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明細書 :路網ルート設計装置及びそのプログラム、並びに路網ルート生成表示システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-201936 (P2017-201936A)
公開日 平成29年11月16日(2017.11.16)
発明の名称または考案の名称 路網ルート設計装置及びそのプログラム、並びに路網ルート生成表示システム
国際特許分類 A01G  23/00        (2006.01)
G09B  29/10        (2006.01)
G06Q  50/02        (2012.01)
FI A01G 23/00 551Z
G09B 29/10 A
G06Q 50/02
請求項の数または発明の数 19
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-095747 (P2016-095747)
出願日 平成28年5月12日(2016.5.12)
発明者または考案者 【氏名】白井 裕子
【氏名】野澤 直樹
【氏名】藤井 祥万
【氏名】佐藤 隆哉
【氏名】加藤 卓哉
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
テーマコード 2C032
5L049
Fターム 2C032HB05
2C032HC08
2C032HC14
2C032HD17
5L049CC01
要約 【課題】現場の技術者個人の経験や勘に依存することなく、路網の作設範囲における地形条件や、路網の新設工事に必要なコストや路網の新設によって見込まれる収入を考慮して、現実性の有る路網計画を自動生成すること。
【解決手段】本発明に係る路網ルート設計装置11は、予め記憶された山林内の地図情報と作業道を通行する作業車両のスペックに関する車両情報とに基づき、予め指定された作設範囲内で候補となる候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段19と、各候補ルートの長さを求めるルート長さ算出手段20と、各候補ルートそれぞれにつき、ルートの長さと各種の条件設定に基づき、作業道の新設により見込まれる収入から作業道の新設工事に必要なコストを差し引いた想定利益をルート選択用の指標として求める想定利益算出手段22と、各候補ルートの中から、想定利益に基づき選択されたルートを決定ルートとするルート決定手段23とを備えている。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
山林内に新設される路網のルートを設計する装置において、
予め記憶された山林内の地図情報と前記路網を通行する作業車両のスペックに関する車両情報とに基づき、予め指定された前記路網の作設範囲内で候補となる前記路網の候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段と、前記各候補ルートの長さを求めるルート長さ算出手段と、前記各候補ルートそれぞれにつき、前記ルート長さ算出手段で求めたルートの長さと各種の条件設定に基づき、前記路網の新設により見込まれる収入から前記路網の新設工事に必要なコストを差し引いた想定利益をルート選択用の指標として求める想定利益算出手段と、前記各候補ルートの中から、前記想定利益に基づき選択されたルートを決定ルートとするルート決定手段とを備えたことを特徴とする路網ルート設計装置。
【請求項2】
前記候補ルート生成手段は、前記候補ルートの経由地で木材の集積場所となり得る土場候補地を複数箇所抽出する土場候補地抽出部と、前記土場候補地の位置情報と前記作設範囲内に存在する既設林道の位置情報に基づいて、前記候補ルートの起点と終点を決定する起終点決定部と、前記車両情報に基づき前記路網の設計条件を設定する設計条件設定部と、前記起点及び前記終点の位置情報及び前記設計条件に基づき、前記候補ルートを生成するルート生成部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の路網ルート設計装置。
【請求項3】
前記土場候補地抽出部では、前記作設範囲内で、等高線に交差する複数の仮想線を配置し、前記等高線と前記仮想線とで区分される各区画について面積がそれぞれ求められ、所定の閾値以上の面積を有する区画の中から前記土場候補地を抽出することを特徴とする請求項2記載の路網ルート設計装置。
【請求項4】
前記起終点決定部では、前記既設林道から最も近くに位置する前記土場候補地における一地点が暫定的な前記起点である仮起点とされ、前記等高線情報に基づき、前記仮起点から最も勾配が緩やかなルートで接続された前記既設林道の地点を前記起点として決定するとともに、前記既設林道から最も遠くに位置する前記土場候補地における一地点が前記終点として決定されることを特徴とする請求項2記載の路網ルート設計装置。
【請求項5】
前記設計条件設定部は、設計する前記路網の最小道幅を設定する道幅設定部と、設計する前記路網の勾配の上限値を設定する勾配上限設定部と、前記作業車両での森林施業を可能にする路網密度の下限値を設定する路網密度設定部とにより構成されることを特徴とする請求項2記載の路網ルート設計装置。
【請求項6】
前記ルート生成部は、前記作設範囲内で前記路網の折り返し地点となり得る折り返し地点の候補を探索する折り返し地点候補探索部と、前記設計条件設定部で設定された前記設計条件に基づき、前記折り返し地点の候補の中から前記折り返し地点を折り返し回数とともに決定する折り返し決定部と、決定された前記折り返し地点の位置情報及び前記土場候補地抽出部で抽出された前記土場候補地の位置情報から、これら折り返し地点及び土場候補地を通る最適ルートを求める最適ルート導出部とを備えたことを特徴とする請求項2記載の路網ルート設計装置。
【請求項7】
前記ルート生成部は、前記最適ルート導出部で求めた前記最適ルートでの各折り返し地点の補正処理を行う折り返し地点調整部を更に備え、
前記折り返し地点調整部では、前記各折り返し地点での曲率が求められ、当該曲率が所定値以上のときに、当該曲率が前記所定値未満になるように曲線部分を緩やかにし、或いは、スイッチバック部分を設けることを特徴とする請求項6記載の路網ルート設計装置。
【請求項8】
前記折り返し地点候補探索部では、前記地図情報に基づき、前記作設範囲内に存在する自然障害物に路網が交差しないように、当該自然障害物の若干内側となる位置に前記折り返し地点の候補が設定されることを特徴とする請求項6記載の路網ルート設計装置。
【請求項9】
前記設計条件設定部では、設計される前記路網の最小道幅、設計される前記路網の勾配の上限値、及び山林の単位面積当たりの前記路網の総面積を表す路網密度が決定され、
前記折り返し決定部では、前記折り返し地点候補探索部で設定された前記折り返し地点の候補の中から、前記最小道幅以上、且つ、前記路網密度の下限値以上になるように、複数箇所の前記折り返し地点の組み合わせが選択され、当該組み合わせのパターンが複数抽出されることを特徴とする請求項6記載の路網ルート設計装置。
【請求項10】
前記最適ルート導出部では、前記折り返し地点の組み合わせのパターン毎に、前記地図情報を利用し、前記土場候補地抽出部で抽出された前記各土場候補地を通り、且つ、前記勾配の上限値以下となる前記最適ルートが求められ、当該最適ルートが前記候補ルートとされることを特徴とする請求項9記載の路網ルート設計装置。
【請求項11】
前記想定利益算出手段は、前記想定利益を求める上で必要となる各種の仮定条件が設定される仮定条件設定部と、前記仮定条件から前記コストを算出するコスト算出部と、前記仮定条件から前記収入を算出する収入算出部と、前記収入から前記コストを差し引いて前記想定利益を求める想定利益決定部とにより構成されることを特徴とする請求項1記載の路網ルート設計装置。
【請求項12】
前記コスト算出部は、前記路網の作設時に切り倒される支障木の集材作業における前記作業車両の燃料費を計算する燃料費計算部と、前記路網の新設工事に必要な人件費を計算する人件費計算部と、前記燃料費と前記人件費とを合計して前記コストを求めるコスト決定部とにより構成されることを特徴とする請求項11記載の路網ルート設計装置。
【請求項13】
前記収入算出部は、前記路網の作設時に切り倒される支障木の販売によって見込まれる収入を求める支障木販売収入計算部と、前記路網の開設後の森林施業により得られた当該路網周囲の伐採木の販売によって見込まれる収入を求める伐採木販売収入計算部と、前記支障木及び前記伐採木の販売によって見込まれる収入に、前記仮定条件設定部で設定された補助金情報を加えることで、前記路網の新設により見込まれる収入を決定する収入決定部とにより構成されることを特徴とする請求項11記載の路網ルート設計装置。
【請求項14】
前記ルート決定手段では、前記各候補ルートの中から、前記想定利益が最も大きい候補ルートを前記決定ルートとして抽出することを特徴とする請求項1記載の路網ルート設計装置。
【請求項15】
山林内に新設される路網のルートを設計する装置において、
予め記憶された山林内の地図情報と前記路網を通行する作業車両のスペックに関する車両情報とに基づき、予め指定された前記路網の作設範囲内で候補となる前記路網の候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段を備え、
前記候補ルート生成手段は、前記候補ルートの経由地で木材の集積場所となり得る土場候補地を複数箇所抽出する土場候補地抽出部と、前記土場候補地の位置情報と前記作設範囲内に存在する既設林道の位置情報に基づいて、前記候補ルートの起点と終点を決定する起終点決定部と、前記車両情報に基づき前記路網の設計条件を設定する設計条件設定部と、前記起点及び前記終点の位置情報及び前記設計条件に基づき、前記候補ルートを生成するルート生成部とを備えたことを特徴とする路網ルート設計装置。
【請求項16】
前記作設範囲内において前記既設林道に繋がる前記路網の作設が可能か否かを判定する車両系集材可否判定手段を更に備え、
前記車両系集材可否判定手段では、前記作業車両の移動を妨げる勾配の有無の観点から、前記地図情報に基づいて、前記路網が既設林道に接続可能となる部分が存在するか否かが判定され、当該接続可能な部分が存在すれば、前記路網の作設が可能と判定されることを特徴とする請求項1又は請求項15記載の路網ルート設計装置。
【請求項17】
山林内に新設される路網のルートを設計する路網ルート設計装置に組み込まれるコンピュータのプログラムであって、
予め記憶された山林内の地図情報と前記路網を通行する作業車両のスペックに関する車両情報とに基づき、予め指定された前記路網の作設範囲内で候補となる前記路網の候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段と、前記各候補ルートの長さを求めるルート長さ算出手段と、前記各候補ルートそれぞれにつき、前記ルート長さ算出手段で求めたルートの長さと各種の条件設定に基づき、前記路網の新設により見込まれる収入から前記路網の新設工事に必要なコストを差し引いた想定利益をルート選択用の指標として求める想定利益算出手段と、前記各候補ルートの中から、前記想定利益に基づき選択されたルートを決定ルートとするルート決定手段として前記コンピュータを機能させることを特徴とする路網ルート設計装置のプログラム。
【請求項18】
請求項1記載の路網ルート設計装置を含む路網ルート生成表示システムにおいて、
前記路網ルート生成装置で設計された前記決定ルートを前記作設範囲とともに表す画像を生成してユーザに提示する画像生成提示装置を備え、
前記画像生成提示装置は、前記作設範囲の画像に前記決定ルートを表示した提示画像を生成する画像生成手段と、前記提示画像をユーザに提示する表示手段とを備えたことを特徴とする路網ルート生成表示システム。
【請求項19】
システム内に所定の情報を入力する入力装置を更に備え、
前記路網ルート設計装置では、前記決定ルートが抽出された後で、前記入力装置を通じて前記条件設定を変更することにより、フィードバック処理がなされて前記決定ルートが更新されることを特徴とする請求項18記載の路網ルート生成表示システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、路網ルート設計装置及びそのプログラム、並びに路網ルート生成表示システムに係り、更に詳しくは、山林の地形情報やユーザの利益を考慮し、山林内に新設される路網のルート設計を自動的に行い、当該ルートをユーザに提示する路網ルート設計装置及びそのプログラム、並びに路網ルート生成表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、林業における路網整備は、大山林所有者や自伐林家内に留まった手法により行われており、現場の技術者個人の経験や勘に依存し、数値化や可視化がなされていない。このため、路網整備のノウハウや情報が広範に共有できず、路網作設時に非効率であるばかりか、手法自体も未熟なまま改善や向上させることが困難であり、作設された作業道に土砂崩れ等の不具合が発生することもある。以上の問題を解決するには、地形等の自然条件等から路網計画を自動的に生成するシステムの出現が必要となる。また、作業道の新設工事にかかるコストや作業道の新設によって見込まれる収入を考慮した路網計画も必要であり、これらコストや収入を考慮した路網計画を自動的に行うためのシステムは、これまで全く存在しなかった。
【0003】
ところで、特許文献1には、設計者の長年の経験と勘を不要とし、森林内の既存路網と接続する新設経路を自動生成する新設経路生成装置が開示されている。この新設経路生成装置では、新設経路を生成する対象地域の森林簿に基づいて新設経路が生成される。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-135919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の新設経路生成装置にあっては、森林簿に基づいて新設経路が生成されるため、現実的な路網計画を行うことができない。すなわち、森林簿の情報は、基本的に所有者の申告による情報であり、必ずしも正確な情報とは言えないばかりか、森林簿の情報は、主に樹種(木の種類)や齢級(木の年齢)に関する情報であることから、前記新設経路生成装置では、樹種や齢級という木の情報のみで新設経路が生成されることになる。ところが、実際の林業現場の路網は、地形条件、すなわち、等高線情報、土壌、水や岩等の自然障害物の存在等を考慮しながら、山林所有者の意向に基づき作設される。このことから、前記新設経路生成装置で生成された路網計画は、現実の路網計画に対してかけ離れたものになる。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、現場の技術者個人の経験や勘に依存することなく、路網の作設範囲における地形条件や、路網の新設工事に必要なコストや路網の新設によって見込まれる収入を考慮して、現実性の有る路網計画を自動生成できる路網ルート設計装置及びそのプログラム、並びに路網ルート生成表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、山林内に新設される路網のルートを設計する装置において、予め記憶された山林内の地図情報と前記路網を通行する作業車両のスペックに関する車両情報とに基づき、予め指定された前記路網の作設範囲内で候補となる前記路網の候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段と、前記各候補ルートの長さを求めるルート長さ算出手段と、前記各候補ルートそれぞれにつき、前記ルート長さ算出手段で求めたルートの長さと各種の条件設定に基づき、前記路網の新設により見込まれる収入から前記路網の新設工事に必要なコストを差し引いた想定利益をルート選択用の指標として求める想定利益算出手段と、前記各候補ルートの中から、前記想定利益に基づき選択されたルートを決定ルートとするルート決定手段とを備える、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現場の技術者個人の経験や勘に依存することなく、地図情報や車両情報により、現実に合う路網の候補ルートを自動生成することができる。しかも、経済性、すなわち、路網の新設工事に必要なコスト、路網の新設によって見込まれる収入が併せて考慮され、候補ルートの中から最適な決定ルートを自動的に選択することができる。更に、路網の新設工事前に決定ルートを可視化してユーザに提示することができ、自治体や地権者への路網計画の事前の提示や説明が行い易くなる。また、現存しなかったルート新設による経済性を数値化することができ、この点においても自治体や地権者への説明が行い易くなる。
【0009】
ここで、条件設定を自由に変え、当該条件変更によって結果が変わる処理に対してフィードバックすることにより、決定ルートを更新可能な構成を採用した場合には、様々な状況に応じて、一度決定されたルートの変更を柔軟に行うことができる。例えば、地図情報では把握できずに作業者や山林所有者が保有する現場の実際の状況や、山林所有者や自治体の意向や、作設作業の開始後に作業者によって発見された路網作設の障害情報(例えば、土壌の情報、沢の存在等の水の情報、立木や倒木の情報等)により、決定ルートを変更する必要が生じた場合に、これらの状況、意向、情報に対応する条件設定を変更することにより、路網計画の再構築を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る路網ルート生成表示システムの全体構成を表すブロック図。
【図2】前記路網ルート生成表示システムの処理手順を説明するためのフローチャート。
【図3】車両系集材可否判定手段での処理を説明するための概略地図。
【図4】候補ルート生成手段の構成を主に表すブロック図。
【図5】土場候補地抽出部での処理を説明するための概略地図。
【図6】(A)は起終点決定部での処理を説明するための概略地図、(B)、(C)はルート生成部での処理を説明するための概略地図。
【図7】想定利益算出手段の構成を主に表すブロック図。
【図8】路網ルート生成表示システムの処理手順の変形例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0012】
図1には、本実施形態に係る路網ルート生成表示システムの全体構成を表すブロック図が示されている。この図において、前記路網ルート生成表示システム10は、林業用として山林内の路網を構成する作業道を新設する際に、最良となる作業道のルートを自動生成してユーザに提示するシステムである。

【0013】
なお、作業道を新設する際には、作業車両として建機を用い、作業道の計画部分に存在する立木である支障木を切り倒して整地する作設と呼ばれる作業が行われ、その終了後に、当該作業道に、作業車両としてフォワーダを通行させ、フォワーダを使い支障木を集めて搬出する集材作業が行われる。そこで、以下の説明において、「開設」とは、作業道の作設作業が完了して、集材作業前の当該作業道にフォワーダが通行可能になった状態を意味する。また、作業道の新設に際し、前記作設作業から前記集材作業までの一連の作業を「新設工事」と称する。

【0014】
具体的に、前記路網ルート生成表示システム10では、ユーザが山林内の作設範囲を予め指定して種々の条件設定を行うことにより、当該作設範囲の地図情報等を考慮しながら、既存林道にアクセス可能な作業道のルートを複数生成し、その中から最良のルートを特定して、当該ルートを作設範囲の地図画像に重畳表示するようになっている。なお、以下において処理手順を説明する際には、適宜、図2のフローチャートを使用する。

【0015】
この路網ルート生成表示システム10は、新設される作業道のルートを設計する路網ルート設計装置11と、路網ルート設計装置11で設計された最良のルートを作設範囲とともに表す画像を生成してユーザに提示する画像生成提示装置13と、ユーザがシステム内に所定の情報を入力するための入力装置14とを備えている。

【0016】
前記路網ルート設計装置11は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。

【0017】
当該路網ルート設計装置11は、建機の性能や地形等、作業道の設計に必要な種々の情報が予め入力されて記憶される情報記憶手段16と、情報記憶手段16に記憶された情報に基づいて、作設範囲内において既設林道に繋がる作業道の作設が可能か否かを判定する車両系集材可否判定手段17と、車両系集材可否判定手段17で作業道が作設可能と判定されたときに、作設範囲の地図情報と作業道を通行する建機のスペックに関する車両情報とに基づき、作設候補となる作業道の候補ルートを複数生成する候補ルート生成手段19と、候補ルート生成手段19により生成された各候補ルートの長さをそれぞれ求めるルート長さ算出手段20と、各候補ルートそれぞれにつき、ルート長さ算出手段20で求めたルートの長さと各種の条件設定に基づき、作業道の新設によって見込まれる収入から作業道の新設工事のコストを差し引いた想定利益をルート選択用の指標として求める想定利益算出手段22と、想定利益算出手段22で求めた想定利益に基づいて、各候補ルートの中から最良のルートを決定ルートとして抽出するルート決定手段23とを備えている。

【0018】
前記情報記憶手段16には、森林区画を表す林班に関する情報、山林の等高線情報、及び、山林内における既設林道や谷、岩、川等の自然物の位置情報等の各種情報が地図情報として予め記憶されるとともに、作業道の作設時に使用が想定される建機のスペックが車両情報として記憶されている。ここで、建機のスペックとして、車幅、登坂上限値(登坂能力値)、ブームやアームの長さ等が記憶されている。

【0019】
前記車両系集材可否判定手段17では、建機やフォワーダ等の作業車両の移動を妨げる勾配の有無の観点から、作設範囲内における等高線情報に基づいて、作設される作業道が既設林道に接続可能な部分が存在するか否かが判定される(図2中ステップS100)。ここでの判定処理については、図3に概念的に表した作設範囲100内の平面地図を用いて、以下に詳述する。なお、図3等において、符号101が付された曲線は等高線を表す。

【0020】
先ず、図3(A)に示されるように、作設範囲100内における既設林道102の中心に、林道中心線103(同図中一点鎖線部分)が設けられる。そして、当該林道中心線103上の予め設定された一定間隔毎に、基準地点105が設定される。

【0021】
次に、図3(B)に示されるように、それぞれの基準地点105を中心とし、予め定めた半径を有する判定円106(同図中破線部分)が設定される。ここで、基準地点105の間隔と判定円106の半径は、想定される作業車両のサイズに基づき設定されるとともに、各判定円106が、既設林道102の周囲の一定範囲を全てカバーできるように設定される。

【0022】
更に、図3(C)に示されるように、それぞれの判定円106について、当該判定円106を等分(例えば、同図では4等分)した扇形の単位部分108毎に、各単位部分108内に存在する等高線の本数がカウントされる。なお、同図(C)では、図面の錯綜を回避するために、一部の判定円106のみ記載し、他の判定円106の記載を省略している。

【0023】
そして、各判定円106それぞれについて、単位部分108毎にカウントされた等高線の本数の平均値が算出され、当該平均値が予め設定された閾値以下か否かが判定される。その結果、前記平均値が前記閾値を超えた判定円106の領域は、既設林道102の周囲が急勾配で作業道を既設林道102に接続できない接続不可領域と判定される。一方、前記平均値が前記閾値以下になった判定円106の領域は、既設林道106に作業道を接続できる接続可能領域と判定される。最後に、接続可能領域と判定された判定円106が作設範囲100内に少なくとも一つ存在する場合、既設林道102には、新設される作業道が接続可能になる部分が存在すると判定される。この場合、作業道を作設することで、森林施業時に作業車両を利用した車両系集材が可能となると判断され、以降の作業道のルート生成処理が行われる。その一方、全ての判定円106が接続不能領域と判定された場合、既設林道102には、作設する作業道を接続できる部分が無いとされ、この作設範囲100では、森林施業時に架線系集材が好適と判断され、以降の作業道のルート生成処理は行われない。

【0024】
前記候補ルート生成手段19は、図1に示されるように、作業道の経由地で木材の集積場所となり得る土場候補地を作設範囲内で複数箇所抽出する土場候補地抽出部25と、土場候補地抽出部25で抽出された土場候補地の位置情報と作設範囲内に存在する既設林道の位置情報に基づいて、作業道のルートの起点と終点を決定する起終点決定部26と、前記情報記憶手段16に記憶された車両情報に基づき作業道の設計条件を設定する設計条件設定部27と、土場候補地抽出部25、起終点決定部26、及び設計条件設定部27での処理結果を用いて作業道の候補ルートを生成するルート生成部28とを備えている。

【0025】
前記土場候補地抽出部25は、図4に示されるように、作設範囲内で土場として利用可能と考えられる平坦部分を探索する平坦部分探索部30と、探索された平坦部分の数を調整して土場候補地を決定する最終決定部31とからなる。

【0026】
前記平坦部分探索部30では、作設範囲内における等高線情報に基づき、次の手順で前記平坦部分が探索される。

【0027】
先ず、作設範囲の等高線図に対し、図5(A)中左右方向に等間隔となるように、同図中上下方向に延びる直線の仮想線110(同図中一点鎖線部分)が複数配置される(図2中ステップS101)。

【0028】
そして、仮想線110が等高線101に交差することで作設範囲100が網目状に区分され、当該区分された各区画111それぞれの面積が求められる(同ステップS102)。

【0029】
次に、当該各区画111それぞれの面積が、予め設定された閾値以上か否かが判定され、当該閾値以上の面積を有する区画111が、土場になり得る平坦部分F(図5(A)中太線の矩形領域部分)として一時的に特定される(同ステップS103)。

【0030】
なお、前記仮想線110としては、前述の直線に限定されるものではなく、例えば、図5(B)に示されるように、既設林道102の一端縁側に等間隔に設けられた各地点から各等高線101に直角に交わるように同図中下方に延びる曲線としても良い。

【0031】
前記最終決定部31では、平坦部分探索部30で探索された平坦部分の中から、作業道としての機能性の観点により、土場候補地を決定する次の処理が行われる。

【0032】
先ず、作設範囲内での土場の適正数の範囲が予め記憶されており、当該土場の適正数の範囲と、平坦部分探索部30で特定された平坦部分Fの数とが対比される(同ステップS104)。そして、当該平坦部分Fの数が土場の適正数の範囲内である場合には、当該平坦部分Fが土場候補地Dとされ(同ステップS105)、後述する起終点決定部26での処理に進む。一方、平坦部分Fの数が土場の適正数の範囲外である場合には、平坦部分探索部30での判定に用いられる区画111の面積の閾値を増減させる閾値変更処理を行い(同ステップS106)、土場候補地Dとなる平坦部分Fの数を土場の適正数の範囲内に調整した後で、後述する起終点決定部26での処理に進むようになっている。すなわち、平坦部分Fの数が土場の適正数の範囲よりも少ない場合には、区画111の面積の閾値を予め記憶された一定数ずつ下げるように変更する閾値変更処理が行われる。その後、変更された閾値を用いて、平坦部分探索部30での前述の処理が再度行われ、特定される平坦部分Fの数を増大させた上で、前述した最終決定部31での土場の適正数の範囲との対比が行われる。一方、平坦部分Fの数が土場の適正数の範囲よりも多い場合には、区画111の面積の閾値を予め記憶された一定数ずつ上げるように変更する閾値調整処理が行われる。その後、変更された閾値を用いて、平坦部分探索部30での前述の処理が再度行われ、特定される平坦部分の数を減少させた上で、最終決定部31での土場の適正数の範囲との対比が行われる。これら閾値変更処理は、平坦部分探索部30で特定される平坦部分Fが土場の適正数の範囲内に入るまで繰り返し行われる(同ステップS103、S104、S106)。

【0033】
なお、平坦部分の数が土場の適正数の範囲よりも多い場合に、作設範囲の面積に対する土場の総面積の割合となる土場密度の適正範囲を予め記憶しておき、当該適正範囲に入るように、平坦部分探索部30で特定された平坦部分をランダムに選択して土場候補地とする第1の選択処理を行うこともできる。

【0034】
また、各平坦部分の中央を中心として、前記土場密度に対応して予め決定される一定半径の仮想円を設け、当該仮想円の数が最小で、且つ、当該各仮想円で囲まれる面積の総和が最大となる仮想円の組み合わせを選択し、選択された仮想円に対応する各平坦部分を土場候補地として特定する第2の選択処理を行うこともできる。この第2の選択処理においては、選択された平坦部分が土場の適正数の範囲内に入るまで、前記仮想円の半径を増減しながら繰り返し行われる。なお、ここでの仮想円の半径は、平坦部分の面積に対応して平坦部分毎にそれぞれ異なる大きさに設定することもできる。

【0035】
以上の第1及び/又は第2の選択処理は、前記閾値変更処理に代え、又は、当該閾値変更処理と併用して行うことができる。

【0036】
なお、前記最終決定部31における土場候補地の数の調整処理を省略して、前記平坦部分探索部30で探索された平坦部分をそのまま土場候補地として利用して以降の処理に進む態様を採用することもできる。

【0037】
前記起終点決定部26では、次の処理が行われる。先ず、図6(A)に示されるように、既設林道102から最も近くに位置する土場候補地Dにおける一地点(例えば、中心点)が暫定的な作業道の仮起点Stとされる(図2中ステップS107)。次に、等高線情報により、当該仮起点Stから既設林道102のどこかに接続するルートの中から最も勾配が緩やかになるルートrを特定し、当該特定されたルートrにおける既設林道102との接続点が作業道の起点Sとして決定されるとともに、既設林道102から最も遠くに位置する土場候補地Dにおける一地点(例えば、中心点)が作業道の終点Eとして決定される(同ステップS108)。

【0038】
前記設計条件設定部27では、作業道を設計する上で必要となる設計情報、すなわち、作業道の最小道幅、作業道の勾配の上限値、及び山林の単位面積当たりの作業道の総面積を表す路網密度が決定される(同ステップS109)。

【0039】
すなわち、設計条件設定部27は、図4に示されるように、設計する作業道の最小道幅を設定する道幅設定部33と、設計する作業道の勾配の上限値を設定する勾配上限設定部34と、作業道を通行する作業車両での森林施業を可能にする路網密度の下限値を設定する路網密度設定部35とにより構成される。

【0040】
前記道幅設定部33では、情報記憶手段16に記憶された建機の車幅に、予め指定された余裕幅を加算することにより、設計する作業道の最小道幅が求められる。

【0041】
前記勾配上限設定部34では、情報記憶手段16に記憶された建機の登坂上限値に対して、予め指定された所定の安全率を乗じることにより、設計する作業道の勾配の上限値が求められる。

【0042】
前記路網密度設定部35では、情報記憶手段16に記憶された建機のブームやアームの長さと実際の施業時に建機での伐採が想定される木の長さとにより、予め記憶された計算式に基づき、当該伐採後の倒木に対して作業道の何れかの場所から必ずアクセスできるように、路網密度の下限値が求められる。

【0043】
前記ルート生成部28では、土場候補地抽出部25で抽出された土場候補地の位置情報、起終点決定部26で決定された起終点の位置情報、及び設計条件設定部27で設定された設計条件に基づき、作業道の候補ルートが後述する処理により複数生成される(図2中ステップS110)。

【0044】
このルート生成部28は、図4に示されるように、作設範囲内で作業道の折り返し地点となり得る折り返し地点の候補を探索する折り返し地点候補探索部37と、設計条件設定部27により決定された最小道幅及び路網密度の下限値に基づき、折り返し地点の候補の中から作業道の折り返し地点を折り返し回数とともに決定する折り返し決定部38と、決定された折り返し地点の位置情報及び土場候補地抽出部25で抽出された土場候補地の位置情報から、これら折り返し地点及び土場候補地を通る最適ルートを求める最適ルート導出部39と、求めた最適ルートでの折り返し地点の補正処理を行う折り返し地点調整部40とにより構成される。

【0045】
前記折り返し地点候補探索部37では、情報記憶手段16に記憶された地図情報に基づき、図6(B)に示されるように、作設範囲100内に存在する川113、岩114、尾根115等の自然障害領域に作業道が交差しないように、これら自然障害物の若干内側となる位置に、同図中白丸部分の折り返し地点Rの候補が複数抽出される。

【0046】
前記折り返し決定部38では、折り返し地点候補探索部37で設定された折り返し地点Rの候補の中から、設計される作業道の最小道幅を考慮し、路網密度の下限値以上になるように、複数箇所の折り返し地点Rが適宜選択される。これら選択された折り返し地点Rの組み合わせは、複数のパターンが抽出され、当該パターン毎に次の最適ルート導出部39での処理が行われる。

【0047】
前記最適ルート導出部39では、折り返し地点Rの組み合わせのパターン毎に、等高線情報を利用し、図6(C)に示されるように、土場候補地抽出部25で抽出された各土場候補地Dを通り、且つ、勾配上限設定部34で設定された勾配の上限値以下となる最適ルートrが求められる。なお、ここのルート導出に際しては、A-starアルゴリズム、ダイクストラアルゴリスム等、最短経路を自動的に生成する公知のアルゴリズムが用いられ、起終点決定部26で決定された作業道の起点Sと終点Eとの間を結び、各土場候補地Dを通過しながら各折り返し地点Rでの折り返しを行う最適ルートrが特定される。例えば、A-starアルゴリズムを用いた場合には、等高線情報に基づき、リンク(ノード)の勾配が急になる程、コストを高くし、勾配の絶対値等でヒューリスティック関数を定義し、あらゆるケース毎に起点Sから終点Eまでのコストを推定し、コストの総和が最も低いルートが最適ルートrとして選択される。

【0048】
前記折り返し地点調整部40では、最適ルート導出部39で、折り返し地点Rの組み合わせのパターン毎に求められた各最適ルートrそれぞれについて、各折り返し地点Rでの作業道の曲率が求められ、当該曲率が大きい程、各折り返し地点Rでの折り返しが急になるため、次の補正処理が行われる。すなわち、曲率がある所定値以上の場合には、折り返し地点での作業道の曲率が前記所定値未満になるように曲線部分を緩やかにし、或いは、折り返し地点Rの外側に作業道を延ばすスイッチバック部分を設けるように、最適ルートrの折り返し部分Rの形状が一部補正される。

【0049】
以上の処理を経て、折り返し地点Rの組み合わせのパターン毎にそれぞれ求められた最適ルートrが、それぞれ作業道の候補ルートとされる。

【0050】
前記ルート長さ算出手段20では、それぞれの候補ルートにおける起点Sから終点Eまでの長さが、位置情報に基づき演算で求められる(図2中ステップS111)。

【0051】
前記想定利益算出手段22では、各候補ルートそれぞれにつき、ルート長さ算出手段20で求めた各候補ルートの全長と各種の仮定条件に基づく利益のシミュレーションとにより、作業道の新設で想定される利益(想定利益)が、後述する処理によって算出される(同ステップS112)。

【0052】
この想定利益算出手段22は、図1に示されるように、想定利益を求める上で必要となる各種の仮定条件が設定される仮定条件設定部42と、作業道の新設工事に必要な主たるコストを算出するコスト算出部43と、作業道の新設によって見込まれる収入を算出する収入算出部44と、収入算出部44で求めた収入からコスト算出部43で求めたコストを差し引いて想定利益を求める想定利益決定部45とにより構成される。

【0053】
前記仮定条件設定部42では、入力装置14を使ってユーザが入力した仮定条件に関する次の情報が記憶される。すなわち、ここでの情報としては、支障木の集材作業時に使用するフォワーダの使用台数と、フォワーダの燃費と、フォワーダに用いられる燃料1リットル当たりの価格である燃料単価と、フォワーダの移動速度と、作業道の作設時における1日当たりの工事進行距離で表される作業者の経験値と、作業道の新設工事の際に必要となる作業者の人数と、当該作業者1人当たりの人件費と、木の販売に際しての最低市場価格及び一般市場価格と、森林における単位面積当たりの立木の本数である立木密度と、作業道の完成後にその周囲の立木を伐採する施業時に用いられる建機のブーム及びアームの長さと、当該施業時に行う間伐の程度を表す間伐率と、作業道の新設工事に際して国や自治体等から交付される補助金の金額とがある。

【0054】
なお、以上の情報において、フォワーダの使用台数、作業者の能力指標である経験値、作業者の人数、作業者の人件費、及び間伐率は、ユーザの想定により任意に設定され、フォワーダの燃費及び速度と建機のブーム及びアームの長さは、作業車両のカタログ等に基づいて設定され、燃料単価、木の各市場価格及び立木密度は、市況や市場統計等に基づいて設定される。

【0055】
前記コスト算出部43は、図7に示されるように、支障木の集材作業時におけるフォワーダの燃料費を計算する燃料費計算部47と、作業道の新設工事に必要な人件費を計算する人件費計算部48と、燃料費と人件費とを合計してコストを求めるコスト決定部49とにより構成される。

【0056】
前記燃料費計算部47では、前記ルート長さ算出手段20で求められたルートの長さL(m)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、フォワーダの使用台数N(台)、フォワーダの燃費F(l/m)、フォワーダの燃料単価Y(円/l)とを用い、次式により、燃料費Cf(円)が求められる。
Cf=F×L×Y×N

【0057】
前記人件費計算部48は、作業道を開設するまでに必要な時間である開設時間を計算する開設時間計算部51と、開設された作業道を利用し、支障木をフォワーダで土場まで運搬する時間である集材時間を計算する集材時間計算部52と、開設時間と集材時間を考慮して作業道の新設工事に必要な作業者の人件費を決定する人件費決定部53とにより構成される。

【0058】
前記開設時間計算部51では、ルート長さ算出手段20で求められた作業道の長さL(m)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、想定される作業者の能力に応じた経験値E(m/日)とを用い、次式により、開設時間T1(日)が求められる。
T1=L/E

【0059】
前記集材時間計算部52では、ルート長さ算出手段20で求められた作業道の長さL(m)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、フォワーダの使用台数N(台)とフォワーダの速度v(m/日)とを用い、次式により、全てのフォワーダを使って作業道を1往復する際の移動時間である集材時間T2(日)が求められる。
T2=2L/(v×N)

【0060】
前記人件費決定部53では、開設時間計算部51で求めた開設時間T1(日)及び集材時間計算部52で求めた集材時間T2(日)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、作業道の新設工事の際に必要となる作業者の人数n(人)及び作業者1人1日当たりの人件費S(円/人)とを用い、次式により、人件費Ch(円)が求められる。
Ch=n×S×(T1+T2)

【0061】
前記コスト決定部49では、燃料費計算部47で求めた燃料費Cfと、人件費計算部48で求めた人件費Chとを合計することで、作業道の新設工事に必要な主たるコストCtが求められる。

【0062】
前記収入算出部44は、図7に示されるように、作業道の作設時に切り倒される支障木の販売によって見込まれる収入を求める支障木販売収入計算部55と、作業道の完成後の施業により得られた作業道周囲の伐採木の販売によって見込まれる収入を求める伐採木販売収入計算部56と、これら支障木販売収入計算部55及び伐採木販売収入計算部56で得られた木材の市場販売によって見込まれる収入に、仮定条件設定部42で設定された補助金の金額を加えることで、作業道の新設により見込まれる収入を決定する収入決定部57とにより構成される。

【0063】
前記支障木販売収入計算部55では、ルート長さ算出手段20で求められた作業道の長さL(m)及び作業道の設計時点で既に特定された道幅w(m)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、木の最低市場価格Sm(円)及び森林における単位面積当たりの立木の本数である立木密度D(本/m)とを用い、次式により、支障木の販売収入I1(円)が求められる。
I1=L×w×D×Sm

【0064】
前記伐採木販売収入計算部56では、ルート長さ算出手段20で求められた作業道の長さL(m)と、仮定条件設定部42で設定された条件のうち、施業時に用いる建機のブーム及びアームの合計長さl(m)、立木密度D(本/ha)、施業時における間伐率t(0≦t≦1)、及び木の一般市場価格Sa(円)とを用い、次式により、伐採木の販売収入I2(円)が求められる。
I2=f(L,l)×D×t×Sa
ここで、f(L,l)は、作業道の長さLと建機のブーム及びアームの合計長さlとに基づき、作業道の周囲で立木を伐採可能となる範囲の面積である伐採可能面積(ha)を求める関数であり、予め記憶される。ここで、伐採可能となる範囲は、作業道に位置する建機のアームの先端が届くことのできる作業道周囲の山林全範囲に設定される。

【0065】
前記収入決定部57では、支障木及び伐採木の販売収入I1、I2を合計し、更に、仮定条件設定部42で設定された補助金の金額を加えることで、作業道の新設により想定される合計収入Itが求められる。

【0066】
前記想定利益決定部35では、収入算出部44で求めた合計収入Itからコスト算出部43で求めたコストCtを減じることで、想定利益が求められる。

【0067】
以上の構成の想定利益算出手段22では、候補ルート生成手段19で生成された各候補ルートそれぞれについて、想定利益がそれぞれ求められる。

【0068】
なお、想定利益算出手段22では、作業道の作設時や施業時に用いられる建機の燃料費、及び/又は、施業時の人件費もコストに算入して想定利益を求めることも可能である。

【0069】
前記ルート決定手段23では、各候補ルートにおける想定利益が最大となる候補ルートが最良のルートである決定ルートとして抽出される(図2中ステップS113)。

【0070】
前記画像生成提示装置13は、図1に示されるように、作業道の作設範囲の画像に、ルート決定手段23で決定された作業道の決定ルートを表示した提示画像を生成する画像生成手段59と、提示画像をユーザに提示する表示手段60とを備えている。

【0071】
前記画像生成手段59では、表示手段60を通じてユーザが立体的に視認可能となる3Dの提示画像を生成するようになっている(同ステップS113)。すなわち、ここでは、先ず、等高線図の情報、既設林道や沼、池、川等の地図情報、及び作設範囲に存在する木の情報に基づき、公知の手法によって、立木を含む作設範囲の全景をグラフィックで立体表示した3D地図が生成される。そして、当該3D地図上の対応位置に、ルート決定手段23で決定された作業道の決定ルートを曲線で表示した3D画像が生成される。なお、当該3D画像の生成に際しては、後述する表示手段60での表示態様に適合する画像データが生成される。また、当該3D画像としては、作設範囲をカメラ等で撮像した実画像を用い、当該実画像に作業道の決定ルートを表す曲線を重畳したバーチャル画像としても良い。

【0072】
前記表示手段60は、画像生成手段59で生成された3D画像を表示可能なディスプレイからなる。例えば、ヘッドマウントディスプレイ、3Dホログラムを表示可能なディスプレイを採用することができる。

【0073】
なお、前記画像生成提示装置13では、提示画像として2D画像を生成してユーザに提示しても良い。

【0074】
前記入力装置14としては、前述した各種の入力が可能な限りにおいて、ボタン、スイッチ、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチペンの他に、目や手の動きを検出して入力する装置等、公知の各種入力デバイスを適用することができる。

【0075】
次に、前記路網ルート生成表示システム10における一連の手順について、図2を用いて説明する。

【0076】
先ず、入力装置14によって各種の情報や設定条件が入力されてから、車両系集材可否判定手段17により、所望の作設範囲内における作業道作設の可否が判定され(ステップS100)、作業道の作設が不可能と判定されれば、以降の処理が行われずに終了する。一方、作設範囲内で作業道を作設可能と判定されれば、以降の処理が行われる。

【0077】
次に、候補ルート生成手段19により、新設候補となる作業道の候補ルートが複数生成され(ステップS101~S110)、ルート長さ算出手段20により、各候補ルートそれぞれについて、作業道の全長が求められる(ステップS111)。

【0078】
その後、想定利益算出手段22により、各候補ルートそれぞれについて、作業道の新設によって見込まれる想定利益が求められる(ステップS112)。そして、ルート決定手段23により、最も高い想定利益が期待できる候補ルートが作業道の決定ルートとして抽出される(ステップS113)。

【0079】
最後に、決定ルートの位置情報から、画像生成手段59により、作設範囲の地図上に作業道の決定ルートが反映された提示画像が生成され(ステップS114)、当該提示画像が表示手段60を通じてユーザが視認可能になる。

【0080】
なお、前記路網ルート生成表示システム10としては、以上のプロセスを経て作業道の決定ルートがユーザに提示された後、ユーザの意向や現場の実際の状況により、予め指定されていた各種の情報や条件を変更し、対応する処理ステップにフィードバックすることにより、作業道の決定ルートを更新し、当該更新された決定ルートを反映した提示画像を表示する構成としても良い。

【0081】
すなわち、図8に示されるように、前述の手順により生成された提示画像をユーザが見て、各種の情報や条件の変更等、何等かの修正が必要と判断した場合(同図中ステップS201)、当該修正内容が入力装置14によって入力された後で、情報や条件の修正に応じ、異なる結果が出る処理が再度行われて作業道の決定ルートが更新される。すなわち、各種の情報や条件が変更されたと判断されると、その内容に応じて、前述の処理手順のうち、車両系集材可否判定手段17による作業道作設の可否判定から、或いは、候補ルート生成手段19による作業道の候補ルートの生成から、或いは、想定利益算出手段22による想定利益の算出から再処理が行われ、前述した各種処理が行われて新たな作業道の決定ルートが特定される。そして、新たな決定ルートに基づく提示画像が生成され、表示手段60を通じてユーザに提示される。ここでの修正処理は、ユーザによって指定される各種の情報や条件が変更されると、前述の更新処理が繰り返し行われる。

【0082】
ここで、各種の情報や条件を変更するときの入力態様としては、例えば、ディスプレイ内に提示画像とともに表示された各種の情報や条件の表示部分をクリックし、対応する部分に具体的な数値等の情報をキーボード等で入力し、また、作業道の作設が不可となる領域や所望とする土場領域等の位置情報について、タッチペン等を使って提示画像に直接入力する態様を採用できる。

【0083】
また、システムに入力される各種情報として、作業道を作設するために有用となる情報であって、作業者等が実際に取得した現場情報、例えば、地面の硬さ等の土壌情報、沢や湧水等の自然障害領域の位置情報、支障木となる立木情報(樹高、胸高直径、立木間隔、支障木の価格等)を入力し、当該入力に基づいて前述した決定ルートの更新処理を行うこともできる。

【0084】
以上の本実施形態においては、路網ルート設計装置11により作業道のルートを自動生成しているが、本発明はこれに限らず、新設林道等、他の路網のルート設計に利用することもできる。

【0085】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 路網ルート生成表示システム
11 路網ルート設計装置
13 画像生成提示装置
14 入力装置
17 車両系集材可否判定手段
19 候補ルート生成手段
20 ルート長さ算出手段
22 想定利益算出手段
23 ルート決定手段
25 土場候補地抽出部
26 起終点決定部
27 設計条件設定部
28 ルート生成部
33 道幅決定部
34 勾配上限決定部
35 路網密度設定部
37 折り返し地点候補探索部
38 折り返し決定部
39 最適ルート導出部
40 折り返し地点調整部
42 仮定条件設定部
43 コスト算出部
44 収入算出部
45 想定利益決定部
47 燃料費計算部
48 人件費計算部
49 コスト決定部
55 支障木販売収入計算部
56 伐採木販売収入計算部
57 収入決定部
59 画像生成手段
60 表示手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7