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明細書 :新規化合物、化学センサー、センシング装置及びセンシング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6687240号 (P6687240)
公開番号 特開2017-226627 (P2017-226627A)
登録日 令和2年4月6日(2020.4.6)
発行日 令和2年4月22日(2020.4.22)
公開日 平成29年12月28日(2017.12.28)
発明の名称または考案の名称 新規化合物、化学センサー、センシング装置及びセンシング方法
国際特許分類 C07D 209/86        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C09K   9/02        (2006.01)
FI C07D 209/86 CSP
G01N 21/64 Z
C09K 11/06
C09K 9/02 B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2016-124472 (P2016-124472)
出願日 平成28年6月23日(2016.6.23)
審査請求日 令和元年6月6日(2019.6.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】北川 裕一
【氏名】矢地 莉勇人
【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】中西 貴之
【氏名】伏見 公志
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100206944、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 絵美
審査官 【審査官】佐久 敬
参考文献・文献 特表2013-533860(JP,A)
国際公開第2014/136972(WO,A1)
特開2015-229677(JP,A)
特開2010-245063(JP,A)
特開2015-021008(JP,A)
Chemical Physics (2008), Vol.348, p.181-186
ACS Applied Materials & Interfaces (2015), Vol.7, No.21, p.11127-11133
Journal of Physical Chemistry (2017), Vol.121, No.24, p.4613-4618
調査した分野 C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
JP0006687240B2_000007t.gif

式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。
【請求項2】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24が水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を含む化学センサー。
【請求項4】
溶媒をセンシングするために用いられる、請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
前記溶媒が有機溶媒である、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
前記有機溶媒が、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載のセンサー。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の化合物を含む検出部を備える、センシング装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の化合物によって対象物をセンシングすることを含む、センシング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、化学センサー、センシング装置及びセンシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機分子は光機能性分子として注目を集めている。中でも電荷移動(CT)性の発光を示す有機分子は、熱活性遅延蛍光を利用した有機EL等の発光材料として注目されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特表2013-533860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のCT性遷移を示す発光性有機分子は、小さい放射速度及び大きな熱失活速度に起因して発光強度が低いという問題がある。
【0005】
本発明は、新規な発光性有機化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を提供する。
【化1】
JP0006687240B2_000002t.gif

【0007】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。
【0008】
上記化合物は、優れた発光強度を有する。また、上記化合物は、周囲の環境、例えば周囲に存在する分子の極性、溶媒の種類、濃度等に応じて異なる、複数の発光帯を含む発光スペクトルを有する。
【0009】
上記化合物はR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24が水素原子であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記化合物を含む化学センサーを提供する。該化学センサーは、上記化合物を含むため、周囲の環境、例えば周囲に存在するプロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒等の種類、濃度などのセンシングに用いることができる。
【0011】
上記センサーは、溶媒をセンシングするために用いられることが好ましい。溶媒は有機溶媒であってよい。有機溶媒は、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0012】
本発明はまた、上記化合物を含む検出部を備えるセンシング装置を提供する。該センシング装置は上記化合物を検出部に含むため、上記化合物の周囲の環境、例えば上記化合物の周囲に存在するプロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒等の種類、濃度などをセンシングすることができる。
【0013】
本発明はまた、上記化合物によって対象物をセンシングすることを含む、センシング方法を提供する。上記方法は、上記化合物の光物理的性質を利用して、周囲の環境、例えば上記化合物の周囲に存在するプロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒等の種類、濃度などをセンシングすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、新規な発光性有機化合物が提供される。本発明に係る化合物は、発光強度に優れ、該化合物の周囲の環境、例えば周囲に存在する分子の極性、溶媒の種類、濃度等によって異なる、複数の発光帯を含む発光スペクトルを有するという性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る化合物の5種の溶媒における発光スペクトルを示すグラフである。
【図2】本実施形態に係る化合物の2つの励起波長における発光スペクトルを示すグラフである。
【図3】本実施形態に係る化合物の、クロロホルム混合割合の異なる溶液における発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】本実施形態に係る化合物の、クロロホルム混合割合と発光強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0017】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を提供する。
【化2】
JP0006687240B2_000003t.gif

【0018】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ独立に、水素原子、重水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示す。

【0019】
アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基は、例えば炭素数1~20であってよく、置換基を有していてもよい。アリール基は例えば炭素数6~20であってよく、置換基を有していてもよい。ヘテロアリール基は、例えば炭素数4~20であってよく、置換基を有していてもよい。

【0020】
上記一般式(1)で表される化合物は、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23及びR24が全て水素原子、すなわち下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。

【0021】
【化3】
JP0006687240B2_000004t.gif

【0022】
一般式(1)で表される化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば式(2)で表される化合物は、下記反応式に示す方法によって簡便に製造することができる。下記反応式に示す方法は、生成物が分離しやすいため好ましい。

【0023】
【化4】
JP0006687240B2_000005t.gif

【0024】
式(2)で表される化合物はまた、例えば、1-(p-ブロモフェニル)エタノン等の1-(p-ハロゲノフェニル)エタノンと、エチル-p-ブロモベンゾエート等のエチル-p-ハロゲノベンゾエートとを予め縮合させておき、その後、縮合物に2つのカルバゾールをカップリングさせることによって製造してもよい。

【0025】
上記一般式(1)で表される化合物は、電子ドナーである2つのカルバゾール骨格が1つの電子アクセプターを挟む構造を有する。一般に、CT遷移性発光を示す有機化合物は、遷移双極子モーメントが小さいことに由来して、放射速度が小さく、熱失活速度が大きいため、量子収率が低い傾向にある。一方、本実施形態に係る化合物は、高い光吸収能力及び放射速度を有し、熱失活速度が抑制されており、高い量子収率を示す。これは、分子内において2つの遷移双極子モーメントが近接しており、分子内のJ型の励起子相互作用によって励起状態が非局在化するためと考えられる。電荷移動性発光を示す分子の励起状態における励起子相互作用を利用することで、励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー準位が反転し得る。反転した状態では、光励起に伴い励起三重項状態が形成しないと考えられるため、上記一般式(1)で表される化合物は高い光安定性を有し得る。

【0026】
後述の実施例において詳細に示すように、本実施形態に係る化合物は、当該化合物の周囲の環境条件、例えば化合物の周囲に存在する分子の極性、溶媒の種類、濃度等に応じて異なる、複数の発光帯(発光ピーク波長)を含む発光スペクトルを有する。従来、周囲環境に依存して複数の発光帯が同時に変化する発光性有機分子は知られていなかった。発光スペクトルは、例えば上記化合物に励起光を照射して生じる発光波長を測定することによって調べることができる。上記化合物の量子収率は30%を超え得る。また、本実施形態に係る化合物は、励起状態において2つ以上の発光準位を有するため、寿命がより長い複数色の遅延蛍光を生じ得る。また、発光スペクトルにおける発光帯の波長は時間依存し得る。

【0027】
上記化合物の周囲に複数種の溶媒を含む混合溶媒が存在している場合には、発光スペクトルは混合溶媒の組成を反映したものとなり得る。したがって、混合溶媒中での上記化合物の発光スペクトルを観測することにより、混合溶媒の組成の特定、混合溶媒中の任意の溶媒の濃度検出等を行うことが可能である。混合溶媒を構成する各溶媒同士の極性により差があるほど、より高感度で各種溶媒の検出を行うことができる傾向がある。

【0028】
本実施形態に係る化合物は、周囲が同一環境であっても、励起波長によって異なる発光スペクトルを示し得る。励起波長が長波長側であると、生じる発光スペクトルにおいて短波長側の発光が抑制又は消失し、発光帯が長波長側にシフトする傾向がある。したがって、励起波長を制御することにより、生じる発光スペクトルを変化させ、対象物の検出等において所望の発光スペクトルに設定することが可能である。

【0029】
本実施形態に係る化合物は、上述の光物理的性質を利用して、高度な環境応答型の化学センサーとして好適に用いることができる。本実施形態に係る化学センサーは、上記化合物のみからなるものであってもよく、上記化合物を含むものであってもよい。本実施形態に係る化学センサーは、上記化合物を含むため、例えば、プロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒の種類、濃度等をセンシングするために用いることができる。したがって、上記化学センサーは、例えば、溶媒センサー(溶媒検出剤)、バイオセンサー等に利用することができる。また、上記化学センサーは、1種の対象物に対しても2つ以上の発光帯を含む発光スペクトルを有し、各発光帯は時間依存を示し得る。したがって、上記化学センサーは、複雑で偽造しにくい高度なセキュリティ用材料等としても有用である。

【0030】
本実施形態に係る化合物は、センシング装置に利用することができる。本実施形態に係るセンシング装置は、上記一般式(1)で表される化合物を含む検出部を備える。検出部は、上記化合物を化学センサーとして含むものであってもよい。センシング装置は、検出部が上記化合物を含む他は、公知の構成を採用することができる。上記装置は、例えば、励起光照射部、発光分析部等を備えていてもよい。本実施形態に係るセンシング装置は、上記一般式(1)で表される化合物を含む検出部を備えるため、例えば、プロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒の種類、濃度等の検出などに用いることができ、水質管理システム等に好適に利用することができる。

【0031】
本発明はまた、上記一般式(1)で表される化合物を利用するセンシング方法を提供する。本実施形態に係るセンシング方法は、上記化合物を化学センサーとして用いるものであってよい。上記センシング方法は、上記化合物の光物理的性質を利用することにより、様々な対象物をセンシングすることができる。センシングの対象物は、例えば、プロトン性化合物、プロトン受容性化合物、溶媒等であってよい。上記方法により、例えば、プロトン性化合物又はプロトン受容性化合物の検出、溶媒の種類の検出、溶液濃度の検出等を行うことができる。本実施形態に係るセンシング方法は、例えば、対象物が近接した状態の上記化合物に励起光を照射する工程と、生じた発光を測定する工程とを含む。上記センシング方法は、対象物を含む試料に上記化合物を添加する工程を含んでいてもよく、または、上記化合物を備える検出デバイスに対象物を近接させる工程を含んでいてもよい。上記センシング方法は、上述のセンシング装置を用いるものであってもよい。得られた発光スペクトル又は発光強度等に基づいて、例えば、プロトン性化合物、プロトン受容性化合物の検出、溶媒の種類の特定、任意の溶媒の濃度の検出等を行うことが可能である。

【0032】
センシングの対象である溶媒は、例えば、水、有機溶媒であってよい。有機溶媒としては特に制限がなく、例えば、ヘキサン、トルエン等の炭化水素、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。

【0033】
上述のとおり、本実施形態に係る化合物は励起波長によって発光スペクトルが変化するため、上記センシング方法において、励起波長を制御することによって、検出能を制御することが可能である。励起波長は、例えば200~450nmであってよく、200~400nmであってよく、250~400nmであってよい。励起波長は例えば280~300nmであってもよく、360~400nmであってもよい。上記一般式(1)で表される化合物は、励起波長によって異なる発光スペクトルを示す。

【0034】
上記センシング方法においては、例えば、溶媒の種類を識別しようとする場合、既知の溶媒の発光スペクトルと、試料溶媒の発光スペクトルとを比較することにより、試料溶媒の種類を識別することが可能である。また、例えば混合溶媒において特定の溶媒成分の濃度を求める場合、混合比の異なる既知の組成を有する混合溶媒の発光スペクトルを測定して、任意の発光波長における発光強度の検量線を作成し、該検量線に基づいて、任意の溶媒成分の濃度を求めることが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[4-(9-カルバゾリル)フェニルエタノンの合成]
フレームドライした300mlの三口フラスコに、1-(p-ブロモフェニル)エタノン(1.52g、7.67mmol)とカルバゾール(1.12g、6.70mmol)、無水炭酸カリウム(2.96g、21.4mmol)及び酢酸パラジウム(スパチュラ一杯分)を加え、脱気し、系内をアルゴン置換した。得られた溶液に、トリ-t-ブチルホスフィン(スパチュラ三杯分)を脱水キシレン(20ml)に溶かしたものを、シリンジを用いて加え、120℃で40時間加熱還流した。得られた溶液に水を加えて簡易ろ過した後、ジクロロメタンと水で抽出した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加え、更にろ過した後、エバポレーター(オイルバス)で溶媒を除去した。得られた化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1、Rf=0.45)を用いて精製し、黄色い粉体を得た。収率は0.78g(35.6%)であった。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3, TMS): δ/ppm= 2.70(3H, s),7.30-7.35 (2H, m), 7.41-7.52 (4H, m), 7.70-7.74 (2H, d), 8.14-8.16 (2H, d),8.20-8.23 (2H, d).
【実施例】
【0037】
[エチル-4-(9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾエートの合成]
フレームドライした300mlの三口フラスコに、エチル-p-ブロモベンゾエート(3.02g、13.6mmol)とカルバゾール(2.20g、12.5mmol)、無水炭酸カリウム(5.07g、36.7mmol)、酢酸パラジウム(スパチュラ二杯分)を加え、脱気し、系内をアルゴン置換した。得られた溶液に、トリ-t-ブチルホスフィン10wt%ヘキサン溶液(1ml)と脱水キシレン(40ml)を、シリンジを用いて加え、120℃で48時間加熱還流した。得られた溶液に水を加えて簡易ろ過した後、ジクロロメタンと水で抽出した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加え、更にろ過した後、エバポレーター(オイルバス)で溶媒を除去した。得られた化合物に少量のエタノールを加えると白濁した。これを吸引ろ過することにより、白色の粉体が得られた。収率は0.76g(17.6%)であった。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3, TMS):δ/ppm= 1.44-1.47 (3H,t), 4.43-4.48 (2H, q), 7.30-7.34 (2H, m), 7.40-7.49 (4H, m), 7.67-7.70 (2H, d),8.14-8.16 (2H, d), 8.28-8.31 (2H, d).
【実施例】
【0038】
[DCBMの合成]
フレームドライした300mlの三口フラスコに、エチル-4-(9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾエート(0.76g、1.90mmol)及び水素化ナトリウム(0.40g、10.0mmol)を加え、脱気し、系内をアルゴン置換した。得られた溶液に脱水THF(40ml)を加え、室温で30分攪拌させた。得られた溶液に、4-(9-カルバゾリル)フェニルエタノン(0.54g、1.90mmol)を脱水THF(20 ml)に溶かしたものを加え、65℃で24時間加熱還流した。溶液に水を加え、約2mol/L塩酸を加え中和した後、ジクロロメタンと水で抽出した。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後、エバポレーターで溶媒を除去した。得られた化合物をジクロロメタンとヘキサンで再沈殿した後、ジクロロメタン及びヘキサンで再結晶し、茶色い粉体を得た。収率は0.47g(44.8%)であった。得られた化合物は、NMR及び質量分析によってジ(4-カルバゾール-ベンゾイル)メタン(DCBM)と同定された。
1H-NMR(400 MHz, CD2Cl2): δ/ppm= 7.08(1H, s), 7.30-7.35 (4H, d,d), 7.43-7.48 (4H, d,d), 7.52-7.56 (4H, d), 7.77-7.80(4H, d), 8.15-8.18 (4H, d), 8.29-8.31 (4H, d), 17.1 (1H, s), HRMS(ESI): found :m / z =555.20, calcd for C39H26O2N2: [M+H]+ = 555.20.
【実施例】
【0039】
DCBMを、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン又はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解して2.5×10-4M溶液を調製した。各溶液の、励起波長290nmの発光スペクトルを測定した。結果を図1に示す。各溶媒における発光帯(ピーク)波長を表1に示す。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP0006687240B2_000006t.gif
【実施例】
【0041】
ヘキサン、トルエン、クロロホルム及びジクロロメタンでは2つの発光帯が観測され、DMFでは3つの発光帯が観測された。発光準位は、非プロトン性又は非プロトン受容性溶媒の極性が上がるとともに長波長へシフトする傾向が観察された。発光は電荷移動遷移に基づくものであることが示唆された。上記発光帯1での量子収率は、トルエン中で10%、クロロホルム中で30%、ジクロロメタン中で49%であった。
【実施例】
【0042】
同じ溶媒を用いて、励起波長を360nm超に変更した以外は同条件で発光スペクトルを測定した。結果を図2に示す。励起波長によって、発光色が変化することが観察された。
【実施例】
【0043】
溶媒として、トルエン100%、又はクロロホルム-トルエン混合液(クロロホルム:トルエン=90:10、クロロホルム:トルエン=50:50(質量比))を用いた場合の、励起波長400nmでの発光スペクトルをそれぞれ測定した。結果を図3に示す。溶液中のクロロホルムの濃度に応じて発光スペクトルは変化した。クロロホルム濃度が10%の場合でも発光スペクトルはトルエン100%の場合と比べて大きくシフトしていた。得られた発光スペクトルから、上記溶液における波長500nmでの発光強度比を求め、更に各溶媒における量子収率を加味して予測した、各溶液における発光強度を図4に示す。本実施形態に係る化合物を用いて、所定の波長における発光強度に基づいて溶液中のクロロホルムの濃度を予測できることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3