ木の際に植物の茎の位置決めが困難となる。その結果、接ぎ木の成功率が低くなり、接ぎ木の作業性も悪くなる。また、接ぎ木の精度が低いため、小さな植物の接ぎ木が困難である。さらに、手又は大型の装置で扱える植物は、植物体サイズの大きいものに限られている。そのため、接ぎ木は、蔬采類の中ではウリ科、ナス科等の芽生えの大きな植物にしか適用されていない。
【0006】
本開示の1つの側面は、接ぎ木の対象となる植物体のサイズや成長段階を問わず、簡便に接ぎ木苗を生産でき、かつ、接ぎ木苗の生産性向上、品質向上及びコスト低減を図ることができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの側面である接ぎ木用の育苗部材は、少なくとも1つの育苗ユニットを備えている。少なくとも1つの育苗ユニットは、植物の種子を収容し、植物が発芽する空間を有するように構成された種子収容部と、発芽して伸長した植物の茎を収容するように構成された茎収容部と、伸長した植物の茎を保持するように構成された茎保持部と、を備えている。少なくとも1つの育苗ユニットの種子収容部の少なくとも一部は、種子収容部の外部に開口可能に構成されている。少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部の少なくとも一部は、茎収容部の外部に開口可能に構成されている。
【0008】
上記接ぎ木用の育苗部材は、少なくとも1つの育苗ユニットを備えている。少なくとも1つの育苗ユニットは、種子収容部と茎収容部と茎保持部とを備えた簡易な構造である。そのため、育苗部材を用いて、接ぎ木に供する植物体(接ぎ木用の苗)を簡便に用意することができる。特に、少なくとも1つの育苗ユニットが茎保持部を備えていることにより、茎保持部によって茎が保持された状態の接ぎ木用の苗を簡便に用意することができる。
【0009】
そして、例えば、第1の育苗部材で第1の植物を育成し、第2の育苗部材で第2の植物を育成する。次いで、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎を切断し、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎を切断する。次いで、第1の育苗部材における第1の植物の茎の切断面と第2の育苗部材における第2の植物の茎の切断面とを接合する。このように、簡便で機械的な作業で精度良く接ぎ木を行うことができる。よって、誰でも簡便に均一な接ぎ木苗を精度良く生産でき、接ぎ木苗の生産性向上、品質向上を図ることができる。
【0010】
また、育苗部材(少なくとも1つの育苗ユニット)は、簡易な構造で用意することができる。そのため、育苗部材を大量に準備できる。これにより、育苗部材を用いて、大量に接ぎ木苗を生産できる。また、接ぎ木の対象となる植物体に合わせて育苗部材のサイズを調整することが容易であるため、小さい植物から大きい植物までサイズを問わず、また発芽して間もない幼苗から成長した植物体まで成長段階を問わず、接ぎ木を容易に行うことができる。
【0011】
また、育苗部材を用いることにより、育苗の準備が容易になると共に、育苗場所の省スペース化を図ることができる。また、植物の育成期間の短縮も可能である。これにより、育成コストの低減を図ることができる。また、幼植物(特に素手で扱うことのできない程度の小さいサイズの幼植物)を対象とすれば、育成時間短縮による育成コストの低減、接ぎ木苗のサイズが小さいことによる輸送コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、少なくとも1つの育苗ユニットの種子収容部の少なくとも一部は、種子収容部の外部に開口可能に構成されている。そのため、植物の種子を種子収容部の開口部分から種子収容部内に容易に投入することができる。これにより、植物の種子を茎収容部から投入する必要がないため、茎収容部の内径を植物の茎の径に合わせて設定することができる。また、例えば、植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地等を種子収容部の開口部分から種子収容部(具体的には種子収容部内に収容する植物の種子)に対して供給でき、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。
【0013】
また、少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部の少なくとも一部は、茎収容部の外部に開口可能に構成されている。そのため、例えば、植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地等を茎収容部の開口部分から茎収容部(具体的には茎収容部内に収容する植物の茎)に対して供給でき、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。また、植物の茎を伸長させ、少なくとも1つの育苗ユニットの外部で子葉、初生葉等を展開させることができ、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。
【0014】
また、例えば、寒天培地等の植物育成培地等を用いることにより、顆粒の大きな土等を用いる場合と比較して、育苗部材を大幅に小型化できると共に所望の形状の育苗部材を容易に準備することができる。また、小型の育苗部材を用いることにより、マイクロメーターオーダーで接ぎ木用の苗(例えば植物の茎の切断面)の位置決め(座標決め)ができるため、接ぎ木を精度良く行うことができる。これにより、従来困難であった小さな幼植物の接ぎ木を容易に、精度良く行うことができる。
【0015】
また、例えば、発芽して伸長した植物の茎は、少なくとも1つの育苗ユニットの茎保持部によって直ちに保持することが可能となるため、子葉、初生葉等が茎収容部の開口部分から少なくとも1つの育苗ユニットの外部に出現してから直ちに接ぎ木を行うことが可能となる。これにより、発芽後の幼植物を直ちに接ぎ木することが可能となる。
【0016】
本開示の他の側面である接ぎ木用の育苗セットは、上記接ぎ木用の育苗部材を複数備えている。
上記接ぎ木用の育苗セットは、上述した接ぎ木用の育苗部材を複数備えている。そのため、上述したように、簡便に接ぎ木を行うことができる。また、誰でも簡便に均一な接ぎ木苗の生産が可能となり、接ぎ木苗の品質向上を図ることができる。また、育成コスト、輸送コストの低減を図ることができる。
【0017】
本開示のさらに他の側面である接ぎ木苗の生産方法は、各々が上記接ぎ木用の育苗部材である、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を用意することと、第1の育苗部材における育苗ユニットの種子収容部に第1の植物の種子を収容し、育苗ユニットの種子収容部内で第1の植物の種子を発芽させ、育苗ユニットの茎収容部内で第1の植物の茎を伸長させることと、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって第1の植物の茎を保持することと、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎を切断することと、第2の育苗部材における育苗ユニットの種子収容部に第2の植物の種子を収容し、育苗ユニットの種子収容部内で第2の植物の種子を発芽させ、育苗ユニットの茎収容部内で第2の植物の茎を伸長させることと、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって第2の植物の茎を保持することと、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎を切断することと、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎の切断面と、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎の切断面と、を接合することと、を備えている。
【0018】
上記接ぎ木苗の生産方法は、上述した接ぎ木用の育苗部材を複数用いて行う。そのため、上述したように、簡便に精度良く接ぎ木を行うことができ、簡便に精度良く接ぎ木苗を生産できる。また、誰でも簡便に均一な接ぎ木苗を精度良く生産することが可能となり、接ぎ木苗の品質向上を図ることができる。また、育成コスト、輸送コストの低減を図ることができる。
【0019】
このように、本開示の1つの側面によれば、接ぎ木の対象となる植物体のサイズや成長段階を問わず、安価で簡便に接ぎ木苗を生産でき、かつ、接ぎ木苗の生産性向上、品質向上、コスト低減を図ることができる。
【0020】
上記接ぎ木用の育苗部材において、少なくとも1つの育苗ユニットの種子収容部の少なくとも一部は、少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されている。種子収容部が少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能である構成には、種子収容部が少なくとも1つの育苗ユニットの外部に通ずる開口部を有する構成、種子収容部が少なくとも1つの育苗ユニットの外部に通ずる開口部を有すると共にその開口部を開閉できる部材が設けられている構成等が含まれる。また、植物育成培地は、メンブレン、ろ紙等の浸水性を有する厚みの薄いシート部材を介して供給することが好ましい。植物育成培地として、固く形成した寒天培地を用いれば、上述のシート部材を用いる必要がなくなる。
【0021】
少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部の少なくとも一部は、少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されている。茎収容部の少なくとも一部が少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能である構成には、上述した種子収容部と同様の構成が含まれる。
【0022】
少なくとも1つの育苗ユニットは、さらに、発芽して伸長した植物の根を収容するように構成された根収容部を備えていてもよい。この場合には、根収容部において植物の根を伸長させることができる。これにより、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。
【0023】
少なくとも1つの育苗ユニットの根収容部の少なくとも一部は、少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能に構成されていてもよい。この場合には、例えば、植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地等を根収容部の開口部分から根収容部(具体的には根収容部内に収容する植物の根)に対して供給でき、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。また、植物の根を少なくとも1つの育苗ユニットの外部でさらに伸長させることができ、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。なお、根収容部の少なくとも一部が少なくとも1つの育苗ユニットの外部に開口可能である構成には、上述した種子収容部と同様の構成が含まれる。
【0024】
少なくとも1つの育苗ユニットの茎保持部は、可動性を有し、伸長した植物の茎に接触した状態で、植物の茎を保持するように構成されていてもよい。この場合には、植物の茎の径が成長によって変化しても、植物の茎に接触した状態を維持しながら、植物の茎を十分に保持できる。
【0025】
少なくとも1つの育苗ユニットにおいて、種子収容部は、吸水した植物の種子が回転することができる程度の断面形状としてもよい。種子収容部を円形断面として形成する場合、吸水した植物の種子の長径と同程度から長径の2~3倍程度の直径としてもよい。
【0026】
少なくとも1つの育苗ユニットにおいて、茎収容部の幅は、植物の子葉が通過することができる程度の幅としてもよい。また、茎収容部の幅は、植物の茎を所定の位置で保持できる程度の幅としてもよい。また、茎収容部の幅は、種子収容部の径の1/10~1/2程度としてもよい。また、茎収容部の長さは、植物の茎を伸長させるのに適当な長さとすればよい。また、茎収容部は、種子収容部と別々に形成されていてもよいし、種子収容部と一体的に形成されていてもよい。
【0027】
少なくとも1つの育苗ユニットにおいて、根収容部は、植物の根が通過することができる程度の幅の通路とすればよい。また、根収容部の幅は、種子収容部の径の1/10~1/2程度としてもよい。根収容部は、上述のとおり、少なくとも一部が外部に開口可能に構成されていてもよいし、植物の根を十分に収容可能な空間(例えば種子収容部等)があれば、外部に開口せずに閉じられていてもよい。根収容部は、種子収容部と別々に形成されていてもよいし、種子収容部と一体的に形成されていてもよい。また、根収容部は、茎収容部と別々に形成されていてもよいし、茎収容部と一体的に形成されていてもよい。
【0028】
少なくとも1つの育苗ユニットにおいて、茎保持部は、伸長した植物の茎を保持することができれば、形状等を問わない。ここで、伸長した植物の茎を保持するとは、植物の茎を一定の位置に保持できることを意味する。茎保持部は、茎収容部の一部で構成されていてもよいし、茎収容部とは別に設けられていてもよい。例えば、茎収容部の一部(例えば内壁面)を茎保持部として機能させる場合には、茎収容部の一部による押圧によって茎が保持されるようにしてもよい。このとき、成長した段階の茎の太さに合わせて予め茎収容部の幅が形成されていてもよい。また、茎保持部は、茎収容部内に設けられていてもよい。
【0029】
少なくとも1つの育苗ユニットは、板状であってもよい。この場合には、少なくとも1つの育苗ユニットの小型化、さらには育苗部材全体の小型化を図ることができる。また、育苗部材の小型化により、育苗場所の省スペース化を図ることができる。
【0030】
少なくとも1つの育苗ユニットが板状である場合、例えば、種子収容部、茎収容部、根収容部等を一方の主面において開口するように形成してもよいし、開閉可能に構成してもよい。この場合には、種子収容部への種子の投入、種子収容部、茎収容部、根収容部等への植物育成培地等の供給、接ぎ木後の接ぎ木苗の取り出しが容易となる。
【0031】
少なくとも1つの育苗ユニットは、弾性変形可能な材料を含んでいてもよい。この場合には、少なくとも1つの育苗ユニットにおいて育成した植物を保持できる。例えば、茎収容部の一部(例えば内壁面)を茎保持部として機能させて、育成した植物の茎を保持できる。これにより、少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部内の植物の茎を切断し、育苗部材を複数の部分に分割したときであっても、茎収容部内において植物の茎を保持できる。また、植物の成長に合わせて少なくとも1つの育苗ユニットが柔軟に変形できるため、植物との密着性を高め、植物の茎の保持が容易となり、さらには植物の成長を阻害することを抑制できるという効果も得られる。なお、弾性変形可能な材料としては、例えば、シリコンゴムとも呼ばれるPDMS(ポリジメチルシロキサン)等を用いることができる。PDMSは、生体適合性が高く、かつ、刃等で容易に切断可能な材料である。
【0032】
育苗部材は、少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部を横断するように、複数の部分に分割可能に構成されていてもよい。この場合には、少なくとも1つの育苗ユニットの茎収容部内の植物の茎を切断する際に、その切断位置で育苗部材を複数の部分に分割できるようにしておけば、育苗部材を切断せずに済むため、育苗部材を再利用することが可能となる。
【0033】
少なくとも1つの育苗ユニットは、複数の育苗ユニットを備えていてもよい。この場合には、育苗部材を用いて、より大量に接ぎ木苗を生産できる。これにより、接ぎ木苗の生産性向上をより一層図ることができる。
【0034】
複数の育苗ユニットは、一体的に構成されていてもよい。この場合には、育苗部材の構造の簡素化を図ることができる。また、複数の育苗部材を用いて接ぎ木苗を生産するための作業が容易となる。
【0035】
複数の育苗ユニットは、複数の育苗ユニット各々の茎収容部が同一の方向を向くように、所定の方向に並んで配置されていてもよい。この場合には、複数の育苗部材を用いて接ぎ木苗を生産するための作業(特に植物の茎の切断、植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。なお、複数の育苗ユニットは、2次元(平面)的に並んで配置されていてもよいし、3次元(立体)的に並んで配置されていてもよい。
【0036】
複数の育苗ユニットは、複数の育苗ユニット各々の茎収容部が等間隔に並んで配置されていてもよい。この場合には、複数の育苗部材を用いて接ぎ木苗を生産するための作業(特に植物の茎の切断、植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。
【0037】
育苗部材は、幼植物の接ぎ木に用いられてもよい。この場合には、幼植物(特に素手で扱うことのできない程度の小さいサイズの幼植物)を対象とすることにより、育成時間短縮による育成コストの低減、接ぎ木苗のサイズが小さいことによる輸送コストの低減を図ることができる。また、これまでは人の手で接ぎ木するには小さくて困難であった植物に対しても、接ぎ木することができるという上述の効果を有効に発揮できる。ここで、幼殖物とは、植物が発芽をして初めての葉が開いた頃までをいう。例えば、アブラナ科の植物であれば、発芽をして数日後(例えば3日後)で1mm程度の長さの状態が含まれる。
【0038】
育苗部材の一部又は全部は、例えば、生物分解性材料により構成されていてもよい。この場合には、育苗部材を用いて生産した接ぎ木苗を育苗部材から取り出すことなく、育苗部材ごと広大な耕地に散布すること(苗まき)ができる。なお、生物分解性材料としては、ゼイン(トウモロコシから抽出した非水溶性蛋白質)等を用いることができる。
【0039】
育苗部材は、1つの部材で構成されていてもよいし、複数の部材で構成されていてもよい。例えば、育苗部材は、少なくとも1つの育苗ユニットの種子収容部及び茎収容部を有する部材と、少なくとも1つの育苗ユニットの茎保持部を有する部材とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0040】
上記接ぎ木用の育苗セットにおいて、複数の育苗部材各々が複数の育苗ユニットを備えているとき、複数の育苗ユニットは、複数の育苗ユニットの茎収容部が等間隔に並んで配置されていてもよい。この場合には、複数の育苗部材を用いて接ぎ木苗を生産するための作業(特に植物の茎の切断、植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。また、接ぎ木する植物同士がほぼ同様の大きさの植物の場合に限られず、大きさが異なる植物の場合であっても、容易に位置決めが可能となり、作業性良く接ぎ木することが可能である。
【0041】
上記接ぎ木苗の生産方法において、第1の育苗部材を複数の部分に分割して複数の分割片を形成することと、第2の育苗部材を複数の部分に分割して複数の分割片を形成することと、をさらに備え、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎の切断面と、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎の切断面と、を接合することは、第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎の切断面と、第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎の切断面と、が当接するように、第1の育苗部材における複数の分割片のうちの1つの分割片と、第2の育苗部材における複数の分割片のうちの1つの分割片と、を配置することを含んでいてもよい。この場合には、接ぎ木作業(特に第1の植物の茎の切断面と第2の植物の茎の切断面との接合)が容易となる。
【0042】
上記接ぎ木苗の生産方法において、第1の育苗部材及び第2の育苗部材における育苗ユニットの種子収容部、茎収容部等に、第1の植物及び第2の植物の発芽及び育成のための植物育成培地を供給することが好ましい。この場合には、第1の植物及び第2の植物の発芽及び育成を容易かつ円滑に行うことができる。
【0043】
上記接ぎ木苗の生産方法において、第1の育苗部材及び第2の育苗部材における育苗ユニットの茎収容部の一端を育苗ユニットの外部に開口している場合、第1の植物及び第2の植物の子葉、初生葉等が茎収容部の一端に達するまでは、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を暗所に置き、それ以降は第1の育苗部材及び第2の育苗部材を明所に置くようにしてもよい。この場合には、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を暗所に置くことにより、育苗ユニットの茎収容部において子葉、初生葉等を展開させることなく茎を十分に伸長させ、茎収容部に茎を適正に配置することができる。また、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を明所に置くことにより、育苗ユニットの茎収容部の外部で子葉、初生葉等を展開させることができる。さらに、茎を太く成長させ、茎が茎保持部によって十分に保持される。これにより、第1の植物及び第2の植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。なお、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を暗所及び明所に置くことに換えて、第1の育苗部材及び第2の育苗部材を光透過性が低い素材で構成し、育苗ユニット内部は暗所、育苗ユニット外部は明所となるようにしてもよい。
【0044】
また、発芽して伸長した第1の植物の茎を第1の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって十分に保持することができ、発芽して伸長した第2の植物の茎を第2の育苗部材における育苗ユニットの茎保持部によって十分に保持することができるのであれば、最初から最後まで明所で育苗するようにしてもよい。
【0045】
上記接ぎ木苗の生産方法において、第1の育苗部材の育苗ユニットの茎保持部によって保持された第1の植物の茎を切断する際に、第1の育苗部材ごと切断してもよい。また、第1の植物の茎だけ切断し、その切断位置で分割できるように構成した第1の育苗部材を分割してもよい。第1の育苗部材ごと切断する場合には、第1の育苗部材を切断容易な材料で構成することが好ましい。
【0046】
上記接ぎ木苗の生産方法において、第2の育苗部材の育苗ユニットの茎保持部によって保持された第2の植物の茎を切断する際に、第2の育苗部材ごと切断してもよい。また、第2の植物の茎だけ切断し、その切断位置で分割できるように構成した第2の育苗部材を分割してもよい。第2の育苗部材ごと切断する場合には、第2の育苗部材を切断容易な材料で構成することが好ましい。
【0047】
上記接ぎ木苗の生産方法では、第1の植物及び第2の植物を含む複数の植物を接ぎ木して接ぎ木苗を得る。ここで、複数の植物とは、同種の植物であってもよいし、異なる種に属する植物であってもよいし、これらが混在していてもよい。
【0048】
上記接ぎ木苗の生産方法では、例えば、台木用の植物と穂木用の植物とを接ぎ木してもよい。すなわち、2つの植物を接ぎ木してもよい。また、台木用の植物と穂木用の植物との間に中間台木の植物を配置して接ぎ木してもよい。中間台木の植物は、1つであってもよいし、複数であってもよい。すなわち、3つの植物を接ぎ木してもよいし、4つ以上の植物を接ぎ木してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】育苗部材の構成を示す平面図である。
【図2】図1の育苗部材のII-II線の断面図である。
【図3】図1の育苗部材のIII-III線の断面図である。
【図4】図1の育苗部材のIV-IV線の断面図である。
【図5】育苗部材集合体の構成を示す平面図である。
【図6】育苗部材を用いた接ぎ木苗の生産方法の一例を示す工程図である。
【図7】育苗部材を植物育成培地と共に垂直に立てたときの様子を示す説明図である。
【図8】図8A-8Dは育苗ユニットでの育苗の様子を示す説明図である。
【図9】図9A-9Cは育苗部材を用いた接ぎ木の様子の一例を示す説明図である。
【図10】育苗部材を用いた接ぎ木苗の生産方法の別例を示す工程図である。
【図11】図11A-11Dは育苗部材を用いた接ぎ木の様子の一例を示す説明図である。
【図12】別例の育苗部材の構成を示す平面図である。
【図13】別例の育苗部材集合体の構成を示す平面図である。
【図14】図14A及び14Bは育苗部材の構成及び育苗部材を用いた育苗の様子を示す平面図である。
【図15】育苗部材の構成を示す斜視図である。
【図16】育苗部材の構成を示す斜視図である。
【図17】育苗部材の構成を示す斜視図である。
【図18】育苗部材の構成を示す斜視図である。
【図19】育苗部材の育苗第1部材の構成を示す斜視図である。
【図20】図20A及び20Bは育苗部材を用いた育苗の様子を示す説明図である。
【図21】図21A及び21Bは育苗部材を用いた育苗の様子を示す説明図である。
【図22】育苗部材の構成を示す斜視図である。
【図23】図23A及び23Bは育苗部材を用いた育苗の様子を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
20…育苗部材
30…育苗ユニット
31…茎保持部
32…種子収容部
34…茎収容部
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本開示の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
図1~図5に示すように、第1実施形態の接ぎ木用の育苗部材20は、複数の育苗ユニット30を備えている。各育苗ユニット30は、植物の種子を収容し、植物が発芽する空間を有するように構成された種子収容部32と、発芽して伸長した植物の茎を収容するように構成された茎収容部34と、伸長した植物の茎を保持するように構成された茎保持部(後述する茎収容部34の内壁面341)と、を備えている。各育苗ユニット30の種子収容部32の一部は、種子収容部32の外部に開口可能に構成されている。各育苗ユニット30の茎収容部34の一部は、茎収容部34の外部に開口可能に構成されている。以下、この接ぎ木用の育苗部材20の詳細について説明する。

【0052】
図1は、接ぎ木用の育苗部材20の構成の概略を示す構成図である。図2は、図1の接ぎ木用の育苗部材20のII-II線の断面図である。図3は、図1の接ぎ木用の育苗部材20のIII-III線の断面図である。図4は、図1の接ぎ木用の育苗部材20のIV-IV線の断面図である。図5は、接ぎ木用の育苗部材集合体10の構成の概略を示す構成図である。なお、第1実施形態の説明における方向はあくまで一例を示すものであり、これに限定されるものではない。

【0053】
図1~図4に示すように、育苗部材20は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表されるシリコンゴム等の弾性変形可能な柔軟な樹脂材料からなる。育苗部材20は、板状に形成されている。育苗部材20は、複数の育苗ユニット30を備えている。複数の育苗ユニット30は、一体的に形成されている。複数の育苗ユニット30は、一列に水平方向に並んで配置されている。

【0054】
各育苗ユニット30は、種子収容部32と、茎収容部34と、根収容部36とを有する。種子収容部32は、育苗部材20の厚み方向の一方の主面から円柱状に凹んで形成されている。種子収容部32の直径φは、吸水させた種子が発芽の際に回転可能なサイズとなるように調整されている。種子収容部の直径φは、例えば、吸水した種子の長径と同一程度から長径の1.5倍や2倍程度としてもよい。

【0055】
茎収容部34は、育苗部材20の一方の主面から溝状に凹んで形成されている。茎収容部34は、種子収容部32から上方に直線状に延びて形成されている。茎収容部34は、その一端(種子収容部32側とは反対側の先端)が上方に開口している。茎収容部34の両側の内壁面341は、伸長した植物の茎を両側から保持する機能を有する。すなわち、茎収容部34の内壁面341は、伸長した植物の茎を保持するように構成された茎保持部である。

【0056】
茎収容部34の幅dは、子葉が通過可能なサイズとなるよう調整されている。茎収容部34の幅dは、例えば、種子収容部32の直径φの1/10~1/2程度としてもよい。茎収容部34の長さL1は、接ぎ木するのに適当な長さであればよい。茎収容部34の長さL1は、例えば、種子収容部32の直径φの1~3倍程度としてもよい。

【0057】
根収容部36は、育苗部材20の一方の主面から溝状に凹んで形成されている。根収容部36は、根収容部36と同一の幅dで種子収容部32から下方に(茎収容部34とは反対方向に)直線状に延びて形成されている。根収容部36は、その一端(種子収容部32側とは反対側の先端)が下方に開口している。根収容部36の幅dは、根が通過可能なサイズとなるよう調整されている。根収容部36の幅dは、例えば、種子収容部32の直径φの1/10~1/2程度としてもよい。根収容部36の長さL2は、根が下方に延びればよいから、種子収容部32の直径φの2倍程度としてもよい。

【0058】
種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36の深さW2は、育苗部材20の厚みW1の半分~1/3程度となるように形成されている。種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36の深さW2は、少なくとも種子収容部32において、吸水させた種子が発芽の際に回転することできるようにするために種子収容部32の直径φと同程度としてもよい。第1実施形態の育苗部材20では、種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36の深さW2を種子収容部32の直径φと同一とした。

【0059】
育苗部材20において、種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36は、育苗部材20の一方の主面において開口するように形成されている。育苗部材20の各育苗ユニット30の茎収容部34の両側には、種子収容部32からの距離が異なる3つの切断用目印38a、38b、38cが形成されている。

【0060】
育苗部材20において、複数の育苗ユニット30は、各育苗ユニット30の茎収容部34が同一の方向を向くように、所定の方向に並んで配置されている。第1実施形態では、全ての茎収容部34が上下方向(鉛直方向)を向いている。また、複数の育苗ユニット30では、各育苗ユニット30の茎収容部34が水平方向に等間隔に並んで配置されている。

【0061】
図5に示すように、育苗部材20は、複数の育苗部材20を上下方向(鉛直方向)に並べて配置し、その複数の育苗部材20を一体的に形成した接ぎ木用の育苗部材集合体10を水平方向の破線の位置で切断することによって得られる。

【0062】
なお、育苗ユニット30は、対象とする種子の種類によってそのサイズが異なるものとなる。例えば、種子の直径が500μm程度のシロイヌナズナの場合には、種子収容部32の直径φは、700~1200μm(例えば900μm)としてもよい。茎収容部34及び根収容部36の幅dは、100~500μm(例えば250μm)としてもよい。茎収容部34の長さL1は、500~1500μm(例えば1000μm)としてもよい。根収容部36の長さL2は、100~1000μm(例えば500μm)としてもよい。

【0063】
一方、トマト、ナス等の場合には、種子収容部32の直径φは、3.5~7.5mm(例えば5.5mm)としてもよい。茎収容部34及び根収容部36の幅dは、0.6~1.5mm(例えば1.0mm)としてもよい。茎収容部34の根収容部36の長さL1,L2は、5~15mm(例えば10mm)としてもよい。根収容部36の長さL2は、0~10mm(例えば1mm)としてもよい。

【0064】
例えば、種子収容部32の直径φを900μm、茎収容部34及び根収容部36の幅dを300μm、茎収容部34の長さL1を1000μm、根収容部36の長さを500μmとし、4つの育苗ユニット30を水平方向に配置した接ぎ木用の育苗部材20を上下方向(鉛直方向)に5つ連ねた接ぎ木用の育苗部材集合体10を形成する。そうすると、20個の育苗ユニット30を有する、17mm(水平方向)×16mm(上下方向、鉛直方向)のサイズの接ぎ木用の育苗部材集合体10が得られる。

【0065】
次に、接ぎ木用の育苗部材20を複数用いた接ぎ木苗の生産方法について説明する。
第1実施形態の接ぎ木苗の生産方法は、図6、図7、図8A~8D及び図9A~9Cに示すように、各育苗部材20の育苗ユニット30において、種子収容部32内に植物5の種子50を収容し、種子収容部32内で植物5を発芽させ、茎収容部34内で植物5の茎51を伸長させ、茎保持部(茎収容部34の両側の内壁面341)によって植物5の茎51を保持する育苗工程と、各育苗部材20の育苗ユニット30の茎保持部(茎収容部34の両側の内壁面341)によって保持された植物5の茎51を切断し、植物5の茎51の切断面同士を接合して接ぎ木苗6を得る接ぎ木工程とを行う。以下、この接ぎ木苗6の生産方法の詳細について説明する。

【0066】
図6は、接ぎ木用の育苗部材20を用いた接ぎ木苗の生産方法の一例を示す工程図である。同図に示すように、接ぎ木苗の生産は、まず、育苗部材20を2つ用意する(工程S100)。次いで、一方の育苗部材(第1の育苗部材)20の各種子収容部32に、台木となる植物(第1の植物)の種子を播き、他方の育苗部材(第2の育苗部材)20の各種子収容部32に、穂木となる植物(第2の植物)の種子を播く(工程S110)。

【0067】
次いで、2つの育苗部材20の一方の主面(育苗ユニット30の種子収容部32等が形成された面)に、メンブレンフィルターを介して植物育成培地を取り付ける(工程S120)。次いで、2つの育苗部材20を植物育成培地ごと垂直に立て、子葉が茎収容部34の一端(開口端)近傍に至るまで暗所に置いて育苗する(工程S130)。子葉が展開することなく茎収容部34の一端(開口端)近傍に至ると、子葉が展開するまで明所において育苗する(工程S140)。これにより、子葉が展開する。

【0068】
ここで、育苗部材20を植物育成培地40と共に垂直に立てたときの様子を図7に示す。植物育成培地40は、育苗部材20の一方の主面を覆うように(種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36の開口部分を閉塞するように)配置する。これにより、植物の種子を投入する方向並びに植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地40を供給する方向と植物の成長方向とが互いに異なる方向(直交する方向)となり、作業性に優れた構成となる。なお、育苗部材20を植物育成培地40ごと垂直に立てるのは、植物5は重力方向に沿って成長するからである。また、暗所に置いて育苗するのは、子葉を展開させずにある程度まで茎(胚軸)を伸ばすためである。

【0069】
また、図8A~8Dに育苗ユニット30での育苗の様子を示す。暗所に置いて育苗すると、種子収容部32に播かれた植物5の種子50(図8A)は、発芽し(図8B)、子葉52が展開することなく茎51が茎収容部34内を伸長すると共に、根53が根収容部36内を伸長する(図8C)。その後、明所に置いて育苗すると、子葉52が展開する(図8D)。

【0070】
次いで、図6に示すように、2つの育苗部材20を茎収容部34の途中となる位置(例えば切断用目印38bの位置)で水平に育苗部材20ごと切断する(工程S150)。こうした切断により、台木となる植物の種子を播いた育苗部材20の種子収容部32側の切断片(分割片)は、台木のアレイとなり、穂木となる植物の種子を播いた育苗部材20の子葉側の切断片(分割片)は、穂木のアレイとなる。

【0071】
次いで、台木のアレイの上に穂木のアレイを整合するように乗せて接合する(工程S160)。台木のアレイも穂木のアレイも同一の育苗部材20を茎収容部34の途中となる位置で水平に切断して得られているから、台木のアレイの上に穂木のアレイを整合するように乗せるだけで、台木のアレイの茎収容部34と穂木のアレイの茎収容部34とが整合し、台木となる植物の茎の切断面と穂木となる植物の茎の切断面とが当接することになる。

【0072】
ここで、図9A~9Cに、2つの育苗部材20を用いた接ぎ木の様子の一例を示す。図示するように、台木となる植物5Aの種子を播いた育苗部材20(図9B)と、穂木となる植物5Bの種子を播いた育苗部材20(図9A)とを、茎収容部34の途中となる位置で水平に切断する。そして、台木のアレイ21(図9Bの種子収容部32側の切断片)の上に、穂木のアレイ22(図9Aの子葉側の切断片)を乗せる。これにより、台木の茎の切断面と穂木の茎の切断面とが当接し、接ぎ木が行なわれる(図9C)。

【0073】
その後、図6に示すように、台木の茎の切断面と穂木の茎の切断面とを当接させた状態で、明所(弱光)で育苗する(工程S170)。これにより、台木の茎の切断面と穂木の茎の切断面とが接合され、接ぎ木苗が得られる。以上により、接ぎ木苗の生産が完了する。

【0074】
なお、第1実施形態では、育苗ユニット30として、種子収容部32の直径φを900μm、茎収容部34及び根収容部36の幅dを250μm、茎収容部34の長さL1を1000μm、根収容部36の長さL2を500μmとした2組の育苗部材20を用意し、台木・穂木共にシロイヌナズナを用いて接ぎ木を行った。

【0075】
育苗ユニット30の種子収容部32に種子を播き、植物育成培地40を取り付け、暗所に置いて育苗したところ、2日で子葉が茎収容部34の一端(開口端)近傍に達した。その後、明所で1~2日育苗すると、子葉が展開した。上述したように、茎収容部34の途中の位置で水平に育苗部材20ごと切断し、台木のアレイの上に穂木のアレイを整合させて乗せて接ぎ木した。接ぎ木は約1週間で成立することがわかった。接ぎ木の成立は、維管束の再連絡をシンプラスティック輸送のトレーサー色素を葉に投与して根を観察し、根から色素の蛍光を検出することにより確認した。また、接ぎ木したシロイヌナズナの植物は、次世代の種子を形成することも確認した。

【0076】
次に、第1実施形態の接ぎ木用の育苗部材20及びそれを用いた接ぎ木苗の生産方法における作用効果について説明する。
第1実施形態の接ぎ木用の育苗部材20は、複数の育苗ユニット30を備えている。各育苗ユニット30は、種子収容部32と茎収容部34と茎保持部(茎収容部34の内壁面341)とを備えた簡易な構造である。そのため、育苗部材20を用いて、接ぎ木に供する植物体(接ぎ木用の苗)を簡便に用意することができる。特に、育苗ユニット30が茎保持部(茎収容部34の内壁面341)を備えていることにより、茎保持部(茎収容部34の内壁面341)によって茎が保持された状態の接ぎ木用の苗を簡便に用意することができる。

【0077】
例えば、第1実施形態の育苗部材20では、複数の台木が一列に配列した台木のアレイや複数の穂木が一列に配列した穂木のアレイを得ることができる。そして、台木のアレイの上に穂木のアレイを整合するように乗せるだけで一列に配列した複数の接ぎ木苗を得ることができる。このように、簡便で機械的な作業で精度良く接ぎ木を行うことができる。よって、誰でも簡便に均一な接ぎ木苗を精度良く生産でき、接ぎ木苗の生産性向上、品質向上を図ることができる。

【0078】
また、育苗部材20(育苗ユニット30)は、簡易な構造で用意することができる。そのため、育苗部材20を大量に準備できる。これにより、育苗部材20を用いて、大量に接ぎ木苗を生産できる。また、接ぎ木の対象となる植物体に合わせて育苗部材20のサイズ等を調整することが容易であるため、小さい植物から大きい植物までサイズを問わず、また発芽して間もない幼苗から成長した植物体まで成長段階を問わず、接ぎ木を容易に行うことができる。

【0079】
また、育苗部材20を用いることにより、育苗の準備が容易になると共に、育苗場所の省スペース化を図ることができる。また、植物の育成期間の短縮も可能である。これにより、育成コストの低減を図ることができる。また、幼植物(特に素手で扱うことのできない程度の小さいサイズの幼植物)を対象とすれば、育成時間短縮による育成コストの低減、接ぎ木苗のサイズが小さいことによる輸送コストの低減を図ることができる。

【0080】
また、各育苗ユニット30の種子収容部32の一部は、種子収容部32の外部に開口可能に構成されている。そのため、植物の種子を種子収容部32の開口部分から種子収容部32内に容易に投入することができる。これにより、植物の種子を茎収容部34から投入する必要がないため、茎収容部34の内径を植物の茎の径に合わせて設定することができる。また、植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地40を種子収容部32の開口部分から種子収容部32(具体的には種子収容部32内に収容する植物の種子)に対して供給でき、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。

【0081】
また、各育苗ユニット30の茎収容部34の一部は、茎収容部34の外部に開口可能に構成されている。そのため、植物の発芽及び育成に必要な植物育成培地40を茎収容部34の開口部分から茎収容部34(具体的には茎収容部34内に収容する植物の茎)に対して供給でき、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。また、植物の茎を伸長させ、育苗ユニット30の外部で子葉、初生葉等を展開させることができ、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。

【0082】
また、寒天培地等の植物育成培地40を用いることにより、顆粒の大きな土等を用いる場合と比較して、育苗部材20を大幅に小型化できると共に所望の形状の育苗部材20を容易に準備することができる。また、小型の育苗部材20を用いることにより、マイクロメーターオーダーで接ぎ木用の苗(例えば植物の茎の切断面)の位置決め(座標決め)ができるため、接ぎ木を精度良く行うことができる。これにより、従来困難であった小さな幼植物の接ぎ木を容易に、精度良く行うことができる。

【0083】
また、発芽して伸長した植物の茎は、育苗ユニット30の茎保持部(茎収容部34の内壁面341)によって直ちに保持することが可能となるため、子葉、初生葉等が茎収容部32の開口部分から育苗ユニット30の外部に出現してから直ちに接ぎ木を行うことが可能となる。これにより、発芽後の幼植物を直ちに接ぎ木することが可能となる。

【0084】
また、育苗ユニット30は、種子収容部32及び茎収容部34に加えて、さらに根収容部36を有している。そのため、根収容部36において植物の根を伸長させることができる。これにより、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。

【0085】
また、育苗ユニット30の根収容部36は、その一端が外部に開口している。そのため、植物の根を育苗ユニット30の外部でさらに伸長させることができる。これにより、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。

【0086】
また、育苗ユニット30は、板状である。そのため、育苗ユニット30の小型化、さらには育苗部材20全体の小型化を図ることができる。また、育苗部材20の小型化により、育苗場所の省スペース化を図ることもできる。

【0087】
また、育苗ユニット30は、板状であり、種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36を一方の主面において開口するように形成している。そのため、種子収容部32への種子の投入、種子収容部32、茎収容部34及び根収容部36への植物育成培地40の供給、接ぎ木後の接ぎ木苗の取り出しが容易となる。

【0088】
また、育苗部材20(育苗ユニット30)は、弾性変形可能な材料により構成されている。そのため、育苗ユニット30において育成した植物を保持できる。茎収容部34の一部(具体的には内壁面341)を茎保持部として機能させて、育成した植物の茎を保持できる。これにより、育苗ユニット30の茎収容部34内の植物の茎を育苗部材20ごと切断した場合であっても、茎収容部34内において植物の茎を保持できる。また、植物の成長に合わせて育苗ユニット30が柔軟に変形できるため、植物との密着性を高め、植物の茎の保持が容易となり、さらには植物の成長を阻害しないという効果も得られる。

【0089】
また、育苗部材20は、複数の育苗ユニット30を備えている。そのため、育苗部材20を用いて、より大量に接ぎ木苗を生産できる。これにより、接ぎ木苗の生産性向上をより一層図ることができる。

【0090】
また、育苗部材20(複数の育苗ユニット30)は、一体的に構成されている。そのため、育苗部材20の構造の簡素化を図ることができる。また、複数の育苗部材20を用いた接ぎ木作業が容易となる。

【0091】
また、複数の育苗ユニット30は、各育苗ユニット30の茎収容部34が同一の方向を向くように、所定の方向に並んで配置されている。そのため、複数の育苗部材20を用いた接ぎ木作業(特に植物の茎の切断、植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。

【0092】
また、複数の育苗ユニット30は、各育苗ユニット30の茎収容部34が等間隔に並んで配置されている。そのため、複数の育苗部材20を用いた接ぎ木作業(特に植物の茎の切断、植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。

【0093】
また、育苗部材20は、幼植物(特に素手で扱うことのできない程度の小さいサイズの幼植物)の接ぎ木を対象としている。そのため、育成時間短縮による育成コストの低減、接ぎ木苗のサイズが小さいことによる輸送コストの低減を図ることができる。また、これまでは人の手で接ぎ木するには小さくて困難であった植物に対しても、接ぎ木することができるという上述の効果を有効に発揮できる。

【0094】
また、第1実施形態の接ぎ木苗の生産方法は、接ぎ木用の育苗部材20を複数用いて行う。そのため、上述したように、簡便に精度良く接ぎ木を行うことができ、簡便に精度良く接ぎ木苗を生産できる。また、誰でも簡便に均一な接ぎ木苗を精度良く生産することが可能となり、接ぎ木苗の品質向上を図ることができる。また、育成コスト、輸送コストの低減を図ることができる。

【0095】
また、第1実施形態の接ぎ木苗の生産方法において、接ぎ木工程では、各育苗部材20の育苗ユニット30の茎保持部(茎収容部34の内壁面341)によって保持された植物の茎を切断し、各育苗部材20を複数の部分に分割(切断)して複数の分割片(切断片)を形成し、植物の茎の切断面同士が当接するように、各育苗部材20の分割片(切断片)を配置する。そのため、接ぎ木工程での接ぎ木作業(特に植物の茎の切断面同士の接合)が容易となる。

【0096】
また、育苗工程では、植物の子葉が茎収容部34の一端(開口端)に達するまでは、育苗部材20を暗所に置き、それ以降は育苗部材20を明所に置く。すなわち、育苗部材20を暗所に置くことにより、茎収容部34において子葉を展開させることなく茎を十分に伸長させ、茎収容部34に茎を適正に配置することができる。また、育苗部材20を明所に置くことにより、茎収容部34の外部で子葉を展開させ、茎は太く成長して茎収容部34に適合し、茎保持部(茎収容部34の内壁面341)によって保持されるようになる。これにより、植物の育成を容易かつ円滑に行うことができる。

【0097】
このように、第1実施形態によれば、接ぎ木の対象となる植物体のサイズや成長段階を問わず、簡便に接ぎ木苗を生産でき、かつ、接ぎ木苗の生産性向上、品質向上、コスト低減を図ることができる接ぎ木用の育苗部材20及び育苗セット、並びに接ぎ木苗の生産方法を提供することができる。

【0098】
(第2実施形態)
第2実施形態は、図10及び図11A~11Dに示すように、接ぎ木用の育苗部材20を3つ用いた接ぎ木苗の生産方法の例である。なお、上述の第1実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0099】
図10は、育苗部材20を用いた接ぎ木苗の生産方法の一例を示す工程図である。同図に示すように、接ぎ木苗の生産方法は、まず、育苗部材20を3つ用意する(工程S200)。すなわち、3組の育苗部材20を備えた育苗セットを用意する。次いで、第1の育苗部材20の各種子収容部32に、台木となる植物(第1の植物)の種子を播く。また、第2の育苗部材20の各種子収容部32に、中間台木となる植物(第2の植物)の種子を播く。また、第3の育苗部材20の各種子収容部32に、穂木となる植物(第3の植物)の種子を播く(工程S210)。

【0100】
次いで、3つの育苗部材20の一方の主面(育苗ユニット30の種子収容部32等が形成された面)に、メンブレンフィルターを介して植物育成培地40を取り付ける(工程S220)。次いで、3つの育苗部材20を植物育成培地40ごと垂直に立て、子葉が茎収容部34の一端(開口端)近傍に至るまで暗所に置いて育苗する(工程S230)。子葉が展開することなく茎収容部34の一端(開口端)近傍に至ると、子葉が展開するまで明所において育苗する(工程S240)。これにより、子葉が展開する。

【0101】
次いで、第1の育苗部材20については、茎収容部34の途中となる位置(例えば切断用目印38cの位置)で水平に育苗部材20ごと切断する。また、第2の育苗部材20については、茎収容部34の途中となる2箇所の位置(例えば切断用目印38a、38cの位置)で水平に育苗部材20ごと切断する。また、第3の育苗部材20については、茎収容部34の途中となる位置(例えば切断用目印38aの位置)で水平に育苗部材20ごと切断する(工程S250)。

【0102】
こうした切断により、台木となる植物の種子を播いた第1の育苗部材20の種子収容部32側の切断片(分割片)は、台木のアレイとなる。また、中間台木となる植物の種子を播いた第2の育苗部材20の茎収容部34の一部の切断片(分割片)は、中間台木のアレイとなる。また、穂木となる植物の種子を播いた第3の育苗部材20の子葉側の切断片(分割片)は、穂木のアレイとなる。

【0103】
次いで、台木のアレイの上に中間台木のアレイを整合するように乗せると共に、中間台木のアレイの上に穂木のアレイを整合するように乗せて接合する(工程S260)。台木のアレイ、中間台木のアレイ、穂木のアレイは、同一の育苗部材20を茎収容部34の途中となる位置で水平に切断して得られているから、台木のアレイの上に中間台木のアレイを整合するように乗せると共に、中間台木のアレイの上に穂木のアレイを整合するように乗せるだけで、台木のアレイの茎収容部34と中間台木の茎収容部34とが整合すると共に、中間台木の茎収容部34と穂木のアレイの茎収容部34とが整合する。そして、台木の茎の切断面と中間台木の茎の切断面とが当接すると共に、中間台木の茎の切断面と穂木の茎の切断面とが当接することになる。

【0104】
ここで、図11A~11Dに、3つの育苗部材20を用いた接ぎ木の様子の一例を示す。図示するように、台木となる植物5Aの種子を播いた第1の育苗部材20(図11C)と、中間台木となる植物5Cの種子を播いた第2の育苗部材20(図11B)と、穂木となる植物5Bの種子を播いた第3の育苗部材20(図11A)とを、茎収容部34の途中の破線の位置で水平に切断する。そして、台木のアレイ21(図11Cの種子収容部32側の切断片)の上に、中間台木のアレイ23(図11Bの2つの破線の間の切断片)を乗せると共に、中間台木のアレイ23の上に、穂木のアレイ22(図11Aの子葉側の切断片)を乗せる。これにより、台木の茎の切断面と中間台木の茎の下側の切断面が当接すると共に、中間台木の茎の上側の切断面と穂木の茎の切断面とが当接し、接ぎ木が行われる(図11D)。

【0105】
その後、図10に示すように、台木、中間台木及び穂木の茎の切断面同士を当接させた状態で、明所で育苗する(工程S270)。これにより、切断面同士が接合され、接ぎ木苗が得られる。以上により、接ぎ木苗の生産が完了する。なお、中間台木としては、広範な植物と接ぎ木が可能なタバコ属等を用いることができる。

【0106】
第2実施形態の場合には、中間台木を使用するため、台木と穂木との組み合わせの自由度を高くすることができる。また、中間台木として広範な植物と接ぎ木が可能なタバコ属等を用いれば、中間台木を介在させることにより、互いに接ぎ木不合和性である植物同士を接ぎ木することが可能となる。

【0107】
なお、第2実施形態では、3つの植物を同時に接ぎ木したが、例えば、2つの植物を接ぎ木した後、その接ぎ木した植物と他の植物とを接ぎ木してもよい。すなわち、複数回の接ぎ木作業を行うようにしてもよい。また、4つ以上の植物を接ぎ木する場合も同様である。

【0108】
(第3実施形態)
第3実施形態は、図12、図13に示すように、接ぎ木用の育苗部材20(育苗ユニット30)の構成を変更した例である。なお、上述の第1実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0109】
図12に示すように、育苗部材20は、種子収容部32から茎収容部34及び根収容部36が水平面から傾斜して(例えば、傾斜角:30~60°の範囲)形成された育苗ユニット30が水平に複数配列するように構成されている。この場合、茎収容部34の両側に水平に形成された切断用目印38に沿って切断することにより、茎を斜めに切断した台木のアレイと台木の切断角度と同一の角度をもって茎を斜めに切断した穂木のアレイを得ることができ、茎を斜めに切断した台木と穂木の接ぎ木苗を得ることができる。このとき、育苗ユニット30の茎収容部34及び根収容部36が鉛直方向となるようにして育苗することが好ましい。

【0110】
なお、育苗部材20は、図13に例示する育苗部材集合体110を破線で切断することにより得ることができる。このような育苗部材20であっても、2つ用いて台木と穂木による接ぎ木苗を生産したり、3つ用いて台木と中間台木と穂木による接ぎ木苗を生産したりすることができる。

【0111】
(第4実施形態)
第4実施形態は、図14A、14Bに示すように、接ぎ木用の育苗部材20(育苗ユニット30)の構成を変更した例である。なお、上述の第1実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0112】
図14Aに示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33は、育苗部材20の一方の主面において開口するように形成されている。育苗部33には、育苗部33の底面から突出して形成された円柱状の茎保持部31が複数設けられている。育苗部33の両側には、凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0113】
図14Bに示すように、茎保持部31は、育苗部33内において、発芽した植物5の茎51の伸長を案内すると共に、伸長した茎51を保持する。これにより、伸長した植物5の茎51を茎保持部31によって十分に保持することができる。

【0114】
(第5実施形態)
第5実施形態は、図15~図18に示すように、接ぎ木用の育苗部材20(育苗ユニット30)の構成を変更した例である。なお、上述の第1実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0115】
図15~図18に示す育苗部材20は、上述の第1実施形態~第4実施形態のように、途中まで暗所で育苗し、途中から明所で育苗する場合とは異なり、最初から最後まで明所で育苗する場合に用いられる。

【0116】
図15に示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33は、縦長に形成された空間であり、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅であり、子葉が展開可能な大きさに調整されている。育苗部33の両側の内壁面35は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有すると共に、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。育苗部33の両側には、凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0117】
図16に示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33と、育苗部33の両側において育苗部33の底面から突出して形成された板状の一対の育苗保持部37とを有する。育苗部33は、育苗部材20の一方の主面側において開口するように形成されている。育苗部33は、縦長に形成された空間であり、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅に調整されている。育苗保持部37は、容易に弾性変形可能であり、子葉が展開する際にはそれを妨げないように弾性変形する。また、育苗保持部37は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有すると共に、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。育苗部33の両側(一対の育苗保持部37)には、凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0118】
図17に示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33には、育苗部33の底面から突出して形成された板状の育苗保持部37が一対設けられている。育苗保持部37同士の間の距離(幅)は、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅に調整されている。育苗保持部37は、容易に弾性変形可能であり、子葉が展開する際にはそれを妨げないように弾性変形する。また、育苗保持部37は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有すると共に、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。育苗部33の両側には、一対の育苗保持部37を横切るように凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0119】
図18に示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33には、育苗部33の底面から突出して形成された円柱状の育苗保持部37が複数設けられている。複数の育苗保持部37は、縦に2列に並んで配置されている。育苗保持部37同士の間の距離(幅)は、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅に調整されている。育苗保持部37は、容易に弾性変形可能であり、子葉が展開する際にはそれを妨げないように弾性変形する。また、育苗保持部37は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有すると共に、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。育苗部33の両側には、凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0120】
(第6実施形態)
第6実施形態は、図19、図20A、20Bに示すように、接ぎ木用の育苗部材20(育苗ユニット30)の構成を変更した例である。なお、上述の第5実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0121】
図19、図20A、20Bに示すように、育苗部材20は、育苗第1部材20Aと育苗第2部材20Bとの2つの部材により構成されている。育苗ユニット30は、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aと育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bとにより構成されている。

【0122】
図19に示すように、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aは、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33には、育苗部33の底面から突出して形成された円錐状の育苗案内部39が複数設けられている。複数の育苗案内部39は、縦に2列に並んで配置されている。育苗案内部39同士の間の距離(幅)は、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅に調整されている。育苗案内部39は、容易に弾性変形可能であり、子葉が展開する際にはそれを妨げないように弾性変形する。また、育苗保持部37は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有する。

【0123】
図20Aに示すように、育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bは、円柱状の育苗保持部37を複数有する。複数の育苗案内部37は、縦に2列に並んで配置されている。育苗保持部37は、容易に弾性変形可能であり、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。

【0124】
接ぎ木苗の生産に当たっては、図20Aに示すように、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aにおいて、植物5を育成する。そして、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aの育苗部33内に、育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bの複数の育苗保持部37を押し込む。

【0125】
次いで、図20Bに示すように、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aから育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bを引き離すことにより、植物5の茎51が複数の育苗保持部37によって保持された状態の育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bが得られる。その後、育苗第2部材20Bを用いて接ぎ木を行い、接ぎ木苗を得る。

【0126】
また、接ぎ木苗の生産に当たっては、別の方法を用いてもよい。例えば、図21Aに示すように、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aにおいて、植物5を育成する。そして、植物5の茎51の二箇所に接着剤41を塗布する。この接着剤41は、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。その後、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aの植物5に対して、板状の育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bを押し付ける。

【0127】
そして、図21Bに示すように、育苗第1部材20Aのユニット第1部30Aから育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bを引き離すことにより、植物5の茎51が接着剤41を介して育苗第2部材20Bのユニット第2部30Bに保持される。その後、育苗第2部材20Bを用いて接ぎ木を行い、接ぎ木苗を得る。

【0128】
(第7実施形態)
第7実施形態は、図22、図23A、23Bに示すように、接ぎ木用の育苗部材20(育苗ユニット30)の構成を変更した例である。なお、上述の第5実施形態と同様の構成、方法及び作用効果については説明を適宜省略する。

【0129】
図22に示すように、育苗部材20の育苗ユニット30は、種子収容部と茎収容部と根収容部とが一体となった育苗部33を有する。育苗部33には、育苗部33の両側の内壁面から突出して形成された板状の育苗保持部37が上下に2つずつ、合計4つ設けられている。育苗部33の幅は、吸水させた植物5の種子50が発芽の際に回転可能な幅に調整されている。育苗保持部42は、容易に弾性変形可能であり、子葉が展開する際にはそれを妨げないように弾性変形する。また、育苗保持部42は、発芽した植物5の茎の伸長を案内する機能を有すると共に、伸長した植物5の茎を保持する茎保持部の機能を有する。育苗部33の両側には、凹溝状の切断用目印38が形成されている。切断用目印38は、育苗部33に連通して形成されている。

【0130】
図23Aに示すように、育苗保持部42は、育苗部33内において、発芽した植物5の茎51の伸長を案内すると共に、伸長した茎51を保持する。これにより、伸長した植物5の茎51を育苗保持部42によって十分に保持することができる。また、図23Bに示すように、植物5の茎51を育苗保持部42によって保持した状態で、さらに育苗部33の開口部分を覆うように上下にシート部材43を配置することにより、植物5の茎51の保持をより一層十分にすることができる。

【0131】
(その他の実施形態)
本開示は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

【0132】
(1)上述の実施形態では、育苗部材20を板状としたが、これに限定されるものではなく、種々の形状を採用することができる。また、育苗ユニット30の種子収容部32、茎収容部34、茎保持部31、根収容部36等の形状は、対象とする植物の種類、サイズ等によって、適宜、変更可能である。

【0133】
(2)上述の実施形態では、育苗部材20において、各育苗ユニット30の茎収容部34の両側に種子収容部32からの距離が異なる3つの切断用目印38a、38b、38cを形成したが、切断用目印の数はこれに限定されるものではない。また、こうした切断用目印を形成しないようにしてもよい。

【0134】
(3)上述の実施形態では、育苗ユニット30の種子収容部32に種子を播いた後に、育苗部材20の一方の主面にメンブレンフィルターを介して植物育成培地40を取り付け、茎収容部34が垂直になるように植物育成培地40ごと育苗部材20を立てるものとしたが、種子収容部32に種子と共に植物育成培地を適当量入れるものとすれば、その状態の育苗部材20を茎収容部34が垂直になるように立てるものとしてよい。こうすれば、メンブレンフィルター及び植物育成培地分だけ更に省スペースで接ぎ木苗を生産できる。

【0135】
(4)上述の実施形態では、各育苗部材20の育苗ユニット30の茎収容部34内の植物の茎を切断する際に、育苗部材20ごと切断したが、育苗部材20(育苗ユニット30)を植物の茎の切断位置で分割できるように構成しておけば、植物の茎だけを切断して育苗部材20を切断せずに済むため、育苗部材20を再利用することが可能となる。

【0136】
(5)上述の実施形態では、複数の植物を接ぎ木して接ぎ木苗を生産した。ここで、複数の植物とは、同種の植物であってもよいし、異なる種に属する植物であってもよいし、これらが混在していてもよい。

【0137】
(6)上述の実施形態では、台木用の植物と穂木用の植物とを接ぎ木(2つの植物を接ぎ木)したり、台木用の植物と穂木用の植物との間に中間台木の植物を配置して、3つの植物を接ぎ木したりしている。中間台木の植物は、1つであってもよいし、複数であってもよい。すなわち、3つの植物を接ぎ木することもできるし、4つ以上の植物を接ぎ木することもできる。

【0138】
(7)育苗部材20(育苗ユニット30)は、例えば、生物分解性材料により構成されていてもよい。この場合には、育苗部材20(育苗ユニット30)を用いて生産した接ぎ木苗を育苗部材20(育苗ユニット30)から取り出すことなく、育苗部材20(育苗ユニット30)ごと広大な耕地に散布すること(苗まき)ができる。なお、生物分解性材料としては、ゼイン(トウモロコシから抽出した非水溶性蛋白質)等を用いることができる。

【0139】
(8)本開示の各構成要素は概念的なものであり、上述の実施形態に限定されない。例えば、1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上述の実施形態の構成の少なくとも一部を同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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