TOP > 国内特許検索 > 銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法 > 明細書

明細書 :銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-002034 (P2019-002034A)
公開日 平成31年1月10日(2019.1.10)
発明の名称または考案の名称 銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法
国際特許分類 C25D   7/00        (2006.01)
C25D   3/38        (2006.01)
FI C25D 7/00 R
C25D 3/38 101
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2017-115544 (P2017-115544)
出願日 平成29年6月13日(2017.6.13)
新規性喪失の例外の表示 新規性喪失の例外適用申請有り
発明者または考案者 【氏名】新井 進
【氏名】清水 雅裕
【氏名】小笠原 孝之
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4K023
4K024
Fターム 4K023AA19
4K023BA06
4K023CB19
4K023DA02
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA09
4K024BA11
4K024BC08
4K024BC10
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA04
4K024CA06
要約 【課題】 酸性めっき浴を用いて、銅・単層カーボンナノチューブの複合めっきを可能にする複合めっき方法を提供する。
【解決手段】 酸性のめっき浴を使用し、電解銅めっき方法により単層カーボンナノチューブの複合銅めっき膜を作製する銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法であって、前記酸性のめっき浴(例えば硫酸銅めっき浴)に、分散剤としてカチオン系の界面活性剤(例えばSTAC)を添加してめっきすることを特徴とする。
【選択図】 図9
特許請求の範囲 【請求項1】
酸性のめっき浴を使用し、電解銅めっき方法により単層カーボンナノチューブの複合銅めっき膜を作製する銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法であって、
前記酸性のめっき浴に分散剤としてカチオン系の界面活性剤を添加してめっきすることを特徴とする銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法。
【請求項2】
前記酸性のめっき浴として、硫酸銅のめっき浴を使用することを特徴とする請求項1記載の銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法。
【請求項3】
前記分散剤として、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)を使用することを特徴とする請求項1または2記載の銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法。
【請求項4】
前記単層カーボンナノチューブとして、径約2nm、長さ数μm~10μmである単層カーボンナノチューブを使用することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法に関し、より詳細には、電解めっき法により酸性めっき浴を用いて、銅・単層カーボンナノチューブ複合めっきを施す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅(Cu)は電気伝導性、熱伝導性に優れた金属であり、この性質を活かして銅めっきはエレクトロニクス産業に幅広く利用されている。近年では電子デバイスの高性能化のため更なる熱伝導性と電流耐性の向上が求められている。他方、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は熱伝導性、電気伝導性,機械的強度において優れており、これを銅と複合化することで熱伝導性の一層の向上が期待できる。
【0003】
本発明者は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いる複合めっきについて報告している(特許文献1、特許文献2)。このMWCNTを用いる複合めっきにおいては、硫酸銅浴を用いる電解銅めっき法により、銅めっき膜中に多層カーボンナノチューブを確実に取り込むことができることを示している。この多層カーボンナノチューブの複合めっきにおいては、分散剤としてポリアクリル酸を使用した。
【0004】
ところで、近年、多層カーボンナノチューブにかえて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を対象として複合めっきする方法について検討が始められている。単層カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブとは異なる電気的特性、機械的特性を備えるから、SWCNTの複合めっきはMWCNTの複合めっきとは異なる用途への利用展開を見込むことができる。
特許文献3には、銅・単層カーボンナノチューブの複合めっき方法として、イオン性界面活性剤と高分子系界面活性剤を使用し、アルカリ浴を用いて電解めっきあるいは無電解めっきにより複合めっきを施す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4032116号公報
【特許文献2】特許第4599565号公報
【特許文献3】国際公開2016/013219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単層カーボンナノチューブを用いる銅複合めっきについては、めっき浴中で単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分散させることができるかという問題と、めっき浴中でSWCNTが分散したとして、めっき膜中にSWCNTを共析させることができるか、という問題がある。
多層カーボンナノチューブと比べてSWCNTははるかに細径であり、きわめて凝集しやすく通常はバンドル状となっていて、めっき浴中でSWCNTを分散させることはきわめて困難である。また、仮にめっき浴中でSWCNTを分散させることができたとしても、めっき膜にSWCNTを共析させることができるとは限らない。
【0007】
また、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブを複合材料として見た場合、従来の多層カーボンナノチューブの複合めっきにおいて有効に使用することができた分散剤(ポリアクリル酸)を適用しても、SWCNTの複合めっきではSWCNTはめっき膜に共析しない。このような実験結果からも分かるように、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブとは複合めっき材料としての性質が大きく異なり、同様なカーボンナノチューブ材として類型化することができるものではなく、むしろ異質な材料であると考えられるものである。
【0008】
本件発明者は、単層カーボンナノチューブについての複合めっき方法について継続して研究を続けてきている。この研究過程において実用可能はSWCNTの複合めっきが可能であった例は、アルカリ浴を用いて複合めっきする方法であり、酸性浴を用いるSWCNTの複合めっきはできていなかった。しかしながら、アルカリ浴を用いる電解銅めっき方法では、めっき膜中に酸化銅が生じるため、めっき膜の電気的特性が劣化するという品質上の問題がある。また、めっき膜から酸化銅を除去するため、酸処理をするといったことも可能であるが、後処理が面倒であったり、めっき膜中の酸化銅までは除去することができないという問題があった。
【0009】
また、無電解めっきは成膜速度が遅いという問題があることから、本発明は、電解めっき法を利用し、銅めっき方法として最も一般的な酸性めっき浴(たとえば硫酸銅浴)を使用し、SWCNTを複合材料として確実に複合めっきを施すことができる銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る銅・単層カーボンナノチューブの複合めっき方法は、酸性のめっき浴を使用し、電解銅めっき方法により単層カーボンナノチューブの複合銅めっき膜を作製する銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法であって、前記酸性のめっき浴に分散剤としてカチオン系の界面活性剤を添加してめっきすることを特徴とする。
また、前記酸性のめっき浴として、硫酸銅のめっき浴を使用することにより、めっき膜中に好適に単層カーボンナノチューブが共析した複合めっき膜を得ることができる。
また、前記酸性のめっき浴に添加するカチオン系の界面活性剤は、とくに限定されるものではないが、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)はとくに好適に用いることができる。
また。複合材料として用いる単層カーボンナノチューブは、とくにその種類が限定されるものではないが、径約2nm、長さ数μm~10μmである単層カーボンナノチューブはめっき膜の面方向にならってめっき膜中に共析されるという特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る銅・単層カーボンナノチューブの複合めっき方法によれば、硫酸銅浴等の酸性めっき浴を使用して、めっき膜中にSWCNTを好適に取り込んだ複合めっき膜を確実にかつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】多数本のSWCNTが凝集している状態を示すSEM像である。
【図2】媒質中におけるSWCNTの分散状態を示す写真である。
【図3】SWCNTを化学修飾した状態(a)と物理修飾した状態(b)を示す図である。
【図4】デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を純水、硫酸銅浴に加えてSWCNTの分散性について試験した結果を示す写真である。
【図5】硫酸銅浴にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ポリアクリル酸(PAA)、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)を添加し、SWCNTを加えて分散性を評価した結果を示す写真である。
【図6】銅/SWCNTめっき複合膜を作製する手順を示す説明図である。
【図7】SWCNTを分散させた硫酸銅浴の分散安定性を評価する実験を行った結果を示す写真である。
【図8】分散剤としてSDS、SDBS、PAA、ATACを添加した硫酸銅浴を用いて作製したSWCNTの複合めっき膜の表面の電子顕微鏡像(FE-SEM)である。
【図9】分散剤としてSDS、SDBS、PAA、STACを添加した硫酸銅浴を用いて作製したSWCNTの複合めっき膜の表面の電子顕微鏡像(FE-SEM)である。
【図10】銅めっき浴にアニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を添加したときの作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(SWCNTの分散性)
図1に、単層カーボンナノチューブを複合材料として銅・単層カーボンナノチューブ複合めっきの実験に使用したSWCNTのSEM像を示す。実験に使用した単層カーボンナノチューブはOCSiAL社製のTUBALL(登録商標)(外径1.8±0.3nm)である。このSWCNTは径寸法が2nm程度であり、多層カーボンナノチューブと比べると径寸法が1/10程度と小径である。一方、長さは数μm~10μm程度以上であり、径寸法と比較してきわめて長い形態となっている。

【0014】
図1に示すSWCNTは購入したサンプルを精製処理し、不純物を除去した状態のものである。図1からカーボンナノチューブ自体には欠陥が少ないことがわかる。また、精製した状態でSWCNTはバンドル状に凝集している。このようにSWCNTは強固に凝集しやすい性質があることから、SWCNTを単体として分散させることはきわめて困難である。

【0015】
また、SWCNTは疎水性のため水溶性のめっき液に分散させることが難しいという問題もある。
図2は、上述したSWCNTを水等に分散させた状態を示す。図2(a)は媒質を水とした場合である。SWCNTは疎水性であり水には分散せず沈殿する、図2(b)は媒質の水に分散剤としてHPC 1g L-1 + SDS 1 g L-1を添加した場合である。分散剤を添加した水にはSWCNTは問題なく分散する。図2(c)は水溶性のめっき浴である硫酸銅浴にSWCNTを添加したものである。SWCNTはめっき浴中で分散せず、容器内で沈殿する。図2(c)は、水溶性のめっき浴に単にSWCNTを加えたのではSWCNTは分散しないことを示す。

【0016】
SWCNTを媒質中で分散させる方法としては、たとえば酸化力のある酸でSWCNTを処理する化学修飾による方法と、分散剤等を用いる物理修飾による方法がある。
図3(a)はSWCNTを化学修飾した例を示す。たとえば、H2SO4/HNO3 にSWCNTを加えるとSWCNTの表面にカルボン酸等の親水基が導入され、SWCNTは水に分散する。
図3(b)は分散剤を用いて物理修飾した例を示す。SWCNTの分散剤にはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS)等がよく使われる。これらの分散剤によりミセルが形成されSWCNTが水に分散する。

【0017】
しかしながら、酸化力のある強酸を用いてSWCNTを処理すると、SWCNTに欠陥が生じるから、SWCNTが本来備える導電性や熱伝導性といった特性が阻害されるという問題がある。
また、分散剤を用いる電解銅めっき法によりSWCNTの複合めっきを行う方法として、アルカリ性のめっき浴を用いる方法は、酸性めっき浴を使用する方法と比較して成膜速度が遅いという問題と、めっき膜に水酸化物が形成され、めっき膜の特性が劣るという問題がある。そのため、成膜速度が速く、水酸化物が形成されにくい硫酸銅浴等の酸性めっき浴を用いて複合めっきを施す方法が求められる。

【0018】
(SWCNTの分散剤)
水溶性のめっき浴を用いる場合にSWCNTの分散に用いられる分散剤としては、純水中でカーボンナノチューブの分散に使用される分散剤が候補となる。純水中でカーボンナノチューブの分散に使用される分散剤として現在、最も一般的に用いられているものは、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)の3種である。DOC、SDS、SDBSの化学構造式を下に示す。
【化1】
JP2019002034A_000003t.gif

【0019】
図4は、上述したデオキシコール酸ナトリウム(DOC)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を純水と硫酸銅浴にそれぞれ添加してSWCNTの分散性について試験した結果を示す。
実験は、水100mLにそれぞれの分散剤を0.01435M(SDS: 0.4 g 、DOC:0.6 g 、SDBS:0.5 g)添加した後、SWCNT(OCSiAL社TUBALL(登録商標))をそれぞれ0.1g添加し、スターラーで攪拌した後、超音波処理を行い、その後の分散状態を経過観察したものである。

【0020】
図4の純水中におけるSWCNTの分散性について見ると、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)のいずれを添加したものも、SWCNTを添加した直後及び10日経過後において、SWCNTの分散性は良好であった。

【0021】
これに対し、硫酸銅浴に分散剤を添加してSWCNTを分散させた結果では、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を添加したものについては、10日経過後もSWCNTの分散性が良好に維持されたものの、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加したものではSWCNTが沈殿して分離する結果となった。
この実験結果は、硫酸銅浴中においてSWCNTの分散性を良好にするには、分散剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)が有効であることを示唆する。

【0022】
図4に示す実験結果は、DOCとSDSのように、純水中においてSWCNTの分散に有効に作用する分散剤が硫酸銅浴では必ずしもSWCNTの分散に有効に作用するとは限らないこと、また、SDBSのように純水と硫酸銅浴の双方でSWCNTの分散に有効に作用する分散剤もあること、また、DOCとSDSのように、硫酸銅浴中でSWCNTが分離する場合でも、分離度合いに差があるといったことを示す。
分散剤によるSWCNTの分散性にこのような差異が生じる理由は、中性の純水中における分散剤によるSWCNTの分散作用と、酸性の硫酸銅浴中における分散剤によるSWCNTの分散作用が異なることによるためであると考えられる。

【0023】
(硫酸銅浴におけるSWCNTの分散剤)
硫酸銅浴を用いて、電解めっきによりSWCNTの複合めっきを施す場合、めっき膜中にSWCNTを分散させて取り込むためには、少なくともめっき浴中でSWCNTが確実に分散する必要がある。
上述した図4に示す実験結果は、硫酸銅浴を用いてSWCNTの複合めっきを施す場合に使用することができる可能性のある分散剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)であることを示す。

【0024】
なお、硫酸銅浴を用いるSWCNTの複合めっきに使用できる可能性のあるSWCNTの分散剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)の他に、アルカリ性のめっき浴でSWCNTの分散剤として本発明者が使用しているポリアクリル酸(PAA)とトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)が挙げられる。PAAとSTACの化学構造式を下に示す。
【化2】
JP2019002034A_000004t.gif

【0025】
図5は、硫酸銅浴にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ポリアクリル酸(PAA)、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)をそれぞれ添加し、SWCNTを加えて超音波処理した直後の状態を示す。なお、実験ではこれらの分散剤の他に、SWCNTの分散剤としてよく利用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加したサンプルについても評価した。
実験条件
SDS、SDBS、PAA、STACの硫酸銅浴への添加量: 2.9×10-4M
HPCの硫酸銅浴への添加量: 0.1gL-1
SWCNT:OCSiAL社製TUBALL(登録商標)
攪拌操作:分散剤とSWCNTを加えた硫酸銅浴をスターラーでの攪拌 1日
超音波処理:攪拌後の硫酸銅浴を超音波ホモジナイザー処理 15分

【0026】
図5の実験結果は、分散剤としてポリアクリル酸(PAA)を添加したものが、わずかにSWCNTが分離することを示す。また、分散剤としてHPCを加えたものでは、SWCNTがかなり分離し分散性に劣ることが分かった。
したがって、硫酸銅浴を用いるSWCNTの複合めっきの実験では、分散剤としてHPCを加える複合めっきの実験は行わず、分散剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ポリアクリル酸(PAA)、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)を分散剤として複合めっきを行った。

【0027】
<複合めっき;実験例>
図6に、銅・単層カーボンナノチューブ複合めっきの操作手順を示す。
実験で使用したSWCNTはOCSiAL社製TUBALL(登録商標)である。使用したSWCNTサンプルの仕様を下に示す。
平均内径:1.5±0.4 nm
長さ:5~μm
炭素含有量:85~mass%
CNT含有量:75~mass%
不純物:~15mass%
使用したサンプルには、カーボンナノチューブ以外の不純物が含まれているため、まずサンプルから不純物を除去する精製処理を行い、不純物を除去した後のSWCNTを複合めっきに使用した。

【0028】
SWCNTから不純物を除去する処理は酸処理により行った。具体的には、まず、塩酸50mLを収容した容器にサンプルのSWCNTを1g投入し、超音波処理を10分間行った。
次いで、超音波処理後の分散液を吸引ろ過装置にセットし、吸引ろ過処理を行った。この吸引ろ過処理によりSWCNTの分散液から媒質が除去され、フィルタ上にSWCNTが残留する。
次に、残留したSWCNTを真空乾燥し、粉末状のSWCNTを得た。真空乾燥は、真空乾燥装置を用いて110℃、2時間行った。

【0029】
硫酸銅めっき浴の調製は次のようにして行った。
硫酸銅のめっき液300mLに対し、実験で使用する4種類の分散剤(SDS、SDBS、PAA、STAC)を添加し、精製処理により得られた不純物を除去したSWCNTを0.03g添加した。
次いで、SWCNTを分散させる操作として、まずスターラー攪拌を1日行い、次いで超音波ホモジナイザーによる超音波処理を15分間行った(分散処理)。SWCNTを分散させる処理により、硫酸銅めっき浴の液色は黒色の外観を呈した。
この段階で、硫酸銅のめっき浴におけるSWCNTの分散性を評価した。
次いで、電解めっき装置のめっき槽に、分散剤とSWCNTを含む硫酸銅のめっき液をそれぞれ投入し、銅板をカソードとしてSWCNTの複合めっきを施した(めっき処理)。めっき膜については電界放出走査型電子顕微鏡(FE-SEM)により評価した。

【0030】
(硫酸銅浴における分散安定性の評価)
図7は、SWCNTを分散させた硫酸銅浴の分散安定性を評価する実験を行った結果を示す。
分散安定性の評価は、分散剤を添加した硫酸銅のめっき液にSWCNTを加えて分散させた後、分散液を静置してSWCNTの分散の様子を1日後、4日後で観察する方法で行った。

【0031】
図7では、4種の分散剤(SDS、SDBS、PAA、STAC)を加えた場合と、分散剤を加えていない場合についての実験結果を示す。
分散剤を加えていないものは、分散処理を行った直後は、めっき液は全体が均一な黒色を呈しSWCNTは全体として分散しているが、1日経過するとSWCNTが完全に分離して沈殿する。

【0032】
分散剤として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加したものは、分散処理後1日でSWCNTが分離しはじめた。
分散剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を添加したものは、分散処理から4日経過しても、めっき液全体が均一な黒色を呈しており、SWCNTの分散性がきわめて良いことが分かる。
分散剤として、ポリアクリル酸(PAA)を添加したものは、分散処理から1日経過した時点でSWCNTがかなり沈殿している。このPAAを添加しためっき液におけるSWCNTの分散性は4種の分散剤(SDS、SDBS、PAA、STAC)のうちでは最も劣っている。
分散剤として、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)を添加したものは、分散処理から4日経過した時点でSWCNTが分離しはじめた。STACを添加しためっき液は4種の分散剤のうちでは、SDBSを添加したものに次いで、SWCNTの分散性が良好であるという結果となった。

【0033】
(めっき浴組成とめっき条件)
上述した4種類の分散剤SDS、SDBS、PAA、STACを使用してSWCNTを分散処理した直後の硫酸銅のめっき浴を、電解めっき装置のめっき槽に投入し、電解銅めっき法により銅板上に複合めっきを施した。
以下に、実験時の浴組成とめっき条件を示す。
浴組成
試薬 濃度
CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
SWCNT 0.1(gL-1)
分散剤 SDS 2.9×10-4 M
SDBS 2.9×10-4 M
PAA 2.9×10-4 M
STAC 2.9×10-4 M
めっき条件
基板 Cu
陽極 Cu
電流密度 10mAcm-2
通電量 27Ccm-2
めっき時間 45min
浴温 25℃
攪拌 あり

【0034】
(めっき膜の評価)
図8は、分散剤としてSDS、SDBS、PAA、ATACを使用した硫酸銅浴を用いて作製したSWCNTの複合めっき膜の表面の電子顕微鏡像(FE-SEM)であり、図9は、電子顕微鏡像の倍率を拡大したものである。
図9で、分散剤としてSDS、SDBS、PAAを使用したものについては、SEM像中に破線で示した範囲にのみSWCNTが存在する。すなわち、これらの分散剤(SDS、SDBS、PAA)を使用して複合めっきを施したサンプルでは、破線で囲んだ範囲に僅かにSWCNTが見えているのみでめっき膜に十分にSWCNTが共析しない結果となった。

【0035】
一方、分散剤としてSTACを使用したサンプルでは、図9に示すように、めっき膜の全体に均一に、網目状にSWCNTが取り込まれており、SWCNTが効率的にかつ確実に取り込まれていることがわかる。また、SWCNTはめっき膜に取り込まれた状態で、めっき膜の表面にならって取り込まれ、めっき膜の表面からSWCNT(端部)が突出する形態が見られない。
多層カーボンナノチューブを複合材料とする複合めっき膜では、カーボンナノチューブの端部がめっき膜から突出する形態がしばしば見られるのに対して対照的である。

【0036】
SWCNTの複合めっきでめっき膜の表面からSWCNTが突出せずにめっきされている理由は、SWCNTがきわめて細長い形態(径寸法が約2nm、長さ数μm~10μm以上)で、多層カーボンナノチューブとくらべて変形しやすく、めっき膜が面的に成長するにしたがって面方向にならうようにしてめっき膜中に取り込まれやすいためと考えられる。これに対して、多層カーボンナノチューブはSWCNTとくらべてはるかに太く、短く、アスペクト比が小さいため、針のようにめっき膜中に埋設されて取り込まれるためと考えられる。

【0037】
(めっき液とSWCNTの共析との関係)
図8、9に示したSWCNTの複合めっき膜のSEM像と、図7に示した硫酸銅のめっき液中におけるSWCNTの分散安定性についての実験結果を比較すると、めっき液中におけるSWCNTの分散安定性と、複合めっき膜に取り込まれるSWCNTの含有量とは相関関係がないことが分かる。すなわち、硫酸銅のめっき液中におけるSWCNTの分散安定性に基づけば、4種の分散剤のうちでは、分散剤SDBSを使用した場合に最もSWCNTの取り込み量が多くなることが予想される。しかしながら、実際には分散剤SDS、SDBS、PAAを使った硫酸銅のめっき液については、いずれもSWCNTはほとんど取り込まれず、唯一、分散剤STACを添加した硫酸銅のめっき浴を使用した場合にのみSWCNTが取り込まれている。

【0038】
これらの4種の分散剤を使用した硫酸銅めっき浴とSWCNTの取り込み量の差異が生じる理由としては、これらの分散剤が水中で解離したときのイオン性を考慮することで説明することができる。
すなわち、4種の分散剤のうち、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)はアニオン性、ポリアクリル酸(PAA)はノニオン性、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)はカチオン性である。したがって、これらの分散剤を硫酸銅のめっき液に添加したときに、使用した分散剤によってSWCNTが帯びる電荷が異なるという作用が生じる。

【0039】
図10に、アニオン性界面活性剤であるSDBS、SDSを添加した場合と、カチオン性界面活性剤であるSTACを添加した場合の作用を説明的に示した。
図10に示すように、硫酸銅のめっき液にアニオン性界面活性剤を添加すると、SWCNTの表面に界面活性剤が吸着することでSWCNTはマイナスの電荷を帯びる。したがって、この場合、SWCNTは電極(マイナス)に対しては静電的に斥力が作用し、Cuイオンは電極上に析出するものの、マイナスに荷電したSWCNTは電極に取り込まれることが抑制される。

【0040】
一方、カチオン性界面活性剤を添加した場合は、SWCNTの表面に界面活性剤が吸着されSWCNTがプラスに帯電する。この結果、SWCNTに対しては電極(マイナス)に向かう静電的な引力が作用し、Cuイオンとともに電極(基板)SWCNTが取り込まれるようになる。また、SWCNTがプラスに帯電することで、相互に分散した状態でめっき膜に取り込まれる。

【0041】
なお、ノニオン系の界面活性剤であるPAAを添加した場合は、めっき膜でSWCNTが共析していた個所が局所的であることと、SWCNTがバンドル状態のまま析出している部位が確認できた。この実験結果は、ノニオン系界面活性剤ではSWCNTを細かく分散させる機能が不十分であり、アニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤の作用の中間的な作用であることを示しているものと考えられる。

【0042】
上述したカチオン系の界面活性剤による作用は、酸性のめっき液である硫酸銅のめっき液にカチオン系の界面活性剤であるトリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)を添加することにより、めっき膜中に効率的にSWCNTが取り込まれ、また、SWCNTが凝集せずに相互に分散した状態で取り込まれる理由を説明することができる。
したがって、酸性のめっき浴を利用して電解銅めっき法によりSWCNTをめっき膜に取り込む方法として、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド(STAC)に限らず、カチオン系の界面活性剤を使用することで同様にSWCNTを分散させてめっき膜に共析させることが可能である。カチオン系の界面活性剤としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム,臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムなどがある。塩化セチルトリメチルアンモニウムと臭化セチルトリメチルアンモニウムの化学構造式を下に示す。
【化3】
JP2019002034A_000005t.gif

【0043】
また、電解銅めっき方法において、酸性のめっき浴としては硫酸銅浴が広く使用されているが、酸性めっき浴としては硫酸銅浴以外にクエン酸浴、ホウフッ化銅浴等がある。
また、上記実施形態では単層カーボンナノチューブとして、OCSiAL社製TUBALL(登録商標)を使用したが、本発明に係る銅・単層カーボンナノチューブ複合めっき方法おいては、複合めっきに使用する単層カーボンナノチューブが上記実験で使用した単層カーボンナノチューブに限られるものではない。


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9