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明細書 :アンチジーン法用光応答性人工核酸プローブ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-210448 (P2017-210448A)
公開日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 アンチジーン法用光応答性人工核酸プローブ
国際特許分類 C07H  21/04        (2006.01)
A61K  31/713       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
C12N  15/113       (2010.01)
FI C07H 21/04 CSPB
A61K 31/713 ZNA
A61P 43/00 105
A61K 48/00
C12N 15/00 G
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2016-105622 (P2016-105622)
出願日 平成28年5月26日(2016.5.26)
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】中村 重孝
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
4C084
4C086
Fターム 4C057BB02
4C057BB05
4C057DD01
4C057MM01
4C057MM02
4C057MM04
4C057MM09
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB211
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB21
要約 【課題】アンチジーン法に好適に使用可能な人工核酸プローブの提供。
【解決手段】標的二重鎖核酸を光架橋するための光応答性人工核酸プローブであって、塩基部分が3-ビニルカルバゾール構造である特定の光架橋性人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入され、更に、塩基部分がウラシル構造である特定の人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入された人工核酸からなる、光応答性人工核酸プローブ。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
標的二重鎖核酸を光架橋するための光応答性人工核酸プローブであって、
以下の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入され、以下の式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入された人工核酸からなる、光応答性人工核酸プローブ:
式(I):
【化1】
JP2017210448A_000015t.gif
(ただし、式I中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R14は、水素原子であり、
R15は、水酸基であり、
R16は、水素原子又は水酸基である)、
式(II):
【化2】
JP2017210448A_000016t.gif
(ただし、式II中、R21は、シアノ基であり、
R24は、水素原子であり、
R25は、水酸基であり、
R26は、水素原子又は水酸基である)、
式(III):
【化3】
JP2017210448A_000017t.gif
(ただし、式III中、R31は、シアノ基であり、
R34は、水素原子であり、
R35は、水酸基であり、
R36は、水素原子又は水酸基である)。
【請求項2】
請求項1に記載の光応答性人工核酸プローブであって、光応答性人工核酸プローブが、光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2とのセットからなり、

光応答性人工核酸プローブ1は、標的二重鎖核酸の片側の鎖(標的核酸鎖1)の一部と相補的な塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、標的核酸鎖1の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列の部分を有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の中に位置しており、

光応答性人工核酸プローブ2は、標的二重鎖核酸の標的核酸鎖1でない側の鎖(標的核酸鎖2)の一部と相補的な塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、標的核酸鎖2の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列の中に位置しており、

さらに、光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列は、
標的核酸鎖2の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ2の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有しており、
さらに、光応答性人工核酸プローブ2の塩基配列は、
標的核酸鎖1の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ1の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有している、光応答性人工核酸プローブ。
【請求項3】
光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列が、4塩基長~4000塩基長の範囲の長さを有する、請求項2に記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項4】
光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的でない部分塩基配列が、2塩基長~200塩基長の範囲の長さを有する、請求項2~3のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項5】
光応答性人工核酸プローブ2に含まれる、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的でない部分塩基配列が、2塩基長~200塩基長の範囲の長さを有する、請求項2~4のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項6】
光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列に含まれている、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの数が、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の100塩基長あたりに換算して、0.1個~10個の範囲にある、請求項2~5のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項7】
光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基が、チミン(T)又はシトシン(C)である、請求項2~6のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項8】
標的二重鎖核酸が、標的遺伝子の二重鎖核酸である、請求項1~7のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブからなる、二重鎖核酸用光架橋剤。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブからなる、アンチジーン法用標的遺伝子発現抑制剤。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブを使用して標的二重鎖核酸を光架橋することによって、光架橋された二重鎖核酸を製造する方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブを使用して標的遺伝子の二重鎖核酸を光架橋する工程、
を含む、標的遺伝子の発現を光抑制する方法。
【請求項13】
請求項2~8のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2を、標的二重鎖核酸とハイブリダイズさせる工程、
ハイブリダイズした光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2と、標的二重鎖核酸に対して、光照射して、光応答性人工核酸プローブ1と標的核酸鎖1を光架橋し、光応答性人工核酸プローブ2と標的核酸鎖2を光架橋する工程、
を含む、請求項11~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2とのプローブ間の光架橋形成が抑制された、請求項13に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチジーン法用光応答性人工核酸プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の発現を抑制することによって疾患を治療しようとする試みが行われている。遺伝子の発現の流れに沿って、ゲノムDNAからの転写をブロックしようとする方法、転写されたmRNAを破壊しようとする方法、mRNAからの翻訳をブロックしようとする方法、転写因子の働きを抑制しようとする方法などが、検討されている。
【0003】
アンチジーン法は、ゲノムDNA中の標的となる遺伝子の2本鎖DNAに対して、DNAからなる核酸医薬を結合させて、転写を阻害し、これによってその遺伝子からの転写を半永久的に抑制しようとする方法である。このようなアンチジーン法を可能とする核酸医薬が、永らく求められてきた。
【0004】
光反応による核酸の連結の技術として、5-シアノビニルデオキシウリジンを使用した光連結技術(特許文献1:特許第3753938号、特許文献2:特許第3753942号)、3-ビニルカルバゾール構造を塩基部位に持つ修飾ヌクレオシド又はヌクレオシドアナログを使用した光架橋技術(特許文献3:特許第4814904号、特許文献4:特許第4940311号、特許文献5:国際公開WO2014/157565A1号公報)が知られている。これらの技術によって核酸二重鎖の鎖間に光架橋を形成することができる。この光架橋は、共有結合による架橋であり、化学的に安定である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】日本国特許第3753938号
【特許文献2】日本国特許第3753942号
【特許文献3】日本国特許第4814904号
【特許文献4】日本国特許第4940311号
【特許文献5】国際公開WO2014/157565A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、3-ビニルカルバゾール構造を塩基部位に持つ修飾ヌクレオシドを使用した人工核酸によって、アンチジーン法を実現する試みを行ってきた。すなわち、3-ビニルカルバゾール構造を有する人工核酸プローブによって、アンチジーン法を行う場合には、ゲノムのDNAに対して光架橋を行って、細胞の修復系などの影響を受けないようにすることができると考えて、これを実現する試みを行ってきた。このためには、ゲノムの二本鎖DNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両側の鎖を光架橋によりブロックする必要がある。しかし、このような人工核酸プローブのセットを用意すると、これらは相補的な配列を有するものとなるためにプローブ同士で会合して、その結果として、センス鎖用の人工核酸プローブとアンチセンス鎖用の人工核酸プローブが光架橋してしまい、十分なアンチジーン効果が得られないという問題に直面した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、アンチジーン法に好適に使用可能な人工核酸プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、アンチジーン法に使用される人工核酸プローブについて、鋭意研究してきたところ、3-ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性の人工塩基は、ピリミジン塩基と非常に高速に光架橋可能であるが、シアノウリジン構造又はシアノシチジン構造を有する人工塩基に対する光架橋反応に限っては非常に遅いという知見を得た。そして、この知見に基づいて、アンチジーン法用人工核酸プローブ同士が架橋した際に光架橋するべきピリミジン塩基をシアノウリジン構造又はシアノシチジン構造を有する人工塩基に置換することによってプローブ同士の光架橋を抑制するという着想に到達した。そして、このシアノウリジン構造又はシアノシチジン構造を有する人工塩基と3-ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性の人工塩基とを含む人工核酸プローブを用いることによってプローブ同士の架橋を抑制し、長鎖の二本鎖DNAに対して選択的に光架橋可能とすることによって、十分なアンチジーン効果を発揮できる人工核酸プローブを提供できることを見いだして、本発明に到達した。
【0009】
したがって、本発明は次の(1)以下を含む。
(1)
標的二重鎖核酸を光架橋するための光応答性人工核酸プローブであって、
以下の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入され、以下の式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入された人工核酸からなる、光応答性人工核酸プローブ:
式(I):
【化1】
JP2017210448A_000002t.gif
(ただし、式I中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R14は、水素原子であり、
R15は、水酸基であり、
R16は、水素原子又は水酸基である)、
式(II):
【化2】
JP2017210448A_000003t.gif
(ただし、式II中、R21は、シアノ基であり、
R24は、水素原子であり、
R25は、水酸基であり、
R26は、水素原子又は水酸基である)、
式(III):
【化3】
JP2017210448A_000004t.gif
(ただし、式III中、R31は、シアノ基であり、
R34は、水素原子であり、
R35は、水酸基であり、
R36は、水素原子又は水酸基である)。
(2)
(1)に記載の光応答性人工核酸プローブであって、光応答性人工核酸プローブが、光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2とのセットからなり、

光応答性人工核酸プローブ1は、標的二重鎖核酸の片側の鎖(標的核酸鎖1)の一部と相補的な塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、標的核酸鎖1の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列の部分を有し、
光応答性人工核酸プローブ1は、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の中に位置しており、

光応答性人工核酸プローブ2は、標的二重鎖核酸の標的核酸鎖1でない側の鎖(標的核酸鎖2)の一部と相補的な塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、標的核酸鎖2の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列を有し、
光応答性人工核酸プローブ2は、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列の中に位置しており、

さらに、光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列は、
標的核酸鎖2の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ2の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有しており、
さらに、光応答性人工核酸プローブ2の塩基配列は、
標的核酸鎖1の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ1の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有している、光応答性人工核酸プローブ。
(3)
光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列が、4塩基長~4000塩基長の範囲の長さを有する、(2)に記載の光応答性人工核酸プローブ。
(4)
光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的でない部分塩基配列が、2塩基長~200塩基長の範囲の長さを有する、(2)~(3)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
(5)
光応答性人工核酸プローブ2に含まれる、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的でない部分塩基配列が、2塩基長~200塩基長の範囲の長さを有する、(2)~(4)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
(6)
光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列に含まれている、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの数が、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の100塩基長あたりに換算して、0.1個~10個の範囲にある、(2)~(5)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
(7)
光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基が、チミン(T)又はシトシン(C)である、(2)~(6)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
(8)
標的二重鎖核酸が、標的遺伝子の二重鎖核酸である、(1)~(7)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ。
(9)
(1)~(8)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブからなる、二重鎖核酸用光架橋剤。
(10)
(1)~(8)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブからなる、アンチジーン法用標的遺伝子発現抑制剤。
【0010】
(11)
(1)~(8)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブを使用して標的二重鎖核酸を光架橋することによって、光架橋された二重鎖核酸を製造する方法。
(12)
(1)~(8)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブを使用して標的遺伝子の二重鎖核酸を光架橋する工程、
を含む、標的遺伝子の発現を光抑制する方法。
(13)
(2)~(8)のいずれかに記載の光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2を、標的二重鎖核酸とハイブリダイズさせる工程、
ハイブリダイズした光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2と、標的二重鎖核酸に対して、光照射して、光応答性人工核酸プローブ1と標的核酸鎖1を光架橋し、光応答性人工核酸プローブ2と標的核酸鎖2を光架橋する工程、
を含む、(11)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14)
光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2とのプローブ間の光架橋形成が抑制された、(13)に記載の方法。
(15)
(12)~(14)のいずれかに記載された方法によって、発現抑制された標的遺伝子を製造する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の人工核酸プローブは、標的二重鎖核酸に対して光架橋を形成できて、プローブ同士の光架橋が十分に抑制されたものとなっており、アンチジーン法による遺伝子発現抑制に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はプローブ同士の光架橋の抑制に対する塩基置換の効果を示す変性PAGE結果を示す図である。
【図2】図2はCNU置換CNVKプローブによるプローブ間光架橋の抑制の結果を定量化したグラフである。
【図3】図3はCNU置換CNVKプローブによる二重鎖DNAに対する光架橋のスキームを示す説明図である。
【図4】図4はCNU置換CNVKプローブによるプローブ間光架橋の抑制のスキームを示す説明図である。
【図5】図5は長い二本鎖に対する光架橋反応の変性PAGEによる解析結果を示す図である。
【図6】図6はCNU置換CNVKプローブの二本鎖DNAに対する光架橋率を示すグラフである。
【図7】図7はCNU置換CNVKプローブによる二本鎖DNAへの光架橋反応のスキームを示す説明図である。
【図8】図8はGenomic DNAに対するProbeの光架橋の説明図である。
【図9】図9はプローブ同士の二本鎖構造を示す説明図である。
【図10】図10はPCRによって増幅されるBRCA1の塩基配列を示す図である。
【図11】図11は投入されたプローブの光架橋反応によってGenomic DNAのPCRによる増幅が抑制されるスキームを示す説明図である。
【図12】図12はリアルタイムPCR解析結果を示すグラフである。
【図13】図13は増幅抑制率を示すグラフである。
【図14】図14はCNVKとCNCの光反応性のUPLC解析結果を示す図である。
【図15】図15はCNCとCNVKとの光架橋反応のスキームを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施の形態に限定されるものではない。

【0014】
[光応答性人工核酸プローブ]
本発明の光応答性人工核酸プローブは、標的である二重鎖核酸を光架橋するための光応答性人工核酸プローブであり、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入され、さらに同じプローブ分子中に同時に、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドがリン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入されている。式(I)では人工ヌクレオシドの塩基部分として、3-ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性の人工塩基を有している。式(II)又は式(III)では、人工ヌクレオシドの塩基部分として、それぞれ、シアノウリジン構造又はシアノシチジン構造を有する光架橋性の人工塩基を有している。好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブは、光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2とのセットからなる。

【0015】
[3-ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性人工ヌクレオシド]
3-ビニルカルバゾール構造を有する光架橋性人工ヌクレオシドとして、次の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを好適に使用できる:
【化4】
JP2017210448A_000005t.gif

【0016】
式I中、R11は、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R12及びR13は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素原子であり、
R14は、水素原子であり、
R15は、水酸基であり、
R16は、水素原子又は水酸基である。

【0017】
アルコキシカルボニル基としては、例えばC2~C7、好ましくはC2~C6、C2~C5、C2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用できる。

【0018】
好適な実施の態様において、R11を、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はC2~C7のアルコキシカルボニル基とすることができ、R12及びR13を水素原子とすることができる。

【0019】
[シアノウリジン構造を有する人工ヌクレオシド]
シアノウリジン構造を有する人工ヌクレオシドとして、次の式(II)で表される人工ヌクレオシドを好適に使用できる:
【化5】
JP2017210448A_000006t.gif

【0020】
式II中、R21は、シアノ基であり、
R24は、水素原子であり、
R25は、水酸基であり、
R26は、水素原子又は水酸基である。

【0021】
[シアノシチジン構造を有する人工ヌクレオシド]
シアノシチジン構造を有する人工ヌクレオシドとして、次の式(III)で表される人工ヌクレオシドを好適に使用できる:
【化6】
JP2017210448A_000007t.gif

【0022】
ただし、式III中、R31は、シアノ基であり、
R34は、水素原子であり、
R35は、水酸基であり、
R36は、水素原子又は水酸基である。

【0023】
[光応答性人工核酸プローブ1]
光応答性人工核酸プローブ1は、標的二重鎖核酸の片側の鎖(標的核酸鎖1)の一部と相補的な塩基配列を有し、
標的核酸鎖1の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列の部分を有し、
式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の中に位置している。

【0024】
[光応答性人工核酸プローブ2]
光応答性人工核酸プローブ2は、標的二重鎖核酸の標的核酸鎖1でない側の鎖(標的核酸鎖2)の一部と相補的な塩基配列を有し、
標的核酸鎖2の塩基配列中のピリミジン塩基に対して、光架橋可能な位置に、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドを有し、
光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列と、相補的でない部分塩基配列を有し、
式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列の中に位置している。

【0025】
[光応答性人工核酸プローブ1及び2における式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドの配置]
もし、光応答性人工核酸プローブ1及び2において、上述のような式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドのみが導入されていた場合には、プローブ同士の光架橋が生じてしまい、有効なプローブとはならない。本発明では、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを以下の配置で導入することによって、光応答性人工核酸プローブ1及び2において、プローブ間の光架橋形成を抑制して、有効なプローブとして作用させている。

【0026】
すなわち、光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列は、さらに、標的核酸鎖2の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ2の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有しており、
光応答性人工核酸プローブ2の塩基配列は、さらに、標的核酸鎖1の塩基配列において光応答性人工核酸プローブ1の式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基と対応する位置に、ピリミジン塩基に代えて、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドを塩基として有している。

【0027】
[光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基]
式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドは、光架橋可能な位置に配置されたピリミジン塩基との間に光架橋を形成できる。ピリミジン塩基としては、例えば、チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U)、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシンをあげることができ、好ましくはチミン(T)、シトシン(C)をあげることができる。

【0028】
[光架橋可能な位置]
式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドによる光架橋は、光架橋性人工ヌクレオシドが含まれる人工核酸が、この人工核酸に対して相補的な塩基配列を有する核酸鎖と、少なくとも部分的に、いったん二重鎖を形成して、その後に光照射されることによって、形成できる。この場合に、光架橋性人工ヌクレオシドの光架橋性人工塩基は、相補的な塩基配列を有する核酸の塩基配列中において、光架橋性人工塩基と相補的な位置にある塩基から1塩基だけ5’末端側に位置する塩基(相補的な位置にある塩基の5’末端側の隣の塩基)との間に、光架橋を形成できる。すなわち、相補的な塩基配列中において、光架橋性人工塩基と相補的な位置にある塩基から1塩基だけ5’末端側の位置が、光架橋可能な位置である。

【0029】
[プローブ同士の光架橋の抑制]
式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基のヌクレオシドが、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドへと置換されると、置換前であれば形成されたはずの光架橋が、置換後には形成されない。この結果として、光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2は、プローブ間の光架橋が、置換前であれば形成されたはずのところ、置換後には形成されない。すなわち、光応答性人工核酸プローブのプローブ同士の光架橋の形成が、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドの導入によって、抑制される。プローブ同士が光架橋してしまうと、標的である二重鎖核酸との光架橋が形成されないままに、活性あるプローブが失われてしまうことになるから、プローブ同士の光架橋の抑制を可能とする本発明によって初めて、光応答性人工核酸プローブが実用化されたと言える。

【0030】
[光応答性人工核酸プローブ1及び2の間の相補的な部分塩基配列]
好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列が、例えば4塩基長~4000塩基長、4塩基長~100塩基長、6塩基長~60塩基長、8塩基長~30塩基長の範囲の長さを有するものとできる。光応答性人工核酸プローブ2に含まれる、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的な部分塩基配列もまた、上記と同じ長さとなる。

【0031】
[光応答性人工核酸プローブ1及び2の間の相補的でない部分塩基配列]
好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブ1に含まれる、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的でない部分塩基配列が、例えば2塩基長~200塩基長、4塩基長~40塩基長、6塩基長~20塩基長の範囲の長さを有するものとできる。好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブ2に含まれる、光応答性人工核酸プローブ1に対して相補的でない部分塩基配列が、例えば2塩基長~200塩基長、4塩基長~40塩基長、6塩基長~20塩基長の範囲の長さを有するものとできる。

【0032】
[光応答性人工核酸プローブの塩基配列に含まれる光架橋性人工ヌクレオシドの数]
好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列に含まれている、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの数が、光応答性人工核酸プローブ2に対して相補的な部分塩基配列の100塩基長あたりに換算して、例えば0.1個~10個の範囲、1個~10個の範囲、2個~8個の範囲とすることができる。光応答性人工核酸プローブ1の塩基配列に含まれている、式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドの数もまた、上記式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの数と同じ数となる。これに対応して、光応答性人工核酸プローブ2の塩基配列に含まれている、式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの数、及び式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドの数もまた、同じ数となる。

【0033】
[標的二重鎖核酸]
本発明の光応答性人工核酸プローブによれば、標的である二重鎖核酸を光架橋することができる。好適な実施の態様において、標的二重鎖核酸は、標的遺伝子の二重鎖核酸とすることができ、この光架橋によって標的遺伝子をマスクしてその発現を不可逆的に抑制することができる。このような発現抑制であれば、例えば細胞内の修復機構によって、修復されてしまうこともない。標的遺伝子の二重鎖核酸は、生物のゲノムDNAであってもよいが、特定の目的のために準備された人工的な遺伝子DNAであってもよく、人工核酸プローブの光架橋による結合が効果的に使用できる対象であればよい。いわゆるアンチジーン法の対象となる遺伝子を、標的二重鎖核酸として使用してもよい。

【0034】
[標的二重鎖核酸を光架橋する方法]
本発明によれば、光応答性人工核酸プローブを使用して標的二重鎖核酸を光架橋することができる。好適な実施の態様において、本発明は、光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2を、標的二重鎖核酸とハイブリダイズさせる工程、ハイブリダイズした光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2と、標的二重鎖核酸に対して、光照射して、光応答性人工核酸プローブ1と標的核酸鎖1を光架橋し、光応答性人工核酸プローブ2と標的核酸鎖2を光架橋する工程、を含む方法によって実施することができる。

【0035】
[光応答性人工核酸プローブと標的二重鎖核酸とのハイブリダイズ]
光架橋に先立って、光応答性人工核酸プローブ1及び光応答性人工核酸プローブ2を、標的二重鎖核酸と共存させて、ハイブリダイズさせる。光応答性人工核酸プローブの一重鎖は、熱力学的な挙動にしたがって、標的二重鎖核酸へと侵入して、相補性ある配列領域に沿って部分的にハイブリダイズし、あるいは再び解離する。ハイブリダイズの公知の条件によって、このような状態とすることができる。このような条件として、例えば、温度を0℃~70℃の範囲、20℃~40℃の範囲、pHをpH3~11の範囲、pH5~7.5の範囲とすることができる。

【0036】
[光照射による光架橋の形成]
ハイブリダイズによって、光架橋可能に配置された光応答性人工核酸プローブは、標的二重鎖核酸との間に、光架橋を形成する。ハイブリダイズによる配置にしたがって、光応答性人工核酸プローブ1は、標的核酸鎖1との間に、光架橋を形成し、光応答性人工核酸プローブ2は、標的核酸鎖2との間に、光架橋を形成する。ハイブリダイズによって形成された二重鎖領域は、光架橋によって固定されたために、熱力学的な挙動によって再び解離することはないものとなる。そのために二重鎖領域の伸長が一方的に進行して、標的二重鎖核酸の2本の鎖は、それぞれ光応答性人工核酸プローブの鎖と、二重鎖を形成した状態となる(図7の右端から2番目の図を参照)。

【0037】
光応答性人工核酸プローブに含まれる式(I)で表される光架橋性人工ヌクレオシドの塩基と式(II)又は式(III)で表される人工ヌクレオシドの塩基は、標的核酸鎖の塩基配列中の光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基との間に、光架橋を形成する。光応答性人工核酸プローブ同士は、熱力学的な挙動にしたがってハイブリダイズしたとしても、光架橋可能な位置にあるピリミジン塩基が置換されてしまっているために、光架橋を形成することはないものとなっている。そのために、光応答性人工核酸プローブ同士が、光架橋によって固定されることはなく、熱力学的な挙動によって再び解離する(図7の左端から2番目の図を参照)。

【0038】
[光照射]
光照射による光架橋の形成は、光化学反応であるために、温度、溶媒、塩濃度、pH等について、広範な条件下で実施することができる。このため、生理的な条件下でも実施することができて、遺伝子の発現抑制のために好適に使用することができる。好適な実施の態様において、光照射は、ハイブリダイズの条件と、同条件下で行うことができる。光照射は、例えば、340nm~390nmの範囲、360nm~390nmの範囲の波長を含む光、例えば385nmの波長を含む光の照射によって行うことができる。光照射は、例えば0.1秒~60秒、1秒~30秒、5秒~15秒の範囲の照射時間によって行うことができる。光照射は、例えば0℃~40℃、0℃~30℃、0℃~20℃、0℃~10℃の範囲の温度で行うことができ、例えば氷冷下の温度で、例えば37℃で、行うことができる。

【0039】
[光応答性人工核酸プローブのセット]
本発明の光応答性人工核酸プローブは、式(I)及び式(II)又は式(III)表される光架橋性人工ヌクレオシドを、同じプローブ分子中に導入しており、これによってプローブ分子同士の光架橋形成を抑制して、プローブとしての失活を防止している。そこで、このような効果が生じるように式(I)及び式(II)又は式(III)で表される光架橋性人工ヌクレオシドが導入された光応答性人工核酸プローブであれば、本発明の範囲内であり、このようなプローブを使用した光架橋形成方法、光架橋体の製造方法、遺伝子発現抑制方法もまた、本発明の範囲内である。例えば、光応答性人工核酸プローブへの光架橋性人工ヌクレオシドの導入個数や全体の塩基長によらず、本発明の範囲内である。好適な実施の態様において、光応答性人工核酸プローブのセットとして、光応答性人工核酸プローブ1と光応答性人工核酸プローブ2の2種類のプローブ分子を使用することができる。しかし、光応答性人工核酸プローブのセットが、配列の特性により1種類のプローブ分子となった場合においても本発明の範囲内であり、あるいは2種類よりも多くの種類のプローブ分子が使用される場合においても本発明の範囲内である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
CNVK含有ODNの合成]
光応答性人工核酸3-cyanovinylcarbazole nucleotide(CNVK)のアミダイト体、5-cyano-2’-deoxyuridine(CNU)のアミダイト体を、特許文献4(特許第4940311号)に開示された手順で合成した。合成したこれらのアミダイト体を、アセトニトリルで100mMの濃度へ調製し、核酸合成装置(製品名ABI3400、アプライドバイオシス社製)を使用して、ODN(オリゴデオキシリボヌクレオチド)を合成した。合成したODNはその後、28%アンモニア水を用いて55℃で8時間脱保護を行った。さらにその後、HPLCにて精製を行い、質量分析により目的配列であることを確認した。合成したODN(Probe1(T)、Probe1(CNU)、Probe2(T)、Probe2(CNU))の塩基配列を、表1に示す。Temp-1、Temp-2も同様の手法によって合成して、目的配列を得た。これらをあわせて、実験に使用した配列を、以下の表1に示す。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2017210448A_000008t.gif
【実施例】
【0043】
表中、光応答性人工核酸(Probe1(T)、Probe1(CNU)、Probe2(T)、Probe2(CNU))は、配列中に、次の式で表されるcnvK(3-シアノビニルカルバゾール-1’-β-デオキシリボシド)を、式(I)の光応答性人工塩基を有するヌクレオシドとして、リン酸ジエステル結合して有している。
【化7】
JP2017210448A_000009t.gif
【実施例】
【0044】
表中、光応答性人工核酸(Probe1(CNU)、Probe2(CNU))は、上記配列中に、cnvK(3-シアノビニルカルバゾール-1’-β-デオキシリボシド)に加えて、次の式で表される5-cyano-2’-deoxyuridine(CNU)を、式(II)の人工塩基を有するヌクレオシドとして、リン酸ジエステル結合して有している。
【化8】
JP2017210448A_000010t.gif
【実施例】
【0045】
表中、アンチジーン法の人工核酸プローブとして本実験で使用したProbe1(T)、Probe1(CNU)、Probe2(T)、Probe2(CNU)は、アンチジーン法で使用できるように、Temp-1、Temp-2の中の配列の一部と、表の通りにそれぞれ相補的な配列を有している。Probe1(T)とProbe1(CNU)は、Probe1(T)の特定のTがProbe1(CNU)ではCNUに置換されていることを除いて、同じ配列である。Probe2(T)とProbe2(CNU)は、Probe2(T)の特定のTがProbe2(CNU)ではCNUに置換されていることを除いて、同じ配列である。Probe1((T)及び(CNU))とProbe2((T)及び(CNU))とは、相補的な配列を有しており、人工核酸の配列中に含まれている人工塩基は相補的な位置にある塩基がいずれの塩基であっても相補鎖の形成を妨げない。
【実施例】
【0046】
表中、ゲノム遺伝子のDNAの代替として本実験で使用したTemp-1、Temp-2は、相補的な配列を有していて、二重鎖DNAを形成可能であり、末端に標識部位として、蛍光色素(Cy3)を有している。Temp-1はTemp-2よりも配列長が長いために、Temp-1の鎖とTemp-2の鎖とによって形成される二重鎖は、末端に一重鎖部分を有する。
【実施例】
【0047】
CNU置換CNVKプローブによるプローブ同士の光架橋反応の抑制]
10nM Temp-1、Temp-2と10μMのprobe1とprobe2をbuffer(100mM NaCl、50mM Na-cacodylate)に溶解させ、37℃で静置した。その後、UV-LED照射機を用い、385nmのUV光の照射を37℃で行った。光照射時間は0秒、1秒、5秒、10秒、30秒行った。それぞれのサンプルを変性PAGEによる解析を行い、CNU置換CNVKプローブの架橋抑制効果の検証を行った。変性PAGEによる解析結果を図1に示す。また、図1の変性PAGEを定量化したグラフを、図2として示す。図2は、CNU置換CNVKプローブによるプローブ間光架橋の抑制の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0048】
これらの結果から示されるように、Probe1とProbe2が共にチミンの場合(図1のA)(図2のProbe(T/T))、もしくはどちらか一方だけCNUに置換されている場合(図1のB)(図2のProbe(T/CNU))及び(図1のC)(図2のProbe(CNU/T))の場合には、1秒の光照射で80%近い光架橋反応が進行している。このことは、アンチジーン法でこれらをプローブとして用いた場合に、プローブ同士の架橋によって、有効なプローブが秒単位の時間で失われてしまうことを意味する。一方、Probe1とProbe2が共にCNUに置換されている場合(図1のD)(図2のProbe(CNU/CNU))では、光照射を30秒行っても95%以上のプローブが未架橋の状態で残っており、CNU置換CNVKプローブの組み合わせを用いることによってプローブ同士の架橋が抑制できていることが確認された。
【実施例】
【0049】
上記の実験による架橋反応と抑制のスキームを、図3及び図4として示す。
【実施例】
【0050】
CNU置換CNVKプローブを用いた二本鎖への光架橋]
このように、CNVKプローブのアンチジーン法への適応の際に問題となっていたプローブ同士の光架橋がCNUに置換することによって抑制できることが確認できた。そこで、次に、長い二本鎖DNAへのCNU置換CNVKプローブの光架橋反応の確認を行った。10nMのTemp-1、Temp-2と、10μMのProbe1((T)及び(cnU))とProbe2((T)及び(cnU))をbuffer(100mM NaCl、50mM Na-cacodylate)に溶解させ、37℃で静置した。その後、UV-LED照射機を用い、385nmの光照射を37℃で30秒間行った。それぞれのサンプルを変性PAGEによる解析を行い、それぞれのプローブを使用した際の二本鎖DNAに対する光架橋率を算出した。長い二本鎖に対する光架橋反応の変性PAGEによる解析結果を図5に示す。また、図5の変性PAGEを定量化したグラフを、図6として示す。図6は、CNU置換CNVKプローブの二本鎖DNAに対する光架橋率を示すグラフである。図6の棒グラフのそれぞれのバーの上部にある数値は、それぞれの架橋率(%)である。
【実施例】
【0051】
図5の変性PAGEにおいて、Temp1及びTemp2の矢印の位置は、それぞれのDNA鎖が単独で泳動された場合のバンドの位置を示す。図5の変性PAGEにおいて、Temp1_架橋体及びTemp2_架橋体の矢印の位置は、それぞれのDNA鎖がプローブによって架橋された場合のバンドの位置を示す。図5及び図6において、光照射のマル(○)は光照射有りを示し、バツ(×)は光照射無しを示す。図6の棒グラフのそれぞれのバーの上部にある数値は、それぞれの架橋率(%)の値である。
【実施例】
【0052】
これらの結果から示されるように、各プローブを用いた際の光架橋を変性PAGEにより解析したところ、Probe1とProbe2の両側、もしくは片側がチミンの場合には長い二本鎖DNAにはほとんど光架橋していなかった。一方、両側のプローブをCNUに置換した場合では二本鎖DNAに対してそれぞれプローブが光架橋したバンドが確認できた。この結果から、CNUに置換したCNVKプローブを用いることによって長い二本鎖DNAに対して等温条件下で光架橋可能であることが明らかとなった。すなわち、PCRサイクルのような昇温降温のサイクルを行う必要がなく、作業温度を維持しただけであって特段の温度操作を要しない条件下で(等温条件下で)、CNUに置換したCNVKプローブは長い二本鎖DNAに光架橋した。
【実施例】
【0053】
[結果のまとめ]
図7に、CNU置換CNVKプローブによる二本鎖DNAへの光架橋反応のスキームを示す説明図を示す。なお、図7ではさらにPCRにおける鎖の伸長のブロックの様子をあわせて示す。このように、CNVKプローブの光架橋位置に存在するTをCNUに置換することによってプローブ同士の架橋を抑制でき、37℃の条件下で二本鎖に対して光架橋していると本発明者は考えている。
【実施例】
【0054】
[実施例2]
[アンチジーン法]
実際にアンチジーン法として、光架橋により遺伝子の増幅が抑制できるかどうかの検証を以下の通りに行った。
【実施例】
【0055】
CNVK含有ODNの合成]
研究室で合成した光応答性人工核酸3-cyanovinylcarbazole nucleotide(CNVK)のアミダイト体、5-cyano-2’-deoxyuridine(CNU)のアミダイト体をアセトニトリルで100mMに調製し、ABI3400にてODNを合成した。合成したODN配列は下記表2に示す。これらが実験に使用したプローブ配列である。合成後、28%アンモニア水を用いて55℃で8時間脱保護を行った。その後、HPLCにて精製を行い、質量分析により目的配列であることを確認した。
【実施例】
【0056】
【表2】
JP2017210448A_000011t.gif
【実施例】
【0057】
[光架橋のスキームとアンチジーン法]
以下の実験においてターゲットとなる二本鎖DNAとして、ヒトのゲノムDNA(30億塩基対)を使用した。その中でProbeが結合するのは染色体17(8800万塩基対)のBRCA1遺伝子である。BRCA1はガン関連遺伝子の一つである。Genomic DNAに対して図8に示してあるように光架橋する配列になっている。図8は、Genomic DNAに対するProbeの光架橋の説明図である。
【実施例】
【0058】
プローブ同士では図9に示す二本鎖のような二本鎖は形成できるものの、架橋部位にCNUが来るように設計してあり、プローブ同士で光架橋することはできない。図9はプローブ同士の二本鎖構造を示す説明図である。
【実施例】
【0059】
そして、今回は光架橋されたGenomic DNAが増幅されないことを確認する為に、リアルタイムPCRにより増幅抑制率を算出した。PCRに使用するプライマー配列は表3に示す通りである。
【表3】
JP2017210448A_000012t.gif
【実施例】
【0060】
上記のプライマーを用いてPCRによって増幅されるBRCA1の配列を図10に示す。実際には二本鎖のDNAであるが、ここではターゲットとなるBRCA1側の配列を記載している。
【実施例】
【0061】
図10の配列において、プローブは配列の3行目のAGCCからCCATまでの部分に結合する。図10の配列の1行目のAATGからAGTAまでと、5行目のGTAAから6行目のACATまでは、PCRの際のプライマー配列である。
反応スキームとしては長いGenomic DNAに対してプローブ投入後光照射を行うことによって光架橋反応が進行する。そこにプライマーを投入し、PCR反応を行う。通常はPCRによって、目的とするDNA断片(320bp)が増幅されるのだが、光架橋されたGenomic DNAは光架橋反応によってPCRが阻害されるため、増幅が起こらない。このスキームを図11として示す。
【実施例】
【0062】
[Human Genomic DNAとprobeとの光架橋反応]
Human Genomic DNA 100ng/ulに対してprobe-3とprobe-4をそれぞれ200pMの濃度になるように調製した。サンプル調製後、37度で15分間インキュベートした後、37℃の温度プレート上で385nmの光照射を1時間行った。その後、光照射後のサンプル23μLに対してPCR primerを1μl(終濃度500nM)になるように加え、SYBR premix Ex Taq II(Takara)を25μL加え、リアルタイムPCRにより解析した。図12にリアルタイムPCR解析結果を示す。
【実施例】
【0063】
図12のグラフのカーブは、それぞれ、サイクル数25において縦軸の値が大きいカーブから順に、プローブなしのカーブ、probe3とprobe4を使用したカーブ、probe-3(CNU)とprobe-4(CNU)を使用したカーブを意味する。
通常のPCR(プローブなし)の場合にはPCRの増幅反応が進むにつれて蛍光の値が増加して行く様子が確認できる。一方、probe-3とprobe-4を投入した場合にも蛍光が増加してゆく。一方、probe-3(CNU)とprobe-4(CNU)を入れたものでは、蛍光の値が増加してゆくサイクル数が遅くなっている。これは増幅に使用できるGenomic DNAが少ないことを示しており、probe-3(CNU)とprobe-4(CNU)がGenomic DNAに光架橋し、増幅を阻害していることが確認できた。
【実施例】
【0064】
次に50%増幅された際のサイクル数を基に、増幅抑制率を算出した。図13に算出した増幅抑制率のグラフを示す。図13において(1)~(3)はそれぞれ以下である: (1):プローブなし、(2):probe3とprobe4を使用、(3):probe-3(CNU)とprobe-4(CNU)を使用。その結果、probe-3(CNU)とprobe-4(CNU)を使用した際にprobeなしの場合と比較して約96%の増幅抑制効果があることが分かった。
【実施例】
【0065】
[結果のまとめ]
これらの結果から、CNU、CNVKを用いた長い二本鎖に対する光架橋反応はHuman Genomic DNAの様な非常に長いDNAに対しても高効率に光架橋していることが確認できた。また、光架橋された二本鎖DNAはPCRのような遺伝子増幅を阻害していることから、高いアンチジーン効果を有していることが明らかとなった。
【実施例】
【0066】
[実施例3]
[シアノシチジン置換]
[ODNの合成]
研究室で合成した光応答性人工核酸3-cyanovinylcarbazole nucleotide(CNVK)のアミダイト体、及びTriazole-5’-trifluoromethyl-2’-deoxythymidine(CNC)のアミダイト体をアセトニトリルで100mMに調整し、ABI3400にてODNを合成した。合成したODN配列は次の表4に示す。合成後、28%アンモニア水を用いて55℃で12時間脱保護を行った。その後、HPLCにて精製を行い、質量分析により目的配列であることを確認した。シアノシチジン(CNC)の化学構造式を以下に示す。
【実施例】
【0067】
【表4】
JP2017210448A_000013t.gif
【実施例】
【0068】
【化9】
JP2017210448A_000014t.gif
【実施例】
【0069】
CNVKとCNCの光反応性の解析]
10μM ODN(K)と10μM ODN(CNC)をbuffer(100mM NaCl,50mMカコジル酸ナトリウム)中で90℃で5分間加熱した後、ゆっくり4℃までアニーリングを行った。その後、UV-LED照射機を用い、366nmのUV照射を4℃で行い、UPLC解析を行った。UPLC解析結果を図14に示す。
【実施例】
【0070】
UPLC解析の結果、CNCはCNVKとの光架橋反応が著しく低いことが明らかとなった。すなわち、図15で示すような光架橋反応はほぼ進行しないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、標的二重鎖核酸に対して光架橋を形成できて、プローブ同士の光架橋が十分に抑制された人工核酸プローブを提供する。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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