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明細書 :光検出器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-134030 (P2019-134030A)
公開日 令和元年8月8日(2019.8.8)
発明の名称または考案の名称 光検出器
国際特許分類 H01L  31/10        (2006.01)
H01L  51/42        (2006.01)
FI H01L 31/10 E
H01L 31/08 T
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2018-013898 (P2018-013898)
出願日 平成30年1月30日(2018.1.30)
発明者または考案者 【氏名】フィリップ チョウ
【氏名】松久 直司
【氏名】染谷 隆夫
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 5F849
Fターム 5F849AA15
5F849AB11
5F849BA01
5F849BA03
5F849BB08
5F849CB05
5F849DA11
5F849EA13
5F849FA04
5F849FA05
5F849FA11
5F849GA02
5F849XA02
5F849XA13
要約 【課題】スイッチング可能で、特に微弱な光の検出性能に優れた光検出器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる光検出器10は、電子供与体と電子受容体とが混合するバルクヘテロ接合の有機半導体層1と、前記有機半導体層1の少なくとも一部を第1の方向に挟むソース電極2及びドレイン電極3と、前記第1の方向と交差する第2の方向に電圧を印加できる第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
電子供与体と電子受容体とが混合するバルクヘテロ接合の有機半導体層と、
前記有機半導体層の少なくとも一部を第1の方向に挟むソース電極及びドレイン電極と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に前記有機半導体層を挟み、前記第2の方向に電圧を印加できる第1ゲート電極及び第2ゲート電極と、を備える、光検出器。
【請求項2】
前記第1ゲート電極と前記有機半導体層との間及び前記第2ゲート電極と前記有機半導体層との間に絶縁層を有する、請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記前記有機半導体層の第2の方向における中心位置より第1ゲート電極又は第2ゲート電極側に位置する、請求項1又は2に記載の光検出器。
【請求項4】
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間に異なる極性の電圧を印加できる電圧印加手段をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出器。
【請求項5】
前記電圧印加手段により前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間に電圧を印加した際に、
1mW/cm以下の弱い光強度の光を検出する、請求項4に記載の光検出器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体でつくるフレキシブルエレクトロニクスは、素材の軟らかさから、人体の表面や体内への装着により、細胞や組織から直接生体情報を得る手段として、近年注目を集めている。
【0003】
光検出器もその応用の一つとして注目されている。例えば、赤外線を血管に照射し、その反射光を検出することで、脈拍、脈波、血中酸素飽和度、血流、血圧等の様々な生体情報を非侵襲で計測できる。情報の正確性を高めるためには、面での計測が求められ、人体等の複雑な形状に追従できるフレキシブルな光検出器が求められている。
【0004】
光検出器のフレキシブル性を実現する手段として、有機半導体を利用したフォトダイオードやフォトトランジスタが知られている。例えば、特許文献1には複数のフォトダイオードとそれぞれに接続されたトランジスタとをマトリックス配置した光電変換装置が記載されている。また例えば、特許文献2には、フォトトランジスタを利用した撮像素子が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2011-159782号公報
【特許文献2】特開2013-258223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フォトダイオードを利用した光検出器は、単独でスイッチングすることができない。スイッチングするためには、特許文献1のようにそれぞれをトランジスタと接続する必要がある。それぞれのフォトダイオードにトランジスタを接続すると製造工程が複雑化する。またトランジスタもフレキシブル性が求められる。
【0007】
一方で、フォトトランジスタは単独でスイッチングが可能である。しかしながら、応答速度が遅く、十分な利得を得ることができない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、スイッチング可能で、特に微弱な光の検出性能に優れた光検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
【0010】
(1)第1の態様にかかる光検出器は、電子供与体と電子受容体とが混合するバルクヘテロ接合の有機半導体層と、前記有機半導体層の少なくとも一部を第1の方向に挟むソース電極及びドレイン電極と、前記第1の方向と交差する第2の方向に前記有機半導体層を挟み、前記第2の方向に電圧を印加できる第1ゲート電極及び第2ゲート電極と、を備える。
【0011】
(2)上記態様にかかる光検出器は、前記第1ゲート電極と前記有機半導体層との間及び前記第2ゲートと前記有機半導体層との間に絶縁層を有してもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかる光検出器において前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記前記有機半導体層の前記第2の方向における中心位置より前記第1ゲート電極又は前記第2ゲート電極側に位置してもよい。
【0013】
(4)上記態様にかかる光検出器は、前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間に異なる極性の電圧を印加できる電圧印加手段をさらに備えてもよい。
【0014】
(5)上記態様にかかる光検出器において、前記電圧印加手段により前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間に電圧を印加した際に、1mW/cm以下の弱い光強度の光を検出してもよい。
【0015】
(6)上記態様にかかる光検出器において、前記第1絶縁層及び第2絶縁層の厚みは、30nm以上200nm以下であってもよい。
【0016】
(7)上記態様にかかる光検出器において、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の厚みは、10nm以上100nm以下であってもよい。
【0017】
(8)上記態様にかかる光検出器において、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極の厚みは、20nm以上200nm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング可能で、特に微弱な光の検出性能に優れた光検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る光検出器の断面模式図である。
【図2】本実施形態にかかる光検出器の有機半導体層内におけるフォトキャリアの挙動を模式的に示した図である。
【図3】実施例1にかかる光検出器の第2ゲート電極に印加する電圧を変えた際における明電流と暗電流との電流量の差の変化を示したグラフである。
【図4】実施例1にかかる光検出器の第2ゲート電極に印加する電圧を変えた際における光検出器の感度及び利得の変化を示すグラフである。
【図5】実施例1にかかる光検出器において、照射時と非照射時においてソース電極とドレイン電極間に流れる明電流と暗電流の電流量の差をプロットしたグラフである。
【図6】実施例1にかかる光検出器の第2ゲート電極に印加する電圧を変えた際における光検出器の比検出能の変化を示すグラフである。
【図7】実施例1にかかる光検出器において光の照射量を変化した際の光検出器の感度の変化を示したグラフである。
【図8】実施例1にかかる光検出器において光の照射量を変化した際の光検出器の利得の変化を示したグラフである。
【図9】実施例1にかかる光検出器において光の照射量を変化した際の光検出器の比検出能の変化を示したグラフである。
【図10】比較例1にかかる光検出器の模式図である。
【図11】比較例1にかかる光検出器の第2ゲート電極に印加する電圧を変えた際における光検出器の感度及び利得の変化を示すグラフである。
【図12】比較例1にかかる光検出器の第2ゲート電極に印加する電圧を変えた際における光検出器の比検出能の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。

【0021】
「光検出器」
図1は、本実施形態にかかる光検出器の断面模式図である。図1に示す光検出器10は、有機半導体層1と、ソース電極2と、ドレイン電極3と、第1ゲート電極4と、第2ゲート電極5と、第1絶縁層6と、第2絶縁層7とを備える。図1では光検出器10を支持する基板8を同時に図示している。
以下、ソース電極2とドレイン電極3とを結ぶ第1の方向をx方向、各層の積層方向をz方向とする。z方向はx方向に対して交差(直交)しており、第2の方向に対応する。

【0022】
有機半導体層1は、電子供与体と電子受容体とが混合するバルクヘテロ接合の有機半導体層である。バルクヘテロ接合の有機半導体は、p型有機半導体(電子供与体)とn型有機半導体(電子受容体)とを溶剤に混ぜて、スピンコート、インクジェット等の手段で塗布することで得られる。バルクヘテロ接合の有機半導体は、p型層とn型層を積層する構成よりも広い電荷分離界面を確保でき、量子効率(受光感度)が向上する。また、製造プロセスも積層型よりも簡便になる。

【0023】
n型有機半導体は、公知のものを用いることができる。例えば、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体、チオフェン誘導体、フラーレン誘導体、金属錯体化合物(アルミニウム錯体(例えば、Alq3(tris (8-hydroxyquionlinato) aluminium)など))等を用いることができる。

【0024】
p型有機半導体も、公知のものを用いることができる。例えば、ペンタセン誘導体、P3HT(poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl)、P3OT(poly(3-octylthiophene-2,5-diyl)、P3DDT(poly(3-dodecylthiophene-2,5-diyl)、PTAA(poly[bis(4-phenyl)amine])、MEH-PPV(poly[2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene]、MDMO-PPV(poly[2-methoxy-5-(3',7'-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylenevinylene]) 、F8BT(poly[(9,9-di-n-octylfluorenyl-2,7-diyl)-alt-(benzo[2,1,3]thiadiazol-4,8-diyl)])、F8T2(poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-co-bithiophene])、POT-co-DOT(poly(3-octylthiophene-2,5-diyl-co-3-decyloxythiophene-2,5-diyl))等を用いることができる。

【0025】
有機半導体層1は、[6,6]-PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル)とMDMO-PPVとが混合されたバルクヘテロ接合の有機半導体であることが好ましい。[6,6]-PCBMは、n型有機半導体としてフラーレン誘導体の一種である。当該材料は、広い電荷分離界面(電子供与体/電子受容体の界面)が取れ、数十nmレベルで相分離した混合層となることで励起子を効率良く電荷分離界面に到達させるというという点で優れる。

【0026】
有機半導体層1の厚みは、5nm以上100nm以下であることが好ましく、10nm以上50nm以下であることがより好ましく、20nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。有機半導体層1の厚みが当該範囲内であると、十分な感度と十分なフレキシブル性を得ることができる。

【0027】
ソース電極2及びドレイン電極3は、有機半導体層1の少なくとも一部をx方向に挟む。有機半導体層1で生じたフォトキャリア(電子、正孔)がソース電極2及びドレイン電極3に流れることで、照射された光を電気信号として読み出すことができる。

【0028】
ソース電極2及びドレイン電極3には、導電性の高い材料を用いることができる。例えば、金、銀、銅、アルミニウム等が、ソース電極2及びドレイン電極3に用いられる。ソース電極2及びドレイン電極3の表面は、単分子膜で修飾することが好ましい。ソース電極2及びドレイン電極3の表面を単分子膜で修飾することで、有機半導体層1との間の電子の授受が改善される。例えば、ソース電極2及びドレイン電極3の表面をチオールの単分子膜で修飾し、電極を官能基化することで仕事関数を調整できる。

【0029】
ソース電極2及びドレイン電極3の厚みは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上50nm以下であることがより好ましく、20nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。

【0030】
第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5は、有機半導体層1をz方向に挟む。図1では、第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5は、絶縁層を介して有機半導体層1のz方向の位置に積層されている。第1ゲート電極4と有機半導体層1との間の絶縁層が第1絶縁層6であり、第2ゲート電極5と有機半導体層1との間の絶縁層が第2絶縁層7である。

【0031】
第1絶縁層6及び第2絶縁層7には、絶縁性を有する材料が用いられる。例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリパラキシリレン等の高分子材料を用いることができる。

【0032】
第1絶縁層6及び第2絶縁層7の厚みは、30nm以上200nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましく、60nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。第1絶縁層6及び第2絶縁層7が厚すぎると、フレキシブル性が低下し、有機半導体層1に電圧を印加することが困難になる。第1絶縁層6及び第2絶縁層7が薄すぎると、十分な絶縁性を確保できない。

【0033】
第1ゲート電極4と第2ゲート電極5のうちいずれか一方は、測定する光の波長に対して透明である。ここで、透明とは測定する光の波長を検出できる程度に充分透過することを意味し、例えば測定する光の波長に対する透過率が70%以上であることを意味する。一方で、透明なゲート電極と対向するゲート電極は、測定する光の波長の反射率が高い材料であることが好ましい。一方のゲート電極から入射した光を反射し、有機半導体層1に再度侵入させることで、光検出器の感度を高めることができる。例えば、第1ゲート電極4をITOとし、第2ゲート電極5を金とすることが好ましい。

【0034】
第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5の厚みは、20nm以上200nm以下であることが好ましく、30nm以上100nm以下であることがより好ましく、40nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。

【0035】
第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5は、電圧印加手段に接続される。電圧印加手段により第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間に電位差を与えることで、有機半導体層1に電圧が印加される。電圧印加手段は公知の電源を用いることができる。電圧印加手段は、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間に大きな電位差を加えるために、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5とに異なる極性の電圧を印加できることが好ましい。

【0036】
基板8は、光検出器10を作製する際の支持体である。光検出器10をフレキシブルな用途で用いる際は、基板8を除去することが好ましい。基板8は平坦性の高いものであれば特に問わない。

【0037】
「光検出器の動作」
図1に示す光検出器10は、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間の電位差に基づいて有機半導体層1内におけるフォトキャリア(電子、正孔)の挙動が変化する。

【0038】
図2は、本実施形態にかかる光検出器の有機半導体層内におけるフォトキャリアの挙動を模式的に示した図である。図2では、理解を容易にするために第1絶縁層6及び第2絶縁層7を省略している。

【0039】
図2(a)は、第1ゲート電極4の電位がVで第2ゲート電極5の電位が0Vである。そのため、有機半導体層1にはVの電位差が与えられている。有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面には、電位Vによりマイナスの電荷が蓄積する。

【0040】
有機半導体層1に光が入射すると、有機半導体層1内に電子eとホールhが発生する。有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面にはマイナスの電荷が蓄積し、チャネルが形成されているため、発生した電子eはソース電極2とドレイン電極3との間を移動できる。この挙動は、一般のフォトトランジスタと同様の挙動である。すなわち、図2(a)に示すように、第2ゲート電極5の電位が0Vの場合、光検出器10はフォトトランジスタ的な挙動を示す。なお、発生したホールhは、周りに存在する多くの電子と再結合して消滅する。

【0041】
図2(b)は、第1ゲート電極4の電位がVで第2ゲート電極5の電位が-Vである。有機半導体層1にはV+Vの電位差が与えられている。有機半導体層1は電子供与体と電子受容体の両極性のキャリアが存在するため、有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面には電位Vによりマイナスの電荷が蓄積し、有機半導体層1の第2ゲート電極5側の面には電位-Vによりプラスの電荷が蓄積する。そして有機半導体層1の中間には、空乏層Dが形成される。この際、空乏層Dはソース電極2及びドレイン電極3までは到達していない。

【0042】
図2(b)においても同様に、有機半導体層1に光が入射すると、有機半導体層1内に電子eとホールhが発生する。有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面には、マイナスの電荷が蓄積し、チャネルが形成されているため、発生した電子eはソース電極2とドレイン電極3との間を移動できる。これに対し、発生したホールhは、有機半導体層1のプラスの電荷が蓄積した第2ゲート電極5の近傍や空乏層D内は移動できるが、有機半導体層1のマイナスの電荷が蓄積した第1ゲート電極4の近傍は移動できない。ホールhが電子との再結合してしまうためである。したがって、ソース電極2とドレイン電極3間に流れるキャリアは電子eのみであり、この場合もフォトトランジスタ的な挙動を示す。

【0043】
最後に図2(c)は、第1ゲート電極4の電位がVで第2ゲート電極5の電位が-Vである。有機半導体層1にはV+Vの電位差が与えられている。有機半導体層1は電子供与体と電子受容体の両極性のキャリアが存在するため、有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面には電位Vによりマイナスの電荷が蓄積し、有機半導体層1の第2ゲート電極5側の面には電位-Vによりプラスの電荷が蓄積する。有機半導体層1に加えられた電位差V+Vは、図2(b)において与えられた電位差V+Vより大きいため、空乏層Dの幅は広がる。その結果、空乏層Dはソース電極2及びドレイン電極3に到達する。

【0044】
図2(c)においても同様に、有機半導体層1に光が入射すると、有機半導体層1内に電子eとホールhが発生する。有機半導体層1の第1ゲート電極4側の面には、マイナスの電荷が蓄積し、チャネルが形成されているため、発生した電子eはソース電極2とドレイン電極3との間を移動できる。これに対し、発生したホールhは、有機半導体層1のプラスの電荷が蓄積した第2ゲート電極5の近傍や空乏層D内を移動できる。図2(c)において空乏層Dは、ソース電極2及びドレイン電極3まで到達している。すなわち、電子eのみならずホールhも、ソース電極2とドレイン電極3間におけるキャリアとして流れる。

【0045】
つまり図2(c)の場合、ソース電極2とドレイン電極3との間における電子eの流れに伴うフォトトランジスタ的なフォトキャリアの挙動に加えて、第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5による電荷の分離に伴うフォトダイオード的なフォトキャリアの挙動が加わる。つまり、フォトトランジスタの長所とフォトダイオードの長所とを兼ね備えた光検出器として機能する。

【0046】
光検出器10は、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間に閾値以上の電位差を与えることで、図2(c)に示すフォトキャリアの挙動を示す。第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間に閾値以上の電位差を与えるためには、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5とに印加する電圧の極性は異なっていることが好ましい。

【0047】
光検出器10のフォトキャリアの挙動を変化させる閾値は、光検出器10の構成及び各構成に用いられる材料によって変化する。例えば、有機半導体層1の厚みに対してソース電極2とドレイン電極3の厚みが厚い場合は、少しの電位差で空乏層Dがソース電極2及びドレイン電極3に到達する。すなわち、僅かな電位差でも図2(c)に示すフォトキャリアの挙動を示す。光検出器10における検出の挙動を電位差によって調整するためには、ソース電極2及びドレイン電極3は、有機半導体層1のz方向における中心位置より第1ゲート電極4又は第2ゲート電極5側に位置することが好ましい。

【0048】
また光検出器10におけるフォトキャリアの挙動は、照射される光の強度によっても変化すると考えられる。照射される光の強度が弱いと、有機半導体層1内で発生する電子eとホールhの量が少なくなる。そのため、発生した電子e及びホールhは、第1ゲート電極4と第2ゲート電極5との間の電位差によりz方向に分離される。つまり、フォトダイオード的な挙動を強く示すようになる。これに対し、照射される光の強度が強いと、有機半導体層1内で発生する電子eとホールhの量が多くなる。そのため発生した電子e及びホールhがz方向に分離される速度より、x方向に移動する速度の方が早くなる。つまり、ソース電極2とドレイン電極3間に形成されたチャネル間における電子eの移動量が多くなり、フォトトランジスタ的な挙動を占めす割合が高くなっていく。

【0049】
このフォトキャリアの挙動が変化する閾値照度は、有機半導体層1を構成する電子供与体及び電子受容体の移動度等により変化する。

【0050】
上述のように、本実施形態にかかる光検出器は、フォトダイオードでは実現できないスイッチングを、第1ゲート電極4及び第2ゲート電極5により可能である。また本実施形態にかかる光検出器の感度、利得、比検出能、応答速度は、フォトトランジスタより優れる。さらに、フォトトランジスタでは実現できなかった、線形的な感度変化を実現できる。また所望される事項に応じて、第2ゲート電極5へ印加する電圧を変化させ、光検出器10における検出の挙動を調整できる。

【0051】
本実施形態にかかる光検出器のフォトキャリアの挙動をまとめると以下のような表で表すことができる。

【0052】
【表1】
JP2019134030A_000003t.gif
【実施例】
【0053】
(実施例1)
図1に示す光検出器と同様の構成の光検出器を作製した。各層の構成は以下のようにした。
基板8:ガラス
第1ゲート電極4:厚み70nmのITO膜
ソース電極2及びドレイン電極3:表面にチオールの単分子膜が修飾された厚み30nmの金
有機半導体層1:厚み30nmのMDMO-PPV(p型半導体)と[6,6]-PCBM(n型半導体)との混合体
第1絶縁層6、第2絶縁層7:厚さ70nmのパリレン
第2ゲート電極5:厚み50nmの金
平面視形状:長さ5μm、幅20nmの長方形状
【実施例】
【0054】
実施例1に示す光検出器を用いて光検出器の特性を調べた。第1ゲート電極4に+20Vを印加し、ドレイン電極3に+5Vを印加し、45mW/cmの光を有機半導体層1に照射した。この条件で、第2ゲート電極5に印加する電圧を変化させて際の明電流と暗電流との電流量の差の変化を求めた。図3は、実施例1に示す光検出器において第2ゲート電極5に印加する電圧を変えた際における明電流と暗電流との電流量の差の変化を示したグラフである。
【実施例】
【0055】
明電流と暗電流との電流量の差は、光検出器の感度R及び利得Gの指標となる。
光検出器の感度Rは、R=(I-I)/Pin・Aで表記される。Iは明電流の電流量であり、Iは暗電流の電流量であり、Pinは光の照射強度であり、Aは照射面積である。
光検出器の利得Gは、G=(I-I)/Iで表記される。Iは明電流の電流量であり、Iは暗電流の電流量である。
【実施例】
【0056】
図3において、第2ゲート電極5に印加する電圧VTGが0Vの場合は、第2ゲート電極5がない場合に等しく、フォトキャリアはフォトトランジスタと同様の挙動を示す(図2(a))。これに対し、第2ゲート電極5に印加する電圧VTGを-20Vとすると、フォトキャリアがフォトトランジスタ的な挙動に加えてフォトダイオード的な挙動を示す(図2(c))。その結果、第2ゲート電極5に印加する電圧VTGを-20Vとすると、明電流と暗電流との電流量の差が大きくなった。つまり、第2ゲート電極5に第1ゲート電極4と反対の極性の電位を与えることで、光検出器の感度R及び利得Gが向上する。
【実施例】
【0057】
図4は、実施例1に示す光検出器において第2ゲート電極5に印加する電圧を変えた際における光検出器の感度R及び利得Gの変化を示すグラフである。図4において白丸を結んだ線が感度Rについてのデータであり、白四角を結んだ線が利得Gについてのデータである。図4に示すように、第2ゲート電極5に-13V以下の電位を与えると、感度R及び利得Gが急速に向上する。これは有機半導体層1のフォトキャリアの挙動が図2(c)に示す挙動に移行したためと考えられる。
【実施例】
【0058】
次いで、第1ゲート電極4に+20Vを印加し、ドレイン電極3に+5Vを印加し、545nmの波長のCWレーザーを10Hzのチョッパーを用いて、有機半導体層1に断続的に10mW/cmの光を照射した。この条件で、第2ゲート電極5に印加する電圧が0Vの場合と-20Vの場合で光検出器の応答速度を測定した。図5は、実施例1に示す光検出器の照射時と非照射時においてソース電極とドレイン電極間に流れる明電流と暗電流の電流量の差をプロットしたグラフである。
【実施例】
【0059】
図5に示すように、第2ゲート電極5に印加する電圧VTGを-20Vとすることで、明電流と暗電流との電流量の差が大きくなった。つまり、第2ゲート電極5に第1ゲート電極4と反対の極性の電位を与えることで、光検出器の感度R及び利得Gが向上した。また実施例1に示す光検出器は、光検出器の感度R及び利得Gが高いにも関わらず、50ms以下の高速応答が可能であった。
【実施例】
【0060】
第1ゲート電極4に+20Vを印加し、ドレイン電極3に+5Vを印加し、45mW/cmの光を有機半導体層1に照射し、比検出能Dを測定した。光検出器の比検出能Dは、D≒R/(2qI1/2で表記される。Rは光検出器の感度、qは電子の電荷であり、Iは暗電流の電流量である。図6は、実施例1に示す光検出器において第2ゲート電極5に印加する電圧を変えた際における光検出能の変化を示したグラフである。図6に示すように、第2ゲート電極5に-13V以下の電位を与えると、比検出能Dも急速に向上した。これは有機半導体層1のフォトキャリアの挙動が図2(c)に示す挙動に移行したためと考えられる。
【実施例】
【0061】
次いで、光検出器の照射する光の強度を変えて、感度R、利得G、比検出能Dを求めた。第1ゲート電極4には+20Vを印加し、ドレイン電極3には+5Vを印加した。第2ゲート電極5に0Vを印加した場合と、-20Vを印加した場合とのそれぞれの結果を求めた。図7は、実施例1に示す光検出器に照射する光の照射量を変えた際の光検出器の感度Rの変化を示したグラフであり、図8は、実施例1に示す光検出器に照射する光の照射量を変えた際の光検出器の利得Gの変化を示したグラフであり、図9は、実施例1に示す光検出器に照射する光の照射量を変えた際の光検出器の比検出能Dの変化を示したグラフである。
【実施例】
【0062】
光検出器の感度R、利得G、比検出能Dは、光の照射強度が1mW/cmを境目として挙動が変化している。これは上述のように、有機半導体層1で発生するフォトキャリアの量の違いによりフォトキャリアの挙動が変化したことに起因すると考えられる。
【実施例】
【0063】
図7に示すように光検出器の感度Rは、1mW/cm以下の領域において線形的である。すなわち、照射量を大きくすれば大きな電流量が流れるという比例関係が成り立っている。また図8に示すように光検出器の利得Gは、いずれの領域においても第2ゲート電極5に電圧を印加しない場合より向上した。さらに、比検出能Dは、1mW/cm以下の領域において線形的であった。また比検出能Dは、1mW/cm以上の領域において、第2ゲート電極5に電圧を印加しない場合より1桁以上向上した。
【実施例】
【0064】
(比較例1)
図10は、比較例1に示す光検出器の模式図である。各層の構成は以下のようにした。
第1ゲート電極14:厚み5000nmのSi膜
ソース電極12及びドレイン電極13:厚み30nmの金
有機半導体層11:厚み25nmのDPP-DTT(ジケトピロロピオールとジチエノチオフェンとの共重合体:p型半導体)
第1絶縁層16:厚み200nmのオクチルトリクロロシラン(OTS)処理したSiO
第2絶縁層17:厚さ300nmのパリレン
第2ゲート電極15:厚み30nmの金
平面視形状:長さ30μm、幅700μmの長方形状
【実施例】
【0065】
比較例1にかかる光検出器の特性を調べた。第1ゲート電極14に-40Vを印加し、ドレイン電極3に-40Vを印加し、45mW/cmの光を有機半導体層11に照射した。この条件で、第2ゲート電極5に印加する電圧を変化させて際の感度R、利得G、比検出能Dの変化を求めた。図11は、比較例1にかかる光検出器の第2ゲート電極15に印加する電圧を変えた際における光検出器の感度R及び利得Gの変化を示すグラフである。図11において白丸を結んだ線が感度Rについてのデータであり、白四角を結んだ線が利得Gについてのデータである。図12は、比較例1にかかる光検出器の第2ゲート電極15に印加する電圧を変えた際における比検出能Dの変化を示したグラフである。
【実施例】
【0066】
図11に示すように、第2ゲート電極5に印加する電圧を変えても、感度R、利得G及び比検出能Dの大幅な変化は確認されなかった。これは有機半導体層11がp型半導体のみからなるため、図2(c)に示すような厚さ方向の電荷の分離が生じず、フォトダイオード的なフォトキャリアの挙動が生じなかったためと考えられる。また得られる感度Rの絶対値も実施例1(図4参照)と比較して小さかった。同様に、比検出能Dも実施例1(図6参照)と比較して1桁小さかった。
【符号の説明】
【0067】
1、11 有機半導体層
2、12 ソース電極
3、13 ドレイン電極
4、14 第1ゲート電極
5、15 第2ゲート電極
6、16 第1絶縁層
7、17 第2絶縁層
8 基板
10、20 光検出器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11