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明細書 :萎れ具合予測システム及び萎れ具合予測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-029568 (P2018-029568A)
公開日 平成30年3月1日(2018.3.1)
発明の名称または考案の名称 萎れ具合予測システム及び萎れ具合予測方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 603
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-166073 (P2016-166073)
出願日 平成28年8月26日(2016.8.26)
発明者または考案者 【氏名】峰野 博史
【氏名】兼田 千雅
【氏名】柴田 瞬
出願人 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査請求 未請求
要約 【課題】複雑な取り扱いを必要とすることなく、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測すること。
【解決手段】灌水制御システム10は、植物である対象物Sの草姿に関する画像を取得するカメラ3と、対象物Sの周囲環境に関する測定データを出力する環境センサ7と、カメラ3から取得された画像を基に、機械学習を用いて対象物Sの萎れ具合に関する特徴量である数値ベクトルを算出する画像特徴量算出部17と、画像特徴量算出部17によって算出された数値ベクトル、環境センサ7から出力された測定データとを基に、機械学習を用いて対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する学習器21と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
植物である対象物の外観に関する画像を取得する撮像部と、
前記対象物の周囲環境に関する測定データを出力する環境センサと、
前記撮像部から取得された画像を基に、機械学習を用いて前記対象物の萎れ具合に関する特徴量である数値列を算出する画像特徴量算出部と、
前記画像特徴量算出部によって算出された前記数値列と、前記環境センサから出力された測定データとを基に、機械学習を用いて前記対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する予測値導出部と、
を備える萎れ具合予測システム。
【請求項2】
前記予測値導出部は、前記予測値として、前記対象物の茎の径に関する数値の予測値を導出する、
請求項1記載の萎れ具合予測システム。
【請求項3】
前記予測値を基に、前記対象物の糖度を予測する糖度予測部をさらに備える、
請求項1又は2記載の萎れ具合予測システム。
【請求項4】
前記環境センサは、前記測定データとして、温度及び湿度に関するデータを出力し、
前記予測値導出部は、温度及び湿度に関するデータを基に前記予測値を導出する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の萎れ具合予測システム。
【請求項5】
前記環境センサは、前記測定データとして、明るさに関するデータを出力し、
前記予測値導出部は、明るさに関するデータを基に前記予測値を導出する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の萎れ具合予測システム。
【請求項6】
撮像部を用いて、植物である対象物の外観に関する画像を取得し、
環境センサを用いて、前記対象物の周囲環境に関する測定データを取得し、
画像特徴量算出部により、前記撮像部から取得された画像を基に、機械学習を用いて前記対象物の萎れ具合に関する特徴量である数値列を算出し、
予測値導出部により、前記画像特徴量算出部によって算出された前記数値列と、前記環境センサによって取得された測定データとを基に、機械学習を用いて前記対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する、
萎れ具合予測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の萎れ具合を予測する萎れ具合予測システム及び萎れ具合予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物の栽培を自動制御することで、栽培者の技能に依存しないで一定の品質の植物を栽培しようとする仕組みが検討されている。例えば、下記特許文献1には、栽培果実の内成分情報から栽培果実の成熟時の予測糖度を得て、その予測糖度が目標値に近くなるように生育途中での溶液制御を自動的に行う溶液制御装置が開示されている。具体的には、この溶液制御装置では、ハロゲンランプとNIR分光分析器とを用いて得られた果実の近赤外スペクトルを基に、乾物率及び澱粉含量が演算され、この乾物率及び澱粉含量から所定の演算モデルを用いて成熟時の果実の可溶性固形物含量が演算される。この可溶性固形物含量が成熟時の果実の糖度に相当する。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-54573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の溶液制御装置では、1つ1つの果実を対象に得られた近赤外スペクトルを基に、将来の果実の生育状態を示す値として糖度が予測されているが、近赤外分光分析器の設置や計測値の入力など取り扱いが煩雑である。また、果実の近赤外スペクトルを基に将来の植物の生育状態を示す値を予測する手法では、簡易的な計算式による予測しか想定しておらず、栽培環境の違いや変化に順応した生育状態の予測精度が十分とはいえない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、複雑な取り扱いを必要とすることなく、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測することが可能な萎れ具合予測システム及び萎れ具合予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一形態にかかる萎れ具合予測システムは、植物である対象物の外観に関する画像を取得する撮像部と、対象物の周囲環境に関する測定データを出力する環境センサと、撮像部から取得された画像を基に、機械学習を用いて対象物の萎れ具合に関する特徴量である数値列を算出する画像特徴量算出部と、画像特徴量算出部によって算出された数値列と、環境センサから出力された測定データとを基に、機械学習を用いて対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する予測値導出部と、を備える。
【0007】
あるいは、本発明の他の形態にかかる萎れ具合予測方法では、撮像部を用いて、植物である対象物の外観に関する画像を取得し、環境センサを用いて、対象物の周囲環境に関する測定データを取得し、画像特徴量算出部により、撮像部から取得された画像を基に、機械学習を用いて対象物の萎れ具合に関する特徴量である数値列を算出し、予測値導出部により、画像特徴量算出部によって算出された数値列と、環境センサによって取得された測定データとを基に、機械学習を用いて対象物の萎れ具合を表す数値の予測値を導出する。
【0008】
上記形態の萎れ具合予測システムあるいは萎れ具合予測方法によれば、撮像部によって取得された対象物の外観の画像を基に、機械学習によって特徴量である数値列が算出され、その数値列と環境センサによって取得された測定データとを用いた機械学習によって、対象物の萎れ具合を表す数値の予測値が導出される。これにより、撮像部と環境センサとを含む簡易なシステムを用いた簡易な操作によって、対象物の萎れ具合を予測するシステムが実現できる。また、対象物の外観の画像と共に環境センサによって取得される測定データをも用いて予測値が導出されるので、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測することができる。
【0009】
ここで、予測値導出部は、予測値として、対象物の茎の径に関する数値の予測値を導出する、こととしてもよい。この場合、対象物の茎の径に関する数値の予測値を基に萎れ具合を適切に評価することができる。
【0010】
また、予測値を基に、対象物の糖度を予測する糖度予測部をさらに備える、こととしてもよい。この場合、対象物の萎れ具合に関する数値の予測値を基に対象物の将来の糖度を適切に評価することができる。
【0011】
また、環境センサは、測定データとして、温度及び湿度に関するデータを出力し、予測値導出部は、温度及び湿度に関するデータを基に予測値を導出する、こととしてもよい。こうすれば、温度及び湿度に関するデータを用いて予測値を導出することで、栽培環境に応じた植物の萎れ具合をさらに高精度に予測することができる。
【0012】
また、環境センサは、測定データとして、明るさに関するデータを出力し、予測値導出部は、明るさに関するデータを基に予測値を導出する、こととしてもよい。この場合には、明るさに関するデータを用いて予測値を導出することで、栽培環境に応じた植物の萎れ具合をさらに高精度に予測することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複雑な取り扱いを必要とすることなく、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態にかかる灌水制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1のデータ処理装置を構成するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1のデータ処理装置1の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図3の学習器21によって出力される差分茎径DSDの予測値の推移のデータのイメージを示すグラフである。
【図5】図1のデータ処理装置1による灌水制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る萎れ具合予測システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

【0016】
まず、図1~3を用いて、本発明の萎れ具合予測システムの一実施形態に係る灌水制御システム10の機能および構成を説明する。図1に示す灌水制御システム10は、トマト等の植物である対象物Sの萎れ具合を数値で予測し、その数値に基づいて対象物に対する灌水を制御するシステムである。灌水制御システム10では、機械学習により対象物Sの萎れ具合が予測される。

【0017】
本実施形態で使用する機械学習は、既知の値の集合であるトレーニングデータを学習することでパターン関数を生成し、そのパターン関数を用いて未知の値を予測する処理である。本実施形態では、数値列であるトレーニングデータを用い、そのトレーニングデータから得られたパターン関数を用いて将来の時点における値を予測する。なお、数値列とは、対象物Sに関する現象の様々な観測値によって得られた数値の系列であり、その現象をある規則に基づいて観測することにより得られた数値の系列である。機械学習の例として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、人工ニューラルネットワーク(ANN)、サポートベクターマシン(SVM)、あるいはそのSVMを回帰に対応させたサポートベクター回帰(SVR)、決定木学習,相関ルール学習,ベイジアンネットワークなどが挙げられるが、灌水制御システム10はこれ以外のアルゴリズムを用いてもよい。

【0018】
灌水制御システム10が予測する対象としては、対象物Sの水分ストレスに対応する萎れ具合として対象物Sの茎の径が挙げられているが、これには限定されない。例えば、灌水制御システム10は、茎の傾き、葉の広がり具合、葉の色調等、萎れ具合あるいは水分ストレスを示す他の数値を予測してもよい。

【0019】
図1に示すように、灌水制御システム10は、栽培対象である対象物Sの草姿(外観)の画像を所定の周期で定期的(例えば、10分間隔)に取得する撮像部としてのカメラ3と、対象物Sの茎の径を測定する茎径センサ5と、対象物Sの周囲環境に関する測定データを所定の周期(例えば、10分間隔)で定期的に出力する環境センサ7と、対象物への灌水タイミングあるいは灌水の量を外部からの制御信号によって制御する灌水制御装置9と、これらのカメラ3、茎径センサ5、環境センサ7、及び灌水制御装置9と無線あるいは有線の通信ネットワークNを経由して接続されたデータ処理装置1とによって構成されている。カメラ3は、対象物Sの全体の外観の画像が取得可能なように、対象物Sに向けて設置されている。なお、カメラ3は、対象物Sの萎れの変化を検出しやすい位置に設置されていればよく、対象物Sの上部のみの画像を取得可能な位置であってもよく、対象物Sを横方向(水平方向)から撮像可能な向きで設置されていてもよく、対象物Sを垂直方向(上方向あるいは下方向)から撮像可能な向きで設置されていてもよい。茎径センサ5は、対象物Sの茎に取り付けられ、茎の径の測定データを所定のタイミングで繰り返し計測して出力する。このような茎径センサ5としては、例えば、投光器と受光器とを含むレーザラインセンサが用いられるが、茎の径が計測できるものであれば特定の構成のものには限定されない。ここで、この茎径センサ5から出力される測定データは、データ処理装置1における機械学習で実測値を表すトレーニングデータとして用いられるが、パターン関数が既に生成されてデータ処理装置1に保持されている場合は、茎径センサ5は取り外されてもよいし、灌水制御システム10に含まれていなくてもよい。環境センサ7は、対象物Sの栽培環境に設置され、対象物の周囲環境に関する測定値を測定可能なセンサ装置である。この環境センサ7は、例えば、温度、相対湿度、日射量(明るさ)、光合成有効光量子束密度(PPFD)等を測定可能なセンサ装置が選択されるが、これらのうちの一部を測定可能なセンサ装置であってもよいし、その他の環境に関する測定値を測定可能なセンサ装置であってもよい。また、環境センサ7は、1つの場所に設置されることには限定されず、栽培環境下の複数の場所に複数で設置されてもよい。

【0020】
灌水制御システム10は、カメラ3で取得された画像、茎径センサ5及び環境センサ7で取得された測定データが通信ネットワークNを介してデータ処理装置1によって取得可能に構成されている。また、灌水制御装置9による灌水タイミングあるいは灌水の量が通信ネットワークNを介してデータ処理装置1から送られた制御信号によって制御可能に構成されている。なお、灌水制御装置9に代えて、対象物Sの栽培条件を制御する他の装置が設けられてもよい。例えば、栽培環境の温度、湿度を制御する空調制御装置が設けられてもよいし、養分の供給タイミングあるいは供給量を制御する装置が設けられてもよい。

【0021】
データ処理装置1は1台以上のコンピュータを備え、複数台のコンピュータを備える場合には、後述するデータ処理装置1の各機能要素は分散処理により実現される。個々のコンピュータの種類は限定されない。例えば、据置型または携帯型のパーソナルコンピュータ(PC)を用いてもよいし、ワークステーションを用いてもよいし、高機能携帯電話機(スマートフォン)や携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末を用いてもよい。あるいは、様々な種類のコンピュータを組み合わせてデータ処理装置1を構築してもよい。複数台のコンピュータを用いる場合には、これらのコンピュータはインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続される。

【0022】
データ処理装置1内の個々のコンピュータ100の一般的なハードウェア構成を図2に示す。コンピュータ100は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する演算装置であるCPU(プロセッサ)101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークカードあるいは無線通信モジュールで構成される通信制御部104と、キーボードやマウスなどの入力装置105と、ディスプレイやプリンタなどの出力装置106とを備える。当然ながら、搭載されるハードウェアモジュールはコンピュータ100の種類により異なる。例えば、据置型のPCおよびワークステーションは入力装置および出力装置としてキーボード、マウス、およびモニタを備えることが多いが、スマートフォンではタッチパネルが入力装置および出力装置として機能することが多い。

【0023】
後述するデータ処理装置1の各機能要素は、CPU101または主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104や入力装置105、出力装置106などを動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータやデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納される。

【0024】
図3に示すように、データ処理装置1は、機能的構成要素として、実測値取得部11、画像取得部13、測定データ取得部15、画像特徴量算出部17、環境特徴量算出部19、学習器(予測値導出部)21、糖度予測部23、及び灌水制御部25を備える。

【0025】
実測値取得部11は、茎径センサ5によって出力された茎の径に関する測定データを取得する。そして、実測値取得部11は、測定データを、画像特徴量算出部17及び学習器21における機械学習のための実測値のデータに変換し、その実測値のデータを画像特徴量算出部17及び学習器21に引き渡す。例えば、画像特徴量算出部17及び学習器21における機械学習による予測対象の数値(目的変数)が差分茎径(DSD:Difference Stem Diameter)の場合には、実測値のデータとして差分茎径のデータに変換し、機械学習による予測対象の数値(目的変数)が相対茎径(RSD:Relative Stem Diameter)の場合には、実測値のデータとして相対茎径のデータに変換する。差分茎径DSDは、現在の茎の径の値を過去に観測された茎の径の最大値から減算することにより算出される値である。相対茎径RSDは、現在の茎の径の値を過去に観測された茎の径の最大値で除算することにより算出される値である。どちらの値DSD、RSDも、対象物Sの萎れ具合を表す評価値として用いられる。

【0026】
画像取得部13は、カメラ3によって連続して取得された画像を、画像データとして受信する。画像取得部13は、受信した画像データを画像特徴量算出部17に引き渡す。

【0027】
測定データ取得部15は、環境センサ7によって連続して取得された周囲環境に関する測定データを、時系列の環境測定データとして受信する。測定データ取得部15は、受信した時系列の環境測定データを、環境特徴量算出部19に引き渡す。

【0028】
画像特徴量算出部17は、画像データを基に、機械学習を用いて対象物Sの萎れ具合に関する特徴量である数値ベクトル(数値列)を算出する。例えば、画像特徴量算出部17は、画像データと実測値のデータとを用いて、将来(例えば、それぞれの画像データの取得時点から所定時間後)の差分茎径DSDを目的変数とした教師あり機械学習を実行する。機械学習の例としては、公知の深層学習の手法である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が挙げられる。CNNは、畳み込みとプーリングを繰り返すことで画像データから機械的に特徴量を抽出できる手法である。CNNを用いる場合の一例を示すと、画像特徴量算出部17は、畳み込み層とプーリング層とにおける処理を何回か(例えば、5回)繰り返した後に、出力層における処理を経由して、目的変数である差分茎径DSDの予測値を算出する。この予測値が対象物Sの将来の萎れ具合を表している。その際、画像特徴量算出部17は、算出した予測値と実測値のデータとを基に、機械学習を進めることで畳み込み層で用いるフィルタパラメータ等のパターン関数を更新できる。ここで、画像特徴量算出部17は、いったんパターン関数を構築した後は、実測値のデータを用いたパターン関数の更新は停止してもよく、最初からパターン関数が構築されている場合には、パターン関数の更新の機能は含まれていなくてもよい。さらに、画像特徴量算出部17は、構築された状態での画像データを対象にしたCNNの隠れ層の最終段の出力を、特徴量である数値ベクトル(例えば、256列の数値ベクトル)として、学習器21に出力する。

【0029】
環境特徴量算出部19は、時系列の環境測定データを基に対象物の萎れ具合に関連する特徴量を時系列に算出する。例えば、環境特徴量算出部19は、環境測定データに含まれる温度および相対湿度から2種類の飽差VDP,HDの値を算出する。飽差とは、一定の空間中に含むことのできる水蒸気の量を示す指標である。また、環境特徴量算出部19は、環境測定データとして植物群落の上部と内部の明るさがある場合、それらの差から葉面積指数LAI(Leaf Area Index)の値を算出する。葉面積指数とは、植物群落の葉の量を示す指標である。そして、環境特徴量算出部19は、算出した特徴量を付加した環境測定データを、時系列に学習器21に出力する。

【0030】
学習器21は、画像特徴量算出部17によって算出された数値ベクトルと、環境特徴量算出部19から出力された時系列の環境測定データとを基に、対象物Sの萎れ具合を表す数値として、差分茎径DSDの予測値を導出する。この予測値の導出には、本発明者らによる自律順応型学習器であるSW-SVR(Sliding Window-based Support Vector Regression)の手法(特開2016-099738号公報参照)、あるいは、公知のRNNの手法が用いられうる。SW-SVRは、時間経過に伴い特性が複雑に変化する微気象データなどの予測に特化した手法である。SW-SVRの手法を用いる場合の一例を説明すると、学習器21は、数値ベクトルと時系列の環境測定データとを組み合わせた数値ベクトルを基に、SW-SVRの手法による機械学習を実行することにより、目的変数である差分茎径DSDの予測値の推移を算出する。その際、学習器21は、実測値取得部11から得られた実測値のデータを基に、機械学習を実行することによりSW-SVRの手法で用いるパターン関数を更新する。ここで、学習器21は、いったんパターン関数を構築した後は、実測値のデータを用いたパターン関数の更新は停止してもよく、最初からパターン関数が構築されている場合には、パターン関数の更新の機能は含まれていなくてもよい。そして、学習器21は、パターン関数が構築された状態での機械学習による差分茎径DSDの予測値の推移のデータを、糖度予測部23に出力する。

【0031】
図4には、学習器21によって出力される差分茎径DSDの予測値の推移のデータのイメージを示している。このように、学習器21によって、栽培環境の変化によって増減する対象物の茎径の変化が予測され、茎径の推移データによって将来の対象物Sの萎れ具合の評価が可能となる。

【0032】
糖度予測部23は、学習器21から出力された対象物Sの茎径に関する推移のデータを基に、対象物Sの糖度を予測する。例えば、糖度予測部23は、所定期間内での差分茎径DSDの推移データの極小値の回数を評価することにより、萎れの頻度を表す萎れ頻度評価値を算出する。また、糖度予測部23は、所定期間内での差分茎径DSDの推移データの積分値を評価することにより、萎れの程度を表す萎れ強度評価値を算出する。これらの萎れ頻度評価値と萎れ強度評価値は、将来の対象物Sの糖度と相関が高い。その性質を利用して、糖度予測部23は、将来の所定時点での対象物の糖度を、萎れ頻度評価値と萎れ強度評価値とを基に予測値として算出する。さらに、糖度予測部23は、算出した糖度の予測値を灌水制御部25に引き渡す。

【0033】
灌水制御部25は、糖度予測部23によって算出された対象物Sの糖度の予測値を基に、対象物Sの糖度が目標値に近づくように対象物Sへの灌水のタイミングあるいは灌水の量を制御するための制御信号を生成する。そして、灌水制御部25は、生成した制御信号を灌水制御装置9に向けて送信する。これにより、灌水制御を用いて対象物Sの水分ストレスを制御することによって、収穫時期における糖度を一定値に制御することができる。

【0034】
以下、図5を参照して、上述したデータ処理装置1による灌水制御の処理手順について説明するとともに、本実施形態にかかる萎れ具合予測方法の手順について詳述する。図5は、データ処理装置1による灌水制御の処理手順を示すフローチャートである。

【0035】
まず、ユーザによる指示入力等を契機にデータ処理装置1による灌水制御の処理が起動されると、実測値取得部11による実測値のデータの取得、画像取得部13による画像データの取得、及び測定データ取得部15による時系列の環境測定データの取得が開始される(ステップS01)。なお、画像特徴量算出部17及び学習器21におけるパターン関数の構築が既に済んでいる場合には、実測値のデータの取得の処理は省略されてもよい。

【0036】
その後、画像特徴量算出部17によって、画像データを用いた機械学習が実行されることにより、対象物Sの萎れ具合を表す特徴量としての数値ベクトルが生成され、生成された数値ベクトルが学習器21に出力される(ステップS02)。それとともに、環境特徴量算出部19によって、環境測定データを基に2種類の飽差VDP,HD等の特徴量が算出され、それらの特徴量が付加された環境測定データが時系列に学習器21に入力される(ステップS03)。

【0037】
それに応じて、学習器21により、数値ベクトル及び時系列の環境測定データを用いた機械学習が実行されることにより、対象物Sの茎径に関する予測値の推移データが生成され、その推移データが糖度予測部23に出力される(ステップS04)。次に、糖度予測部23により、推移データを基に対象物の糖度が予測される(ステップS05)。最後に、灌水制御部25により、予測された糖度を基に対象物Sへの灌水を制御するための制御信号が生成され、その制御信号が灌水制御装置9に向けて送信される(ステップS06)。以上のようなデータ処理装置1による灌水制御は、ユーザの指示入力に応じてその都度起動されてもよいし、所定のタイミングで(例えば、定期的に)自動起動されてもよい。

【0038】
以上説明した灌水制御システム10によれば、カメラ3によって取得された対象物Sの草姿の画像を基に、機械学習によって特徴量である数値ベクトルが算出され、その数値ベクトルと環境センサ7によって取得された測定データとを用いた機械学習によって、対象物Sの萎れ具合を表す茎径に関する数値の予測値が導出される。これにより、カメラ3と環境センサ7とを含む簡易なシステムを用いた簡易な操作によって、対象物Sの萎れ具合を予測するシステムが実現できる。また、対象物Sの草姿の画像と共に環境センサ7によって取得される測定データをも用いて予測値が導出されるので、栽培環境に応じた植物の萎れ具合を高精度に予測することができる。

【0039】
ここで、灌水制御システム10では、予測値として、対象物の茎の径に関する数値の予測値が導出されるので、対象物Sの萎れ具合を適切に評価することができる。

【0040】
さらに、灌水制御システム10によれば、茎径に関する予測値を基に対象物Sの糖度も予測されている。これにより、対象物Sの将来の糖度を適切に評価することができる。

【0041】
また、灌水制御システム10では、温度、湿度、及び明るさに関する環境測定データを用いて対象物Sの茎径に関する予測値が導出されている。これにより、栽培環境に応じた植物の萎れ具合をさらに高精度に予測することができる。

【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態の態様に限定されるものではない。

【0043】
例えば、測定データ取得部15は、時系列の環境測定データを取得し、学習器21は、時系列の環境測定データを用いて対象物Sの萎れ具合を示す予測値を導出していたが、これには限定されない。すなわち、測定データ取得部15は、環境測定データをそのデータが取得された時刻を示す時刻データと共に取得し、学習器21は、時刻データを含む環境測定データを用いて対象物Sの萎れ具合を示す予測値を導出してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…データ処理装置、3…カメラ、5…茎径センサ、7…環境センサ、10…灌水制御システム(萎れ具合予測システム)、17…画像特徴量算出部、21…学習器(予測値導出部)、23…糖度予測部、S…対象物。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4