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明細書 :調光発電ハイブリッド素子及びこれを用いた発電方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-045215 (P2018-045215A)
公開日 平成30年3月22日(2018.3.22)
発明の名称または考案の名称 調光発電ハイブリッド素子及びこれを用いた発電方法
国際特許分類 G02F   1/15        (2006.01)
G02F   1/155       (2006.01)
H01G   9/20        (2006.01)
FI G02F 1/15
G02F 1/15 502
G02F 1/155
H01G 9/20 107A
H01G 9/20 107C
H01G 9/20 309
H01G 9/20 307
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2016-182456 (P2016-182456)
出願日 平成28年9月18日(2016.9.18)
発明者または考案者 【氏名】小林 範久
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
審査請求 未請求
テーマコード 2K101
Fターム 2K101AA22
2K101DA01
2K101DC03
2K101DC06
2K101DC63
2K101EE02
2K101EG52
要約 【課題】創エネルギーと省エネルギーを兼ね備えた付加価値の高い素子を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る調光発電ハイブリッド素子は、一対の基板と、一対の基板の間に配置される電解質層を備え、光透過モードと着色発電モードを有することを特徴とする。また本観点において、電解質層は、銀イオンを含むことが好ましい。また、本発明の他の一観点に係る調光発電ハイブリッド素子は、一対の基板それぞれにおいて形成される透明電極に接続され、電圧を印加する電源装置と、一対の基板それぞれにおいて形成される透明電極に接続され、蓄電する蓄電装置と、を備えることを特徴とする。また本発明の他の一観点に係る調光発電ハイブリッド素子を用いた発電方法は、一対の基板と、一対の基板の間に配置される電解質層を備え、光透過モードと着色発電モードを切り替え、着色発電モードにおいて発電するものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板の間に配置される電解質層を備え、
光透過モードと着色発電モードを有する調光発電ハイブリッド素子。
【請求項2】
前記電解質層は、銀イオンを含む請求項1記載の調光発電ハイブリッド素子。
【請求項3】
前記一対の基板は、それぞれ透明電極が形成されている請求項1記載の調光発電ハイブリッド素子。
【請求項4】
前記一対の基板において、少なくとも一方の透明電極は、透明粒子修飾電極である請求項1記載の調光発電ハイブリッド素子。
【請求項5】
前記一対の基板それぞれにおいて形成される前記透明電極に接続され、電圧を印加する電源装置と、
前記一対の基板それぞれにおいて形成される前記透明電極に接続され、蓄電する蓄電装置と、を備える請求項1記載の調光発電ハイブリッド素子。
【請求項6】
一対の基板と、
前記一対の基板の間に配置される電解質層を備え、
光透過モードと着色発電モードを切り替え、
前記着色発電モードにおいて発電する調光発電ハイブリッド素子を用いた発電方法。




発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、調光発電ハイブリッド素子及びこれを用いた発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的な酸化還元反応により窓の色調を変化させる調光素子は、透明と遮光状態との切り替えが可能であり、建物及び車等の移動体の窓等に用いて遮光状態を実現すれば太陽光の入射を抑制することが可能であり、エアコンの消費電力を低減する効果がある。
【0003】
上記調光素子に関する公知の技術としては、例えば下記特許文献1に、透明電極が形成された一対の基板とこの一対の基板の間に銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層を備えた調光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-148825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公知の技術によると、電気化学的な酸化還元反応により、減法混色系三原色、黒、更にはミラー反射状態が可能であり、この結果太陽光の入射を抑制し、室内等のエネルギー消費を低減することができる。
【0006】
しかしながら、上記状態を実現するにはエネルギーが必要であり、トータルのエネルギー収支では課題が残る。すなわち、調光素子に発電機能も付与できれば、駆動のエネルギーを賄えるだけでなく、創エネルギーと省エネルギーを兼ね備えた付加価値の高い素子の実現が可能である。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、創エネルギーと省エネルギーを兼ね備えた付加価値の高い素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る調光発電ハイブリッド素子は、一対の基板と、一対の基板の間に配置される電解質層を備え、光透過モードと着色発電モードを有する調光発電ハイブリッド素子とする。
【0009】
また、本観点において、電解質層は、金属イオンを含むことが好ましい。この場合において金属イオンとは、金、銀、銅、ニッケル、ビスマス等電解析出可能な金属のイオンであることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、一対の基板は、それぞれ透明電極が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、一対の基板において、少なくとも一方の透明電極は、透明粒子修飾電極であることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、一対の基板それぞれにおいて形成される透明電極に接続され、電圧を印加する電源装置と、一対の基板それぞれにおいて形成される前記透明電極に接続され、蓄電する蓄電装置と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明により、創エネルギーと省エネルギーを兼ね備えた付加価値の高い素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る素子の概略を示す図である。
【図2】実施形態に係る素子の原理を示す図である。
【図3】実施形態に係る素子の他の一例を示す図である。
【図4】着色時(遮光時)の透過率と、素子が作り出す発電量の関係を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態における具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る調光発電ハイブリッド素子(以下「本素子」という。)1の断面概略図を示す。本図で示すように、本素子1は、一対の基板2、3と、一対の基板2、3の間に配置される電解質層4を備え、光透過モードと着色発電モードを有するものである。
【0017】
また、本素子1において、一対の基板2、3の材質としては、電解質層4を挟み保持するために用いられるものであって、基板2、3の双方が透明であれば透過型の表示素子を実現することができるため好ましい。本実施形態では双方透明な場合で説明する。なお、基板の材料としては、ある程度の硬さ、化学的安定性を有し、安定的に材料層を保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、金属、半導体等を採用することができ、透明な基板として用いる場合はガラスやプラスチックを用いることができる。
【0018】
また、本素子1において、一対の基板2の対向する面それぞれには、透明電極21、31が形成されている。この電極は一対の基板2、3によって挟持される材料層に電圧を印加するために用いられるものである。電極の材料としては、好適な導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばITO、IZO、SnO、ZnO等の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0019】
また本素子1における透明電極21、31は、基板上に、表示したい文字などのパターンにあわせた形状として形成してもよく、また、同じ複数の領域毎に区分された電極パターンを複数基板上に並べて形成したものであってもよい。複数の領域毎に区分すると、この各領域を画素とし、画素毎に表示を制御し、複雑な形状の表示にも対応できるといった利点がある。
【0020】
また本素子1における透明電極間の距離としては、後に詳述するエレクトロクロミック材料における銀が微粒子として十分析出し、消失する電界を印加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、1μm以上10mm以下が可能であり、望ましくは1μm以上1mm以下の範囲である。
【0021】
また、本素子1における透明電極21の抵抗は小さければ小さいほど良く限定はされないが、値段や電極そのものの色調、反射率との兼ね合いから、シート抵抗で0.1Ω/□から100Ω/□が好ましく、2Ω/□から20Ω/□がより好ましい。
【0022】
また、本素子1において、他方の透明電極21は、透明粒子修飾電極である、または、透明粒子修飾電極により覆われていることが好ましい。この場合において、透明粒子修飾電極は、より具体的には酸化物導電性ナノ粒子層22であることが好ましい。酸化物導電性ナノ粒子層22を設けることで、外部から入射される光のエネルギーを吸収し電子遷移が起こった銀粒子からエネルギーを受け取り、電気として外部に放出できるようになる。
【0023】
本素子1の酸化物導電性ナノ粒子層22は、文字通り、酸化物からなり導電性を備えたナノレベルの大きさを備えた粒子であって、材質としては、上記透明電極と同様のものを採用することができる。また、本素子1の酸化物導電性ナノ粒子層22における粒子の大きさは一般的なもので差し支えないが、1次粒径で1nmから500nmが好ましく、5nmから100nmがより好ましい。また、酸化物導電性ナノ粒子層22の厚さは20nmから10μmが好ましく、30nmから3μmが最も好ましい。この最も厚い状態での可視域における光透過率が50%以上であることが好ましい。なお、本素子1の酸化物導電性ナノ粒子層22は、透明電極21と一体化して形成されていてもよい。また本素子1の酸化物導電性ナノ粒子層22は、上記の記載から明らかなように、可視領域において透明であることが好ましい。
【0024】
また本素子1における電解質層4は、支持塩としての電解質を含むとともに、銀イオンを含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含んでいる。また本実施形態に係る電解質層4は、上記銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータのほか、これら材料を保持するための溶媒を含んでいる。
【0025】
本素子1の電解質層4における電解質は、エレクトロクロミック材料の酸化還元等を促進するためものであり支持塩であることは好ましい一例である。電解質は、臭素イオンを含むことが好ましく、例えばLiBr、KBr、NaBr、臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)等を例示することができる。なお、電解質の濃度としては、限定されるわけではないが、モル濃度でエレクトロクロミック材料の5倍程度、具体的には3倍以上6倍以下含んでいることが好ましく、例えば3mM以上6M以下であることが好ましく、より好ましくは5mM以上5M以下、より好ましくは6mM以上3M以下、更に好ましくは15mM以上600mM以下、更に好ましくは25mM以上500mM以下、30mM以上300mM以下の範囲である。
【0026】
また本素子1の電解質層4における溶媒は、上記エレクトロクロミック材料、電気化学発光材料及び電解質を安定的に保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒等一般的なものも用いることができる。溶媒としては、限定されるわけではないが、例えばDMSOを用いることができる。
【0027】
また本素子1においてエレクトロクロミック材料とは、電圧、好ましくは直流を印加することによって酸化還元反応を起こす材料であり、銀イオンを含む塩であることが好ましい。このエレクトロクロミック材料は酸化還元反応によって銀微粒子を析出、又は消失させ、これに基づく色の変化を生じさせ表示を行なうことができる。銀を含むエレクトロクロミック材料としては限定されるわけではないが、AgNO、AgClO、AgBr、を挙げることができる。なお、エレクトロクロミック材料の濃度については、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではなく、材料によって適宜調整が可能であるが、5M以下であることが望ましく、より望ましくは1mM~1M、さらに望ましくは5mM~100mMである。
【0028】
また本素子1の電解質層4のメディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギーで酸化還元を行なうことのできる材料をいう。メディエータの酸化体が銀から随時電子を授受することによって酸化による消色反応を補助することができる。なお、メディエータとしては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、銅(II)イオンの塩であることが好ましく、例えばCuCl、CuSO、CuBrを挙げることができる。なおメディエータの濃度としては、上記機能を奏する限りにおいて限定されず、また材料によって適宜調整が可能であるが、5mM以上20mM以下であることが望ましく、より望ましくは15mM以下である。20mM以下とすることで過度の色付きを防止することができる。なお、銀イオンと銅(II)イオンの濃度比としては、限定されるわけではないが、銀イオンを10とした場合、銅(II)イオンは1以上3以下の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、本素子1の電解質層4においては、上記構成要件のほか、例えば増粘剤を加えることができる。増粘剤を加えることでエレクトロクロミック素子のメモリ性を向上させることができる。なお増粘剤の例としては、特に限定されるわけではないが、例えばポリビニルアルコールを例示することができる。なお増粘剤の濃度としては、特に限定されるわけではないが、例えば電解質層の総重量に対し5重量%以上20重量%以下の範囲で含ませておくことが好ましい。
【0030】
また、本素子1は、一対の基板それぞれにおいて形成される透明電極に接続され、電圧を印加する電源装置5を備えている。本素1は、例えば電圧を印加した状態で反射状態又は黒状態を、電圧を解除した状態では着色状態を維持できる。
【0031】
本素子1では、電極間に電圧を印加すると、一方の電極ではエレクトロクロミック中の銀イオンが還元されて銀として析出する一方、電圧を解除した無力状態で着色状態を維持する。また、電着された銀に対して酸化電圧を印加すると、銀は再び銀イオンとして溶解する。この場合において、銀が平滑な電極状に形成されれば鏡状態となり、粒子修飾電極上に形成されれば、光は乱反射され黒状態となる。なおこの場合において、観測者にとって、平滑な電極が形成される基板が手前、凹凸のある粒子修飾電極が形成された基板が奥側となる。なお、この直流電圧印加の際の電圧の強度としては、一対の基板間の距離、一対の電極間の距離によって適宜調整が可能であり、限定されるものではなく、電界強度として例えば1.0×10V/m以上1.0×10V/m以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0×10V/m以下の範囲内である。なお、この場合において、銀イオンを還元させて析出させることができる限りにおいて、段階的に電圧を変化させてもよく、交流的な電圧の印加方法も可能ではある。
【0032】
本素子1では、電圧を解除した無力状態で着色状態を維持する(メモリ効果を有する)構成とするが効率的にメモリ効果を高めるため、例えば図2で示すような構造とすることも好ましい。本図の例では、一対の基板の間に陰イオン交換膜7が配置され、この陰イオン交換膜を挟んで、銀イオンを含むエレクトロクロミック材料を含む電解質層、メディエータを含む電解質層が配置されていることが好ましい。このようにすることでメモリ効果を高めることが可能となる。なお、陰イオン交換膜とは、陰イオンを容易に透過させることができる一方、陽イオンを容易に透過させない膜をいい、限定されるわけではないが、例えば四級アンモニウム等のカチオン性を備えたポリマー膜を例示することができる。なおこの陰イオン交換膜はスペーサー等により中間位置に保持されていることが好ましい。
【0033】
また、本素子1は、上記電源装置5のほか、一対の基板それぞれにおいて形成される透明電極に接続され蓄電する蓄電装置6を備えている。このようにすることで、本素子1によって発生する電力を蓄えることができる。なお本素子1の例では電力を蓄える観点から蓄電装置6としているが、そのまま負荷とすることも可能である。
【0034】
ここで本素子1による発電について説明する。まず、本素子において得られた発色状態では銀は電極上で銀ナノ粒子として析出し、その大きさや形状は形状により異なるLSPR(局在表面プラズモン共鳴帯)の吸収を持つため、電極表面や素子駆動方法により、減法混色系三原色や黒、ミラー反射状態を含む多様な光学状態、調光状態を発現できる。本素子1では、このような調光性のみならず、着色時、すなわち銀ナノ粒子析出時、この銀ナノ粒子のLSPR帯の光吸収ののち引き起こされる光誘起電子移動反応を利用し、色素増感太陽電池に類似した電子移動反応を用いて発電、調光による省エネと発電による創エネ両者を併せ持たせられる素子を実現する。発電サイクルを安定的に回すためには、銀ナノ粒子と電子の授受をスムーズに行う必要があり、銀ナノ粒子から電子を受け取る透明導電性酸化物ナノ粒子修飾電極と、電子を供給するハロゲンイオンの設計を適切に行う。この場合の駆動原理を図3に示す。
【0035】
より具体的に説明すると、本素子1は、透明粒子修飾電極に対極に対して例えば-2.5V程度の定電圧を印加すること黒色に発色する。また電圧を2段階及び多段階にステップさせることで、シアン、マゼンダ、イエロー、赤、青、緑、を含む種々の色相を発現できる。一方で、消色は透明粒子修飾電極に対極に対して例えば+0.5V程度の定電圧を与えることで可能であり、元の透明状態に戻る。着色時の透過率は1%以下、消色時の透過率として80%が得られることが確認されている。着色時(遮光時)の透過率と、素子が作り出す発電量の関係の例を図4に示しておく。本図によると、透過率の減少(遮光性の向上)とともに、発電量が増加し、推測通り、着色状態の素子が発電機能を示すことがわかる。
【0036】
すなわち、上記の記載から明らかなように、本素子1によると、着色状態や反射状態においては太陽光を吸収して発電が可能であるとともに、透過状態ではいわゆる透明な窓として用いることができる。すなわち、省エネが可能な調光デバイスに太陽光発電機能を追加し、省エネと創エネを同時に行う高性能なデバイスを実現することができる。またこれにより、これまで利用されていなかった窓のような透明性の必要な箇所での発電が可能となる。さらに、構造自体も簡便であり、低コスト化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、調光発電ハイブリッド素子及びこれを用いた発電方法として産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3