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明細書 :抗微生物ポリペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-016548 (P2018-016548A)
公開日 平成30年2月1日(2018.2.1)
発明の名称または考案の名称 抗微生物ポリペプチド
国際特許分類 C07K  14/435       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
A61P  33/02        (2006.01)
A23K  20/147       (2016.01)
A23L   3/3526      (2006.01)
A23K  10/20        (2016.01)
FI C07K 14/435 ZNA
C12N 15/00 A
A61K 37/02
A61P 31/14
A61P 31/04
A61P 33/02
A23K 20/147
A23L 3/3526 501
A23K 10/20
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-145509 (P2016-145509)
出願日 平成28年7月25日(2016.7.25)
発明者または考案者 【氏名】田仲 哲也
【氏名】メルボルン リオ タラクタック
【氏名】藤崎 幸蔵
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
審査請求 未請求
テーマコード 2B150
4B021
4C084
4H045
Fターム 2B150AA01
2B150AA02
2B150AA03
2B150AA04
2B150AA05
2B150AA06
2B150AA10
2B150AB10
2B150AE02
2B150AE05
2B150AE12
2B150CB06
2B150DC19
2B150DC23
2B150DD01
4B021LW06
4B021LW10
4B021MC01
4B021MK06
4B021MK22
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA20
4C084CA51
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB381
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA21
4H045CA50
4H045EA01
4H045EA06
4H045EA29
4H045FA10
4H045FA74
要約 【課題】多くの自然免疫関連分子を保有するマダニより、ウイルス、細菌、原虫を含む広範囲の微生物に対して優れた抗微生物活性を有するディフェンシン様ポリペプチドを同定し、当該ポリペプチドを含む抗微生物剤を提供すること。
【解決手段】以下の(a)~(c)のいずれかの抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド、ならびにそれらを含む抗微生物剤。(a)特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)(a)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド(c)(a)のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(c)のいずれかの抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド
(c) 配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド
【請求項2】
前記微生物が、ウイルス、細菌、原虫から選ばれる少なくとも1種の微生物である、請求項1に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
【請求項3】
前記ウイルスが、フラビウイルスである、請求項2に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
【請求項4】
前記細菌が、ミクロコッカス菌、セレウス菌、又は黄色ブドウ球菌である、請求項2に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
【請求項5】
前記原虫が、バベシア原虫である、請求項2に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチドを有効成分として含有する抗微生物剤。
【請求項7】
医薬品、飼料、又は飲食品の形態である、請求項6に記載の抗微生物剤。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。
【請求項9】
以下の(d)~(f)のいずれかのDNAを含む遺伝子。
(d) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNA
(e) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(f) 配列番号2に示す塩基配列に対して80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNA
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フタトゲチマダニのヘモリンフ由来の抗微生物ポリペプチド及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス、細菌、原虫感染による動物の被害は、世界的規模におよび、動物産業界に年間数十億USドルの甚大な被害を与えている。また、ウイルス、細菌、原虫感染は、動物産業界のみならず、人畜共通感染症として公衆衛生上の重要な問題となっているが、完全な予防・治療法は確立されていない。その主な理由は、ウイルスは突然変異を起こすこと、細菌は抗生物質に対する耐性ができること、原虫は宿主である家畜及びヒトと同じ真核生物であるために殺原虫作用物質の多くが宿主細胞に対して毒性を持ち、また、原虫が宿主の免疫系を逃れる種々の回避機構を有していることである。従来、ヒトを含めた動物の感染症に対する直接的防御手段の一つとして、感染防御又は発症防御を目的としたワクチンの接種が挙げられるが、病原体の抗原変異や材料の入手の困難性によりワクチンの開発が妨げられている。
【0003】
マダニは、重症血小板減少性症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病、回帰熱、ピロプラズマ病等の感染症を引き起こすウイルスやリケッチャ、原虫などの病原体を媒介し、進化の過程でこれらの病原体に対して先天的防御機構を確立してきたことが想定される。よって、マダニが有する先天的防御機構に関与する自然免疫関連分子は、上記のウイルスやリケッチャ、原虫の防除のための新しい薬剤の開発に応用できるものと考えられ、各国で関連の研究が精力的に実施されている(非特許文献1)。これまでマダニよりピロプラズマ原虫に対して殺虫作用を有する抗微生物タンパク質(特許文献1)が報告されているが、牛バベシア症の病原虫であるバベシア・ビゲミナ(Babesia bigemina)、馬バベシア症の病原虫であるバベシア・エクイ(Babesia equi)に対する殺虫作用を有するにとどまり、ウイルスや細菌に対する抗微生物効果については記載されていない。また、マダニの自然免疫関連分子としてシスタチン(特許文献2)、ロイシンアミノペプチダーゼ(特許文献3)等などの数々の分子が報告されているが、これらは抗原虫剤やマダニに対するワクチン調製に用いられているだけである。
【0004】
ディフェンシンは、哺乳類、昆虫などにおいて感染防御を司る生体内の抗菌物質である。これまでマダニからも複数のディフェンシン様遺伝子が単離されている。例えば、マダニ中腸に局在し、抗菌作用、抗真菌作用、殺バベニア作用を有するロンギシンが同定されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3803733号公報
【特許文献2】特許第4783901号公報
【特許文献3】特許第4710001号公報
【0006】

【非特許文献1】Hoffmann Jules A., Immune responsiveness in vector insects, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94:11152-11153
【非特許文献2】Tsuji N., Battsetseg B., Boldbaatar D., Miyoshi T., Xuan X., Oliver JH Jr., Fujisaki K., Babesial vector tick defensin against Babesia sp. parasites, Infection and Immunity (2007) 75 (7): 3633-3640.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、多くの自然免疫関連分子を保有するマダニより、ウイルス、細菌、原虫を含む広範囲の微生物に対して優れた抗微生物活性を有するディフェンシン様ポリペプチドを同定し、当該ポリペプチドを含む抗微生物剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべき鋭意研究を重ねた結果、国内最優占種のマダニであるフタトゲチマダニのヘモリンフ(体腔液)から、新規ディフェンシン遺伝子のクローニングに成功し、その分子生物学的性状を明らかにした。また、当該ディフェンシン遺伝子によりコードされるポリペプチドが、ダニ媒介性脳炎の原因となるランガットウイルスに対する抗ウイルス活性、食物腐敗や食中毒菌の原因となるミクロコッカス菌、セレウス菌、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対する抗菌活性、イヌのバベシア症を引き起こすバベシア原虫に対する抗原虫活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)以下の(a)~(c)のいずれかの抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(a) 配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) 配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド
(c) 配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド
(2)前記微生物が、ウイルス、細菌、原虫から選ばれる少なくとも1種の微生物である、(1)に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(3)前記ウイルスが、フラビウイルスである、(2)に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(4)前記細菌が、ミクロコッカス菌、セレウス菌、又は黄色ブドウ球菌である、(2)に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(5)前記原虫が、バベシア原虫である、(2)に記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチド。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の抗微生物ポリペプチド又はその部分ペプチドを有効成分として含有する抗微生物剤。
(7)医薬品、飼料、又は飲食品の形態である、(6)に記載の抗微生物剤。
(8)(1)に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子。
(9)以下の(d)~(f)のいずれかのDNAを含む遺伝子。
(d) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNA
(e) 配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(f) 配列番号2に示す塩基配列に対して80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNA
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗微生物ポリペプチドは、ランガットウイルスに対する抗ウイルス活性、ミクロコッカス菌、セレウス菌、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性菌に対する抗菌活性、イヌのバベシア原虫に対する抗原虫活性を有する。よって、当該抗微生物ポリペプチドを含む抗菌剤は、上記のウイルス、細菌、原虫による感染症の予防及び/又は治療に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、HEディフェシン遺伝子の構造解析結果を示す(下線部:シグナルペプチド、四角で囲んだC:システイン残基)。
【図2】図2は、HEディフェンシンの抗ウイルス(LTGV)活性試験結果を示す[A.ランガットウイルス(LTGV)感染細胞の顕微鏡観察結果(上のパネル:ネガティブコントロール群(ウイルス非感染細胞)、真ん中のパネル:無添加群、下のパネル:HEディフェシン添加群。三角印:ウイルス)。B.ネガティブコントロール群(ウイルス非感染細胞)、無添加群、HEディフェシン添加群におけるLTGVウイルス価(*p<0.05, 無添加群に対して有意差あり)。]。【図5】図5は、HEディフェンシンの抗原虫(B.gibsoni)活性(赤血球感染抑制)試験結果を示す(*p<0.05, 無添加群に対して有意差あり)。【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.抗微生物ポリペプチド及びそれをコードする遺伝子
本発明の抗微生物ポリペプチドは、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)の体腔液であるヘモリンフ(hemolymph) cDNAライブラリー(Zhou J, Liao M, Hatta T, Tanaka M, Xuan X, Fujisaki K. Identification of a follistatin-related protein from the tick Haemaphysalis longicornis and its effect on tick oviposition. Gene 2006 372: 191-198.)からディフェンシン関連遺伝子を探索することによって、中腸由来のロンギシン遺伝子(Tsuji N, Fujisaki K. Longicin plays a crucial role in inhibiting the transmission of Babesia parasites in the vector tick Haemaphysalis longicornis. Future Microbiol. (2007) (6): 575-578)に相同性の高いcDNAを同定し、該cDNAをアミノ酸配列に翻訳したポリペプチドである。

【0013】
本発明の抗微生物ポリペプチドは、ウイルス、細菌、原虫に対して抗微生物活性を有することが確認された新規なディフェンシン様タンパク質であって、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)のヘモリンフ(hemolymph)を由来とすることから、「HEディフェンシン」と命名した。

【0014】
本明細書中で使用する「ポリペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多いポリペプチド分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)も包含される。また、ポリペプチドはタンパク質と代替可能に使用される。

【0015】
上記の「抗微生物活性」とは、ウイルス、細菌、及び原虫に対する抗微生物活性または殺微生物活性をいう。よって、本発明の「抗微生物ポリペプチド」とは、抗ウイルス性(antiviral)、抗菌性(antibacterial)、抗原虫性(antiprotozoal)、及び/又は、殺ウイルス性(virucidal)、殺菌性(bactericidal)、殺原虫性(parasiticidal)性を有するポリペプチドを意味する。

【0016】
本発明の抗微生物ポリペプチド(以下、「HEディフェンシン」ともいう)が抗微生物活性を示す微生物には、ウイルス、細菌、原虫が含まれる。

【0017】
ウイルスとしては、マダニ媒介性フラビウイルス及び蚊媒介性フラビウイルスを含む、吸血性節足動物により媒介されるフラビウイルスが好ましい。

【0018】
マダニ媒介性フラビウイルスとしては、例えば、ランガットウイルス(LGTV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)等が挙げられ、蚊媒介性フラビウイルスとしては、日本脳炎ウイルス(JEV)、デングウイルス(DENV)、ウエストナイルウイルス(WNV)、ジカウイルス(ZV)、黄熱ウイルス(YFV)等が挙げられる。

【0019】
細菌としては、グラム陽性菌が好ましく、例えば、ブドウ球菌(Staphylococcus)属菌(例えば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)、腸球菌(例えばエンテロコッカス属菌)、レンサ球菌属(Streptococcus属)菌(例えば双球菌、4連球菌、8連球菌等、肺炎球菌、溶血連鎖球菌)、バシラス属菌(例えばセレウス菌)、クロストリジウム属菌(例えば破傷風菌、ボツリヌス菌)、コリネバクテリウム属菌(例えばジフテリア菌)、リステリア属菌、ラクトバシラス属菌、ビフィドバクテリウム属菌、プロピオニバクテリウム属菌(例えばニキビの原因となるアクネ菌)、放線菌等が挙げられる。

【0020】
原虫としてはマダニによって媒介されるバベシア原虫(例えば、ウシバベシア原虫のバベシア・ボビス(Babesia bovis)、バベシア・ビゲミナ(Babesia bigemina)、バベシア・オバタ(Babesia obata)、イヌバベシア原虫のバベシア・ギブソニ(Babesia gibsoni)、バベシア・カニス(Babesia canis)、ウマバベシア原虫のバベシア・カバリ(Babesia caballi)、バベシア・エクイ(Babesia equi)等)、タイレリア原虫(例えば、ウシタイレリア原虫のタイレリア・パルバ(Thelieria parva)、タイレリア・アヌラータ(Thelieria annulata)、タイレリア・オリエンターリス(Thelieria orientalis)、タイレリア・ブッフェリ(Thelieria orientalis buffeli)等)が挙げられる。

【0021】
本発明のHEディフェンシンは、配列番号1に示すアミノ酸配列からなる。配列番号1に示すアミノ酸配列は、上記のフタトゲチマダニヘモリンフからクローニングしたcDNAを翻訳した配列番号3に示すアミノ酸配列のシグナル配列を除いた24位~74位までのアミノ酸配列に相当する。

【0022】
本発明のHEディフェンシンは、上記の抗微生物活性を有する限り、その改変ポリペプチドであってもよい。改変ポリペプチドとしては、例えば、配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチド、配列番号1に示すアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドが包含される。

【0023】
上記の「配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」における「1若しくは数個」の範囲は特には限定されないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異導入法により欠失、置換、若しくは付加できる程度の数のアミノ酸をいい、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。

【0024】
アミノ酸の欠失とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列の中から、任意のアミノ酸を選択して欠失させることをいう。また、アミノ酸の付加とは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端又はC末端側に、1から数個のアミノを付加させることをいう。アミノ酸の置換としては、例えば保存的アミノ酸置換が挙げられる。保存的アミノ酸置換とは、疎水性アミノ酸、極性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、分枝状側鎖を有するアミノ酸、芳香族アミノ酸などのように極性、電気的性質、構造的性質などの性質が類似したアミノ酸同士の置換を指す。疎水性(非極性)アミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンなど、極性アミノ酸の例は、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンなど、酸性アミノ酸の例は、アスパラギン酸とグルタミン酸、塩基性アミノ酸の例は、リジン、アルギニン及びヒスチジン、分枝状側鎖を有するアミノ酸の例は、バリン、イソロイシン及びロイシン、芳香族アミノ酸の例は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン及びヒスチジンである。

【0025】
また、配列番号1に示すアミノ酸配列との配列同一性は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは、98%以上の配列同一性をいう。配列同一性の値は、複数のアミノ酸配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。

【0026】
上記のアミノ酸の欠失、付加及び置換は、上記HEディフェンシンをコードする遺伝子を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。

【0027】
本発明のHEディフェンシンは、配列番号1に示すアミノ酸配列の一部の配列からなる部分ペプチドであってもよい。そのような部分ペプチドとしては、例えば配列番号1に示すアミノ酸配列の30位~51位までのアミノ酸配列の少なくとも10個以上、より好ましくは少なくとも12個以上、さらに好ましくは少なくとも15個以上、最も好ましくは20個以上の連続するアミノ酸からなるペプチドが挙げられ、部分ペプチドの長さは、40個以下、好ましくは30個以下、より好ましくは25個以下である。これらの部分ペプチドは、公知のペプチド合成法又は適当なペプチダーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ)で全長のアミノ酸配列を切断することによって製造することができる。ペプチド合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。

【0028】
本発明によれば、HEディフェンシンをコードする遺伝子もまた提供される。本発明のHEディフェンシン遺伝子は、好ましくは、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAを含む遺伝子であるが、当該遺伝子には限定はされず、上記の抗微生物活性を有する限り、そのホモログ遺伝子であってもよい。ホモログ遺伝子は、配列番号2に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号2に示す塩基配列に対して80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、かつ抗微生物活性を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子が包含される。

【0029】
上記の「80%以上の配列同一性」は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性をいう。「配列同一性」とは、2つのDNAの配列類似性をいい、比較対象のDNAの塩基配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの塩基配列を比較することにより決定される。配列同一性(%)は、両方の配列に存在する同一の塩基を決定して、適合部位の数を決定し、次いで、この適合部位の数を比較対象の配列領域内の塩基の総数で割り、得られた数値に100をかけることにより算出され得る。最適なアラインメント及びホモロジーを得るためのアルゴリズムは、当業者が通常利用可能な種々のアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム、FASTAアルゴリズムなど)が挙げられる。DNAの配列同一性は、例えば、配列解析ソフトウェア(例えば、BLASTN、FASTAなど)を用いて測定される。

【0030】
また、上記の「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高いDNA、すなわち配列番号2に示す塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNAの相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、0.25M Na2HPO4, pH7.2, 7%SDS, 1mM EDTA, 1×デンハルト溶液からなる緩衝液中で温度が60~68℃、好ましく65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で16~24時間ハイブリダイズさせ、さらに20mM Na2HPO4, pH7.2, 1%SDS, 1mM EDTAからなる緩衝液中で温度が60~68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で15分間の洗浄を2回行う条件をいう。当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning :a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 10 Skyline Drive Plainview, NY (1989))等を参照することにより、こうしたホモログ遺伝子を容易に取得することができ、また、配列番号2に示す塩基配列との相同性は、BLAST検索やFASTA検索により決定することができる。

【0031】
本発明のHEディフェンシンは、そのアミノ酸配列に基づいて化学合成する方法により製造することができる。HEディフェンシンを化学合成する場合は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の公知の化学合成法により行うことができる。

【0032】
HEディフェンシンはまた、それをコードするDNAを用いて遺伝子工学的方法によっても製造することができる。例えば、HEディフェンシンをコードするDNAを有する組み換えベクターからインビトロ転写によってRNAを調製し、これを鋳型としてインビトロ翻訳を行う方法、あるいはHEディフェンシンをコードするDNAを適当なベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して形質転換細胞を作製し、当該形質転換細胞より目的とするポリペプチドを発現させる方法により製造できる。

【0033】
上記のベクターとしては、例えばウイルスベクター又はプラスミドベクターが挙げられ、ウイルスベクターとしては、例えばセンダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス等が挙げられる。プラスミドベクターは、原核生物用、酵母用、真核生物用の市販プラスミド又は文献記載のプラスミドを使用できる。例えば、原核生物用プラスミドとしては、pBR322、pUC系、pQE系、pET系、pBluescript系等、酵母用プラスミドとしては、2μ、yEP系、pHS系等が挙げられる。ベクターは、発現させるDNAの他に、例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ターミネーター、及び必要に応じて選択マーカー等を含む。

【0034】
ベクターを導入し、組み換えポリペプチドの発現に好適な宿主細胞としては、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母、あるいは、公知の培養細胞、例えば、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、BmN4細胞又はSF9細胞)等が挙げられ、好ましい宿主生物は昆虫細胞である。

【0035】
発現させたポリペプチドは、宿主細胞の培養上清から、タンパク質やペプチド精製に用いられる公知の方法、例えば、硫安塩析、有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン等)による沈殿分離、イオン交換クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、基質または抗体等を利用したアフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLC等のクロマトグラフィー、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理等、を1以上組み合わせて用いて精製することが可能である。

【0036】
2.抗微生物剤
本発明のHEディフェンシンは、上記のとおり、ウイルス、細菌、原虫に対して抗微生物活性を示すことから、これを有効成分とする抗微生物剤として提供できる。本発明のHEディフェンシンは、特に、ランガットウイルス(LGTV)、ミクロコッカス菌(Micrococcus luteus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、バベシア原虫に対して高い抗微生物活性を有する。ランガットウイルス(LGTV)はマダニによって媒介され、重篤な神経症状を呈するダニ媒介性脳炎を引き起こすため、本発明の抗微生物剤は、ダニ媒介性脳炎の予防及び/又は治療に有効である。ミクロコッカス菌(Micrococcus luteus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は食品腐敗又は食中毒の原因菌であるから、本発明の抗微生物剤は食中毒の予防及び/又は治療に有効である。バベシア原虫は、イヌやウシなどの脊椎動物の赤血球に寄生することによって溶血性貧血、黄疸、発熱症状を呈するバベシア症を引き起こすため、本発明の抗微生物剤はバベシア症の予防及び/又は治療に有効である。

【0037】
本発明の抗菌剤は、医薬品(動物用医薬品を含む)、飼料、飲食品等の各種組成物の形態で提供できる。本発明の抗菌剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、HEディフェンシンを単独で、あるいは薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、当分野において公知の手法にて、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、内用液剤(懸濁剤、シロップ剤、乳剤など)、外用液剤(注入剤、含嗽・洗口剤、噴霧・エアゾール剤、吸入剤、塗布剤など)、軟膏剤、注射剤、点滴剤、坐剤等の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基材や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。各種製剤形態に調製した本発明の医薬品は、各経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる。本発明の医薬品を経口投与する場合は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬品を非経口投与する場合は、静脈内注射剤(点滴を含む)、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、皮下注射剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。

【0038】
本発明の医薬品は、前述の感染症の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ等の哺乳動物に対して非経口的に又は経口的に安全に投与することができる。本発明の医薬品の投与量は、具体的な剤形、対象となる疾患の種類、症状等を勘案して、適宜選択すべきものであり、特に限定されるべきものではない。

【0039】
本発明の抗菌剤を飲食品に配合する場合は、その種類に応じて通常使用される添加物をHEディフェンシンと適宜混合し、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状にすることができる。添加物としては、食品衛生法上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。

【0040】
本発明において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が好ましい。

【0041】
また、本発明の抗菌剤は飼料用添加物として飼料に配合してもよい。本発明の飼料には、上記のHEディフェンシンのほか、通常の配合飼料に使用される原料を動物の種類、発育ステージ、地域などの飼育環境に応じて適宜配合してもよい。かかる原料としては、例えば穀物類または加工穀物類(とうもろこし、マイロ、大麦等)、糟糠類(ふすま、米糠、コーングルテンフィード等)、植物性油粕類(大豆油粕、ごま油粕、綿実油粕等)、動物性原料(脱脂粉乳、魚粉、肉骨粉等)、ミネラル類(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、食塩、無水ケイ酸等)、ビタミン類、アミノ酸類、ビール酵母などの酵母類、無機物質の微粉末(結晶性セルロース、タルク、シリカ等)などが挙げられる。

【0042】
本発明の飼料は、上記の飼料原料に、配合飼料に通常使用される賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等の飼料用添加剤、所望によりその他の成分(抗生物質や殺菌剤、駆虫剤、防腐剤等)を配合してもよい。

【0043】
本発明の飼料の形態は特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、ペレット状、カプセル剤(ハードカプセル,ソフトカプセル)、錠剤等が挙げられる。

【0044】
本発明の飼料の給与対象となる動物は、特に限定されるものではないが、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ウサギ等の家畜類;ニワトリ(ブロイラー、採卵鶏の両方を含む)、七面鳥、アヒル、マガモ、合鴨、キジ、ウズラ、またはガチョウ等の家禽類;マウス、ラット、モルモット等の実験動物;イヌ、ネコなどのペットなどが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)フタトゲチマダニヘモリンフからのHEディフェシン遺伝子のクローニング及び解析
フタトゲチマダニのcDNAライブラリー (Zhou J, Liao M, Hatta T, Tanaka M, Xuan X, Fujisaki K. Identification of a follistatin-related protein from the tick Haemaphysalis longicornis and its effect on tick oviposition. Gene 2006 372: 191-198.)からディフェンシン関連遺伝子を探索し、ヘモリンフ由来のディフェンシン遺伝子を含む大腸菌を分離した。得られた大腸菌からQIAGEN Plasmid mini Kit(QIAGEN, CA, USA)を用いて目的のcDNAを含むプラスミドの抽出を行い、塩基配列の全長解析を行った(図1)。その結果、フタトゲチマダニヘモリンフから単離したHEディフェシン遺伝子は全長566bpの塩基配列を有していた(配列番号2)。
【実施例】
【0046】
上記cDNAを、GENETYX-WIN DNA analysis software system(Genwtix Co., 東京)を用いてアミノ配列への翻訳を行った後、SignalP 4.1 Server (http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を用いてシグナルペプチド配列を推定した。アミノ酸配列を配列番号3に示す。また、シグナルペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列の1位~23位であると推定され(図1の下線部)、24位~74位までの成熟タンパク質にはシステイン残基を6カ所有していた(図1の四角で囲んだC)。さらに、配列番号3に示すアミノ配列を有するタンパク質についてPeptideMass (http://web.expasy.org/peptide_mass/)を用いて推定分子量と等電点を求めたところ、分子量は8.15 kDa、等電点は9.48であった。
【実施例】
【0047】
BLAST Program(Altschul SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Zhang Z, Miller W, Lipman DJ.Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of protein database search programs. Nucleic Acids Res. 1997 25(17): 3389-3402.)を用いて他のマダニディフェンシン遺伝子のアミノ酸配列データを収集し、配列番号3に示すアミノ酸配列との相同性の比較を行った。結果を表1に示す。
【実施例】
【0048】
【表1】
JP2018016548A_000003t.gif
【実施例】
【0049】
以上の解析結果から、フタトゲチマダニヘモリンフよりクローニングした遺伝子は、ジスルフィド結合により安定化している抗菌ペプチドであるディフェンシン様のタンパク質をコードする新規遺伝子であると同定し、「HEディフェシン遺伝子」と命名した。
【実施例】
【0050】
(実施例2)HEディフェシンの抗ウイルス 活性
(1)方法
HEディフェンシンの抗ランガットウイルス(抗LGTV)活性を、以下のようにして測定した。HEディフェンシンとして、配列番号3のアミノ酸配列の24位~74位までの成熟タンパク質部分に相当する51アミノ酸から成るペプチド(配列番号1)を合成して用いた。まず、HEディフェンシンを0.425μM~5μMの濃度で添加した培養液(E-MEM培地(和光純薬工業社製)に10% FBS、1% 抗生物質を添加)と0.01 Multiplicity of Infection(MOI)のランガットウイルスを、37℃で0分~120分間共培養し、HEディフェンシン添加ウイルス液を得た。また、HEディフェンシンを添加しない培養液のみとランガットウイルスを同様にして共培養し、HEディフェンシン無添加ウイルス液を得た。HEディフェンシン添加ウイルス液又はHEディフェンシン無添加ウイルス液を、1×105個に調製したハムスター腎細胞(BHK-21細胞)に37℃、1時間感染させた。1時間後、リン酸緩衝液で細胞を洗浄して細胞に感染してないウイルスを取り除いた後、37℃で3~4日間培養し、ウイルス感染細胞を得た(HEディフェンシン添加群、無添加群)。また、5μMのHEディフェンシンを溶解した培養液と生理食塩水の混合液(HEディフェンシン添加非ウイルス液)を、同ハムスター腎細胞と培養して得られたウイルス非感染細胞をネガティブコントロール群とした。ウイルス感染細胞へ1.5%メチルセルロースを含む培養液を重層し、ランガットウイルスに対する1次抗体で反応させた後、2次抗体としてAlexa Fluor 594で標識したヤギ抗マウス抗体で反応させた。ウイルス価は蛍光顕微鏡下でウイルスプラーク数を計測し、単位をFoci-Forming-Unit(FFU)として表した。最終的に、フォーカス減少率(Percentage of Foci Reduction(RF)%)は以下の計算式によって求めた(Zandi K, Teoh BT, Sam SS, Wong PF, Mustafa MR, Abubakar S. Novel antiviral activity of baicalein against dengue virus. BMC Complement Altern Med. 2012 12: 214.)。
RF(%)=(C-T)×100/C
(RF(%):フォーカス減少率、C:無添加群のウイルスプラーク数、T:HEディフェンシン添加群のウイルスプラーク数)。
【実施例】
【0051】
(2)結果
HEディフェンシン添加群(HEディフェンシン濃度:20μM、処理時間:120分)、無添加群、ネガティブコントロール群の細胞の蛍光顕微鏡観察の結果、無添加群ではウイルスのプラークが認められたが(三角印)、HEディフェンシン添加群ではウイルスのプラークが消失し(図2A)、フォーカス減少率は100%であった(図2B上)。また、HEディフェンシン添加群のウイルス価(平均ウイルス量)は、無添加群に比べて有意に減少した(図2B下)。
【実施例】
【0052】
また、HEディフェンシン処理によるウイルスのフォーカス減少率は、HEディフェンシンの濃度依存的に(図3A)、また処理時間依存的に(図3B)増加した。以上の結果より、HEディフェンシンは、ランガットウイルスに対して優れた抗ウイルス活性を有することが示された。
【実施例】
【0053】
(実施例3)HEディフェシンの抗菌活性
(1)方法
グラム陽性菌であるMicrococcus luteus(ATCC9341)、Bacillus cereus(ATCC11778)、Staphylococcus aureus(ATCC29213)、Bacillus subtillis(ATCC6633)、グラム陰性菌であるEscherichia coli(ATCC25922)、Pseudomonas aeruginosa(ATCC27853)の標準株を用いてHEディフェンシンの抗菌活性を調べた。細菌は3% Triptic Soy Broth(TSB)培地で37℃一晩培養後、菌数が1×106になるように10 mMリン酸ナトリウム溶液が入った1% TSB培地で菌液を全量90μlに調整した。調製した菌液に、50μMのHEディフェンシン溶液10μl又はコントロールとして生理食塩水溶液10μl添加した。各々のサンプルは、37℃で2時間培養した。2時間後グラム染色で細菌の状態を観察した後、菌液を1万倍に希釈し、Triptic Soy Agar(TSA)培地に塗抹し、37℃で12~24時間培養した後、コロニー数を計測した。MIC(最小増殖阻止濃度)及びEC50(50%阻害濃度)を求めた。
【実施例】
【0054】
(2)結果
結果を下記表2に示す。
【表2】
JP2018016548A_000004t.gif
【実施例】
【0055】
表2に示すように、HEディフェンシンはグラム陽性菌であるMicrococcus luteus、Bacillus cereus、Staphylococcus aureusに対して抗菌活性が認められた。
【実施例】
【0056】
また、HEディフェンシン処理したMicrococcus luteusの培地上の形態とグラム染色像を図4に示す。50μMのHEディフェンシン濃度でMicrococcus luteusのコロニーが消失し、破壊された像が観察された。
【実施例】
【0057】
(実施例4)HEディフェシンの抗原虫活性
(1)方法
マダニを媒介するバベシア原虫を用いて、HEディフェンシンの抗原虫活性を調べた。
予め生理食塩水に溶解させておいたHEディフェンシンを0.1μM、1μM、10μMの濃度で添加した培養液(PRMI1640培地(和光純薬工業社製)に1μMピルビン酸ナトリウム、100U/μlペニシリン、100μg/mlストレプトマシン、25%FBSを添加)を調製した。バベシア原虫(B. gibsoni)を感染させた赤血球に対して、感染後0日目から3日目まで、上記のHEディフェンシンを添加した培養液の交換を行った(HEディフェンシ添加群)。コントロールとして、B. gibsoni感染赤血球に対し、生理食塩水のみを添加した同培養液の交換を行った(無添加群)。各群、培養1目から4日目までB. gibsoni感染赤血球をギムザ染色し、塗抹標本を作製した後、光学顕微鏡下でB. gibsoni感染赤血球を計測し、赤血球感染率(%)[(感染赤血球/全赤血球)×100]を算出した。
【実施例】
【0058】
(2)結果
赤血球感染率(%)の経時的変化を図5に示す。HEディフェンシン添加群では、培養4日目に有意な赤血球感染率の減少が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、マダニが媒介する病原体による各種感染症の予防及び/又は治療用の医薬品、飼料、飲食品等の製造分野において利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4