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明細書 :ガン転移抑制剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-218380 (P2017-218380A)
公開日 平成29年12月14日(2017.12.14)
発明の名称または考案の名称 ガン転移抑制剤
国際特許分類 A61K  31/444       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
FI A61K 31/444
A61P 35/00
A61P 35/04
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-111280 (P2016-111280)
出願日 平成28年6月2日(2016.6.2)
発明者または考案者 【氏名】李 桃生
出願人 【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100137729、【弁理士】、【氏名又は名称】赤井 厚子
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA08
4C086NA14
4C086ZB26
要約 【課題】本発明は、ガン転移を抑制または遅らせることができる治療剤を提供する。
【解決手段】
N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するガン転移抑制剤。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するガン転移抑制剤。
【請求項2】
ガン転移が放射線治療、化学療法または外科的治療により誘発されるガン転移である、請求項1に記載のガン転移抑制剤。
【請求項3】
N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する前転移ニッチ形成阻害剤。
【請求項4】
N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する、原発性ガンまたは転移性ガン治療剤。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はN,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するガン転移抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(±)-N,N’-プロピレンジニコチンアミド(一般名:ニカラベン)は日本で開発され、くも膜下出血を対象に第3相臨床試験を行った薬剤であり、ニカラベンのラジカルスカベンジ作用は他の抗酸化剤と比較して必ずしも強くないが、生体での抗放射線作用は非常に優れている。例えばフリーラジカル、特に細胞毒性の強いヒドロキシラジカルを特異的に捕捉することから、脳循環障害治療剤(特許文献1)や放射線障害抑制剤(特許文献2)に有用であることが知られている。
【0003】
長年にわたり、ガン転移の成立には転移に適するニッチが必要であることが知られていたが、近年ガン細胞は転移する前に、自分で自分の転移先の準備を進めることがわかってきた。すなわちガン転移先に前転移ニッチを形成しガン細胞の転移を誘導することが報告されている(非特許文献1~3)。例えばガンに対する放射線治療または手術などの外科的治療を行った直後に、手当部位などから遠方へガンの転移が促進することがある。これは放射線治療等によって一時的に身体内の環境が変わり(低酸素または炎症状況の変化等)、残ったガン細胞によって、いわゆる「前転移ニッチ」が形成されるためであると考えられる。そのため手術や放射線治療によって、前ガン転移ニッチの形成を加速させ転移が活性化する恐れがあることが予想されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特公昭61-55911号公報
【特許文献2】特許第3170364号公報
【0005】

【非特許文献1】Kaplan RN, Riba RD, Zacharoulis S, Bramley AH, Vincent L, Costa C, MacDonald DD, Jin DK, Shido K, Kerns SA, Zhu Z, Hicklin D, Wu Y, Port JL, Altorki N, Port ER, Ruggero D, Shmelkov SV, Jensen KK, Rafii S, Lyden D. VEGFR1-positive haematopoietic bone marrow progenitors initiate the pre-metastatic niche. Nature. 2005 Dec 8; 438(7069):820-7.
【非特許文献2】Don X. Nguyen, Paula D. Bos & Joan Massagu Metastasis: from dissemination to organ-specific colonization Nature Reviews Cancer 9, 274-284 (April 2009)
【非特許文献3】Headley MB, Bins A, Nip A, Roberts EW, Looney MR, Gerard A, Krummel MF. Visualization of immediate immune responses to pioneer metastatic cells in the lung. Nature. 2016 Mar 24; 531(7595):513-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガン転移の抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ニカラベンが放射線治療等のダメージによる前ガン転移ニッチ形成を軽減させることからガン転移を抑制しうることを見出し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[4]に関する。
[1]N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するガン転移抑制剤。
[2]ガン転移が放射線治療、化学療法または外科的治療により誘発されるガン転移である、[1]に記載のガン転移抑制剤。
[3]N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する前転移ニッチ形成阻害剤。
[4]N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する、原発性ガンまたは転移性ガン治療剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガン治療における放射線治療、化学療法または外科的治療等の際にニカラベンを服用することでガン転移を予防または遅らせるあるいは転移ガンを治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、マウスの肺内腫瘍転移モデルにおける、薬物投与及び放射線照射の方法を示す図である。
【図2】図2は、マウスの肺内腫瘍転移モデルにおける、放射線照射18日後の肺の重量を示す図である。縦軸は肺重量、横軸は、コントロール群(Control)、ニカラベン投与群(Nicaraven)、アミフォスチン投与群(Amifostine)、放射線照射群(IR)、放射線照射+ニカラベン投与群(IR Nicaraven)及び放射線照射+アミフォスチン投与群(IR Amifostine)を示す。
【図3】図3は、マウスの肺内腫瘍転移モデルにおける、放射線照射18日後の肺内腫瘍結節の数を示す図である。縦軸は肺内腫瘍結節数、横軸は、コントロール群(Control)、ニカラベン投与群(Nicaraven)、アミフォスチン投与群(Amifostine)、放射線照射群(IR)、放射線照射+ニカラベン投与群(IR Nicaraven)及び放射線照射+アミフォスチン投与群(IR Amifostine)を示す。
【図4】図4は、マウスの自発肺内腫瘍転移モデルにおける、薬物投与及び放射線照射の方法を示す図である。
【図5】図5は、マウスの自発肺内腫瘍転移モデルにおける、放射線照射25日後の肺内腫瘍結節の数を示す図である。縦軸は肺内腫瘍結節数、横軸は、コントロール群(Control)、放射線照射群(IR)、放射線照射+ニカラベン投与群(IR Nicaraven)を示す。
【図6】図6は、マウスの自発肺内腫瘍転移モデルにおける、放射線照射25日後の肺の写真を示す。コントロール群(Control)、放射線照射群(5Gy)、放射線照射+ニカラベン投与群(5Gy nicaraven)の肺を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有するガン転移抑制剤に関する(以下本発明の抑制剤と略することもある)。

【0012】
本発明において用いるN,N’-プロピレンジニコチンアミド(以下薬学上許容しうる塩も含めてニカラベンと称することもある)は、例えば、特公昭61-55911号公報に記載された方法で合成することができる。

【0013】
また、N,N’-プロピレンジニコチンアミドの薬学上許容しうる塩としては、特に制限はなく、例えば、有機酸または無機酸との塩が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、有機酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸、ピバリン酸、ジエチル酸、コハク酸、ピメリン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、アジピン酸またはナフタリンジスルホン酸等があげられる。

【0014】
本発明における「ガン」は対象の転移前の臓器又は組織のガンであり、原発性ガンであっても転移性ガンであってもよい。ニカラベンが適用しうるガンとしては、肺ガン、乳ガン、肝ガン、胃ガン、大腸ガン、卵巣ガン、子宮頸ガンなどが挙げられ、なかでも肺、肝、脳などに有効に適用しうる。
本発明において「ガン転移」とは、ガンに対する放射線治療、化学療法、外科的治療等の侵襲的治療、望ましくは放射線治療を行った後に、対象の転移前のガンが治療後に別の臓器に転移することを意味する。また「ガン転移」は、未検出のガン(ガン細胞)が、放射線治療、化学療法、外科的治療等の治療を行った後に別の臓器に転移することも本発明に包含される。すなわちガン以外の疾患に対する放射線治療、化学療法、外科的治療等の治療、望ましくは放射線治療を行った後に、未検出のガンが治療後に別の臓器に転移することを意味する。
本発明における「放射線治療」とは、通常ガンの治療に用いられる療法であれば特に限定されないが、局所療法または全身療法のいずれであってもよく、放射線の種類は電磁波(X線、γ線など)または粒子線(電子、陽子、中性子など)のいずれであってもよい。
本発明における「化学療法」とは、抗ガン剤を用いて癌を治療することであり、抗ガン剤としては、ガンの治療に用いられる薬剤のすべてを意味し、ホルモン剤、分子標的治療薬、抗体を含む生物療法剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、プラチナ製剤などが挙げられ、望ましくはアルキル化剤、代謝拮抗剤、プラチナ製剤等を意味する。
本発明における「外科的治療」とは、ガンの原発巣及び転移巣や、ガン以外の疾患の病巣などの切除やレーザー等による治療を含み、外科的療法で、一般的には手術療法と呼ばれる治療を意味し、カテーテル挿入など侵襲性が低い治療も含む。

【0015】
また「ガン転移抑制」とは、治療の後にガン細胞が別の臓器に転移するのを、予防、抑制または遅延させることを意味し、転移の大きさや数を減らすことも含む概念である。また同様に、未検出のガン(ガン細胞)が治療の後に別の臓器に転移するのを、予防、抑制または遅延させることも「ガン転移抑制」に包含される。

【0016】
また「ガン転移抑制」には、ガン細胞が転移する前に自分で自分の転移先の準備を進めて転移に適する、いわゆる「前転移ニッチ」を形成するのを予防、抑制又は遅延させることも含まれる。すなわちニカラベンを有効成分として含有する前転移ニッチ形成阻害剤も本発明に包含される。

【0017】
本発明の抑制剤の投与対象としては、ヒト、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)等が挙げられる。なお、ヒト以外の哺乳動物に適用する場合、本発明の抑制剤の摂取量は、動物の体重もしくは大きさに応じて適宜加減すればよい。

【0018】
本発明の抑制剤において、成人1日あたりの投与量は、性別、年齢、体重、その症状、投与経路、剤型等によって適宜調整が必要であるが、成人1日あたりの投与量は、経口剤の場合には、通常10mg/kg体重~200mg/kg体重の範囲であり、20mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲が好ましい。
非経口剤の場合には、通常5mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲であり、10mg/kg体重~60mg/kg体重の範囲が好ましい。

【0019】
本発明の抑制剤において、上記1日あたりの量を一度にもしくは数回に分けて投与することができる。食前、食後、食間を問わない。

【0020】
投与時期は、放射線治療または外科的治療、化学療法を行う前、前記治療中、前記治療後から適宜投与することができる。
また投与間隔は特に限定されないが、毎日でも、隔日でも、間欠投与であってもよい。
投与期間は特に限定されないが、長期投与が可能である。治療前に投与する場合には、通常1~7日間、好ましくは1~3日間、さらに好ましくは治療直前~1日間に投与する。治療後に投与する場合には、通常治療直後から15日間、好ましくは3日間~7日間投与する。また治療前後のいずれに投与しても良く、治療中に投与するのも好ましい。

【0021】
本発明の抑制剤は経口的または直腸内、皮下、髄腔内、静脈内、動脈内、経皮等の非経口的に投与することができる。なかでも経口的、静脈内の投与が好ましい。
経口的に投与する場合には、食前、食後、食間を問わない。

【0022】
本発明の抑制剤はその剤型に格別の制限はなく、経口製剤、非経口製剤のいずれでもよい。
経口剤としては、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、チュワブル剤、液剤、乳剤、マイクロカプセル剤、懸濁剤、エリキシル剤、シロップ剤等が挙げられる。なかでも錠剤、カプセル剤が好ましい。

【0023】
非経口剤としては、静脈内、筋肉内、腹腔内、経鼻、口腔内、眼内、耳内、舌下もしくは皮下投与用製剤、エアゾールもしくは空気懸濁微粉末の形態で、気道を介する投与用製剤が挙げられる。あるいは、経皮パッチ剤、ローション剤、軟膏剤、パップ剤または坐剤の形態であってもよい。なかでも、注射剤、点滴剤、口腔内、筋肉内投与用製剤等が好ましく、注射剤、点滴剤、口腔内投与用製剤がより好ましい。

【0024】
注射剤としては、例えば、皮下、静脈内または筋肉内投与用注射剤として使用する場合には、適切な分散剤または浸潤剤および懸濁化剤を使用し、公知の方法に従って調製する。

【0025】
本発明の抑制剤は、必要に応じて、担体、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、流動性改善剤、甘味剤、香味剤、防腐剤、乳化剤、被覆剤等を含有することができる。

【0026】
本発明の抑制剤において、含有することができる具体的な成分としては、例えばトラガント、アラビアゴム、コーンスターチおよびゼラチンのような結合剤;微晶性セルロース、結晶セルロースのような賦形剤;コーンスターチ、前ゼラチン化デンプン、アルギン酸、デキストリンのような膨化剤;ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;微粒二酸化ケイ素、メチルセルロースのような流動性改善剤;ショ糖、乳糖およびアスパルテームのような甘味剤;パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤;ペパーミント、バニラ香料およびチェリーまたはオレンジのような香味剤;モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどの乳化剤;グリセリン脂肪酸エステルのような被覆剤等が挙げられる。
また、種々の他の材料を、調剤単位の物理的形態を変化させるために含有させることができる。錠剤の被覆剤としては、例えば、シェラック、砂糖またはその両方などが挙げられる。シロップ剤またはエリキシル剤は、例えば、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーまたはオレンジ香味等などを含有することができる。その他、各種ビタミン類、各種アミノ酸類を含有しても良い。
腸溶製剤とするときは、例えばヒドロキシルフェニルメチルセルロースの水溶液を被覆前処理剤とし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの水溶液およびポリアセチンの水溶液を被覆剤として常法により腸溶製剤とすればよい。

【0027】
本発明の抑制剤は他の薬物と併用して使用することができる。
併用に際しては、本発明の抑制剤と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明の抑制剤と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
そのような併用薬としては、例えば、分子標的治療剤やホルモン剤、生物療法剤アルキル化剤、代謝拮抗剤、プラチナ製剤等の抗ガン剤などが挙げられ、なかでも生物療法剤などが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を適且組み合わせて用いることができる。

【0028】
本発明において上記併用剤の投与量は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。併用薬物としての1日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、感受性差、投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類などによって異なり、特に限定されない。

【0029】
本発明の別の態様としては、N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する、原発性ガンまたは転移性ガン治療剤も本発明に包含される。本明細書において「治療」とは、症状の改善、重症化の防止、寛解の維持、更には再発の防止も含む。該治療剤の投与は、放射線治療、化学療法、外科的治療等の侵襲的治療と併用されてもよい。
また上記侵襲的治療はガン以外の疾患に対する治療であってもよく、ガン以外の疾患としては、血液系疾患、免疫系疾患、内分泌系疾患、代謝系疾患、神経・筋疾患、視覚・聴覚系疾患、循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、皮膚・結合組織疾患、骨・関節系疾患、腎・泌尿器系疾患、耳鼻科系疾患などが挙げられる。投与量やその他定義は既述に準ずる。

【0030】
本発明の別の態様としては、N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩を有効成分として含有する前転移ニッチ形成阻害剤が挙げられる。前転移ニッチ形成阻害剤の投与量やその他定義は既述に準ずる。

【0031】
本発明の別の態様としては、N,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩の治療上有効量を哺乳動物に投与することを含む、ガン転移を抑制する方法、及び前転移ニッチ形成を阻害する方法が挙げられる。

【0032】
本明細書において「有効量」とは、例えば、組織、系、動物若しくはヒトの生物学的若しくは医学的反応を惹起する、医薬又は薬剤の量を意味する。具体的には上記に述べたとおりであり、その他の定義も既述に準ずる。

【0033】
本発明の別の態様としては、ガン転移抑制剤または前転移ニッチ形成阻害剤を製造するためのN,N’-プロピレンジニコチンアミドまたはその薬学上許容しうる塩の使用も挙げられる。

【0034】
またニカラベンを使用することを含む前ガン転移ニッチの解明または制御方法も本発明に含まれる。当該方法は、ニカラベン処置をする工程およびそれによりアップレギュレートされた遺伝子を解析する工程等を含む。

【0035】
以下の実施例によって本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0036】
<試験例1>肺内腫瘍形成(転移)実験
1.実験動物
雄性マウス(C57BL/6、9~10週齢、体重20~28g)を実験に用いた。
2.放射線照射
マウスの胸部のみに5GyのX線放射線照射を行った(1.5Gy/min、鉛で他の部位を保護)。
3.肺転移モデル
放射線照射の翌日に肺ガン細胞(LLC細胞株、5x10/0.5ml PBS/mouse)をマウスに静脈内注射することにより肺転移モデルを作製した。
【実施例】
【0037】
4.薬剤の投与
図1に示すように、放射線照射およびガン細胞静脈内注射の直前(30分内)にニカラベン(Nicaraven)(100mg/kg)あるいはアミフォスチン(Amifostine)(50mg/kg)を0.2mLの生理食塩水に溶かして腹腔内注射した。対照治療としては0.2mLの生理食塩水のみ、腹腔内注射した。また、薬剤の投与は放射線照射の当日から毎日1回で、計7回の投与を行った。
【実施例】
【0038】
5.肺転移巣の評価
放射線照射18日後(ガン細胞注入17日後)にマウスを犠牲死させ、肺を摘出した。肺の重量および肺内腫瘍結節の数を計測し、肺内腫瘍形成(転移)の評価を行った。
図2に肺の重量、図3に肺内腫瘍結節の数を示した。ニカラベンは放射線ダメージによる転移を抑制することが確認された。ラジカルスキャベンジャー作用を有し放射線防護剤として実用化されているアミフォスチンには効果は認められなかった。
【実施例】
【0039】
<試験例2>自発肺内腫瘍形成(転移)実験
1.実験動物
雄性マウス(C57BL/6、9~10週齢、体重20~28g)を実験に用いた。
2.皮下腫瘍の作製
マウス肺ガン細胞(LLC、1x10cells/0.1ml PBS)をマウスの背部に皮下注射し、皮下腫瘍モデルを作製した。
3.放射線照射
皮下腫瘍作製後10日目にマウスの胸部のみに5GyのX線放射線照射を行った(1.5Gy/min、鉛で他の部位を保護)。
4.皮下腫瘍の切除
皮下腫瘍作製後15日目(X線放射線照射後5日目)に皮下腫瘍の摘出手術を行った。
5.薬剤の投与
図4に示すように、放射線照射の直前(30分内)にニカラベン(Nicaraven)(100mg/kg)を0.2mLの生理食塩水に溶かして腹腔内注射した。対照治療としては0.2mLの生理食塩水のみ、腹腔内注射する。また、薬剤の投与は放射線照射の当日から毎日1回で、計7回の投与を行う。
【実施例】
【0040】
6.肺転移巣の評価
皮下腫瘍作製後35日目(放射線照射後25日目)にマウスを犠牲死させ、肺を摘出する。肺内腫瘍結節の数を計測し、自発肺内腫瘍転移の評価を行った。図5に肺内腫瘍結節の数を示した。また図6に摘出した肺の写真を示した。ニカラベンは放射線ダメージによる転移を抑制することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、ガン治療における放射線治療、化学療法または外科的治療等の際にニカラベンを服用することでガン転移を予防または遅らせるあるいは転移ガンを治療することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6-1】
5
【図6-2】
6