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明細書 :見守りシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6489536号 (P6489536)
公開番号 特開2018-032398 (P2018-032398A)
登録日 平成31年3月8日(2019.3.8)
発行日 平成31年3月27日(2019.3.27)
公開日 平成30年3月1日(2018.3.1)
発明の名称または考案の名称 見守りシステム
国際特許分類 G08B  25/04        (2006.01)
G08B  21/02        (2006.01)
A61B   5/00        (2006.01)
FI G08B 25/04 K
G08B 21/02
A61B 5/00 102C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2017-155327 (P2017-155327)
出願日 平成29年8月10日(2017.8.10)
優先権出願番号 2016162512
優先日 平成28年8月23日(2016.8.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年8月1日(2018.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
発明者または考案者 【氏名】和崎 克己
【氏名】新村 正明
【氏名】下井 信浩
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100144130、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 実
審査官 【審査官】塩澤 如正
参考文献・文献 特開2014-106636(JP,A)
特開2016-126519(JP,A)
特開2014-056423(JP,A)
特開2012-164035(JP,A)
特開2010-191510(JP,A)
特開2012-183199(JP,A)
特開2014-070739(JP,A)
特開2014-155062(JP,A)
調査した分野 G08B 25/04
A61B 5/00
G08B 21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
見守り対象者の生活パターンに関わる行動・健康情報を検知するセンサと、
該センサを監視するとともに、センサから得られる行動・健康情報を収集するセンサ・エージェントと、
該センサ・エージェントにより収集された行動・健康情報が伝送され、収集された行動・健康情報に基づいて見守り対象者の異変を検知するサーバとを備える見守りシステムであって、
前記センサとして、動体センサ、リモコンセンサと、RFIDを装着した鍵束と、対象者のベッド上での体勢の変化を検知するベッドセンサと、対象者の呼吸や首から上の動きを検知する枕センサとを備え、
前記センサ・エージェントは、
前記センサからのデータを受信するデータ受信手段と、
該データ受信手段とは分離して設けられた、就寝・起床の別、在宅・外出の別といったあらかじめ設定した観測項目に対応して設けられた複数のデータ処理手段とを備え、
前記データ受信手段では、データの受信方法が共通するセンサについては共通のデータ受信ブロックで受信するとともに、データ受信ブロックで受信したデータを個々の前記データ処理手段に振り分ける振り分け処理手段を備え、
前記各々のデータ処理手段の前段に、当該データ処理ごとに必要となるデータ量となるように、前記データ振り分け手段から出力されるデータを一次的に蓄積するためのメッセージキュー手段が設けられ、
前記枕センサと前記ベッドセンサからの行動・健康情報に関するデータについては、前記サーバにリアルタイムでデータが送信されないようにメッセージキューの長さを設定したメッセージキュー手段を設けるとともに、緊急情報については、メッセージキューの長さをリアルタイムでの検知を可能とする最小限のデータ量に設定したメッセージキュー手段を設けること特徴とする見守りシステム。
【請求項2】
前記データ処理手段で処理した後のデータが、さらにメッセージキュー手段を介して次段のデータ処理手段に入力されることを特徴とする請求項1記載の見守りシステム。
【請求項3】
前記振り分け処理手段は、前記データ受信ブロックで受信した1つの前記センサからのデータを、複数の前記データ処理手段に振り分けることが可能であることを特徴とする請求項1または2記載の見守りシステム。
【請求項4】
前記振り分け処理手段は、前記データ受信ブロックで受信した複数の前記センサからのデータを、1つの前記データ処理手段に振り分けることが可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の見守りシステム。
【請求項5】
前記サーバは、収集された行動・健康情報に基づいて対象者の平時の生活パターンを分析する手段と、
対象者の平時の生活パターンから外れた異変を検知した際に、見守り担当者にアラーム通報を発信する手段とを備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の見守りシステム。
【請求項6】
前記サーバは、前記枕センサが人為的に繰り返し振られる操作を検知した際に、見守り担当者に緊急通報を発信する手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の見守りシステム。
【請求項7】
前記サーバは、対象者の平時の生活パターンから外れた異変の緊急度について分析する手段と、
その分析結果に基づき、必要に応じて、見守り担当者にアラーム通報を発信する手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の見守りシステム。
【請求項8】
前記センサ・エージェントは、前記センサからの行動・健康情報を監視し、行動・健康情報を収集する手段を備えるベースステーションと、
該ベースステーショで収集された行動・健康情報が伝送されるタブレット端末とを備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の見守りシステム。
【請求項9】
前記センサ・エージェントは、前記枕センサと前記ベッドセンサからの行動・健康情報については前記サーバにリアルアイム送信せずに、前記データ処理手段で就寝・起床判定のデータ処理を行って前記サーバへ送信し、その他の前記動体センサ、前記リモコンセンサ、前記鍵束に装着したRFIDを検知する鍵タグセンサについては、その他の前記データ処理手段からそのまま前記サーバへ送信することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項記載の見守りシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や独居者等見守り対象者の日常行動を検知して、見守り対象者の異変を早期に検知し、見守り対象者を安全に見守るための見守りシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
誰もが安心して住み続けることができる地域社会を実現するために、高齢者等の見守りネットワークの構築が急務となっている。見守り活動で最も重要な点は、対象者の異変に早く気付くこと、そして専門機関への接続と適切な対応である。しかしながら、対象者の異変を外的な観測(玄関灯が点きっぱなしになっている、新聞受けに新聞が溜まっている、定期的な集会に顔を出さなくなる等)のみによって素早く気付くことは困難な状況にある。したがって、心理的障壁を軽減しつつ、昼夜間を通じた宅内での行動の様子を高い精度で観測できる仕組みの構築が必要となる。
【0003】
独居者の行動を監視して日常的な行動であるか非日常的な行動であるかを判断して独居者を見守る方法が従来提案されている。たとえば、複数の居室あるいは居住空間を複数に区画し、時間帯ごとの各区画の滞在時間を検出して独居者の行動を判断するもの(特許文献1)、独居者の行動を検知し、予め設定した見守り条件と独居者の行動とを比較して異常と判定した際に、見守る側のTV電話機能付携帯電話へ通報する設定としたもの(特許文献2)、監視センサにより独居者の異常状態が検知された際に、自動通報システムにより独居者の携帯電話あるいは固定電話から、予め設定した通報先に異常通報通信がなされるようにしたもの(特許文献3)、独居者が使用している家電機器の無操作の継続時間に基づいて独居者の異常を検知する方法(特許文献4)等がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2005-157556号公報
【特許文献2】特開2008-210093号公報
【特許文献3】特開2012-89106号公報
【特許文献4】特開2013-178852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
見守り対象者の異変を早期に検知するには、見守り対象者の平時の生活パターンを監視する必要がある。しかしながら、対象者のプライバシーを確保した上で、非侵襲的に検知するには、対象者の行動を的確に判断できるセンサ類を使用する必要がある。また、1日を通して対象者の生活パターンを把握するには、昼間と夜間を通して生活パターンを検知する必要がある。
本発明は、対象者のプライバシーを確保した上で、非侵襲的に対象者の生活パターンを把握する目的に適した分析項目について検討した結果に基づき、的確に対象者の生活パターンを検知して、対象者の見守りを的確に可能にする見守りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る見守りシステムは、見守り対象者の生活パターンに関わる行動・健康情報を検知するセンサと、該センサを監視するとともに、センサから得られる行動・健康情報を収集するセンサ・エージェントと、該センサ・エージェントにより収集された行動・健康情報が伝送され、収集された行動・健康情報に基づいて見守り対象者の異変を検知するサーバとを備える見守りシステムであって、前記センサとして、動体センサ、リモコンセンサと、RFIDを装着した鍵束と、対象者のベッド上での体勢の変化を検知するベッドセンサと、対象者の呼吸や首から上の動きを検知する枕センサとを備え、前記センサ・エージェントは、前記センサからのデータを受信するデータ受信手段と、該データ受信手段とは分離して設けられた、就寝・起床の別、在宅・外出の別といったあらかじめ設定した観測項目に対応して設けられた複数のデータ処理手段とを備え、前記データ受信手段では、データの受信方法が共通するセンサについては共通のデータ受信ブロックで受信するとともに、データ受信ブロックで受信したデータを個々の前記データ処理手段に振り分ける振り分け処理手段を備え、前記各々のデータ処理手段の前段に、当該データ処理ごとに必要となるデータ量となるように、前記データ振り分け手段から出力されるデータを一次的に蓄積するためのメッセージキュー手段が設けられ、前記枕センサと前記ベッドセンサからの行動・健康情報に関するデータについては、前記サーバにリアルタイムでデータが送信されないようにメッセージキューの長さを設定したメッセージキュー手段を設けるとともに、緊急情報については、メッセージキューの長さをリアルタイムでの検知を可能とする最小限のデータ量に設定したメッセージキュー手段を設けること特徴とする。
なお、本発明において規定する行動・健康情報とは、行動情報と健康情報の少なくとも一方を意味するものであり、センサ・エージェントで収集する情報としては、用途に応じて、行動情報あるいは健康情報の一方、あるいは行動情報と健康情報の双方となる。
前記データ処理手段で処理した後のデータが、さらにメッセージキュー手段を介して次段のデータ処理手段に入力されることを特徴とする。
前記振り分け処理手段は、前記データ受信ブロックで受信した1つの前記センサからのデータを、複数の前記データ処理手段に振り分けることが可能である。
前記振り分け処理手段は、前記データ受信ブロックで受信した複数の前記センサからのデータを、1つの前記データ処理手段に振り分けることが可能である。
【0007】
本発明に係る見守りシステムで使用する動体センサは、宅内における対象者の動きを検知するもので、動体センサからの行動・健康情報によって、対象者が在宅か否か、対象者に動きがあるか否かが判断される。
リモコンセンサは赤外線を検知するセンサであり、対象者が赤外線リモコンを用いて家電を操作したことを検知するためのものである。対象者が宅内で座っていたりして、動きが無い場合でもリモコンセンサの行動・健康情報から、対象者が健全な状態か否かが判断できる。
RFIDを装着した鍵束とは玄関や部屋の出入り口の施錠に使用する鍵にRFIDタグを装着したもので、RFIDを装着した鍵束の行動・健康情報は、対象者が在宅しているか、外出しているかの判断情報として使用できる。
【0008】
前記センサ・エージェントは、前記センサからの行動・健康情報を監視し、行動・健康情報を収集する手段を備えるベースステーションと、該ベースステーショで収集された行動・健康情報が伝送されるタブレット端末とを備える。
ベースステーションにはセンサ類を監視し、センサ類から伝送される行動・健康情報を処理する手段として組み込みソフトが搭載されている。収集された行動・健康情報はタブレット端末に伝送され、タブレット端末からサーバに伝送される。
【0009】
前記センサには、上述したセンサの他に、対象者が特定の行動を行うときに自発的に操作する物理スイッチを設けることができる。物理スイッチは、たとえば対象者が外出するときにスイッチを押し、外出から戻ってきたときにスイッチを押すといった、特定の行動を行うときに使用するものである。対象者が物理スイッチを押す操作から得られる行動・健康情報は、他のセンサから収集される行動・健康情報と併用することで、対象者が健全か否かを高精度に判断することができる点で有効である。
また、他のセンサとして、対象者が家電製品を使用した行動・健康情報を前記センサ・エージェントに伝送するリモートセンサが設けられていることにより、さらに対象者の状態を高精度に判断することができる。
【0010】
また、前記サーバは、収集された行動・健康情報に基づいて対象者の平時の生活パターンを分析する手段と、対象者の平時の生活パターンから外れた異変を検知した際に、見守り担当者にアラーム通報を発信する手段を備えていることにより、的確に対象者の異変を見守り担当者に通知し、対象者の見守りをより確実にすることができる。
また、前記サーバは、前記枕センサが人為的に繰り返し振られる操作を検知した際に、見守り担当者に緊急通報を発信する手段を備えていることにより、見守り対象者に緊急事態を通報して、的確な処置を行うことが可能になる。枕センサは3軸加速度センサを搭載しており、対象者が就寝時に急病を発したときに枕センサを振ることで、緊急通報を行うことが可能である。
また、前記サーバは、対象者の平時の生活パターンから外れた異変の緊急度について分析する手段と、その分析結果に基づき、必要に応じて、見守り担当者にアラーム通報を発信する手段を備えていることにより、対象者の緊急度に応じて的確に対象者を支援することができる。
【0011】
また、前記センサ・エージェントは、前記枕センサと前記ベッドセンサからの行動・健康情報については前記サーバにリアルアイム送信せずに、前記データ処理手段で就寝・起床判定のデータ処理を行って前記サーバへ送信し、その他の前記動体センサ、前記リモコンセンサ、前記鍵束に装着したRFIDを検知する鍵タグセンサについては、その他の前記データ処理手段からそのまま前記サーバへ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る見守りシステムによれば、見守り対象者の生活パターンを、対象者のプライバシーを保護し、非侵襲的に分析して把握することができ、対象者の生活パターンに基づいて対象者の異変を確実に検知することができ、検知結果を対象者の見守りに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る見守りシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】センサ・エージェントの試験機の外観写真である。
【図3】各種センサからの行動・健康情報を収集するセンサ・エージエントのシステム構成を示す説明図である。
【図4】センサ・エージェントが備える機能モジュールのブロック図である。
【図5】行動・健康情報の実際の収集例を示すグラフである。
【図6】センサ・エージェント内におけるデータ処理を示す図である。
【図7】センサ・エージェント内におけるデータ処理を示す図である。
【図8】汎用的なデータ処理方法による実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
独居者等の見守り対象者の見守り活動において最も重要な点は、対象者の異変に対して可能な限り早く気付くことである。このためには対象者の外的観測と宅内状況の観測を総合して、駆け付け対応のしきい値を決定する必要がある。
対象者の日常的な行動についての情報は、可観測点と観測項目とを増やすことで高精度の情報収集と判定が可能である。しかしながら、観測点や観測項目を増やすと、対象者の心理的障壁の高まりや監視ストレス、対象者の生体へ侵襲するおそれが増大するおそれがある。このような制限を考慮して、本発明に係る見守りシステムでは、対象者の生活パターン等を検出するセンサについては完全に非侵襲的であるものとし、対象者の観測項目と駆け付け行動項目を以下のように設定する。

【0015】
対象者の観測項目は、観測者の生活パターンを検知するために観測する項目である。観測項目として下記の項目を設定する。
(A1) 就寝・起床の別
(A2) 在宅・外出の別
(A3) テレビ・エアコンなどの操作・使用状況
(A4) 宅内で移動している頻度
(A5) 寝たきり状態で無いことの確認
(A6) 緊急通報の有無
緊急通報とは、対象者自身が身体的な異常状態に陥ったときに、自ら異常状態にあることを見守り側へ通報できるようにすることである。

【0016】
駆け付け行動項目では、見守り対象者の平時の生活パターンと比較して、現在の状態が正常範囲内か、大幅に外れているか(異常状態)のしきい値を決定し、異常状態を検知して、異常状態を通報できるようにする必要がある。駆け付け行動項目として以下の項目を設定する。
(B1) 平時のデータ収集と学習
(B2) アラート発報が可能であること
(B3) 駆け付け対応者(親戚、民生委員、行政職員、高齢者対応住宅の管理人)への自動通報
(B4) 対象者からの緊急通報時の即時アラート発報
(B5) 駆け付け行動の優先度
(B6) 匿名化した状態での収集データのビッグデータとしての活用

【0017】
本発明に係る見守りシステムでは、昼夜間を通じて宅内での対象者の行動を高精度で検知するため昼間と夜間での生活行動に特化した複合センサを組み合わせて使用する。
昼間の生活行動を検知するセンサとしては、動体センサ、リモコンセンサ、鍵タグセンサ、物理センサ等を使用し、夜間(就寝時)の生活行動を検知するセンサとしては既存のベッドセンサ、枕センサを使用する。このベッドセンサ、枕センサは、独居者の就寝時見守りを目的として開発されたセンサである(下井信浩, 間所洋和: “3 軸加速度センサとピエゾ荷重センサを用いたベッドモニタリングシステムに関する研究”, 計測自動制御学会論文集, 49(12), 1092-1100 (2013))。
ベッドセンサは、ベッド上面に荷重センサを設置し、対象者の就寝時の状況(寝返り等)及び起床時の体勢変化を検出する。枕センサは、枕の内部に3 軸加速度センサを設置し、対象者の就寝時の状況を更に複合的に検知する。

【0018】
ベッドセンサ、枕センサを用いて対象者の行動を検知する方法として、本発明では、対象者の心理的障壁ならびにプライバシー保護の点から、就寝時のリアルタイムな挙動を収集することを避けるとともに、緊急を要する事態を考慮して、以下のような設定とする。
(1)ベッドセンサ・枕センサの観測データはリアルタイム送信・伝送しない
(2)宅内設置のセンサ・エージェントで観測データを受信・前処理し、就寝中・起床前・離床後の状況について判定する
(3)ベッド上に平時より長時間居る場合には寝たきり状態と判定する
(4) 就寝時、急な発病など緊急を要する場合、対象者自身が枕を激しく振る(“枕シェイク” と呼ぶ)ことで、緊急通報を即時行う
このような設定とすることにより、昼間の生活行動形態に特化した複合センサの組み合わせと、夜間の生活行動に特化した複合センサとを組み合わせて、対象者の平時における生活パターンを的確に分析することができ、対象者に異変が生じたことを的確に判断することが可能になる。
なお、枕センサとベッドセンサは、見守り対象者の就寝、起床といった行動に関わる情報に加えて、枕センサの他にベッドの寝具の下側やベッドフレームに加速度センサをセットすることにより、対象者の健康に関わる情報(心拍数や呼吸等のバイタル情報)についても取得することが可能である。したがって、対象者の行動に関わる行動情報とともに対象者の健康情報に基づいて対象者の異常をあわせて検知することができる。
前述した駆けつけ行動項目における、(B5) 駆け付け行動の優先度については、対象者の健康情報あるいは健康情報と行動情報に基づいて設定することができ、またその分析結果の緊急度に基づいて即時アラート通報を発報するように設定することもできる。

【0019】
(見守りシステムの概略構成)
図1に本発明に係る見守りシステムの概略構成を示す。
本発明に係る見守りシステムは、各種センサを用いて、見守り対象者(対象者)の生活パターンに関する情報(行動・健康情報)を収集するため、宅内にセンサ・エージェントを設置して対象者の行動・健康情報を収集し、収集した行動・健康情報をサーバに送信して対象者の平時における生活パターンを学習させ、分析して得られた平時の生活パターンから大幅に外れる異変(アノマリ状態)があった場合に、その異変を素早く検知し、見守りネットワーク上の見守り担当者へ即時通報し、駆け付け行動を可能にするシステムである。
なお、対象者の生活パターンには、対象者がほぼ毎日行う起床、就寝、食事といった定時的な行動パターンの他に、特定の曜日に出掛けるといった周期的なイベントや、不定期的な行動パターンを含む。

【0020】
対象者の生活パターンに関する行動・健康情報を得るためのセンサとしては、対象者のプライバシーを確保するとともに、対象者の心理的障壁を軽減し、非侵襲的に行動・健康情報が得られるものを使用する。
対象者の生活パターンを検知するセンサは設置数をできるだけ抑えるとともに、対象者の生活パターンを的確に把握することができるように、対象者の生活パターンを複合的な見地から検知することができるセンサを使用する。

【0021】
対象者の昼間の生活パターンに関する行動・健康情報を得るセンサとしては、対象者の在宅モードと留守モードについての情報を得るものとして、玄関や部屋の出入り口の施錠に用いる鍵を含む鍵束にRFIDタグを取り付けたタグ付鍵束、宅内における対象者の動きを検知する動体センサ、対象者が赤外線リモコンで家電を操作したことを検知するリモコンセンサ、対象者が冷蔵庫や洗濯機等の家電を使用したことを検知するリモートセンサ、対象者の意思によって操作する物理スイッチを使用する。
また、対象者の夜間(就寝時)の生活パターンに関する行動・健康情報を得るセンサとして、前述したベッドセンサ、枕センサを使用する。枕センサには3軸の加速度センサが設けられているから、就寝時に対象者が急病を発した場合等には枕センサを振ることによって緊急信号をとらえることができる。

【0022】
(センサ・エージェントの構成)
図2は試験用として製作したセンサ・エージェントの試験機である。
このセンサ・エージェント10は、ベースステーション20とベースステーション20に装着したタブレット端末30とを備える。
ベースステーション20の上面には、RFIDタグを取り付けた鍵束40を置く凹部状の鍵束ボックス21が設けられている。鍵束ボックス21の下方のベースステーション20の内部には、鍵束40に装着したRFIDタグを検知するタグセンサ(不図示)が設けられている。

【0023】
また、ベースステーション20の筐体の前部には動体センサ41と、リモコンセンサ42が設けられ、筐体の上面には、見守り対象者が操作する物理スイッチとして、一対のプッシュスイッチ22a、22bが設けられる。また、筐体の上面に、センサ・エージェントが稼働状態にあることを点灯により示すLED23が設けられている。
なお、図2に示すセンサ・エージェントには設けていないが、ベースステーション20には、ベッドセンサ、枕センサからの行動・健康情報や、冷蔵庫の開閉や生活家電の使用状況についての行動・健康情報を検知する手段を設けることができる。

【0024】
図3は、各種センサからの行動・健康情報を収集するセンサ・エージエント10のシステム構成を示す。
鍵束40に装着したRFIDタグからの無線信号はベースステーション20内に設置した非接触センサにより検知され、リモコンを操作したときの赤外線信号はリモコンセンサ42により検知され、対象者の動きは動体センサ41によって検知されセンサ・エージェント10に収集される。
ベッドセンサ、枕センサにはリモートセンサが装着され、これらのセンサによる観測データは無線ネットを介してセンサ・エージェント10に伝送され収集される。
また、冷蔵庫の使用を検知するセンサとして、冷蔵庫の開閉を検知するリモートセンサを設け、冷蔵庫の開閉操作が無線ネットを介してセンサ・エージェント10に伝送されるように構成する。電熱器、扇風機、洗濯機等の生活家電の使用については、コンセントにリモートセンサ付きの電力計を装着し、電力計の計測データを無線ネットを介してセンサ・エージェント10に伝送させることで生活家電の使用状態についての行動・健康情報を収集する。
冷蔵庫や生活家電を操作するといった対象者の自発的な動作に関わる行動・健康情報は対象者が平時の状態にあることを示す情報となる。

【0025】
(行動・健康情報)
RFIDタグを取り付けた鍵束40は、対象者が在宅しているか外出しているかを判定する情報、すなわち対象者が在宅モードにあるか留守モードにあるかを判定する情報となる。
対象者が在宅時に、RFIDタグを取り付けた鍵束40をベースステーション20の鍵束ボックス21に置くように習慣付けることにより、鍵束の一括管理を兼ねて対象者の在宅モードと留守モードを的確に判定することができる。
ただし、RFIDタグを取り付けた鍵束40は、宅内のベースステーション20以外の場所に置かれる可能性もある。このため、鍵束40に装着したRFIDタグを無線により検知する手段をベースステーション20に付設し、宅内に鍵束40が在るか否かを判定するようにすることもできる。
鍵束40に装着するRFIDタグは、暗号化機能を有することから、対象者の識別に有効に利用でき、安価であるという利点がある。

【0026】
ベースステーション20に動体センサ41を設置することにより、センサ・エージェント10に対象者が近づいたり遠ざかる行動を検知することができ、宅内における対象者の動きについての行動・健康情報を得ることができる。宅内のリビングのような、昼間時に対象者がよく使用する部屋にセンサ・エージェント10を設置し、対象者の行動を行動・健康情報として収集する。
なお、動体センサ41は対象者の他に室内飼いの犬や猫を感知する可能性があるから、他のセンサから得られる行動・健康情報と合わせて対象者の動きを判別する。

【0027】
リモコンセンサ42は、テレビやエアコンなどの赤外線リモコンを使用した操作を行動・健康情報として収集するためのものである。対象者がリビングで座ってテレビを見ているといった状態では、動体センサ41では対象者の動きを検知することができない。リモコンセンサ42は、対象者の動きが検知できないような場合でも、家電のリモコンを操作したことを検知することにより、対象者が在宅していること、テレビやエアコンを操作することができるノーマルな状態にある行動・健康情報となる。

【0028】
リモコンセンサ42はリモコンの赤外線を検知するセンサであるから、動体センサ41を装着したセンサ・エージェント10は、リモコンの赤外線を受けやすい場所(テレビの近く等)に設置するのがよい。
図2に示すセンサ・エージェント10ではベースステーション20の筐体に動体センサ41を装着したが、複数の居室がある場合には、主要な居室あるいは全室に動体センサをリモートセンサとして設置し、無線ネットを介してセンサ・エージェント10に行動・健康情報を伝送するようにしてもよい。

【0029】
ベッドセンサ、枕センサは、対象者が就寝している状態の行動・健康情報として利用することができる。ベッドセンサは対象者がベッド上で寝返り等の体動についての行動・健康情報となり、枕センサは対象者の呼吸や首から上の小さな動きを示す行動・健康情報となる。枕センサとして枕内に設置した3軸加速度センサは対象者の小さな動きであっても検知することができる。また、枕センサとベッドセンサに加速度センサを装着することにより、対象者のバイタル情報(心拍、呼吸等)を取得することができる。
このように、ベッドセンサ、枕センサは対象者の夜間(就寝状態)における行動及び健康状態を示す行動・健康情報として利用される。
枕センサは、対象者が病気等を急に発症したような場合に、枕を振ることで異変を知らせる緊急通報として利用することもできる。枕センサを振ることによるトリガー信号がセンサ・エージェント10で収集され、枕を振っていることを検知した場合には、緊急信号として即時に見守り担当者に通報される。また、枕センサ、ベッドセンサから取得されたデータに基づいて対象者の健康状態について支援の緊急性が検知された場合にも、見守り担当者に緊急信号通知される。

【0030】
上述した動体センサ41、リモコンセンサ42、リモートセンサ等を介してセンサ・エージェント10で収集される行動・健康情報は、対象者の自発的な意思に関わらずに収集する情報である。一方、センサ・エージエント10の筐体に設けたプッシュスイッチ22a、22bは、対象者が自発的に操作することを前提として設けたものである。
プッシュスイッチ22a、22bは各種用途に利用することができるが、たとえば、対象者が外出する時にプッシュスイッチ22aを押し、外出から戻ったときにプッシュスイッチ22bを押すといった操作をすることにより、対象者が在宅しているか、外出しているかを判定する行動・健康情報を送信することができる。また、就寝するときにプッシュスイッチ22aを押し、起きたときにプッシュスイッチ22bを押すといった使い方も可能である。

【0031】
また、プッシュスイッチ22a、22bはベースステーション20の筐体に設けているから、対象者がプッシュスイッチ22a、22bを押す操作をした際には、動体センサ41によって対象者がセンサ・エージェント10に近づき、離れるといった動作を同時に検知することになり、対象者本人がとった行動であることを高精度に確認することができる。動体センサ41のみでは、室内で行動している犬や猫の動きを対象者の動きとして誤検知する可能性があるが、プッシュスイッチ22a、22bを併用することで、このような誤検知を防止することができる。
なお、プッシュスイッチは上記例のように2個を一組として設定してもよいし、1個ごとに各別の状態を識別するスイッチとして使用することもできる。また、プッシュスイッチは2個に限るものではなく、プッシュスイッチ以外の物理スイッチ(操作スイッチ)を使用することもできる。

【0032】
上述した対象者が自発的に操作することによって得られる行動・健康情報は、動体センサ41やリモコンセンサ42と比べて、対象者の行動に関する確度の高い情報として得ることが可能である。動体センサ41やリモコンセンサ42、家電機器の操作を検知するセンサによって得られる行動・健康情報と、対象者の自発的操作による行動・健康情報とを組み合わせて利用する方法は、対象者の生活パターンをより高精度に分析することを可能にし、対象者の異変をより確実に判定する方法として有効である。

【0033】
(センサ・エージェントの設計例)
図4にセンサ・エージェント10が備える各機能モジュール(HW/SW)の構成を示す。
センサ・エージェント10は、プッシュスイッチ22a、22b、動体センサ41等の周辺ハードウェアを備えるとともに、組み込みマイクロプロセッサ50と、Bluetooth(登録商標)接続インターフェイス52を内蔵する。上述した実験例では、組み込みマイクロプロセッサ50としてArduino:An open-source prototyping platform for embedded systems)、Bluetooth(登録商標)接続インターフェイスとして1Sheeld: An Arduino multi-purpose shield with smartphoneを使用した。
タブレット端末30には、画面サイズ7インチAndroid(登録商標)端末を使用した。Android(登録商標)端末はWiFi、Bluetooth(登録商標)通信機能を有し、ベースステーション20とBluetooth (登録商標)接続により各センサからの行動・健康情報が伝送される。Android(登録商標)端末には多目的接続アプリ1Sheeld App を導入し、これらのアプリケーションは、Text-to-Speech 音声合成アプリN2TTS の上で設計・実装されている。

【0034】
ハードウェアについての実際の設計は次の通りである。
センサ類については、実装ボード上に、プッシュスイッチ22a、22b、動体センサ41、リモコンセンサ42、鍵束40に装着したRFIDを検知するタグモジュール、動作確認のためのLED23を実装した。これらはSPI/PIOインターフェイス経由で組み込みマイクロプロセッサ50へ接続される。
行動・健康情報については、プロセッサのファームウェア(後述)で処理した後、UART シリアル経由でBluetooth(登録商標)接続インターフェイス52へ転送する。転送されたセンサの行動・健康情報は、Bluetooth(登録商標) ペアリング相手先のAndroid(登録商標)端末へ転送される。Android(登録商標)端末は、HTTP/TCP/IP スタックを経由して,ネットワークへ送出される設計とした。

【0035】
ソフトウェアについては以下のように設計して実装した。
組み込みマイクロプロセッサ上のファームウェアでは、各種センサからのHigh/Low レベル検知によるエッジトリガー、ならびにRFID タグモジュールの初期化とタグ検知・離れ判定を実施する。
2つのプッシュスイッチは、左右で各々「手動で留守モード」「手動で在宅モード」を送信する。動体センサは、近づき・離れの累積カウントを行い、カウント値はセンサ離れトリガー時に送信する。
RFID タグモジュールは、鍵(束)に装着したMifare タグの近づき・離れの検知を行い、一定時間以上の状態継続後、各々「自動で在宅モード」、「自動で留守モード」を送信する。
リモコンセンサによる受信データは、メーカコードとデータ部32bit 分をエンコードした結果をデータ送信する。
動作確認LED は、プッシュスイッチ押下げ時、動体センサによる近づき検知時、RFID タグによる近づき検知時に、それぞれ点滅を行う。

【0036】
Android(登録商標)端末上に導入される多目的接続アプリ1Sheeld App により、Arduino ファームウェアから送信された行動・健康情報を受信した後、ベースステーションとしての機能別(Logger, Clock, Terminal, HTTP, TTS)に処理を実行する。
行動・健康情報は,HTTP/TCP/IPスタック経由で、WiFi 回線によってネットワーク上へ送出される設定とした。
手動・自動で在宅・留守モードへ移行した際、対象者へのフィードバックのため、Textto-Speech 音声合成アプリN2TTS によって発声する設定とした。

【0037】
(行動・健康情報の収集例)
上述した試験機の実際のデータ収集能力について評価するため、小規模実証モデルルームを構築し、モデルルームに設置してデータ収集実験を行った。モデルルームには、折り畳み式簡易ベッド、赤外線リモコンで操作可能なテレビ、各種什器(冷蔵庫・電気ポット・机・椅子・電話器)が配備されている。
図5にモデルルームでの行動・健康情報の収集例を示す。収集した行動・健康情報は以下の(1)~(4)である。
(1) プッシュスイッチの押下げトリガー
(2) 動体センサの累積カウント値
(3) RFID タグの近づき・離れのエッジトリガー
(4) リモコンセンサ受信データ

【0038】
これらのPOST データと併せて、URL引数でエージェント機器ID、ファームウェアバージョン、及び起動累積回数を送信し、宅内サーバに実装されたデータベースへこれらの送信データをinsertし蓄積する。宅内センサ・エージェントから宅内サーバへの伝送プロトコルはHTTP、格はPOST Method で実施した。
機器別可視化のため、可視化エンジンとしてD3.js(Data-Driven Documents)を用いた。

【0039】
図5に、特定のIDを有する宅内センサ・エージェントの5 日間について、6 時から20 時までの時間帯における、前述した(1)~(4)の行動・健康情報を示す。
動体センサが連続的に検知されているライン上の時間帯は、対象者が宅内に居てテレビを観ているか移動しているなど、実際に「在宅」していると判断できる。また、リモコンセンサが受信している個所は、テレビのON/OFF やチャンネル変更など行っていることを示し、対象者はその意味で「健全」であることが判断できる。プッシュスイッチの行動・健康情報が全く無くなり、かつ動体センサによる行動・健康情報も無くなった時間が長時間連続した日が2日ある。これは、対象者が「留守・外出中」であることが判断できる。
この試験結果は、センサ・エージェントの試作機が行動・健康情報を的確に収集することができていることを示している。

【0040】
見守り対象者の平時の生活パターンには、さまざまなバリエーションがあるから、対象者の平時の生活パターンを分析して把握するには、種々のバリエーションを把握するに十分な期間にわたって対象者の生活パターンについての行動・健康情報を蓄積する必要がある。実際には、対象者の生活パターンについての行動・健康情報を蓄積しながら、生活パターンの分析を進め、併せて生活パターンの健全状態、健全状態からの逸脱を示すしきい値について検討し、異変の検知精度を向上させる必要がある。

【0041】
(データ処理方法)
本発明に係る見守りシステムでは、対象者の観測項目として、
(A1)就寝・起床の別
(A2)在宅・外出の別
(A3)テレビ・エアコンなどの操作・使用状況
(A4)宅内で移動している頻度
(A5)寝たきり状態で無いことの確認
(A6)緊急通報の有無
を設定し、枕センサや動体センサといった適宜センサを使用してこれらの項目を観測している。
また、見守りシステムの出力としては、緊急通報時の即時アラート発報、平時の生活パターンからの逸脱に対する駆け付け対応のための通報がある。
これらの出力のうち、緊急通報についてはその緊急性からセンサ・エージェントで検知した後、短時間のうちにサーバに送信して出力するが、平時の生活パターンからの逸脱の検知については、センサから送信される行動・健康情報に基づいてサーバで判定して出力する。サーバには、枕センサやベッドセンサ、動体センサ、リモコンセンサ、鍵タグセンサ等のセンサ群からの行動・健康情報が、基礎データとして順次送信され、蓄積された情報に基づいて、対象者が平時の生活パターンの状態にあるか、平時の生活パターンから外れたアノマリ状態にあるかといった判断を行う。

【0042】
図6はセンサ群からセンサ・エージェントに送信されるデータのセンサ・エージェントにおけるデータ処理例を示す。
図6に示すように、センサ・エージェントでは、枕センサ、ベッドセンサ、動体センサ、リモコンセンサ、鍵タグセンサからの行動・健康情報が受信されサーバに送信される。なお、センサ・エージェントによって受信された行動・健康情報のうち、枕センサが揺動されたこと(揺動検出)による緊急情報については、センサ・エージェントから緊急情報としてアラーム情報が送信される。一方、緊急情報以外のセンサからの情報はセンサ・エージェントから個別にサーバへ基礎データとして送信され、順次蓄積される。

【0043】
ここで、各センサからセンサ・エージェントに送信される送信データには、動体センサやリモコンセンサ、鍵タグセンサのように、センサからのデータがそのまま意味のあるデータとして利用できるものと、枕センサやベッドセンサのように、生データのままでは情報量が多すぎることから簡単なデータ処理をしなければ判定用のデータとして利用できないデータとがある。言い換えれば、動体センサやリモコンセンサから送信されるデータは間欠的に送信されてくるトリガー的な行動・健康情報であり、枕センサやベッドセンサは1秒間に数十個といったデータが送信されてくる連続的な行動・健康情報である。
このようにセンサとして使用されているセンサの特性や、各センサが受け持つ役割の相異により、センサ・エージェントに送られてくる行動・健康情報には、データ数や送信タイミング等が異なる種々のデータが混在している。

【0044】
図6に示すセンサ・エージェントでは、枕センサとベッドセンサからの行動・健康情報については、センサ・エージェント内で、就寝・起床判定のデータ処理を行ってサーバへ送信し、その他の動体センサ、リモコンセンサ、鍵タグセンサについては、そのままサーバへ送信している。
この図6に示すように、センサから送信される行動・健康情報については、センサごとに処理方法を設定してデータ処理することも可能であるが、見守りシステムにおいては、見守り精度を向上させるために、データの種類の変更や、センサの変更、新たなセンサの追加、新たな処理の追加といった変更が生じることが容易に想定される。そのような場合に、センサごとにセンサからのデータとその処理の組み合わせを変更してシステムを構築する方式では、システム構成が煩雑で、いろいろな修正を行ったり機能を追加したりすることが煩雑になる。

【0045】
以下に、データの種類の変更やセンサの変更があった場合でも、センサからのデータの受信処理とデータ処理を容易にかつ汎用的に行うフレームワークについて説明する。
センサ・エージェント内におけるデータ処理の要件を一般化すると下記のようになる。
(R1)一つのセンサのデータが複数の処理に用いられる
(R2)一つの処理に複数のセンサからのデータが用いられる
(R3)処理ごとに必要とされる過去のデータ量が異なる
(R4)センサが追加される場合がある
(R5)処理が追加される場合がある
本発明の見守りシステムにおいては、平時の生活パターンからの逸脱を判定する方法として、さまざまなセンサから得られる行動・健康情報を複合化して利用することを特徴とする。センサ・エージェントで受信した行動・健康情報を蓄積するとともに、行動・健康情報を複合化して利用することにより見守り精度を向上させることをねらっている。

【0046】
図7は上述した処理要件を満たすセンサ・エージェントにおけるデータ処理の例を示す。
上記処理要件を満たすため、まず、センサからのデータ受信と、データ処理の操作を分離する。センサからのデータ受信とデータ処理の操作を分離することで、センサの追加やデータ処理の追加に柔軟に対応することができ、要件(R4)、(R5)を満たすことができる。
なお、図7におけるデータ処理とは、就寝・起床の別、在宅・外出の別、複数の動体センサ間の移動、家電の使用状況といった観測項目についてのデータ処理を意味する。

【0047】
また、センサからのデータの受信を、データの受信方法に依存するデータ受信ブロック(データ受信手段)に分け、データの受信方法が共通するセンサについては共通のデータ受信ブロックで受信する。データ受信ブロックでは、センサから送信されるデータをどのデータ処理ブロック(データ処理手段)に振り分けるか振り分け処理(振り分け処理手段)を行う。この振り分け処理によって、一つのセンサのデータを複数の処理に用いる要件(R1)が満たされる。

【0048】
データ受信ブロックをデータの受信方法に依存して設けている理由は、センサとセンサ・エージェントとの間のデータ通信方法がセンサに依存するからである。例えば、センサとコンピュータ(センサ・エージェント)とのデータ通信がI2C等のシリアル通信で行われる場合には、シリアル通信処理プログラムをベースとしたデータ受信プロセスが必要となる。したがって、データ受信プロセスは、センサごとではなく、図7に示すように、センサとのデータ通信方法に依存するデータ受信ブロック(データ受信手段)として実装する。

【0049】
上述したように、データの受信とデータ処理とを別プロセスにしたことから、プロセス間でのデータのやりとりが必要となる。このため、データ処理ブロック(データ処理手段)の前段に、データ処理タイミング調整を行うための必要な長さをもつメッセージキューブロック(メッセージキュー手段)を設ける。
このメッセージキューブロックは独立したプロセスとして設け、複数のデータ受信ブロックからのデータの受け入れができるようにする。メッセージキューブロックを設けることにより、複数のセンサからのデータを用いる(R2)の要件を満足することができる。
メッセージキューブロックは、データ処理ブロックに必要なデータを蓄積できるようにするため、メッセージキューの長さを適宜調節して設ける。メッセージキューの長さを調節することにより、データ処理ごとに必要となる過去のデータ量が異なる場合でも、適宜センサからのデータをデータ処理に利用する(R3)の要件を満足することができる。

【0050】
図7に示すように、メッセージキューブロックは、データ処理ブロックの前段にデータ受信ブロックから出力されるデータを入力する構成とすることもできるし、いったんデータ処理を行った後の出力を、他のセンサのデータとともにメッセージキューブロックへ入力させる構成とすることもできる。すなわち、メッセージキューブロックはデータ処理ブロックの前段に配することにより、当該データ処理に必要となるデータを蓄積するためのものであり、センサからのデータに限らず、他のデータ処理後のデータを入力として用いることができる。

【0051】
図7に示すデータ処理において、枕を揺動したことを検知した場合の緊急通報処理については、リアルタイム性が求められるから、検知が必要な直近のデータがたまるごとに検知処理を行う必要がある。したがって、メッセージキューの長さをこの検知が必要になる必要最小限のデータ量に設定することで、的確に緊急通報処理を行うことができる。これによって、図7に示すデータ処理方法によって、緊急通報処理も可能になる。
また、サーバへのデータ送信についても、インターネット経由での送信オーバーヘッドを考慮した通信間隔に基づいてメッセージキューの長さを指定することで、必要最小限のデータ蓄積を実現できる。緊急通報処理のためにはリアルタイム性とデータ送達の確実性をともに備える必要がある。インターネット経由でのデータ送信は比較的時間がかかるが、メッセージキュー方式により、キュー長を適切に制御することで、リアルタイム性と送信バッファ溢れ防止の両方を実現する。

【0052】
(データ処理実験)
上述したデータ処理方法によって、要件(R1)、(R2)、(R3)が満足されるか否かについて実験機を製作して実験を行った。
試作したコンピュータシステムにはRaspberryPi 3 Model Bを使用した。実験では枕センサとベッドセンサを使用して行動・健康情報を取集した。使用したセンサからは50Hzで10点程度のデータが送信されてくる程度であり処理能力には余裕がある。
処理プロセスの分離については、データ処理用コンピュータにマルチタスク機能を有するOSをインストールし、OS機能により多プロセスの同時実行を管理させた。具体的には、マルチタスクOSとしてLinux(登録商標)を使用し、RaspberryPi用のLinux(登録商標)ディストリビューションの一つであるRaspbian Jessieを使用した。このLinux(登録商標)上で各処理を別々のプログラムとして開発し、同時に実行することで並列処理を実現した。

【0053】
メッセージキューについては、オープンソースソフトウェアであるRedisを使用した。Redisはデータベースサーバの一種であり、メモリ上で動作する。
Redisはデータベースサーバであるが、文字列のリストを保持する機能を有しており、このリストを先入れ先出しで扱うことで、メッセージキューとして利用することができる。また、データベースサーバであることから、プロセス間通信もしくはネットワーク通信でのデータ送受信をサポートしており、センサ・エージェントの機能を満たすことができる。

【0054】
データ受信についてはZigBee(登録商標)によりセンサとのデータ通信を行った。
実験で使用した枕センサは枕用3軸加速度センサであり、ベッドセンサは5チャンネルの荷重センサである。3軸加速度センサは20msごとに各軸の加速度が送信される。荷重センサも20msごとにZigbee(登録商標)経由でデータ送信される。

【0055】
データ処理については、揺動検知、就寝・起床判定、サーバへの送信の3種の処理を実装して実験した。
枕の揺動検知については、加速度データからFFTにより特定の周波数を検出することで行うこととし、Perlにより実装した。メッセージキューの長さはFFTに必要な長さを設定した。
就寝・起床判定については、枕及びベッドのセンサから人の動きによる振動を検出し、ベッドの上にいるかどうかの判定を行う処理を実装した。この処理には1秒分のデータが必要になることから、バッファの余裕をみて、2秒分のデータの蓄積が可能なメッセージキューを用意した。この実装には、動き検知のプログラム作成実績のあるPythonを使用した。
サーバへの送信は、各処理での判定結果をインターネット経由でサーバに送信する処理であるが、サービスのクラウド化を考慮し、サーバ接続での実績の多いHTTPクライアントを基とした処理を行うこととし、Perlにより実装した。送信間隔はHTTPによるデータ送信のオーバーヘッドとサーバ側でのデータ樹脂の遅延を考慮し、5秒ごとにデータをまとめて送信することとした。これにより、メッセージキューも5秒分のデータが蓄積可能な長さに設定した。

【0056】
図8は、サーバ側で受信した結果を簡易的に可視化するプログラムを作成し、試作したシステムの動作確認を行った結果を示すもので、実験で得られたデータ収集結果をグラフとして示したものである。
図8中でBEDとあるのはベッドセンサからのデータの分析結果、PILとあるのは枕センサからのデータの分析結果を示す。
図中でa部分(濃色)は、センサは動作しているが動きの検知がない状態、b部分(薄色)は動きを検知した状態、c部分(中間濃色)は揺動を検知した状態をそれぞれ示す。
図8に示す実験結果は、それぞれ独立に開発したデータ受信・データ処理プロセスが連携して動作することを示している。すなわち、図7に示した処理手法がセンサからのデータ処理に利用できることを示す。
また、取得した行動・健康情報を用いてデータ処理した結果にしたがって、見守り側への駆けつけ行動項目として、「危険」、「やや危険」、「絶対確認を要する」といった駆けつけ支援の優先順位を支援者側の受信画面に表示し、支援者に緊急度を通知する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0057】
10 センサ・エージェント
20 ベースステーション
21 鍵束ボックス
22a、22b プッシュスイッチ
23 LED
30 タブレット端末
40 鍵束
41 動体センサ
42 リモコンセンサ
50 組み込みマイクロプロセッサ
52 Bluetooth(登録商標)接続インターフェイス

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7