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明細書 :抗癌剤の感受性及び癌の予後に対する診断マーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6779517号 (P6779517)
公開番号 特開2018-036233 (P2018-036233A)
登録日 令和2年10月16日(2020.10.16)
発行日 令和2年11月4日(2020.11.4)
公開日 平成30年3月8日(2018.3.8)
発明の名称または考案の名称 抗癌剤の感受性及び癌の予後に対する診断マーカー
国際特許分類 G01N  33/68        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/574       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
A61K  31/337       (2006.01)
A61K  31/475       (2006.01)
A61K  31/704       (2006.01)
A61K  31/513       (2006.01)
A61K  31/675       (2006.01)
FI G01N 33/68 ZNA
C12Q 1/68
C12N 15/09 200
C12M 1/00 A
G01N 33/50 P
G01N 33/574 A
G01N 33/53 M
A61P 35/00
A61K 38/00
A61P 35/02
A61K 31/337
A61K 31/475
A61K 31/704
A61K 31/513
A61K 31/675
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2016-172195 (P2016-172195)
出願日 平成28年9月2日(2016.9.2)
審査請求日 平成31年4月15日(2019.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】河原 康一
【氏名】古川 龍彦
【氏名】下川 倫子
【氏名】川畑 拓斗
【氏名】白石 岳大
【氏名】濱崎 研吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100196966、【弁理士】、【氏名又は名称】植田 渉
審査官 【審査官】三好 貴大
参考文献・文献 特表2015-528112(JP,A)
特表2009-523011(JP,A)
国際公開第2014/004990(WO,A2)
国際公開第2007/072225(WO,A2)
特開2015-097523(JP,A)
国際公開第2016/057852(WO,A1)
調査した分野 G01N 33/48-33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのマーカーとしての、核小体ストレス応答制御タンパク質、或いは該タンパク質をコードする遺伝子の使用であって、
前記タンパク質は、RPL11及び/又はRPL5からなり、
前記抗癌剤は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択され、
前記癌は、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択されるものであり、
前記判定は、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体由来のサンプルにおいて、前記タンパク質又は前記遺伝子の発現量を測定し、当該測定した結果を参照値と比較することにより行われる、
前記使用。
【請求項2】
化学療法後の癌の予後を判定するためのマーカーとしての、核小体ストレス応答制御タンパク質、或いは該タンパク質をコードする遺伝子の使用であって、
前記タンパク質は、RPL11及び/又はRPL5からなり、
前記抗癌剤は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択され、
前記癌は、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択されるものであり、
前記判定は、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体由来のサンプルにおいて、前記タンパク質又は前記遺伝子の発現量を測定し、当該測定した結果を参照値と比較することにより行われる、
前記使用。
【請求項3】
化学療法後の癌の再発のリスクを判定するためのマーカーとしての、核小体ストレス応答制御タンパク質、或いは該タンパク質をコードする遺伝子の使用であって、
前記タンパク質は、RPL11及び/又はRPL5からなり、
前記抗癌剤は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択され、
前記癌は、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択されるものであり、
前記判定は、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体由来のサンプルにおいて、前記タンパク質又は前記遺伝子の発現量を測定し、当該測定した結果を参照値と比較することにより行われる、
前記使用。
【請求項4】
前記癌が、乳癌、胃癌、及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用
【請求項5】
RPL11及び/又はRPL5からなる核小体ストレス応答制御タンパク質に特異的に結合する抗体、又は該タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキットであって、前記抗癌剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、5-FU、シクロホスファミド、キソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択される、並びに、前記癌が、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、キット。
【請求項6】
RPL11及び/又はRPL5からなる核小体ストレス応答制御タンパク質に特異的に結合する抗体、又は該タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体における抗癌剤による化学療法後の癌の予後を判定するためのキットであって、前記抗癌剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、5-FU、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択される、並びに、前記癌が、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、キット。
【請求項7】
RPL11及び/又はRPL5からなる核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのデバイスであって、前記抗癌剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択される、並びに、前記癌が、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、デバイス。
【請求項8】
RPL11及び/又はRPL5からなる核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、抗癌剤による治療を受けている癌に罹患した被験体における抗癌剤による化学療法後の癌の予後を判定するためのデバイスであって、前記抗癌剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、5-FU、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択される、並びに、前記癌が、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法、化学療法後の癌の予後を判定するための方法、及びこれらの方法に使用し得るマーカー、キット、及びデバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は全世界において主要な死因の一つであり、その有効な治療法が求められている。近年、核小体ストレス応答が腫瘍化進展を制御する極めて重要な生体の癌防御機構であることが分かってきたことから(非特許文献1)、これまでに本発明者は、核小体ストレス応答を利用して抗癌剤を探索可能なスクリーニング方法を見出した(特許文献1)。
【0003】
癌を効果的に治療するためには、新規な抗癌剤を開発することに加えて、適切な治療法を選択することが重要であり、そのためには治療感受性や癌の予後を判断可能な診断方法を開発することが不可欠である。近年、癌に対する様々なマーカー因子が同定され、癌の診断方法は飛躍的に向上している。しかしながら、多種の癌に適応可能なマーカー、及び治療感受性及び/又は癌の予後を評価できるマーカーは乏しいのが現状であった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-097523
【0005】

【非特許文献1】Masato Sasaki et al., Nature Medicine. Vol.17, pp. 944-51, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多種の癌に適応可能なマーカー、又は癌の予後及び/又は治療感受性を評価可能なマーカーを提供することを課題とする。また、本発明は、かかるマーカーを用いて癌の予後及び/又は治療感受性を判定するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量が、抗癌剤の感受性及び/又は癌の予後と相関があることを見出し、本願発明を完成させた。したがって、本願発明は、以下の態様を包含する。
(1)被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、及び
前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて高い場合、癌に対する抗癌剤の有効性が高いと決定する工程
を含む、被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法。
(2)被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、及び
前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて高い場合、予後が良好であると決定する工程
を含む、被験体における化学療法後の癌の予後を判定するための方法。
(3)被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、及び
前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて高い場合、癌の再発のリスクが低いと決定する工程
を含む、被験体における化学療法後の癌の再発のリスクを判定するための方法。
(4)核小体ストレス応答制御タンパク質が、RPS6、RPS19、RPL29、RPL30、RPS3、RPS7、RPS14、RPS15、RPS20、RPS25、RPS26、RPS27、RPS27A、RPS27L、RPL3、RPL4、RPL5、RPL6、RPL11、RPL23、RPL26、RPL37、PICT1、IPO7、XPO1、UBTF1、TTF-1、ARF、Nucleostemin(NS)、PAK1IP1、UTP18、及びNucleophosmin(NPM)からなる群から選択されるタンパク質である、上記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)核小体ストレス応答制御タンパク質が、RPL11及び/又はRPL5である、上記(4)に記載の方法。
(6)癌が、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、上記(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)癌が、乳癌、胃癌、及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、上記(6)に記載の方法。
(8)抗癌剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、5-FU、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンからなる群から選択される、上記(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の、癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのマーカーとしての使用。
(10)核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の、被験体における化学療法後の癌の予後を判定するためのマーカーとしての使用。
(11)核小体ストレス応答制御タンパク質に特異的に結合する抗体、又は該タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのキット。
(12)核小体ストレス応答制御タンパク質に特異的に結合する抗体、又は該タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、被験体における化学療法後の癌の予後を判定するためのキット。
(13)核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのデバイス。
(14)核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む、被験体における化学療法後の癌の予後を判定するためのデバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、癌に対する化学療法の効果及び/又は化学療法後の癌の予後を予測することが可能となり得る。また、癌に対する化学療法の効果及び/又は癌の予後を予測するために用いられるマーカー等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、scramble siRNA又はRPL11 siRNAで処理した細胞を、抗癌剤であるパクリタキセル及びアクチノマイシンDによって処理した際の、p53タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングにより測定した結果を示す。
【図2】図2は、scramble siRNA又はRPL11 siRNAで処理した細胞を、抗癌剤であるパクリタキセル及びアクチノマイシンDによって処理した際の、細胞生存性の結果を示す。この図における細胞生存率は、DMSOで処理した場合のControlを1とした場合の相対値である。
【図3】図3は、抗癌剤による化学療法(A)、又はホルモン療法(B)を行った乳癌患者における、RPL11の発現量の異なる二つの患者群の無再発生存期間を示す。
【図4】図4は、抗癌剤による化学療法(A)、又は化学療以外の治療法(外科手術)(B)を行った胃癌患者における、RPL11の発現量の異なる二つの患者群の全生存期間を示す。
【図5】図5は、R-CHOP療法を行ったびまん性B細胞性リンパ腫(DLBCL)における、RPL11の発現量の異なる二つの患者群の全生存率を示す。
【図6】図6は、R-CHOP療法を行ったびまん性B細胞性リンパ腫(DLBCL)における、RPL5の発現量の異なる二つの患者群の全生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法
一態様において、本発明は、被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法、又は該判定を補助するための方法に関する。本発明の抗癌剤の有効性を判定するための方法は、被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて高い場合、癌に対する抗癌剤の有効性が高いと決定する工程を含む。

【0011】
本明細書において、「被験体」とは、本発明の方法に供される個体をいう。被験体の生物種としては、限定されるものではないが、哺乳動物、例えばヒト及びチンパンジー等の霊長類、ラット及びマウス等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、及びヤギ等の家畜動物、並びにイヌ及びネコ等の愛玩動物が挙げられ、好ましくはヒトである。本明細書において、被験体は、好ましくは化学療法を行っている、癌に罹患している個体である。

【0012】
本明細書において、癌の種類は、限定するものではないが、例えば、乳癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、脳腫瘍、骨髄腫、骨肉腫、肺癌、白血病、及びびまん性B細胞性リンパ腫等の悪性リンパ腫が挙げられる。癌は、好ましくは乳癌、胃癌、及びびまん性B細胞性リンパ腫等の悪性リンパ腫からなる群から選択される。

【0013】
本明細書において、抗癌剤は、核小体ストレス応答を介してその作用を発揮する抗癌剤であることが好ましい。抗癌剤の種類は、限定するものではないが、例えば、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、ダウノルビシン、5-FU、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンが挙げられる。抗癌剤は、好ましくは、パクリタキセル、5-FU、シクロホスファミド、ドキソルビシン、及びビンクリスチンであり、さらに好ましくはパクリタキセル又は5-FUである。

【0014】
本明細書において、「サンプル」とは、本発明の方法に供される生体試料を意味する。本発明において使用可能なサンプルとしては、限定するものではないが、例えば生体から単離した細胞又は組織、あるいは血液、リンパ液、尿、腹水、脳脊髄液等の体液が挙げられる。細胞の例として、例えば末梢血細胞、細胞を含むリンパ液及び組織液、毛母細胞、口腔細胞、鼻腔細胞、腸管細胞、膣内細胞、粘膜細胞、喀痰(肺胞細胞又は気肝細胞等を含み得る)が挙げられる。組織の例として、病変部位、例えば、乳房、胃、肝臓、膵臓、大腸、前立腺、卵巣、子宮、脳、骨髄、肺、及びリンパ節等が挙げられ、例えばこれらの組織の生検サンプルを用いることができる。

【0015】
本明細書において、「核小体ストレス応答」とは、RPL5、RPL11、RPL23、及びRPS7等のリボソームタンパク質が核小体から放出され、これが核小体外の領域である核質に存在するMDM2と結合し、MDM2活性を抑制する反応を指す。核小体ストレス応答は、薬剤によるrRNA不足、リボソームタンパク質の異常、栄養飢餓、及び細胞接触抑制等により誘導され、その応答の結果として細胞増殖抑制が生じることが知られている。

【0016】
本明細書において、「核小体ストレス応答制御タンパク質」とは、上記のような核小体ストレス応答を制御するタンパク質を指し、例えばRPS6、RPS19、RPL29、RPL30、RPS3、RPS7、RPS14、RPS15、RPS20、RPS25、RPS26、RPS27、RPS27A、RPS27L、RPL3、RPL4、RPL5、RPL6、RPL11、RPL23、RPL26、RPL37、PICT1(GLTSCR2)、IPO7、XPO1、UBTF1、TTF-1、ARF(cdkn2a)、nucleostemin(NS)、PAK1IP1、UTP18、及びNucleophosmin(NPM)が挙げられる。核小体ストレス応答制御タンパク質は、好ましくは、PICT1、IPO7、XPO1、UBTF1、TIF1A、ARF、nucleostemin、PAK1IP1、UTP18、及びNucleophosmin、又はMDM2と結合可能なタンパク質、例えばRPS7、RPS19、RPL5、RPL11、及びRPL23等、さらに好ましくはRPL11又はRPL5、最も好ましくはRPL11である。

【0017】
上記の核小体ストレス応答制御タンパク質のアミノ酸配列、及び上記のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は、当技術分野で公知の任意の方法により、例えば公のデータベース(例えば、NCBI(米国)、DDBJ(日本)、EMBL(欧州))より、入手することができる。例えば、ヒトRPL11タンパク質は、配列番号9(NP_000966)のアミノ酸配列を含み、ヒトRPL11タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号10(NM_000975)の塩基配列を含むものであってよい。同様に、ヒトRPL5タンパク質は、配列番号11(NP_000960)のアミノ酸配列を含み、ヒトRPL5タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号12(NM_000969)の塩基配列を含むものであってよい。同様に、ヒトの核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列が、以下の通りデータベースに開示されている:RPS6;NM_001010、RPS14;NM_001025071、RPS19;AH007336、RPL29;NM_000992、RPL30;NM_000989、RPS3;NM_001005、RPS7;NM_001011、RPS14;NM_001025071、RPS15;NM_001308226、RPS20;NM_001146227、RPS25;NM_001028、RPS26;NM_001029、RPS27;NM_001030、RPS27A;NM_002954、RPS27L;NM_015920、RPL3;CR456566、RPL4;NM_000968、RPL6;NM_001024662、RPL23;AB061827、RPL26;AB061829、RPL37;AB061834、PICT1;NM_015710、IPO7;NM_006391、XPO1;NM_003400、UBTF1;NM_014233、TTF-1;HSU33749、ARF;AF208864、Nucleostemin(NS);AY825265、PAK1IP1;NM_017906、UTP18;NM_016001、及びNucleophosmin(NPM);AY347529。

【0018】
上記核小体ストレス応答制御タンパク質のアミノ酸配列は、上記各アミノ酸配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列、又は上記各アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が付加、欠失、及び/若しくは置換されたアミノ酸配列を含むものであってよい。同様に、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列は、上記各塩基配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有する塩基酸配列、又は上記各塩基配列において1若しくは数個の塩基が付加、欠失、及び/若しくは置換された塩基配列を含むものであってよい。本明細書において、同一性の値は、複数の配列間の同一性を演算するソフトウェア(例えば、FASTA、DANASYS、及びBLAST)を用いてデフォルトの設定で算出した値を示す。同一性の決定方法の詳細については、例えばAltschul et al, Nuc. Acids. Res. 25, 3389-3402, 1977及びAltschul et al, J. Mol. Biol. 215, 403-410, 1990を参照されたい。また、本明細書において、「1若しくは数個」の範囲は、1から10個、好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個、あるいは1個又は2個である。

【0019】
したがって、例えば、RPL11タンパク質は、配列番号9で示されるアミノ酸配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列、又は配列番号9で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が付加、欠失、及び/若しくは置換されたアミノ酸配列を含んでよい。RPL11タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号10で示される塩基配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有する塩基配列、又は配列番号10で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が付加、欠失、及び/若しくは置換された塩基配列を含んでよい。同様に、RPL5タンパク質は、配列番号11で示されるアミノ酸配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列、又は配列番号11で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が付加、欠失、及び/若しくは置換されたアミノ酸配列を含んでよい。RPL5タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号12で示される塩基配列に対して、例えば70%以上、80%以上、好ましくは90%以上、95%以上、97%以上、98%以上、若しくは99%以上の同一性を有する塩基配列、又は配列番号12で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が付加、欠失、及び/若しくは置換された塩基酸配列を含んでよい。

【0020】
本発明の方法における、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量の測定工程は、当業者に公知の方法により行うことができる。例えば、核小体ストレス応答制御タンパク質の発現量を測定する工程は、これらのタンパク質に対する抗体を用いる免疫学的測定法又は酵素活性測定法等を行うことにより、実施できる。好適には、前記タンパク質に特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いた、酵素免疫測定法、2抗体サンドイッチELISA法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、及びウエスタンブロッティング法等の手法を用いることができる。抗体は、当業者に公知の方法により得ることができ、例えば哺乳動物に前記タンパク質を免疫し、その血清から当業者に知られる任意の方法を用いて抗体を精製することによって、又はハイブリドーマを介して生産することができる。

【0021】
また、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程は、公知の遺伝子解析法(例えば遺伝子検出法として常用されるPCR法、RT-PCR法、Real-time PCR法、LCR(Ligase chain reaction)、LAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法、マイクロアレイ法、ノーザンハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、in situ hybridization法、及び次世代シークエンサーによる解析等)に従って実施することができる。例えば、被験体から得られたサンプル由来の核酸、例えばmRNA等を用いて、適当なプライマーを用いる遺伝子増幅技術、又は適当なプローブを用いるハイブリダイゼーション技術等を利用することができる。プライマー及びプローブは、当業者であれば、上記核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子の配列に基づいて適宜作製することができる。プライマー及びプローブの設計の詳細については、下記「4.キット」に記載の通りに行うことができる。

【0022】
本発明の測定工程では、一つの核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子を測定してもよいが、二以上、例えば三以上、四以上、又は五以上の上記タンパク質又は遺伝子を測定してもよい。二以上の核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子を測定することによって、本発明の方法の精度をさらに高めることができる。また、タンパク質と遺伝子の両方を測定することによっても、本発明の方法の精度をさらに高めることができる。

【0023】
本発明の測定工程では、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子のいずれの発現量を測定してもよいが、好ましくは遺伝子の発現量を測定する。

【0024】
本発明の癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法は、上記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、癌に対する抗癌剤の有効性が高いと決定する工程を含む。本明細書において、「参照値」とは、各タンパク質又は遺伝子の発現量について、あらかじめ定められた標準値を意味する。参照値は、例えば複数(例えば、3以上、4以上、又は5以上、好ましくは10以上、50以上、100以上、200以上、又は300以上)の被験体、例えば癌に罹患し、化学療法を行っている被験体における各タンパク質又は遺伝子の発現量の中央値又は平均値、好ましくは中央値であってよい。当業者であれば、各タンパク質又は遺伝子の発現量と抗癌剤の有効性に基づいて、適切な参照値を定めることができる。本発明において、「癌に対する抗癌剤の有効性が高い」とは、定められた参照値以下のタンパク質又は遺伝子の発現量を有する集団に対して、癌に対する抗癌剤の有効性が高いことを意味し得る。

【0025】
本発明の被験体における癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法は、化学療法を行っている被験体又は行っていない被験体のいずれに対しても実施することができるが、好ましくは、化学療法を行っている被験体に対して実施する。化学療法を行っている被験体に対して本発明の方法を実施することにより、現在行っている化学療法が適切であるか判断し、放射線療法、ホルモン療法等の他の療法を利用すべきか判断するために役立てることができる。また、化学療法を行っていない被験体に対して本発明の方法を実施することにより、化学療法、放射線療法、ホルモン療法等のうち、どの療法を利用すべきか判断するために役立てることができる。

【0026】
本発明の癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法は、癌の治療方法にも利用することができる。これにより、抗癌剤が有効であると考えられる被験体に対して抗癌剤による治療を適用することが可能となり得る。したがって、一実施形態において、本発明は、被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、癌に対する抗癌剤の有効性が高いと決定する工程、及び被験体に抗癌剤を投与する工程、を含む被験体における癌の治療方法に関する。

【0027】
2.癌の予後を判定するための方法
一態様において、本発明は、被験体における化学療法後の癌の予後を判定するための方法、又は該判定を補助するための方法に関する。本方法は、被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、及び前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、予後が良好であると決定する工程を含む。被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程については、上記1において記載した通りであるからここでは記載を省略する。

【0028】
前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、予後が良好であると決定する工程における適切な参照値は、当業者であれば、各タンパク質又は遺伝子の発現量と予後に基づいて定めることができる。本発明において、「予後が良好である」とは、定められた参照値以下のタンパク質又は遺伝子の発現量を有する集団に対して、予後が良好であることを意味し得る。

【0029】
本明細書において、「予後」とは、化学療法を行った後の腫瘍量の低減、腫瘍増殖の抑制、化学療法後の経過又は結末(例えば、再発の有無、生死等)、好ましくは生存期間、特に無再発生存期間の長さ、再発のリスクの高低を意味する。本明細書において、「癌の予後が良好である」とは、化学療法後の経過又は結末が良好であること、例えば生存期間、特に無再発生存期間が長いこと、及び/又は再発のリスクが低いことを意味する。

【0030】
したがって、一実施形態において、本発明の癌の予後を判定するための方法は、被験体における化学療法後の癌の再発のリスク、又は無再発生存期間を判定するための方法、又は該判定を補助するための方法に関する。

【0031】
本発明の癌の予後を判定するための方法は、癌の治療方法にも利用することができる。これにより、化学療法後の癌の予後が良好になると考えられる被験体に対して抗癌剤による治療を適用することが可能となり得る。したがって、一実施形態において、本発明は、被験体由来のサンプルにおいて、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定する工程、前記タンパク質又は遺伝子の発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、予後が良好であると決定する工程、及び被験体に抗癌剤を投与する工程、を含む被験体における癌の治療方法に関する。

【0032】
3.マーカー
一態様において、本発明は、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の、癌に対する抗癌剤の有効性を判定するためのマーカーとしての使用に関する。別の態様において、本発明は、核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の、被験体における化学療法後の、生存期間の長さ又は再発のリスク等の癌の予後を判定するためのマーカーとしての使用に関する。

【0033】
核小体ストレス応答制御タンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子、癌の種類、抗癌剤、及び予後については上記1又は2で記載した通りであるから、ここでは記載を省略する。

【0034】
これらのマーカーは、上記1に記載の癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法又は上記2に記載の癌の予後を判定するための方法において用いることができる。

【0035】
4.キット
一態様において、本発明は、抗癌剤の有効性を判定するためのキット、又は生存期間の長さ又は再発のリスク等の癌の予後を判定するためのキットに関する。

【0036】
本キットは、核小体ストレス応答制御タンパク質に特異的に結合する抗体、又は該タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む。核小体ストレス応答制御タンパク質及び該タンパク質をコードする遺伝子については、上記1において記載した通りであるからここでは記載を省略する。

【0037】
抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれであってもよい。抗体は、当業者に公知の方法により得ることができ、例えば哺乳動物に前記タンパク質を免疫し、その血清から当業者に知られる任意の方法を用いて抗体を精製することによって、又はハイブリドーマを介して生産することができる。

【0038】
プライマー及びプローブは、当業者であれば、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子の配列に基づいて適宜作製することができる。例えば、RPL11をコードする遺伝子を検出するためのプローブは、RPL11遺伝子を検出できるものであれば特に限定しないが、例えば、(1)配列番号10の配列の連続する少なくとも14、例えば少なくとも20、好ましくは少なくとも30、また60以下、50以下、又は40以下の塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は(2)配列番号10の連続する少なくとも14、例えば少なくとも20、好ましくは少なくとも30、また60以下、50以下、又は40以下の塩基配列に相補的な配列からなるポリヌクレオチドから構成されることが好ましい。同様に、RPL5をコードする遺伝子を検出するためのプローブは、RPL5遺伝子を検出できるものであれば特に限定しないが、例えば、(1)配列番号12の配列の連続する少なくとも14、例えば少なくとも20、好ましくは少なくとも30、また60以下、50以下、又は40以下の塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は(2)配列番号12の連続する少なくとも14、例えば少なくとも20、好ましくは少なくとも30、また60以下、50以下、又は40以下の塩基配列に相補的な配列からなるポリヌクレオチドから構成されることが好ましい。

【0039】
例えば、RPL11をコードする遺伝子を検出するためのプライマーは、RPL11遺伝子を検出できるものであれば特に限定しないが、配列番号10、又は配列番号10の配列に相補的な配列の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基からなるポリヌクレオチドであり得る。例えば、本発明のキットは、フォワードプライマーが配列番号10の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基を含むヌクレオチドからなり、リバースプライマーが配列番号10の配列の相補的な配列の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基を含むヌクレオチドからなる、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含むプライマーセットを含み得る。同様に、RPL5をコードする遺伝子を検出するためのプライマーは、RPL5遺伝子を検出できるものであれば特に限定しないが、配列番号12、又は配列番号12の配列に相補的な配列の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基からなるポリヌクレオチドであり得る。例えば、本発明のキットは、フォワードプライマーが配列番号12の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基を含むヌクレオチドからなり、リバースプライマーが配列番号12の配列の相補的な配列の連続する14~30塩基、例えば16~28塩基、好ましくは18~26塩基を含むヌクレオチドからなる、フォワードプライマー及びリバースプライマーを含むプライマーセットを含み得る。

【0040】
RPL11及びRPL5以外の核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子についても、同様にプローブ又はプライマーを設計することができる。

【0041】
プライマー及びプローブは、当業者に知られる公知の方法により調製することができ、限定されるものではないが、例えば化学合成法によって調製することができる。

【0042】
本キットは、上記1に記載の癌に対する抗癌剤の有効性を判定するための方法、又は上記2に記載の癌の予後を判定するための方法において用いることができる。

【0043】
本キットは、上記抗体、プローブ、又はプライマーの一以上に加えて、説明書、バッファー、発色試薬若しくは蛍光試薬及び/又は標準サンプル等を含んでよい。

【0044】
5.デバイス
一態様において、本発明は、抗癌剤の有効性を判定するための、又は生存期間の長さ又は再発のリスク等の癌の予後を判定するための、チップ及びアレイ等のデバイスに関する。

【0045】
本発明のデバイスは、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含む。核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーについては、上記4において記載した通りである。

【0046】
本発明のデバイスは、核小体ストレス応答制御タンパク質をコードする遺伝子に対するプローブ若しくはプライマーの少なくとも一以上を含み、その発現量を測定する測定部を含み得る。本発明のデバイスは、測定部で測定された発現量が、参照値と比べて好ましくは統計的に有意に高い場合、癌に対する抗癌剤の有効性が高い、又は化学療法後の予後が良好であると決定する判断部をさらに含み得る。
【実施例】
【0047】
<実施例1:核小体ストレス応答依存性抗癌剤による癌抑制>
(1)発現ベクターの構築
以下の工程により、リボソームタンパク質であるRPL11とMontiRedを融合させたタンパク質を発現するベクター、及びMDM2とAsh配列を融合させたタンパク質を発現するベクターを構築した。
【実施例】
【0048】
Human RPL11 cDNAは、以下に記載のRPL11 F1 primer及びRPL11 R1 primerを用いてPCRで増幅後、pMontiRedベクター(Amalgaam社、日本)へ挿入した(pMontiRed RPL11 IRES Bsd)。
【実施例】
【0049】
Human MDM2cDNAは、以下に記載のMDM2 F primer及びMDM2 R primerを用いてPCRで増幅後、pAsh-MCLベクター(Amalgaam社、日本)へ挿入した(pAshC-MDM2)。
【実施例】
【0050】
発現ベクターの構築にあたって使用したプライマーを以下に示す。
RPL11 F1 primer:TCGAATTCGatggcgcaggatcaaggtg(配列番号1)
RPL11 R1 primer:TACTCGAGttatttgccaggaaggatg(配列番号2)
MDM2 F primer:TACTCGAGCTatggtgaggagcaggcaaatgtgc(配列番号3)
MDM2 R primer:CAGAATTCGGGCGGCCGCggggaaataagttagcacaatc(配列番号4)
【実施例】
【0051】
なお、PCRは、PrimeSTAR(登録商標)GXL DNA Polymerase(タカラバイオ、日本)を用いて、添付のマニュアルに従って、以下の組成の反応液を用いて行った。
5×PrimeSTAR GXL Buffer 10 μl
dNTP Mixture(2.5 mM each) 4 μl
Forward primer 15 pmol
Reverse primer 15 pmol
Template 10ng DNA
PrimeSTAR GXL DNA Polymerase 1 μl
滅菌蒸留水 総量を50μlとする量
【実施例】
【0052】
具体的には上記反応液を調製後、サーマルサイクラーにて下記の温度条件でPCR反応を行った。
(98℃ 10 sec、60℃ 15 sec、68℃ 1 min./kb)×25サイクル
【実施例】
【0053】
(2)細胞培養
ヒトグリオーマ細胞株U251(JCRB細胞バンクより入手)及びヒト骨肉腫細胞株U2OS(ATCCより入手)を37℃、5% CO2条件下で、10% Fetal Bovine Serum (FBS)、Penicillin-Streptomycin (P/S)、及びピルビン酸ナトリウムを含むDulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM、Nissui、日本)を用いて培養した。
【実施例】
【0054】
(3)遺伝子導入と安定発現株の作製
6×105の細胞を35mm ディッシュに播種し、その翌日、PEI Max(Polysciences, 米国)を用いて標準的なプロトコールに従い遺伝子導入を行った。すなわち、2μgのDNAを無血清DMEM 200μLに加え、さらに6μLのPEI Maxを加え、攪拌により混合した後、10分間インキュベートした。細胞から培地を除き、DNA/PEI Max混合溶液を培養細胞に加えた。血清は形成された後の複合体には影響を与えないため、通常の増殖培地を加えて、培養を行った。
【実施例】
【0055】
遺伝子導入後、2週間、300μg/mLのG418、20μg/mLのBlasticidinを含む培養液で導入細胞を選択し、得られたコロニーを単離し、安定導入細胞を作製した。
【実施例】
【0056】
(4)蛍光輝点計測によるスクリーニング
上記で得られたFluoppiプローブを安定発現するU251細胞へ、5nMのアクチノマイシンD(Wako Chemical, 日本)、又は10μMの標準阻害剤キット(文部科学省・新学術領域研究『がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動』化学療法基盤支援活動班より供与)を含む培養液を加え24時間培養した。その後、細胞を4%ホルマリンで固定後、共焦点レーザー顕微鏡(LSM700; Carl Zeiss)、又はCellincyte(Thermo Fisher Scientific) にてMontiRed蛍光シグナル(励起波長:548 nm、蛍光波長:607nm)を計測し、得られた画像から蛍光輝点の有無や、蛍光輝点強度を算出した。
【実施例】
【0057】
(5)MTTアッセイによる細胞生存性試験
Scramble siRNA(5’-UUCUCCGAACGUGUCACGUdTdT-3’(配列番号5)、5’-ACGUGACACGUUCGGAGAAdTdT-3’(配列番号6))及びRPL11siRNA(5’-GGUGCGGGAGUAUGAGUUAdTdT-3’(配列番号7)、5’-UAACUCAUACUCCCGCACCdTdT-3’(配列番号8))は、FASMAC社(Japan)で受託合成した。ヒト骨肉腫細胞株U2OS細胞へlipofectamine RNAiMax(ThermoFisher Scientific, 米国)を用いて製造業者の説明書に従い上記Scramble siRNA又はRPL11 siRNAを導入し、24時間後、DMSO(コントロール)、1μM パクリタキセル、又は5nM アクチノマイシンDを含む培養液に交換し、72時間培養した。その後、標準的なプロトコールに従い、MTT(3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide, yellow tetrazole)試験によって細胞数を測定した(Chen ZS et al., International journal of cancer Journal international du cancer, 2001; 93(1):107-113)。パクリタキセル又はアクチノマイシンDの処理による生存性を表す数値は、溶媒であるDMSOを処理したMTTアッセイの測定値を1とした相対値から算出した。
【実施例】
【0058】
(6)ウエスタンブロッティング
培養細胞を、1%TritonX100を含むbuffer A (20 mM Tris-HCl, pH 7.5, 150 mM NaCl, 1 mM EDTA, 1 mM Na3VO4, 50 mM NaF, protease inhibitorsを含む)で回収し、30分間超音波破砕させた後、30分間15000rpmで遠心後、上清を回収した。得られた蛋白質を1/5量の6×SDS sample buffer(200mM Tris-HCl (pH6.8), 8% SDS, 0.4% bromophenol blue, 40% glycerol, 10% mercaptpethanol)を加えて撹拌し、98℃で5分間熱処理し、サンプル調製を行った。サンプルはSDS pageにて展開し、ウェット式電気転写装置(BioRad USA)を用いて、添付の説明書に従いメンブレンに転写し、以下の通りウエスタンブロッティングを行った。
【実施例】
【0059】
ブロッキングは2% BSA-TBS-T(Albumin Bovine Serum FractionV (和光純薬), pH8.0 Tris aminomethane, NaCl, 10% Tween20)を用いた。actin抗体 (BioMatrix Research Inc., Japan)、p53抗体(Santacruz)は1%BSA TBS-T で希釈し用いた。翌日、TBS-Tで10分間洗浄を4回繰り返し、2次抗体HRP結合抗マウス(ラビット)IgG抗体(Cell Signaling)含有1%BSA TBS-T溶液にメンブレンを反応後、TBS-Tで洗浄し、検出溶液ケミルミワンUltra (Nacalai tesque, Japan)と反応させ、X線フィルムにて検出を行った。
【実施例】
【0060】
(7)結果
上記蛍光輝点計測によるスクリーニングによって化合物ライブラリー(標準阻害剤キット)をスクリーニングしたところ、核小体ストレス応答を誘導すると考えられる複数のヒット化合物を得た。これらのヒット化合物は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ビンブラスチン、アクラルビシン、及びダウノルビシン等の抗癌剤として使用されている化合物を含んでいた。
【実施例】
【0061】
次に、これらの抗癌剤が核小体ストレス応答への作用を検討したところ、アクチノマイシンD及びパクリタキセルによってp53の発現が増加し、siRNAでRPL11の発現を低下させ核小体ストレス応答を抑制するとp53の増加が著しく抑えられたことから(図1)、これらの抗癌剤は核小体ストレス応答を介してp53を増加させることが示された。
【実施例】
【0062】
さらに、アクチノマイシンD及びパクリタキセルは癌細胞の生存性を低下させるが、RPL11 siRNAにより核小体ストレス応答を抑制すると、これら抗癌剤の効果が低下することから、これらの抗癌剤の作用が部分的に核小体ストレス応答に依存性であることも示された(図2)。このように様々な抗癌剤が核小体ストレス応答を誘導することが示された。また抗癌剤の少なくとも一部において、核小体ストレス応答を低下させると、癌細胞の殺傷作用、すなわち治療感受性が減弱すると考えられた。
【実施例】
【0063】
<実施例2:RPL11の発現と抗癌剤投与による生存期間の相関試験>
乳癌又は胃癌の、抗癌剤又はホルモン剤投与、又は外科手術時における無再発生存期間又は全生存期間と腫瘍組織サンプルにおけるRPL11の発現量との相関は以下の公共データベースを用いて検索を行った。
KaplanMier Plotter Breast Cancer (http://kmplot.com/analysis/index.php?p=service&cancer=breast)、KaplanMier Plotter Gastric Cancer (http://kmplot.com/analysis/index.php?p=service&cancer=gastric)。
RPL11の発現量は、患者群における発現量の中央値より高い群をHighとし、低い群をLowとした(図3~4)。
【実施例】
【0064】
その結果、パクリタキセルを含む化学療法を行ったヒト乳癌患者ではRPL11発現が低い患者群において無再発生存期間が有意に短縮したが(図3A)、化学療法を行わなかった患者群ではこのような相関はみられなかった(図3B)。これと同様に、5-FU投与による化学療法を行ったヒト胃癌患者では、RPL11発現が低い患者群において全生存期間が有意に短縮したが(図4A)、化学療法を行わなかった患者群ではこのような相関はみられなかった(図4B)。
【実施例】
【0065】
続いて、GEOよりビンクリスチンを含む治療(R-CHOP療法(3種類の抗癌剤(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)に副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)を組み合わせたCHOP療法に、さらにリツキサン投与を加えた療法))を行ったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)患者のマイクロアレイ遺伝子発現データ(GSE10846)を取得した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE10846)。
【実施例】
【0066】
全414検体においてRPL11又はRPL5の遺伝子発現スコアをもとに中央値より高い群(High)と低い群(Low)に分けた(高発現群207 cases、低発現群207 cases)。生存期間、生死の有無が記載されたクリニカルデータをそれぞれの検体に対応付けた。RPL11及びRPL5の発現によって分けられた2つの群における全生存期間(Overall Survival:OS)について、統計ソフトウェアRを用いてKaplan-Meiyer plotを図示した。
【実施例】
【0067】
その結果、びまん性B細胞性リンパ腫(DLBCL)患者においても、RPL11発現が低い患者群(図5)及びRPL5発現が低い患者群(図6)では全生存率が有意に短縮した。
【実施例】
【0068】
これらの結果は、RPL11及びRPL5の発現の低下が化学療法への感受性の低下、耐性化を起こし、再発や生存期間の短縮をもたらすことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によって、乳癌及び大腸癌等の様々な癌の化学療法の効果及び/又は予後を予測することが可能となり得る。これによって、治療の方針決定が可能となり、癌の個別化医療の実現等に大きく貢献できることが期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5