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明細書 :超伝導加速装置とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6365997号 (P6365997)
登録日 平成30年7月13日(2018.7.13)
発行日 平成30年8月1日(2018.8.1)
発明の名称または考案の名称 超伝導加速装置とその製造方法
国際特許分類 H05H   7/20        (2006.01)
FI H05H 7/20
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2017-139081 (P2017-139081)
出願日 平成29年7月18日(2017.7.18)
審査請求日 平成29年7月18日(2017.7.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】近藤 良也
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
審査官 【審査官】右▲高▼ 孝幸
参考文献・文献 実開平3-6813(JP,U)
実開平5-46000(JP,U)
特表平11-502627(JP,A)
山本 純也,サーマルアンカーの色々(リード線を対象として),低温工学,1979年,vol.14, no.6,pp.303-304
調査した分野 H05H 7/20
H01F 6/00
G01K 13/00
要約 【課題】安定した伝熱性能を有するサーマルアンカーを備えた、超伝導加速装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の超伝導加速装置100は、超伝導加速空洞101と、超伝導加速空洞101を内包する冷媒槽102と、冷媒槽102を連通するビームパイプ103と、冷媒槽102の外壁に接続された冷媒ガス導入手段104および蒸発ガス排出手段105と、冷媒槽102を囲む周波数調整機構106と、冷媒槽102の外壁に取り付けられた温度計測手段107と、を備え、温度計測手段107が、温度計素子10と計測線20とを、サーマルアンカー30を介して接続してなり、サーマルアンカー30が、可撓性基板の一方の主面側に、線状パターンを複数有する金属膜、絶縁膜を順に積層してなり、可撓性基板の他方の主面側が、冷媒槽102の外壁に貼り付けられている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
中空のダンベル形状を有し、両端が開口した複数の部材を、開口部同士が重なるように連結してなる超伝導加速空洞と、
前記超伝導加速空洞を内包する筒状の冷媒槽と、
前記冷媒槽を長手方向に連通するビームパイプと、
前記冷媒槽の外壁に接続された冷媒ガス導入手段と、
前記冷媒槽の外壁に接続された蒸発ガス排出手段と、
前記冷媒槽を周方向に囲む周波数調整機構と、
前記冷媒槽の外壁に取り付けられた温度計測手段と、を備え、
前記温度計測手段が、温度計素子と計測線とを、サーマルアンカーを介して接続してなり、
前記サーマルアンカーが、可撓性基板の一方の主面側に、所定の線状パターンを有する金属膜、絶縁膜を順に積層してなり、
前記可撓性基板の他方の主面側が、前記冷媒槽の外壁に貼り付けられていることを特徴とする超伝導加速装置。
【請求項2】
前記温度計測手段が、前記外壁の複数の位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の超伝導加速装置。
【請求項3】
前記温度計測手段が、伝熱部材で覆われていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の超伝導加速装置。
【請求項4】
前記サーマルアンカーの積層方向における厚みが、150μm以上250μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の超伝導加速装置。
【請求項5】
前記線状パターンのパターン長が400mm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の超伝導加速装置。
【請求項6】
請求項1~5に記載の超伝導加速装置の製造方法であって、
可撓性基板の一方の主面に所定のパターンを有する金属膜を形成する工程と、
前記可撓性基板の一方の主面の露出部分および前記金属膜上に絶縁膜を貼り付ける工程と、を経てサーマルアンカーを製造し、
温度計素子と計測線とを、前記サーマルアンカーを介して接続させてなる温度計測手段を、前記冷媒槽の外壁に、前記可撓性基板の他方の主面側が対向するように貼り付け、さらに、前記温度計素子および前記サーマルアンカーを伝熱部材で覆う工程を含むことを特徴とする超伝導加速装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導現象を利用して電子や陽電子のビームを加速させるための超伝導加速装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導現象を利用して荷電粒子のビーム加速を行う次世代の加速器として、超伝導加速空洞を備えた加速装置が知られている。超伝導加速空洞は、ニオブ等の金属材料からなり、これを冷却して超伝導状態とすることにより、空洞内表面におけるビーム加速用の電磁波エネルギーの損失をほぼなくすことができ、効率的なビーム加速を実現することができる。
【0003】
超伝導加速装置を動作させる場合、超伝導加速空洞を内包する冷媒槽の表面温度を正確に測定して管理することが必要とされており、温度計と測定対象物との熱接触状態、測定対象物以外のもので発生した熱の混入に留意して、測定誤差を極力小さくすることが求められる。特に、超伝導現象が発生するような超低温領域においては、計測線からの入熱による影響が無視できない。そこで、一般的には、サーマルアンカーとして計測線自身を温度計装着位置の近傍で這わせ、測定対象物と計測線の温度をほぼ等しくすることにより、計測線からの入熱を除去する等の対策がとられている(特許文献1、2)。
【0004】
ただし、従来のサーマルアンカーの施工には、様々な問題点がある。従来のサーマルアンカーは、熱侵入を防ぐために強度に乏しい細線構造を有する計測線を、折り曲げ加工したものである。そのため、従来のサーマルアンカーでは、折り曲げ加工時の過度の歪の影響による断線発生率が高く、このことが、温度計測手段としてのサーマルアンカーの信頼性を低下させる一つの要因となってる。
【0005】
また、従来のサーマルアンカーの構造そのものは単純であるが、その施工はすべて手作業で行われ、複雑・煩雑な現場作業を要するため、短時間で大量に施工することは難しい。また、得られるサーマルアンカーの伝熱性能が作業者の技量に左右されるため、作業者が熟練者であることが求められる。
【0006】
また、通常の場合、超伝導加速装置の製造過程における温度計の装着は、クライオスタット内の配管・機器類の組込がある程度完了した、いわば半完成の時点で行われることが多い。そのため、温度計を装着する時点では、既に組み込まれている配管・周辺機器類に遮られて、装着箇所に手が入り難くなっており、良好な作業姿勢を取れない場合が多く、その結果として工数・作業時間の更なる増大を招くことになる。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特許第4360037号公報
【特許文献2】特許第4385394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、安定した伝熱性能を有するサーマルアンカーを備えた、超伝導加速装置とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る超伝導加速装置は、中空のダンベル形状を有し、両端が開口した複数の部材を、開口部同士が重なるように連結してなる超伝導加速空洞と、前記超伝導加速空洞を内包する筒状の冷媒槽と、前記冷媒槽を長手方向に連通するビームパイプと、前記冷媒槽の外壁に接続された冷媒ガス導入手段と、前記冷媒槽の外壁に接続された蒸発ガス排出手段と、前記冷媒槽を周方向に囲む周波数調整機構と、前記冷媒槽の外壁に取り付けられた温度計測手段と、を備え、前記温度計測手段が、温度計素子と計測線とを、サーマルアンカーを介して接続してなり、前記サーマルアンカーが、可撓性基板の一方の主面側に、所定の線状パターンを有する金属膜、絶縁膜を順に積層してなり、前記可撓性基板の他方の主面側が、前記冷媒槽の外壁に貼り付けられていることを特徴とする。
【0010】
(2)前記(1)に記載の超伝導加速装置において、前記温度計測手段が、前記外壁上の複数の位置に取り付けられていることが好ましい。
【0011】
(3)前記(1)または(2)のいずれかに記載の超伝導加速装置において、前記温度計測手段が、伝熱部材で覆われていることが好ましい。
【0012】
(4)前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の超伝導加速装置において、前記サーマルアンカーの積層方向における厚みは、熱伝導性と機械的強度を考慮すると、150μm以上250μm以下であることが好ましいが、その範囲に限るものではない。
【0013】
(5)前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の超伝導加速装置において、伝熱特性を考慮すると、前記線状パターンのパターン長は400mm以上であることが好ましい。
【0014】
(6)本発明の一態様に係る超伝導加速装置の製造方法は、前記(1)~(5)に記載の超伝導加速装置の製造方法であって、可撓性基板の一方の主面に所定のパターンを有する金属膜を形成する工程と、前記可撓性基板の一方の主面の露出部分および前記金属膜上に絶縁膜を貼り付ける工程と、を経てサーマルアンカーを製造し、温度計素子と計測線とを、前記サーマルアンカーを介して接続させてなる温度計測手段を、前記冷媒槽の外壁に、前記可撓性基板の他方の主面側が対向するように貼り付け、さらに、前記温度計素子および前記サーマルアンカーを伝熱部材で覆う工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超伝導加速装置は、冷媒槽の外壁に、ラミネート構造を有するサーマルアンカーおよび温度計素子を貼り付けて一体化させることにより、温度計測を行う部分の構造を改良したものである。本発明のサーマルアンカーは、導電部が所定のパターン(幅、厚さ)を有する金属膜によって構成されるものであり、伝熱性能の安定化・均質化を実現したものとなっている。この金属膜の形状は、その製造過程において、作業者の技能に左右されることがないため、得られる温度計測手段の性能のバラつきを抑えることができる。
【0016】
また、本発明のサーマルアンカーは、機械的に堅牢なラミネート構造を有しており、その製造過程において、従来のサーマルアンカーのように曲げ加工時の計測線においてキンクが発生する問題を回避することができる。そのため、断線の虞がなく、得られる温度計測手段の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、ラミネート構造のサーマルアンカーの製造は、手作業で行う工程を含まないため、熟練者の技能を不要とし、併せてこの部分の現場作業を省略することができる。
【0018】
また、サーマルアンカーを含む温度計測手段の超伝導加速空洞への組み込みは、配管・周辺機器類を組み込む前に行われる。したがって、従来のように、配管・周辺機器類に遮られて温度計測手段を組み込み難くなる問題を回避することができ、製造工程の簡略化および製造時間の短縮・製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)、(b)本発明の一実施形態に係る、超伝導加速装置の斜視図、断面図である。
【図2】(a)、(b)本発明の一実施形態に係る、サーマルアンカーの側面図、上面図である。
【図3】(a)~(c)本発明の一実施形態に係る超伝導加速空洞の冷却過程を、段階的に説明する図である。
【図4】本発明の比較例に係る超伝導加速装置の斜視図である。
【図5】本発明の実施例および比較例のサーマルアンカーを用いて、得られた温度計測の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。

【0021】
[超伝導加速装置の構成]
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る超伝導加速装置100の斜視図である。図1(b)は、図1(a)の超伝導加速装置100を、A-A’線を含む面で切断した場合の断面図である。

【0022】
超伝導加速装置100は、超伝導加速空洞101と、超伝導加速空洞101を内包する筒状の冷媒槽102と、冷媒槽102を長手方向Lに連通するビームパイプ103と、冷媒槽102の外壁に接続された冷媒ガス導入手段104と、冷媒槽102の外壁に接続された蒸発ガス排出手段105と、冷媒槽102を周方向に囲む周波数調整機構106と、冷媒槽102の外壁に取り付けられた温度計測手段107と、を備えている。輻射熱の影響を低減させる必要があるため、超伝導加速装置100は、実際には全体をスーパーインシュレーションで覆った状態で用いられる。

【0023】
超伝導加速空洞101は、中空のダンベル形状を有し、両端が開口した複数の部材を、開口部同士が重なるように連結してなる。超伝導加速空洞101は、絶対温度9~10度程度で超伝導体となる材料、例えばニオブ、ニオブチタン合金等で構成される。なお、超伝導加速空洞の各部分のサイズについての制限はなく、それらが本発明の効果に影響を与えることはない。

【0024】
温度計測手段107は、温度計素子10と計測線20とを、サーマルアンカー30を介して接続してなる。

【0025】
図2(a)は、サーマルアンカー30の側面図である。サーマルアンカー30は、可撓性基板31の一方の主面31a側に、厚さ20μm程度の第一接着剤層32、所定の線状パターンを複数有する金属膜33、厚さ40μm程度の第二接着剤層34、絶縁膜35を順に積層した構造(ラミネート構造)を有する。サーマルアンカー30の積層方向における厚みは、熱伝導性と機械的強度を考慮すると、150μm以上250μm以下であることが好ましい。

【0026】
可撓性基板31は、可撓性を有する絶縁性の基板であり、その一例として、ポリイミドフィルム上に銅箔をラミネートした銅張基板が挙げられる。可撓性基板31の好適な厚さの範囲は、10μm以上100μm以下である。可撓性基板31は、可撓性を有していることにより、曲面をなす超伝導加速空洞101の外壁に対して、その一面全体を接着させることができ、安定した接着状態を維持することが可能となる。

【0027】
図2(b)は、絶縁膜35側から見たサーマルアンカー30の上面図である。ここでは、金属膜33の構成を明示するために、絶縁膜35を半透明化している。

【0028】
金属膜33は、銅、アルミニウム、金、銀等の材料からなり、その好適な厚さの範囲は20μm以上80μm以下である。

【0029】
金属膜33は、温度計素子10と計測線20とを結ぶ複数の線状パターンによって構成されている。ここでは、極低温に対応した微弱な電圧の測定を想定し、四端子測定法を用いる場合の構成を一例として示している。各線状パターンは、特定の形状に限定されることはないが、伝熱特性を考慮すると伝熱面積を大きくすることが好ましく、パターン長は400mm以上であることが好ましい。好適な例としては、形成可能な領域を埋めるように屈曲を複数回繰り返し、パターン幅を可能な限り広くした形状(渦巻状等)が挙げられる。

【0030】
そのような形状としては、例えば図2(b)に示すように、可撓性基板31上において、互いに略平行となるように揃った状態で、温度計素子10と計測線20とを最短距離で結ぶ中心線Cを隔てた一端31c側での屈曲、他端31d側での屈曲を、交互に繰り返す形状が挙げられる。

【0031】
金属膜33を構成する各線状パターンは、一端に温度計素子10を接続する温度計素子取付部33aを有し、他端に計測線20を接続する計測線引出部33bを有している。計測線20は、一端が計測線引出部33bに接続され、他端が温度検出手段40に接続されている。

【0032】
絶縁膜35は、金属膜33を形成した時点での可撓性基板の一方の主面31aの露出部分、および金属膜33を覆っている。絶縁膜35は、ポリイミド等の材料からなり、その好適な厚さの範囲は10μm以上80μm以下である。

【0033】
伝熱部材108としては、アルミテープや熱伝導性が高い薄板等の部材が用いられる。伝熱部材108は、伝熱性をさらに良好にして測定精度を高めるとともに、温度計装着部分を保護する機能を有する。

【0034】
可撓性基板の他方の主面側31bは、冷媒槽102の外壁に貼り付けられている。この貼り付けは、例えば、熱伝導性の高いアルミテープ等の粘着部材(接着部材)を用いて行われる。

【0035】
図3(a)~(c)は、超伝導加速空洞101の冷却過程を、段階的に説明する図である。まず、図3(a)に示すように、冷媒ガス導入手段104から、冷媒槽102内の底部に液化ヘリウムガスSを導入する。このとき、冷媒槽102の外壁のうち底部側の部分は、冷却され、導入した液化ヘリウムガスSの温度に近い温度を示すが、その他の部分の温度はあまり変化しない。

【0036】
続いて、図3(b)に示すように、底部から超伝導加速空洞101と重なる位置(以下では中間部と呼ぶ)までがぎりぎり埋まる程度に、液化ヘリウムガスSをさらに導入する。このとき、冷媒槽102の外壁のうち底部から中間部までの部分が冷却され、導入した液化ヘリウムガスSの温度に近い温度を示すが、中間部より上側の部分の温度はあまり変化しない。

【0037】
続いて、図3(c)に示すように、冷媒槽102内にさらに液化ヘリウムガスSを導入し、超伝導加速空洞101を除いた全ての部分を液化ヘリウムガスSで満たす。このとき、冷媒槽102の外壁全体が導入した液化ヘリウムガスSの温度に近い温度を示す。この段階になって、超伝導加速空洞101の全体が、液化ヘリウムガスSの液中に浸漬され、十分に冷却された状態となる。

【0038】
超伝導加速空洞101の冷却具合を正確に把握する上で、温度計測手段107は、外壁上の複数の位置に取り付けられていることが好ましい。図1(a)では、冷媒槽102の外壁のうち底部、中間部、頂部の3箇所に、温度計測手段107を貼り付けた例を示しているが、貼り付ける位置については限定されない。

【0039】
[超伝導加速装置の製造方法]
上述した超伝導加速装置100の製造方法(施工方法)は、超伝導加速空洞101の外壁に温度計測手段107を取り付ける手法に特徴を有している。

【0040】
まず、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、可撓性基板の一方の主面31aに所定のパターンを有する金属膜33を形成する工程と、可撓性基板31の露出部分および金属膜33上に絶縁膜35を貼り付ける工程と、を経てサーマルアンカー30を製造する。続いて、このサーマルアンカー30を介して温度計素子10と計測線20とを接続する。

【0041】
次に、温度計測手段107を、冷媒槽102の外壁に、可撓性基板の他方の主面31b側が対向するように貼り付ける。

【0042】
最後に、温度計素子10およびサーマルアンカー30を伝熱部材108で覆うことによって、上述した超伝導加速装置100を得ることができる。

【0043】
以上のように、本実施形態に係る超伝導加速装置100は、冷媒槽102の外壁に、ラミネート構造を有するサーマルアンカー30および温度計素子10を貼り付けて一体化させることにより、温度計測を行う部分の構造を改良したものである。本実施形態に係るサーマルアンカー30は、導電部が所定のパターン(幅、厚さ)を有する金属膜33によって構成されるものであり、伝熱性能の安定化・均質化を実現したものとなっている。この金属膜33の形状は、その製造過程において、作業者の技能に左右されることがないため、得られる温度計測手段107の性能のバラつきを抑えることができる。

【0044】
また、本実施形態に係るサーマルアンカー30は、機械的に堅牢なラミネート構造を有しており、その製造過程において、従来のサーマルアンカーのように曲げ加工時の計測線においてキンク等過度の曲げ歪に起因する問題を回避することができる。そのため、断線の虞がなく、得られる温度計測手段107の信頼性を高めることができる。

【0045】
また、ラミネート構造のサーマルアンカー30の製造は、手作業で行う工程を含まないため、熟練者の技能を不要とし、併せてこの部分の現場作業を省略することができる。

【0046】
また、サーマルアンカー30を含む温度計測手段107の超伝導加速空洞101への組み込みは、配管・周辺機器類を組み込む前に行われる。したがって、従来のように、配管・周辺機器類に遮られて温度計測手段107を組み込み難くなる問題を回避することができ、製造工程の簡略化および製造時間の短縮・製造コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により、本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
上述した製造方法により、ラミネート構造のサーマルアンカーを備えた本発明の超伝導加速装置100を製造した。超伝導加速空洞101としては、チタニウムからなり、底面の直径が0.24m、母線の長さが1mの円筒形状のものを用いた。冷媒槽102への温度計測手段10の貼り付けは、アルミテープを用いて行った。
【実施例】
【0049】
サーマルアンカー30として、積層方向から見た主面のサイズが30mm×180mm、厚さが175μmのものを用いた。可撓性基板31としては、ポリイミドフィルム上に銅箔をラミネートした厚さ105μmの銅張基板を用いた。金属膜33としては、銅からなり、図2に示したような4本の線状パターンによって構成されるものを用いた。各線状パターンの長さ、幅、厚さを、それぞれ、540mm、1.2mm、35μmとした。絶縁膜35としては、厚さ70μmのポリイミドフィルムを用いた。
【実施例】
【0050】
(比較例1)
図4は、従来方式で製造した超伝導加速装置200の斜視図である。超伝導加速装置200においては、サーマルアンカー70が計測線60の一端側を折り曲げ加工したものとなっている。その他の構成については、実施例1で用いた超伝導加速装置100の構成と同様である。
【実施例】
【0051】
本発明による温度計測の性能を従来方式と比較するため、製造した超伝導加速装置100、200のそれぞれにおいて、冷媒槽を液化ヘリウムガスSで満たした後、冷媒槽を減圧してλ点(2.17K)以下の温度の超流動ヘリウムを発生させ、安定状態にした後、冷凍機を止め、冷媒槽の温度上昇の時間変化を計測した。
【実施例】
【0052】
図5は、計測結果を示すグラフである。グラフの横軸、縦軸は、それぞれ、経過時間[分]、冷媒槽の温度[K]を示している。白色、緑色の曲線は、それぞれ、実施例1、比較例1における冷媒槽の外壁の頂部での計測結果に対応している。赤色、青色の曲線は、それぞれ、実施例1、比較例1における蒸発ガス排出手段外壁での計測結果に対応している。時間の経過とともに、いずれの計測箇所も、超流動ヘリウム温度からの温度上昇が、従来法と一致して時間変化しており、高度な技術を要する従来法と同等の性能が得られている。
【実施例】
【0053】
白色の曲線、赤色の曲線が、それぞれ緑色の曲線、青色の曲線に略一致していることから、実施例1の超伝導加速空洞100において、比較例1の超伝導加速空洞200と同等の温度特性が得られていることが分かる。この結果から、本発明のように、ラミネート構造のシート状サーマルアンカーを用いた場合であっても、温度計測手段としての性能を損ねる虞はないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ヘリウムが超流動転移するような超低温領域で所定の部材を冷却する場合に、その部材の表面温度を測定する技術として、広く活用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100、200・・・超伝導加速装置
101、201・・・超伝導加速空洞
102、202・・・冷媒槽
103、203・・・ビームパイプ
104、204・・・冷媒ガス導入手段
105、205・・・蒸発ガス排出手段
106、206・・・周波数調整機構
107、207・・・温度計測手段
108、208・・・伝熱部材
10、50・・・温度計素子
20、60・・・計測線
30、70・・・サーマルアンカー
31・・・可撓性基板
31a・・・可撓性基板の一方の主面
31b・・・可撓性基板の他方の主面
31c・・・可撓性基板の一端
31d・・・可撓性基板の他端
32・・・第一接着剤層
33・・・金属膜
33a・・・温度計素子取付部
33b・・・計測線引出部
34・・・第二接着剤層
35・・・絶縁膜
40、80・・・温度検出手段
C・・・中心線
S・・・ヘリウムガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4