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明細書 :磁性被覆コイル及びこれを用いたトランス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-009177 (P2019-009177A)
公開日 平成31年1月17日(2019.1.17)
発明の名称または考案の名称 磁性被覆コイル及びこれを用いたトランス
国際特許分類 H01F  27/28        (2006.01)
H01F  30/10        (2006.01)
FI H01F 27/28 Z
H01F 30/10 M
H01F 30/10 R
H01F 30/10 C
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2017-121295 (P2017-121295)
出願日 平成29年6月21日(2017.6.21)
発明者または考案者 【氏名】水野 勉
【氏名】卜 穎剛
【氏名】山本 達也
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5E043
Fターム 5E043AA09
5E043AB02
要約 【課題】 巻線として平角線を用いたコイル及びこれを用いたトランスであって、高周波領域における表皮効果及び近接効果を効果的に抑制して交流抵抗を低減させ、小型化、高効率化を可能とする磁性被覆コイル及びこれを用いたトランスを提供する。
【解決手段】 本発明に係る磁性被覆コイルは、平角線をコイル状に巻回した平角線コイルの、前記平角線の幅方向の両側面に対応する両側面に、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が設けられていることを特徴とする。
平角線コイル10が、エッジワイズコイルであり、平角線コイル10の内周面と外周面の全面が、磁性被覆体12により一体的に遮蔽された構成、平角線コイルが、平角線のフラット巻きコイルであり、平角線コイルの両側面の全面が、前記磁性被覆体により一体的に遮蔽された構成とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
平角線をコイル状に巻回した平角線コイルの、前記平角線の幅方向の両側面に対応する両側面に、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。
【請求項2】
前記平角線コイルが、エッジワイズコイルであり、
前記平角線コイルの内周面と外周面の全面が、前記磁性被覆体により一体的に遮蔽されていることを特徴とする請求項1記載の磁性被覆コイル。
【請求項3】
前記平角線コイルが、平角線のフラット巻きコイルであり、
前記平角線コイルの両側面の全面が、前記磁性被覆体により一体的に遮蔽されていることを特徴とする請求項1記載の磁性被覆コイル。
【請求項4】
前記平角線コイルが、平角線のスパイラル形コイルであり、
前記平角線の幅方向の両側面が、全長にわたり前記磁性被覆体により被覆されていることを特徴とする請求項1記載の磁性被覆コイル。
【請求項5】
平角線からなるエッジワイズコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、軸線方向に積み重ねて配置され、
前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの内周面と外周面の全面が、磁性被覆体により一体的に遮蔽されるとともに、
前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ前記内周側の磁性被覆体と外周側の磁性被覆体に連結する配置として、磁性プレートが設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。
【請求項6】
平角線からなるフラット巻きコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、内周側と外周側とに同芯状に配置され、
前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの両側面の全面が、磁性被覆体により一体的に遮蔽されるとともに、
前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ一次側コイルと二次側コイルの側面を被覆する前記磁性被覆体に連結する配置として磁性プレートが設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。
【請求項7】
前記磁性被覆体は、その幅方向の端部が、前記平角線の縁部上に延出していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の磁性被覆コイル。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項記載の磁性被覆コイルが組み込まれた鉄心リアクトル。
【請求項9】
請求項5~7のいずれか一項記載の磁性被覆コイルがコア内に組み込まれたトランス。





発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は断面形状が長方形をなす平角線を用いた磁性被覆コイル及びこれを用いたトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源は、安定した直流電力を供給するために用いられ、小形化、高効率化が強く望まれている。スイッチング電源に用いられるコンバータの小型化要素技術として、駆動周波数の高周波化があげられる。しかしながら、駆動周波数を高周波化するとトランスで生ずる銅損、鉄損が増大しコンバータの効率が低下する。
また、コンバータに用いられる素子のうち、絶縁用トランスは他の素子と比較して体積が大きく、回路の大型化の要因となっている。トランスを小型化する方法として、プレーナトランスを用いる方法がある。プレーナトランスは平角線や、基板パターンを巻線とすることで、コイルの占積率を向上させることで小型化を実現している。しかしながら、プレーナトランスは巻線の断面形状が長方形であるため、表皮効果が丸線と比較して顕著に表れ、また、コイルの占積率の向上に伴って巻線間の距離が近くなるため、近接効果に起因する交流抵抗が増加するという問題がある。
【0003】
近接効果に起因する交流抵抗を低減させる方法として磁性めっき線(特許文献1)や磁性コンポジット材を導線の外表面に被覆した磁性被覆線が提案されている(特許文献2~4)。また、平角線における表皮効果を抑制して平角線の電流密度を平準化する方法として、平角線の端面を磁性材で被覆する方法がある(特許文献5)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平4-214896号公報
【特許文献2】特開2004-207443号公報
【特許文献3】特開2005-20987号公報
【特許文献4】特開2014-71969号公報
【特許文献5】特開2014-163828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、巻線として平角線を用いたコイル及びこれを用いたトランスであって、高周波領域における表皮効果及び近接効果を効果的に抑制することで交流抵抗を低減させ、スイッチング電源等の小型化、高効率化を可能とする磁性被覆コイル及びこれを用いたトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁性被覆コイルは、平角線をコイル状に巻回した平角線コイルの、前記平角線の幅方向の両側面に対応する両側面に、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が設けられていることを特徴とする磁性被覆コイル。
磁性被覆コイルの例としては、前記平角線コイルが、エッジワイズコイルであり、前記平角線コイルの内周面と外周面の全面が、前記磁性被覆体により一体的に遮蔽されているもの、前記平角線コイルが、平角線のフラット巻きコイルであり、前記平角線コイルの両側面の全面が、前記磁性被覆体により一体的に遮蔽されているもの、前記平角線コイルが、平角線のスパイラル形コイルであり、前記平角線の幅方向の両側面が、全長にわたり前記磁性被覆体により被覆されているものが挙げられる。
なお、平角線の幅方向の両側面に対応する両側面を、それぞれ全面にわたり、一体的に遮蔽するように磁性被覆体が設けられている、という意味は、平角線の側面部分について、平角線そのものの側面と隣り合う平角線間の隙間部分を含めて、側面部分の全体を一体的に遮蔽するように設けるという意味である。
これらの磁性被覆コイルは空芯リアクトルあるいは鉄心リアクトルの構成部品として利用することができる。
【0007】
また、磁性被覆コイルとして、平角線からなるエッジワイズコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、軸線方向に積み重ねて配置され、前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの内周面と外周面の全面が、磁性被覆体により一体的に遮蔽されるとともに、前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ前記内周側の磁性被覆体と外周側の磁性被覆体に連結する配置として、磁性プレートが設けられていることを特徴とする。
また、平角線からなるフラット巻きコイルである、一次側コイルと二次側コイルとが、内周側と外周側とに同芯状に配置され、前記一次側コイルと二次側コイルの、前記平角線の幅方向の側面に対応する、それぞれの両側面の全面が、磁性被覆体により一体的に遮蔽されるとともに、前記一次側コイルと二次側コイルとを仕切る位置に、両端部がそれぞれ一次側コイルと二次側コイルの側面を被覆する前記磁性被覆体に連結する配置として磁性プレートが設けられていることを特徴とする。
これらの一次側コイルと二次側コイルとを備える磁性被覆コイルは、コア内に組み込むことによりトランスを構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る磁性被覆コイルによれば、交流抵抗を効果的に低減させることができ、とくに一次側コイルと二次側コイルとを仕切る配置に磁性プレートを設けることにより、トランスに組み込んだ際における交流抵抗を効果的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】磁性被覆コイル第1の実施の形態の構成を示す平面図(a)、A-A’線断面図(b)、斜視図(c)である。
【図2】磁性被覆コイルの第2の実施の形態の構成を示す平面図(a)、A-A’線断面図(b)、斜視図(c)である。
【図3】磁性被覆コイルの第3の実施の形態の構成を示す平面図(a)、A-A’線断面図(b)、斜視図(c)である。
【図4】磁性被覆コイルの第4の実施の形態の構例を示す平面図(a)、A-A’線断面図(b)、斜視図(c)である。
【図5】磁性被覆コイルの第5の実施の形態の構成を示す平面図(a)、A-A’線断面図(b)、斜視図(c)である。
【図6】磁性被覆コイルの解析モデルの構成を示す断面図である。
【図7】図6の解析モデルについて求めた抵抗-周波数特性を示すグラフである。
【図8】LLC共振形コンバータの回路構造図である。
【図9】プレーナトランスの解析モデルの構成を示す断面図である。
【図10】プレーナトランスの二次側を開放したときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。
【図11】プレーナトランスの二次側を短絡したときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。
【図12】一次側コイルと二次側コイルを磁性被覆体により被覆したとき(二次側短絡)のプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布を示す解析図である。
【図13】一次側コイルと二次側コイルの間を仕切る磁性プレートを装着したプレーナトランスの解析モデルの構成を示す断面図である。
【図14】図13に示すプレーナトランスについて、二次側を開放としたときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。
【図15】プレーナトランスの二次側を短絡したときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。
【図16】二次側を短絡したときのプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布を示す解析図である。
【図17】磁性被覆体をコイルの側面のみに設けた場合で、二次側を短絡したときのプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布を示す解析図である。
【図18】プレーナトランスの結合係数-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(磁性被覆コイルの構成)
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係る磁性被覆コイルの第1の実施の形態を示す。図1(a)は磁性被覆コイルの平面図、図1(b)はA-A’線断面図、図1(c)は斜視図である。平角線コイル10(平角線によって構成したコイル)は、断面形状が長方形の平角線を、コイルの軸線方向と平角線の平面とが垂直になるように巻回して構成したエッジワイズコイル(プレーナ形コイル)である。

【0011】
図1に示す磁性被覆コイルにおいて特徴とする構成は、平角線コイル10の内周面と外周面の全面が磁性被覆体12によって一体的に被覆された構成を備える点である。
平角線コイル10(エッジワイズコイル)は軸線方向に所定間隔をあけて平角線が複数段に配置されている。磁性被覆体12は積層方向で隣り合う側面と平角線間の空隙を遮蔽するように、平角線コイルの内周面と外周面の全面を被覆するように設けられる。

【0012】
図1(a)で、平角線コイル10の内周面と外周面が全面にわたり磁性被覆体12によって被覆され、平角線コイル10の平面部分は露出している。
図1(b)では、複数段に積層されている平角線の各々の側面間を連結するように磁性被覆体12が設けられ、平角線コイル10の内周側面部分と外周側面部分がそれぞれ磁性被覆体12によって被覆されていることを示す。

【0013】
このように平角線コイル10の内周側面と外周側面とをそれぞれ全体にわたり磁性被覆体12で被覆すると、平角線コイル10に高周波を印加したときに生じる表皮効果及び近接効果を効果的に抑制することができる。とくに、磁性被覆体12を隣り合った平角線の側面間を一体に連結するように設けることにより、平角線を流れる電流に起因する磁束が近接する平角線に作用する近接効果の影響を効果的に抑制することができる。

【0014】
磁性被覆体12に用いる磁性材料は特に限定されるものではなく、通常用いられているフェライト(Mn系、Ni系)、アモルファス合金等の磁性材料を用いることができる。磁性被覆体12は、たとえばシート状の磁性材料を用いて、平角線コイル10の内周面と外周面を被覆するように設けてもよいし、磁性粉とバインダーとからなる磁性複合材を平角線コイル10の内周面と外周面に塗布するといった方法で設けることもできる。

【0015】
図1に示した平角線コイル10は平角線を螺旋状に巻いて作製したものであるが、螺旋状に巻くかわりに、平面リング状で一か所を切り離した形態の平角線ユニットを、所定間隔をあけて積層し、平角線の端部間を直列に接続することでエッジワイズ形の平角線コイルとすることもできる。この場合も、上述した方法と同様に、平角線コイルの内周面と外周面の全面を遮蔽するように磁性被覆体により被覆することにより、表皮効果及び近接効果を抑制した磁性被覆コイルとして利用することができる。

【0016】
<第2の実施の形態>
図2は磁性被覆コイルの第2の実施の形態を示す。
本実施形態の磁性被覆コイルは、平角線を周方向に積層するように巻いて構成されている、いわゆるフラット巻きコイルである。本実施形態においても、平角線コイル11の側面を磁性被覆体12によって被覆する考え方は第1の実施の形態と同様である。

【0017】
図2(b)に示すように、フラット巻きコイルでは、平角線がコイルの軸線に垂直となる方向に積層した配置となるから、磁性被覆体12は平角線の幅方向の両側面に、それぞれ平角線コイル11の側面部分の全面を遮蔽するように一体的に設ける。
図2(a)は、平角線コイル11を構成する平角線の幅方向の側面部分(平坦部分)の全面が磁性被覆体12によって遮蔽されていることを示す。磁性被覆コイルの円筒状の内周面と外周面については、平角線コイル11の円筒状の表面が露出する(図2(c))。
なお、図2(b)では、平角線コイル11の側面を被覆する磁性被覆体12の端部12aが平角線の側面の縁部上に僅かに屈曲して延出している。磁性被覆体12の端部の形態については、磁性被覆体12の端部を平角線の縁部から僅かに延出させるようにしてもよいし、平角線の側面上で止めて延出させないようにしても良い。

【0018】
<第3の実施の形態>
図3は磁性被覆コイルの第3の実施の形態を示す。
図3に示す磁性被覆コイルは、スパイラル形の平角線コイル13、すなわち平角線の平面とコイルの平面とを同一平面として、平角線を巻いて形成したものである。
本実施形態においては、図3(b)に示すように、平角線コイル13を構成する平角線の幅方向の両側面に磁性被覆体12を設ける。磁性被覆体12は平角線コイル13を構成する平角線の全長にわたって平角線の両側面を被覆する。

【0019】
このようなスパイラル形の平角線コイル13からなる磁性被覆コイルについても、平角線の両側面を磁性被覆体12によって被覆したことにより、磁性被覆コイルに高周波を印加したときの表皮効果及び近接効果を抑制し、交流抵抗を低減させることができる。
本実施形態においても、平角線の両側面を被覆する磁性被覆体12はその端部を平角線の縁部から平角線の表面上に僅かに延出させてもよいし、平角線の側面部分のみを磁性被覆体12によって被覆してもよい。磁性被覆体12の端部を平角線の表面上に延出させた場合と、延出させない場合で、表皮効果及び近接効果を抑制する作用は顕著には変わらない。

【0020】
<第4の実施の形態>
図4は磁性被覆コイルの第4の実施の形態を示す。本実施形態の磁性被覆コイルはプレーナトランスに使用する磁性被覆コイルとして構成した例である。
図4(b)に示すように、本実施形態の磁性被覆コイルは、一次側コイル20と二次側コイル21とを軸線を共通にして積み重ねた形態に形成されたものである。一次側コイル20と二次側コイル21の構成は第1の実施の形態として説明した磁性被覆コイルと同様である。すなわち、一次側コイル20と二次側コイル21は、平角線コイル10の内周面と外周面の全面が磁性被覆体12によって遮蔽されるように設けられている。

【0021】
本実施形態の磁性被覆コイルにおいて特徴的な構成の一つは、一次側コイル20と二次側コイル21の磁性被覆体12を連結させ、一次側と二次側を一体的に磁性被覆体12によって被覆した点である。
また、他の特徴点は、図4(b)に示すように、一次側コイル20と二次側コイル21との間にこれらを仕切る配置に磁性プレート14を設けた点である。

【0022】
磁性プレート14は一次側コイル20と二次側コイル21の平角線が通過する平面領域(平面リング状の領域)を完全に仕切るように配置する。磁性プレート14により一次側コイル20と二次側コイル21の平角線が通過する範囲を仕切る配置とすることにより、磁性プレート14の内周縁は内周側の磁性被覆体12と連結され、磁性プレート14の外周縁は外周側の磁性被覆体12と連結する。すなわち、磁性プレート14は一次側コイル20と二次側コイル21とを仕切るとともに、内周側と外周側の磁性被覆体12を連結する配置に設ける。

【0023】
磁性プレート14も磁性被覆体12と同様に磁束を磁性プレート14内に誘導するためのものであり、磁性材料であれば適宜材料を使用することができる。
本実施形態の磁性被覆コイルは一次側コイル20と二次側コイル21とを積み重ねたプレーナ形に形成されたもので、効率的にトランスを小型化することができるとともに、磁性被覆体12と磁性プレート14とを備えることから、高周波領域におけるトランスの抵抗値を効果的に低減させることができ、優れた特性を備えるトランスの構成部品として有効に利用することができる。

【0024】
<第5の実施の形態>
図5は磁性被覆コイルの第5の実施の形態を示す。
本実施形態の磁性被覆コイルも第4の実施の形態と同様に、トランスに組み込んで使用するためのものである。
本実施形態の磁性被覆コイルは、1次側コイル20と二次側コイル21として、第2の実施の形態で説明した、平角線をフラット巻きにしたコイルとして構成したものである。また、一次側コイル20と二次側コイル21を同芯状に配置して、軸線を共通にしている。本実施形態では、一次側コイル20を外側に配置し、二次側コイル21を内側に配置しているが、一次側コイル20と二次側コイル21の配置を逆の配置にすることもできる。

【0025】
本実施形態の磁性被覆コイルも、第2の実施の形態において説明したと同様に、一次側コイル20と二次側コイル21の平角線の幅方向の両側面部分を全面にわたってそれぞれ磁性被覆体12によって被覆し、さらに、一次側コイル20と二次側コイル21の両側面部分を連続して一体的に磁性被覆体12によって被覆する。
また、一次側コイル20と二次側コイル21とを仕切る位置に、コイルの周方向の全周にわたって、磁性プレート15を配置する。磁性プレート15は一次側コイル20と二次側コイル21の両側面部分を被覆する磁性被覆体12と端部が連結するように設ける。

【0026】
平角線のフラット巻きコイルを一次側と二次側のコイルとして組み込んだトランスの場合も、コイルの両側面をそれぞれ磁性被覆体12により被覆し、かつ一次側と二次側のコイルを仕切る位置に磁性プレート15を設けたことにより、高周波領域におけるトランスの抵抗値を効果的に低減させ、優れた特性を備えるトランスを構成することができる。

【0027】
(磁性被覆コイルの特性解析)
本発明に係る磁性被覆コイルは、上述した各実施の形態において説明したように、平角線の幅方向の両側面に対応する平角線コイルの側面の全面に、一体的に磁性被覆体を設け、平角線コイルの側面部分を磁性被覆体によって遮蔽した構成となるものである。
以下では、まず、プレーナ(エッジワイズ)形の平角線コイルに磁性被覆体を設けた磁性被覆コイルについて、抵抗-周波数特性を解析ソフトを用いて解析した結果について説明し、次に磁性被覆コイルを用いたプレーナ形トランスの特性について説明する。

【0028】
図6は解析ソフトを用いて周波数特性を解析した磁性被覆コイルの解析モデルを示す。この解析モデルは、平角線を用いたプレーナ形の平角線コイルの内周面と外周面の全面をそれぞれ遮蔽するように磁性被覆体を設けたものである。
平角線は幅 5 mm、厚さ0.1 mm、線間距離0.05 mmとした。コイルの巻数は8回とし、8枚の平角線を直列に接続したものとした。コイルは、図6で、z軸を中心としてzr平面をθ方向に1回転させた軸対称モデルである。
また、磁性被覆体の厚さtcを、tc = 0.1mm、0.2mm、0.3 mmの条件とし、磁性被覆体の複素比透磁率μ’=10、μ’’= 0とした。電流はI = 1Amaxとし、周波数は1 Hz~1 MHzの範囲で100 kHzごとに抵抗を解析した。

【0029】
図7に抵抗-周波数特性を解析して求めた結果を示す。
図7から、磁性被覆体を設けていない平角線コイルと比較して、磁性被覆体を設けることで平角線コイルの抵抗が確実に低減されることが分かる。周波数1 MHzにおける磁性被覆体を設けていない平角線コイルの抵抗値は108.9mΩであるのに対して、磁性被覆体を設けたものでは、抵抗値が88mΩであり、抵抗値が19.2%低減した。
なお、図7では磁性被覆体の端部をL字形に曲げずに、単にコイルの側面部分のみを磁性被覆体で被覆した磁性被覆コイルについて解析した結果をあわせて示した(With magnetic side plate)。磁性被覆体の厚さは0.1mmである。この場合も、磁性被覆体を設けない場合と比較して抵抗値を低減させる効果が明確に認められた。

【0030】
また、周波数が100kHz~900 kHzの範囲では、磁性被覆体の厚さを厚くするほど抵抗が低減する効果が見られたが、1 MHzでは磁性被覆体の厚さに抵抗値が依存しなくなるという結果が得られた。
周波数1 MHzで抵抗値が磁性被覆体の厚さに依存しなくなった理由は、1 MHzでは表皮効果の作用によって平角線の両端部に近い領域で電流密度が高くなるという電流の偏りの作用が低周波側における場合と比較して強くなる、すなわち電流密度が高くなる領域が平角線の幅方向の端部に寄せられて面積が狭くなり、磁性被覆体を設けることで表皮効果を抑制する作用よりも近接効果を抑制する作用がより強く表れるようになったためである。
この解析モデルでは、磁性被覆体を磁性被覆体の端部をL字形に屈曲して平角線の平面上に磁性被覆体の端部を延出した形態としている(図6)。したがって、磁性被覆体の厚さが厚くなれば、平角線の平面上に延出する磁性被覆体の延出長さが長くなる。平角線の平面を被覆する範囲が広くなれば、表皮効果をより抑制するように作用する筈であるが、磁性被覆体の厚さを変えても抵抗値が変わらないということは、表皮効果を抑制する作用よりも近接効果を抑制する作用が主体となって作用していることを意味する。

【0031】
図6の解析モデルにおいて、磁性被覆体の端部を平角線の平面上に延出させず、単に平角線コイルの側面部分のみを磁性被覆体で被覆した磁性被覆コイルについて抵抗-周波数特性を解析した結果、周波数1 MHzでの抵抗値が101mΩとなった。この解析結果は、磁性被覆体の屈曲部分の寄与が周波数1 MHzでは12%程度であり、磁性被覆体によって平角線の平面を被覆する作用は、磁性被覆体を設けたことで抵抗値を低減する作用としては僅かに寄与するのみであることが分かる。

【0032】
(磁性被覆コイルを用いたトランスの特性解析)
プレーナ形の磁性被覆コイルをトランスに組み込んだときの特性を解析するため、LLC共振形コンバータ回路に用いるトランスの例について、解析ソフトを用いて解析した。
図8はLLC共振形コンバータの回路構造の例である。LLC共振形コンバータはトランスの漏れインダクタンスと共振用キャパシタを共振させることによりソフトスイッチングを可能とする。トランスの結合係数は0.7~0.9程度であり、漏れインダクタンスを生じさせるため、トランスの一次側コイルと二次側コイルを分割して巻く形式とすることが多い。また、コアギャップを設けることで漏れ磁束を生じさせる。そのため、漏れ磁束が巻線に鎖交したときに渦電流が生じるため、近接効果に起因する交流抵抗が増加するという問題がある。

【0033】
表1にLLC共振形コンバータの仕様を示す。入力電圧380 V、出力電圧48 Vである。インバータ回路は4つのFETを用いたフルブリッジ構成を想定し、トランスの巻数比を8 : 1とした。結合係数はトランスの構造に依存するため0.7~0.9とした。駆動の周波数は1 MHzである。
【表1】
JP2019009177A_000003t.gif

【0034】
図9にプレーナトランスの解析モデル図を示す。この解析ではコアの断面を軸対称モデルとして二次元解析を行った。平角線は幅5 mm、厚さ0.1 mm、線間距離0.05 mmとした。一次側コイルの巻数は8回とし、8枚の平角線は直列に接続されている。二次側コイルの巻数は1回とし、8枚のコイルを並列に接続した。一次側コイルと二次側コイルは、内周径と外周径とをそれぞれ一致させ、図9に示すように上下に重ねて組み込む形式である。
一次側コイルと二次側コイルの間は0.35mmのギャップを設けた。コアの中心脚にギャップを設け、コアのギャップ長を2 mmした。

【0035】
磁性被覆体は、一次側コイルと二次側コイルの内周面と外周面を一体的に遮蔽する形態として装着するとした。磁性被覆体の厚さtcは磁性被覆コイルについての解析と同様に、tc = 0.1mm、0.2mm、0.3mmとして解析した。
磁性被覆体の複素比透磁率をμ’= 10、μ’’= 0とし、一次側コイルに周波数1 MHz、I = 1 Amaxの電流を流し、二次側コイルを開放あるいは短絡したときの抵抗、インダクタンス、トランスの結合係数を解析した。二次側を短絡したときの抵抗は駆動状態の磁束分布を模擬するために行ったものである。
なお、磁性被覆体は端部をL字形に曲げ、平角線の縁部から平角線の表面にわずかに延出させるようにした。

【0036】
図10は、磁性被覆コイルを使用したプレーナトランスの二次側を開放としたときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。図10の横軸が磁性被覆体の厚さtcである。
磁性被覆体を設けていない一次側コイルと二次側コイルを備えるトランスと比較して、磁性被覆体を設けたコイルを備えるトランスでは抵抗値が最大で7.4 %低減した。これは磁性被覆線コイルと同様に、磁性被覆体を設けたことにより、平角線の端部に鎖交する磁束が減少したためである。

【0037】
図11に磁性被覆コイルを使用したプレーナトランスの二次側を短絡したときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示すグラフである。磁性被覆体を設けていないコイルを用いたトランスと比較して、磁性被覆体を設けたコイルを用いたトランスでは抵抗値が最大で24.7 %増大する結果となった。
図12に磁性被覆体で一次側コイルと二次側コイルを被覆したときのプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布(二次側短絡、tc= 0.1 mm、I = 1 Amax、 f = 1 MHz)を示す。図12から、一次側コイルと二次側コイルの中間位置で磁束が集中することが分かる。一次側コイルと二次側コイルの側面を遮蔽するように磁性被覆体を設けたことで、内周と外周の磁性被覆体間をつなぐように磁束が流れる。この磁性被覆体間の磁束が平角線を通過することによって渦電流が生じ、抵抗が増加したものと考えられる。

【0038】
図13は、上述した課題を解決する方法として、プレーナトランスに組み込む一次側コイルと二次側コイルの間を仕切るように磁性プレートを配置したプレーナトランスの解析モデルを示す。
磁性プレートの厚さをtgとし、tg = 0.1mm、0.2mm、0.3 mmの条件で解析を行った。

【0039】
図14に、磁性被覆体と磁性プレートを設けた一次側コイルと二次側コイルを組み込んだトランス(図13)について、二次側を開放としたときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示す。
図14で、抵抗値が最も小さくなったのは、tc = 0.2 mm、tg = 0.3 mmのときであり、そのときの抵抗値は215 mΩである。磁性被覆体と磁性プレートを使用しないトランスの抵抗値は272 mΩであり、磁性被覆体と磁性プレートを使用したことにより抵抗値が21%低減した。

【0040】
図15にトランスの二次側を短絡したときの一次側抵抗-磁性被覆体の厚さ特性を示す。図15で抵抗値が最も小さくなったのは、tc = 0.1 mm、tg = 0.3 mmのときであり、そのときの抵抗値は192 mΩである。磁性被覆体と磁性プレートを使用しないトランスの抵抗値は299mΩであり、磁性被覆体と磁性プレートを使用したことにより抵抗値が35.8 %低減した。

【0041】
図16にプレーナトランスの磁束密度、磁束線分布(二次側短絡、tc = 0.1 mm、tg = 0.3 mm、I = 1 Amax、f = 1 MHz)を示す。
磁性被覆体と磁性プレートを設けたことにより、図12に示した磁性プレートを装着していない場合と比較して、平角線を通過する磁束が減少し、近接効果を抑制する作用が機能していることがわかる。

【0042】
なお、図15と図16に示した解析結果は、一次側コイルと二次側コイルに設ける磁性被覆体の端部をL字形に屈曲させ平角線の縁部に磁性被覆体を僅かに延出させた形態としたものである。磁性被覆体をコイルの側面のみに設けた場合についても解析し、そのときの抵抗値を図15中に、(tg = 0.3 mm、side plate tc = 0.1 mm)として示した。また、磁束密度、磁束線分布(二次側短絡、tc = 0.1 mm、tg = 0.3 mm、I = 1 Amax、f = 1 MHz)を図17に示した。
図15中に示した値は、抵抗値が最も小さくなる場合(tc = 0.1 mm、tg = 0.3 mm)について求めたものであり、抵抗値が195mΩとなり磁性被覆体の端部を平角線上に延出させた場合と比較してわずかに大きくなった。

【0043】
また、図17に示した磁束線分布についての解析結果は、図16に示した解析結果とほとんど変わらない。この結果からも、磁性被覆体をコイルの側面部分のみに設ける方法であっても磁性プレートを設けた効果とあわせて近接効果を抑制する作用が機能していることが分かる。
また、これらの解析結果は、プレーナトランスの交流抵抗を低減させる方法として、巻線の周囲の磁束が集中する部位に磁性体を配置することにより、近接効果に起因する交流抵抗を低減することができることを示唆する。

【0044】
図18は、プレーナトランスの結合係数-磁性被覆体の厚さ特性を示している。図18から、磁性被覆体の厚さ(tc)を厚くすると結合係数がわずかに増加する一方、磁性プレートの厚さ(tg)を厚くすると結合係数が低下することが分かる。上述した解析結果から、抵抗値が最も小さくなったのはtc = 0.1 mm、tg = 0.3 mmのときであり、そのときの結合係数は0.76である。この結合係数は、プレーナトランスをLLC共振形コンバータで用いる場合の目標の仕様である結合係数0.7~0.9を満足しており、磁性被覆体と磁性プレートを使用したプレーナトランスはLLC共振形コンバータ用として好適に使用することが可能である。

【0045】
上述したプレーナトランスについての解析結果は、平角線コイルからなる一次側コイルと二次側コイルを備えるトランスの抵抗を低減する方法として、一次側コイルと二次側コイルの側面部分を全面にわたって磁性被覆体により遮蔽するように被覆し、かつ一次側コイルと二次側コイルとの間を仕切るように磁性プレートを設ける構成が有効であることを示している。一次側コイルと二次側コイルは上述したプレーナ形のコイル(エッジワイズコイル)であってもよいし、フラット巻きコイルであってもよい。フラット巻きコイルで、一次側と二次側のコイルを同芯状に巻回する形式の場合は、一次側と二次側のコイルを仕切るように磁性プレートを配置する方法が有効である。
【符号の説明】
【0046】
10、11、13 平角線コイル
12 磁性被覆体
12a 磁性被覆体の端部
14、15 磁性プレート
20 1次側コイル
21 2次側コイル


図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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