TOP > 国内特許検索 > 機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、レアメタルを剥離する方法、及び、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置 > 明細書

明細書 :機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、レアメタルを剥離する方法、及び、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年12月7日(2017.12.7)
発明の名称または考案の名称 機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、レアメタルを剥離する方法、及び、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置
国際特許分類 B23P  17/00        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/42        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
C01B  13/02        (2006.01)
B01J  23/755       (2006.01)
B01J  21/06        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
G21B   1/00        (2006.01)
FI B23P 17/00 A
B22F 1/00 K
B01J 35/02 J
B01J 23/42 M
C01B 3/04 A
C01B 13/02 B
B01J 23/755 M
B01J 21/06 M
B01J 37/34
G21B 1/00 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 36
出願番号 特願2017-502344 (P2017-502344)
国際出願番号 PCT/JP2016/055016
国際公開番号 WO2016/136656
国際出願日 平成28年2月22日(2016.2.22)
国際公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
優先権出願番号 2015034142
優先日 平成27年2月24日(2015.2.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】吉村 敏彦
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
審査請求 未請求
テーマコード 4G042
4G169
4K018
Fターム 4G042BA08
4G042BB04
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC33
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FA01
4G169FB58
4G169HA01
4G169HA02
4G169HB01
4G169HB02
4G169HB03
4G169HB10
4G169HC34
4G169HD03
4G169HE09
4K018BA01
4K018BB04
4K018BC08
4K018BC16
4K018BD10
要約 機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを利用してレアメタルを剥離する方法、及び、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置を発生させる方法を提供する。機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法では、水(W1)中に浸漬させた噴射ノズル(20)からウォータージェットを噴射させると共に、ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波(U1)を照射して、機能的作用と電気化学的作用との両方を有するキャビテーション(MFC)を発生させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
水中に浸漬させた噴射ノズルからウォータージェットを噴射させると共に、前記ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させる、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【請求項2】
前記流動キャビテーションの移動速度は、5m/s以下である請求項1に記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【請求項3】
前記超音波の周波数は、20kHz以上33kHz以下である請求項1に記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【請求項4】
前記超音波を照射する超音波照射素子から前記ウォータージェットまでの距離は、前記超音波の5波長以下である請求項1又は請求項2に記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【請求項5】
前記噴射ノズルから噴射される前記ウォータージェットを被衝突物に衝突させることによって前記被衝突物の周辺に生じる2次噴流の流動キャビテーションに対して、前記超音波を照射することにより、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を、前記被衝突物の周辺に発生させる請求項1~請求項4のいずれかに記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを、物質に衝突させて、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法。
【請求項7】
前記物質は、ルチル型又はアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタン、白金、及び、酸化ニッケルのうちから選択された少なくとも1つにより構成され、
前記酸化チタンの粒子は、100nm以上400nm以下の粒径を有し、
前記白金、又は、前記酸化ニッケルの粒子は、0.1μm以上85μm以下の粒径を有する、請求項6に記載の、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法。
【請求項8】
前記物質の表面において、ガス吸着が少なく、耐酸化性及び耐食性が高い不活性表面を生成する、請求項6に記載の、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法。
【請求項9】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを、レアメタルが蒸着された被覆物の表面に衝突させて、前記被覆物の表面から前記レアメタルを剥離する方法。
【請求項10】
水中に浸漬されウォータージェットを噴射する噴射ノズルと、
前記ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させる超音波照射素子と、を備える、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置。
【請求項11】
重水もしくは重水素を含む液体に浸漬させた噴射ノズルから重水もしくは重水素を含む液体を噴射させると共に、前記重水もしくは重水素を含む液体の噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させ、キャビテーションの崩壊により重水素の核融合反応を発生させる方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、レアメタルを剥離する方法、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置、及び、重水素の核融合反応を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
震災後、特に原子力発電の有用性や安全性、放射能汚染等の問題が注目されている。また火力発電における二酸化炭素の排出を抑えて、化石資源に依存しない持続可能な社会を構築するためには、再生可能エネルギーの有効利用が必須である。特に再生可能エネルギーの中でも最も膨大である太陽エネルギーの利用は非常に重要であるが、その利用技術は限定されている。太陽エネルギーの利用としては、例えば、太陽光発電、太陽熱、バイオマス、人口光合成等がある。
【0003】
水素は、二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーに転換することができる。水素は酸素と反応して、電力と熱と水を発生する。水素は、エネルギーを生み出す効率が高く、用途は自動車から発電設備の燃料まで幅広い。酸化物半導体を用いた光触媒や光電極で水を直接分解して、水素と酸素を製造する太陽光水素製造技術は低コストであり、将来の水素社会実現に向けて活発に研究が推進されている。
【0004】
光触媒分野では、様々な光触媒材料(酸化物半導体)が研究されている。酸化チタンは低コストで、光電極や光触媒の材料として太陽エネルギー変換材料への応用が注目されている。TiO光触媒反応は、350nmの波長の光(紫外線)が有効であるという特徴をもっている。しかしながら、太陽光には紫外線は僅かしか含まれておらず、効率的なエネルギー変換のためには、太陽エネルギーの半分を占める可視光を利用することが不可欠である。酸化チタンを装飾して可視光応答性を持たせる研究は盛んに行われており、また、金属の表面を改質する研究も行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-255865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の触媒では水素を発生させる能力が低かった。即ち、従来の光触媒材料や光電極材料を用いて太陽エネルギーを水素エネルギーに変換する効率は低く、高性能システムの開発が熱望されている。
【0007】
本発明は、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを利用してレアメタルを剥離する方法、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置、及び、重水素の核融合反応を発生させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、水中に浸漬させた噴射ノズルからウォータージェットを噴射させると共に、前記ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させる、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記流動キャビテーションの移動速度は、5m/s以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記超音波の周波数は、20kHz以上33kHz以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2において、前記超音波を照射する超音波照射素子から前記ウォータージェットまでの距離は、前記超音波の5波長以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかにおいて、前記噴射ノズルから噴射される前記ウォータージェットを被衝突物に衝突させることによって前記被衝突物の周辺に生じる2次噴流の流動キャビテーションに対して、前記超音波を照射することにより、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を、前記被衝突物の周辺に発生させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかにおける、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを、物質に衝突させて、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記物質は、ルチル型又はアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタン、白金、及び、酸化ニッケルのうちから選択された少なくとも1つにより構成され、前記酸化チタンの粒子は、100nm以上400nm以下の粒径を有し、前記白金、又は、前記酸化ニッケルの粒子は、0.1μm以上85μm以下の粒径を有することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6において、前記物質の表面において、ガス吸着が少なく、耐酸化性及び耐食性が高い不活性表面を生成することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1~請求項5のいずれかにおける、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを、レアメタルが蒸着された被覆物の表面に衝突させて、前記被覆物の表面から前記レアメタルを剥離する方法である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、水中に浸漬されウォータージェットを噴射する噴射ノズルと、前記ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させる超音波照射素子と、を備える、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、重水もしくは重水素を含む液体に浸漬させた噴射ノズルから重水もしくは重水素を含む液体を噴射させると共に、前記重水もしくは重水素を含む液体の噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、前記流動キャビテーションが膨張可能な、前記流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波を照射して、前記超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ前記流動キャビテーションの前記高温反応場を前記噴射ノズルから離間した位置に分布させ、キャビテーションの崩壊により重水素の核融合反応を発生させる方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、及び、発生した機械的及び電気化学的キャビテーションを利用してレアメタルを剥離する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法を示す概略図である。
【図2】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法におけるブレーク閾値と平衡半径との関係を示すグラフである。
【図3】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法におけるブレーク閾値と流速との関係を示すグラフである。
【図4】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法における共鳴周波数と気泡半径との関係を示すグラフである。
【図5】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図6】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図7】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図8】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図9】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図10】流動キャビテーションにより、白金が付着した状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図11】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法により表面処理された酸化チタン粉末等について、Qマス装置(四重極質量分析計(QMS)装置)100を用いて効果の試験をする様子を示す概略図である。
【図12】本発明による実施形態2の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法を示す概略図である。
【図13】本発明による実施形態4のレアメタルの剥離方法により、ITO膜が部分的に剥離された様子を示す電子顕微鏡写真である。
【図14】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験におけるブレーク閾値と流速との関係を示すグラフである。
【図15】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が4.5m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図16】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が21m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図17】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が80m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図18】本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が120m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法の実施形態について説明する。まず、実施形態1について説明する。

【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法を示す概略図である。

【0023】
図1に示すように、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法を実施するための機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置1は、リアクター10と、噴射ノズル20と、超音波照射素子30とを有している。リアクター10には、水道水W1が貯留されている。

【0024】
噴射ノズル20は、高圧水供給源(図示せず)に接続されている。噴射ノズル20の吐出口は、リアクター10に貯留されている水道水W1に浸漬されている。高圧水供給源(図示せず)から供給される高圧水W2は、吐出口からリアクター10に貯留されている水道水W1へ、高圧のウォータージェットとして噴射される。高圧水W2の圧力は、1MPa以上70MPa以下である。

【0025】
高圧水W2の圧力が1MPa未満では、適度に高圧のウォータージェットを得ることができず、機械的及び電気化学的キャビテーション(以下、「機能性キャビテーションMFC(Multifunction Cavitation)」と言う)の核が発生しにくく、機能性キャビテーションMFCを適度に得ることができないからである。また高圧水W2の圧力が70MPaを超えると、ウォータージェットの圧力が高すぎて、機能性キャビテーションMFCの核が膨張しにくいため、機能性キャビテーションMFCを適度に得ることができないからである。特に、3MPa以上であれば、機能性キャビテーションMFCを容易に発生させるためのウォータージェットを噴射可能である。ここで、「機械的及び電気化学的キャビテーション(機能性キャビテーションMFC)」とは、酸化チタン等の物質の表面を多孔質状とする等の、物質の表面の幾何学的形状を変化させる、機械的な表面改質の作用を及ぼすのみならず、水を水素と酸素とに分解するときのバンドギャップを低減する等の、電気化学的な表面改質作用を及ぼすことが可能なキャビテーションを意味する。

【0026】
噴射ノズル20は、オリフィス部21と、混合室22と、ホーン部23とを有している。オリフィス部21は、円筒形状を有している。オリフィス部21の上流側の端部は、高圧水供給源(図示せず)に連通している。オリフィス部21には、高圧水供給源(図示せず)から供給される高圧水W2が流入する。

【0027】
混合室22の上流側の端部は、オリフィス部21の下流側の端部に接続されている。混合室22は、オリフィス部21よりも僅かに拡径しており、混合室22には、内径が1mm~4mm程度の物質流入流路24が連通している。混合室22には、オリフィス部21から高圧水W2が流入すると共に、物質流入流路24を通した副流により、酸化チタンの粉末(TiO)、白金(Pt)、酸化ニッケル(II)(NiO)の粉末M1が流入する。

【0028】
物質流入流路24を通した副流により流入する酸化チタンは、ルチル型又はアナターゼ型の結晶構造を有する。また、酸化チタンの粒子は、10μm以下の粒径を有しており、好ましくは、100nm以上400nm以下の粒径を有している。粒径が10μmを超えると、粒径が大きすぎて、酸化チタンの粒子の表面を微細化して多孔質構造とする表面改質をすることが困難になる。表面改質を効率的に行うためには、酸化チタンの粒径が小さいことが好ましく、より効率的に表面改質を行うためには、粒径が400nm以下であることが好ましい。また、酸化チタンの粒子の粒径が100nm未満の場合には、粒子が小さすぎて効率的に表面改質を行うことが困難となる。
また、白金、酸化ニッケル(II)の粒子は、0.1μm以上85μm以下の粒径を有している。白金、酸化ニッケル(II)の粒子についても、酸化チタンの場合と同様に、表面改質を効率的に行うためには、粒径が小さいことが好ましい。白金、酸化ニッケル(II)の粒径が85μmを超える場合には、白金、酸化ニッケル(II)の表面改質を効率的に行うことが困難となる。白金、酸化ニッケル(II)の粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が小さすぎて、表面を微細化して多孔質構造とする表面改質を効率的に行うことが困難となる。

【0029】
ホーン部23の上流側の端部は、混合室22の下流側の端部に接続されている。ホーン部23は、ホーン部23の先端(ホーン部23の下流側の端部により構成される噴射ノズル20の吐出口)に向かって、テーパー状に拡径する。従って、噴射ノズル20は、ホーンノズルにより構成されている。ホーン部23の先端の最大直径は0.8mm~2mm程度である。以上のような構成を有する噴射ノズル20は、リアクター10に貯留された水道水W1の中で、ウォータージェットを噴射し、これに伴い、水道水W1の中で流動キャビテーションを発生させる。

【0030】
超音波照射素子30は、駆動制御装置(図示せず)に電気的に接続されており、鉛直下方へ噴射されるウォータージェットに対して、水平の方向からウォータージェットに対して超音波U1を照射する。超音波照射素子30は、駆動制御装置からの出力により、リアクター10に貯留された水道水W1の中で、超音波U1を照射する。照射される超音波U1の周波数は、20kHz以上33kHz以下である。

【0031】
照射される超音波U1の周波数が20kHz未満では、周波数が低すぎて、超音波U1の効果を得ることができないからである。照射される超音波U1の周波数が100kHzを超えると、周波数が高すぎて、超音波U1の効果を得ることができず、また、33kHzを超えると、気泡半径を等温膨張・断熱圧縮させやすい共鳴半径から離れてしまい、気泡半径を等温膨張・断熱圧縮させにくくなるからである。より好ましくは、28kHz近辺である。気泡半径と、超音波U1の周波数との関係については後述する。

【0032】
また、照射される超音波U1の超音波出力定格値は、100W以上300W以下である。照射される超音波U1の超音波出力定格値が100W未満では、超音波U1の出力が弱すぎて、キャビテーションの核の膨張・収縮による圧壊を十分に行うことができないからである。照射される超音波U1の超音波出力定格値が300Wを超えると、超音波U1の出力が強い割には、効果的なキャビテーションの核の膨張と、収縮による圧壊とを行うことができず、出力を大きくする意味がないためである。
即ち、気泡振動(キャビテーションの核への振動)の共振周波数を与える半径を、共鳴半径と呼ぶが、音圧(超音波出力)が大きいと、共鳴半径以上では、キャビテーションの核はあまり膨張せず、レイリー収縮(断熱圧縮)を生じさせない。一方、音圧をBlake閾値とする(等温膨張に必要な音圧とする)気泡半径以下でも、気泡の膨張は小さくなる。これらのことから、一般にレイリー収縮を起こすような活性な気泡の平衡半径は、Blake閾値と共鳴半径の間にあるためである。

【0033】
超音波照射素子30は、リアクター10に貯留された水道水W1において、噴射ノズル20が噴射するウォータージェットから、超音波照射素子30から照射される超音波U1の5波長分の距離以下の距離で離れた位置に配置される。具体的には、照射される超音波U1の周波数が28kHzの場合には、噴射ノズル20が噴射するウォータージェットから約54mm以下で離れた位置に配置される。超音波照射素子30から照射される超音波U1の5波長分の距離を超えると、超音波U1の強度が低下し、機能性キャビテーションMFCの核が膨張している状態から収縮する状態に移らずに、機能性キャビテーションMFCによる物質の表面改質の効果を十分に得ることができないからである。

【0034】
また、超音波照射素子30は、噴射ノズル20から離間した位置であって、流動キャビテーションが膨張可能な、流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置にある流動キャビテーションに対して、超音波U1を照射する。これにより、高温反応場を含んだ流動キャビテーションの高温反応場を噴射ノズル20から離間した位置に分布させる。ここで所定の移動速度とは、5m/sである。

【0035】
所定の移動速度は、以下のようにして求められる。
水蒸気圧をpとし、雰囲気圧をpとし、表面張力をσとし、平衡半径をRとしたときに、キャビテーションの核が膨張するために必要な最小圧力は、以下の式により求められる。
【数1】
JP2016136656A1_000003t.gif
気泡が表面張力σに打ち勝って大きく膨張するための条件は、以下のとおりである。
【数2】
JP2016136656A1_000004t.gif

【0036】
超音波U1の周波数が低い(20kHz程度の)場合、ブレーク閾値ABlakeと平衡半径Rとの関係は、図2のグラフに示すとおりである。図2は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法におけるブレーク閾値と平衡半径との関係を示すグラフである。
図2に示すグラフより、平衡半径が1μmより大きい場合には、ブレーク閾値は1bar(大気圧)に等しくなり、容易に膨張させることが可能になる。ここで、液体密度をρとし、液体の流速をνとし、振動速度をνとして、ベルヌーイの定理を用いると、気泡膨張に必要な音圧は、
【数3】
JP2016136656A1_000005t.gif
で表される。

【0037】
気泡半径が100μmの場合の,ブレーク閾値ABlakeと流速νとの関係は、図3のグラフに示すとおりである。図3は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法におけるブレーク閾値と流速との関係を示すグラフである。
図3に示すグラフより、流速νが4.52m/sのときに、ノズルから離間した位置において、ブレーク閾値ABlakeは1barに等しくなる。このように、液体の流速、即ち、流動キャビテーションの流速が、所定の移動速度である5m/s以下になる位置においては、音圧が低くてもキャビテーションの核は膨張することができることが分かる。図3に示すように、流動キャビテーションの流速が、所定の移動速度である5m/sを超える位置の辺りからブレーク閾値ABlakeは急に大きくなり、噴射ノズル20に近づいて流動キャビテーションの流速が高くなる程、ブレーク閾値ABlakeは大きくなり、キャビテーションの核を膨張させるためには、大きな音圧が必要になることが分かる。

【0038】
水中で超音波の波長より十分に小さい半径Rの気泡球が振動速度で振動している場合を考える。複数の気泡が相互に作用せずに振動する場合に、ρを水の密度とし、Pを雰囲気圧とし、γを比熱比とし、Rを気泡半径とすると、気泡振動の共振周波数(共鳴周波数)を与える以下のミンナルトの式が知られている。
【数4】
JP2016136656A1_000006t.gif

【0039】
上記式において、P=10Paとし、γ=1.4として、共振周波数を計算した結果は、図4のグラフに示すとおりである。図4は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法における共鳴周波数と気泡半径との関係を示すグラフである。
ウォータージェットキャビテーションのサイズである100μm以上の気泡では、共振周波数は33kHz以下となり、例えば、超音波照射素子30から照射される超音波U1の周波数を28kHzとすることより,気泡を膨張させ活性化するのに有効であると考えられる。

【0040】
以上の構成を有する装置1が用いられて、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法は、以下のとおり実施される。
噴射ノズル20は、リアクター10に貯留されている水道水W1に浸漬された状態で、高圧水W2を水道水W1に対して噴射することによるウォータージェットを噴射する。これにより、ウォータージェットにおいて循環渦が発生する。循環渦においては核(キャビテーション核)が発生する。核の中心の圧力が、ウォータージェットの温度における飽和蒸気圧に達すると、流動キャビテーションが発生する。

【0041】
このとき、超音波照射素子30は、ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して超音波U1を照射している。これにより、流動キャビテーションにおいて圧力の高低が繰り返し生ずる。このため、核の発生と、核の拡散及び膨張と、核の圧壊と、核の発生と、が繰り返し行われる。そして、この繰り返しの中で、核の拡散及び膨張と、核の発生と、が一致することにより、高温反応場(ホットスポット)を含んだ流動キャビテーション、即ち、機能的作用と電気化学的作用との両方を有するキャビテーション(機械的及び電気化学的キャビテーションMFC)が発生する。

【0042】
機能性キャビテーションMFCは、圧壊し始めると、物質としての酸化チタンや白金等に近づく。そして、体積減少を起こし、物質の表面に突き刺さるような高速ジェット(マイクロジェット)を生成する。この機能性キャビテーションMFCによる高速ジェット(マイクロジェット)は、物質流入流路24を通した副流によりウォータージェットに流入した酸化チタンの粉末や白金の粉末等に衝突する。これにより、酸化チタン及び白金等の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる、マイクロジェットによる機械的及び電気化学的な表面改質が施される。

【0043】
このように、流動キャビテーションを超音波U1により膨張・収縮させることにより生ずる、高温反応場を含んだ流動キャビテーションの高温反応場は、前述のように、超音波照射素子30は、ウォータージェットの噴射に対して超音波U1を照射しているため、ウォータージェットの噴出方向における噴射ノズル20の先方に分布する。

【0044】
次に、本実施形態により機能性キャビテーションMFCを発生させて、酸化チタン粉末の表面改質を行った。酸化チタンの表面に対して機械的及び電気化学的な表面改質を施して得られた結果は、図5~図9に示すとおりである。
図5は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図6は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図7は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図8は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図9は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCにより、多孔質状とされ白金を包み込むように保持している状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。

【0045】
機能性キャビテーションMFCを発生させる際の条件は、以下のとおりである。

(機能性キャビテーションMFC発生条件)
高圧水供給源から噴射ノズル20へ供給される高圧水の圧力 : 35MPa
超音波U1の照射及びウォータージェットの噴射時間 : 2分
超音波U1の周波数 : 28kHz
超音波出力定格値 : 225W
ウォータージェットから超音波照射素子30までの距離 : 54mm


【0046】
図5~図9に示すように、機械的及び電気化学的な表面改質が施された酸化チタンの表面は、多孔質状とされており、nm(ナノメートル)サイズの多数の深い孔が形成されていることが分かる。また、図5において矢印で示すように、白金の粒子(白い部分)は、酸化チタン(濃いグレーの部分)に包み込まれるような状態で、酸化チタンに坦持されていることが分かる。図6~図9においても、同様の状態が生じていることが分かる。

【0047】
これに対して、超音波U1を照射しないことを除いて、同一の条件下で、ウォータージェットによる流動キャビテーションによる酸化チタンの表面改質により得られた結果は、図10に示すとおりである。図10は、流動キャビテーションにより、白金が付着した状態とされた酸化チタンの表面を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
図10に示すように、流動キャビテーションによる表面改質が行われた酸化チタンの表面は、図5~図9に示す程の多孔質状を有していないことが分かる。また、白金の粒子は、酸化チタンの表面に付着しているような状態であり、白金の粒子が酸化チタンに包み込まれるようにして酸化チタンに坦持されている状態とは大きく異なることが分かる。

【0048】
次に、本実施形態により機能性キャビテーションMFCにより、上述のように表面改質された酸化チタン粉末等を用いて、水を分解して水素及び酸素の生成を行った。具体的には、水の分解においては、表面改質された酸化チタン粉末等(本発明品1~本発明品4、比較品1~比較品4、従来品)を水道水に浸漬させ、これを図11に示すQマス装置(四重極質量分析計(QMS)装置)100における低真空中に配置した。図11は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法により表面処理された酸化チタン粉末等について、Qマス装置(四重極質量分析計(QMS)装置)100を用いて効果の試験をする様子を示す概略図である。そして、可視光L1、又は、紫外線L1をこれらの粉末にそれぞれ1時間照射し、発生する水素、酸素の量を測定した。

【0049】
Qマス装置100は、メイン真空室111と、四重極質量分析計121と、電離真空計122と、弁123、124と、ターボ分子ポンプ125と、ロータリーポンプ126とを有している。メイン真空室111に配置された石英ガラス112上に、水道水に浸漬された酸化チタン粉末等(本発明品1~本発明品4、比較品1~比較品4、従来品)が配置される。

【0050】
四重極質量分析計121及び電離真空計122は、メイン真空室111に連通しており、四重極質量分析計121及び電離真空計122とメイン真空室111との間には、弁123が接続されている。また、四重極質量分析計121、電離真空計122、及び、メイン真空室111には、弁124を介して、ターボ分子ポンプ125と、ロータリーポンプ126とがこの順で連通している。

【0051】
メイン真空室111には、予め内部標準物質としてヘリウム又はアルゴンを一定量注入しておく。そして、弁123、124を適量開いて、ターボ分子ポンプ125により、一定の量の排気を行う。そして、表面改質された酸化チタン粉末等(本発明品1~本発明品4、比較品1~比較品4、従来品)に対して可視光又は紫外線を1時間照射する。この間、メイン真空室111においてイオン化された水素、酸素それぞれについての電流値を、四重極質量分析計121において測定した。そして、水分子(HO)からの水素(H)のパターン係数に基づき、水分子の水素(H)の奇与分を差し引くことにより、水の分解により発生した水素(H)の生成速度及び、酸素(O)の、単位時間当たりの生成速度を測定した。水の分解による水素及び酸素の生成に用いられた本発明品1~本発明品4、比較品1~比較品4、従来品は、以下のとおりである。

【0052】
本発明品1は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末をウォータージェットに流入させて、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により行った。

【0053】
また、本発明品2は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、100重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末をウォータージェットに流入させて、この物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により行った。

【0054】
また、本発明品3は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の酸化ニッケル(II)(NiO)の粉末をウォータージェットに流入させて、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により行った。

【0055】
また、本発明品4は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、90.9重量%のアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末をウォータージェットに流入させて、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により行った。

【0056】
また、比較品1は、前述の実施形態1の装置を用いて、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末を水道水W1に流入させて、これらに対して超音波U1を2分間照射した後、ウォータージェットによる流動キャビテーションに2分間晒すことにより、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。

【0057】
また、比較品2は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末をウォータージェットに流入させて、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、この酸化チタンの粉末及び白金の粉末を、実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、ウォータージェットに流入させて、ウォータージェットによる流動キャビテーションに2分間晒した後に、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションで用いられた超音波U1を、酸化チタンの粉末及び白金の粉末に対して2分間照射することにより行った。

【0058】
また、比較品3は、前述の実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末をウォータージェットに流入させて、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。表面改質は、この酸化チタンの粉末及び白金の粉末を、実施形態1の装置を用いて、物質流入流路24を通した副流により、ウォータージェットに流入させて、ウォータージェットによる流動キャビテーションのみに2分間晒すことにより行った。

【0059】
また、比較品4は、前述の実施形態1の装置を用いて、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末を水道水W1に混入させて、超音波U1を照射することにより行った。表面改質は、本実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションで用いられた超音波U1のみを、酸化チタンの粉末及び白金の粉末に対して2分間照射することにより行った。

【0060】
また、従来品は、99.9重量%のアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び0.1重量%の白金の粉末に対して、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射しながら、回転子(攪拌子)を用いてスターラー攪拌を行うことにより、これらの物質の表面改質を行って得られたものである。攪拌時間は、8時間である。

【0061】
また、上述の本発明品1~本発明品4、比較品1~比較品4、従来品については、いずれも質量は1.0gである。結果は、可視光照射については、表1に示すとおりであり、紫外線照射については、表2に示すとおりである。

【0062】
【表1】
JP2016136656A1_000007t.gif
【表2】
JP2016136656A1_000008t.gif

【0063】
表1に示すように、従来品では、可視光を照射しただけでは、水の分解による水素及び酸素を得ることはできなかった。これに対して、本発明品1~本発明品4のいずれにおいても、可視光の照射により、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0064】
また、表1に示すように、本発明品1~本発明品3においては、酸化チタン(TiO)のみにより構成される本発明品2や、酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の酸化ニッケル(II)(NiO)の粉末により構成される本発明品3よりも、酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末により構成されている本発明品1の方が、遙かに大量の、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0065】
また、表1に示すように、本発明品1、本発明品4においては、アナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンを有する本発明品4よりも、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを有する本発明品1の方が、より多くの、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0066】
また、表1に示すように、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末により構成される本発明品1、比較品1~比較品4においては、機能性キャビテーションMFCにより表面改質が行われた本発明品1は、機能性キャビテーションMFCによる表面改質が行われていない比較品1~比較品4に対して、3倍以上の、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0067】
また、表2に示すように、従来品では、紫外線の照射により得られる、水の分解による水素及び酸素の量は僅かである。これに対して、本発明品1~本発明品4のいずれにおいても、紫外線光の照射により得られる、水の分解による水素及び酸素の量は、従来品よりも遙かに多いことが分かる。特に、本発明品1では、従来品と比較して、25倍以上の水素を得られることが分かる。

【0068】
また、表2に示すように、本発明品1~本発明品3においては、酸化チタン(TiO)のみにより構成される本発明品2や、酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の酸化ニッケル(II)(NiO)の粉末により構成される本発明品3よりも、酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末により構成されている本発明品1の方が、遙かに大量に、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0069】
また、表2に示すように、本発明品1、本発明品4においては、紫外線を照射した場合には、水素については可視光を照射した場合とは逆の結果が得られることが分かる。具体的には、アナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンを有する本発明品4の方が、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを有する本発明品1よりも、より多くの、水の分解による水素を得ることができることが分かる。酸素については、可視光を照射した場合と同様の結果が得られることが分かる。

【0070】
また、表2に示すように、90.9重量%のルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO)の粉末及び9.1重量%の白金の粉末により構成される本発明品1、比較品1~比較品4においては、機能性キャビテーションMFCにより表面改質が行われた本発明品1は、機能性キャビテーションMFCによる表面改質が行われていない比較品1~比較品4に対して、3倍以上の、水の分解による水素及び酸素を得ることができることが分かる。

【0071】
上述した実施形態1の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法によれば、以下のような効果を奏する。前述のように、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法は、水中に浸漬させた噴射ノズル20からウォータージェットを噴射させると共に、ウォータージェットの噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、流動キャビテーションが膨張可能な、流動キャビテーションの流速が所定の移動速度以下になる位置に超音波U1を照射して、超音波U1の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ流動キャビテーションの高温反応場を噴射ノズル20から離間した位置に分布させる。

【0072】
上記構成により、超音波U1の照射により、流動キャビテーションの核の拡散・膨張の後に核が収縮し圧壊する際に、体積減少を起こして、酸化チタン等の物質の固体表面に突き刺さるような高速ジェットを発生させて、酸化チタン等の物質の表面改質を促進させることができる。これにより、例えば、酸化チタンの表面を多孔質状にすることができ、また、多孔質状とされた酸化チタンの表面に、白金の粒子が酸化チタンに包み込まれるような状態で、白金を酸化チタンに坦持されている状態とすることができる。また、紫外線のみならず、可視光によっても、効果的に水を水素と酸素とに分解することができる光触媒を得ることができる。

【0073】
また、流動キャビテーションの移動速度は、5m/s以下である。この構成により、ブレーク閾値ABlakeを1bar(大気圧)に等しくすることができ、キャビテーションの核を容易に膨張させることが可能になる。

【0074】
また、超音波U1の周波数は、20kHz以上33kHz以下である。この構成により、ウォータージェットキャビテーションのサイズである100μm以上の気泡の共振周波数と同様の周波数の超音波U1を、流動キャビテーションに対して照射することができる。この結果、キャビテーションの核を容易に膨張させることが可能になる。これにより、超音波U1の周波数帯域のうちのいずれかの周波数を用いて、機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法を実施することができる。

【0075】
また、超音波U1を照射する超音波照射素子30からウォータージェットまでの距離は、超音波U1の5波長以下である。この構成により、超音波U1を十分な強度でウォータージェットに対して照射することができる。この結果、機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを効果的に発生させることができる。

【0076】
また、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法では、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを、物質としての酸化チタン及び白金に衝突させる。

【0077】
上記構成により、機能性キャビテーションMFCにより酸化チタン及び白金の表面を多孔質として、機械的に(幾何学的に)変化させることが可能であることのみならず、バンドギャップを低減してバンド構造を変化させ、エネルギー変換効率を向上させることができる。
即ち、半導体電極として酸化チタン(TiO)、金属電極として白金(Pt)を用い、半導体電極に紫外線を照射すると、本多-藤嶋効果により、半導体電極から酸素(O)が発生し、金属電極から水素(H)が発生する。このとき金属電極には、-0.5V程度の外部バイアス電圧をかける必要があったが、水の理論電解電圧1.23Vよりも遥かに低い電圧で、水が水素と酸素とに分解される。
機能性キャビテーションMFCによる表面処理を酸化チタンにより構成される半導体電極や白金により構成される金属電極に施すと、バイアス電圧なしで水の光分解を起こすことが可能となる。また紫外線の照射のみならず、可視光(太陽光)の照射によっても、高いエネルギー変換効率で水素を発生させることが可能となる。また、機能性キャビテーションMFCによる物質の表面改質による高機能化を、酸化チタンや白金のみならず、他分野の物質にも適用可能である。

【0078】
また、物質は、ルチル型又はアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタン、白金、及び、酸化ニッケル(II)のうちから選択された少なくとも1つにより構成される。酸化チタンの粒子は、100nm以上400nm以下の粒径を有する。白金、又は、酸化ニッケル(II)の粒子は、0.1μm以上85μm以下の粒径を有する。この構成により、光触媒による水の水素と酸素とへの分解を行う際の半導体電極及び金属電極として、エネルギー変換効率の高い半導体電極及び金属電極を構成することができる。

【0079】
(実施形態2)
次に、本発明に係る機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法について説明する。実施形態2では、ウォータージェットが被衝突物に対して噴出され衝突される点において、実施形態1とは異なる。これ以外の点については、実施形態1と同一であるため、同一の部材については、同一の符号を付すこととし、説明を省略する。図12は、本発明による実施形態2の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法を示す概略図である。

【0080】
図12に示すように、被衝突物41Aは、例えば、平坦な板状又は湾曲した板状のステンレス鋼により構成される。機能性キャビテーションMFC発生条件については、実施形態1と同一である。ウォータージェットは、図12に示す被衝突物41Aの上面に対して噴出され衝突する。これより、被衝突物41Aの上側の周辺に2次噴流が発生し、ウォータージェットによる水の流動速度が弱められ、圧力が低下させられる。このように、流動速度が弱められ、圧力が低下させられたウォータージェットに対して、実施形態1と同様の超音波U1の照射が行われ、この結果、機能性キャビテーションMFCが発生する。

【0081】
上述した実施形態2の、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法によれば、以下のような効果を奏する。前述のように、噴射ノズル20から噴射されるウォータージェットを被衝突物41Aに衝突させることによって被衝突物41Aの周辺に生じる2次噴流の流動キャビテーションに対して、超音波U1を照射することにより、高温反応場を含んだ流動キャビテーションの高温反応場を、被衝突物41Aの周辺に発生させる。この構成により、ウォータージェットの圧力を適度に抑えることができ、この結果、機能性キャビテーションMFCを高効率で発生させることができる。

【0082】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法について説明する。実施形態3では、表面改質される物質として、酸化チタン及び白金に代えて、ガス吸着が少なく、高い耐酸化性及び耐食性が要求される物質が用いられる点において、実施形態1とは異なる。これ以外の点については、実施形態2と同一であるため、同一の部材については、同一の符号を付すこととし、説明を省略する。

【0083】
表面改質される物質としては、例えば、炭素鋼SS400により構成される板材が用いられる。炭素鋼SS400により構成される物質である板材は、実施形態2における被衝突物41Aが配置された位置に、被衝突物41Aに代えて配置される。そして、物質流入流路24が閉じられて副流が発生しない状態で、炭素鋼SS400により構成される板材には、ウォータージェット噴流が衝突させられる。機能性キャビテーションMFC発生条件については、実施形態1と同一である。これにより、炭素鋼SS400により構成される物質の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる、機能性キャビテーションMFCによる機械的及び電気化学的な表面改質が施される。炭素鋼SS400の板材においては、ステンレス並みに、ガス吸着が少なく、耐酸化性及び耐食性が高い不活性表面が生成される。

【0084】
上述した実施形態3の、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法によれば、以下のような効果を奏する。前述のように、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法では、物質としての炭素鋼SS400の表面において、ガス吸着が少なく、耐酸化性及び耐食性が高い不活性表面を生成する。このため、従来では、ガス吸着が多く、また、耐酸化性及び耐食性が低いために用いることができなかった物質を、ガス吸着が少なく、また、耐酸化性及び耐食性の高い物質として有効利用することができる。例えば、上述のように、安価な炭素鋼SS400を、ガス吸着が少なく、耐酸化性及び耐食性の高い物質である高価なステンレス鋼に代えて用いることができる。

【0085】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る、レアメタルを剥離する方法について説明する。実施形態4では、液晶ディスプレイの透明電極に用いられるITO膜に対して、機能性キャビテーションMFCが作用する点において、実施形態3とは異なる。これ以外の点については、実施形態3と同一であるため、同一の部材については、同一の符号を付すこととし、説明を省略する。

【0086】
ITO膜は、酸化インジウム(III)(In)と酸化スズ(IV)(SnO)とが融合されて構成されており、ITO膜の融点は、1800K~2200K程度である。ITO膜は、被覆物としてのガラス基板に蒸着させられて形成され、ITO膜の厚さは90nm程度であり、これにより、透明電極が構成されている。ガラス基板とともにITO膜は、実施形態1の装置のリアクター10に貯留されている水道水W1に浸漬させられる。そして、ガラス基板とともにITO膜は、ウォータージェット及び超音波U1により発生する機能性キャビテーションMFCに晒される。

【0087】
機能性キャビテーションMFCにITO膜を晒すことにより得られた結果は、図13に示す通りである。図13は、本発明による実施形態4のレアメタルの剥離方法により、ITO膜が部分的に剥離された様子を示す電子顕微鏡写真である。機能性キャビテーションMFCの発生条件は、実施形態1と同一である。図13に示すように、図13の上側約3分の1の白い部分は、機能性キャビテーションMFCに晒されていない。このため、ITO膜がそのままガラス基板上に残留している。

【0088】
これに対して下側約3分の2の部分は、機能性キャビテーションMFCに晒されている。このため、この部分については、ITO膜、及び、ガラス基板を構成するライムソーダガラス(SO、NaCO、CaCO)の成分を含んだ微粒子が形成されている。ライムソーダガラスの融点は、約1270Kであることから、機能性キャビテーションMFCにおいては、ライムソーダガラスの融点を超える高温に達しており、また、レアメタルであるInとSnOにより構成されるITO膜を、容易に剥離することができることが分かる。このため、機能性キャビテーションMFCをレアメタル回収に有効的に活用することができることが分かる。

【0089】
一方、実施形態1において超音波U1を照射しない流動キャビテーションのみに、ガラス基板とともにITO膜を晒した場合には、ITO膜は、ガラス基板から剥離されることはなく、全体において、図13の上側約3分の1の部分と同様の状態のままであった。

【0090】
上述した実施形態4の、レアメタルを剥離する方法によれば、以下のような効果を奏する。前述のように、レアメタルを剥離する方法では、実施形態1における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法により発生した機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを、レアメタルにより構成されるITO膜が蒸着された被覆物としてのガラスの表面に衝突させて、ガラスの表面からITO膜を剥離する。この構成により、高価であり、融点が高くガラス基板等の下地からの剥離が容易でないレアメタルにより構成されるITO膜を、容易に下地から剥離して、回収することができる。

【0091】
次に、上述した実施形態4において、噴射ノズル20からITO膜までの距離を変えることにより、流動キャビテーションの流速を変えて、ITO膜の剥離を行った。具体的には、流動キャビテーションの流速が、図14に示すように、それぞれ、(A)5m/s、(B)21m/s、(C)80m/s、(D)120m/sである位置に対して、超音波U1を照射し、ITO膜が剥離される様子を観察した。機能性キャビテーションMFCの発生条件は、実施形態1と同一である。図14は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験におけるブレーク閾値と流速との関係を示すグラフである。

【0092】
得られた結果は、図15~図18に示すとおりである。図15は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が4.5m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図16は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が21m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図17は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が80m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。図18は、本発明による実施形態1の機械的及び電気化学的キャビテーションMFCを発生させる方法による効果を試す試験において、流動キャビテーションの流速速度が120m/sの場合の試験結果を示す電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。

【0093】
図15に示すように、流動キャビテーションの流速が5m/sの場合には、図15の左側約3分の1の白い部分は、機能性キャビテーションMFCに晒されていない。このため、ITO膜がそのままガラス基板上に残留している。これに対して図15の右側約3分の2の部分は、機能性キャビテーションMFCに晒されている。このため、この部分については、ITO膜、及び、ガラス基板を構成するライムソーダガラス(SO、NaCO、CaCO)の成分を含んだ微粒子が形成されている。このため、レアメタルであるInとSnOにより構成されるITO膜を、容易に剥離することができることが分かる。

【0094】
これに対して図16に示すように、流動キャビテーションの流速が21m/sの場合には、ITO膜が蒸着された被覆物としてのガラスの表面が、多孔質状に改質されているものの、流動キャビテーションの流速が5m/sの場合のように、一様に、ITO膜、及び、ガラス基板を構成するライムソーダガラス(SO、NaCO、CaCO)の成分を含んだ微粒子が形成されるには至っておらず、ITO膜を十分に剥離することができないことが分かる。

【0095】
また、図17に示すように、流動キャビテーションの流速が80m/sの場合には、ITO膜が帯状に損傷しているものの、流動キャビテーションの流速が5m/sの場合のように、一様に、ITO膜、及び、ガラス基板を構成するライムソーダガラス(SO、NaCO、CaCO)の成分を含んだ微粒子が形成されるには至っておらず、ITO膜を十分に剥離することができないことが分かる。

【0096】
また、図18に示すように、流動キャビテーションの流速が120m/sの場合には、部分的にITO膜が損傷しているものの、流動キャビテーションの流速が5m/sの場合のように、一様に、ITO膜、及び、ガラス基板を構成するライムソーダガラス(SO、NaCO、CaCO)の成分を含んだ微粒子が形成されるには至っておらず、ITO膜を十分に剥離することができないことが分かる。

【0097】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係る、重水素の核融合反応を発生させる方法について説明する。実施形態5では、水道水W1及び高圧水W2に代えて、重水、もしくは、重水素を含む液体が用いられる点において、実施形態1とは異なる。これ以外の点については、実施形態1と同一であるため説明を省略する。

【0098】
重水、もしくは、重水素を含む液体に浸漬された噴射ノズル20から重水、もしくは、重水素を含む液体を噴射させると共に、重水もしくは重水素を含む液体の噴射に伴い生じる流動キャビテーションに対して、流動キャビテーションの流速が5m/s以下になる位置に超音波照射素子30から超音波U1を照射する。これにより、超音波の照射で膨張・収縮を繰り返すことにより生ずる、高温反応場を含んだ流動キャビテーションの高温反応場を噴射ノズルから離間した位置に分布させ、当該分布した位置において、キャビテーションの崩壊により重水素の核融合反応を発生させる。

【0099】
本発明に係る機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法、物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法、レアメタルを剥離する方法、機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置、及び、重水素の核融合反応を発生させる方法は、上述した実施形態1~4の内容に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能である。

【0100】
例えば、機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法に用いられる装置の構成は、上述の実施形態の装置の構成に限定されない。例えば、噴射ノズルは、ホーンノズルにより構成されていたが、これに限定されない。例えば、他の形状を有するノズルにより構成されてもよい。また、例えば、超音波照射素子30は、鉛直下方へ噴射されるウォータージェットに対して、水平の方向からウォータージェットに対して超音波U1を照射したが、この構成に限定されない。例えば、超音波U1は、ウォータージェットに対して平行に近い方向から照射してもよい。また、本実施形態では、水道水W1が用いられたが、これに限定されない。例えば、水中の次亜塩素酸ナトリウム等の不純物元素との反応を防止する必要がある場合には、水道水に代えて、超純水や純水を用いてもよい。例えば重水素の核融合反応を発生させる場合は、水道水に代えてアセトン等の有機溶剤を用いてもよい。

【0101】
また、実施形態2における機械的及び電気化学的キャビテーションを発生させる方法では、被衝突物41Aは、例えば、平坦な板状又は湾曲した板状のステンレス鋼により構成されたが、これに限定されない。また、実施形態3における物質の表面の幾何学的形状および電気化学的性質を変化させる方法では、表面改質される物質としては、炭素鋼SS400の板材が用いられたが、これに限定されない。また、実施形態4におけるレアメタルを剥離する方法では、ITO膜がガラス基板から剥離されたが、これに限定されない。即ち、レアメタルは、ITO膜に限定されず、また、被覆物は、ガラス基板に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、流動キャビテーションの高温反応場を利用する分野において利用可能であり、例えば、物質の表面を研磨したり、物質の表面を多孔化したりすることによって、物質の表面を改質する分野や、高温反応場における核融合反応の分野等において、広く応用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 機械的及び電気化学的キャビテーションの発生装置
20 噴射ノズル
30 超音波照射素子
41A 被衝突物
MFC 機能性キャビテーション(機械的及び電気化学的キャビテーション)
U1 超音波
W1 水道水
W2 高圧水
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17