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明細書 :熱デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-037617 (P2018-037617A)
公開日 平成30年3月8日(2018.3.8)
発明の名称または考案の名称 熱デバイス
国際特許分類 H01L  35/22        (2006.01)
H01L  37/00        (2006.01)
H01L  51/00        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
G01J   1/02        (2006.01)
H01L  35/32        (2006.01)
FI H01L 35/22
H01L 37/00
H01L 29/28 100Z
H01L 29/28 250E
G01J 1/02 C
H01L 35/32 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-172073 (P2016-172073)
出願日 平成28年9月2日(2016.9.2)
発明者または考案者 【氏名】河野 行雄
【氏名】藤田 武志
【氏名】陳 明偉
【氏名】伊藤 良一
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100072718、【弁理士】、【氏名又は名称】古谷 史旺
【識別番号】100116001、【弁理士】、【氏名又は名称】森 俊秀
審査請求 未請求
テーマコード 2G065
Fターム 2G065AA04
2G065AB03
2G065BA02
要約 【課題】 THz帯の電磁波に対する感度、または熱を熱起電力に変換する効率の向上の少なくとも1つを達成することができる熱デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 3次元多孔質グラフェンと、3次元多孔質グラフェン上に対向して配置される一組の電極とを備える。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
3次元多孔質グラフェンと、
前記3次元多孔質グラフェン上に対向して配置される一組の電極と
を備えることを特徴とする熱デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の熱デバイスにおいて、
前記3次元多孔質グラフェンは、p型の伝導特性を示す前記3次元多孔質グラフェンと、n型の伝導特性を示す前記3次元多孔質グラフェンとが所定の長さで重なるように接合されて形成され、
前記一組の電極の一方は、p型の前記3次元多孔質グラフェン上に配置され、
前記一組の電極の他方は、n型の前記3次元多孔質グラフェン上に配置される
ことを特徴とする熱デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の熱デバイスにおいて、
前記所定の長さは、前記p型の3次元多孔質グラフェンおよび前記n型の3次元多孔質グラフェンが有する熱拡散長に応じた長さであることを特徴とする熱デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱デバイスにおいて、
前記3次元多孔質グラフェンが有する細孔の直径は、受信する電磁波が有する波長の1000分の1から10分の1以下の大きさであることを特徴とする熱デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱デバイスにおいて、
外部と断熱された状態で前記3次元多孔質グラフェンおよび前記一組の電極を密閉する容器をさらに備えることを特徴とする熱デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱デバイスにおいて、
前記3次元多孔質グラフェンに発生した熱を伝導させる放熱板をさらに備えることを特徴とする熱デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
0.1から30テラヘルツ(THz)程度の周波数は、物質が有する固有の格子振動等の周波数と一致することから、例えば、固体物理学や高分子化学等の分野において、物質内部の構造等を調べるために、THz帯の電磁波が使用されている。また、THz帯の電磁波は、布や紙等の物質を透過する性質を有することから、例えば、医療分野やセキュリティ分野等において、細胞やカバン等を破壊することなく細胞やカバン等の中身を検査するために使用されている。
【0003】
THz帯の電磁波を高感度で検出するために、熱容量が小さく、かつゼーベック係数が大きい単層のグラフェンを用いたテラヘルツ検出器が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Yukio Kawano, "Wide-band frequency-tunable terahertz and infrared detection with graphene", Nanotechnology 24, 214004-1-6 (2013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
単層のグラフェンは、熱容量が小さいことから、可視光や赤外線等の光より低いエネルギーのTHz帯の電磁波が照射された場合でも、照射された部分で温度が大きく上昇し、照射された部分と周囲の部分との間で温度勾配が生じる。そして、単層のグラフェンは、ゼーベック係数が大きいことから、生じた温度勾配により大きな熱起電力が発生し、大きな電流を出力することができる。しかしながら、単層のグラフェンは、炭素原子の1つ分の厚さしか有しないため、THz帯の電磁波の吸収率が20パーセント程度と低い。このため、テラヘルツ検出器の感度を向上させることが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、THz帯の電磁波に対する感度、または熱を熱起電力に変換する効率の向上の少なくとも1つを達成することができる熱デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示する熱デバイスの一態様は、3次元多孔質グラフェンと、3次元多孔質グラフェン上に対向して配置される一組の電極とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、THz帯の電磁波に対する感度、または熱を熱起電力に変換する効率の向上の少なくとも1つを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】テラヘルツ検出器の一実施形態を示す図である。
【図2】図1に示したナノポーラスグラフェンの一例を示す図である。
【図3】図1に示したナノポーラスグラフェンにおけるTHz帯の電磁波の吸収率の一例を示す図である。
【図4】図1に示したテラヘルツ検出器における応答性能およびノイズ電圧の一例を示す図である。
【図5】テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す図である。
【図6】テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す図である。
【図7】図6に示したテラヘルツ検出器における気圧と応答強度との関係の一例を示す図である。
【図8】テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す図である。
【図9】図8に示したテラヘルツ検出器における応答速度の一例を示す図である。
【図10】熱電素子の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態について説明する。

【0011】
図1は、テラヘルツ検出器の一実施形態を示す。

【0012】
図1に示したテラヘルツ検出器100は、電極10と、電極20と、ナノポーラスグラフェン30とを有する。テラヘルツ検出器100は、熱デバイスの一例である。

【0013】
電極10、20は、金等の金属箔であり、ナノポーラスグラフェン30の同じ表面上に対向して配置される。そして、電極10、20は、電流計や電圧計等の測定器MEを介して、電線で接続される。電極10、20は、一組の電極の一例である。

【0014】
ナノポーラスグラフェン30は、多孔質の3次元的な曲面となるように炭素原子が単層で配列された3次元多孔質グラフェンである。例えば、Y. Ito et al., "High-quality three-dimensional nanoporous graphene", Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, pp.4822-4826に記載された方法に基づいて、ニッケル等のナノ多孔質金属の表面に、化学気相蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)を用いてグラフェンが蒸着される。そして、ナノ多孔質金属を溶かす等して除去することにより、ナノポーラスグラフェン30が生成される。生成されたナノポーラスグラフェン30は、例えば、60μV/K程度の高いゼーベック係数を有し、0.05から0.83kJ/m/Kの低い熱容量を有する。また、ナノポーラスグラフェン30は、200-500cm/Vsのキャリア移動度および1グラム当たり800mの表面積を有する。

【0015】
図2は、図1に示したナノポーラスグラフェン30の一例を示す。図2(a)は、可視光で見たナノポーラスグラフェン30の画像を示す。図2(b)は、図2(a)に示したナノポーラスグラフェン30の一部分を拡大した、走査型電子顕微鏡の画像を示す。図2(b)に示すように、ナノポーラスグラフェン30は、多孔質の構造を有する。

【0016】
図3は、図1に示したナノポーラスグラフェン30におけるTHz帯の電磁波の吸収率の一例を示す。図3では、1THzから6THzの電磁波を用いて測定したナノポーラスグラフェン30の吸収率を実線で示す。また、図3では、単層のグラフェンの吸収率を破線で示す。なお、図3におけるナノポーラスグラフェン30の厚さは、例えば、30μmである。

【0017】
図3に示すように、ナノポーラスグラフェン30の吸収率は、1THzから6THzの電磁波において、90パーセント以上の値を示す。一方、単層のグラフェンの吸収率は、20パーセント前後の値を示し、ナノポーラスグラフェン30の5分の1程度である。すなわち、ナノポーラスグラフェン30は、単層のグラフェンと比べて、5倍程度大きなTHz帯の電磁波に対する吸収率を有する。

【0018】
図4は、図1に示したテラヘルツ検出器100における応答性能およびノイズ電圧の一例を示す。図4(a)は、THz帯の電磁波が照射されていない場合と、THz帯の電磁波が照射されている場合とにおいて、電極10、20間に印加されるバイアス電圧にたいする、テラヘルツ検出器100から出力される電流の変化を示す。図4(a)の縦軸は、電流を示し、図4(a)の横軸は、バイアス電圧を示す。また、図4(a)では、THz帯の電磁波が照射されていない場合の測定器MEにより測定された電流を破線で示し、THz帯の電磁波が照射されている場合の測定器MEにより測定された電流を実線で示す。なお、照射されるTHz帯の電磁波は、30THzの電磁波が20mWのパワーでテラヘルツ検出器100に照射される。

【0019】
一方、図4(b)は、THz帯の電磁波が照射されていない場合で、かつバイアス電圧が0ボルト(以下、“ゼロバイアス”とも称される)の場合におけるテラヘルツ検出器100におけるノイズ電圧の周波数分布を示す。図4(a)の縦軸は、ノイズ電圧を示し、図4(a)の横軸は、周波数を示す。また、図4(b)では、熱雑音の理論値を破線で示す。

【0020】
図4(a)に示すように、THz帯の電磁波の照射の有無に拘わらず、テラヘルツ検出器100は、電極10、20間に印加されるバイアス電圧が増加するに従い、電流も増加させて出力する。そして、テラヘルツ検出器100は、30THzの電磁波が照射されていない場合と比べて、電磁波が照射されている場合には35.6μAが上乗せされた電流を出力する。これは、テラヘルツ検出器100にTHz帯の電磁波が照射されることにより、ナノポーラスグラフェン30のうちTHz帯の電磁波が照射された領域の温度が上昇する。そして、照射された領域と周囲の領域との間の温度勾配により、ナノポーラスグラフェン30において熱起電力が発生する。テラヘルツ検出器100は、バイアス電圧に依存せずに、熱起電力により生じた熱電流である35.6μAを上乗せした電流を出力する。

【0021】
なお、THz帯の電磁波は、テラヘルツ検出器100のうち、電極10または電極20とナノポーラスグラフェン30との界面付近に照射されることが好ましい。これにより、より大きな温度勾配、すなわち大きな熱起電力を得ることができる。

【0022】
また、ナノポーラスグラフェン30における細孔の直径が小さい程、テラヘルツ検出器100のTHz帯の電磁波に対する応答が向上する。例えば、ナノポーラスグラフェン30の細孔を1μmの直径から100nmの直径(30THzの電磁波の波長の100分の1)に小さくした場合、30THzの電磁波に対するテラヘルツ検出器100の感度は、2倍程度向上する。すなわち、細孔の直径は、検出対象となるTHz帯の電磁波は有する波長の1000分の1から10分の1程度の大きさ、好ましくは数100分の1程度、すなわち1000分の1から100分の1程度の大きさに設定されることが好ましい。また、細孔の直径は、照射されるTHz帯の電磁波の波長とともに、テラヘルツ検出器100が使用される環境に応じて適宜決定されることが好ましい。

【0023】
なお、上述した細孔の直径は、図2に示した走査型電子顕微鏡の画像、または原子間力顕微鏡の画像を用いて測定した値である。

【0024】
一方、図4(b)に示すように、テラヘルツ検出器100は、ゼロバイアスにおいて、破線で示した熱雑音の理論値に近いノイズ電圧を出力する。すなわち、THz帯の電磁波が照射されない場合で、かつゼロバイアスの場合、ナノポーラスグラフェン30において電流が流れておらず、テラヘルツ検出器100から出力されるノイズ電圧は、熱雑音成分のみの1nV/Hz1/2という非常に小さな値となる。この場合、テラヘルツ検出器100の感度を示す雑音等価電力(NEP:Noise Equivalent Power)は、67pW/Hz1/2となる。また、テラヘルツ検出器100の応答速度は、16m秒である。

【0025】
一方、パイロ検出器またはゴーレイセル等の従来のテラヘルツ検出器の感度は、100pW/Hz1/2より大きなNEPの値を示す。すなわち、図1に示したテラヘルツ検出器100は、ナノポーラスグラフェンを用いることにより、ノイズを低減することができ、従来と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。

【0026】
また、単層のグラフェンを用いたテラヘルツ検出器や、パイロ検出器またはゴーレイセル等の従来のテラヘルツ検出器の応答速度は、25ミリ秒より長い時間がかかる。すなわち、図1に示したテラヘルツ検出器100は、ナノポーラスグラフェンを用いることにより、従来と比べて速い応答時間で動作できる。

【0027】
図5は、テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す。

【0028】
図5に示したテラヘルツ検出器100Aは、電極10aと、電極20aと、p型ナノポーラスグラフェン30aと、n型ナノポーラスグラフェン30bとを有する。

【0029】
電極10a、20aは、図1に示した電極10、20と同様に金等の金属箔であり、p型ナノポーラスグラフェン30a、n型ナノポーラスグラフェン30bの表面にそれぞれ配置される。そして、電極10a、20aは、電流計や電圧計等の測定器MEを介して、電線で接続される。

【0030】
p型ナノポーラスグラフェン30aおよびn型ナノポーラスグラフェン30bは、図1に示したナノポーラスグラフェン30と同様に、多孔質の3次元的な曲面となるように炭素原子が単層で配列された3次元多孔質グラフェンである。なお、p型ナノポーラスグラフェン30aは、p型の伝導特性を示し、n型ナノポーラスグラフェン30bは、n型の伝導特性を示す。そして、p型ナノポーラスグラフェン30aとn型ナノポーラスグラフェン30bとは、例えば、ポリイミドテープ等を用いて、長さΔLで互いに重なるようにPN接合される。

【0031】
なお、PN接合される長さΔLは、p型ナノポーラスグラフェン30aおよびn型ナノポーラスグラフェン30bが有する熱拡散長、すなわち100μmから200μm程度に設定されることが好ましい。そして、図5に示したテラヘルツ検出器100Aでは、PN接合された長さΔLの部分に、THz帯の電磁波が照射されることが好ましい。この場合、テラヘルツ検出器100Aの感度は、電極10または電極20とナノポーラスグラフェン30との界面にTHz帯の電磁波を照射する図1に示したテラヘルツ検出器100と比べて、2倍から5倍程度向上する。そして、テラヘルツ検出器100Aの感度は、フェルミ準位の位置とディラック点との位置関係に応じて変化し、フェルミ準位の位置がディラック点のごく近傍で最も高くなる。

【0032】
すなわち、図5に示したテラヘルツ検出器100Aは、ナノポーラスグラフェンを用いることにより、ノイズを低減することができる。また、テラヘルツ検出器100Aは、p型ナノポーラスグラフェン30aとn型ナノポーラスグラフェン30bとをPN接合することにより、図1に示したテラヘルツ検出器100と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。

【0033】
また、図5では、p型ナノポーラスグラフェン30aがn型ナノポーラスグラフェン30bの上にPN接合されたが、n型ナノポーラスグラフェン30bがp型ナノポーラスグラフェン30aの上にPN接合されてもよい。

【0034】
図6は、テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す。なお、図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。

【0035】
図6に示したテラヘルツ検出器100Bは、電極10と、電極20と、ナノポーラスグラフェン30と、容器40とを有する。

【0036】
容器40は、THz帯の電磁波を透過するガラス、プラスチックあるいは金属等で形成された真空容器である。容器40は、電極10、20の各々に接続される電線を除いて、電極10、20およびナノポーラスグラフェン30を密閉して含み、真空引きにより容器40の内部は、外部の大気圧より低い気圧に設定される。すなわち、容器40の内部は、空気が希薄となる。これにより、電極10または電極20とナノポーラスグラフェン30との界面にTHz帯の電磁波が照射されることで発生した熱は、断熱効果により空気を介して外部に拡散しない。このため、テラヘルツ検出器100Bは、THz帯の電磁波が照射されたナノポーラスグラフェン30の領域における温度を、図1に示したテラヘルツ検出器100と比べて高くできる。そして、テラヘルツ検出器100Bは、ナノポーラスグラフェン30にTHz帯の電磁波が照射された領域と周囲の領域との間の温度勾配を、図1に示したテラヘルツ検出器100と比べて大きくすることができ、大きな熱起電力および大きな熱電流を得ることができる。

【0037】
図7は、図6に示したテラヘルツ検出器100Bにおける気圧と応答強度との関係の一例を示す。図7の縦軸は、気圧を示し、図7の横軸は、熱起電力や熱電流等である応答強度を示す。

【0038】
図7に示すように、テラヘルツ検出器100Bの応答強度は、気圧が低くなるに従い、増加する。そして、テラヘルツ検出器100Bは、大気圧(101,325Pa)と比べて、気圧0.1Pa付近において2.67倍の大きな応答強度を出力する。換言すれば、テラヘルツ検出器100Bは、図1に示したテラヘルツ検出器100(大気圧)と比べて、2.67倍程度感度を向上させることができる。

【0039】
なお、容器40は、図5に示したテラヘルツ検出器100Aを密閉して含み、テラヘルツ検出器100Bとして動作させてもよい。

【0040】
また、容器40は、電極10または電極20とナノポーラスグラフェン30との界面に照射されたTHz帯の電磁波により発生した熱を外部に拡散させないものであれば何れでもよく、例えば、THz帯の電磁波を透過する断熱材等でもよい。

【0041】
図8は、テラヘルツ検出器の別の実施形態を示す。なお、図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。

【0042】
図8に示したテラヘルツ検出器100Cは、電極10と、電極20と、ナノポーラスグラフェン30と、基板HSとを有する。

【0043】
基板HSは、シリコン等の熱伝導率が高い板状部材であり、1つの面にナノポーラスグラフェン30が配置される。基板HSは、THz帯の電磁波が照射されることによりナノポーラスグラフェン30に発生した熱を伝える放熱板として機能する。なお、基板HSがシリコンの場合、シリコンの熱伝導率は、168W/m/Kである。

【0044】
ここで、テラヘルツ検出器100Cは、ナノポーラスグラフェン30を用いることにより、THz帯の電磁波の照射による温度勾配を大きくすることができ、熱起電力および熱電流等の応答強度(すなわち、感度)を向上させることができる。しかしながら、ナノポーラスグラフェン30に発生した熱は、ナノポーラスグラフェン30が有する熱伝導率(約94W/m/K)で伝導するため、テラヘルツ検出器100Cの応答速度は、例えば、ナノポーラスグラフェン30の熱伝導率で決定される。

【0045】
そこで、テラヘルツ検出器100Cは、THz帯の電磁波の照射による熱を、基板HSを用いて伝導させることにより、応答速度の向上を図る。

【0046】
図9は、図8に示したテラヘルツ検出器100Cにおける応答速度の一例を示す。図9の縦軸は、正規化された熱電流等の応答強度を示す。図9の横軸は、THz帯の電磁波の照射が開始した時刻を基準とした時刻を示す。すなわち、図9では、時刻“0”において、パルス状のTHz帯の電磁波がテラヘルツ検出器100Cに照射されたことを示す。

【0047】
図9に示すように、テラヘルツ検出器100Cから出力される熱電流等の三角印で示した応答強度の測定値は、時刻“0”において、パルス状のTHz帯の電磁波が照射されたことにより増加している。そして、測定された応答強度の時間変化は、応答速度が500μ秒とする場合の実線で示した計算の結果と一致する。すなわち、テラヘルツ検出器100Cは、500μ秒の応答速度で動作することができる。

【0048】
一方、パイロ検出器またはゴーレイセル等の従来のテラヘルツ検出器の応答速度は、25ミリ秒以上である。また、基板HSが無い、図1に示したテラヘルツ検出器100等の応答速度は、16m秒である。すなわち、テラヘルツ検出器100Cは、基板HSにナノポーラスグラフェン30を配置することにより、応答速度を向上させることができる。また、テラヘルツ検出器100Cは、ナノポーラスグラフェン30を用いることにより、従来と比べてTHz帯の電磁波に対する感度を向上させることができる。

【0049】
なお、テラヘルツ検出器100Cの基板HSには、図5に示したテラヘルツ検出器100Aのように、PN接合されたp型ナノポーラスグラフェン30aとn型ナノポーラスグラフェン30bとが配置されてもよい。

【0050】
図10は、熱電素子の別の実施形態を示す。なお、図1で説明した要素と同一または同様の機能を有する要素については、同一または同様の符号を付し、これらについては、詳細な説明を省略する。

【0051】
図10に示した熱電素子200は、図1に示したテラヘルツ検出器100と同様に、電極10と、電極20と、ナノポーラスグラフェン30とを有する。熱電素子200は、熱デバイスの一例である。

【0052】
熱電素子200は、THz帯の電磁波または熱源からの熱がナノポーラスグラフェン30に照射されることにより、照射された領域と周囲の領域との間の温度勾配により熱起電力を発生させる。そして、熱電素子200は、図1に示したテラヘルツ検出器100と同様に、熱起電力により生じた熱電流である35.6μAを上乗せした電流を出力する。熱電素子200は、発電機として、電極10、20を介して接続された負荷210に電力を供給する。

【0053】
なお、THz帯の電磁波および熱源からの熱は、熱電素子200のうち、電極10または電極20とナノポーラスグラフェン30との界面付近に照射されることが好ましい。これにより、より大きな温度勾配、すなわち大きな熱起電力を得ることができる。すなわち、熱電素子200は、ナノポーラスグラフェン30を用いることにより、照射されたTHz帯の電磁波により発生した熱を熱起電力に変換する効率を、従来と比べて向上させることができる。

【0054】
また、図5、図6、図8に示したテラヘルツ検出器100A-100Cは、測定器MEを負荷210に置き換えて、熱電素子200として動作させてもよい。なお、図5に示したテラヘルツ検出器100Aを熱電素子200として動作させる場合、THz帯の電磁波および熱源からの熱は、PN接合された長さΔLの部分に照射されることが好ましい。

【0055】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10,10a,20,20a…電極;30…ナノポーラスグラフェン;30a…p型ナノポーラスグラフェン;30b…n型ナノポーラスグラフェン;40…容器;100,100A,100B,100C…テラヘルツ検出器;200…熱電素子;210…負荷;HS…基板;ME…測定器
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9