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Specification :(In Japanese)有機薄膜を用いた電子デバイス、及びそれを含有してなる電子機器

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P6272242
Date of registration Jan 12, 2018
Date of issue Jan 31, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)有機薄膜を用いた電子デバイス、及びそれを含有してなる電子機器
IPC (International Patent Classification) H01L  29/786       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
H01L  51/40        (2006.01)
H01L  21/822       (2006.01)
H01L  27/04        (2006.01)
C07C  69/712       (2006.01)
C07C  43/21        (2006.01)
C07C  43/215       (2006.01)
C07C  43/225       (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
H01G   4/33        (2006.01)
H01G   4/18        (2006.01)
FI (File Index) H01L 29/78 618B
H01L 29/78 617T
H01L 29/78 617U
H01L 29/78 618E
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 220D
H01L 29/28 310D
H01L 29/28 250H
H01L 29/28 390
H01L 27/04 C
C07C 69/712 Z
C07C 43/21
C07C 43/215
C07C 43/225 Z
H05B 33/14 A
H01G 4/06 102
H01G 4/18 327Z
Number of claims or invention 23
Total pages 41
Application Number P2014-561596
Date of filing Aug 21, 2013
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第2項適用 (1-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第216頁において発表 (1-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会においてポスター発表 (2-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第217頁おいて発表 (2-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会においてポスター発表 (3-1)平成24年9月5日発行の第23回基礎有機化学討論会要旨集、第30、31頁において発表 (3-2)平成24年9月19日開催の第23回基礎有機化学討論会において口頭発表 (4-1)平成24年9月26日発行の日本化学会秋季事業-第2回CSJ化学フェスタ2012 プログラム・講演予稿集、第266頁において発表(P6-53) (4-2)平成24年10月16日開催の日本化学会秋季事業-第2回CSJ化学フェスタ 2012においてポスター発表(P6-53) (5-1)平成25年8月5日に配布された附置研究所間アライアンス「次世代エレクトロニクス」グループ(G1)分科会(山形大学ジョイントシンポジウム) (平成25年8月5日~7日開催)において発表(タイトル:二次元集積化能を有する分子ビルディングブロックの開発) (5-2)平成25年8月5日に配布された附置研究所間アライアンス「次世代エレクトロニクス」グループ(G1)分科会(山形大学ジョイントシンポジウム) (平成25年8月5日~7日開催)において発表(タイトル:二次元集積化によるセンチメートルスケールの単結晶状分子薄膜の形成)
International application number PCT/JP2013/004954
International publication number WO2014/125527
Date of international publication Aug 21, 2014
Application number of the priority 2013024097
Priority date Feb 12, 2013
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Aug 19, 2016
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】福島 孝典
【氏名】庄子 良晃
【氏名】石割 文崇
【氏名】関谷 毅
【氏名】染谷 隆夫
Representative (In Japanese)【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
【識別番号】100189131、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 拓郎
【識別番号】100147289、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 裕子
【識別番号】100182486、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 正展
【識別番号】100158872、【弁理士】、【氏名又は名称】牛山 直子
Examiner (In Japanese)【審査官】脇水 佳弘
Document or reference (In Japanese)米国特許出願公開第2009/0105488(US,A1)
特開2007-194360(JP,A)
特開2009-188259(JP,A)
国際公開第2014/111980(WO,A1)
特開2012-156542(JP,A)
特開2012-174805(JP,A)
特開2008-075047(JP,A)
国際公開第2012/077625(WO,A1)
NORVEZ,Sophia et al.,Epitaxygens: Mesophases based on the Triptycene Molecular Subunit,Journal of the Chemical Society, Chemical Communications,1990年,No.20,p.1398-1399,compounds1-8
Jinxuan LIU et al.,Deposition of Metal-Organic Frameworks by Liquid-Phase Epitaxy: The Influence of Substrate Functiona,Materials,2012年,5,pp. 1581-1592
Miriam E. Rogers et al,Symmetrically Trisubstituted Triptycenes,J. Org. Chem.,1986年,51(17),pp. 3308-3314
Field of search H01L 29/786
C07C 43/21
C07C 43/215
C07C 43/225
C07C 69/712
H01G 4/33
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 51/40
H01L 51/50
H01G 4/18
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
次の一般式[I]
JP0006272242B2_000015t.gif(式中、3つのR1は同じ基であって、R1は、炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR5-(ここで、R5は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく、
3つのR2は、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-R1-Zとは異なる基であって、R2は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのZは同じ基であって、Zは、水素原子、又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を構成要素として含有してなり、当該有機薄膜が絶縁層の上に形成された、電子デバイス。
【請求項2】
電子デバイスが、トランジスタ、コンデンサ、ダイオード、サイリスタ、電気発光素子、センサー、又はメモリーである、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
トランジスタが、薄膜トランジスタである請求項2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
薄膜トランジスタが、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート絶縁層を含む有機薄膜トランジスタである、請求項3に記載の電子デバイス。
【請求項5】
ゲート絶縁層が、絶縁材料及び前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜で構成されてなる、請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
ゲート絶縁層が、絶縁材料と前記有機薄膜の積層体からなることを特徴とする、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記ゲート絶縁層の絶縁材料が、有機絶縁材料である、請求項4から6のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項8】
薄膜トランジスタが、さらに半導体からなるチャネル層を含む、請求項4から7のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記チャネル層が、有機半導体層である、請求項8に記載の電子デバイス。
【請求項10】
有機薄膜とチャネル層の半導体が積層している、請求項8又は9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
薄膜トランジスタが、ゲート絶縁層と有機半導体層との境界部が請求項1に記載の有機薄膜で構成されていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
ゲート絶縁層、有機薄膜、及び有機半導体層が、積層構造をしている、請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
有機薄膜が、一般式[I]で表されるトリプチセン誘導体の-X-R1-Zの側が前記ゲート絶縁層側に、一般式[I]で表されるトリプチセン誘導体のR2の側が前記有機半導体層側に配向していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
薄膜トランジスタのソース電極及び/又はドレイン電極が、前記有機薄膜と前記チャネル層との間に形成されていることを特徴とする、請求項8から13のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項15】
チャネル層が、有機半導体層である、請求項14に記載の電子デバイス。
【請求項16】
電子デバイスが、コンデンサである、請求項2に記載の電子デバイス。
【請求項17】
コンデンサが、電極間に請求項1に記載の有機薄膜からなる誘電体層を有するコンデンサである、請求項16に記載の電子デバイス。
【請求項18】
誘電層が、さらに第二の誘電体を含有している、請求項17に記載の電子デバイス。
【請求項19】
第二の誘電体が、有機誘電体である、請求項18に記載の電子デバイス。
【請求項20】
有機薄膜と第二の誘電体が、積層構造をしている、請求項18又は19に記載の電子デバイス。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の電子デバイスを、電子回路中に含有してなる回路基板。
【請求項22】
請求項1から20のいずれかに記載の電子デバイスを、電子機器内部に含有してなる電子機器。
【請求項23】
電子機器が、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、又は液晶ディスプレイである、請求項22に記載の電子機器。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体と有機半導体の極めて均一な界面を形成する膜を構成要素として含有してなる電子デバイス、並びにそれを含有してなる回路基板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を用いた薄膜トランジスタは、絶縁体表面に半導体薄層を積層し、この絶縁体と半導体との界面近傍の半導体薄層中を電子またはホールが移動する。有機半導体材料の場合は、有機半導体材料を加熱し材料を蒸発させて絶縁体表面に付着させる。このとき、絶縁体表面のミクロな状態、詳しくは表面粗度、表面吸着物質、表面分子欠陥などが薄膜トランジスタ性能に影響し、多くの場合性能を著しく劣化させる。また、有機半導体材料を溶媒に溶かした溶液を絶縁体表面に塗工し、溶媒を除去することで有機半導体材料からなる薄膜を形成する塗布方式が知られている。この塗布方式は大面積基板への展開が容易で、大面積有機エレクトロニクスデバイスを実現する有効な手段である。しかし、塗布方式は溶媒が絶縁体基材表面を変質させ界面を劣化させるため、作成された有機薄膜トランジスタは駆動電圧の上昇やリーク電流の増加の性能低下が生じる場合がある。
【0003】
このような性能低下を防ぐために、絶縁体基材表面に特殊な表面処理を施し、表面および積層後の界面を均質にしようとする試みがなされている。より具体的には、自己組織化単分子膜(以下、SAMともいう。)を絶縁体と有機半導体の界面に形成する方法が知られている。
しかし、従来のチオール基(-SH)を有するSAMでは、金等の金属などに限定された表面にしか形成できなかった。
また、最近では、リン酸基またはホスホン酸基を有するSAM材料が提案されている(非特許文献1参照)。
この新しいSAM材料は、多種多様な金属酸化物表面と相互作用し、組織化された単分子膜を形成することが可能である。しかし、有機材料の表面への形成は限定される。
このように、従来のSAM材料は形成できる表面が限定され、また表面状態に大きく影響を受ける。特に有機半導体を形成する絶縁層として金属酸化物を適用する場合は、表面の凸凹によりSAMが正常に形成されない異常が生じ易く、特に大面積化に対して品質不良が避けられないという問題を有している。
このように、薄膜トランジスタでは、絶縁体と有機半導体界面の品質管理が重要であるにも関わらず、付加的処理は製造方法を複雑にし、また品質の管理が困難であるという課題を有している。更に、作成の初期には期待される特性を有していても、デバイスの駆動とともに界面が変化し、使用時間が経るとともに性能が変化、低下してしまうという問題点も有している。
【0004】
また、SAMを形成する分子の一方に機能性官能基を結合させることにより、固体基板の表面に特定の機能を付与することもできる。例えば、電子移動・酸化還元反応、触媒作用、光誘起電子移動、電気化学的発光、イオン・分子の認識、バイオセンサー、バイオ分子デバイス、太陽光発電、などの様々な機能をSAMの形成により固体基板の表面に付与することが可能となり、これらの分野での応用が期待されている。
例えば、アルデヒド部分を有する糖や、カルボキシル基を有する化合物を固定するために末端基としてアミノ基を有するアルキレンチオール化合物を材料としたSAMの形成(特許文献1参照)、末端基にシアノアリール基などの電子受容性官能基を有するアルキレンチオール化合物などを材料としたSAMの形成(特許文献2参照)、末端基にポリフェニレン基を有するアルキレンチオール化合物などを材料とした紫外線耐性を有するSAMの形成(特許文献3参照)、ビス(アダマンチルメチル)ジスルフィドを用いた剛直なアダマンタン表面膜構造を有するSAMの形成(特許文献4参照)、アルキレン鎖の途中に比較的長波長の光で感光する官能基を導入し、長波長の光でパターン化が可能となるリソグラフィー用のSAMの形成(特許文献5参照)、ピロール環拡張ポルフィリンとフラーレンを共有結合した化合物を用いた太陽電池及び光電荷分離素子用のSAMの形成(特許文献6参照)などが報告されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-363154号公報
【特許文献2】国際公開第2003-055853号
【特許文献3】特開2004-33824号公報
【特許文献4】特開2004-315461号公報
【特許文献5】特開2007-277171号公報
【特許文献6】特開2012-111716号公報
【0006】

【非特許文献1】Klauk, et al., Nature, 445, 745(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、絶縁体と有機半導体の極めて均一な界面を形成することで、高性能、高均質、高安定な電子デバイスを提供する。本発明の電子デバイスは、絶縁体と有機半導体の界面が極めて均一になるためにノイズレベルの低い電子デバイスを実現することで、微弱な信号、例えば生体が発する信号を高感度に検出することを可能にする。更には、本発明の界面を形成する膜はフレキシブルで大面積とすることができ、大面積でフレキシブルな電子デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、トリプチセンに複数の機能団を位置特異的かつ面特異的に導入することを検討してきた。そして、本発明者らは、トリプチセンの一方の側に3つの同じ置換基を面特異的に有するトリプチセン誘導体が、トリプチセンの三枚羽状に配列したベンゼン環(トリプチセンの正三又形状の骨格)が入れ子状に集積する(図1参照)こと、そして、3つの同じ置換基が比較的長い炭素鎖を有している場合には、これらの置換基が同じ方向に整列して集積して膜を形成することを見出した。このようにして形成された膜は自己組織的であり、さらにこれを処理することにより、自己組織化単分子膜とすることができることも見出した。
さらに、本発明者らは、これを電子デバイスの絶縁層の上に形成させることにより、当該絶縁層の材質、表面状態などに依存することなく、極めて均一で、安定性に優れた高品質の膜を形成させることができるだけでなく、同時に有機半導体などの機能を有する層を付与することもできることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、トリプチセンの正三又形状の骨格が互いにかみ合い、当該トリプチセン骨格に2次元分子配列の一方の面外に伸びる第1の分子を付加することにより、規則正しく幾何学的な2次元分子配列を形成させた有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイスに関する。
また、本発明は、更に当該トリプチセン骨格の2次元分子配列のもう一方の面外に伸びる第2の分子を付加することにより、当該第2の分子に半導体の機能を付与し、第1の分子による絶縁特性と併せて、当該トリプチセン骨格の2次元分子配列の一面に絶縁特性を有し、他面に半導体特性を有する有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイスに関する。
より詳細には、本発明は、次の一般式[I]
【0010】
【化1】
JP0006272242B2_000002t.gif

【0011】
(式中、3つのR1は同じ基であって、R1は、炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は1つ又は2つ以上の置換基を有してもよく、また、当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR5-(ここで、R5は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく、
3つのR2は、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、かつ基-X-R1-Zとは異なる基であって、R2は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2~10のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルチオ基、ホルミル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、
3つのXは同じ基であって、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基を表し、
3つのZは同じ基であって、Zは、水素原子、固体基板の表面に結合若しくは吸着し得る基;又は窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、ハロゲン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基を表す。)
で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイスに関する。
【0012】
また、本発明は電子デバイスの構成要素としての有機薄膜における、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の使用(Use)に関する。
さらに、本発明は、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイスを、電子回路中に含有してなる回路基板に関する。
さらに、本発明は、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイスを、電子機器内部に含有してなる電子機器に関する。
【0013】
また、本発明は、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び有機薄膜形成用担体を含有してなる有機薄膜形成用組成物に関する。
さらに、本発明は、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜からなる電子デバイス材料に関する。
【0014】
さらに詳細に本発明の態様を説明すれば次のようになる。
(1)トリプチセンの正三又形状の骨格が互いにかみ合い、当該トリプチセン骨格に2次元分子配列の一方の面外に伸びる第1の分子を付加することにより、規則正しく幾何学的な2次元分子配列を形成させた有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイス。
(2)第1の分子が付加されたトリプチセンが、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体である、前記(1)に記載の電子デバイス。
(3)更に当該トリプチセン骨格の2次元分子配列のもう一方の面外に伸びる第2の分子を付加することにより、当該第2の分子に半導体の機能を付与し、第1の分子による絶縁特性と併せて、当該トリプチセン骨格の2次元分子配列の一面に絶縁特性を有し、他面に半導体特性を有する有機薄膜を構成要素として含有してなる、前記(1)又は(2)に記載の電子デバイス。
(4)第1の分子及び第2の分子が付加されたトリプチセンが、前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体である、前記(3)に記載の電子デバイス。
(5)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR2が、有機半導体の機能を有する基である、前記(4)に記載の電子デバイス。
【0015】
(6)前記の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を構成要素として含有してなる電子デバイス。
(7)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体における3つのR2が、全て同じ基である、前記(6)に記載の電子デバイス。
(8)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体における3つのR2が、それぞれ異なる基である、前記(6)に記載の電子デバイス。
(9)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるXが、-CH2-、-CH=CH-、-O-、又は-NR6-(ここで、R6は、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表される2価の基である、前記(6)から(8)のいずれかに記載の電子デバイス。
(10)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるXが、-CH2-、-CH=CH-、又は-O-で表される2価の基である、前記(9)に記載の電子デバイス。
(11)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR1が、炭素数2から30のアルキレン基、炭素数2から30のアルケニレン基、炭素数2から30のアルキニレン基、炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、前記(6)から(10)のいずれかに記載の電子デバイス。
(12)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR1が、炭素数2から30のアルキレン基、炭素数6から30のアリール環を含有してなる炭素数6から60の2価のアリーレン基である、前記(11)に記載の電子デバイス。
(13)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるZが、水素原子、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、水酸基、-COOR7(ここで、R7は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-N(R82(ここで、R8は、同一又は異なっていてもよい、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)、又は、-P(=O)(OR152(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。)である、前記(6)から(12)のいずれかに記載の電子デバイス。
(14)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるZが、水素原子、-CF3、-CH=CH2、-C≡CH、-COOR7(ここで、R7は、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を表す。)、-NH2、又は-N(Ar12(ここで、Ar1は、同一又は異なっていてもよくそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基を表す。)である、前記(13)に記載の電子デバイス。
(15)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR2が、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基である、前記(6)から(14)のいずれかに記載の電子デバイス。
(16)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR2が、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルコキシ基である、前記(15)に記載の電子デバイス。
【0016】
(17)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR2が、有機半導体の機能を有する基である、前記(6)から(14)のいずれかに記載の電子デバイス。
(18)一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体におけるR2が、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員の置換基を有してもよいヘテロアリール基である、前記(17)に記載の電子デバイス。
(19)有機薄膜が、SAMである、前記(1)から(18)のいずれかに記載の電子デバイス。
【0017】
(20)電子デバイスが、トランジスタ、コンデンサ、ダイオード、サイリスタ、電気発光素子、センサー、又はメモリーである、前記(1)から(19)のいずれかに記載の電子デバイス。
(21)電子デバイスが、トランジスタである、前記(20)に記載の電子デバイス。
(22)トランジスタが、薄膜トランジスタである前記(20)又は(21)に記載の電子デバイス。
(23)薄膜トランジスタが、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート絶縁層を含む有機薄膜トランジスタである、前記(22)に記載の電子デバイス。
(24)ゲート絶縁層が、絶縁材料及び前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜で構成されてなる、前記(23)に記載の電子デバイス。
(25)ゲート絶縁層が、絶縁材料と前記有機薄膜の積層体からなることを特徴とする、前記(24)に記載の電子デバイス。
(26)前記ゲート絶縁層の絶縁材料が、有機絶縁材料である、前記(24)又は(25)に記載の電子デバイス。
(27)有機絶縁材料が、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、及び/又はパリレン(登録商標)である、前記(26)に記載の電子デバイス。
(28)前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜が、有機半導体の機能を有する基を含有するものである、前記(24)から(27)のいずれかに記載の電子デバイス。
(29)薄膜トランジスタが、さらに半導体からなるチャネル層を含む、前記(22)から(28)のいずれかに記載の電子デバイス。
(30)半導体が、有機半導体である、前記(29)に記載の電子デバイス。
(31)前記チャネル層が、有機半導体層である、前記(29)又は(30)に記載の電子デバイス。
(32)有機薄膜とチャネル層の半導体が積層している、前記(29)から(31)のいずれかに記載の電子デバイス。
(33)薄膜トランジスタが、ゲート絶縁層と有機半導体層との境界部が前記(1)から(19)のいずれかに記載の有機薄膜で構成されていることを特徴とする、前記(29)から(32)のいずれかに記載の電子デバイス。
(34)ゲート絶縁層、有機薄膜、及び有機半導体層が、積層構造をしている、前記(33)に記載の電子デバイス。
(35)有機薄膜が、一般式[I]で表されるトリプチセン誘導体の-X-R1-Zの側(第1の分子)が前記絶縁体層側に、一般式[I]で表されるトリプチセン誘導体のR2の側(第2の分子)が前記有機半導体層側に配向していることを特徴とする、前記(33)又は(34)に記載の電子デバイス。
(36)薄膜トランジスタのソース電極及び/又はドレイン電極が、前記有機薄膜と前記チャネル層との間に形成されていることを特徴とする、前記(29)から(35)のいずれかに記載の電子デバイス。
(37)チャネル層が、有機半導体層である、前記(36)に記載の電子デバイス。
【0018】
(38)電子デバイスが、コンデンサである、前記(20)に記載の電子デバイス。
(39)コンデンサが、電極間に前記(1)から(19)のいずれかに記載の有機薄膜からなる誘電体層を有するコンデンサである、前記(38)に記載の電子デバイス。
(40)誘電層が、さらに第二の誘電体を含有している、前記(39)に記載の電子デバイス。
(41)第二の誘電体が、有機誘電体である、前記(40)に記載の電子デバイス。
(42)有機薄膜と第二の誘電体が、積層構造をしている、前記(40)又は(41)に記載の電子デバイス。
【0019】
(43)電子デバイスの構成要素としての有機薄膜における、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の使用(Use)。
(44)有機薄膜が、SAMである、前記(43)に記載の使用(Use)。
(45)電子デバイスが、前記(1)から(42)のいずれかに記載の電子デバイスである、前記(43)又は(44)に記載の使用(Use)。
【0020】
(46)前記(1)から(42)のいずれかに記載の電子デバイスを、電子回路中に含有してなる回路基板。
(47)回路基板が、薄膜回路基板である、前記(46)に記載の回路基板。
(48)回路基板が、薄膜トランジスタが設けられた薄膜回路基板を備えているものである、前記(46)又は(47)に記載の回路基板。
(49)回路基板が、液晶表示装置や有機EL表示装置などの表示装置(いわゆるフラットパネルディスプレイ)の画素駆動用回路である、前記(46)から(48)のいずれかに記載の回路基板。
【0021】
(50)前記(1)から(42)のいずれかに記載の電子デバイスを、電子機器内部に含有してなる電子機器。
(51)電子機器が、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、又は液晶ディスプレイである、前記(50)に記載の電子機器。
(52)電子機器が、心電位測定デバイス、筋電位測定デバイス、又は脳電位測定デバイス等の医療用電子機器である、前記(50)又は(51)に記載の電子機器。
(53)電子機器が、テレビ、ビューファインダ型若しくはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、又はタッチパネルを備えた機器等である、前記(50)又は(51)に記載の電子機器。
【0022】
(54)前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び有機薄膜形成用担体を含有してなる有機薄膜形成用組成物。
(55)有機薄膜が、SAMである、前記(54)に記載の有機薄膜形成用組成物。
(56)有機薄膜形成用担体が、有機溶剤である、前記(54)又は(55)に記載の有機薄膜形成用組成物。
(57)有機溶剤が、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はテトラヒドロフラン(THF)である、前記(56)に記載の有機薄膜形成用組成物。
【0023】
(58)前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜からなる電子デバイス材料。
(59)有機薄膜が、SAMである、前記(58)に記載の電子デバイス材料。
(60)前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を、電子デバイス中に設けることを特徴とする、前記(6)から(42)のいずれかに記載の電子デバイスを製造する方法。
(61)前記有機薄膜を設ける方法が、前記一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び有機薄膜形成用担体を含有してなる有機薄膜形成用組成物を塗布し、乾燥させる方法である、前記(60)に記載の製造方法。
(62)さらに、アニーリングする工程を含む、前記(61)に記載の方法。
(63)前記有機薄膜を設ける方法が、液-液界面で製造した有機薄膜を電子デバイス中に設置する方法である、前記(60)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の有機薄膜を用いることにより、有機半導体層と絶縁体層の界面を極めて均質・清浄に形成できるため、電子デバイス、特に有機薄膜トランジスタの性能の向上、均質化、安定化が得られる。さらに、大面積フレキシブルエレクトロニクスデバイスを実現する上で、大面積にわたって均一な電子デバイス、特にトランジスタを形成することができる。
また、本発明の他の態様では、半導体として機能する分子部分と絶縁体として機能する分子部分とが、一つの分子に組み込まれ、その分子が単分子膜を形成する。その単分子膜の一方の側が半導体的性質、もう一方の側が絶縁体層の積層構造を作ることができる。これにより極めて均質な半導体と絶縁体境界が形成されることになり、界面の乱れがないトランジスタを実現できる。界面の乱れが究極的に消滅することで、従来技術では得ることができない、高い移動度、高い耐久性、低いリーク電流の性能を有する半導体素子を均質で安定に作成することができる。
さらに、本発明の単分子膜の構造はトリプチセン骨格の幾何学的形状で規定されるため、得られる単分子膜は下層または上層の表面状態の影響を受けない。これにより多様な基材と組み合わせた高性能な電子デバイスを実現することができる。
【0025】
本発明の電子デバイスは、極めて高性能でフレキシブルな有機半導体デバイスを実現することができ、大面積でフレキシブルな有機エレクトロニクスは、各種のディスプレイや電子ペーパーなどに応用することができ、パソコン、携帯端末、家電製品だけでなく、医療分野などへも適用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の有機薄膜におけるトリプチセン骨格を、トリプチセン骨格の3つのベンゼン環を横断する方向から見たときの、トリプチセンの三枚羽状に配列したベンゼン環(トリプチセンの正三又形状の骨格)が入れ子状に集積する様子を模式的に示した図である。
【図2】図2は、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体が、集積した状態を模式的に示したものである。図2に示した例は、R1がアルキレン基で、Zがエステルになっている場合である。
【図3】図3は、本発明の化合物1を用いてガラス基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【図4】図4は、本発明の化合物1を用いて雲母基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【図5】図5は、本発明の化合物1を用いて雲母基板上に製造した膜のAFM測定の結果を示したものである。
【図6】図6は、本発明のトランジスタ10を模式的に示したものである。
【図7】図7は、本発明のトランジスタ30の断面構造を示したものである。本発明のトランジスタ30は、ゲート電極31、ゲート絶縁層32、本発明の有機薄膜33、有機半導体層34、ドレイン電極35、及びソース電極36で構成されている。
【図8】図8は、本発明のトランジスタ40を図示したものである。本発明のトランジスタ40は、ゲート電極41、ゲート絶縁層42、本発明の有機薄膜43、ドレイン電極45、及びソース電極46で構成されている。
【図9】図9は、本発明のトランジスタ50の有機薄膜53及び有機半導体層54を図示したものである。有機薄膜53は、アルキル鎖部分531、トリプチセン骨格部分532、及びフェニル基部分533で構成されていることになる。
【図10】図10は、本発明のトランジスタ70を図示したものである。本発明のトランジスタ70は、ゲート電極71、ゲート絶縁層72、有機半導体の機能を有する本発明の有機薄膜73、有機半導体層74、ドレイン電極75、及びソース電極76で構成されている。
【図11】図11は、本発明のトランジスタ80を図示したものである。本発明のトランジスタ80は、ゲート電極81、ゲート絶縁層82、有機半導体の機能を有する本発明の有機薄膜83、ドレイン電極85、ソース電極86、及び封止層87で構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の態様をさらに詳細に説明する。
「トリプチセン」自体は、既知の化合物であり、特異な三枚羽状に配列したベンゼン環を有する化合物である。本発明において、トリプチセンの位置番号はCASの命名法にしたがって次に示すとおりとする。

【0028】
【化2】
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【0029】
本発明における「ヤヌス型トリプチセン誘導体」とは、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの異なる2つの面のそれぞれの面が、それぞれ異なる特性を有しているトリプチセン誘導体である。ヤヌス(Janus)とは、頭の間の前後に異なる顔を持つローマ神話に登場する神の名前である。本発明のトリプチセン誘導体は、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの面に異なる面を有していることからローマ神話の神の名前に基づいて「ヤヌス型」と命名している。
したがって、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、トリプチセンの2つの面に異なる特性を有するトリプチセン誘導体であるということができる。本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、有機薄膜の形成に関与する面と当該膜の形成に関与しない面の二面を有していることを特徴とするものである。より詳細には、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、どちらかひとつだけの面、例えば1,8,13位の面だけに有機薄膜を形成するための同じ置換基を有していることを特徴とするトリプチセン誘導体である。さらに好ましい態様としては、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体の一般式[I]におけるR2の3つの置換基も同じ置換基であり、共通する特性を有する面として機能する態様が挙げられるが、この面の置換基は必ずしも同じである必要は無い。
本発明の一般式[I]におけるXが-O-で、R1がC11アルキレン基で、Zが-COOMe基で、R2が全て水素原子である場合の本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体(以下、化合物1という。)を示せば次のとおりとなる。

【0030】
【化3】
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【0031】
本発明における「トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積した」とは、トリプチセン骨格の3つのベンゼン環がそれぞれ面角120°を形成しており、それぞれのベンゼン環の間に隣接するトリプチセンのベンゼン環が入れ子状に入ってきている状態であり、このような状態を上から見た場合を模式的に示せば図1のようになる。

【0032】
トリプチセン骨格の三枚羽状に配列したベンゼン環のそれぞれの間に隣接するトリプチセン骨格のベンゼン環が入り、規則的な集積をしている状態である。前記に例示した化合物1が集積した場合のトリプチセンの橋頭と、隣接するトリプチセンの橋頭までの距離は約0.81nmであった。
本発明における「トリプチセン骨格のベンゼン環の同じ方向に結合している3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積した」とは、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の一方の面に存在している3つの置換基-X-R1-Zが、前記したベンゼン環が入れ子状に集積しているトリプチセン骨格の集積体の同じ方向に伸びており、それらが整列して集積している状態を示す。
前記に例示した化合物1が集積した状態を示せば、図2のZがCO2Meの場合のようになる。下側のトリプチセンレイヤーは、前記したベンゼン環が入れ子状に集積しているトリプチセン骨格の集積体を示している。そして、当該トリプチセンレイヤーの同じ方向、図2の場合では上側に3つの同じ置換基が同じ方向に整列して集積して、アルキルレイヤー及びエステルレイヤーを形成している。層の厚さは約2.6nmであった。
トリプチセン骨格が集積した場合に、3つの同じ置換基が異なる方向にランダムに整列する場合には、図2に示すような整然とした膜状にはならず、塊状となる。しかし、本発明者らは、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を集積させた場合には、これらの置換基がランダムにはならず、同じ方向に整然と集積し、安定な膜を形成することを初めて見出し、規則的で安定なナノ単位の膜の形成に成功したのである。
また、図2に示されるように、置換基Zが-CH2NH2や-COOHとなると単層構造ではなく、Z同士が向き合った2層構造となることもある。2層構造となった場合の層の厚さは約5nmであった。

【0033】
本発明における「有機薄膜」とは、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体が前記した状態で集積して形成されるものをいう。このようにして集積してできた膜が、一層の場合には単分子膜になり、SAMであるということができる。膜厚はアルキレン鎖の炭素数で調節することができ、炭素原子1個当たりで約0.2nmという一般則に沿って決定することができる。
また、このような層が重なり合って多層膜とすることもできる。この場合には、同じ方向で重なり合う場合と、相互に反対方向に向いて重なり合う場合とがある。どちらの状態になるかは、一般式[I]におけるZ基及び/又はR2基の種類や、膜形成の条件によることになる。
前記に例示した化合物1をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液(1mg/200mL、約5.3μM)を、ガラス基板上に塗布して乾燥させて形成された膜は、一層構造、二層構造、又は三層構造とすることができる。一層構造の場合の膜厚は約2.46nmであった。二層構造の場合の膜厚は約5.4nmであった。三層構造の場合の膜厚は約7.84nmであった。また、同じ溶液を雲母基板に塗布して乾燥させて形成された膜は、一層構造、又は二層構造とすることができ、一層構造の場合の膜厚は約3.27nmであり、二層構造の場合の膜厚は約6.45nmであった。さらに、同じ溶液を雲母基板に塗布して乾燥させた後、180℃でアニーリングして形成された膜は、一層構造であり、その膜厚は約2.04nmであった。

【0034】
本発明における「機能性膜」とは、前記した本発明の膜に種々の機能を有する官能基が結合された膜、特に有機薄膜をいう。一般に、SAMのような膜は、固体基板の表面に結合又は吸着するための部分、安定な膜を形成するためのアルキル鎖などのアルキル鎖間のvan der Waals力を得るための部分、及び分子の末端部分の3つの部分に分けられる。そして、分子の末端部分に電気化学的、光学的、生物学的などの機能を有する官能基を導入することにより、形成される有機薄膜に種々の機能を付与できることが知られている。このように、従来の有機薄膜と同様に本発明の有機薄膜にも分子の末端部分を用いて種々の機能を付与することができる。
前記してきたように、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体は、「一般式[I]における基-X-R1-Zの面」と「一般式[I]におけるR2の面」の二面を有しており、このうちのR2の面において、従来の膜と同様に種々の機能を有する官能基を導入することが可能である。また、従来の膜では、固体基板の表面に結合又は吸着するための部分を有することが必須であったが、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を用いた有機薄膜では、アルキル鎖などのアルキル鎖間のvan der Waals力のみならずトリプチセン骨格部分において膜形成能を有しているために、必ずしも固体表面の結合又は吸着するための部分を必須とするものではない。そのために、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の基Z部分に、種々の機能を有する官能基を導入することも可能となる。
したがって、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体の有機薄膜の形成に関与しない面、及び/又は本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の基Z部分のいずれかの部分に、各種の機能を有する官能基が導入されて形成された膜を、本発明においては「機能性膜」という。

【0035】
このような「機能性膜」のなかで、本発明において好ましい「機能性膜」としては、半導体の機能、特に有機半導体の機能を有する「機能性膜」が挙げられる。このような有機半導体の機能を有している本発明の「機能性膜」は、トリプチセン骨格の一方の面において有機薄膜を形成する機能を有し、絶縁性に優れ、トリプチセン骨格の他方の面において有機半導体の機能を有していることから、ゲート絶縁層の絶縁性を損なうことなく当該絶縁層の表面を処理し、同時に絶縁層とは反対の面において有機半導体の機能を有する有機薄膜を提供することができることになる。また、前述してきたように本発明の有機薄膜は、それ自体で膜形成能を有しているために、ゲート絶縁層の絶縁材料に依存することなく安定な有機薄膜を形成することができ、本発明の「機能性膜」は無機系絶縁材料及び有機系絶縁材料のいずれにも幅広く適用することができる。

【0036】
本発明における「固体基板」とは、従来からSAMなどの固体基板として使用されてきているガラス;シリコン、ゲルマニウムなどの非金属;酸化ケイ素などの非金属酸化物;金、白金、銀、銅など金属;酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物;GaAs;CdSなど固体基板のみならず、ポリカーボネート基板、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのフレキシブルなプラスチック材料製の基板、ポリイミドやポリメチルメタクリレートやポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))などの有機絶縁材料などを固体基板とすることができる。また、コラーゲン、澱粉、セルロースなどの動植物由来の材料を原料とする生体由来材料を固体基板とすることもできる。前述してきたように本発明の有機薄膜は、それ自体で膜形成能を有しているために、固体基板への結合や吸着が困難である固体も基板として使用することができ、前記してきた本発明の有機薄膜が安定に存在し得る固体は全て包含することができる。また、固体の形状も、特に制限されることはなく、フレキシブルなシート状や薄膜状であってもよい。
本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を用いた膜は、アルキル鎖などによるvan der Waals力のみならずトリプチセン骨格部分において膜形成能を有しているために、必ずしも固体基板の表面に結合又は吸着するための部分を必須とするものではない。そのために、固体基板との結合性や吸着能を考慮する必要がなく、固体基板に特に制限はないことになる。しかしながら、形成された膜の位置安定性を確保するために、固体基板に結合及び/又は吸着することができる固体基板を選択することが好ましい。

【0037】
本発明における「電子デバイス」とは、電子の働きを応用し、増幅、データ処理、データ転送などの機能的な仕事をする電子素子の総称である。典型的な「電子デバイス」としては、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ、有機EL、バイオセンサーなどの能動素子が挙げられるが、場合によっては、抵抗器やコンデンサーなどの受動素子も包含される。本発明の好ましい態様における電子デバイスとしては、トランジスタ、特に薄膜トランジスタ、より好ましくは有機電解効果トランジスタ(OFET)が挙げられる。有機電解効果トランジスタ(OFET)としては、ボトムコンタクト/トップゲート型、ボトムコンタクト/ボトムゲート型、又はトップコンタクト/ボトムゲート型のいずれでもあってもよいが、トップコンタクト/ボトムゲート型が好ましい。
本発明における「電子素子」とは、固体内電子の伝導を利用した電子部品の総称であって、能動素子と受動素子があるが、本発明においては能動素子と受動素子のいずれであってもよいが、通常は能動素子が好ましい。また、電子デバイスが単一の電子素子である場合には、本発明の「電子デバイス」と「電子素子」とは同義語として使用される。
本発明における「回路基板」とは、前記した固体基板の表面に電子回路が形成されたものをいう。電子回路とは、電子部品を電気伝導体で接続し電流の通り道をつくり、目的の動作を行わせる電気回路であり、目的とする信号を増幅したり、計算や制御などのデータ処理をしたり、データを転送したりといったことができるものである。「回路基板」は、目的に応じて種々の大きさとすることができる。例えば、データの入力、処理、制御、出力などの全てを行う回路とすることもできるし、それぞれの単一の目的のみを行う回路とすることもできる。

【0038】
本発明における「電子機器」とは、前記した電子デバイス、電子素子、又は回路基板の少なくとも1種を内蔵している各種の電子製品、例えば、テレビ;ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ;カーナビゲーション装置;電子手帳;電卓;電子新聞;ワードプロセッサ;パーソナルコンピュータ;ワークステーション;テレビ電話;POS端末;などの家庭用電子製品、特にこれらの電子製品の表示装置、及び、心電位測定デバイス、筋電位測定デバイス、脳電位測定デバイスなどの医療用電子機器、特にこれらの医療用電子機器の表示装置などの業務用電子製品などが挙げられる。また、本発明の「電子機器」は、前記した電子製品を構成する各種の装置であってもよく、このような装置としては、例えば、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイなどの表示装置、各種のセンサーなどのセンサー装置などが挙げられる。
本発明における「構成要素」とは、前記した電子デバイスや電子素子などを構成するために必要とされる、同一の材質によって形成されている部分のことをいう。例えば、絶縁層や有機薄膜層のような層が「構成要素」例として挙げられる。また、「構成要素」を含有するとは、前記した電子デバイスや電子素子などが、当該「構成要素」を内包していることを、即ち、前記した電子デバイスや電子素子などの一部として当該「構成要素」が存在していることを意味している。

【0039】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」としては、炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは5から30の飽和又は不飽和、鎖状又は環状、直鎖状又は分岐状の2価の炭化水素基であり、これらの飽和炭素原子及び不飽和炭素原子、鎖状炭素原子及び環を形成する炭素原子は、規則的又は不規則的に配置されていてもよい。本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」としては、例えば、炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは5から20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基;炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは2から20の直鎖状又は分岐状のアルケニレン基;炭素数2から60、好ましくは2から30、より好ましくは2から20の直鎖状又は分岐状のアルキニレン基;炭素数6から30、好ましくは6から20、より好ましくは6から12の単環状、多環状、又は縮合環状のアリール環を含有してなる総炭素数が6から60、好ましくは6から30の2価のアリーレン基(当該アリーレン基は、アリール環とアリール環の間又は末端にアルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基を有していてもよい。);などが挙げられる。アルケニレン基を形成するための炭素-炭素二重結合、アルキニレン基を形成するための炭素-炭素三重結合、又はアルキレン基を形成するためのアリール環は、飽和のアルキレン基の中又は不飽和のアルキニレン基の中に、規則的又は不規則的に配置されていてもよい。
より具体的には、例えば、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、又はC17の、直鎖状又は分岐状、好ましくは直鎖状のアルキレン基、前記のアルキレン基の中に1個、2個、又は3個の炭素-炭素二重結合が規則的又は不規則的に配置されたアルキレン基、-(-CH=CH-)n-(ここで、nは3、4、5、6、7、又は8の整数を表す。)の不飽和アルキレン基、-(-Ph-CH=CH-)m-Ph-(ここで、Phは、p-フェニレン基を示し、mは1、2、3、又は4の整数を表す。)で表されるアリーレン基などが挙げられる。

【0040】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」は、置換基を有してもよく、その「置換基」としては、ハロゲン原子;水酸基;炭素数1~5のアルキル基;炭素数1~5のアルキコキシ基;1個から5個、好ましくは1個から3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~5のアルキル基;1個から5個、好ましくは1個から3個のハロゲン原子で置換された炭素数1~5のアルコキシ基;アミノ基;及び1個又は2個の炭素数1~5のアルキル基で置換されたアミノ基からなる群から選ばれる置換基が挙げられる。

【0041】
本発明における「炭素数2から60の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基」は、「当該炭化水素基の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、又は-NR5-(ここで、R5は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表す。)で置換されていてもよく」とは、-C-C-C-の炭素原子の連鎖の中の1つ又は2つ以上の炭素原子が他の原子で置換され、例えば、-C-O-C-、-C-S-C-、-C-SiH2-C-(式中のケイ素原子に結合する水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数1~10のアルコキシ基で置換されていてもよい。)、-C-NR5-C-などのような連鎖になっていてもよいことを表している。このような他の原子での置換は、置換の順番が規則的であってもよいし、不規則的であってもよい。

【0042】
本発明における「炭素数1~10のアルキル基」としては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、などが挙げられる。
本発明における「置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基」としては、炭素数1~5、好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状又は分枝状のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、などが挙げられる。

【0043】
本発明における「炭素数2~10のアルケニル基」としては、1個以上の炭素-炭素二重結合を有する基であって、総炭素数2~10、好ましくは総炭素数2~8、より好ましくは総炭素数2~6の直鎖状又は分枝状のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基の例としては、ビニル基、1-メチル-ビニル基、2-メチル-ビニル基、n-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-ビニル基、1-メチル-プロペニル基、2-メチル-プロペニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基などが挙げられる。

【0044】
本発明における「炭素数2~10のアルキニル基」としては、1個以上の炭素-炭素三重結合を有する基であって、総炭素数2~10、好ましくは総炭素数2~8、より好ましくは総炭素数2~6の直鎖状又は分枝状のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基の例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基などが挙げられる。

【0045】
本発明における「炭素数6~30のアリール基」としては、炭素数6~36、好ましくは炭素数6~18、より好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。このような炭素環式芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられる。

【0046】
本発明における「窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~5個のヘテロ原子を有し炭素原子を2~10個有する5~8員のヘテロアリール基」としては、1~5個、好ましくは1~3個又は1~2個の窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を含有する5~8員、好ましくは5~6員の環を有する単環式、多環式、又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。このような複素環基としては、例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピロリル基、2-ピリジル基、2-インドール基、ベンゾイミダゾリル基などが挙げられる。

【0047】
本発明における「炭素数1~10のアルコキシ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基に酸素原子結合した基が挙げられる。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基などが挙げられる。

【0048】
本発明における「炭素数1~10のアルキルチオ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基に硫黄原子結合した基が挙げられる。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基などが挙げられる。これらのアルキルチオ基における硫黄原子は、スルフィニル(-SO-)又はスルホニル(-SO2-)となっていてもよい。

【0049】
本発明における「炭素数1~10のアルキルカルボニル基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にカルボニル基(-CO-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、などが挙げられる。

【0050】
本発明における「炭素数1~10のアルコキシカルボニル基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にオキシカルボニル基(-O-CO-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、などが挙げられる。

【0051】
本発明における「炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基」としては、前記した炭素数1~10のアルキル基にカルボニルオキシ基(-CO-O-基)が結合したものが挙げられる。このようなアルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、などが挙げられる。

【0052】
本発明における各種の基における「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアミノ基、アルキルシリル基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、ヘテロアリール基、炭素数1~10のアルキルカルボニル基、炭素数3~16の脂環式炭化水素-カルボニル基、炭素数6~30のアリールカルボニル基、炭素数7~30のアリールアルキルカルボニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7~30のアリールカルボニルオキシ基、炭素数7~30のアリールアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2~21のアルコキシカルボニル基、炭素数7~37の炭素環式芳香族-オキシカルボニル基、炭素数6~30のアリールオキシカルボニル基、炭素数7~30のアリールアルキルオキシカルボニル基、などが挙げられる。

【0053】
本発明における「モノアルキル置換アミノ基」としては、アミノ基(-NH2)における1個の水素原子が、前記した炭素数1から10のアルキル基で置換されているアミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などが挙げられる。
本発明における「ジアルキル置換アミノ基」としては、アミノ基(-NH2)における2個の水素原子が、前記した炭素数1から10のアルキル基でそれぞれ置換されているアミノ基であり、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基などが挙げられる。

【0054】
本発明における「ホルミル基」とは、アルデヒド基(-CHO)である。
本発明における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
本発明における「トリアルキルシリル基」としては、前記した炭素数1~5のアルキル基が3個置換したシリル基であって、それぞれのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。このようなトリアルキルシリル基としては、トリエチルシリル基、エチルジメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジエチルシリル基などが挙げられる。

【0055】
本発明の一般式[I]の2価のリンカー基Xにおける「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなるリンカー基」とは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~5個の水素原子以外の原子及び水素原子で構成される2価の原子団からなる基であり、トリプチセン骨格と2価の炭化水素基R1基を連結する基であり、その構造は特に制限されるものではない。好ましい基Xとしては、例えば、-O-;-S-;-SO-;-SO2-;-NR6-(ここで、R6は、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH2-;-CH2-CH2-;-CH=CH-;-C6H4-(フェニレン基);-C4H2S-(2価のチオフェン);-CO-;-OCO-;-COO-;-OCOO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。);-NHCONH-、-CO-NR63-NR63-(ここで、R63は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表す。);-SiR9R10-O-(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-O-SiR9R10-O-(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-SiR9R10-NH-(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。);-NH-SiR9R10-O-(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表す。)などが挙げられる。
一般式[I]における好ましいX基としては、-O-;-S-;-SO-;-SO2-;-NR6-(ここで、R6は、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH2-;-CO-;-OCO-;-CONR61-(ここで、R61は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。);-NR62CO-(ここで、R62は、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基を表す。)などが挙げられ、特に好ましいXとしては、-O-;-NR6-(ここで、R6は、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。);-CH2-;-CO-などが挙げられる。

【0056】
本発明の一般式[I]の末端基Zにおける「固体基板の表面に結合又は吸着し得る基」とは、ガラス、金属、金属酸化物などの基板表面に結合又は吸着することができる官能基であり、例えば、ガラス基板に対するトリメトキシシリル基やトリクロロシリル基、金などに対するメルカプト基やジスルフィド基などの硫黄原子を含有する基などが挙げられる。

【0057】
本発明の一般式[I]の末端基Zにおける「窒素原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる1~15個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団からなる末端基」とは、本発明の一般式[I]における2価の炭化水素基R1基の末端となる1価の基であり、1~15個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の原子及び水素原子で構成される1価の原子団であれば特に制限はない。好ましい基Zとしては、例えば、炭素数1から10のアルキル基;炭素数2から15、好ましくは2から10、より好ましくは2から6の直鎖状又は分岐状のアルケニル基;炭素数2から15、好ましくは2から10、より好ましくは2から6の直鎖状又は分岐状のアルキニル基;炭素数6から15、好ましくは6から12、より好ましくは6から10の単環状、多環状、又は縮合環状のアリール環を含有してなる総炭素数が6から15、好ましくは6から12の2価のアリール基(当該アリール基は、アリール環とアリール環の間又は末端にアルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基を有していてもよい。);炭素数1から10のアルキル基の任意の位置が1~7個のハロゲン原子で置換された炭素数1から10のハロアルキル基;-OR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SOR11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-SO2R11(ここで、R11は水素原子、又は炭素数1から10のアルキル基を表す。);-N(R122(ここで、R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-OCO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-COO-R13(ここで、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-OCOO-R14(ここで、R14は、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CON(R132(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-NR13CO-R13(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-N(R13)CON(R132(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-CO-NR13-N(R132(ここで、R13はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-SiR9R10-O-R13(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-O-SiR9R10-O-R13(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-SiR9R10-N(R132(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-NH-SiR9R10-O-R13(ここで、R9、R10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、又は炭素数1から3のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基を表し、R13は水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-P(OR152(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);-P(=O)(OR152(ここで、R15は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、又は炭素数6から12のアリール基を表す。);などが挙げられる。

【0058】
本発明の一般式[I]の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」とは、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの異なる面を有しており、それぞれの面がそれぞれ異なる特性を有しているトリプチセン誘導体である。トリプチセン誘導体の従来の製造方法としては、ベンゾキノンを用いるディールスアルダー反応(Diels-Alder reaction)をキー反応としてトリプチセン誘導体を製造しているが、この方法では、13位及び16位に同じ置換基(-OH)が同時に導入され、本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」を製造することは困難である。
本発明者らは、1-アルコキシ-6-トリアルキルシリル-フェノールのフェノール性水酸基をトリフラート基などで脱離基とした化合物と、1,8-ジアルコキシアントラセンを縮合剤の存在下で縮合させることにより3置換トリプチセン誘導体を製造することに成功した。この反応の具体例を後述する製造例に示す。この方法により、3置換トリプチセン誘導体を製造することができたが、製造された3置換トリプチセン誘導体は、1,8,13-3置換トリプチセン誘導体(ヤヌス型)と、1,8,16-3置換トリプチセン誘導体(非ヤヌス型)の混合物であり、これを分離することが困難であったが、これを再結晶して精製することにより、1,8,13-トリメトキシトリプチセンを分離精製することに成功した。後述する製造例を参照されたい。

【0059】
1,8,13-トリメトキシトリプチセンは、トリプチセン部位の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積したユニークなパッキング構造をした結晶として分離精製することができた。この結晶構造は、メトキシ基を有するトリプチセン分子の層と、メトキシ基を有さないトリプチセン分子の層で、ダイポールを相殺した集積構造となっている。意外にも、無置換のトリプチセンではこのような入れ子状の結晶構造は見られない。本発明のヤヌス型分子の方向性を揃えた置換基構造によって、特徴的な集積構造が発現していることが、この結晶構造においても示された。
この結晶形は斜方晶系(Orthorhombic crystal system)であり、この結晶形のa、b、及びcの値は、それぞれオングストローム単位で、15.608、13.388、8.041であった。また、Vの値は1680立方オングストロームであった。
このようにして、本発明者らはトリプチセン骨格の一つの方向に同じ置換基を有する「ヤヌス型トリプチセン誘導体」を製造することに初めて成功した。

【0060】
このようにして分離精製された1,8,13-トリメトキシトリプチセンは通常の方法により加水分解して1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンとすることができる。例えば、ジクロロメタンなどの溶媒中でハロゲン化ホウ素の存在下で加水分解することができる。
そして、1,8,13-トリメトキシトリプチセン、及びこれを加水分解して得られる1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンをキー中間体として、公知の各種の合成手段により、本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」及びその中間体化合物を製造することができる。
例えば、アルキル化剤を用いてアルキル化することにより、トリアルコキシ誘導体とすることができる。また、各種のカルボン酸やスルホン酸によりエステル誘導体とすることができる。さらに、水酸基をトリフラート(Tf:トリフルオロメタンスルホネート)とした後、ジシアノ亜鉛によりシアノ化することにより、1,8,13-トリシアノトリプチセンとすることができる。当該シアノ基は通常の方法により、加水分解してホルミル基又はカルボキシル基とすることができる。また、当該シアノ基を通常の方法により還元することにより、アミノメチル基とすることができ、当該アミノ基は通常の方法により各種の置換基で置換することができる。
また、得られたホルミル基はカルボニル化合物としての各種の反応原料として使用することができる。例えば、当該ホルミル基をウィッティッヒ試薬(Wittig reagent)と反応させて-CH=C-結合とすることができる。これを通常の方法により脱水素することにより炭素-炭素三重結合とすることができる。

【0061】
さらに、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンをNBS(N-ブロモスクシンイミド)を用いてブロム化することにより、4,5,16-トリブロモ-1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを製造することができる。この化合物は、トリプチセン分子内の一つの対称面に対して、その一方に3個のヒドロキシ基、他方に3個のブロモ基という異なる置換基を有する化合物であり、一つの対称面に対して異なる機能団を有する本発明の「ヤヌス型トリプチセン誘導体」のキー中間体となる化合物である。
このブロモ体は、ホウ素化合物やケイ素化合物を用いた各種のカップリング反応により、フェニル基やチエニル基などの各種のアリール基やヘテロアリール基に直接変換することができる。例えば、ブロモ基が置換している側に電子受容体となる機能団を導入しようとする場合には、このようなカップリング反応により直接又は段階的に当該機能団を導入することができる。

【0062】
本発明の一般式[I]で表される化合物は、トリプチセンの1,8,13位の面と、4,5,16位の面の2つの面に、それぞれ異なる置換基を有していることを特徴とするものであり、そのうちの少なくとも1つの面に3つの同じ置換基を有していることを特徴とするものである。そして、そのような特異的なトリプチセン誘導体がトリプチセン部位の三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積したユニークなパッキング構造を形成し、特異な有機薄膜を形成することができることを特徴とするものである。さらに、このような特異的な構造をしているトリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を、電子デバイスの構成要素として用いることを、本発明は特徴とするものである。
本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を製造する方法は、本発明者らが初めて分離精製に成功した1,8,13-トリメトキシトリプチセンをキー中間体とすることが大きな特徴であり、それにより各種の本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体を通常の合成手段を組み合わせることにより製造することができることは、当業者には容易に理解されることである。

【0063】
本発明の一般式[I]で表される化合物を製造する場合には、公知の方法で次に示す一般式[III]、
Y1-R1-Z [III]
(式中、R1及びZは前記した基を示し、Y1はハロゲンなどの脱離基を示す。)
の化合物をまず製造し、これと1,8,13-トリ置換トリプチセン誘導体を反応させることにより製造することができる。この反応は置換反応であり、公知の各種の置換反応に準じて行うことができる。
また、置換基Zが反応性である場合には、Zを各種の保護基で保護して反応を行うこともできるし、Zとしてその前駆体、例えば、カルボキシル基を導入しようとする場合には、Zとしてシアノ基の化合物を用い、得られた生成物を加水分解してカルボキシル基とすることができる。Zがエステル基の場合には、エステルのままで反応させてもよく、また、カルボキシル基とした後にエステル化してもよい。なお、保護基及び脱保護については当業者には周知であるが、必要であれば、T.W. Green著Protective Group in Organic Synthesis (John Wiley and Sons, 1991)を参照されたい。
また、1,8,13-トリ置換トリプチセン誘導体の置換基が、ホルミル基のようなカルボニル基を有する化合物である場合には、ウィッティッヒ試薬(Wittig reagent)を用いることにより、基Xが-C=C-である一般式[I]の化合物とすることができる。

【0064】
例えば、ウィリアムソン(Williamson)合成反応により、1,8,13-トリヒドロキシトリプチセンを原料として、12-ブロモドデカン酸メチル(ブロモの代わりにクロロ、ヨード、あるいはトシル酸エステルなどのシュードハライドでも可)と塩基存在下で反応させることにより、前記したエステル基を末端基として有する化合物1を製造することができる。

【0065】
これらの反応において必要に応じて溶媒を使用することができる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテル、THFなどのエーテル系溶媒、DMF、DMA、DMSOなどの非プロトン性極性溶媒、エタノールなどのアルコール系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて各種の試薬の存在下に反応を行うこともできる。このような試薬としては塩基が好ましく、塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。塩基としてはトリアルキルアミンなどの有機塩基を使用することもできるが、無機塩基の方が好ましい。
反応温度としては、反応が適切に進行する範囲であれば任意に設定することができるが、通常は常温から溶媒の沸点までの範囲が好ましい。反応混合物から目的の生成物を単離し精製する方法としては、通常の単離・精製手段、例えば、溶媒抽出、再結晶、再沈殿、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの方法で行うことができる。また、生成物に光学活性がある場合には、必要に応じて光学分割することもできる。

【0066】
本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体は、トリプチセンの三枚羽状に配列したベンゼン環が入れ子状に集積し、このような特徴的な集積化挙動を利用することで、次元性が制御された二次元状分子集合体が合理的に構築でき、有機薄膜を形成させることができる。本発明の膜を製造する方法としては、スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法、超音波法、気相法、蒸着法などを任意に選定することができるが、本発明の化合物は有機溶媒に溶解させることができるので、スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法などが好ましい。
スピンコート法は、高速で回転する基板の上に溶液を滴下して均一な膜厚の薄膜を成膜させる方法である。浸漬法は、溶液に基板を浸漬させて成膜する方法である。キャスト法(ドロップキャスト法を含む)は溶液を基板の上に滴下した後、溶媒を乾燥させて成膜する方法であるが、その膜厚は必ずしも均一とはならない。インクジェット法は、任意の位置に微少な溶液を滴下して成膜させる方法である。また、本発明の膜を製造する方法としては、これらの公知の成膜方法により成膜することができるが、本発明の膜は特異的な集積化挙動をすることから、液/液界面による成膜法でも行うことができる。例えば、本発明の化合物を水に溶けない有機溶媒に溶解させた溶液を、水と接触させて水/有機溶媒の界面を形成させ、当該界面において膜を製造することもできる。このようにして製造された有機薄膜を、電子デバイスなどの構成要素として使用することもできる。
また、本発明の一般式[I]で表される化合物の中のいくつかの化合物は蒸着法、好ましくは真空蒸着法により膜を形成することができる。特に、融点が比較的低く、分解温度が高い化合物が好ましい。本発明における蒸着法は、通常の蒸着法により行うことができる。例えば、化合物を融点以上に加熱して蒸発させ、又は化合物が昇華性である場合は、昇華させて、10-5Pa~10-3Paの減圧下で行われるのが好ましい。基板の温度は、室温付近でもよいが、好ましくは50℃~100℃程度が挙げられる。蒸着法による膜の形成に適した本発明の化合物としては、一般式[I]における、Xが-CH2-で、Zが水素原子で、R1が炭素数8~15のアルキレン基、好ましくは炭素数9~12のアルキレン基である化合物が挙げられる。

【0067】
本発明の膜を固体基板上に製造する場合には、前記してきた本発明の固体基板を用いることができる。さらに、これらの固体基板に対して紫外線(UV)、オゾン等による洗浄処理が施された固体基板;これらの固体基板上に、配線、電極等の接続端子や、絶縁層、導電層等の他の層が積層された積層体などを固体基板とすることもできる。本発明において用いられる固体基板としては、薄膜トランジスタのような電子デバイスにおいては、特に有機系又は無機系の絶縁材料が好ましく、特に有機絶縁材料が好ましい。
本発明の膜を固体基板上に製造する方法としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を有機溶媒に溶解し溶液とする工程、次いで、当該溶液を塗布若しくはスピンコート、又は当該溶液に固体基板を浸漬する工程、及び前記固体基板上の溶液を乾燥する工程を含有する方法が挙げられる。
また、本発明の膜を界面で製造する方法としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を水などの第二の溶媒と交わらない有機溶媒に溶解し溶液とする工程、次いで、当該溶液に水などの第二の溶媒を加え界面を形成し、当該界面に膜を形成させる工程、製造された膜を分離する工程、及び分離された膜を乾燥する工程を含有する方法が挙げられる。
このような方法で製造された本発明の膜の膜厚としては、特に制限はないが、単分子膜とする場合の平均厚さは、0.1nmから5nm、好ましくは1nmから3nmとするのが好ましい。また、多層膜とする場合の、平均厚さは、2nmから50nm以下、好ましくは3nmから30nmとするのが好ましい。さらに、液/液界面により製造される場合には、さらに膜厚の大きな膜を製造することができ、膜厚を30nmから1000nm、好ましくは50nmから500nmとすることもできる。

【0068】
膜を製造する際の有機溶媒としては、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を溶解することができるものであれば特に制限はなく、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等のグリコールエステル;前記の多価アルコール類又は前記のエステル類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノエーテル又はモノエーテルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤;ジオキサンやTHFなどの環式エーテル類;ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド類;ジメチルスルホキサイド(DMSO)などの硫黄含有溶媒;などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
好ましい有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)などのアミド類、ジオキサンやTHFなどの環式エーテル類、ジメチルスルホキサイド(DMSO)などの硫黄含有溶媒などが挙げられる。特に好ましい溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)などの極性溶媒が挙げられる。

【0069】
有機溶媒の使用量は、特に制限はなく、製造する膜厚さや製造条件を考慮して適宜設定すればよい。ドロップキャストやインクジェットによる場合は、溶媒の広がる面積を勘案して、目的とする膜厚が得られる固形分濃度に調整する。この時、好ましい濃度としては、有機溶媒100mL中に本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体が、0.01mgから1000mg、より好ましくは0.1mgから100mg、さらに好ましくは0.1mgから10mgとすることができる。
このように、一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を前記した有機溶媒などの有機薄膜形成用担体に、混合又は溶解させることにより、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体、及び有機薄膜形成用担体を含有してなる有機薄膜形成用組成物を製造することができる。
本発明の有機薄膜を製造する際の温度としては、通常は室温で行うことができるが、溶媒の種類や製造条件によっては、加温下又は冷却下でも行うことができる。
本発明の有機薄膜の製造における乾燥は、自然乾燥で十分であるが、乾燥した空気や窒素等を吹き付けるなどの方法や、必要により加温や減圧して乾燥させることもできる。
また、膜の形成後、メタノール、クロロホルム等の有機溶剤や精製水などを用いて製造された有機薄膜の洗浄を行ってもよいが、特に洗浄する必要はない。
本発明の有機薄膜を界面で製造する場合には、界面で製造された膜をガラス基板などの基板に転写して分離することができる。分離された膜は、前記した方法で乾燥させることができる。

【0070】
このようにして製造された本発明の有機薄膜を、さらにアニーリング処理することもできる。
スピンコート法、浸漬法、キャスト法、インクジェット法などで製造された膜については、アニーリング処理は、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の融点とほぼ同じ温度、好ましくは約100℃から230℃、より好ましくは約130℃から230℃、さらに好ましくは150℃から200℃程度に加熱することにより行われる。
また、蒸着法で製造された膜については、約100℃から200℃、好ましくは約110℃から150℃程度に加熱することにより行われる。
アニーリング処理は、通常は大気下で行うことができるが、窒素気流下などの不活性気流下であってもよい。アニーリングの時間は特に制限はないが、通常は5分から50分、好ましくは10分から30分程度で十分である。
アニーリング処理による機構の詳細は不明であるが、アニーリングにより一度形成された膜が再構築され、より均一な膜厚となると考えられる。

【0071】
本発明の有機薄膜は、一般式[I]における末端基Zの種類により、単層構造とすることや末端基Zが分子間で向かい合ったバイレイヤー構造とすることができる。また、製造方法によっても有機薄膜の厚さを調整することができ、電子材料、光学材料、表面処理材料などとして幅広い用途に適した有機薄膜とすることができる。
また、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体で形成される有機薄膜は、表面を疎水性とすることができ、有機半導体のような疎水性の物質との親和性が向上する。例えば、有機絶縁層として汎用されているポリパラキシリレンにおける水滴の接触角を測定すると、ポリパラキシリレンのみの場合の接触角は約87度であったが、ポリパラキシリレンの表面に本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の有機薄膜を形成させた場合には、水滴の接触角は約103度となり、表面の疎水性が向上していたことがわかった。

【0072】
本発明の電子デバイスは、従来の電子デバイスの製造方法に準じて製造することができ、その際に、従来の有機薄膜、特にSAMに代えて、前記してきた本発明の有機薄膜とすることによって製造することができる。前記してきたように、本発明の有機薄膜は、基板に依存しないので、有機系又は無機系の各種の基板上に前記してきた方法によって目的の有機薄膜を形成させることができる。

【0073】
例えば、薄膜トランジスタの製造例としては、次のような方法が挙げられる。
シリコンウェハー上にアルミニウムを沈着させてパターン化し、次いで酸素プラズマ中で灰化して表面を酸化アルミニウムとして、絶縁層が酸化アルミニウムであるAl2O3/Alゲート電極をパターン化する。その上に本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の溶液をドロップキャストし、乾燥させる。必要に応じて約200℃でアニーリングしてもよい。このようにして、パターン化されたAl2O3/Alゲート電極上に本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有する有機薄膜を形成する。次いで、Al2O3/Alゲート電極及び有機薄膜の上にDNTT(ジナフトチエノチオフェン)などの有機半導体を沈着させて、有機半導体層を形成する。そして、有機半導体層の上に真空蒸着法などにより金を沈着させて、ソース電極とドレイン電極を形成する。

【0074】
前記の方法において、有機半導体層を形成させずに、有機薄膜の上に直接金を沈着させれば、コンデンサとすることもできる。
本発明のコンデンサは、電極間に前記してきた本発明の有機薄膜からなる誘電体層を有していることを特徴とするものである。本発明のコンデンサは、誘電体層のさらに第二の誘電体を含有することもできる。第二の誘電体としては、コンデンサに使用される誘電体であれば特に制限はないが、有機誘電体が好ましい。また、第二の誘電体を含有する場合には、誘電体層は積層構造とすることが好ましい。

【0075】
また、電子ペーパーを製造する場合には、まずポリカーボネート基板のような透明性があってフレキシブルなポリマー基板を洗浄し、次いでこの基板上に、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)のような有機導電体又は銅などの金属微粒子を用いてパターン化してゲート電極を形成する。次に、基板の一部又は全面に、ポリイミドやポリメチルメタクリレートやポリパラキシリレンのような有機絶縁体層を形成する。次に、ゲート電極と重なるように、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有する有機薄膜を形成させる。さらに、その上にDNTT(ジナフトチエノチオフェン)などの有機半導体を沈着させて、有機半導体層を形成する。そして、有機半導体層の上に真空蒸着法などにより金を沈着させて、ソース電極とドレイン電極を形成する。

【0076】
これらの薄膜トランジスタにおける、絶縁体としては、無機材料、有機材料、又は、有機低分子アモルファス材料等の種々の絶縁体が挙げられる。無機材料としては、例えばSiO2、Al2O3、Ta2O5、ZrO2等の単金属酸化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムバリウムなどの複合酸化物、SiNxなどの窒化物、酸化窒化物、フッ化物等を挙げることができる。有機材料としては、例えば、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリパラキシリレン、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ベンゾシクロブテン、シアノエチルプルラン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデン-4フッ化エチレン共重合体、及びその他のポリマー材料を挙げることができる。有機低分子アモルファス材料としては、例えば、コール酸、コール酸メチル等を挙げることができる。
これらの絶縁体の形成方法としては、絶縁体の材料に応じて、蒸着、スパッタリング、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、ゲート電極の陽極酸化、塗布、溶液からの付着等、種々の成膜方法を採用することができる。ゲート絶縁層の厚さは、材料にもよるが、約10nm~約500nmとすることができる。

【0077】
これらの薄膜トランジスタにおける、半導体としては、有機半導体材料や無機酸化物半導体材料が挙げられる。有機半導体材料としては、ポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、ポリチエニレンビニレン、ポリアルキルチオフェン、及びそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料;DNTT(ジナフトチエノチオフェン)、オリゴチオフェン、ペンタセン、テトラセン、銅フタロシアニン、ペリレン、およびそれらの誘導体のような低分子有機半導体材料を用いることができる。また、カーボンナノチューブあるいはフラーレンなどの炭素化合物や半導体ナノ粒子分散液なども半導体層の材料として用いることができる。これらの有機半導体材料はトルエンなどの芳香族系の溶媒に溶解又は分散させてインキ状の溶液又は分散液として用いることができる。また、蒸着法によって成膜することもできる。酸化物半導体材料としては、例えば、亜鉛、インジウム、スズ、タングステン、マグネシウム、ガリウムのうち一種類以上の元素を含む酸化物が挙げられる。酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛ガリウムインジウム(In-Ga-Zn-O)等公知の材料が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。これらの材料の構造は単結晶、多結晶、微結晶、結晶/アモルファスの混晶、ナノ結晶散在アモルファス、アモルファスのいずれであってもかまわない。

【0078】
これらの薄膜トランジスタにおける、基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどのフレキシブルなプラスチック材料;石英などのガラス基板;シリコンウェハー;アルミニウムウェハーなどがある。

【0079】
また、薄膜トランジスタには、必要に応じて封止層、遮光層などを設けることもできる。封止層の材料としては絶縁体の材料と同一の材料から選択して用いることができ、遮光層はゲート材料などにカーボンブラック等の遮光性材料を分散させたものを用いることができる。

【0080】
以上の例から明らかなように、本発明の有機薄膜電子デバイスの構成要素とすることができ、これにより安定性の優れた電子デバイスを得ることもできる。即ち、本発明は、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜からなる電子デバイス材料を提供するものである。
また、本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を含有してなる有機薄膜を、電子デバイス中に設けることを特徴とする、本発明の電子デバイスを製造する方法が提供されることになる。

【0081】
このようにして製造される本発明の電子デバイス又は電子素子を適宜組み合わせ、それらを配線して増幅やデータ処理などの目的に応じた電子回路を、通常の方法で基板上に形成させることができる。このようにして形成された基板上の電子回路が本発明の回路基板である。本発明の回路基板は、目的に応じて1枚であってもよいし、2枚以上の複数枚で形成されていてもよい。

【0082】
さらに、このような回路基板を適宜組み合わせることにより、本発明の電子機器を製造することができる。本発明の電子機器は、それ自体が各種の電子製品となっていてもよいし、当該電子製品の一部を形成する装置、例えば表示装置のような装置となっていてもよい。

【0083】
以下、製造例及び実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら製造例及び実施例により何ら限定されるものではない。

【0084】
製造例1 次に示すトリメトキシトリプチセン混合物の製造

【0085】
【化4】
JP0006272242B2_000005t.gif

【0086】
1,8-ジメトキシアントラセン(22.3g、93.7mmol)とフッ化セシウム(CsF)(85.3mg、561.0mmol)にアセトニトリル(750mL)を加え懸濁液とし、80℃に加熱した。この懸濁液に、2-メトキシ-6-トリメチルシリルオキシ-トリフルオロメチルスルホネート(61.5g、188mmol)を滴下し、5時間加熱還流した。得られた反応混合物から、アセトニトリルを減圧留去し、残渣を水、次いでヘキサン/クロロホルム混合溶媒(1/1、v/v)で洗浄して目的のトリメトキシトリプチセンを得た(収量22.2g、収率64.5%)。得られたトリメトキシトリプチセンは、NMRの測定によれば、1,8,13-トリメトキシトリプチセン(化合物5a)と1,8,16-トリメトキシトリプチセン(化合物5b)の2:1の混合物であった。

【0087】
化合物5a:
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)
7.01 (d, J = 0.7 Hz, 3H), 6.90 (dd, J = 7.3, 1.0 Hz, 3H), 6.80 (s, 1H), 6.58 (dd, J = 8.2, 0.7 Hz, 3H), 5.38 (s, 1H), 3.86 (s, 9H).
化合物5b:
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)
7.09-7.07 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.06-7.04 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.93-6.89 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.93-6.89 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 6.58-6.56 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 6.56-6.54 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 6.35 (s, 1H), 5.87 (s, 1H), 3.84 (s, 6H), 3.83 (s, 3H).

【0088】
製造例2 1,8,13-トリメトキシトリプチセン(化合物5a)単結晶の製造

【0089】
【化5】
JP0006272242B2_000006t.gif

【0090】
製造例1で製造されたトリメトキシトリプチセン混合物(10.0mg)を、クロロホルムに溶解させ、静置することにより結晶化させて、標記の1,8,13-トリメトキシトリプチセン(2.0mg)を得た。
得られた結晶の単結晶X線構造解析を行った結果、この結晶は、斜方晶系(Orthorhombic crystal system)であり、単位格子のa、b、及びcの値は、それぞれオングストローム単位で、15.608、13.388、8.041であった。また、Vの値は1680立方オングストロームであった。

【0091】
製造例3 1,8,13-トリヒドロキシトリプチセン(化合物6)の製造

【0092】
【化6】
JP0006272242B2_000007t.gif

【0093】
製造例1で製造されたトリメトキシトリプチセン混合物(22.0g、62.9mmol)にジクロロメタン320mLを加え懸濁溶液とし、これにトリブロムホウ素(BBr3)(18.2mL、192mmol)を加え、0℃で4時間攪拌した。反応混合物に水200mLを加え、析出した粉末をろ取し、減圧下乾燥させた。得られた粉末をジメチルホルムアミド80mLに溶解させ、5℃で静置すると、無色透明結晶が析出した。この結晶をろ取し、クロロホルムで洗浄することにより、標記の1,8,13-トリヒドロキシトリプチセン(化合物6)を選択的に得た(収量9.14g、収率71%)。

【0094】
化合物6:
1H-NMR(400MHz、アセトン-d6):δ(ppm)
8.35 (br, s, 3H), 6.94-6.93 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.86 (s, 1H), 6.79-6.75 (dd, J = 7.2, 0.9 Hz, 3H), 6.56-6.54 (dd, J = 8.1, 0.9 Hz, 3H), 5.44 (s, 1H).

【0095】
製造例4 次に示す化合物1の製造

【0096】
【化7】
JP0006272242B2_000008t.gif

【0097】
製造例3で製造された化合物6(102mg、0.337mmol)をジメチルホルムアミド10.0mLに溶解させ、炭酸カリウム(190mg、1.34mmol)および12-ブロモドデカン酸メチル(373mg、1.21mmol)を加え、70℃で10時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル50mLを加え、水洗後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥およびろ過し、減圧留去した。残渣を、クロロホルムを溶媒とするゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより、標記の化合物1を得た(収量261g、収率82%)。

【0098】
化合物1:
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)
6.99 (d, J = 7.3 Hz, 3H), 6.89-6.84 (m, 4H), 6.54 (d, J = 8.3 Hz, 3H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, J = 6.6 Hz, 6H), 3.67 (s, 9H), 1.85 (m, 6H), 1.705-1.270 (m, 60H),

【0099】
製造例5 次に示す化合物8の製造

【0100】
【化8】
JP0006272242B2_000009t.gif

【0101】
製造例3で製造された化合物6(100mg、0.331mmol)及び炭酸カリウム(274mg、1.98mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに1-ブロモドデカン(990mg、3.97mmol)を加え、75℃で8時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル300mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水及び水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物8を白色粉末として得た(収量213mg、収率89%)。

【0102】
化合物8:
1H-NMR(400MHz、アセトン-d6):δ(ppm)
7.99 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 7.91 (s, 1H), 7.89 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 7.55 (d, J = 8.1 Hz, 3H), 3.95 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 1.85 (q, J = 7.1 Hz, 6H), 1.60-1.55 (m, 6H), 1.36-1.28 (m, 54H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 9H).

【0103】
製造例6 次に示す化合物9の製造

【0104】
【化9】
JP0006272242B2_000010t.gif

【0105】
製造例3で製造された化合物6(100mg、0.331mmol)及び炭酸カリウム(365mg、2.64mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに11-ブロモドデセン(608mg、2.61mmol)を加え、80℃で12時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル200mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物9を白色粉末として得た(収量187mg、収率75%)。

【0106】
化合物9:
1H-NMR(400MHz、アセトン-d6):δ(ppm)
6.99 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.89 (s, 1H), 6.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 6.54 (d, J = 7.8 Hz, 3H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, J = 6.4 Hz, 6H), 2.19 (td, J = 7.1 Hz, J = 2.6 Hz, 6H), 1.94 (t, J = 2.6 Hz, 3H), 1.85 (q, J = 7.0 Hz, 6H), 1.58-1.50 (m, 12H), 1.41 -1.35 (m, 24H).

【0107】
製造例7 次に示す化合物10の製造

【0108】
【化10】
JP0006272242B2_000011t.gif

【0109】
製造例3で製造された化合物6(160mg、0.221mmol)及び炭酸カリウム(365mg、2.64mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0mLを加え撹拌し、さらに11-ブロモドデシン(11-bromododecyne)(608mg、2.61mmol)を加え、80℃で12時間加熱撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、ジエチルエーテル200mL及び水を加え、有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した後、溶媒を減圧で留去した。残渣をクロロホルムを溶媒とするサイズ排除クロマトグラフィーに供し、標記の化合物10を白色粉末として得た(収量99.3mg、収率47%)。

【0110】
化合物10:
1H-NMR(300MHz、アセトン-d6):δ(ppm)
7.00 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 6.90 (s, 1H), 6.87 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 6.55 (d, J = 7.5 Hz, 3H), 5.87-5.75 (m, 3H), 5.04 ~ 4.92 (m, 6H), 5.37 (s, 1H), 3.96 (d, J = 6.6 Hz, 6H), 2.08-2.01 (m, 6H), 1.85 (q, J = 6.6 Hz, 6H), 1.65-1.51 (m, 12H), 1.36-1.32 (m, 24H).

【0111】
製造例8 次に示す化合物11の製造

【0112】
【化11】
JP0006272242B2_000012t.gif

【0113】
製造例6で製造された化合物9(160mg、0.221mmol)、次式

【0114】
【化12】
JP0006272242B2_000013t.gif

【0115】
で表されるトリフルオロメチル化剤(J.Am.Chem.Soc., 2011, 133, 16410)(316mg、1.00mmol)、及び塩化銅(I)(9.90mg、0.100mmol)に、ジメチルホルムアミド2.0 mLを加え、混合物を凍結して脱気し、アルゴン下、70℃で30分加熱撹拌した。反応混合物に水300 mLを加え、析出した固体をろ取し、ヘキサン-ジクロロメタン混合溶媒(2:1、v/v)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに供した。得られた白色粉末(119mg)に5%パラジウムカーボン(24mg)、テトラヒドロフラン50mL及びエタノール50mLを加え、水素ガス雰囲気下、室温で12時間撹拌した。反応混合物をセライト濾過し、溶媒を減圧で留去した。残渣をヘキサン-ジクロロメタン混合溶媒(2:1、v/v)を展開溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに供することで、標記の化合物11を白色粉末として得た(収量196mg、収率78%)。

【0116】
化合物11:
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)
7.00 (d, 3H, J = 7.4 Hz), 6.89 (s, 1H), 6.87 (dd, 3H, J = 7.4, 7.4 Hz), 6.55 (d, 3H J = 7.4 Hz), 5.37 (s, 1H), 3.96 (t, 6H, J = 6.5 Hz), 1.85(m, 6H), 1.61-1.51 (tt, 6H, J = 6.5, 6.5 Hz), 1.43-1.29 (m, 36H).

【0117】
製造例9 化合物1の集合構造の同定
化合物1の粉末を240℃でアニールし、25℃に冷却して化合物1の集合構造を製造した。
製造された化合物1の集合構造は、粉末X線回折測定により、三枚羽状のベンゼン環が入れ子状に充填された層と、長鎖アルキル基の層からなるラメラ状の集積構造を形成することが明らかにされた。粉末X線回折測定により約2.4nmの層間距離が観測され、これは化合物1の長軸方向の距離と一致している。上記結果は、本ヤヌス型分子の集合化挙動を利用することで、官能基や機能団を層状に高密度集積化できることを示している。

【0118】
製造例10
本ヤヌス型トリプチセン(化合物1)を用いて、水と有機溶媒による液/液界面での膜形成を行った。数cm2スケールでの膜形成が可能で、屈曲性のある膜が得られた。膜をガラス基板に転写し、X線回折測定を行った。この結果、レイヤー構造は基板に平行に形成されていることが明らかになった。また、膜厚は50-数百nm程度であり、膜の最も薄い部分は約20分子層に相当すると考えられる。
さらに、膜状構造体の薄膜化および高強度化を測定した。

【0119】
製造例11 化合物1を用いたガラス基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図3に示す。

【0120】
製造例12 化合物1を用いた雲母基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図4に示す。

【0121】
製造例13 化合物1を用いた雲母基板上での膜の製造
化合物1のTHF溶液(1mg/200mL。約5.3μM)50μLをガラス基板にドロップキャストした。
これを自然乾燥させた。
次いで、大気下で180℃、20分間アニーリングした。
製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した。
AFM測定の結果を図5に示す。

【0122】
製造例14 化合物8を用いた蒸着法による膜の製造
通常の真空蒸着装置を用いて、4×10-4Paの減圧環境下で、シリコン基板を基板温度25℃として、製造例5で製造した化合物8を融点以上の約200℃に加熱して、真空蒸着した。得られた蒸着膜の膜厚は62nmであった。
得られた膜における分子の配向を斜入射X線回折法(GIXD)で測定した結果、d110の間隔が0.41nmの規則的な配向分子膜であることがわかった。この結果からも配向分子膜におけるトリプチセン骨格の間隔が0.81nmであることがわかった。
前記の方法でシリコン基板上に形成された膜を120℃で60分間アニールすることにより、膜厚が2.5nmである平坦な(モノドメイン)膜が得られた。

【0123】
製造例15
製造例14と同様の方法で、石英基板、雲母基板、ポリイミド基板、及びPET基板に、製造例5で製造した化合物8を、それぞれ真空蒸着した。得られたそれぞれの膜圧は50nmであった。
得られたそれぞれの膜における分子の配向を、製造例14と同様にGIXDで測定した結果、d110の間隔が約0.41nmの規則的な配向分子膜であることがわかった。

【0124】
製造例16
製造例14と同様の方法で、サファイヤ基板に、製造例5で製造した化合物8、製造例6で製造した化合物9、製造例7で製造した化合物10、及び製造例8で製造した化合物11をそれぞれ真空蒸着した。得られた膜の膜厚は、それぞれ50nmであった。
化合物10を用いて製造された蒸着膜を、減衰全反射赤外吸収スペクトル(ATR-IR)で測定したところ、炭素-炭素三重結合の特性吸収を確認することができた。

【0125】
製造例17
製造例5で製造した化合物8を用いたシリコン基板上での膜の製造
化合物8のトルエン溶液(200μM,50μL)を、シリコン基板に2300rpmでスピンコーティングした。塗布量を単分子膜の形成に想到する量とすることにより、単分子膜を形成させた。
これを自然乾燥させ、製造された膜を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した結果、膜厚は約1.9nmであった。
これを150℃で1時間アニーリングしたところ、極めて平坦な膜を得ることができた。アニーリングをトルエン蒸気により、80℃で1時間行っても同様の結果が得られた。
【実施例1】
【0126】
化合物1を用いて製造された膜を用いてトランジスタ10を製造した。
図6にトランジスタ10の模式図を示す。
シリコンウェハー上にアルミニウムを沈着させてパターン化し、次いで酸素プラズマ中で灰化して表面を酸化アルミニウムとして、絶縁層が酸化アルミニウムであるAl2O3/Alゲート電極11及びゲート絶縁層12をパターン化した。その上に化合物1の溶液(2mg/50mL)10μLをドロップキャストし、乾燥させた。その後、約200℃で20分間アニーリングして、膜厚約2.6nmの有機薄膜13とした。パターン化されたAl2O3/Alゲート電極11上で有機薄膜13の上に、DNTT(ジナフトチエノチオフェン)からなる有機半導体を真空蒸着させて、有機半導体層14を形成した。そして、有機半導体層14の上に真空蒸着法により金を沈着させて、ソース電極16及びドレイン電極15を形成した。ソース電極16およびドレイン電極15のパターン形成は、真空蒸着時にシャドーマスクを用いて行った。
【実施例1】
【0127】
得られたトランジスタ10の静電容量(キャパシタンス)は644nF/cm2であり、電子移動度(モビリティー)は0.387cm2/Vsであり、オンオフ比は7.32×106であり、スレショルド電圧は-0.487Vであり、リーケイジ電流は9.44×10-11Aであった。
【実施例1】
【0128】
比較例1
実施例1において、化合物1による有機薄膜の形成を行わずに、酸化アルミニウム上に直接有機半導体層を形成することにより、同様のトランジスタを製造した。
得られたトランジスタの静電容量(キャパシタンス)は710nF/cm2であり、電子移動度(モビリティー)は0.504cm2/Vsであり、オンオフ比は5.14×105であり、スレショルド電圧は-0.709Vであり、リーケイジ電流は2.86×10-10Aであった。
【実施例2】
【0129】
本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体を用いてトランジスタ20を製造する。
ゲート絶縁層としてパリレン(登録商標)を用いてゲート絶縁層22とし、ゲート電極21を金とした。そして、実施例1と同様に、ゲート絶縁層22の上に本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体による有機薄膜23を形成させ、その上に有機半導体層24、さらにその上に金のドレイン電極25及びソース電極26を形成させる。
一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体として、一般式[I]のR2がフェニル基などのアリール基やヘテロアリール基である場合には、この部分が有機半導体として機能することから、有機半導体層24を省略することもできる。
【実施例3】
【0130】
有機薄膜の材料化合物として次の化合物7を用いて、図7に示されるトランジスタ30を製造した。
【実施例3】
【0131】
【化13】
JP0006272242B2_000014t.gif
【実施例3】
【0132】
ポリイミド(PI)フィルム上にゲート電極31としてパターン化して金を沈着させた。パターン化されたゲート電極31を覆うようにパリレン(登録商標、パラキシリレン系樹脂)をCDVで蒸着させ、窒素気流下で、120℃で、1.5時間アニーリングして、第1のゲート絶縁層32を形成させた。前記した化合物7のメシチレン溶液(5.0mgの化合物7を50mLのメシチレンに溶解させた溶液)10μLを、それぞれの前記したパリレン(登録商標)からなる第1のゲート絶縁層32上にキャスティングし、窒素気流下で100℃で、1.5時間アニーリングして、第1のゲート絶縁層32を覆うように第2のゲート絶縁膜となる化合物7の有機薄膜33を形成させ、当該有機薄膜33の上にp型半導体とするためにDNTT(ジナフトチエノチオフェン)からなる有機半導体を真空蒸着させて、有機半導体層34を形成させた。次いで、有機半導体層34の上に金電極を沈着させて、ドレイン電極35及びソース電極36とした。
化合物7は、アルキル鎖の末端がメチル基(CH3-)であり、メルカプト基(HS-)のような官能基ではない。このように本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体は、表面の材質に依存することなく良質の有機薄膜を形成することができる。特に、有機材料であるパリレン(登録商標)上に緻密に配列した平坦性の高い有機薄膜層を形成できることは,ポリイミドやポリエチレンテレフタレートのようなフレキシブルなプラスチック基板上に低温で成膜欠陥の無いゲート絶縁層の形成を可能にする。化合物7からなる有機薄膜33により、薄膜トランジスタの電流が集中するゲート絶縁層と有機半導体層の界面を改質し制御することが可能になり、高性能のフレキシブル有機薄膜トランジスタアレイが実現できる。
【実施例3】
【0133】
得られたトランジスタ30の静電容量(キャパシタンス)は43.1nF/cm2であり、電子移動度(モビリティー)は1.9cm2/Vsであり、オンオフ比は4.4×107であり、スレショルド電圧は-0.52Vであり、最大リーク電流は-32pAであった。
【実施例3】
【0134】
比較例2
実施例3において、化合物7による有機薄膜の形成を行わずに、ゲート絶縁層32上に直接有機半導体層34を形成することにより、有機薄膜の無いトランジスタを製造した。
得られたトランジスタの静電容量(キャパシタンス)は42.6nF/cm2であり、電子移動度(モビリティー)は0.60cm2/Vsであり、オンオフ比は約107であり、スレショルド電圧は-0.8Vであった。
このように、界面改質された本実施例の有機2層ゲート絶縁膜を用いた有機薄膜トランジスタは、極めて高い移動度の向上をもたらした。また、有機ゲート絶縁膜の効果で高いオンオフ比を同時に実現することができた。
【実施例4】
【0135】
有機薄膜として化合物7の4,5,16-トリフェニル体を用いた。本実施例で用いた化合物7の4,5,16-トリフェニル体のフェニル基部分433は、有機半導体としても機能するので、実施例3におけるDNTTからなる有機半導体層の形成は省略した。その他は実施例3と同様にして図8に示されるトランジスタ40を製造する。
実施例3と同様に、ポリイミド(PI)フィルム上に金のゲート電極41を形成させ、それを覆うようにパリレン(登録商標、パラキシリレン系樹脂)からなる第1のゲート絶縁層42を形成させた。そして、ヤヌス型トリプチセン誘導体の4,5,16-トリフェニル体を用いて第2のゲート絶縁膜となる有機薄膜43を形成させ、その上に金電極を沈着させて、ドレイン電極45及びソース電極46とした。トランジスタ40の有機薄膜43は、アルキル鎖部分431、トリプチセン骨格部分432、及びフェニル基部分433で構成される。フェニル基部分433は、それ自体も有機半導体としても機能することになる。
この構成では、ヤヌス型トリプチセン誘導体の単一層からなる有機薄膜43の内部に,トランジスタのゲート絶縁層と半導体層の境界が内包されている。従来はゲート絶縁層と半導体層が別々の材料からなる積層体であり、その界面は連続した成膜工程の影響を大きく受ける構造を有していたのに対して、本実施例では薄膜有機トランジスタの性能や品質に大きく関係する界面が、単一化学物質の内部に形成されているため、成膜プロセスに依らない高性能で品質が安定したトランジスタを作成することができる。
【実施例5】
【0136】
実施例4では、使用した化合物7の4,5,16-トリフェニル体のフェニル基の面が有機半導体として機能することから、有機半導体層を除去したトランジスタ40を製造したが、さらにDNTTなどからなる有機半導体層を設けることもできる。実施例4で製造したトランジスタ40にさらに有機半導体層54を設けたトランジスタ50を製造する。
図9は、化合物7の4,5,16-トリフェニル体からなる有機薄膜53及び有機半導体層54の部分のみを示している。有機薄膜53は、アルキル鎖部分531、トリプチセン骨格部分532、及びフェニル基部分533で構成されており、当該フェニル基部分533の上に有機半導体層54が形成されている。
この構成では、有機薄膜53と有機半導体層54の間に界面が存在するが、いずれも有機系であり、親和性の優れた界面とすることができる。
【実施例6】
【0137】
実施例3では、本発明の有機薄膜として化合物7を使用してきたが、化合物7に代えて、一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の4,5,16-トリフェニル体を用いて、実施例4と同様にしてトランジスタ60を製造する。
また、実施例5に示されるように、さらに有機半導体層64を設けることもできる。
【実施例7】
【0138】
図10に示されるトランジスタ70を製造する。
有機薄膜として本発明の一般式[I]で表されるヤヌス型トリプチセン誘導体の4,5,16-トリフェニル体を用いて、ゲート絶縁層72、本発明の有機薄膜73、電極75及び76、並びに有機半導体層74の順として、ソース電極76及びドレイン電極75を有機半導体層74の下側に位置するようにしたトランジスタ70を製造する。
図10の、本発明の有機薄膜73は、アルキル鎖部分731、トリプチセン骨格部分732、及びフェニル基部分733からなり、実施例6と同様に、有機薄膜のフェニル基部分733は、有機半導体層と親和性を有するだけでなく、それ自体も有機半導体として機能することになる。
また、4,5,16-トリフェニル体に代えて、4,5,16-無置換体(即ち、一般式[I]のR2が水素原子の化合物)を使用することもできる。
なお、図10では簡便のために、一般式[I]の-R1-Z部分をアルキル鎖で示している。
【実施例8】
【0139】
図11に示されるトランジスタ80を製造する。
ゲート電極81の上にパリレン(登録商標)からなるゲート絶縁層82を形成させる。当該パリレン(登録商標)からなるゲート絶縁層82の上にソース電極86及びドレイン電極85を形成する。その上に、本発明のヤヌス型トリプチセン誘導体のトリプチセン骨格部分がソース電極及びドレイン電極に接する方向で本発明の有機薄膜83を形成させる。形成された有機薄膜の上部を封止層87で覆ってトランジスタ80を製造する。
有機薄膜のトリプチセン骨格部分が有機半導体として機能することになる。
また、本実施例で有機薄膜として使用された化合物に代えて、4,5,16位がフェニル基などの各種のアリール基やヘテロアリール基、例えばポリチオフェンやポリフェニルなどが置換した化合物などを用いることもできる。
なお、図11では簡便のために、一般式[I]の-R1-Z部分をアルキル鎖で示している。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、有機半導体層と絶縁体層の界面を極めて均質・清浄に形成できる新規な有機薄膜を提供する。本発明の有機薄膜を用いることにより、電子デバイス、特に有機薄膜トランジスタの性能の向上、均質化、安定化が得られる。さらに、大面積フレキシブルエレクトロニクスデバイスを実現する上で、大面積にわたって均一な電子デバイス、特にトランジスタを形成することができる。本発明は、電子デバイスや当該電子デバイスを用いた各種の電子機器を提供するものであり、電子分野等において産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0141】
10、30、40、50、70、及び80 本発明のトランジスタ
11、31、41、71、及び81 ゲート電極
12、32、42、72、及び82 ゲート絶縁層
13、33、43、53、73、及び83 本発明の有機薄膜
14、34、54、及び74 有機半導体層
15、35、45、75、及び85 ドレイン電極
16、36、46、76、及び86 ソース電極
87 封止層
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図11】
10