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Specification :(In Japanese)細胞シートの製造方法及び細胞培養支持体

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2018-102296A
Date of publication of application Jul 5, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)細胞シートの製造方法及び細胞培養支持体
IPC (International Patent Classification) C12N   5/071       (2010.01)
C12M   3/00        (2006.01)
FI (File Index) C12N 5/071
C12M 3/00 A
Number of claims or invention 7
Filing form OL
Total pages 13
Application Number P2017-246221
Date of filing Dec 22, 2017
Application number of the priority 2016253593
Priority date Dec 27, 2016
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】中島 学
【氏名】櫨川 舞
【氏名】八尾 滋
【氏名】中野 涼子
【氏名】新戸 浩幸
【氏名】瀬戸 弘一
Applicant (In Japanese)【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100122297、【弁理士】、【氏名又は名称】西下 正石
【識別番号】100145104、【弁理士】、【氏名又は名称】膝舘 祥治
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4B029
4B065
F-term 4B029AA21
4B029BB11
4B029CC11
4B029DG08
4B029GA01
4B029GB09
4B065AA93X
4B065BB25
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BC41
4B065CA44
Abstract (In Japanese)【課題】細胞の増殖性が良好で、低温処理に依らずに細胞シートを剥離可能な細胞培養支持体及びそれを用いる細胞シートの製造方法を提供する。
【解決手段】基材と、基材上に配置される炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、を備える細胞培養支持体である。また当該細胞培養支持体上、第一温度で細胞を培養して細胞培養支持体上に細胞シートを形成することと、細胞培養支持体を第一温度よりも高い第二温度に保持して、細胞シートを回収することと、を含む細胞シートの製造方法である。
【選択図】図4
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーを表面に有する細胞培養支持体上、第一温度で細胞を培養して細胞培養支持体上に細胞シートを形成することと、
細胞培養支持体を第一温度よりも高い第二温度に保持して、細胞シートを回収することと、を含む細胞シートの製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位に対する含有比率が2:8から5:5である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とのブロックコポリマーである請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
基材と、基材上に配置される炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、を備える細胞培養支持体。
【請求項5】
炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、液媒体とを含む組成物。
【請求項6】
液媒体は、ジメチルスルホキシドを含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の組成物を基材上に付与することを含む細胞培養支持体の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞シートの製造方法及び細胞培養支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
損傷を受けた生体組織を再生する目的で、細胞シートを利用した移植法が開発されている。移植に利用される細胞シートの多くは、ヒト細胞を含む動物細胞の中でも特に付着依存性の細胞を用いて作製される。細胞シートを作製するには、動物細胞を基材表面上に付着させてシート状に培養し、その形態を保持したまま剥離させる必要性がある。例えば、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0℃から80℃であるポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を剥離させる皮膚細胞培養法が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平05-192138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の細胞培養支持体を用いて細胞シートを作製する場合、細胞種に依っては細胞シートが剥離しなかったり、低温障害を受ける場合があった。そこで本発明は、細胞の増殖性が良好で、低温処理に依らずに細胞シートを剥離可能な細胞培養支持体及びそれを用いる細胞シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様は、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーを表面に有する細胞培養支持体上、第一温度で細胞を培養して細胞培養支持体上に細胞シートを形成することと、細胞培養支持体を第一温度よりも高い第二温度に保持して、細胞シートを回収することと、を含む細胞シートの製造方法である。
第二態様は、基材と、基材上に配置される炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、を備える細胞培養支持体である。
第三態様は、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、液媒体とを含む組成物である。
第四態様は、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、液媒体とを含む組成物を基材上に付与することを含む細胞培養支持体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、細胞の増殖性が良好で、低温処理に依らずに細胞シートを剥離可能な細胞培養支持体及びそれを用いる細胞シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ポリマーが付着した細胞培養皿の表面張力を示す図である。
【図2】培養48時間後の細胞増殖の状態を示す図である。
【図3】培養72時間後の細胞増殖の状態を示す図である。
【図4】細胞シートの剥離状態を示す図である。
【図5】ポリマーが付着したガラス製細胞培養皿の表面張力を示す図である。
【図6】培養48時間後の細胞増殖の状態を示す図である。
【図7】培養72時間後の細胞増殖の状態を示す図である。
【図8】細胞シートの剥離状態を示す図である。
【図9】ポリマーが付着した細胞培養皿の表面張力を示す図である。
【図10】細胞シートの剥離状態を示す図である。
【図11A】細胞シートの細胞増殖能を評価する実験スケジュールである。
【図11B】細胞シートの細胞増殖能の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも一方を意味する。

【0009】
<細胞シートの製造方法>
細胞シートの製造方法は、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーを表面に有する細胞培養支持体上、第一温度で細胞を培養して細胞培養支持体上に細胞シートを形成することと、細胞培養支持体を第一温度よりも高い第二温度に保持して、細胞シートを回収することと、を含む。

【0010】
特定構成のポリマーを表面に有する細胞培養支持体上で細胞を培養することで、細胞が細胞培養支持体に付着して良好な増殖性を示して均一な細胞シートが得られる。表面に細胞シートが形成された細胞培養支持体を、培養温度よりも高い温度に保持することで、細胞培養支持体の表面状態が変化して細胞シートが剥離する。これにより低温障害を与えることなく細胞培養支持体から剥離した細胞シートが得られる。

【0011】
(細胞培養支持体)
細胞シートの製造方法に用いられる細胞培養支持体は、基材と、基材の表面上に配置される炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーとを備える。ポリマーは特定の構成を有することで、基材への付着性を有し、基材表面に適度な親水性を付与することができる。更にポリマーは、培養温度である第一温度では培養細胞に対する被付着性を示し、培養温度より高い第二温度では培養細胞に対する被付着性を喪失する特有の感温特性を有する。

【0012】
細胞培養支持体に用いられる基材の材質は、目的等に応じて通常用いられる基材の材質から適宜選択することができる。基材の材質としては例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリビニル系樹脂、ガラス等を挙げることができる。また基材の形状、大きさ等は細胞培養が可能であれば特に制限されず、目的とする細胞シートの形状、大きさ等に応じて適宜選択すればよい。基材は市販の細胞培養用の基材から目的等に応じて適宜選択して用いることができる。

【0013】
基材の表面上に配置されるポリマーは、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する第一構成単位と、(メタ)アクリル酸に由来する第二構成単位とを含む。第一構成単位に含まれるアルキル基の炭素数は、ポリマーの基材への付着性から16から22が好ましい。第一構成単位を形成するモノマーとして具体的には、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコサニル(メタ)アクリレート、べへニル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。

【0014】
ポリマーに含まれる第一構成単位と第二構成単位の含有モル比(第一構成単位:第二構成単位)は、例えば、2:8から5:5であり、2:8から4:6が好ましい。ポリマーはランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよいが、ブロックコポリマーであることが好ましい。

【0015】
ポリマーは第一構成単位及び第二構成単位以外のその他の構成単位を、本発明の効果を損なわない程度で更に含んでいてもよい。その他の構成単位を構成するモノマーは、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸と共重合可能であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ブチルアクリレート等の炭素数12以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。

【0016】
ポリマーの分子量は、例えば、重量平均分子量(Mw)として3,500から200,000であり、6,000から70,000が好ましい。更に多分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.05から15であり、1.2から2が好ましい。重量平均分子量および多分散度は、GPCを用いてポリスチレン換算で求めることができる。

【0017】
ポリマーがブロックコポリマーである場合、第一構成単位部分の重量平均分子量は、例えば、500以上、1,000以上、2,000以上、3,000以上、4,000以上又は5,000以上であり、100,000以下、50,000以下、10,000以下8,000以下又は7,000以下である。また第二構成単位部分の重量平均分子量は、例えば、500以上、1,000以上又は2,000以上であり、100,000以下、20,000以下又は15,000以下である。また、第一構成単位部分の重合度は、例えば、2以上、5以上又は10以上であり、800以下、500以下、100以下又は50以下である。第二構成単位部分の重合度は、例えば、5以上、10以上又は30以上であり、800以下、500以下又は100以下である。

【0018】
ポリマーは通常用いられる製造方法で製造することができる。例えばポリマーがブロックコポリマーの場合、各種リビング重合法(ラジカル、アニオン、カチオン)で製造することができる。リビングラジカル重合法としては、NPM法、ATRP法、RAFT法等を挙げられ、具体的には、例えば、国際公開第2012/098750号に記載の製造方法を参照することができる。
また、ポリマーの重合に用いられる開始剤としては、例えばBlocBuilder MA(アルケマ社製)等が挙げられる。

【0019】
基材の表面上に配置されるポリマーの量は、例えば、30μg/cm2以上160μg/cm2以下であり、50μg/cm2以上80μg/cm2以下が好ましい。またポリマーは1種単独で用いてもよく、2種以上の構成の異なるポリマーを組み合わせて用いてもよい。

【0020】
(細胞培養)
細胞シートは所望の細胞を、細胞培養支持体上に播種し、第一温度(培養温度)で培養することで形成される。細胞培養支持体上で培養される細胞は、動物細胞であれば、種及び由来組織は特に制限されず、例えば、生体より採取した直後の細胞及び樹立細胞系等を挙げることができる。動物細胞の由来としてはヒトを含む哺乳動物が挙げられる。細胞は体細胞であっても幹細胞であってもよい。

【0021】
細胞の培養には、通常使用される培地を使用することができる。培養に用いられる培地としては、一般に動物細胞の培養に用いられる培地であればよく、例えば、RPMI培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、MEM培地、F12培地等の血清を含まない各種の基礎培養液(標準培養液)を挙げることができる。この培地には、細胞の増殖を促進するための血清を添加するか、あるいは血清に代替するものとして、例えばFGF、EGF、PDGF等の細胞増殖因子、トランスフェリン等の既知血清成分等を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、そのときの培養状態によって適宜変更することができ、例えば、5容量%から10容量%とすることができる。また培地は、各種ビタミン類、ストレプトマイシン等の抗生物質、分化誘導物質等を添加したものであってもよい。

【0022】
細胞培養支持体上に、播種する細胞の密度については、細胞シートが形成可能であればよく、細胞種等に応じて適宜選択することができる。例えば、培養面積当たり3×104から6×104cells/cm2とすることができる。

【0023】
細胞の培養は第一温度で行われ、細胞に応じて適宜選択することができる。例えば35から37℃とすることができる。細胞の培養は5%CO2濃度のインキュベーター内で行ってもよい。各種細胞由来の細胞シートの形成は、通常の培養条件で3から5日程度、コンフルエントな状態になるまで培養を行えばよい。細胞シートの形成は顕微鏡観察で確認することができる。

【0024】
(細胞シートの回収)
細胞培養支持体上に形成される細胞シートの回収は、細胞培養支持体を第一温度よりも高い第二温度(剥離温度)に保持して行われる。細胞シートが形成された細胞培養支持体を第二温度に保持することで、細胞シートが細胞培養支持体から剥離して細胞シートが回収できる。細胞シートの剥離では、必要に応じて細胞培養支持体を揺動してもよく、細胞シートの外縁の一部を物理的に剥離してから細胞培養支持体を揺動してもよい。

【0025】
第二温度は、第一温度よりも高く、細胞に障害を与えない温度であればよい。また第二温度はポリマーの基材に対する付着性が維持される温度であることが好ましい。第二温度は、例えば、38℃から45℃とすることができ38℃から40℃が好ましい。細胞シートの回収において第二温度に保持する時間は、例えば、10分から180分とすることができる。

【0026】
細胞シートの製造方法では、極端に温度を低下させることなく、培養細胞をシート状態のままで回収することが可能であり、細胞に低温障害を与えることがない。また回収される細胞シートは均一性が高く、細胞シートの収縮による塊状化が抑制される。さらに細胞シートを構成する細胞において良好な細胞増殖性が維持される。

【0027】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、炭素数14から22のアルキル基を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むポリマーと、液媒体とを含む。組成物は、細胞培養に用いられる基材の表面処理に適用され、培養温度では培養細胞に対する被接着性を示し、培養温度よりも高い温度では細胞に対する被付着性を喪失する特有の感温特性を有するポリマー層を基材の表面に形成することができる。すなわち、組成物は、細胞培養用基材のコーティング剤として用いられる。

【0028】
組成物に含まれるポリマーの詳細については既述の通りである。組成物はポリマーを1種単独で含んでいてもよく、2種以上の構成の異なるポリマーを組み合わせて含んでいてもよい。

【0029】
液媒体はポリマーの少なくとも一部を溶解可能であれば、通常用いられる液媒体から適宜選択して用いることができる。液媒体は、ポリマーを所望の濃度で溶解可能であることが好ましく、適用される基材に対して不活性であることが好ましい。液媒体は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール等の水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。中でも液媒体は、特別な手段を必要とせず容易に且つ短時間で細胞培養用基材の表面コーティングが可能であり、また特別な滅菌操作を必要としないことから、DMSOを含むことが好ましい。また液媒体は水を含んでいてもよく、水溶性有機溶剤と水の混合物であってもよい。

【0030】
組成物中のポリマーの含有量は、例えば、1(w/v)%以下とすることができ、0.025(w/v)%以上0.05(w/v)%以下が好ましい。

【0031】
組成物は、例えば、ポリマーを所望の濃度となるように液媒体に溶解又は分散することで調製することができる。組成物は、適用される基材の表面にポリマー層を形成することで、基材表面に親水性を付与することができる。ポリマー層が形成された基材は、細胞培養支持体として細胞シートの製造方法に用いることができる。

【0032】
<細胞培養支持体の製造方法>
細胞培養支持体は、前記組成物を細胞培養用の基材に付与して基材表面にポリマーを付着させることで製造することができる。組成物の付与方法は、滴下、塗布、スプレー、浸漬等の通常用いられる方法から適宜選択すればよい。組成物の付与量は、基材の面積及び組成物中のポリマー濃度を考慮し、基材面に付着するポリマー量が所望の範囲となるように適宜選択すればよい。

【0033】
組成物を基材表面に付与した後に、組成物に含まれる液媒体の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、例えば、ポリマーを基材の表面に付着させることができる。液媒体の除去は、例えば、減圧あるいは常圧で液媒体を揮発させて行うことができる。また液媒体が水溶性有機溶剤を含む場合には、生理食塩水等の水性媒体を付与後、上清を除去することで水溶性有機溶剤を除去してもよい。組成物を基材表面に付与してから、液媒体を除去するまでのコーティング時間は、例えば30分以上であり、好ましくは60分以上である。また例えば180分以下である。ポリマーを基材表面に付着させる温度は、例えば20℃以上50℃以下であり、好ましくは室温(25℃)程度である。

【0034】
細胞培養支持体の製造方法は、例えば細胞培養用の基材に、表面改質剤である組成物を付与する簡便な方法であるため、市販品等の任意の基材に容易に適用することができる。また、任意の基材表面に対して同等の表面特性を容易に付与することができため、得られる細胞培養支持体を用いことで、均一な品質の細胞シートを安定して製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
(製造例1)
ステアリルアクリレート(STA;東京化成工業株式会社製)6.6g(20mmol)を酢酸ブチル6.6gに溶解し、BlocBuilder MA No.33(アルケマ社製)0.386gを添加し、重合温度約105℃、撹拌速度75rpm、窒素雰囲気下で4.5時間重合させた。次いでアクリル酸(AA;東京化成工業株式会社製)3.415g(47mmol)を酢酸ブチル3.42gに溶解した溶液を添加し、105℃のままで27時間重合させた。得られた重合液を再沈殿により精製してブロックコポリマーを得た。ブロックコポリマーの製造に用いた第一構成単位となるSTAと第二構成単位となるAAの仕込み比は、STA:AA=3:7であった。
得られたブロックコポリマーの重量平均分子量(Mw)を、GPCを用いてポリスチレン換算で求めたところ、第一構成単位部分の重量平均分子量が約4,519であり、第二構成単位部分の重量平均分子量が約3,371であった。なお、第一構成単位部分の重量平均分子量は、アクリル酸を添加する前に反応液をサンプリングして求めた。得られたポリマーにおける重量平均分子量の構成をSTA:AA=5000:3000とした。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
上記製造例1で得られたポリマーを0.05%(w/v)となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、細胞培養皿コーティング用の組成物を調製した。
得られた組成物を、ポリスチレン(PS)製の35mm無処理ディッシュ(IWAKI#1000-035)に1.5mL滴下して、培養面全体に行き渡らせた後、PBSを2ml加えてリンスして、表面にポリマーが付着した細胞培養支持体を作製した。
【実施例】
【0038】
得られた細胞培養支持体の表面状態を評価するために、室温でPBSを100μL滴下して、液滴の状態を観察した。併せて、PBSのみで処理したディッシュ(a)、及びDMSOのみで処理し、PBSでリンスしたディッシュ(b)についても同様にPBSを滴下して表面状態を評価した。結果を図1に示す。
【実施例】
【0039】
図1から、ポリマーが付着した細胞培養支持体(c)は、PBS処理ディッシュ(a)及びDMSO処理ディッシュ(b)に比べて、表面張力が低下し、親水性になっていることが分かる。なお、ポリマーが付着した細胞培養支持体にPBSを加えて37℃、72時間静置後、45℃で30分間加熱してから、同様にして表面状態を評価したところ、表面張力は低下したままであった。このことから、45℃で30分間の熱処理ではポリマー層が剥離しないことが分かった。
【実施例】
【0040】
(実施例2)
実施例1で作製した細胞培養支持体を用いて細胞シートの作製を行った。細胞培養支持体にDMEM培地(10%FCS添加)を加え、ヒト舌がん由来扁平上皮がん細胞株(NA)を3×105cells/dishで播種した。37℃、5%CO2濃度のインキュベーター内で72時間の細胞培養を行って細胞シートを形成した。
次いで45℃で30分から60分振とうした。
【実施例】
【0041】
(比較例1)
実施例1で作製した細胞培養支持体の代わりに、ポリスチレン(PS)製の35mm無処理ディッシュ(IWAKI社製、#1000-035)をDMSOのみで処理したディッシュを用いたこと以外は実施例2と同様にして細胞培養を行った。
【実施例】
【0042】
(比較例2)
実施例1で作製した細胞培養支持体の代わりに、ポリスチレン(PS)製の35mmTC処理済みディッシュ(FALCON社製、#353001)をDMSOのみで処理したディッシュを用いたこと以外は実施例2と同様にして細胞培養を行った。
次いで45℃で30分から60分振とうした。
【実施例】
【0043】
実施例2、比較例1及び2における培養細胞の状態を、顕微鏡(×10)を用いて観察した結果を図2及び3に示す。図2は48時間後の、図3は72時間後の細胞の増殖状態を示す。
また実施例2及び比較例2について45℃で30分振とうした後の状態を図4に示す。
【実施例】
【0044】
図2から、実施例2及び比較例2を比較すると、実施例2の方がより均一に細胞が増殖していることが分かる。また図3から、実施例2及び比較例2では細胞がコンフルエントに増殖してシート状になっていることが分かる。
図4から、実施例2では培養細胞がシート状に剥離しているのに対して、比較例2では培養細胞の剥離が観察されなかったことが分かる。
【実施例】
【0045】
(製造例2) FITCラベル化ポリマー製造
ステアリルアクリレート(STA;東京化成工業株式会社製)5gを酢酸ブチル5gに溶解し、BlocBuilder MA No.33(アルケマ社製)0.381gを添加し、重合温度約110℃、窒素雰囲気下で5時間重合させた。次いでフルオレセインイソチオシアネート(FITC)200mgとアクリル酸(AA;東京化成工業株式会社製)4gを酢酸ブチル4gに溶解した溶液を添加し、110℃のままで29時間重合させた。得られた重合液を再沈殿により精製してFITCラベル化ポリマーを得た。
【実施例】
【0046】
(製造例3) アントラセンラベル化ポリマーの製造
製造例1で得られたブロックコポリマー100mgおよびテトラメチルアンモニウム塩酸塩・五水和物107mgをN,N-ジメチルホルムアミド15mLに加えた。そこに9-クロロメチルアントラセン160mgを加えて70℃で6時間撹拌した。得られた淡黄色溶液をエタノールに滴下してポリマーを沈殿させた。沈殿物をエタノールにて洗浄し、真空乾燥して白色のアントラセンラベル化ポリマーを得た。
【実施例】
【0047】
(実施例3)
製造例1で得られたポリマーの代わりにラベル化ポリマーとして、製造例2で得られたFITCラベル化ポリマー又は製造例3で得られたアントラセンラベル化ポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして細胞培養支持体を作製し、これらを用いて、実施例2と同様にして細胞培養を行って細胞シートを形成した。次いで45℃で60分振とうした。
【実施例】
【0048】
剥離した細胞シートを、それぞれ別の細胞培養ディッシュのPBS中に移動し、移動した細胞シート及び細胞シートを剥離した後の細胞培養支持体について、ラベル体の蛍光を観察した。FITCラベル化ポリマーについては、励起波長470nm、検出波長525nmを用い、アントラセンラベル化ポリマーについては、励起波長360nm、検出波長447nmを用いた。
【実施例】
【0049】
蛍光観察の結果、剥離した細胞シートには蛍光がほとんど検出されなかったが、細胞シートを剥離した後の細胞培養支持体についてはいずれのラベル化ポリマーを用いた場合でも明確な蛍光が検出された。
以上から、細胞シート形成後に45℃で細胞シートを剥離しても、ポリマーは基材からは剥離しないことが分かる。
【実施例】
【0050】
(実施例4)
上記製造例1で得られたポリマーを0.05%(w/v)となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、細胞培養皿コーティング用の組成物を調製した。
得られた組成物を、ガラス製の35mm無処理ディッシュ(松浪硝子工業株式会社製、#D111300)に1.5mL滴下して、培養面全体に行き渡らせた後、PBSを2ml加えてリンスして、ガラス表面にポリマーが付着した細胞培養支持体を作製した。
【実施例】
【0051】
得られた細胞培養支持体の表面状態を評価するために、室温でPBSを100μL滴下して、液滴の状態を観察した。併せて、DMSOのみで処理し、PBSでリンスしたディッシュ(a)についても同様にPBSを滴下して表面状態を評価した。結果を図5に示す。
図5から、ポリマーが付着した細胞培養支持体(b)は、DMSO処理ディッシュ(a)に比べて、表面張力が低下し、親水性になっていることが分かる。
【実施例】
【0052】
(実施例5)
実施例1で作製した細胞培養支持体の代わりに、実施例4で作製した細胞培養支持体を用いたこと以外は、実施例2と同様にして細胞培養を行い、細胞シートの作製を行った。
次いで45℃で120分振とうした。
【実施例】
【0053】
実施例5における培養細胞の状態を、顕微鏡(×10)を用いて観察した結果を図6及び7にそれぞれ示す。図6は48時間の、図7は比較例3の72時間後の細胞の増殖状態を示す。また実施例5について45℃で120分振とうした後の状態を図8に示す。
【実施例】
【0054】
図6及び7から、実施例5では細胞が均一に増殖し、72時間後にはコンフルエントに増殖してシート状になっていることが分かる。図8から、実施例5では培養細胞がシート状に剥離していることが分かる。
【実施例】
【0055】
(製造例4)
第一構成単位部分(STA)の重量平均分子量と、第二構成単位部分(AA)の重量平均分子量とが、STA:AA=5000:1000となるように条件を変更したこと以外製造例1と同様にしてポリマーを製造した。
【実施例】
【0056】
(製造例5)
第一構成単位部分(STA)の重量平均分子量と、第二構成単位部分(AA)の重量平均分子量とが、STA:AA=5000:12000となるように条件を変更したこと以外製造例1と同様にしてポリマーを製造した。
【実施例】
【0057】
(製造例6)
第一構成単位部分(STA)の重量平均分子量と、第二構成単位部分(AA)の重量平均分子量とが、STA:AA=10000:10000となるように条件を変更したこと以外製造例1と同様にしてポリマーを製造した。
【実施例】
【0058】
(製造例7)
ステアリルアクリレートの代わりにヘキサデシルアクリレート(HDA)を用い、第一構成単位部分(HDA)の重量平均分子量と、第二構成単位部分(AA)の重量平均分子量とが、HDA:AA=8000:8000となるように条件を変更したこと以外製造例1と同様にしてポリマーを製造した。
【実施例】
【0059】
(実施例6)
製造例1のポリマーの代わりに、製造例4および5のポリマーを用いたこと以外は実施例1と同様に、室温で2時間のコーティング条件で細胞培養支持体を作製した。得られた細胞培養支持体の表面状態を評価するために、室温でPBSを100μL滴下して、液滴の状態を観察した。併せて、DMSOのみで処理し、PBSでリンスしたディッシュ(Non coat)についても同様にPBSを滴下して表面状態を評価した。結果を図9に示す。
【実施例】
【0060】
ポリマーが付着した細胞培養支持体は、Non coatのディッシュに比べて表面張力が低下していることが分かる。
【実施例】
【0061】
(実施例7)
実施例1及び実施例6で得られた細胞培養支持体を用いて、実施例2と同様にして細胞培養を行った。更に、第二温度を43℃または45℃とし、振とう時間を30分、60分または120分として、細胞培養支持体からの細胞シートの剥離性を評価した。結果を図10及び表1に示す。なお、図10は43℃で60分間振とうした後の状態を示す。また表1における評価は目視観察によって行い、評価基準は以下の通りであった。
評価基準
A:完全に剥離した。
B:部分的に剥離したが、不完全であった。
C:剥離しなかった。
【実施例】
【0062】
【表1】
JP2018102296A_000003t.gif
【実施例】
【0063】
図10及び表1から、第二構成単位部分の重量平均分子量が大きいほど良好な剥離性を示すことが分かる。
【実施例】
【0064】
(実施例8)
製造例1、6及び7で得られたポリマーを用い、実施例1と同様に、室温で2時間のコーティング条件で細胞培養支持体を得た。得られた細胞培養支持体を用いて、培養時間を5日間としたこと以外は実施例2と同様にして細胞培養した後、45℃で120分間浸透して細胞シートを細胞培養支持体から剥離した。剥離後の細胞シートをピペット操作により単一細胞になるように分散した。セルカウント後に96穴培養プレート(FALCON社製、#353072)に1×104cell/wellで播種し、同様の条件で細胞培養を3日間行った。その際24時間毎に、Cell Counting Kit-8(CCK-8;同仁化学社製)を用い、その取り扱い説明書に準じた方法でWST-8assayを行って生細胞数を評価した。実験スケジュールを図11Aに、WST-8assay結果を図11Bに示す。併せてポリマーをコートしていないNon Coatの細胞培養皿を用いたこと以外は同様にして得た培養細胞の結果を示す。
【実施例】
【0065】
図11Bから、剥離した細胞シートを構成した細胞は、良好な細胞増殖能を有しており、再度生着が可能であった。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7
(In Japanese)【図9】
8
(In Japanese)【図10】
9
(In Japanese)【図11A】
10
(In Japanese)【図11B】
11