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明細書 :ホスファフルオレセイン化合物若しくはその塩、又はそれを用いた蛍光色素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 ホスファフルオレセイン化合物若しくはその塩、又はそれを用いた蛍光色素
国際特許分類 C09B  11/28        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI C09B 11/28 CSPB
C09K 11/06
G01N 33/48 M
G01N 21/64 F
国際予備審査の請求
全頁数 37
出願番号 特願2017-500770 (P2017-500770)
国際出願番号 PCT/JP2016/054964
国際公開番号 WO2016/133218
国際出願日 平成28年2月19日(2016.2.19)
国際公開日 平成28年8月25日(2016.8.25)
優先権出願番号 2015032322
優先日 平成27年2月20日(2015.2.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】山口 茂弘
【氏名】中 愛子
【氏名】須田 真司
【氏名】多喜 正泰
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
2G045
Fターム 2G043AA03
2G043AA04
2G043BA17
2G043CA04
2G043DA08
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043GA14
2G043GB07
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA05
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA04
2G043MA16
2G045AA24
2G045CB01
2G045CB02
2G045FB12
2G045GC15
要約 一般式:
JP2016133218A1_000020t.gif
[式中、R1は置換されていてもよいアリール基を示す。R2は水素原子又は有機基を示す。Rは一般式:
JP2016133218A1_000021t.gif
(式中、R3は置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。R4は置換されていてもよいアルキル基を示す。)で表される基である。]で示されるホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、十分な量子収率を得ることができるとともに、十分にHOMOを低減することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1):
【化1】
JP2016133218A1_000017t.gif
[式中、R1は置換されていてもよいアリール基を示す。R2は水素原子又は有機基を示す。Rは一般式(1A)~(1C):
【化2】
JP2016133218A1_000018t.gif
(式中、R3は置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。R4は置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基である。]
で表されるホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記一般式(1)において、Rが一般式(1A)で表される基である、請求項1に記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるホスファフルオレセイン化合物の塩が、一般式(2):
【化3】
JP2016133218A1_000019t.gif
[式中、R1及びRは前記に同じである。]
で表されるアニオンを有する、請求項1又は2に記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項4】
600~700 nmに最大吸収波長を有する、請求項1~3のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項5】
600~700 nmに最大吸収波長を有し、且つ、蛍光量子収率が0.25~0.60である、請求項1~4のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する蛍光色素。
【請求項7】
バイオイメージング用蛍光色素である、請求項6に記載の蛍光色素。
【請求項8】
癌細胞のバイオイメージング用蛍光色素である、請求項7に記載の蛍光色素。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の蛍光色素を含有する、細胞検出剤。
【請求項10】
癌細胞検出剤である、請求項9に記載の細胞検出剤。
【請求項11】
請求項6~8のいずれかに記載の蛍光色素、又は請求項9若しくは10に記載の細胞検出剤を用いる、細胞のバイオイメージング方法。
【請求項12】
前記細胞が癌細胞である、請求項11に記載のバイオイメージング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファフルオレセイン化合物若しくはその塩、又はそれを用いた蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色から近赤外領域の光は高い組織浸透性があるため、この領域(620 nm以上)に吸収及び蛍光極大波長を有する色素が、生体組織の深部観察において注目されている。この生体組織の深部観察においては、細胞の自己蛍光を抑制し、細胞へのダメージを抑制するためには、600~700 nm程度の位置に蛍光極大波長を有しつつも、蛍光量子収率を向上させることが好ましい。特に、水溶性を示す蛍光色素のうち650 nm以上に蛍光極大を有する色素は、緑色又は黄色蛍光体(495~570 nmに蛍光極大を有する色素)と比較してそれほど多くない。これらは、例えば、π拡張したキサンテン系色素、ケイ素置換ローダミン(Si-rhodamine)、フルオレセイン系色素、シアニン系色素(Cy5等)等が挙げられる。いずれの蛍光色素についても、生体試料の可視化において実用例が報告されている。
【0003】
例えば、フルオレセイン系色素は、吸収極大波長は491 nm、蛍光極大波長は510 nm、量子収率は0.85である(非特許文献1)が、バイオイメージングのためは、深赤色~近赤外領域の波長に対して吸収及び蛍光を示す必要があることから、600~700 nm程度の波長において吸収極大及び蛍光極大を有する色素が求められている。
【0004】
このフルオレセイン系色素のキサンテン骨格の酸素原子をケイ素原子に置換すると、吸収極大波長は582 nm、蛍光極大波長は598 nm、量子収率0.42と、長波長側にシフトさせることができることが知られている(非特許文献2)。しかしながら、その効果は不十分であり、さらなる長波長シフトが必要である。
【0005】
一方、吸収極大波長及び蛍光極大波長をさらに長波長シフトさせるべく、キサンテン骨格のπ共役を拡張した構造を有する化合物が、吸収極大波長は595 nmと600 nm未満であるものの、蛍光極大波長を660 nmとすることができることも知られているが、この色素は、量子収率が0.14と著しく小さいことから、バイオイメージング用途には不十分である(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】JACS, 2005, 127, 4888.
【非特許文献2】Chem. Commun. 2011, 47, 4162.
【非特許文献3】Cytometry, 1989, 10, 151.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、一般に、長波長領域に吸収極大及び蛍光極大を有する色素は、量子収率が低く、十分に高くすることが困難であった。また、これらの蛍光色素は、最高被占軌道(HOMO)が高いため、光照射下において酸素と反応し、活性酸素種を与えることから、光に対する安定性も低かった。
【0008】
このため、本発明は、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、十分な量子収率を得ることができるとともに、十分にHOMOを低減することができる化合物(蛍光色素)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、フルオレセインのキサンテン環部位の10位の酸素原子をリン原子に置換した一連の赤色蛍光色素(ホスファフルオレセイン化合物)を開発した。この化合物は、中性条件下又はアルカリ条件下に置いてアニオン化することにより、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、生理的条件下でも十分に高い蛍光量子収率が得られることを見出した。また、この化合物は、リン置換基の電子的効果によりHOMO準位が下がるため、光照射に対する著しい安定化効果も認められた。本発明は、このような知見に基づきさらに研究を重ね、完成させたものである。すなわち、本発明は以下の構成を包含する。
【0010】
項1.一般式(1):
【0011】
【化1】
JP2016133218A1_000003t.gif

【0012】
[式中、R1は置換されていてもよいアリール基を示す。R2は水素原子又は有機基を示す。Rは一般式(1A)~(1C):
【0013】
【化2】
JP2016133218A1_000004t.gif

【0014】
(式中、R3は置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。R4は置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基である。]
で表されるホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【0015】
項2.前記一般式(1)において、Rが一般式(1A)で表される基である、項1に記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【0016】
項3.前記一般式(1)で表されるホスファフルオレセイン化合物の塩が、一般式(2):
【0017】
【化3】
JP2016133218A1_000005t.gif

【0018】
[式中、R1及びRは前記に同じである。]
で表されるアニオンを有する、項1又は2に記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【0019】
項4.600~700 nmに最大吸収波長を有する、項1~3のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【0020】
項5.600~700 nmに最大吸収波長を有し、且つ、蛍光量子収率が0.25~0.60である、項1~4のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物。
【0021】
項6.項1~5のいずれかに記載のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する蛍光色素。
【0022】
項7.バイオイメージング用蛍光色素である、項6に記載の蛍光色素。
【0023】
項8.癌細胞のバイオイメージング用蛍光色素である、項7に記載の蛍光色素。
【0024】
項9.項6~8のいずれかに記載の蛍光色素を含有する、細胞検出剤。
【0025】
項10.癌細胞検出剤である、項9に記載の細胞検出剤。
【0026】
項11.項6~8のいずれかに記載の蛍光色素、又は項9若しくは10に記載の細胞検出剤を用いる、細胞のバイオイメージング方法。
【0027】
項12.前記細胞が癌細胞である、項11に記載のバイオイメージング方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、フルオレセインのキサンテン環部位の10位の酸素原子をリン原子に置換したため、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、生理的条件下でも十分に高い蛍光量子収率が得られる。特に、実施例における吸収極大波長627 nmは、レーザー顕微鏡が通常備えているHeNeレーザーの励起波長633 nmとほぼ一致していることから、蛍光色素としての励起効率が極めて高い。
【0029】
また、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、この領域に極大波長を有する従来の蛍光色素にはなかった高い蛍光量子収率を有することから、バイオイメージングに必要な蛍光色素濃度を低く抑えることができ、生体へのダメージを大幅に低減することができる。
【0030】
さらに、本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、リン置換基の電子的効果によりHOMO準位を低下させることができ、光に対する安定性を飛躍的に向上させることができるため、生体深部の観測を長時間にわたって行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物(化合物POF)のX線結晶構造解析の結果である。
【図2】試験例3で調製したpH3、pH7,pH9とした場合の本発明のホスファフルオレセイン化合物(化合物POF)の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルである。
【図3】各pHにおける本発明のホスファフルオロセイン化合物(化合物POF)の吸収スペクトル(上図)、627 nmにおける相対吸収とpHとの関係を示すグラフ(下図)である。
【図4】各pHにおける本発明のホスファフルオロセイン化合物(化合物POF)の励起スペクトル(上図)、627 nmにおける励起強度と532 nmにおける励起強度の比と、pHとの関係を示すグラフ(下図)である。
【図5】試験例5の結果を示すグラフである。(a)は本発明のホスファフルオレセイン化合物と、公知のフルオレセイン化合物(TokyoGreen及びTokyoMagenta)を用いた場合の吸収極大波長における吸光度の維持率を示すグラフである。(b)は試験例5で調製した試験液7~10の630 nmにおける吸光度の維持率を示すグラフである。
【図6】試験例6の細胞インキュベーション及びイメージングの結果を示す写真である。左図(a)は、633 nmの励起で得られたConfocal fluorescence imageである。中図(b)は、明視野像である。右図(c)は、(a)及び(b)の併合イメージである。図中、スケールバーは50μmである。
【図7】試験例6の細胞毒性の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.ホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物
本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、一般式(1):

【0033】
【化4】
JP2016133218A1_000006t.gif

【0034】
[式中、R1は置換されていてもよいアリール基を示す。R2は水素原子又は有機基を示す。Rは一般式(1A)~(1C):

【0035】
【化5】
JP2016133218A1_000007t.gif

【0036】
(式中、R3は置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアルキニル基を示す。R4は置換されていてもよいアルキル基を示す。)
で表される基である。]
で表される化合物、又はその塩である。この一般式(1)で表されるホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、文献未記載の新規化合物である。

【0037】
上記一般式(1)において、R1で示されるアリール基としては、単環アリール基、多環アリール基、及び複素芳香環基のいずれも採用することができ、例えば、フェニル基、オリゴアリール基(ナフチル基、アントリル基等)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、フェナンスレニル基、フルオレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基等が挙げられる。

【0038】
R1で示されるアリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基等)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基(アミド基、メチルアミド基、ジメチルアミド基等)、アジド基(アジドフェニル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されず、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましい。

【0039】
なかでも、R1としては、蛍光量子収率をより向上させるとともに、バイオイメージングの際により認識しやすくする観点から、置換又は非置換単環アリール基(置換又は非置換フェニル基)が好ましく、オルト位に置換基を有する置換単環アリール基(置換フェニル基)がより好ましく、o-トリル基がさらに好ましい。

【0040】
上記一般式(1)において、R2で示される有機基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよい環状エーテル基等が挙げられる。

【0041】
上記一般式(1)において、R2で示される有機基としてのアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。

【0042】
直鎖アルキル基としては、炭素数1~6(特に1~4)の直鎖アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。

【0043】
分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~6(特に3~5)の分岐鎖アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。

【0044】
R2で示される有機基としてのアルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されず、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましい。

【0045】
上記一般式(1)において、R2で示される有機基としてのアシル基としては、例えば、メタノイル基、エタノイル基等が挙げられる。

【0046】
上記一般式(1)において、R2で示される有機基としての環状エーテル基としては、例えば、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。

【0047】
R2で示される有機基としての環状エーテルが有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アシル基(メタノイル基、エタノイル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されないが、0~2個が好ましく、0~1個がより好ましい。

【0048】
なかでも、R2としては、アニオン化させやすく、吸収極大波長及び蛍光極大波長を長波長シフトさせやすくする観点から、水素原子、アシル基、又は置換環状エーテル基が好ましく、水素原子がより好ましい。

【0049】
一般式(1)(一般式(1A)~(1C))において、Rで示される基のうち、R3で示されるアリール基としては、単環アリール基及び多環アリール基のいずれも採用することができ、例えば、フェニル基、オリゴアリール基(ナフチル基、アントリル基等)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、フェナンスレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。

【0050】
R3で示されるアリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されないが、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましい。

【0051】
一般式(1)(一般式(1A)~(1C))において、Rで示される基のうち、R3で示されるアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。

【0052】
直鎖アルキル基としては、炭素数1~6(特に1~4)の直鎖アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。

【0053】
分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~6(特に3~5)の分岐鎖アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。

【0054】
R2で示される有機基としてのアルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されないが、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましい。

【0055】
一般式(1)(一般式(1A)~(1C))において、Rで示される基のうち、R3で示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。

【0056】
一般式(1)(一般式(1A)~(1C))において、Rで示される基のうち、R3で示されるアルキニル基としては、例えば、アルキニル基、プロパルギル基等が挙げられる。

【0057】
このR3の種類によっては、電子構造の微調整や物理特性(溶解性、細胞透過性等)の調整を行うことも可能である。

【0058】
一般式(1)(一般式(1C))において、Rで示される基のうち、R4で示されるアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれも採用できる。

【0059】
直鎖アルキル基としては、炭素数1~6(特に1~4)の直鎖アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。

【0060】
分岐鎖アルキル基としては、炭素数3~6(特に3~5)の分岐鎖アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基等が挙げられる。

【0061】
R2で示される有機基としてのアルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限はなく、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。このような置換基の数は、特に制限されないが、0~6個が好ましく、0~3個がより好ましい。

【0062】
なかでも、Rとしては、より電子求引性が高く、HOMO準位(最高被占有軌道のエネルギー準位)及びLUMO準位(最低空軌道のエネルギー準位)をより低減させやすいために光に対する安定性をより向上させやすい観点から、一般式(1A)で示される基が好ましい。

【0063】
このような条件を満たす本発明の化合物としては、例えば、

【0064】
【化6】
JP2016133218A1_000008t.gif

【0065】
[式中、Phはフェニル基を示す。以下同様である。]
等で表されるホスファフルオレセイン化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物が好ましい。

【0066】
このような構造を有する本発明の化合物は、リン含有基の存在により電子求引性が高く、HOMO準位(最高被占有軌道のエネルギー準位)及びLUMO準位(最低空軌道のエネルギー準位)を低下することができる。特に、HOMO準位と比較してLUMO準位を効果的に低下させることができるため、アニオン型に変化させた場合のHOMO-LUMOエネルギーギャップを、2.00~2.50 eV、特に2.25~2.48 eVに低減することも可能である(B3LYP/6-31+G レベルでおこなった量子化学計算により求めた値)。このため、吸収極大波長及び蛍光極大波長をより長波長シフトさせることも可能である。HOMO準位及びLUMO準位は、Gaussian 09 プログラムを用いた構造最適化により測定する。

【0067】
なお、本発明の化合物としては、中性型化合物(一般式(1)で表される化合物)であっても、蛍光極大波長を600~650 nm程度、特に610~640 nmに有することができるが、アニオン化して一般式(1)で表される化合物の塩の形態とすれば、吸収極大波長をより長波長シフトして600~700 nm(特に600~650 nm程度)の範囲とするとともに、蛍光極大波長をさらに長波長シフトさせ(650~700 nm程度、特に655~670 nm程度)、蛍光量子収率をさらに向上させる(0.25~0.60程度、特に0.35~0.50)ことも可能である。

【0068】
このような観点から、本発明の化合物は、上記一般式(1)で示される化合物の塩が好ましく、一般式(2):

【0069】
【化7】
JP2016133218A1_000009t.gif

【0070】
[式中、R1及びRは前記に同じである。]
で表されるアニオンを有することがより好ましい。

【0071】
一般式(2)において、R1及びRは前記説明したものと同様である。

【0072】
また、一般式(2)で示されるアニオンと対のイオン(カチオン)としては特に制限はなく、例えば、塩基付加塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩;アンモニウム塩;トリエチルアンモニウム等の有機アンモニウム塩等を挙げることができる。

【0073】
また、本発明の化合物は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。

【0074】
2.ホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の製造方法
本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩、水和物若しくは溶媒和物は、特に制限されず、例えば、ケイ素置換フルオレセイン化合物の製造方法について報告されている既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)の方法に準じて(原料化合物を変更すること以外は同様に)合成することが可能である。

【0075】
具体的には、以下の反応式1:

【0076】
【化8】
JP2016133218A1_000010t.gif

【0077】
[式中、R及びR1は前記に同じである。R5及びR6は同一又は異なって、保護基を示す。X1及びX2は同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
にしたがって合成することができる。

【0078】
反応式1において、R5及びR6で示される保護基は、水酸基を保護することができる基であれば特に制限されず、どのようなものでも使用できるが、例えば、アルカノイル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル等の炭素数1~4のアルカノイル基)、置換されていてもよいアラルキル基(ベンジル基、p-メトキシベンジル基、p-ニトロベンジル基等)、シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等)、アルコキシアルキル基(メトキシメチル基等)、テトラヒドロピラニル(THP)基等が挙げられる。本発明では、水酸基の保護及び求核付加反応の進行のしやすさの観点から、シリル基が好ましく、t-ブチルジメチルシリル基等がより好ましい。

【0079】
反応式1において、X1及びX2で示されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子をいずれも採用できるが、環化反応の進行のしやすさの観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましく、臭素原子がより好ましい。

【0080】
(2-1)環化反応
本工程では、例えば、Rとして一般式(1A)で表される基を有する化合物を得ようとする場合は、原料としてケイ素化合物を用いる代わりに特定のリン化合物及び過酸化水素を用いること以外は、既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)と同様に行うことができる。具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(3)と、有機リチウム化合物とを反応させた後に、有機リン化合物を添加し、次いで、過酸化水素水を添加することにより、所望の環化反応を進行させることができる。Rとして一般式(1B)又は(1C)で表される基を有する化合物を得ようとする場合は、過酸化水素水の代わりに得ようとする置換基に応じて所望の原料化合物を使用することが好ましい。

【0081】
なお、上記反応式1における化合物(3)は、公知又は市販の化合物を用いることもでき、合成することもできる。合成する場合は、3-ハロゲン化アニリンとアリルハライドとを反応させ得て得られる3-ハロゲン化-N,N-ジアリルアニリンとホルムアルデヒドとを反応させることで合成することができる。

【0082】
有機リチウム化合物としては、特に制限はなく、公知のものが採用でき、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;シクロヘキシルリチウム等のシクロアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらのうち、本工程では、収率の観点から、アルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。

【0083】
有機リン化合物としては、本工程でRで表される基を有する化合物が得られれば特に制限はなく、公知のものが採用でき、例えば、ジクロロフェニルホスフィン、ジブロモフェニルホスフィン等のジハロゲン化アリールホスフィン等を使用することができる。

【0084】
上記有機リチウム化合物、有機リン化合物及び過酸化水素の使用量は、特に制限はなく、収率等の観点から、化合物(3)1モルに対して、有機リチウム化合物を1~20モル(特に2~10モル)、有機リン化合物を0.1~10モル(特に0.5~5モル)使用することが好ましい。また、過酸化水素は水溶液を過剰量用いることが好ましい。

【0085】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用することができ、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度が好ましく、例えば、-150~0℃、特に-100~-50℃において5分~12時間、特に10分~6時間とすることができる。

【0086】
(2-2)酸化反応
本工程では、既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)と同様に行うことができる。具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(4)に対して、酸化剤を用いて酸化反応を引き起こすことができる。

【0087】
酸化剤としては、特に制限はなく、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)等を使用することができる。

【0088】
上記酸化剤の使用量は、特に制限はなく、収率等の観点から、化合物(4)1モルに対して、1~10モル(特に2~5モル)使用することが好ましい。

【0089】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。なお、上記環化工程と同じ溶媒を使用することができる。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度とすることができ、例えば、-50~100℃、特に0~50℃において1~48時間、特に2~24時間とすることができる。

【0090】
(2-3)脱アリル化反応
本工程では、既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)と同様に行うことができる。具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(6)に対して、パラジウム触媒(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等)の存在下で、1,3-ジメチルバルビツール酸等を用いて、脱アリル化反応を引き起こすことができる。

【0091】
上記パラジウム触媒及び1,3-ジメチルバルビツール酸の使用量は、特に制限はなく、収率等の観点から、化合物(5)1モルに対して、パラジウム触媒を0.1~1モル(特に0.2~0.5モル)、1,3-ジメチルバルビツール酸を2~50モル(特に5~30モル)使用することが好ましい。

【0092】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用すればよく、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。なお、上記環化工程と同じ溶媒を使用することができる。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度とすることができ、例えば、0~150℃、特に50~100℃において1~96時間、特に2~72時間とすることができる。

【0093】
(2-4)変換反応
本工程では、既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)と同様に行うことができる。具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(6)に対して、亜硝酸又はその塩を用いて、水酸基への変換反応を引き起こすことができる。

【0094】
亜硝酸又はその塩としては、亜硝酸のほか、亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム)等を採用できる。

【0095】
上記亜硝酸又はその塩の使用量は、特に制限はないが、収率等の観点から、化合物(6)1モルに対して、1~10モル(特に2~5モル)使用することが好ましい。

【0096】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用でき、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。なお、上記環化工程と同じ溶媒を使用することができる。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度とすることができ、例えば、50~200℃、特に100~150℃において5分~5時間、特に10分~2時間とすることができる。

【0097】
(2-5)保護化
本工程では、既報(Chem. Commun. 2011, 47, 4162.)と同様に行うことができる。具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(7)に対して、公知の方法で保護化することができる。保護化の方法及び条件は、従来公知の方法及び条件をいずれも採用することができる。

【0098】
(2-6)求核付加反応
本工程では、具体的には、有機溶媒中で、上記反応式1における化合物(7)とグリニャール試薬とを反応させ、次いで、酸化剤を用いて酸化反応を起こすことで、求核付加反応を引き起こすことができる。

【0099】
グリニャール試薬としては、本発明の化合物において所望のR1を導入できるものが好ましく、R1MgX3(R1は前記に同じである。X3はハロゲン原子を示す。)で表される有機マグネシウム化合物が好ましい。

【0100】
X3で示されるハロゲン原子としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例も同様である。

【0101】
このような条件を満たすグリニャール試薬としては、例えば、

【0102】
【化9】
JP2016133218A1_000011t.gif

【0103】
等が挙げられる。

【0104】
酸化剤としては、特に制限はなく、塩化水素(塩酸)等を使用することができる。

【0105】
上記グリニャール試薬及び酸化剤の使用量は、特に制限はなく、収率等の観点から、化合物(5)1モルに対して、グリニャール試薬を1~10モル(特に2~5モル)使用することが好ましい。また、酸化剤は水溶液として過剰量使用することが好ましい。

【0106】
本工程において使用され得る有機溶媒としては、公知のものを採用でき、本工程では、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類が好ましい。なお、上記環化工程と同じ溶媒を使用することができる。また、反応条件は、反応が十分に進行する程度とすることができ、例えば、-50~100℃、特に0~50℃において30分~10時間、特に1~5時間とすることができる。

【0107】
このようにして、一般式(1)で表されるホスファフルオレセイン化合物を得ることができ、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て使用することもできる。この一般式(1)で表されるホスファフルオレセイン化合物は、酸性条件下(例えばpH1~5)では中性型化合物であるが、中性条件下又はアルカリ性条件化(例えばpH6~14)とすることで、容易に一般式(2)で表されるアニオンを有する塩に変換し、必要に応じて通常の単離及び精製工程を経て使用することもできる。これにより、吸収極大波長をより長波長シフトして600~700 nm(特に600~650 nm程度)の範囲とするとともに、蛍光極大波長をさらに長波長シフトさせ(650~700 nm程度、特に655~670 nm程度)、蛍光量子収率をさらに向上させる(0.25~0.60程度、特に0.35~0.50)ことも可能である。

【0108】
なお、上記では、本発明のホスファフルオレセイン化合物の一態様の合成方法の一例について記載したが、この製造方法に限定されることはなく、様々な合成方法で合成することができる。また、他のホスファフルオレセイン化合物についても同様の方法により合成することができる。

【0109】
3.蛍光色素及び細胞検出剤
本発明の蛍光色素は、上記の本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩を含有する。

【0110】
本発明の蛍光色素は、フルオレセインのキサンテン環部位の10位の酸素原子をリン原子に置換したため、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、生理的条件下でも十分に高い蛍光量子収率が得られる。特に、実施例における吸収極大波長627 nmは、レーザー顕微鏡が通常備わっているHeNeレーザーの励起波長633 nmとほぼ一致していることから、蛍光色素としての励起効率が極めて高い。特に、本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、細胞内への透過性が高いとともに、R1として所望の置換基を導入すれば、生体内で所望の細胞(例えばHeLa細胞等の癌細胞)中に選択的に局在させることができる。つまり、所望の細胞(例えばHeLa細胞等の癌細胞)のみを発光させることも可能である。特に、本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、この領域に極大波長を有する従来の蛍光色素にはなかった高い蛍光量子収率を有することから、所望の細胞(例えばHeLa細胞等の癌細胞)のバイオイメージングをしやすくすることができるとともに、バイオイメージングに必要な蛍光色素濃度を低く抑えることができ、生体へのダメージを大幅に低減することができる。さらに、本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩は、リン置換基の電子的効果によりHOMO準位を低減させることができ、光に対する安定性を飛躍的に向上させることができるため、生体深部の観測を長時間にわたって行うことが可能である。

【0111】
本発明の細胞検出剤(特にHeLa細胞等の癌細胞検出剤)は、本発明のホスファフルオレセイン化合物又はその塩を含有しているが、有機溶媒中に溶解させて溶液とすることが好ましく、より所望の細胞(例えばHeLa細胞等の癌細胞)を検出し、より場所選択的に所望の細胞(例えばHeLa細胞等の癌細胞)を演色(リアルタイムで視覚化)する観点から、本発明のホスファフルオレセイン化合物の含有量は、1×10-8~1×10-4mol/Lが好ましく、1×10-7~1×10-5mol/Lがより好ましい。このように、本発明では、従来の蛍光色素と比較し、ホスファフルオレセイン化合物の含有量を低く抑えることができる。

【0112】
本発明の蛍光色素(ホスファフルオレセイン化合物)を、本発明の細胞検出剤を含有する溶液とする場合、使用し得る有機溶媒としては、特に制限はなく、極性溶媒及び非極性溶媒のいずれも使用できる。

【0113】
極性溶媒としては、例えば、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、アニソール、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等)、アルコール(メタノール、エタノール、アリルアルコール等)、エステル化合物(酢酸エチル等)、ケトン(アセトン等)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム)、ジメチルスルホキシド、アミド系溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等)等が挙げられる。

【0114】
非極性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族溶媒等が挙げられる。

【0115】
本発明の細胞検出剤は、上記のとおり、溶液の形態が好ましいが、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmに有しつつも、生理的条件下でもより十分に高い蛍光量子収率としつつ、細胞中に投入する観点から、pHは5~11程度が好ましく、6.5~7.5程度がより好ましい。本発明の細胞検出剤のpHを調整するために、緩衝剤(ヘペス緩衝剤、トリス緩衝剤、トリシン-水酸化ナトリウム緩衝剤、リン酸系緩衝剤、リン酸緩衝生理食塩水等)等を使用してもよい。
【実施例】
【0116】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
【実施例】
【0118】
【化10】
JP2016133218A1_000012t.gif
【実施例】
【0119】
一般操作
融点(mp)又は分解温度は、Yanaco MP-S3 instrument(MP-S3)で測定した。1H、13C{1H}及び31P{1H} NMRスペクトルは、JEOL AL-400 spectrometer(400 MHz for 1H, 100 MHz for 13C及び161.70 MHz for 31P)、JEOL JNM-ECS400(400 MHz for 1H, 100 MHz for 13C及び161.70 MHz for 31P)、又はJEOL A-600 spectrometer(600 MHz for 1H及び150 MHz for 13C)を用いて、CDCl3、CD2Cl2又はCD3OD中で測定した。1H NMRスペクトルのケミカルシフトは、内部標準として溶媒の残留プロトンを用いてδppmで表記し(CHCl3δ7.26、CH2Cl2δ5.32、CD3ODδ3.31)、13C NMRスペクトルのケミカルシフトは、内部標準としての溶媒のシグナルを用いてδppmで表記した(CDCl3δ77.16、CD2Cl2δ53.84、CD3ODδ49.0)。また、31P NMRスペクトルのケミカルシフト値はH3PO4のシグナル(δ0.00)を外部標準として用いた。マススペクトルは、Bruker micrOTOF Focus spectrometry systemを用いて、大気圧化学イオン化法(APCI)又はThermo Fisher Scientific Exactiveを用いて、エレクトスプレーイオン化法(ESI)で測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲル60F254(Merck)を塗布したガラス板を用いて行った。カラムクロマトグラフィーは、中性シリカゲルPSQ100B(富士シリシア化学)又はシリカゲル60(関東化学)を用いて行った。分取リサイクルHPLCは、逆相カラム(YMC-Actus Triart C18)を備えたYMC LC-forte/Rを用いて行った。特に記述のない限り、全ての反応は窒素雰囲気下でおこなった。特に断りのない限り、溶媒及び試薬は市販品を精製せずに使用した。脱水THF及びCH2Cl2は、関東化学から購入し、Glass Contour Solvent Systemsで精製した。ビス(2-ブロモ-4-N,N-ジアリルアミノフェニル)メタン(化合物1)及びTokyoMagentaは既報(Chem. Commun., 2011, 47, 4162-4164.)に従って合成し、TokyoGreenは既報(J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 4888-4894.)にしたがって合成した。
【実施例】
【0120】
化合物2の合成
ビス[2-ブロモ-4-(N,N-ジアリルアミノ)フェニル]メタン(化合物1)(1.01 g, 1.96 mmol)を脱水THF(20 mL)に溶解させた。-78℃にてt-ブチルリチウムのペンタン溶液(1.63 M, 4.80 mL, 7.82 mmol)を20分間かけて滴下し、そのまま1時間撹拌した。ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl2; 0.318 mL, 2.34 mmol)を25分間かけて滴下し、滴下終了から1.5時間後に0℃で30%H2O2溶液(1.0 mL)を加え、そのまま1時間撹拌した。反応混合物に次亜塩素酸ナトリウム水溶液と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を加えた後、CH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 20/1, Rf = 0.4)で精製することにより、化合物2を黄色液体として761 mg(1.58 mmol, 収率81%)得た。化合物2のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ7.47-7.42 (m, 4H), 7.39-7.31 (m, 3H), 7.18 (dd, J = 8.2 Hz, 6.2 Hz, 2H), 6.80 (bs, 2H), 5.89-5.80 (m, 4H) 5.18-5.13 (m, 8H), 4.03-3.90 (m, 8H), 3.84 (d, J = 18Hz, 1H), 3.66 (d, J = 18 Hz, 3.6 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3): δ 147.5 (d, JCP = 13.3 Hz, C), 134.7 (d, JCP = 104.1 Hz, C), 133.7 (s, CH), 131.1 (d, JCP= 2.5 Hz, CH), 130.9 (d, JCP = 9.9 Hz, CH), 129.8 (d, JCP= 100.1 Hz, C), 129.3 (d, JCP = 8.3 Hz, C), 129.0 (d, JCP= 11.5 Hz, CH), 128.4 (d, JCP = 12.4 Hz, CH), 116.4 (s, CH2), 115.8 (s, CH), 114.2 (d, JCP = 8.2 Hz, CH), 52.9 (s, CH2), 35.3 (d, JCP = 9.1 Hz, CH2). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CDCl3): δ 14.33. HRMS (ESI): m/z calcd. for C31H33N2NaOP: 503.2228 ([M+Na]+); found. 503.2224。
【実施例】
【0121】
その他、以下の方法でも化合物2を得た。ビス[2-ブロモ-4-(N,N-ジアリルアミノ)フェニル]メタン(化合物1)(0.978 g, 1.89 mmol)の脱水THF(9 mL)溶液に対して、-78℃にてs-ブチルリチウムのシクロヘキサン及びヘキサン溶液(0.99 M, 4.00 mL, 3.96 mmol)を5分間かけて滴下した。1時間撹拌した後、ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl2; 0.290 mL, 0.383 g, 2.14 mmol)を10分間かけて滴下した。同じ温度で3時間撹拌した後、溶液を0℃まで昇温し、30%H2O2溶液(1.0 mL)を加えた。混合物を1時間撹拌し、亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチした。その後、得られた溶液を酢酸エチル(AcOEt)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、脱水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。揮発物質を減圧下に除去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 20/1, Rf = 0.4)で精製することにより、化合物2を黄色液体として0.257 g(0.525 mmol, 収率28%)得た。
【実施例】
【0122】
化合物3及び化合物4の合成
空気中で化合物2(761 mg, 1.58 mmol)をCH2Cl2(16 mL)に溶解させた。室温でクロラニル(1.19 g, 4.84 mmol)を加え、そのまま12.5時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 20/1, Rf = 0.44)で精製することにより、化合物3を黄色液体として304 mg(0.61 mmol, 収率39%)得た。化合物3のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.27 (dd, J = 9.0 Hz, 6.2 Hz, 2H), 7.59-7.54 (m, 2H), 7.39-7.32 (m, 3H), 7.14 (dd, J = 15 Hz, 2.6 Hz, 2H), 6.86 (dd, J = 9.0 Hz, 2.6 Hz, 2H), 5.82-5.74 (m, 4H), 5.15-5.09 (m, 8H), 4.08-3.93 (m, 8H). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CDCl3): δ 6.84. HRMS (ESI): m/z calcd. for C31H31NaN2O2P: 517.2021 ([M+Na]+); found. 517.2013。
【実施例】
【0123】
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3; 50.4 mg, 0.055 mmol)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(464 mg, 1.08 mmol)を脱気した脱水1,2-ジクロロエタン(1.0 mL)に溶解させ、室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、脱気した脱水1,2-ジクロロエタン(0.4 mL)に化合物3(71.0 mg, 0.144 mmol)と1,3-ジメチルバルビツール酸(265 mg, 1.70 mmol)を溶解させた溶液に対して加え、80℃で2日間撹拌したのち、CH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 10/1, Rf = 0.35)で精製することにより、化合物4を黄色固体として31 mg(0.0927 mmol, 収率65%)得た。化合物4のスペクトルデータは以下のとおりである。
Mp: 151℃. 1H NMR (400MHz, CD3OD): δ 8.15 (dd, J = 8.8 Hz, 6.0 Hz, 2H), 7.60-7.42 (m, 5H), 6.99 (dd, J = 14.8 Hz, 2.2 Hz, 2H), 6.91 (dd, J = 8.8 Hz, 2.2 Hz, 2H). The signal corresponding to NH2 moiety was not observed. 13C{1H} NMR (100MHz, CD3OD): δ181.38 (d, JCP = 9.0 Hz, C), 154.84 (d, JCP = 13.3 Hz, C), 135.14 (d, JCP = 97.6 Hz, C), 134.49 (d, JCP = 108.3 Hz, C), 133.29 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 132.59 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 131.64 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 129.94 (d, JCP = 13.3 Hz, CH), 125.7 (d, JCP = 6.6 Hz, C), 118.57 (CH), 115.25 (d, JCP= 7.4 Hz, CH). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CD3OD): δ 7.83. HRMS (APCI): m/z calcd. for C19H16N2O2P : 335.0944 ([M+H]+); found. 335.0947。
【実施例】
【0124】
その他、以下の方法でも化合物3及び4を得た。化合物2(5.37 g, 11.2 mmol)のCH2Cl2(112 mL)溶液に対して、空気中でクロラニル(8.26 g, 33.6 mmol)を加えた。混合物を3時間撹拌し、亜硫酸ナトリウム水溶液でクエンチした。その後、得られた溶液をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、脱水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。揮発物質を減圧下に除去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 20/1, Rf = 0.4)で精製することにより、化合物3を黄色固体として得た。単離できない不純物も存在したが、そのまま次の工程に使用した。
【実施例】
【0125】
化合物3(4.39 g)の脱気した1,2-ジクロロエタン(370 mL)溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3; 1.34 g, 1.16 mmol)、及び1,3-ジメチルバルビツール酸(6.39 g, 40.9 mmol)を添加した。混合物を80℃で24時間撹拌した。反応を進行するため、得られた混合物に、Pd2(dba)3(1.34 g, 1.16 mmol)、及び1,3-ジメチルバルビツール酸(6.39 g, 40.9 mmol)をさらに添加した。80℃でさらに23時間撹拌した後、全ての揮発物質を減圧下に除去した。得られた橙色固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/メタノール 10/1, Rf = 0.30)で精製することにより、化合物4を黄色固体として2.39 g(7.15 mmol, 収率64%)得た。
【実施例】
【0126】
化合物5の合成
空気中で化合物4(52.0 mg, 0.156 mmol)を96%硫酸(0.46 mL)に溶解させた。0℃でNaNO2(33.0 mg, 0.478 mmol)を加え、そのまま3時間撹拌した。得られた反応溶液を適量の氷に対して滴下し、110℃で0.5時間撹拌した。得られた固体を濾別し、残渣を蒸留水で洗浄し粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/メタノール 10/1, Rf = 0.25)で精製することにより、化合物5を黄色固体として28.0 mg(0.832 mmol, 収率54%)得た。化合物5のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CD3OD): δ8.33 (dd, J = 8.8 Hz, 6.0 Hz, 2H), 7.59-7.45 (m, 5H), 7.21 (dd, J = 14.2 Hz, 2.4 Hz, 2H), 7.16 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4 Hz, 2H). The signal corresponding to the OH moiety was not observed. 13C{1H} NMR (100MHz, CD3OD): δ 181.48 (d, JCP = 9.1 Hz, C), 163.96 (d, JCP = 13.2 Hz, C), 135.58 (d, JCP = 97.5 Hz, C), 133.68 (d, JCP = 3.3 Hz, CH), 133.64 (d, JCP = 109.9 Hz, C), 133.32 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 131.69 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 130.20 (d, JCP = 12.3 Hz, CH), 129.07 (d, JCP = 7.4 Hz, C), 121.56 (d, JCP = 1.6 Hz, CH), 117.60 (d, JCP = 6.6 Hz, CH). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CD3OD): δ 6.44. HRMS (APCI): m/z calcd. for C19H14O4P : 337.0624 ([M+H]+) ; found. 337.0640。
【実施例】
【0127】
その他、以下の方法でも化合物5を得た。空気中で化合物4(247 mg, 0.739 mmol)の96%硫酸(2.5 mL)溶液に対して、NaNO2(171 mg, 2.48 mmol)を空気中、0℃で添加した。3時間撹拌した後、混合物をゆっくりと氷に滴下し、110℃で0.5時間撹拌した。得られた沈殿をろ過して集め、蒸留水で洗浄し、メタノール中に分散させた。得られた暗褐色の沈殿をろ過し、ろ液を減圧下に濃縮することにより、化合物5を黄色固体として158 mg(0.470 mmol, 収率64%)得た。
【実施例】
【0128】
化合物6の合成
化合物5(195 mg, 0.580 mmol)とイミダゾール(197 mg, 2.89 mmol)を脱水CH2Cl2(50 mL)に溶解させ、15分間撹拌した。t-ブチルクロロジメチルシラン(505 mg, 3.35 mmol)を脱水CH2Cl2(35 mL)に溶解させたものを、化合物5を含む溶液に対して滴下した。3時間撹拌した後、水を加え、CH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/酢酸エチル 30/1, Rf = 0.53)で精製することにより、化合物6を無色液体として265 mg(0.469 mmol, 収率81%)得た。化合物6のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.36 (dd, J = 8.7 Hz, 5.8 Hz, 2H), 7.59-7.53 (m, 2H), 7.46-7.36 (m, 5H), 7.10 (dd, J = 8.7 Hz, 2.4 Hz, 2H), 0.95 (s, 18H), 0.21 (s, 6H), 0.20 (s, 6H). 13C{1H} NMR (100MHz, CDCl3): δ 181.08 (d, JCP = 9.1 Hz, C), 160.57 (d, JCP = 14.1 Hz, C), 135.55 (d, JCP = 95.9 Hz, C), 133.60 (d, JCP = 107.4 Hz, C), 132.08 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 131.99 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 130.78 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 129.64 (d, JCP = 6.6 Hz, C), 128.87 (d, JCP = 12.3 Hz, CH), 124.34 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 121.91 (d, JCP = 6.6 Hz, CH), 25.69 (s, CH3), 18.35 (s, C), -4.20 (s, CH3), -4.30 (s, CH3). 31P{1H} NMR (161.70 MHz, CDCl3): δ 4.50. HRMS (APCI): m/z calcd. for C31H41NaO4PSi2: 587.2179 ([M+H]+) ; found. 587.2167。
【実施例】
【0129】
その他、以下の方法でも化合物6を得た。化合物5(229 mg, 0.680 mmol)とイミダゾール(232 mg, 3.40 mmol)の脱水CH2Cl2(25 mL)溶液に対して、t-ブチルクロロジメチルシラン(512 mg, 3.40 mmol)の脱水CH2Cl2(7 mL)溶液を添加した。3時間撹拌した後、水を加え、2層を分離した。水層をCH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を脱水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。揮発物質を減圧下に除去した後、得られた混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/酢酸エチル 30/1, Rf = 0.53)で精製することにより、化合物6を無色液体として354 mg(0.627 mmol, 収率92%)得た。
【実施例】
【0130】
化合物POFの合成
化合物6(230 mg, 0.407 mmol)を脱水THF(70 mL)に溶解させた。室温にて2-メチルフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(1.03 M, 1.43 mL, 1.47 mmol)を滴下し、4時間撹拌した。1N HCl水溶液(50 mL)を加え、2時間撹拌し、反応混合物をCH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/メタノール 5/1 (TEA 10%), Rf = 0.48)にて分離した後、HPLCで精製することにより、55 mgの青色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解させ分液漏斗にいれ、1N HCl水溶液を加えて分液漏斗を振った。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで化合物POFを赤色固体として30 mg(0.0730 mmol, 収率18%)で得た。化合物POFのスペクトルデータは以下のとおりである。
Mp.> 300℃. 1H NMR (400 MHz, CD3OD) : δ 7.76-7.36 (m, 8H), 7.27-7.13 (m, 3H), 7.03-6.94 (m, 2H), 6.58 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 2.12 and 2.06 (two signals, 3H, tolyl-methyl group signals from two diastereoisomers). 13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ 140.0 (CH), 140.0 (CH), 138.3 (C), 138.2 (C), 137.9 (C), 137.7 (C), 137.6 (C), 137.3 (C), 137.2 (C), 137.1 (C), 134.1 (CH), 131.6 (CH), 131.6 (CH), 131.5 (CH), 131.4 (CH), 130.8 (CH), 130.5 (CH), 130.4 (CH), 130.4 (CH), 130.3 (CH), 129.9 (CH), 129.1 (CH), 127.2 (CH), 127.1 (CH), 125.9 (C), 125.8 (C), 125.7 (C), 125.3 (CH), 19.7 (CH3), 19.6 (CH3). 31P{1H} NMR (161.70 MHz, CDCl3): δ 11.1, 11.0. HRMS (ESI): m/z calcd. for C26H19NaO3P: 433.0970 ([M+H]+) ; found. 433.0960。
【実施例】
【0131】
その他、以下の方法でも化合物POFを得た。2-ブロモトルエン(89μL, 0.74 mmol)の脱水THF(3 mL)溶液に対して、s-BuLiのシクロヘキサン及びヘキサン溶液(0.99 M, 0.90 mL, 0.89 mmol)を-78℃で添加した。混合物を-78℃で2時間撹拌し、化合物6(139 mg, 0.246 mmol)の脱水THF(3 mL)溶液をゆっくりと添加した。室温まで昇温させ、反応混合物を1.5時間撹拌した。その後、0.5 M塩酸(20 mL)を添加して反応をクエンチした。45分間激しく撹拌した後、混合物を水及びCH2Cl2で希釈した。層を分離し、水層をCH2Cl2で5回抽出した。あわせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。ろ過した後、揮発物質を減圧下に除去し、得られた混合物をCH2Cl2(10 mL)に分散させた。得られた黄色液体に対して、p-トルエンスルホン酸・一水和物(47 mg, 0.25 mmol)を添加し、得られた混合物を室温で45分間攪拌し、脱ヒドロキシ化を完了した。得られた深赤色溶液を直接シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/酢酸エチル 95/5)で精製した。溶離液を減圧下に除去した後、トルエンの添加と同時に凝固した赤色液体を得た。得られた懸濁液を0℃まで冷却し、得られた沈殿をろ過により集め、真空下に乾燥し、粗生成物を朱色固体として得た。その後、逆相HPLC(溶離液: 炭酸アンモニウムを5 mMで含むCH3CN/H2O 混合溶媒(混合比20/80~100/0)で精製することにより、化合物POFを茶色粉末として34 mg(0.083 mmol, 収率34%)得た。
【実施例】
【0132】
[実施例2]
【実施例】
【0133】
【化11】
JP2016133218A1_000013t.gif
【実施例】
【0134】
窒素雰囲気下、実施例1で得た化合物POF(37 mg, 0.090 mmol)を、5 mLの乾燥ピリジンに溶解させた。室温で無水酢酸(85μL, 0.90 mmol)を添加し、混合物を3時間撹拌した。減圧下に溶媒を除去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/酢酸エチル 3/1 to 2/1)で精製し、その後さらに、CH2Cl2/ヘキサンからの再結晶により精製し、化合物AcPOFを黄色粉末として33 mg(0.073 mmol, 収率81%)得た。化合物AcPOFのスペクトルデータは以下のとおりである。
Mp. 175-179℃. 1H NMR (400 MHz, CD2Cl2): δ7.75-7.60 (m, 3H), 7.60-7.52 (m, 1H), 7.52-7.30 (m, 5H), 7.30-7.06 (m, 3H), 7.06-6.91 (m, 2H), 6.26 (dd, J = 9.8, 1.8 Hz, 1H), 2.26 (s, 3H), 2.13 and 2.08 (two singlets, 3H, tolyl-methyl group signals from two diastereoisomers). 13C NMR (150 MHz, CD2Cl2): δ 184.3 (s, C), 184.2 (s, C), 168.9 (s, C), 153.0 (d, JCP = 14.4 Hz, C), 150.6 (d, JCP= 7.2 Hz, C), 150.5 (d, JCP = 10.1 Hz, C), 140.7 (d, JCP= 90.5 Hz, C), 140.33 (d, JCP = 90.5 Hz, CH), 139.7 (d, JCP= 10.1 Hz, CH), 139.62 (d, JCP = 8.6 Hz, CH), 137.2 (s, C), 137.2 (d, JCP = 4.4 Hz, CH), 137.0 (d, JCP = 2.9 Hz, CH), 136.5 (s, C), 136.4 (s, C), 136.4 (s, C), 135.0 (d, JCP = 5.9 Hz, C), 134.9 (d, JCP = 5.7 Hz, C), 134.3 (d, JCP = 11.6 Hz, CH), 134.3 (d, JCP = 10.1 Hz, CH), 133.7 (d, JCP = 102.0 Hz, C), 133.5 (d, JCP = 107.7 Hz, C), 133.0 (d, JCP = 89.1 Hz, C), 132.9 (s, CH), 131.0 (s, CH), 130.8 (d, JCP = 10.1 Hz, CH), 130.8 (d, JCP = 11.4 Hz, CH), 130.3 (s, CH), 129.62 (CH), 129.61 (CH), 129.51 (CH), 129.46 (CH), 129.42 (CH), 129.39 (CH), 129.38 (d, JCP = 8.6 Hz, C), 129.2 (s, CH), 127.73 (d, JCP = 5.9 Hz, C), 126.62 (s, CH), 126.59 (s, CH), 126.56 (s, CH), 125.94 (d, JCP = 5.7 Hz, CH), 125.87 (d, JCP = 7.2 Hz, CH), 21.2 (s, CH3), 19.8 (s, CH3). 31P{1H} NMR (162 MHz, CDCl3): δ5.8, 5.7. HRMS (ESI): m/z calcd. for C28H21NaO4P: 475.1075 ([M+Na]+); found. 475.1066。
【実施例】
【0135】
[実施例3]
【実施例】
【0136】
【化12】
JP2016133218A1_000014t.gif
【実施例】
【0137】
化合物7の合成
ビス[2-ブロモ-4-(N,N-ジアリルアミノ)フェニル]メタン(化合物1)(5.70 g, 11.0 mmol)を脱水THF(110 mL)に溶解させた。-78℃にてt-ブチルリチウムのペンタン溶液(1.61 M, 27.0 mL, 43.5 mmol)を35分間かけて滴下し、そのまま2時間撹拌した。ジクロロフェニルホスフィン(PhPCl2; 1.80 mL, 13.2 mmol)を90分間かけて滴下し、滴下終了後、終夜撹拌を行った。S8(705 mg)を加え、そのまま30分間撹拌した。反応溶媒を減圧化で濃縮し、得られた混合物をジクロロメタンで抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/ヘキサン 1/1, Rf = 0.25)で精製することにより、化合物7を黄色液体として2.84 mg(5.72 mmol, 収率52%)で得た。化合物7のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CD2Cl2): δ 7.67 (dd, J = 16.4 Hz, 2.4 Hz, 2H), 7.36-7.29 (m, 5H), 7.17 (dd, J = 8.2 Hz, 6.4 Hz, 2H), 6.80 (dd, J = 8.2 Hz, 2.4 Hz, 2H), 5.94-5.85 (m, 4H), 5.23-5.17 (m, 8H), 4.05-3.97 (m, 8H), 3.81 (d, J = 18 Hz, 1H), 3.56 (dd, J = 18 Hz, 3.4 Hz, 1H). 13C{1H} NMR (100MHz, CD2Cl2): δ 147.92 (d, JCP = 14.9 Hz, C), 136.04 (d, JCP = 84.3 Hz, C), 134.12 (s, CH), 131.01 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 130.62 (d, JCP = 11.5 Hz, CH), 129.42 (d, JCP = 81.8 Hz, C), 129. 32 (d, JCP = 5.7 Hz, C), 129.09 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 128.80 (d, JCP = 12.4 Hz, ), 116.50 (s, CH2), 115.84 (d, JCP = 12.3 Hz, CH), 115.66 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 53.44 (s, CH2), 35.77 (d, JCP = 9.0 Hz, CH2). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CD2Cl2): δ26.9. HRMS (APCI) : m/z calcd. for C31H34N2PS : 497.2175 ([M+H]+) ; found. 497.2153。
【実施例】
【0138】
化合物8の合成
空気中で化合物7(2.79 g, 5.62 mmol)をCH2Cl2(56 mL)に溶解させた。室温でクロラニル(6.22 g, 25.3 mmol)を加え、そのまま8.5時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2, Rf= 0.45)で精製することにより、化合物8を黄色液体として849 mg(1.66 mmol, 収率30%)得た。化合物8のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CD2Cl2): δ 8.21 (dd, J = 9.0 Hz, 6.2 Hz, 2H), 7.60-7.54 (m, 2H), 7.36-7.30 (m, 5H), 6.88 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 5.88-5.79 (m, 4H), 5.18-5.13 (m, 8H), 4.08-3.97 (m, 8H). 13C{1H} NMR (100MHz, CD2Cl2): δ 179.73 (d, JCP = 8.3 Hz, C), 151.94 (d, JCP = 14.1 Hz, C), 136.31 (d, JCP = 83.5 Hz, C), 135.35 (d, JCP = 80.9, C), 132.71 (s, CH), 131.35 (d, JCP = 3.3 Hz, CH), 131. 20 (d, JCP = 9.1 Hz, CH), 130.63 (d, JCP = 11.5 Hz, CH), 128.78 (d, JCP = 12.4 Hz, CH), 124.30 (d, JCP = 4.9 Hz, C), 117.10 (s, CH2), 115.27 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 114.03 (d, JCP = 12.4 Hz, CH), 53.30 (s, CH2). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CD2Cl2) : δ 18.9. HRMS (APCI): m/z calcd. for C31H31N2OPS: 510.1889 ([M]+) ; found. 510.1870。
【実施例】
【0139】
化合物9の合成
化合物8(800 mg, 1.57 mmol)、1,3-ジメチルバルビツール酸(1.14 g, 7.30 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4; 1.01 g, 0.874 mmol)を脱気した脱水1,2-ジクロロエタン(16.0 mL)に溶解させ、85℃で3日間撹拌したのち、CH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/メタノール 30/1, Rf = 0.28)で精製することにより、化合物9を黄色固体として312 mg(0.890 mmol, 収率57%)得た。化合物9のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ8.13 (dd, J = 8.6 Hz, 5.8 Hz, 2H), 7.65-7.60 (m, 2H), 7.43-7.34 (m, 2H), 7.19 (dd, J = 17.2 Hz, 2.2 Hz, 2H), 6.85 (dd, J = 8.6 Hz, 2.2 Hz, 2H).
13C{1H} NMR (100 MHz, CD3OD): δ 181.58 (d, JCP = 8.3 Hz, C), 154.95 (d, JCP = 14.9 Hz, C), 137.27 (d, JCP = 80.1 Hz, C), 136.54 (d, JCP = 83.4 Hz, C), 132.41 (d, JCP = 3.3 Hz, CH), 132.25 (d, JCP = 9.9 Hz, CH), 131.50 (d, JCP = 10.7 Hz, CH), 129.58 (d, JCP = 12.3 Hz, CH), 124.84 (d, JCP = 4.9 Hz, C), 117.90 (d, JCP = 2.5 Hz, CH), 116.40 (d, JCP = 10.7 Hz, CH). 31P{1H} NMR (161.70 MHz, CD3OD): δ 16.35. HRMS (APCI) : m/z calcd. for C19H16N2OPS : 351.0715 ([M+H]+) ; found. 351.0725。
【実施例】
【0140】
化合物10及び11の合成
空気中で化合物9(101 mg, 0.288 mmol)を硫酸(0.83 mL)に溶解させた。0℃で亜硝酸ナトリウム(60.0 mg, 0.869 mmol)を加え、そのまま3時間撹拌した。得られた反応溶液を適量の氷に対して滴下し、110℃で30分間撹拌した。得られた固体を濾別し、残渣を蒸留水で洗浄し、化合物10を含む粗生成物を黄色固体として87.0 mg得た。窒素雰囲気下で得られた組成生物とイミダゾール(85.0 mg, 1.25 mmol)を脱水CH2Cl2(21 mL)に溶解させ、30分間撹拌した。t-ブチルジメチルクロロシラン(TBDMSCl; 230 mg, 1.52 mmol)を脱水CH2Cl2(15 mL)に溶解させたものを、化合物10を含む溶液に対して滴下した。4時間撹拌した後、水を加え、CH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/ヘキサン 3/2, Rf = 0.53)で精製することにより、化合物11を無色液体として98 mg(0.169 mmol, 収率59%(2段階))得た。化合物11のスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ8.34 (dd, J = 8.6 Hz, 5.8 Hz, 2H), 7.63-7.53 (m, 4H), 7.39-7.30 (m, 3H), 7.086 (ddd, J = 8.8 Hz, 2.5 Hz, 0.60 Hz, 2H), 0.95 (s, 18H), 0.23 (s, 6H), 0.22 (s, 6H). 31P{1H} NMR (161.70MHz, CDCl3): δ17.1。
【実施例】
【0141】
化合物PSFの合成
化合物11(78.0 mg, 0.134 mmol)を脱水THF(23 mL)に溶解させた。室温にて2-メチルフェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液(1.03 M, 0.50 mL, 0.515 mmol)を滴下し、4時間撹拌した。1N HCl水溶液(16 mL)加え、2時間撹拌し、反応混合物をCH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、脱水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/メタノール 5/1 (トリエチルアミン10%), Rf = 0.50)にて分離した後、HPLCで精製することにより、28 mgの青色固体を得た。得られた固体をトルエンに溶解させ分液漏斗にいれ、1N HCl水溶液を加えて抽出した。あわせた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾別し、濾液を減圧下で濃縮することで化合物PSFを赤紫色固体として18 mg(0.0422 mmol, 収率32%)で得た。化合物PSFのスペクトルデータは以下のとおりである。
1H NMR (400MHz, CD2Cl2): δ 7.73-7.60 (m, 4H), 7.54-7.35 (m, 16H), 7.13 (dd, J = 21 Hz, 7.4 Hz, 2H), 6.97-6.91 (m, 4H), 6.56 (d, J = 9.2 Hz, 4H), 2.10 (s, 3H), 1.99 (s, 3H). (2つの回転異性体の混合物)HRMS (APCI): m/z calcd. for C26H20O2PS: 427.0916 ([M+H]+) ; found. 427.0936。
【実施例】
【0142】
[試験例1:LUMO及びHOMO]
実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物(10位がリン原子)、公知のフルオレセイン化合物(10位が酸素原子;TokyoGreen;JACS, 2005, 127, 4888)、及び公知のケイ素置換フルオレセイン化合物(10位がケイ素原子;TokyoMagenta;Chem. Commun. 2011, 47, 4162)について、Gaussian 09 プログラムを用いた構造最適化により、HOMO準位及びLUMO準位を算出した。計算は B3LYP/6-31+G レベルでおこなった。結果を表1に示す。この結果、従来の化合物と比較し、本発明のホスファフルオレセイン化合物は、LUMO及びHOMO(特にLUMO)を低減することができるとともに、エネルギーギャップも低減することができることが理解できる。このため、光に対する安定性がより向上することが期待される。
【実施例】
【0143】
【表1】
JP2016133218A1_000015t.gif
【実施例】
【0144】
[試験例2:X線結晶構造解析]
実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物(10位がリン原子)について、Rigaku Single Crystal CCD X線解析装置 (FR-X microfocus generator、VariMax-Mo 光学系、PILATUS 200K 検出器、Mo Kα照射 (λ = 0.71070 Å))を用いて行った。2θ角が50°以下の範囲で19043個の反射を計測し、そのうち4694個が独立した反射であった(Rint = 0.0195)。構造は直接法(SIR-2003)によって決定し、F2のフルマトリクス最小二乗法(SHELXL-2013)によって決定した。結晶データは、以下のとおりである。C26H19O3P; FW = 410.38, crystal size 0.30×0.30×0.10 mm3, monoclinic, C2/c, a = 16.295(13)Å, b = 14.157(18)Å, c = 18.637(17)Å, β= 104.42(2)°, V = 4164(7)Å3, Z = 8, Dc =1.309 g cm-3, μ= 0.157 mm-1, R1 = 0.0402 (I > 2σ(I)), wR2 = 0.1095 (all data), GOF = 1.063. ケンブリッジ結晶構造データベース ID: CCDC 1435421. 結果を図1に示す。
【実施例】
【0145】
[試験例3:光物理特性(その1)]
実施例1で得た化合物POFのUV-vis吸収スペクトルを、1%のDMSOを含有する緩衝水溶液(pH = 3~5.5: クエン酸及びNa2HPO4水溶液、pH = 6~8: Na2HPO4及びNaH2PO4水溶液、pH = 9~11: Na2CO3及びNaHCO3水溶液)に10-5 M溶解させた試料溶液を用いて、Shimadzu UV-3150 spectrometerにより、解像度0.2 nmで測定した。蛍光スペクトルは、解像度1 nmのHitachi F-4500 spectrometerで、10-6 M溶解させた試料溶液を用いて測定した。励起スペクトルは、Hamamatsu PMA R5509-73及びcooling system C9940-01を備えたHoriba SPEX Fluorolog 3 spectrofluorometerで、10-6M溶解させた試料溶液を用いて測定した。絶対蛍光量子収率は、Hamamatsu photonics PMA-11で測定した。
【実施例】
【0146】
例えば、pH3の緩衝水溶液を用いる場合、溶媒として、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させたのち、さらに、pHを3に調整したクエン酸水溶液及びNa2HPO4水溶液の混合水溶液で100倍に希釈し、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物を7.4×10-6 Mになるように溶解させた試験液を調製した(pH3の試験液)。
【実施例】
【0147】
また、pH7の緩衝水溶液を用いる場合、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させたのち、さらに、pHを7に調整したNa2HPO4水溶液及びNa2HPO4水溶液の混合水溶液で100倍に希釈し、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物を7.4×10-6 Mになるように溶解させた試験液を調製した(pH7の試験液)。
【実施例】
【0148】
さらに、pH9の緩衝水溶液を用いる場合、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させたのち、pHを9に調整したNa2CO3水溶液及びNaHCO3水溶液の混合水溶液で100倍に希釈し、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物を7.4×10-6 Mになるように溶解させた試験液を調製した(pH9の試験液)。
【実施例】
【0149】
結果を図2~4に示す。この結果、中性条件下又はアルカリ性条件下とすることで、吸収極大波長及び蛍光極大波長を600~700 nmとすることができるとともに、蛍光量子収率を特に向上させることが可能であった。このことは、図3の下図において、pHの増大とともに627 nmにおける相対吸収が増大しており中性~アルカリ性領域においてはほとんど同程度であること、図4の下図において、pHの増大とともに627 nmにおける励起強度と532 nmにおける励起強度の比が増大しており中性~アルカリ性領域においてはほとんど同程度であること等からも理解できる。この挙動は、pHを大きくすることにより、本発明のホスファフルオレセイン化合物がアニオン化していることに起因すると考えられる。
【実施例】
【0150】
[試験例4:光物理特性(その2)]
上記試験例3で得られた試験液2及び3の光物理特性を、既報の値(TokyoGreen:JACS, 2005, 127, 4888、TokyoMagenda:Chem. Commun. 2011, 47, 4162、Nap-Fluorescein:Cytometry, 1989, 10, 151)と比較した。結果を表2に示す。この結果、本発明のホスファフルオレセイン化合物は、600 nm以上に吸収極大波長及び蛍光極大波長を有する化合物のうち、最高の蛍光量子収率を有することが理解できる。また、吸収極大波長は最大であり、バイオイメージングにおいて、細胞小器官の自己吸収及び細胞への光によるダメージを最小限に抑えることができる。
【実施例】
【0151】
【表2】
JP2016133218A1_000016t.gif
【実施例】
【0152】
[試験例5:光に対する安定性]
ホスファフルオレセイン化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させたのち、pHを7に調整したNa2HPO4水溶液及びNa2HPO4水溶液の混合水溶液を添加して100倍に希釈し、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物を7.4×10-6Mになるように溶解させた試験液4を得た。
【実施例】
【0153】
これとは別に、実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物ではなく公知のフルオレセイン化合物(10位が酸素原子;TokyoGreen;JACS, 2005, 127, 4888)及びケイ素含有フルオレセイン化合物(10位がケイ素原子;TokyoMagenta;Chem. Commun., 2010, 47, 4162.)を用いたこと以外は同様に処理を行い、試験液5及び試験液6を得た。
【実施例】
【0154】
試験液4、5及び6に対して、キセノンランプを用いて、350nm以上の波長の白色光を照射し、吸収極大波長(試験液4:627 nm;試験液5:491 nm;試験液6:582 nm)における吸光度の維持率を測定した。結果を図5(a)に示す。図中、上側の線(POFと併記)は本発明のホスファフルオレセイン化合物、下側の線(TMと併記)は公知のケイ素含有フルオレセイン化合物、これらの間の線(TGと併記)は公知のフルオレセイン化合物である。
【実施例】
【0155】
その他、以下の方法でホスファフルオレセイン化合物の光に対する安定性を評価した。
【実施例】
【0156】
実施例1で得たホスファフルオレセイン化合物、及び公知の赤色蛍光色素である Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、及びCy5をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた後、pHを7に調整したNa2HPO4水溶液及びNa2HPO4水溶液の混合水溶液を添加して希釈し、630 nmでの吸光度が同一になるように濃度を調整することで、試験液7、試験液8、試験液9及び試験液10を得た。試験液7、試験液8、試験液9及び試験液10に対して、300 Wキセノンランプ(朝日分光 MAX)に630 nm±10 nmの波長の光のみ透過するバンドパスフィルターを装着した状態で光照射を行い、630 nmにおける吸光度の維持率を測定した。結果を図5(b)に示す。ホスファフルオレセイン色素(POF)は公知の代表的な赤色蛍光色素であるCy5と比較して高い光安定性をもち、光安定性に優れた赤色蛍光色素として公知のAlexa Fluor(登録商標)633及びAlexa Fluor(登録商標)647と同程度の光安定性をもつことが示された。
【実施例】
【0157】
[試験例6:細胞試験]
細胞インキュベーション及びイメージング
HeLa細胞(RIKEN Cell Bank、日本)及びRAW264.7細胞(JCRB Cell Bank、日本)を、10%ウシ胎児血清(FBS、Gibco)及び1%抗生物質-抗真菌(AA、Sigma)を含むDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM、Sigma)で、37℃で5%CO2/95%空気のインキュベーター中で24時間インキュベートした。イメージングの2日前に、HeLa細胞及びRAW264.7細胞は、それぞれ、35 mmのガラスボトムと8ウェルガラスボトムディッシュに播種した。染色実験のため、HeLa細胞を、実施例2の化合物AcPOFが5μMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で、37℃で10分間インキュベートし、次いでPBSで2回すすいだ。フェノールレッドを含まないDMEMに培地を交換した後、Olympus FV10i confocal fluorescence microscopeを用いて、635 nmの励起レーザーで細胞をイメージングした。一方、RAW264.7細胞の場合は、培養培地としては、実施例2の化合物AcPOFを5μM、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES; pH 7.4)を10 mM、DMSOを1%、及びPluronic F-127を0.02%含むDMEMを用いた。細胞を37℃で15分間染色し、DMEMで2回洗浄した後、各ウェルに、valinomycinを10μM、nigericinを10μM含むpHが4.5又は6.5のpH検量緩衝液(Thermo Fisher Scientific)を充填した。細胞イメージは、HC PL APO 20倍/0.75 IMM CORR CS2レンズを備えたTCS SP8 STED(Leica)を用いて得た。細胞は627 nm(白色光レーザー、80 MHz、出力電力70%、AOTF 50%)のレーザー線で励起し、蛍光は485~527 nm及び635~750 nmのフィルターを介して記録した。
【実施例】
【0158】
結果を図6に示す。この結果から、本発明のホスファフルオロセイン化合物は、核膜は透過しなかったものの、細胞膜を透過して細胞の中に侵入し、細胞(HeLa細胞等)の蛍光色素として使用できることが理解できる。
【実施例】
【0159】
細胞毒性評価
HeLa細胞を平底96ウェルプレート(1×104細胞/ウェル)に播種し、FBSを10%含むDMEMで、37℃で5%CO2/95%空気のインキュベーター中で24時間培養した。次いで、培地を、種々の実施例2の化合物AcPOFの濃度(1μM、5μM及び10μM)有する培地に置換し、細胞をさらに37℃で24時間インキュベートした。培地を除去した後、3-(4,5-ジ-メチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)試薬を各ウェルに加え(最終濃度は0.5 mg/mL)、プレートをCO2インキュベーター中でさらに4時間インキュベートした。過剰のMTTのテトラゾリウム溶液を除去し、細胞をPBSで1回洗浄した。ホルマザン結晶をDMSO(100μL/ウェル)に室温で30分間可溶化した後、各ウェルの吸光度を波長535 nmでSpectraMax i3(Molecular Devices)で測定した。
【実施例】
【0160】
結果を図7に示す。図7においては、結果は、蛍光色素を使用しなかった場合に対する生存率をパーセンテージで表している。全てのデータは、平均標準偏差により示している(測定数nは12である)。この結果から、本発明のホスファフルオロセイン化合物は、細胞へのダメージを著しく低減できる範囲で細胞を蛍光させることができることが理解できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6