【0042】 細胞内局在性が未知のタンパク質が細胞小器官への局在性を示す場合は、当該タンパク質が局在性を示す細胞小器官において蛍光が検出される。また、細胞内局在性が未知のタンパク質が局在性を有しない場合は、融合タンパク質が細胞質でプロテアソームにより分解され、蛍光を検出することができない。いずれの場合も、細胞質に存在する融合タンパク質はプロテアソームにより分解されるため、バックグラウンドが低くなり、細胞小器官への局在性を精度良く判断することが可能となる。 【実施例】 【0043】 以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。 【実施例】 【0044】 <方法> 以下の試験例の全てにおいて、融合タンパク質(シグナル配列-蛍光タンパク質-デグロン配列)を発現する遺伝子を出芽酵母(S. cerevisiae)のCDC19プロモーターの制御下に配置し、これをプラスミドpTOW40836 (図1、文献1)に組み込んだ。このプラスミドで出芽酵母BY4741株(文献2)をLiOAC法(文献3)により形質転換した。 【実施例】 【0045】 この形質転換体をSC-Ura培地(文献3)で培養し、Leica DMI6000B顕微鏡を用いてGFPフィルターキューブで観察した。画像は、Leica Application Suite Xにより取得し編集した。 【実施例】 【0046】 試験例1 MTS4-GFPは、S. cerevisiaeのMdh1タンパク質のN末端19アミノ酸(MLSRVAKRAFSSTVANPYA)を人工合成し、yEGFP3 (文献4)のN末端に組み込むことで作製した。MTS4-GFP-degは、さらにcODC1配列(LPMSCAQESITSLYKKAGSENLYFQ(配列番号10))(文献5)を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。 【実施例】 【0047】 これらMTS4-GFP及びMTS4-GFP-degを前述するように出芽酵母内で発現させた結果を図2に示す。図2から、デグロンを使用することで、バックグラウンドが低いミトコンドリアの観察が可能となることが分かる。 【実施例】 【0048】 試験例2 MTSmmf-GFPは、S. cerevisiaeのMmf1タンパク質のN末端21アミノ酸(MFLRNSVLRTAPVLRRGITTL)を人工合成し、yEGFP3のN末端に組み込むことで作製した。MTSmmf1-GFP-degは、さらにcODC1配列(LPMSCAQESITSLYKKAGSENLYFQ)を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。 【実施例】 【0049】 これらMTSmmf-GFP及びMTSmmf-GFP-degを前述するように出芽酵母内で発現させた結果を図3に示す。図3から、デグロンを使用することで、バックグラウンドが低いミトコンドリアの観察が可能となることが分かる。 【実施例】 【0050】 試験例3 MTS-GFPは、S. cerevisiaeのMrps12タンパク質のN末端29アミノ酸(MLSRFMSNTWCTPLRQAQRLFSSTTTMQA)を人工合成し、yEGFP3のN末端に組み込むことで作製した。MTS-GFP-degは、さらにcODC1配列(LPMSCAQESITSLYKKAGSENLYFQ)を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。 【実施例】 【0051】 これらMTS-GFP及びMTS-GFP-degを前述するように出芽酵母内で発現させた結果を図4に示す。図4から、デグロンを使用することで、バックグラウンドが低いミトコンドリアの観察が可能となることが分かる。 【実施例】 【0052】 試験例4 SS-moxGFP-HDELは、原虫(T. brucei)のEP procyclinのN末端29アミノ酸(MAPRSLYLLAILLFSANLFSGVGFAAAAE)を人工合成しmoxGFP (文献6)のN末端に組み込み、更にC末端にHDEL配列を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。SS-moxGFP-deg-HDELは、HDEL配列を含む改変型cODC1配列(LPMSCAQESITSLYKKAGSHDEL(配列番号11))を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。 【実施例】 【0053】 これらSS-moxGFP-HDEL及びSS-moxGFP-deg-HDELを前述するように出芽酵母内で発現させた結果を図5に示す。図5から、デグロンを使用することで、バックグラウンドが低い小胞体の観察が可能となることが分かる。 【実施例】 【0054】 試験例5 GFP-ePTS1は、ePTS1配列(LGRGRRSKL、文献7)を人工合成し、moxGFPのC末端に組み込むことで作製した。GFP-deg-ePTS1は、ePTS1配列を含む改変型cODC1配列(LPMSCAQESITSLYLGRGRRSKL(配列番号12))を人工合成しC末端に組み込むことで作製した。 【実施例】 【0055】 これらGFP-ePTS1及びGFP-deg-ePTS1を前述するように出芽酵母内で発現させた結果を図6に示す。図6から、デグロンを使用することで、バックグラウンドが低いペルオキシソームの観察が可能となることが分かる。 【実施例】 【0056】 文献 1. Makanae, K., Kintaka, R., Makino, T., Kitano, H. & Moriya, H. Identification of dosage-sensitive genes in Saccharomyces cerevisiae using the genetic tug-of-war method. Genome Research 23, 300-311, doi:10.1101/gr.146662.112 (2013). 2. Brachmann, C. B. et al. Designer deletion strains derived from Saccharomyces cerevisiae S288C: a useful set of strains and plasmids for PCR-mediated gene disruption and other applications. Yeast 14, 115-132 (1998) 3. Amberg, D. C., Burke, D. & Strathern, J. N. Methods in Yeast Genetics: A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2005). 4. Cormack, B. P. et al. Yeast-enhanced green fluorescent protein (yEGFP)a reporter of gene expression in Candida albicans. Microbiology 143 (Pt 2), 303-311 (1997). 5. Jungbluth, M., Renicke, C. & Taxis, C. Targeted protein depletion in Saccharomyces cerevisiae by activation of a bidirectional degron. BMC Syst Biol 4, 176 (2010). 6. Costantini, L. M. et al. A palette of fluorescent proteins optimized for diverse cellular environments. Nat Commun 6, 7670, doi:10.1038/ncomms8670 (2015). 7. DeLoache WC, Russ ZN, Dueber JE., Towards repurposing the yeast peroxisome for compartmentalizing heterologous metabolic pathways., Nat Commun. 2016;7:11152.