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明細書 :信号処理システム、受信方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-174381 (P2018-174381A)
公開日 平成30年11月8日(2018.11.8)
発明の名称または考案の名称 信号処理システム、受信方法及びプログラム
国際特許分類 H04L  27/26        (2006.01)
H04J  13/16        (2011.01)
G01S  13/28        (2006.01)
FI H04L 27/26 420
H04J 13/16
G01S 13/28 210
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2017-069956 (P2017-069956)
出願日 平成29年3月31日(2017.3.31)
発明者または考案者 【氏名】香田 徹
【氏名】大橋 正良
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116573、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 幸司
【識別番号】100136180、【弁理士】、【氏名又は名称】羽立 章二
審査請求 未請求
テーマコード 5J070
Fターム 5J070AB07
5J070AH04
5J070AK04
5J070AK22
要約 【課題】 拡散符号を用いて変調する場合に、単純に伝搬路による位相歪みによる補償のみを行うよりも効率のよい無線通信を実現することが可能な信号処理システム等を提供する。
【解決手段】 送信装置23では、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する。受信装置25では、推定部35が、送信信号を受信して得られた受信信号において、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いた2次元位相変調に起因して生じた位相歪みを補償する。ここで、TD推定部37とFD推定部39は、それぞれ、2次元位相変調による位相歪みを補償してドップラーシフトfDと遅延時間tdの最尤推定値を得る。推定部35は、TD推定部37とFD推定部39による、一方での最尤推定値を他方が用いて交互に更新することにより、ドップラーシフトfD及び遅延時間tdを推定する。
【選択図】 図7
特許請求の範囲 【請求項1】
2次元位相変調を用いた信号処理システムであって、
送信部と、受信部を備え、
前記送信部は、
時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する送信信号生成手段と、
前記送信信号を送信する送信信号送信手段を備え、
前記受信部は、
前記送信信号を受信して受信信号を得る受信信号受信手段と、
前記受信信号における位相歪みを補償する補償手段を備え、
前記補償手段は、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償する、信号処理システム。
【請求項2】
前記送信部において、前記送信信号生成手段は、前記2次元位相変調により、データ多重化及び/又はチップ多重化を行い、
前記受信部において、前記補償手段は、前記データ多重化及び/又は前記チップ多重化による位相歪みを補償する、請求項1記載の信号処理システム。
【請求項3】
2次元位相変調を用いた信号処理システムであって、
送信部と、受信部を備え、
前記送信部は、
時間と周波数との対称性を満たす時間シフト及び周波数シフトを行うシフト演算子を用いて事前にオフセットを施し、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する送信信号生成手段と、
前記受信部に対して前記送信信号を送信する送信信号送信手段を備え、
前記受信部は、
伝搬路を経た前記送信信号を受信して受信信号を得る受信信号受信手段と、
前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記伝搬路における遅延時間td及びドップラーシフトfDを推定する推定手段を備え、
前記推定手段は、
前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記ドップラーシフトfDの最尤推定値を得るTD推定手段と、
前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記遅延時間tdの最尤推定値を得るFD推定手段を備え、
前記推定手段は、前記TD推定手段と前記FD推定手段による、一方での最尤推定値を他方が用いて交互に更新することにより、前記遅延時間td及び前記ドップラーシフトfDを推定する、信号処理システム。
【請求項4】
時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して生成された送信信号を受信する受信方法であって、
補償手段が、前記送信信号を受信して得られた受信信号において、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償する補償ステップを含む受信方法。
【請求項5】
時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して生成された送信信号を受信する受信装置において、コンピュータを、
前記送信信号を受信して得られた受信信号において、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償する補償手段として機能させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理システム、受信方法及びプログラムに関し、特に、受信部が、伝搬路に起因する位相歪みに加えて、送信部が行った2次元位相変調に起因する位相歪みをも補償する信号処理システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にあるように、発明者らは、連続時間に関して時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調について研究・開発してきた。
【0003】
特許文献2には、スペクトル拡散された探知電波を用いて物体を探知する周波数拡散型レーダ装置が記載されている。
【0004】
また、無線通信などの技術分野において、時間領域(Time Domain:TD)及び周波数領域(Frequency Domain:FD)で均等分割して、無重畳(non-overlapping)多重化(Multiple Access:多重接続)(FDMA、TDMA)することが行われている。例えばCDMA(Code Division Multiple Access)は、拡散符号(Spread Spectrum code:SS code)を利用する。また、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple)は、パルス波形の直交関係を重視したものである。CDMAは、第3世代移動通信システムで広く使用された。その後、OFDMが採用され、第4世代移動通信システムと呼ばれている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2016-189500号公報
【特許文献2】特許第5291267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信の技術分野では、一般に、OFDM等を前提に、厳密な直交性等を重視して議論がなされている。しかしながら、受信装置において、伝搬路(遅延時間及びドップラーシフト)に関する位相歪みが生じることは知られているものの、他の位相歪みが生じていることは、ほとんど知られていない。そのため、伝搬路による位相歪みは補償されているが、他の要因による位相歪みは補償されていない。OFDMは、現在は広く利用されているが、今後、より高い性能が求められれば、時間揺らぎや周波数揺らぎで直交性が崩れ、同期が難しくなるであろう。そのため、OFDM等を単純に拡張しても、圧倒的に性能が高い無線通信を実現することは困難であると予想される。
【0007】
また、特許文献2は、一般に(1次元)「圧縮レーダ」と呼ばれるものである。時間分解能を上げるために広帯域化し、遅れ時間推定精度は向上するが、ドップラーシフトに弱くなる。
【0008】
このように、無線通信やレーダ装置の性能を向上させるために時間拡散符号や周波数拡散符号を使おうとしても、性能向上には限界があるように漠然と感じられた。しかしながら、その問題を的確に把握することすら困難であり、ましてや、その問題の解決する糸口すらも見いだせていない状況であった。
【0009】
そこで、本発明は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて「2次元圧縮処理」を実現する場合に、単に伝搬路による位相歪みによる補償のみを行うよりも性能のよい無線通信を実現することが可能な信号処理システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の第1の観点は、2次元位相変調を用いた信号処理システムであって、送信部と、受信部を備え、前記送信部は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する送信信号生成手段と、前記送信信号を送信する送信信号送信手段を備え、前記受信部は、前記送信信号を受信して受信信号を得る受信信号受信手段と、前記受信信号における位相歪みを補償する補償手段を備え、前記補償手段は、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償するものである。
【0011】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の信号処理システムであって、前記送信部において、前記送信信号生成手段は、前記2次元位相変調により、データ多重化及び/又はチップ多重化を行い、前記受信部において、前記補償手段は、前記データ多重化及び/又は前記チップ多重化による位相歪みを補償するものである。
【0012】
本願発明の第3の観点は、2次元位相変調を用いた信号処理システムであって、送信部と、受信部を備え、前記送信部は、時間と周波数との対称性を満たす時間シフト及び周波数シフトを行うシフト演算子を用いて事前にオフセットを施し、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する送信信号生成手段と、前記受信部に対して前記送信信号を送信する送信信号送信手段を備え、前記受信部は、伝搬路を経た前記送信信号を受信して受信信号を得る受信信号受信手段と、前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記伝搬路における遅延時間td及びドップラーシフトfDを推定する推定手段を備え、前記推定手段は、前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記ドップラーシフトfDの最尤推定値を得るTD推定手段と、前記2次元位相変調による位相歪みを補償して前記遅延時間tdの最尤推定値を得るFD推定手段を備え、前記推定手段は、前記TD推定手段と前記FD推定手段による、一方での最尤推定値を他方が用いて交互に更新することにより、前記遅延時間td及び前記ドップラーシフトfDを推定するものである。
【0013】
本願発明の第4の観点は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して生成された送信信号を受信する受信方法であって、補償手段が、前記送信信号を受信して得られた受信信号において、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償する補償ステップを含むものである。
【0014】
本願発明の第5の観点は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して生成された送信信号を受信する受信装置において、コンピュータを、前記送信信号を受信して得られた受信信号において、前記時間拡散符号及び前記周波数拡散符号を用いた前記2次元位相変調による位相歪みを補償する補償手段として機能させるためのプログラムである。
【0015】
なお、本願発明を、第5の観点のプログラムを定常的に記憶するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
拡散符号を導入すれば多重化等を容易に実現することができる。しかしながら、発明者らは、連続時間の結果を離散時間型に改めて、拡散符号の導入に伴い位相歪みが発生するという欠点があること、さらに、これは非可換演算子の群演算によるものであって受信装置にまで伝搬するため、受信装置において正確な補償が必要であることを見出した。
【0017】
従来、特に無線通信技術において、伝搬路による位相歪みは知られているものの、それ以外に起因する位相歪みは、ほとんど知られていない。また、従来は、このような位相歪みの一部が「-1のべき乗の掛け算」として現れ、絶対値をとることにより「1の掛け算」となり、処理に影響はないために、この位相歪みが補償されなかったと考えられる。
【0018】
今後、性能の向上を図るためには、伝搬路に起因する位相歪み以外の位相歪みにも着目する必要が生じている。しかしながら、従来、その補償の必要性がないために、その位相歪みの存在も補償の必要性も認識されておらず、突如、原因不明の性能向上の制約が具現化し、混乱が生じている。
【0019】
本願発明の各観点によれば、受信部において、拡散符号を用いた2次元位相変調により生じる位相歪みを補償することにより、例えば、無線通信分野では更に厳密な同期を実現したり、レーダの技術分野では対象物に送信信号を照射して対象物より受信信号を得て高い精度で位置推定したりするように、高い性能の信号処理を実現できる。特に、本願発明の第2の観点にあるように、拡散符号によるデータ多重化及び/又はチップ多重化による位相歪みを補償して、高い性能の信号処理を実現することができる。これは、歴史的に見れば、ニュートン力学の限界を量子力学で解明し、さらに発展させたのと同様の状況である。
【0020】
さらに、本願発明の第3の観点によれば、OFDM等の単純な拡張では同期が困難な場合でも、位相歪みを適切に補償することにより同期を実現できる。さらに、時間と周波数との対称性を利用して受信装置が交互更新を行って、例えばフィルタバンクを利用して実現するように、容易に同期を実現できる。例えば、伝搬路の未知パラメータ(遅延時間及びドップラーシフト)の推定を行い、推定終了段階でデータの復号が実現される、同期機能と復号機能を兼備した受信部を有する無線通信を実現することができる。
【0021】
本願発明は、2次元拡散符号の新たな活用法を見出した点がユニークである。すなわち、1)多重化による位相歪みの発生を利用した情報埋め込み法と、2)その埋め込まれた多種信号の位相歪み補償によるパラメタ推定法を見出した。これにより、他の情報を必要なく(すなわち、無情報で)td、fDを推定可能とした(incoherent communicationを可能にした)。
【0022】
レーダ問題の遅延時間及びドップラーシフトの未知パラメタの推定問題は、2次元パラメタ空間の何処に存在するかの特定に帰着される。例えば、図1(c)の4×4の時間幅T、帯域幅Fのデータを小分割した、4×4のチップ時間幅Tc=T/N、チップ帯域幅Fc=F/N'のチップレベルの小矩形領域の2次元アドレスを指定することである。まず、2次元アドレスを付した、各矩形領域に2次元位相変調したチップ波形を割り当て、これらを無重畳に2次元拡散符号で一次結合した、広帯域波形(シグネチャと呼ぶ)をレーダ発射信号とする。さらに、例えばGaussian pulseを利用することにより、分離して演算を行うことができる。
【0023】
本願発明は、拡散符号によるデータ多重化及び/又はチップ多重化による位相歪みがアドレス固有であることに着目した。これは、周知の拡散符号の役割とは全く異なる。
【0024】
また、通常、時間領域(TD)に限定して議論されている。しかしながら、time-frequency symmetrical(TFS)が満たされるように、周波数領域(FD)でも対称的に取り扱い、TFSからの自然な帰結としてTDの議論をFDにまで拡張して平等に議論する。本願発明では、式展開及び図2~図5においてTDとFDで同時並行で議論している。この意味で、関数も装置も時間、周波数の変数関数がまさしくtwinの形で現れ、その実現例のフィルタバンクは、ツインフィルタバンクとなる。
【0025】
さらに、通常n行n'列の2次元アドレスの指定には、NN'のオーダの手間が必要であるように見えるが、本願発明によるシグネチャ波形設計法は、N+N'のオーダの手間に削減している。行特定用のTDテンプレート波形の拡散符号による一次結合(無重畳和)が式(23)のTDシグネチャ(その周波数双対:列特定用のFDテンプレート波形の拡散符号による一次結合(無重畳和)が式(25)のFDシグネチャ)であり、両者は互いにフーリエ変換の関係にある。TD、FDの各々でN、N'種の行、列特定(具体的にはTDでドップラーシフト推定、FDで遅延時間推定)のためのパタンマッチングを行い、両者間でパラメタ推定値の情報を交換することにより、高効率・高精度の推定を可能とする。
【0026】
なお、提案法の相関器(TDのambiguity関数型の相互相関、式(50)(その周波数双対:FDの相互相関、式(51))によるパタンマッチングは、統計学のパラメタ推定論でのN種信号検出用のマッチドフィルタ型の尤度関数と同一である。本願発明では、FDでもパタンマッチングを行うので、FDでのN'種信号検出用のマッチドフィルタ型の尤度関数を与えたことになる。2個の未知数問題を2個の一未知変数問題に帰着させた、分割統治法は、von Neumannの交互射影定理(一方の尤度関数の最尤値の最大値を与えるパラメタ推定値を他方の尤度関数のパラメタ推定値に更新する)を援用することで、高効率にパラメタ推定精度を向上させている。
【0027】
受信部では、無重畳結合で発生した位相歪みを補償した相関器を設計してパラメタ推定できる。拡散符号長を長くすればパラメタ推定精度は向上するが、必要な周波数帯域幅は拡大し、観測時間も長くなる。これはパラメタ推定精度とのトレードオフの関係である。
【0028】
本願発明は、携帯電話の利用者の場所と移動速度を常に把握する必要がある無線通信の同期法に適用可能である。また、例えば送信装置が測定対象に信号を照射し、受信信号が測定対象からの信号を受信することにより、レーダ装置を実現することができる。このとき、送信部と受信部は、一つの装置で実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)TD、(b)FD、(c)ガボール分割の多重化と、(d)対称的時間-周波数シフト演算子Ττ,νx(t)を示す。
【図2】TD,FDのSS符号を利用したTDシグネチャv[k]及びFDシグネチャV[l]を生成するSFBを示す。
【図3】PP'個の情報データを埋め込んだ或いはPP'箇所の広範囲に存在し得る(td,fD)を探索するための(a)TD送信信号,(b)FD送信信号を生成するSFBを示す。
【図4】PP'個の情報データの復号或いはPP'箇所の(td,fD)の測距のための受信器で(a)TD 相関器アレイ、(b)FD 相関器アレイからなるAFBを示す。
【図5】特定の場所p=(p,p')における(a)TD,(c)FD相関器アレイのAFBと(b)ノイマンのAPTに基づくパラメタの交互推定を行う情報交換及びパラメタ更新手続き、(d) ノイマンの交互更新射影定理の様子を示す。
【図6】本願発明の実施の形態に係る信号処理システムの構成及び動作の一例を示す。
【図7】本願発明の実施の形態に係る信号処理システムの構成及び動作の他の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
まず、本願発明の理論的背景について説明する。図1は、(a)時間領域(TD)、(b)周波数領域(FD)、(c)ガボール分割(Gabor division、TD-FD)の3種の多重化を示す。図1(d)は、非可換特性Ττ,0Τ0,ν(t)=e-jπτνΤo,νΤτ,0を持つ対称的時間-周波数シフト演算子Ττ,νx(t)を示す。
【実施例】
【0032】
例えばレーダ問題では、遅延時間及びドップラーシフトが未知で、これらの正確な測距が必要である。TD及びFDの拡散符号を導入し、T及びFをN及びN'均等分割したチップ単位のTc=T/N及びFc=F/N’のマイクロセルを導入することにより、遅延時間及びドップラーシフトは、チップ単位Tc及びFcの精度で求めることができる。このため、レーダの発射信号は、広帯域信号v(t)及びV(f)になる。
【実施例】
【0033】
なお、同期には、単純には手間NN'が必要になるように見える。しかしながら、同期が容易なように、TD、FD信号v(t)、V(f)には、それぞれ、その手がかりとなるテンプレート信号がN'及びN個埋め込まれている。そのため、手間N+N'に削減している。
【実施例】
【0034】
N、N'個のTD、FDの相関器アレイが、受信信号とテンプレートとのパタンマッチングを行う。各相関器は、パラメタ空間Θτ,νを直和分解したパラメタ部分空間で、それぞれのN、N'個の部分空間に割り当てられるテンプレートとのテンプレートマッチングを行う。すなわち、パラメタ空間をアドレス(n行目(1≦n≦N)、n'列目(1≦n'≦N'))で指定された矩形領域に均等分割し、アドレスを特徴付けるために、n行目用のテンプレート(その周波数双対:n'列目用のテンプレート)を設計する。さらに、これらのテンプレートと受信信号(その周波数双対:そのフーリエ変換)とのテンプレートマッチングを行う。その際、各テンプレート信号間の独立性の確保のため拡散符号が導入されている。これは、統計学のパラメタ推定論でのN種信号検出論(resp.N'種信号検出論)の尤度関数が、受信装置の相関器で実現される。本願発明は、パラメタ推定問題に2次元位相変調した信号を採用しており、従来の拡散符号の新たな活用法を与えている。
【実施例】
【0035】
拡散符号の導入には、多重化等の長所がある。最大の欠点は、符号による位相歪みが発生し、これに対する位相歪み補償が必要なことである。すなわち、td及びfDの位相歪みexp(jπtdD)に引き続いて起こる多重化(データレベル、チップレベル)に伴う位相歪みexp(jπTF)、exp(±jπTcc)が生じる。受信側では、位相歪みに対する補償が必要になる。無線通信分野では、このような位相歪み補償は、しばしば無視されている。
【実施例】
【0036】
以下では、具体的に説明する。
【実施例】
【0037】
発明者は、これまで、連続時間に関して研究・発表を行ってきた(特許文献1参照)。式(1)により連続時間変数と離散時間変数を対応させて、連続時間の結果を離散時間型に改める。さらに、式(2)は、チップパルスの直交関係のためのものである。式(3)は、L-point twiddle factor(回転因子)である。以下では、TDとFDとの対称性を確認するため、両者を並行して議論する。
【実施例】
【0038】
【数1】
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【実施例】
【0039】
式(4)及び式(5)は、それぞれ、波形z(t)の遅延時間td、ドップラーシフトfDのエコー信号とそのフーリエ変換(FT)である。これらの間には、(td、fD)に関する対称性がない。
【実施例】
【0040】
少し工夫すると、式(6)を得ることができる。式(6)の第1式のフーリエ変換の括弧内の関数と第3式は、それぞれ、式(7)の、TD関数z(t)及びFD関数Z(f)に対する(td,fD)の対称的時間・周波数シフト演算式の定義を与え、式(8)を与える(図1(d)参照)。
【実施例】
【0041】
しばらくは、簡単のため、単一のペア(td,fD)を説明の対象とする。式(7)の指数関数の肩部の項-td/2、-fD/2は、無重畳重ね合わせ(non-overlapping superposition)法などで本質的な役割を果たす。まず、Τtd,fDz(t)、ΤffD,-tdZ(f)との間で(td,fD)の対称性が成立する(TD信号中のtd、fDは、FD信号中のfD、-tdと完全に対応する)。次に、2つの未知数(td,fD)の求解問題では、2個の関数z(t)、Z(f)を用意することは当然のことである。式(7)の指数関数の肩部から緩やかな関数z(t)、Z(f)に対しtd(resp.fD)を推定する場合、検出が容易なZ(f)(resp.z(t))を対象に並列処理して考察すべきこと等がわかる。
【実施例】
【0042】
【数2】
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【実施例】
【0043】
次に、式(9)を導入することにより、信号理論と量子力学を対応させる。
【実施例】
【0044】
【数3】
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【実施例】
【0045】
式(10)は、ヒルベルト空間Ηの自己随伴演算子Q、Pに対するHeisenberg’s Canonical Commutation Relation(CCR)である。ただし、h/(2π)は、プランク定数である。Stone-von Neumann theoremは、式(10)を満たす演算子Q、Pが式(11)のシュレーディンガー表示が唯一であることを証明した。この理論によれば、Baker-Cambell-Hausdorff formulaより、式(12)の演算子Q、Pに対するone parameterユニタリ演算子により式(13)のHeisenberg’s CCR のWeyl形式が得られる。また、式(14)のvon Neumannのtwo parameter 演算子により、式(15)のWeyl形式が得られる。
【実施例】
【0046】
【数4】
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【実施例】
【0047】
式(16)の量子力学と時間・周波数シフト演算子の対応付けは、対称的時間・周波数シフト演算子Ττ,νが、Neumann演算子S(a,b)と同一形式であることを意味する。さらに、式(15)の位相項は群演算の連鎖則を明示するため、式(17)のように2×2の行列式で表記する。これより、無歪条件τν∈Zは、式(18)のDiracの基本的量子条件の古典的極限:h/(2π)→0と対応する。ただし、2つの作用素の[P,Q]=PQ-QPは、Heisenberg’s bracketである。式(17)では、式(19)の重要な関係式を用いた。これは、(i)両演算子は非可換:Τtd,0Τ0,fD=e-j2πtdfDΤ0,fDΤtd,0であり位相項が生じること、(ii)両シフト量の加法性に伴い位相項が生じること等を意味する。特にレーダ関係で多用されるパルス列p(t)を発射信号とする場合、(td,fD)を有する伝搬路を経た受信信号の位相歪補償を行う相関関数が必要であることを強く示唆している。
【実施例】
【0048】
【数5】
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【実施例】
【0049】
高精度測距を可能とするために、式(20)の4レベルの階層構造の送信信号を設計する。
【実施例】
【0050】
【数6】
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【実施例】
【0051】
まず、長さLg(resp.LG)の因果的離散時間prototype filterの実現のため、g[k](resp. G[l])は、区間[-LgΔt/2,LgΔt/2] (resp. [-LGΔf/2,LGΔf/2])で打ち切られた時間(resp.帯域)制限のg(t)(resp.G(f))、さらにDΔt/2,D=Lg-1(resp.D'Δf/2,D'=LG-1)の遅延を受け、式(21)の正規化された関数で定義する。以下、離散時間TD、FD関数は、連続時間TD、FD関数に各々時間遅延D/2、周波数シフトD'/2を施した関数とする。
【実施例】
【0052】
【数7】
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【実施例】
【0053】
TDのシグネチャv(t;Χ)とそのFDのV(f;Χ)は、式(22)~式(25)で示される。それぞれ、TDテンプレートuTDs'(t;X)、FDテンプレートUFDs(f;X')が埋め込まれている。ただし、テンプレートのTD信号は、式(26)及び式(27)である。テンプレートのFD信号は、式(28)及び式(29)である。結局、式(30)~式(33)が成り立つ。
【実施例】
【0054】
【数8】
JP2018174381A_000010t.gif
【実施例】
【0055】
【数9】
JP2018174381A_000011t.gif
【実施例】
【0056】
【数10】
JP2018174381A_000012t.gif
【実施例】
【0057】
周期N,N'のXm,X'mを無限長m∈Z,m'∈Zに適用すると、式(34)のmodulated filter(MF)特性を用いて、上式は、式(35)となる。記号lcm[M,N']=M0N'=MN'0,lcm[M',N]=M'0N=M'N0を導入し、式(36)のM0N'、M'0N個のpolyphase componentを導入することにより、式(37)の各々polyphase filter(VaidyanathanのType 1 polyphase)が定義される。従って、図2(a)及び(b)の2次元の時間・周波数拡散符号変調されたシグネチャv[k]、V[l]のSFBが得られる。図2(a)及び(b)は、それぞれ、TDシグネチャv[k]及びFDシグネチャV[l]に対するTDとFDのSS符号を持つSFBを示す。図2(a)は、式(23)と(35)のTDシグネチャv[k]に対するTD,FDのSS符号Xm,X'm'とm'番目のTDテンプレートuTDm'[k](0≦m'≦N'-1)のSFDである。図2(b)は、式(25)と(35)のFDシグネチャV[l]に対するTD,FDのSS符号Xm,X'm'とm'番目のFDテンプレートUFDm[l](0≦m≦N-1)のSFBである。
【実施例】
【0058】
【数11】
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【実施例】
【0059】
情報信号を埋め込んだ送信信号(transmit signal)は、式(38)及び式(39)である。そのFTのFD送信信号は、式(40)及び式(41)である。式(42)は、図3(a)及び(b)の送信信号のSFBである。ただし、式(43)及び式(44)のデータ伝送のmodulated filter(MF)特性を用いると、それぞれ、polyphase filter(VaidyanathanのType 1 polyphase)は、式(45)が定義される。図3(a)は、式(39)と(42)によって定義されるTD送信信号s[k]に対するデータ{dp,p'P,P'p,p'=1のSFBである。図3(b)は、式(41)と(42)によって定義されるFD送信信号S[l]に対するデータ{dp,p'P,P'p,p'=1のSFBである。なお、通常のSFBでは、シグネチャ生成過程がないので図2(a)及び(b)は不要である。図3(a)及び(b)で、N=N'=1のとき通常のSFBに対応する。
【実施例】
【0060】
【数12】
JP2018174381A_000014t.gif
【実施例】
【0061】
【数13】
JP2018174381A_000015t.gif
【実施例】
【0062】
d≒kdΔt,fD≒lDΔfを有するチャネルを介してheterodyne受信器の出力側でのbaseband複素信号r(t)とそのFTであるR(f)=F[r(t)](f)は、それぞれ、式(46)~(49)である。ただし、η(t)、E(f)は干渉成分とそのFTであり、ξ(t)、Ξ(f)は外部雑音とそのFTであり、α、φはチャネルの減衰、位相特性である。
【実施例】
【0063】
【数14】
JP2018174381A_000016t.gif
【実施例】
【0064】
制御パラメタ、推定パラメタ(μ,^td)≒(lμΔf,^kdΔt)を有するtype-3のTD相関器(その周波数双対:(σ;^fD)≒(kσΔt,^lDΔf)を有するtype-4のFD相関器)と各々の推定テンプレートを与える。受信側では、incoherent通信を想定し、TD、FDの拡散符号はY={Yn},Y'={Y'n'}とし、チップアドレス,データアドレスは各々(n,n'),q=(q,q')とする。type-3、type-4の相関関数は、それぞれ、式(50)及び式(51)である。ただし、パルス波形の偶関数性:g[k]=g[D-k],G[l]=G[D'-l]を用いた。
【実施例】
【0065】
【数15】
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【実施例】
【0066】
modulated filter係数(式(52))のAFBのfilter特性とP'0MN,P0M'N'個のpolyphase components(式(53))を用いると、それぞれ、N',N個のpolyphase filter(式(54))(VaidyanathanのType 2 polyphase)が定義され、図4(a)及び(b)のAFBが得られる。図4(a)は、{dp,p'Pp=1,1≦p'≦P'の受信に対するTD相関器アレイを持つAFBを示す。図4(b)は、{dp,p'P'p'=1,1≦p≦Pの受信に対するFD相関器アレイを持つAFBを示す。N=N'=1,N0=N'0=1のとき通常のAFBである。
【実施例】
【0067】
図5は、(a)TD、(c)FD相関器アレイのAnalysis Filter Bankと(b)ノイマンのAPTを示す。図5(a)(c)は、P×P'個の情報データ{d→pP,P'p,p'=1p=(p,p')単位で各々N,N'個からなる最終出力側の相関器アレイ中で特定p-Band、p'-Durationの単一データの場合を取り出し最尤法のパラメタ推定法のための複数個のアレイ型相関器だけを抽出している。可変フィルタを使用することにより、同期をとることができる。
【実施例】
【0068】
【数16】
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【実施例】
【0069】
すなわち、図5(a)(c)のTD,FD型AFBは、図5(b)のように、td, fDによる歪を含む受信信号から無情報で信号検出するために、arg maxの演算で得られた、各々最尤推定値l*μ,k*σを他方、FD,TDの^lD,^kdに採用し、図5(d)のようなvon Neumann's APTの交互更新を行う。なお、図4は、単一データの場合、図5(a)(c)のように各々中心部ブロックの相関器アレイだけでよい。結局、PP'個の情報データ検出用に、TD,FDでは各々N,N'のアレイ型相関器を並列にP',P個配置し、時間幅T、帯域幅Fのデータの無重畳伝送に要するPT×P'Fの時間・周波数領域に均等に存在するtd,fDの無情報高精度・高速検出と情報データ高速検出を同時並行的に実行する。
【実施例】
【0070】
【数17】
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【実施例】
【0071】
なお、従来のOFDM等はmulti-carrier法であるが、td、fD-freeの環境で完全同期の場合、同期ズレが起こることなく通信が正常動作する。この根拠は、時間幅T、帯域幅Fの信号の伝送の場合、可換条件(無歪条件):TF∈Zを満たす設計法にある。しかし、式(57)はT,FのずれεT,εF<<1による位相歪を示す。式(57)より相関器実部の劇的減少に直結するので揺らぎは深刻な事態を招く。ただし、復調器で多用される“絶対値操作”がこれを覆い隠しているにすぎない。【0072】
【数18】
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【実施例】
【0073】
拡散符号が独立であるため相互相関<ψη,s',→p[k],uTDs',→p[k;Y]>d,kが相対的に小さいと仮定して近似し、受信器への要素Aeの入力CE ψw[k;X]と、(s',p)番目のTDテンプレートにマッチするフィルタのインパルス応答との相互相関を式(58)と定義する。ここで、d→p=1であり、Xに代えて符号Yである。
【実施例】
【0074】
離散時間TD関数の空間l2(Z)における内積を使うと、式(59)を得る。ただし、θxy(・,・)、ΘXY(・,・)は、式(60)で定義されるambiguity functionである。ambiguity functionは、量子力学におけるWigner functionと密接な関係がある。また、二つの時間・周波数シフトされた関数間の内積を式(61)~(63)と簡潔に表現する。
【実施例】
【0075】
式(59)より、位相項は、五つの位相歪要素:1)通信路歪+送信信号のsymbol levelの多重化、2)送信信号のchip levelの多重化、3) 受信器のsymbol levelの多重化による通信路歪推定、4)受信信号のchip levelの多重化、5)ambiguity function型相関器の位相、からなる。なお、従来、データレベルやチップレベルで歪みが出ることを意識していないため、データレベルのズレやチップレベルのズレを考慮せずに^kd-kdとlμ-lDを小さくしようとしてしまっていた。
【実施例】
【0076】
残念ながら、一般的には、θgg(τ,ν)及びΘGG(ν,-τ)は、多くのサイドローブを持つ。しかしながら、Gaussian pulse g(t)は、推定問題に抜本的な解決策を与える。なぜなら、Gaussian pulseは、式(64)に示すように分離可能で指数的に減衰するambiguity functionを持つからである。
【実施例】
【0077】
【数19】
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【実施例】
【0078】
N、N'>>1の大きな値の相関器出力は、ambiguity function θdggの最初と2番目の引数が0に近いこと(すなわち、p=q)を意味する。よって、式(59)のp≠qのすべての項は、無視することができる。
【実施例】
【0079】
ν0[lμ]=lμ-lD、τ0[^kd]=^kd-kdを導入すると、Twiddle factor W=e-j2π/Lの3つの指数の和(式(65))を与えられる。拡散符号の3つの総和を計算する。もし受信機がアドレスp=qであり、n=mであり、Y=X,Y'=X'ならば、式(66)が成り立つ。総和は、式(67)のように、Dirichlet fucntion formで表現される。
【実施例】
【0080】
【数20】
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【実施例】
【0081】
拡散符号が独立であるため相互相関<Es,,→p[l],UFDs,→p[l;X]>d,lが相対的に小さいと仮定して近似し、受信器への要素AeのFD入力CE ΨW[l;X]と、(s,p)番目のFDテンプレートにマッチするフィルタのFDインパルス応答との相互相関を式(68)と定義する。ここで、d→p=1であり、X'に代えて符号Y'である。これは、式(69)と書き替えることができる。
【実施例】
【0082】
同様に、N、N'>>1の大きな値の相関器出力は、ambiguity function ΘdGGの最初と2番目の引数が0に近いこと(すなわち、p=q)を意味する。よって、式(69)のp≠qのすべての項は、無視することができる。
【実施例】
【0083】
ν0[lμ]=lμ-lD、τ0[^kd]=^kd-kdを導入すると、Twiddle factor W=e-j2π/Lの3つの指数の和(式(70))を与えられる。拡散符号の3つの総和を計算する。もし受信機がアドレスp=qであり、n=mであり、Y=X,Y'=X'ならば、式(71)が成り立つ。
【実施例】
【0084】
【数21】
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【実施例】
【0085】
2つの相関器は、tdとfD(又はkd、lD∈Z)に関して完全に対称である。c→p,s'TD,d(lμ;kd)とC→p,sTD,d(kσ;^lD)のペアのTD SS符号とFD符号を交換することにより、式(72)及び式(73)の他の相関器のペアを得る。
【実施例】
【0086】
【数22】
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【実施例】
【0087】
Aeと(td,fD)推定は分離できる。そのため、例えば、式(74)で定義される2組の相関器(いわゆる相補ペア)に対し、式(75)を利用して、整数のペア(^kd,s,^lD,s)を、sが偶数のとき^lD,s=l*μとし、sが奇数のとき^kd,s=k*σと更新する。初期値(^kd,0,^lD,0)は任意に選ぶことができる。(^kd,0,^lD,0)=(0,0)でもよい。l*μ及びk*σを、それぞれ、^fD,s+1及び^td,s+1の候補として選択する。もし|^td,s+1-^td,s|<TC/2及び|^fD,s+1-^fD,s|<FC/2ならば、推定手続きを終了する。
【実施例】
【0088】
【数23】
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【実施例】
【0089】
4種類の相関器出力の計算にかかわる2d-SS codeと対応する級数和はDFT,IDFTの形式で整理できるので、各々をF、F-1と略記する。出力値は、3重級数和で整理できる。ただし、○はrunning variableのn、n'を意味する。
【実施例】
【0090】
【数24】
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【実施例】
【0091】
両相関値実部の最大をとる制御パラメタとその相関器番号を式(77)、(78)で定め、互いのr-stepの固定パラメタ^td,r、^fD,rを交互更新する。これは、von Neumann's APT(Alternating Projection Theorem)の適用対象である、(μ*,s*)がMaximum Likelihood(ML)の尤度関数によるM種TD信号検出法でM=Nに相当し、n*が信号の種類検出番号と共にμ*がfDの最適推定値である。すなわち、argmax演算で最大値を与えるTD関数の可変パラメタμ*がfDのML estimateになり、FD関数のfD推定値となり、その双対FD関数の可変パラメタσ*がtdのML estimateになり、TD関数のtd推定値となる。お互いに双対相手の推定値を与える。argmaxの操作はTD関数ではfDの最適推定を、FD関数ではtdの最適推定を行う。パラメタ推定は斜になっている。これは式(82)に現れている。小文字の相関関数は時間領域、大文字のそれは周波数領域での積分(内積)を実行する。一方、(σ*,s*)がMLの尤度関数(その変数は周波数変数)によるM種FD信号検出法でM=N'に相当し、s*が信号の種類検出番号と共にσ*がtdの最適推定値である。
【実施例】
【0092】
【数25】
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【実施例】
【0093】
式(77)のoriginal pairは高SNRで、式(78)のcomplementary pairは低SNRで動作し、前者は収束までのstep数が多く、後者は少ない。SNRとstep数の間のトレードオフ関係が数値シミュレーションで確認されている。SS codeによるパルス列を用いた結果は、式(79)及び(80)である。ただし、Δt、Δfは、それぞれ、ガウス波z(t)=e-πt^2/st^2、Z(f)=e-π(fs_t)^2の標本化時間間隔、周波数間隔である。ガウス波の分散は、各々st2k2g[k]、sf2l2G[l]、(st・sf=1/2π)である。d'2はSS変調によるスペクトル振幅N-1、N'-1を考慮すると、d'2=d22、d'f2=N'22より、右辺は各々1/(4π2d'2c2)、1/(df'2c2)となる。ただし、NTc=T,N'Fc=Fである。
【実施例】
【0094】
AFBの形式で表現するために、両相関器の計算は、受信信号r(t)とテンプレートuTDn′(t;Y)(その周波数双対:R(f)とテンプレートUFDn(f;Y'))との内積(template matching)の形で整理した。
【実施例】
【0095】
【数26】
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【実施例】
【0096】
その他注意事項として、まず、type-1,type-2テンプレートについて説明する。TD、FD符号の役割を入れ替えると、別のテンプレート分解も可能である。
【実施例】
【0097】
TDのsignature信号v(t;X)(式(81))と、そのFD:V(f;X)(X=(X;X')(式(82))は、各々、TDテンプレートunFD(t;X')、FDテンプレートUn'TD(f;X)で、式(83)及び(84)と分解される。すなわち、signature v(t)(resp.V (f))を発射信号とすると、(td,fD)の伝搬路を経て受信信号はTt_d,f_Dv(t;X)(resp.Tff_D,-t_dV(f;X))と雑音及び干渉の和となる。ただし、各テンプレートのTD,FD信号は、式(85)及び(86)である。
【実施例】
【0098】
【数27】
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【実施例】
【0099】
提案法は、信号のTD-FD表現(Gabor展開)が未知パラメタ空間(τ,ν)の分割に応用可能であることを示した。M種の信号sj(t),1≦j≦Mは、互いに独立であることが望ましいので拡散符号変調は重要である。高精度パラメタ推定を行うために、2次元拡散符号によるN×N'分割は、TD、FDを各々、N'分割してパラメタ探索空間をN、N'分割しているので上記のM種の仮説作成に対応する。
【実施例】
【0100】
パラメタ推定計算の手間O(NN')が、O(N+N')に削減された。すなわち、TD、FDで各々N、N'個の仮説を作成したことになった。パラメタ探索空間分割の結果、新たな位相歪が発生するので、それらの位相歪補償付きのN、N'個の相関器が必要となる。すなわち、パラメタ推定の高精度化と種々の位相歪の増大とはトレードオフの関係にある。これらはBinary incoherent channelやIncoherent M-ary Channel を想定しているので必要なコストである。また、粗いパラメタ推定値では、尤度比は所望の尤度比レベルに達しないので、低いFalse Alarm確率Q0や検出確率Qdをもたらすことが予想される。なお、上記のHelstromの各種の統計的手法は主にTDで議論されていたので、TFS(Time-Frequency Symmetry)に注意してFDにおける尤度関数や尤度比を定義する必要がある。
【実施例】
【0101】
以上の理論的背景をもとに、図6及び図7を参照して、本願発明の実施の形態に係る信号処理システムの構成及び動作の例を説明する。
【実施例】
【0102】
図6は、本願発明の実施の形態に係る信号処理システム1の(a)構成及び(b)動作の一例を示す。
【実施例】
【0103】
図6(a)を参照して、信号処理システム1は、送信装置3と、受信装置5を備える。送信装置3は、拡散符号記憶部7と、送信信号生成部9と、送信信号送信部11を備える。受信装置7は、受信信号受信部13と、補償部15と、拡散符号記憶部16を備える。送信装置3の拡散符号記憶部7は拡散符号を記憶し、受信装置5の拡散符号記憶部16は、対応する拡散符号を記憶する。
【実施例】
【0104】
図6(b)を参照して、図6(a)の信号処理システム1の動作の一例を説明する。拡散符号記憶部7は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を記憶する。送信信号生成部9は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する(ステップST1)(式(43)、式(45)参照)。ここで、式(43)や式(45)によれば、(-1)qq'NN'を含む。この値は、q、q'、N、N'がすべて奇数のときに-1となり、他の場合は1となる。そのため、q、q'、N、N'がすべて奇数のときに位相歪みが生じる。これが2次元位相変調による位相歪みとなる。なお、この位相歪みは、連続時間変数から離散時間変数としたことにより明確になった。送信信号送信部11は、受信装置5に対して送信信号を送信する(ステップST2)。受信信号受信部13は、送信信号を受信して受信信号を得る(ステップST3)。補償部15は、受信信号における、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いた2次元位相変調による位相歪みを補償する(ステップST4)。これらの処理は、通常のアンテナ等の通信装置やコンピュータを使用して実現可能なものである。
【実施例】
【0105】
ステップST1において、送信信号生成部9は、2次元位相変調により、データ多重化及び/又はチップ多重化を行ってもよい。このとき、ステップST4において、補償部15は、データ多重化及び/又はチップ多重化による位相歪みを補償する。
【実施例】
【0106】
図7は、本願発明の実施の形態に係る信号処理システム21の(a)構成及び(b)動作の例を示す。
【実施例】
【0107】
図7(a)を参照して、信号処理システム21は、送信装置23と、受信装置25を備える。送信装置23は、拡散符号記憶部27と、送信信号生成部29と、送信信号送信部31を備える。受信装置27は、受信信号受信部33と、推定部35と、拡散符号記憶部36を備える。推定部35は、TD推定部37と、FD推定部39を備える。送信装置23の拡散符号記憶部27は拡散符号を記憶し、受信装置25の拡散符号記憶部36は、対応する拡散符号を記憶する。
【実施例】
【0108】
図7(b)を参照して、図7(a)の信号処理システム21の動作の一例を説明する。拡散符号記憶部27は、時間拡散符号及び周波数拡散符号を記憶する。送信信号生成部29は、時間と周波数との対称性を満たす時間シフト及び周波数シフトを行うシフト演算子を用いて、時間拡散符号及び周波数拡散符号を用いて2次元位相変調して送信信号を生成する(ステップSTE1)。送信信号送信部31は、受信装置25に対して送信信号を送信する(ステップSTE2)。受信信号受信部33は、伝搬路を経た送信信号を受信して受信信号を得る(ステップSTE3)。推定部35は、例えば式(56)並びに式(82)及び(83)について説明したように、2次元位相変調による位相歪みを補償して伝搬路における遅延時間td及びドップラーシフトfDを推定する(ステップSTE4)。これらの処理は、通常のアンテナ等の通信装置やコンピュータを使用して実現可能なものである。また、TD推定部37やFD推定部39などは、専用のハードウエアを使用してもよい。
【実施例】
【0109】
すなわち、TD推定部37は、2次元位相変調による位相歪みを補償してドップラーシフトfDの最尤推定値を得る。FD推定部39は、2次元位相変調による位相歪みを補償して遅延時間tdの最尤推定値を得る。ステップSTE4において、推定部35は、TD推定部37とFD推定部39による、一方での最尤推定値を他方が用いて交互に更新することにより、遅延時間td及びドップラーシフトfDを推定する(式(56)など参照)。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本願発明は、レーダや無線通信などの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1,21 信号処理システム、3,23 送信装置、5,25 受信装置、7,27 拡散符号記憶部、9,29 送信信号生成部、11,31 送信信号送信部、13,33 受信信号受信部、15 補償部、35 推定部、37 TD推定部、39 FD推定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6