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明細書 :エルゴチオネインの産生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-225368 (P2017-225368A)
公開日 平成29年12月28日(2017.12.28)
発明の名称または考案の名称 エルゴチオネインの産生方法
国際特許分類 C12N   1/21        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P  13/04        (2006.01)
FI C12N 1/21 ZNA
C12N 15/00 A
C12P 13/04
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-122379 (P2016-122379)
出願日 平成28年6月21日(2016.6.21)
発明者または考案者 【氏名】谷 明生
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
4B065
Fターム 4B064AE03
4B064AE43
4B064CA02
4B064CD04
4B064CD06
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA71X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB06
4B065BB26
4B065BB28
4B065BB29
要約 【課題】安全性が高く、容易にエルゴチオネイン(Ergothioneine:EGT)を産生し、製造する方法の提供。
【解決手段】エルゴチオナーゼをコードする遺伝子の発現が抑制されることにより、エルゴチオナーゼ活性が欠損又は低減しているMethylobacterium属細菌、あるいは、Aureobasidium属の微生物を、炭素源を含む培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。またエルゴチオネイン産生細胞を、アミノ酸源として酵母エキスを含有し、かつ、炭素源を含有する培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
エルゴチオナーゼをコードする遺伝子の発現が抑制されることにより、エルゴチオナーゼ活性が欠損又は低減している、Methylobacterium属細菌。
【請求項2】
エルゴチオナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)及び(b)から選択されるいずれかのDNAからなる、請求項1に記載のMethylobacterium属細菌:
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるエルゴチオナーゼをコードするDNA;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対し30%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エルゴチオナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項3】
さらに、エルゴチオネイン合成遺伝子が導入されている、請求項1又は2に記載のMethylobacterium属細菌。
【請求項4】
エルゴチオネイン合成遺伝子がegtBD遺伝子である、請求項3に記載のMethylobacterium属細菌。
【請求項5】
Methylobacterium属細菌が、受託番号NITE P-02274として寄託されたものである、請求項1~4のいずれかに記載のMethylobacterium属細菌。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のMethylobacterium属細菌を、炭素源を含有する培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
【請求項7】
アミノ酸源として酵母エキスを含有し、かつ、炭素源を含有する培地を用いて、エルゴチオネイン産生細胞を培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
【請求項8】
酵母エキスが、0.01~5%で培地中に含有される、請求項7に記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項9】
さらに、カザミノ酸、トリプトン、麦芽エキス、及びペプトンからなる群から選択される少なくとも1以上を含有する培地を用いる、請求項7又は8に記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項10】
カザミノ酸が0.1~5%で培地中に含有され、及び/又は、トリプトンが0.1~5%で培地中に含有される、請求項9に記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項11】
炭素源が、メタノール及び/又はグリセリンを含む、請求項7~10のいずれかに記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項12】
エルゴチオネイン産生細胞が、Methylobacterium属細菌、カビ、及び/又は担子菌酵母から選択される少なくとも1種の細胞を含む、請求項7~11のいずれかに記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項13】
Aureobasidium属の微生物を、炭素源を含む培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
【請求項14】
Aureobasidium属の微生物が、受託番号NITE P-02275として寄託されたものである、請求項13に記載のエルゴチオネインの製造方法。
【請求項15】
受託番号NITE P-02275として寄託されたものである、Aureobasidium属の微生物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エルゴチオネインを産生し得る微生物、微生物を用いたエルゴチオネインの産生方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネインはアミノ酸の一種であり、高い抗酸化活性を有するが、その生物学的な役割は不明な点が多い。ヒドロキシラジカルを早く消去できることから、細胞内の活性酸素除去に関わっていると考えられている。エルゴチオネインはヒスチジンから生合成され、イオウ原子はシステインから供給される。しかしながら、エルゴチオネインは哺乳類の体内では合成されないため、外部から摂取する必要がある。
【0003】
エルゴチオネインの製造方法として、例えば化学合成法、エルゴチオネインを産生する子のう菌や担子菌を培養後、エルゴチオネインを抽出精製する方法、発酵法、エルゴチオネインを含有する動物血液等から抽出する方法等がある。しかしながら、エルゴチオネインを生産する生物についての情報はそう多くなく、限られたカビ、キノコ、バクテリアでその生産の報告があるのみであり(非特許文献1~3)、大量に蓄積する生物についての情報はさらに限られている。例えば、分裂酵母のSchizosaccharomyces pombeについて、グルコースを枯渇した条件下でのメタボローム解析を行ったところ、代謝産物としてエルゴチオネインが生成されることが報告されている(非特許文献4,5)。
【0004】
他のエルゴチオネイン産生方法として、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus)から抽出したエルゴチオネインは最適条件で生産量が450 mg/Lに達することが報告されている(特許文献1)。特許文献1に記載の方法は高い生産性を示しているが、培養時間が長いこと、菌体からの抽出に有機溶媒を用いていること、培地中にメチオニンを添加しており、コストなどについて問題が残されていると考えられる。また、特許文献2に示す化学合成方法で得られたエルゴチオネインは、合成試薬が高価であり、精製にもコストがかかるなどの問題点が残されている。カビ、キノコ、バクテリアでその生産に関し、生産量として特許文献1に示す方法を超える報告はない。
【0005】
近年、Mycobacterium属細菌においてエルゴチオネインの生合成経路が明らかにされ、その遺伝子が幅広い微生物に保存されていることが報告されている(非特許文献6)。クラスターを形成しているegtABCDE遺伝子はエルゴチオネイン合成遺伝子としてMycobacterium属細菌に認められ、egtBとegtDのホモログ遺伝子もMethylobacterium属細菌を含んだ多くの真核生物や細菌において認められている。egtABCDE遺伝子はヒスチジンをエルゴチオネインに変換するタンパク質をコード化する遺伝子である。またエルゴチオネインの代謝に関わる酵素として、エルゴチオナーゼ(ergothionase)が知られている。エルゴチオナーゼはエルゴチオネインをチオウロカン酸(thiolurocanic acid)とトリメチルアミンに分解する酵素である。1962年に大腸菌やBacillus subtilisStaphylococcus aureusSalmonella typhimuriumに活性が見いだされ、大腸菌から部分精製されていた(非特許文献3)。その後エルゴチオナーゼをコードする遺伝子が、Burkholderia sp. HME13から初めてクローニングされた(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2012-105618号公報
【特許文献2】特開2006-160748号公報
【特許文献3】特許第5394259号公報
【0007】

【非特許文献1】J. Biol. Chem. 1956, 223: 9-177
【非特許文献2】J Bacteriol, vol. 103, no. 2, 1970, p.475-478
【非特許文献3】J Bacteriol, vol. 87, no. 4, 1964, p.852-862
【非特許文献4】PLoS One. 2014; 9(5): e97774. DOI: 10.1371/journal.pone.0097774
【非特許文献5】Yeast, vol. 23, no. 3, 2006, p.173-183
【非特許文献6】J Am Chem Soc. 2010 May 19;132(19):6632-3
【非特許文献7】Appl MIcrobiol Biotechnol 97, 5389-, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性が高く、容易にエルゴチオネイン(Ergothioneine: 以下「EGT」という。)を産生し、製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高いEGT生産性を示す遺伝子組み換え微生物の作出に成功するとともに、高いEGT生産性を示す微生物を新たに見出し、またこれら微生物のEGT生産性が向上する培養条件を見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.エルゴチオナーゼをコードする遺伝子の発現が抑制されることにより、エルゴチオナーゼ活性が欠損又は低減している、Methylobacterium属細菌。
2.エルゴチオナーゼをコードする遺伝子が、以下の(a)及び(b)から選択されるいずれかのDNAからなる、前項1に記載のMethylobacterium属細菌:
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるエルゴチオナーゼをコードするDNA;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対し30%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エルゴチオナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
3.さらに、エルゴチオネイン合成遺伝子が導入されている、前項1又は2に記載のMethylobacterium属細菌。
4.エルゴチオネイン合成遺伝子がegtBD遺伝子である、前項3に記載のMethylobacterium属細菌。
5.Methylobacterium属細菌が、受託番号NITE P-02274として寄託されたものである、前項1~4のいずれかに記載のMethylobacterium属細菌。
6.前項1~5のいずれかに記載のMethylobacterium属細菌を、炭素源を含有する培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
7.アミノ酸源として酵母エキスを含有し、かつ、炭素源を含有する培地を用いて、エルゴチオネイン産生細胞を培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
8.酵母エキスが、0.01~5%で培地中に含有される、前項7に記載のエルゴチオネインの製造方法。
9.さらに、カザミノ酸、トリプトン、麦芽エキス、及びペプトンからなる群から選択される少なくとも1以上を含有する培地を用いる、前項7又は8に記載のエルゴチオネインの製造方法。
10.カザミノ酸が0.1~5%で培地中に含有され、及び/又は、トリプトンが0.1~5%で培地中に含有される、前項9に記載のエルゴチオネインの製造方法。
11.炭素源が、メタノール及び/又はグリセリンを含む、前項7~10のいずれかに記載のエルゴチオネインの製造方法。
12.エルゴチオネイン産生細胞が、Methylobacterium属細菌、カビ、及び/又は担子菌酵母から選択される少なくとも1種の細胞を含む、前項7~11のいずれかに記載のエルゴチオネインの製造方法。
13.Aureobasidium属の微生物を、炭素源を含む培地を用いて培養する工程を含む、エルゴチオネインの製造方法。
14.Aureobasidium属の微生物が、受託番号NITE P-02275として寄託されたものである、前項13に記載のエルゴチオネインの製造方法。
15.受託番号NITE P-02275として寄託されたものである、Aureobasidium属の微生物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のEGTを産生させる方法によれば、培養期間が7日間程度で良好に菌体内にEGTを蓄積させることができる。また培養した菌を熱処理することで菌体からEGTを容易に抽出することができ、菌体を破砕したり有機溶媒を用いる必要がなく、簡便かつ安全にEGTを産生、精製、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】M. aquaticum strain MA-22Aゲノム上のEGT産生に係る遺伝子(egtA, BD, C, E)の配置を示す図である。(Front. Microbiol. 6, 1185 (2015) Figure S6参照)
【図2】Methylobacterium属細菌の遺伝子組み換え株について、NB培地を用いて炭素源をメタノール又はグリセリンとした場合のEGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例2)
【図3】Methylobacterium属細菌の遺伝子組み換え株について、酵母エキス(YE)を添加して培養した場合のEGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例3)
【図4】Methylobacterium属細菌の遺伝子組み換え株について、炭素源をメタノール又はグリセリンとし、種々の添加物存在下で培養した場合のEGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例3)
【図5】Methylobacterium属細菌の遺伝子組み換え株について、酵母エキス(YE)、カザミノ酸、トリプトンの濃度を変えて添加した場合のEGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例3)
【図6】Aureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母について、EGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例4)
【図7】Aureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母について、EGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例5)
【図8】Aureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母について、炭素源をグルコース又はグリセリンとして培養した場合の、EGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例6)
【図9】Aureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母について、酵母エキス(YE)等の各種添加物存在下で培養した場合の、EGT産生を定量した結果を示す図である。(実施例7)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、微生物を用いたEGTの産生方法及び製造方法に関する。本明細書においてEGTとは、以下の式(I)で表されるアミノ酸の一種である。
【化1】
JP2017225368A_000003t.gif

【0014】
EGTは、微生物をメタノール、メチルアミン及び/又はグリセリン等の炭素源を含む培地を用いて培養し、EGTを菌体内に産生させる工程を含むことにより製造することができる。さらに、EGTを菌体内に産生した微生物を熱処理し、EGTを微生物から抽出することができる。上記抽出工程の後、得られたEGTを精製しても良い。本発明の製造方法に用いられる微生物は、EGT産生能を有する微生物であれば良く、例えば、Methylobacterium属細菌、カビ、担子菌酵母等が例示される。

【0015】
Methylobacterium属細菌とは炭素を1つだけ含む化合物(例えばメタノール及び/又はメチルアミン等)の資化性を有する細菌(資化性菌)であるC1化合物資化性細菌に含まれる。メタノールの代謝経路に関わる遺伝子や酵素は細菌によって異なるが、多くの場合はメタノールを二酸化炭素まで酸化しエネルギーを得、ホルムアルデヒド、ギ酸、又は二酸化炭素を固定して菌体構成成分を合成する。メタノールは一連のアルコールの中で最も単純な分子構造を有し、食糧と競合しない炭素源となりうる安価な供給材料である。メタノールは、石炭又は天然ガスの部分酸化で製造した一酸化炭素(CO)に、酸化銅-酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物等を触媒として工業的に容易に産生され得る。C1化合物資化性細菌には、C1化合物以外も炭素源として利用可能である細菌も含まれる。Methylobacterium属細菌としては、例えばM. aquaticumM. oryzaeM. extorquensM. radiotoleransM. nodulansM. extorquensM. brachiatumM. adhaesivumM. aerolatumM. aminovoransM. cerastiiM. fujisawaenseM. hispanicumM. komagataeM. marchantiaeM. oxalidisM. populiM. rhodesianumM. rhodinumM. soliM. tardumM. thiocyanatumM. zatmaniiなどが挙げられる。本発明におけるMethylobacterium属細菌は、野生株であっても、遺伝子組み換え菌であってもよい。

【0016】
Methylobacterium属細菌の野生株としては、M. aquaticum strain MA-22A(平成19年11月28日(国内受託日)に寄託されたFERM P-21449より、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)においてブダペスト条約に基づく国際寄託に移管した国際受託番号FERM BP-11078により示される細菌)が例示される。

【0017】
Methylobacterium属細菌の遺伝子組み換え菌は、野生株においてエルゴチオナーゼをコードする遺伝子(エルゴチオナーゼ遺伝子)の発現が抑制されることにより、エルゴチオナーゼ活性が野生株と比較して欠損又は低減しているものである。エルゴチオナーゼ遺伝子は、以下の(a)及び(b)のいずれかのDNAからなるものである。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるエルゴチオナーゼをコードするDNA。
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対し30%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エルゴチオナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。

【0018】
配列番号1に示されるアミノ酸配列は以下の配列である:
MTLTFHPGHVSLQDLERVYRDGVAARLDAGCDAAIERGAARIAAIAEGETPIYGINTGFGKLASIRIAPGDLATLQRNLILSHCCGLGELLEPDVVRLVMALKLISLGRGASGVRLAIVRLIEAMLARGVVPAIPGQGSVGASGDLAPLAHLAAVMIGEGEAFVGGERMPGGEALRRAGLEPVVLAAKEGLALINGTQVSTALALAGLFRAFRALRAALVTGALSTDAAMGSSAPFHPEIHALRGHRGQIEAGAALRALLDGSAIRESHVEGDERVQDPYCIRCQPQVVGACLDLLRQAGRTLEIEANAVTDNPLVLSDGEVVSGGNFHAEPVAFAADQIALAVCEIGSIAQRRIALLVDPALSFGLPAFLARKPGLNSGLMIAEVTSAALMSENKQRSHPASVDSTPTSANQEDHVSMACHGARRLLAMTENLFGILGIEALAGAQGVELRGPLRTSPELERALAAIRAAIRPLDEDRYLADDLRIAAGLVAQGAIDASPSPGILPGLEAA

【0019】
上記(b)に記載のタンパク質は配列番号1で表されるアミノ酸配列とBLAST〔J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology, 183, 63 (1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるものである。なお本明細書においてアミノ酸配列の同一性(相同性)や、塩基配列の同一性(相同性)は、BLASTやFAST等を用いてデフォルトの条件で計算することにより、算出できる値である。

【0020】
また、エルゴチオナーゼ遺伝子としては、以下の(c)又は(d)のいずれかのDNAからなるものが例示される。
(c)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号2に示される塩基配列に対し、30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA。当該DNAは、エルゴチオナーゼ活性を有するタンパク質をコードするものである。

【0021】
配列番号2で表される塩基配列は以下の配列である(GenBank Accesion No. Maq22A_c03965):
ATGACCCTGACCTTCCATCCGGGACACGTGTCGCTCCAGGACCTCGAGCGCGTCTATCGCGACGGCGTGGCGGCGCGGCTGGATGCGGGCTGCGATGCCGCCATCGAGCGGGGCGCGGCCCGGATCGCGGCGATCGCCGAGGGCGAGACGCCGATCTACGGGATCAATACCGGCTTCGGGAAACTGGCCTCGATCCGGATCGCGCCCGGCGACCTCGCCACCCTCCAGCGCAACCTGATCCTGTCGCATTGCTGCGGCCTCGGCGAGCTCCTGGAGCCGGACGTGGTGCGCCTCGTGATGGCGCTGAAGCTGATCTCGCTCGGCCGCGGCGCGTCGGGGGTGCGGCTGGCGATCGTGCGCCTCATCGAGGCGATGCTCGCCCGCGGCGTCGTCCCGGCCATCCCGGGCCAGGGCTCGGTCGGCGCCAGCGGCGACCTCGCGCCGCTCGCCCACCTGGCCGCCGTGATGATCGGCGAGGGCGAGGCCTTCGTCGGGGGTGAGCGGATGCCGGGCGGCGAGGCGCTGCGGCGCGCCGGGCTCGAGCCGGTGGTGCTGGCCGCCAAGGAAGGGCTCGCGCTCATCAACGGCACGCAGGTCTCGACCGCGTTGGCGCTGGCCGGGTTGTTCCGCGCCTTCCGGGCGCTGCGGGCCGCCCTCGTCACCGGTGCGCTGTCGACCGACGCGGCGATGGGCTCCTCCGCCCCGTTCCACCCCGAGATTCATGCGCTGCGGGGCCATCGCGGGCAGATCGAGGCCGGGGCGGCCCTGCGCGCGCTCCTTGACGGTTCGGCGATCCGCGAGAGCCACGTCGAGGGCGACGAGCGGGTCCAGGATCCCTACTGCATCCGGTGCCAGCCCCAGGTCGTGGGCGCCTGCCTCGACCTCCTGCGCCAGGCCGGCCGCACCCTCGAGATCGAGGCCAATGCCGTCACCGACAACCCCCTGGTCCTGTCCGACGGCGAGGTCGTGTCGGGCGGGAACTTCCATGCCGAGCCGGTCGCCTTCGCGGCCGACCAGATCGCGCTCGCGGTCTGCGAGATCGGCTCGATCGCGCAGCGCCGGATCGCCCTCCTGGTCGACCCGGCCCTGTCCTTCGGCCTGCCGGCGTTCCTGGCGCGCAAGCCCGGCCTGAATTCCGGGCTGATGATCGCCGAGGTGACCTCGGCGGCGCTGATGAGCGAGAACAAGCAGCGGTCTCACCCGGCCTCGGTCGATTCGACGCCCACCTCCGCCAACCAGGAGGACCACGTCTCGATGGCCTGCCACGGCGCCCGCCGCCTGCTGGCGATGACCGAGAACCTGTTCGGCATCCTGGGCATCGAGGCCCTGGCGGGCGCCCAGGGCGTCGAGCTGCGCGGCCCGCTGCGGACGAGCCCGGAGCTGGAGCGGGCGCTCGCGGCGATCCGCGCCGCGATCCGTCCGCTCGACGAGGACCGCTACCTCGCGGACGACCTGCGGATCGCCGCCGGCCTGGTGGCGCAGGGCGCGATCGACGCCAGCCCGTCGCCCGGCATCCTGCCGGGTCTGGAGGCGGCATGA

【0022】
エルゴチオナーゼ遺伝子の発現の抑制は、エルゴチオナーゼ活性が欠損又は低下する方法であればよく、特に限定されない。エルゴチオナーゼ遺伝子の発現を抑制する方法としては、例えば突然変異の導入、または相同組み換えにより、エルゴチオナーゼ遺伝子の転写を抑制し、またはエルゴチオナーゼ活性を欠損または低下させることをいう。突然変異を挿入する方法としては、UV照射、放射線照射などの物理的変異方法の他、Nニトロソグアニジン、メタンスルホン酸エチル、亜硝酸、メタンスルホン酸メチル、アクリジン色素、ベンゾピレン、硫酸ジメチルなどの変異剤の混合による化学的変異方法や、遺伝子組み換えによる部位特異的変異導入方法が挙げられる。相同組換え法では、人為的に塩基の挿入、欠失および/または置換を施したエルゴチオナーゼ遺伝子と同じ配列を部分的に有する塩基配列を導入し、相同組換えによって変異を行なう方法である。例えば、薬剤耐性遺伝子であるクロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などを挿入した塩基配列を導入した後、相当する薬剤で選抜し、生存する細胞を得ることもできる。望むべき部分に挿入されたことをPCRなどの機器を用いて確認することによって、遺伝子の変異を確認することができる。

【0023】
本発明におけるMethylobacterium属細菌の遺伝子組み換え菌としては、さらにエルゴチオネイン合成遺伝子が導入されていることが好ましい。エルゴチオネイン合成遺伝子はエルゴチオネイン生合成経路においてEGT産生に係るタンパク質をコードする遺伝子であればいかなる遺伝子であってもよい。またMethylobacterium属細菌は、内因性のエルゴチオネイン合成遺伝子が存在しているものが好ましく、エルゴチオネイン合成遺伝子が導入されたことにより、元来有しているエルゴチオネイン生合成経路が増強され、生産性が上昇る。

【0024】
Methylobacterium属細菌の場合は、ゲノム上のEGT産生に係る遺伝子としてegtABCDE遺伝子が挙げられる。例えば、M. aquaticum strain MA-22Aにでは、egtBD遺伝子が直列でコードされ、egtA遺伝子、egtC遺伝子及びegtE遺伝子が異なる位置でコードされている(図1参照)。egtBD遺伝子はEGT産生に重要な遺伝子である。例えばM. aquaticum strain MA-22AでのegtBD遺伝子欠損株の場合、細胞増殖率は野生型に比べてやや増加するが、EGTは全く産生しない。本発明におけるエルゴチオネイン合成遺伝子は、egtBD遺伝子であることが好ましい。egtD遺伝子は、ヒスチジンメチルトランスフェラーゼ(EgtD)をコードしている。ヒスチジンメチルトランスフェラーゼは、S-アデノシルメチオニンからメチル基をヒスチジンのアミノ基に転移させ、ヘルシニンを得る反応を触媒する作用を有する。egtB遺伝子は、スルホキシドシンターゼ(EgtB)をコードしている。スルホキシドシンターゼは、ヘルシニンのイミダゾール基にγ-グルタミルシステインのスルフヒドリル基を結合する反応を触媒する作用を有する。また本明細書において、egtBD遺伝子をMethylobacterium属細菌に導入するとは、egtB遺伝子及びegtD遺伝子がMethylobacterium属細菌に導入され、エルゴチオネイン生合成経路においてこれらの遺伝子がコードするタンパク質が作用していればよく、別個のDNAとして導入された場合、同一のDNA上に直列に結合して導入された場合のいずれであってもよい。

【0025】
egtB遺伝子としては、以下の(e)~(h)のいずれかのDNAが例示される。
(e)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるスルホキシドシンターゼをコードするDNA。
(f)配列番号3に示されるアミノ酸配列に対し、40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、スルホキシドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA。
(h)配列番号4に示される塩基配列に対し、40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA。当該DNAは、スルホキシドシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするものである。

【0026】
配列番号3に示されるアミノ酸配列は以下の通りである:
MAATATAQAREEVPVARPAFPPPPATARPIDRDAWIAAFRHVRDETERRAAPLSPEDQQVQSMADASPTKWHRAHTTWFFEQFLLQPMVTGYTAFDERFFFLFNSYYVQAGPRAPRISRGLVTRPTCDEVAAYRAHIDRAVAALIAEAPADKLAEIVATLEIGLHHEQQHQELMLTDILHAFAQNPLLPAYDESWRWPALSQRPGTVALDGGVTQMGHAGEGFHFDNEEPRHDVLLRPVGLSRALVTNGEWLEFMQDGGYAKAELWLSDGFVAAQSEGWEAPGYWRQRDGVWSSMTLAGLKPVDPALPVTHVSYYEADAFARWAGRDLPTEAEWEAASGSLDAAFGHVWQWTRSAYSAYPGYRPLPGALGEYNGKFMVSQFVLRGDSVATPEGHSRPTYRNFFYPHQRWQFTGLRLSHYGA

【0027】
配列番号4に示される塩基配列は以下の通りである:
ATGGCAGCGACCGCGACCGCGCAGGCCCGAGAGGAAGTCCCCGTTGCGCGTCCCGCGTTCCCCCCACCCCCCGCCACCGCCCGGCCGATCGACCGCGACGCCTGGATCGCGGCGTTCCGCCACGTCCGCGACGAGACCGAGCGCCGCGCCGCGCCGCTCTCGCCGGAGGACCAGCAGGTCCAGTCGATGGCGGATGCGAGCCCGACCAAGTGGCACCGCGCGCACACGACCTGGTTCTTCGAGCAGTTCCTGCTTCAGCCGATGGTGACGGGCTACACGGCCTTCGACGAGCGCTTCTTCTTCCTGTTCAACTCGTACTACGTGCAGGCGGGCCCGCGCGCGCCGCGGATCAGCCGCGGCCTCGTCACCCGGCCGACCTGCGACGAGGTCGCGGCCTACCGCGCCCATATCGACCGCGCCGTCGCGGCCCTGATCGCCGAGGCGCCGGCCGACAAGCTCGCCGAGATCGTCGCCACCCTGGAGATCGGCCTGCACCACGAGCAGCAGCACCAGGAGCTGATGCTCACCGACATCCTGCACGCCTTCGCGCAGAACCCCCTCCTGCCGGCCTACGACGAATCCTGGCGCTGGCCGGCCCTGTCGCAGCGCCCCGGCACGGTGGCGCTCGACGGCGGCGTGACGCAGATGGGGCATGCGGGCGAGGGCTTCCACTTCGACAACGAGGAGCCGCGCCACGACGTGCTGCTGCGGCCGGTCGGGCTGTCGCGCGCCCTCGTCACCAACGGCGAGTGGCTCGAATTCATGCAGGACGGCGGCTACGCCAAGGCCGAGCTGTGGCTCTCCGACGGATTCGTCGCCGCGCAGAGCGAAGGCTGGGAGGCGCCGGGCTACTGGCGCCAGCGCGACGGCGTGTGGTCGAGCATGACGCTCGCCGGGCTGAAGCCCGTCGATCCGGCCCTGCCGGTGACCCATGTCAGCTACTACGAGGCCGACGCCTTCGCCCGCTGGGCCGGGCGCGACCTGCCGACGGAGGCCGAGTGGGAGGCCGCCAGCGGCTCGCTCGACGCCGCCTTCGGCCATGTCTGGCAATGGACCCGCAGCGCCTATTCCGCCTACCCGGGCTACCGGCCGCTGCCGGGTGCGCTCGGCGAGTACAACGGCAAGTTCATGGTCAGCCAGTTCGTGCTGCGCGGGGACTCGGTGGCGACGCCGGAAGGCCACAGCCGGCCGACCTACCGCAACTTCTTCTATCCCCACCAGCGCTGGCAGTTCACCGGCCTGCGTCTATCTCACTACGGCGCGTGA

【0028】
egtD遺伝子としては、以下の(i)~(l)のいずれかのDNAが例示される。
(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるヒスチジンメチルトランスフェラーゼをコードするDNA。
(j)配列番号5に示されるアミノ酸配列に対し、40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、ヒスチジンメチルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(k)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA。
(l)配列番号6に示される塩基配列に対し、40%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA。当該DNAは、ヒスチジンメチルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものである。

【0029】
配列番号5に示されるアミノ酸配列は以下の通りである:
VNAPLPHLAPSASLDDTADKGFLRDVLAGLGAPHKHLSAKYFYDRRGSELFEAITRLPEYYPTRTELAILDRYGPEIAAGLPPGAALVEFGSGSTTKVRRLLPHLGDLSAYVPVDVSEEFLRSEAEELCRDFPRLRVEPVAADFTKPFPLPDDLAEAPKAGFFPGSTIGNFEPDAAAGLLGSFARTLGAGATLIVGIDLVKEKAVLDAAYDDEAQVTAAFNLNLLTRINRELGADFDLDAFAHHAFFDENLGRIEMHLVSRRSQLVTVAGVPFHFASGETIHTENSYKYTVPGFRALARRAGWEHTRVWTDEDGLFSVHALTASTIRRH

【0030】
配列番号6に示される塩基配列は以下の通りである:
GTGAACGCCCCGCTTCCCCACCTCGCGCCGAGCGCCTCCCTCGACGACACCGCCGACAAGGGCTTCCTACGGGACGTGCTCGCGGGCCTCGGCGCCCCGCACAAGCACCTCTCGGCGAAGTACTTCTACGACCGGCGCGGCTCGGAGCTGTTCGAGGCGATCACCCGCCTGCCGGAATACTACCCGACCCGCACCGAGCTCGCGATCCTCGACCGGTACGGTCCCGAGATCGCCGCCGGCCTTCCGCCCGGCGCGGCGCTGGTCGAGTTCGGCAGCGGCTCCACCACCAAGGTGCGCCGGCTGCTGCCCCATCTCGGCGACCTCTCGGCCTACGTGCCGGTTGACGTCTCGGAGGAGTTCCTGCGCAGCGAGGCGGAGGAGCTCTGCCGCGACTTCCCGCGCCTGCGCGTCGAGCCGGTGGCGGCGGACTTCACCAAGCCGTTCCCCCTGCCCGACGACCTCGCCGAGGCGCCGAAGGCCGGCTTCTTCCCGGGCTCGACGATTGGCAACTTCGAGCCCGACGCGGCGGCGGGCCTGCTCGGCAGCTTCGCCCGGACGCTCGGGGCCGGCGCGACGCTCATCGTCGGCATCGACCTCGTCAAGGAGAAGGCGGTGCTGGACGCCGCCTACGACGACGAAGCCCAGGTCACGGCGGCCTTCAACCTCAACCTCCTCACCCGCATCAACCGCGAGCTCGGGGCGGATTTCGATCTCGACGCCTTCGCGCACCACGCCTTCTTCGACGAGAACCTGGGGCGGATCGAGATGCACCTGGTGAGCCGGCGCAGCCAGCTCGTCACGGTGGCGGGGGTGCCGTTCCACTTCGCCTCCGGCGAGACGATCCACACCGAGAACAGCTACAAGTACACGGTGCCGGGCTTCCGGGCGCTCGCCCGCCGGGCCGGCTGGGAGCACACCCGGGTCTGGACCGACGAGGACGGCCTGTTCTCGGTCCACGCGCTGACCGCCTCCACCATCCGGCGGCACTGA

【0031】
エルゴチオネイン合成遺伝子の導入は、 微生物の形質転換方法として知られている従来公知のいかなる手法をも適用することができる。具体的には、例えば、例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym., 194, p182 (1990)”、スフェロプラスト法“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J.Bacteriology, 153, p163(1983)”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これに限定されない。

【0032】
本発明におけるMethylobacterium属細菌の遺伝子組み換え菌は、エルゴチオナーゼをコードする遺伝子の発現が抑制されており、かつ、エルゴチオネイン合成遺伝子が導入されている菌が好ましい。より好ましくは以下の実施例にて「△egn(EGT)株」と示される菌(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 112号室)において平成28年5月31日に、受託番号NITE P-02274として寄託されたもの)である。

【0033】
本明細書において「担子菌酵母」とは、炭素源の存在下でエルゴチオネインを産生し得るものであれば特に限定されない。具体的にはRhodotorula属の酵母が挙げられる。Rhodotorula属の酵母としては、例えばRhodotorula mucilaginosaRhodotorula glutinisなどが挙げられる。より好ましくは、Rhodotorula mucilaginosa z41c、Rhodotorula mucilaginosa z41d(それぞれ、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 112号室)においてブダペスト条約に基づき平成27年12月4日に国際寄託された、受託番号NITE BP-02171、NITE BP-02172により示される酵母)から選択される酵母である。

【0034】
また本明細書において「カビ」とは、炭素源の存在下でエルゴチオネインを産生し得るものであれば特に限定されない。具体的にはAureobasidium属のカビが挙げられる。Aureobasidium属のカビとしては、例えばAureobasidium pullulansAureobasidium melanogenum、Aureobasidium namibiaeAureobasidium subglacialeが挙げられる。より好ましくは、Aureobasidium pullulans kz25(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 112号室)において平成28年5月31日に、受託番号NITE P-02275として寄託されたもの)である。

【0035】
本発明において微生物を培養する培地は、細菌、カビ、酵母に応じて、好ましい培地を適宜選択することができる。液体培地が好ましく、複合培地であっても、完全合成培地であってもよい。複合培地を用いることがより好ましく、複合培地としてはNB培地、SD培地、サブロー培地等が例示される。

【0036】
本発明における培地中には、本発明の微生物が利用可能な炭素源を含むことが必要である。炭素源としては、例えばC1~C5化合物、好ましくはC1~C3化合物が挙げられる。また好ましくはC1~C5のアルコール、カルボン酸、エステル、アミン、または塩化物が挙げられ、より好ましくはC1~C5のアルコールまたはアミンが挙げられる。C1~C5化合物としては、具体的にはメタノール、メチルアミン、グリセリン、エタノール、乳酸、イソアミルアルコール、メチル酢酸、ジクロロメタン、ピルビン酸、フマル酸等が例示される。本発明において、培地中の炭素源として、C1化合物及び/またはグリセリンを含むことがより好ましい。C1化合物は、具体的にはメタノール及び/又はメチルアミンが挙げられ、好適にはメタノールが挙げられる。培地中に含有される炭素源濃度は0.1~5 %であり、好ましくは0.5~3 %であり、最も好ましくは約2 %である。 メタノールは上述の通り、食糧と競合しない炭素源となりうる安価な供給材料である。またグリセリンは油脂からバイオディーゼルを合成した際の副産物または廃棄物としても合成される安価な供給材料である。本明細書において、成分の濃度を表す「%」は、成分が液体である場合は「容量%(v/v%)」であり、成分が固体である場合は「重量%(w/v%)」を意味する。

【0037】
本発明における培地中の窒素源は、本発明の微生物が利用可能な窒素源であればよい。例えばアンモニウム塩を含んでいてもよく、具体的には塩化アンモニウム(NH4Cl)及び/又はリン酸二水素アンモニウム((NH4)H2PO4)が挙げられる。培地中に含有されるアンモニウム塩の濃度は0.2~2.0 g/Lの濃度で含有されるのが好適である。あるいは、窒素源は、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、カザミノ酸、トリプトン、大豆カゼイン又は大豆蛋白、蛋白加水分解物、ペプトン、コーンスティープリカーであってもよい。少なくとも酵母エキスを含むことが好ましい。酵母エキスは、0.01~5%、好ましくは0.5~2%で培地中に含まれることが好ましい。培地にはさらに、カザミノ酸、トリプトン、麦芽エキス、及びペプトンからなる群から選択される少なくとも1以上が含有されていることが好ましく、カザミノ酸及び/又はペプトンが含有されていることがより好ましい。カザミノ酸及び/又はトリプトンは、0.1~5%。好ましくは0.5~1%で培地中に含まれることが好ましい。

【0038】
完全合成培地を用いるときには、培地中にミネラル成分(例えば塩化アンモニウムや硫酸マグネシウムなど)やビタミン類(例えば、ビタミンB類、例えば、塩酸チアミン(ビタミンB1)、ビタミンB2、塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、p-アミノ安息香酸(葉酸の前駆体)、ビオチン、イノシトール等)が含まれることが好ましい。

【0039】
本発明において、EGT産生のための微生物の培養条件は、EGTを産生し、菌が死滅しにくい条件から適宜選択することができる。培養は、好ましくは28℃付近で培養することができる。培養期間はEGTを産生し、菌が死滅しにくい条件であれば特に限定されない。例えばメタノール2 容量%を含む液体培地を用いて28℃で培養した場合にEGTが菌体内に蓄積され、菌が死滅しない状態で維持可能であれば、菌の増殖が平衡状態を維持した状態であっても培養を継続することができる。具体的には培養期間を7日以上とすることができ、30日間培養により菌の増殖が平衡状態を維持した状態でも、菌体内のEGT量は増加し続けるのであれば、培養を継続することができる。培養条件の最適化には、例えば7日間の培養で生産量を比較検討することができる。

【0040】
本発明の微生物の培養により菌体内に蓄積したEGTは、菌体から抽出し、精製することができる。菌体からのEGTの抽出は、例えば熱抽出方法により行うことができる。熱抽出は、菌体を水に懸濁したものを60~98℃、好ましくは80~98℃、例えば約95℃で約10分間処理することにより行うことができる。精製法としては、自体公知の方法や今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、HPLCの手法により精製することができる。

【0041】
従来の方法によりEGTを産生及び精製する方法に比べて、本発明の方法は以下の点で特に優れている。例えば特許文献1(特開2012-105618号公報)ではタモギタケ(Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus)から抽出したEGTについて、最適条件で生産量が450 mg/Lに達することが報告されているが、背景技術の欄で示したように、菌の培養期間が長いこと(一次培養14日、二次培養14日)、菌体からのEGTの抽出に有機溶媒を用いていること、培地中にメチオニンを添加している等、培養及び抽出方法に関し、コストなどについて問題が残されている。一方、本発明の微生物で産生させる方法によれば、菌の培養期間は短く、菌体からのEGTの抽出には有機溶媒を用いる必要もない。菌体を培養する培地にメチオニンの添加の必要もない。
【実施例】
【0042】
以下に本発明についてより理解を深めるために実施例を示して説明するが、本発明はこれら実施例の記載のみに限定されるものでないことはいうまでもない。
【実施例】
【0043】
(実施例1) Methylobacterium属細菌遺伝子組換え株の作製
Methylobacterium属細菌として、M. aquaticum strain MA-22A(国際受託番号FERM BP-11078)(以下「野生型22A株」と称する。)を用いて、エルゴチオナーゼ遺伝子のクローニングを行った。Burkholderia sp. HME13(Appl MIcrobiol Biotechnol 97, 5389-, 2013)にてクローニングされたエルゴチオナーゼ遺伝子のアミノ酸配列(GenBank Accession No. AB699692)を元に、野生型22A株ゲノムに対してBLASTによりMaq22A_c03965を見いだした(相同性28%、類似性45%)。本遺伝子をegnと名付け、egn遺伝子の上下流を以下のDNAプライマーでそれぞれ増幅した。
126c04_up_fw2:TATGACATGATTACG ATAGGCCTCCTTGTCGTCCT(配列番号7)
126c04_up_rv:CATGGCGAGGTCCTCGTTCGC(配列番号8)
126c04_down_fw:GCGAACGAGGACCTCGCCATGCCGGGTCTGGAGGCGGCATGA(配列番号9)
126c04_down_rv2:TACCGAGCTCGAATT GCGCGAGCTCCATCTGGATC(配列番号10)
126c04_up_fw2及び126c04_up_rvプライマーは、egn遺伝子の上流約1200 bpを増幅し、126c04_down_fw及び126c04_down_rv2プライマーは、下流約700 bpを増幅する。アンダーラインで示す塩基配列は互いに相補的な配列である。
増幅した断片をIn-fusion HD cloningキット(クロンテック社)で連結し、pk18mobSacBベクターのEcoRIサイトに連結してベクターを作製した。当該ベクターを、野生型22A株に大腸菌S17-1株を用いて接合により導入した。定法により、カナマイシン耐性株を選択し、次に10% sucrose選択下で、野生型22A株のegn遺伝子が欠失した欠失株「△egn株」を作製した。
【実施例】
【0044】
さらに△egn株に、EGT合成遺伝子のegtBD遺伝子をpk18mobSacBベクターを用いて、定法により導入して(Frontiers in Microbiology, 6, 1185, 2015)、egtBD遺伝子のコピー数を増やした株を作製した。具体的には、野生型22A株のゲノムDNAを鋳型とし、egtB_left_fwプライマー(tcgagctcggtacccatagagcaggctacgctgga:配列番号11)と、egtD_right_rvプライマー(ctctagaggatccccggtcgagctccatctccag:配列番号12)を用いてPCRを行い、増幅断片(egtB遺伝子及びegtD遺伝子が直列に結合したegtBD遺伝子が含まれる)を得た。当該増幅断片をpK18mobSacBベクターに連結し、△egn株に接合により導入しカナマイシン耐性株を選択して、△egn株にegtBD遺伝子が導入された株を作製した。作製した株を、「△egn(EGT)株」と称する。
【実施例】
【0045】
また、Frontiers in Microbiology, 6, 1185, 2015に記載の方法に沿って、野生株にegtBD遺伝子を導入してコピー数を増やした「22A(EGT)株」を作製した。
【実施例】
【0046】
(実施例2)Methylobacterium属細菌遺伝子組換え株のEGT産生能の確認
実施例1にて得られた△egn株、△egn(EGT)株、22A(EGT)株、野生型22A株において、EGT生産性を評価した。培地としては、通常微生物の培養に用いられる、Nutrient broth(NB培地)を用いた。またNB培地に2%のメタノール、グリセリンをそれぞれ加えた培地での培養も行い、EGTの定量を行った。EGTのコピー数を増やした株(△egn(EGT)株、及び22A(EGT)株)は、導入遺伝子の抜け落ちを防ぐために、カナマイシン(25 mg/L)を加えて培養した。各菌株ともに、28℃で7日間培養した。
【実施例】
【0047】
EGTの産生能は、次のようにして確認した。液体培地中で培養した各菌を25℃で12000×g、10分間遠心処理を行い、得られた菌体を0.85 重量% NaClを用いて洗浄した。菌の湿重量を計測し、記録した。菌の湿重量10~50 mgあたりに1 mLの水を加え、95℃で10分間処理し、菌体内のEGTを抽出した。細胞の懸濁液をミキサー(Vortex)を用いて1600rpmで30分処理し、その後25℃で14000×g、10分間遠心処理して上清を得、細胞片を除去した。得られた上清を0.2μmフィルターで膜ろ過し、ろ過物についてEGTの産生量を測定した。EGT量はAsahipak NH2P-50カラムを用いたHPLCで定量した。溶出液A(0.1 容量%トリエチルアミン、50 mMリン酸ナトリウムバッファー: pH 7.3)及び溶出液B(100 mM NaCl)の濃度勾配液を用いてEGTを溶出した。EGT量は、波長254 nmの吸光度で測定した。本測定条件ではEGTは約6.1 minに溶出が認められた。
【実施例】
【0048】
その結果を図2に示す。なお本実施例2を含めて以下の実施例では、特記しない限り、全て3連で実験を行っており、結果のグラフにおけるbarはSDを示す。野生株に比べて△egn(EGT)株でEGT生産性が高いことが分かった。またNB培地のみより、メタノール又はグリセリンを炭素源として加えた場合に、EGT生産性が高いことが分かった。菌株の生育はあまり良好ではなかった。
【実施例】
【0049】
(実施例3)Methylobacterium属細菌のEGT産生能に対する各種添加物の影響の確認
(1)ミネラル培地の炭素源を2%グリセリンとし、アミノ酸源として個別のアミノ酸ではなく、複合培地の酵母エキス(YE)を用いて、EGT産生能に対する影響を確認した。5 mlの培養液で7日間培養して、これまで通り菌体からEGTを熱で抽出し、HPLCでEGTを定量した。ミネラル培地は、ミネラル塩溶液(200 mL)、緩衝液(300 mL)、鉄溶液(0.33 mL)、TE溶液(1 mL)、ビタミン溶液(10 mL)と、炭素源及び水からなり、各溶液を各々殺菌した後混合して調製した。各溶液の組成は、以下の通りである。
・ミネラル塩溶液:1 L当たりNH4Cl 8.09 g及びMgSO4・7H2O 1.0 g
・緩衝液:1 L当たりK2HPO4 8.0 g及びNaH2PO4・H2O 3.6 g
・鉄溶液:1 L当たりFeSO4・7H2O 13.9 gを1 M塩酸に溶解
・ビタミン溶液:1 L当たりパントテン酸カルシウム0.4 g、イノシトール0.2 g、ナイアシン0.4 g、p-アミノ安息香酸0.2 g、塩酸ピリドキシン0.4 g、塩酸チアミン0.4 g、ビオチン0.2 g及びビタミンB12 0.2 g
・本実施例では、2%グリセリンを炭素源として用いた。
【実施例】
【0050】
結果を図3に示す。野生株で酵母エキスを0.5%まで添加すると、菌体収量の増加と共にEGT生産量も増加した。また、アミノ酸源として酵母エキスが有用であることが分かった。また△egn株、22A(EGT)株では、野生型22A株に比べて若干のEGT生産量の増加がみられた。egn遺伝子欠損及びegtBD遺伝子の重複によりEGT生産性の向上がみられた。特に22A△egn(EGT)株では0.5% 酵母エキス添加で劇的なEGT生産性の向上がみられた。
【実施例】
【0051】
(2)0.5%酵母エキスによるEGT生産性の向上がみられたため、さらに高濃度条件で試験を行った。酵母エキスの濃度以外は(1)と同様にして、Malt extract、カザミノ酸、トリプトン、proteose peptoneを加えて相乗効果を検討した。ここで試験菌を野生株22Aと△egn(EGT)株に絞った。念のため、炭素源としてメタノールを添加した場合についても試験を行った。
【実施例】
【0052】
結果を図4に示す。△egn(EGT)株の方がメタノールでもグリセリンでもEGT産生能が高くなることが確認された。また野生株について、炭素源がメタノールの場合は、酵母エキス1%添加までEGT産生性の向上効果がみられたが、酵母エキス2%を超えると生育不良となり、EGT産生能も低下することがわかった。炭素源がグリセリンの場合は、酵母エキス2%程度までEGT産生性の向上効果が確認された。△egn(EGT)株については、酵母エキス0.5%のみよりは、0.5%のカザミノ酸やトリプトンの添加によりさらにEGT生産性が高まり、最大160 microgram/5 mlにまで達することが確認された。酵母エキス添加なし、メタノール炭素源のEGT生産性(10-15 microgram / 5 ml)に比べると10倍のEGT産生性が確認された。
【実施例】
【0053】
(3)酵母エキスに加えて、カザミノ酸またはトリプトンの添加が効果的であることから、これらの濃度を変えて培養を行い、同様にEGT生産性を検討した。カザミノ酸またはトリプトンの濃度を変えた以外は(2)と同様にして培養を行った。なお菌体の生育を湿重量ではなく濁度(OD600)で測定した。炭素源はグリセリンとした。
【実施例】
【0054】
その結果を図5に示す。野生株については栄養源濃度が高すぎるせいか、生育が不良となりEGT生産も少なかった。一方、△egn(EGT)株については0.5% 酵母エキス+2%トリプトンまたは1%酵母エキス+0.5%カザミノ酸で130 microgram / 5 mlの生産性が得られた。
【実施例】
【0055】
(実施例4)EGT産生能を有する微生物のスクリーニング
様々な植物の花から分離した、計166株の微生物のライブラリを、岡山大学環境生命科学専攻の神崎浩教授より分譲いただいき、MALDI-TOF質量分析器を用いて、菌体を構成するタンパク質の質量プロファイリングによって簡易的に分類を行った。具体的な分類の手法は、PLoS ONE 7(7): e40784 (2012)に準じて行った。全ての菌株を2%グリセリンを炭素源として5 ml培養液で1週間28℃で培養し、Methylobacterium属野生型22A株と同じく熱抽出とHPLCによりEGT産生量を定量した(実験は1連)。EGT生産性の高かった株に関して、ITS領域の配列解析により同定を行った。
【実施例】
【0056】
その結果、Aureobasidium pullulansに属する株及びRhodotorula mucilaginosaに属する株に高いEGT産生能がみられた。EGT産生能の高い株として以下の10株の分離株を得た。
Aureobasidium pullulans kz2
Aureobasidium pullulans kz4
Aureobasidium pullulans kz25
Aureobasidium pullulans kz26
Aureobasidium pullulans kz24
Aureobasidium pullulans kz28
Aureobasidium pullulans kz32
Rhodotorula mucilaginosa kz112
Rhodotorula mucilaginosa kz114
Aureobasidium pullulans kz49
【実施例】
【0057】
上記10株に加えて、別途分離していたRhodotorula mucilaginosa z41c株及びz41d株の合計12株について、グリセリン2%を炭素源とした培地を用いて3連でEGT生産性の確認を行った。用いた培地は、実施例3と同様のミネラル培地である。
【実施例】
【0058】
その結果を図6に示す。Rhodotorula属酵母と同等またはそれ以上の高いEGT生産性をAureobasidium属のカビが示すことがわかった。
【実施例】
【0059】
(実施例5)Aureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母のEGT産生能の確認
実施例4と同様にして、Aureobasidium pullulans kz25、Aureobasidium pullulans kz26、Rhodotorula mucilagionosa z41cの3株について、2%グリセリンを炭素源としてミネラル培地を用いて培養し、EGT定量を行い、EGT産生能を確認した。
【実施例】
【0060】
その結果を図7に示す。20 microgram / 5 mlのEGT生産性を得る菌株が確認された。
【実施例】
【0061】
(実施例6)培地の種類を変えた場合のAureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母のEGT産生能への影響の確認
Aureobasidium pullulans kz25及びRhodotorula mucilagionosa z41cの2株について、酵母用のSD培地をベースに、炭素源としてグルコース又はグリセリンを用いてEGT産生の評価を行った。各菌株ともに、28℃で7日間培養した。なお培地の組成は、Yeast nitrogen base (without amino acids)6.7 g/Lに、グリセリン又はグルコース2~5%を添加したものである。
【実施例】
【0062】
その結果を、図8に示す。Aureobasidium pullulans kz25は幅広い炭素源濃度で良好に生育するとともに、高いEGT産生量が確認された(40 mg/5 ml以上)。Rhodotorula mucilagionosa z41cは2%以上の炭素源を用いると生育不良になりEGT産生量が低下した。また炭素源がグルコースの培地の場合は、いずれもEGT生産性が低かったため、炭素源としてはグリセリンが有望であると考えれらた。Yeast Nitrogen base (without amino acid)はアミノ酸が含まれていないため、EGTの前駆体となるアミノ酸が欠乏している可能性が考えられた。
【実施例】
【0063】
(実施例7)アミノ酸源を添加した場合のAureobasidium属カビ及びRhodotorula属酵母のEGT産生能への影響の確認
Aureobasidium pullulans kz25及びRhodotorula mucilagionosa z41cの2株について、炭素源をグリセリン2%とし、酵母エキスの添加、peptone等の添加によるEGT産生能への影響を確認した。各菌株ともに、28℃で7日間培養した。
【実施例】
【0064】
その結果を図9に示す。図中、n.d.はnot determinedを意味し、熱抽出しようとすると菌体がゲル状になりEGTの抽出が出来なかった。これら2つの株により、40-50 microgram/5mlのEGTを7日で産生し得ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上詳述したように、本発明の微生物でEGTを産生させる方法によれば、培養期間が7日間で菌体内にEGTを良好に産生させることができる。また培養した菌を熱処理することで菌体からEGTを抽出することができ、菌体を破砕したり有機溶媒を用いる必要がなく、容易かつ安全にEGTを産生、精製、製造することができる。係る方法によれば、従来の方法によりEGTを産生及び精製する方法に比べて培養に要する費用を軽減化でき、抽出等の操作が簡便であるとともに、精製して得られたEGTは安全性が高く、優れたものである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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