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明細書 :炭化水素組成物の製造方法及び触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6742020号 (P6742020)
公開番号 特開2018-039894 (P2018-039894A)
登録日 令和2年7月30日(2020.7.30)
発行日 令和2年8月19日(2020.8.19)
公開日 平成30年3月15日(2018.3.15)
発明の名称または考案の名称 炭化水素組成物の製造方法及び触媒
国際特許分類 C10G   3/00        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  23/882       (2006.01)
C09K   5/06        (2006.01)
FI C10G 3/00 Z
B01J 35/10 301A
B01J 23/882 M
C09K 5/06 L
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2016-173967 (P2016-173967)
出願日 平成28年9月6日(2016.9.6)
審査請求日 平成31年4月4日(2019.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】銭 衛華
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】森 健一
参考文献・文献 特開2015-030822(JP,A)
米国特許出願公開第2012/0059209(US,A1)
特開2010-209330(JP,A)
特開2007-153928(JP,A)
特開2015-113405(JP,A)
調査した分野 C10G 1/00-99/00
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び前記炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む含酸素炭化水素組成物を含有する原料液を準備する工程と、
BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、前記担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、前記元素X1に対する前記元素X2の原子数比が0.06~0.20である活性相と、を含む触媒を準備する工程と、
前記触媒を硫化処理する工程と、
硫化処理された前記触媒と前記原料液と水素とを接触させ、前記原料液中の前記含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理することにより、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する工程と、
を有し、
前記元素X1が、Moであり、
前記元素X2が、Coである、
炭化水素組成物の製造方法。
【請求項2】
前記担体が、更に、第4族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X3の酸化物を、前記担体の全量に対して1質量%~30質量%含有する請求項1に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項3】
前記元素X3が、Ti及びZrの少なくとも一方である請求項2に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質材料が、γ-アルミナである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項5】
前記炭化水素組成物を製造する工程は、硫化処理された前記触媒と前記原料液と水素とを、温度200℃~450℃、圧力0.1MPa~10MPa、液空間速度0.1h-1~10h-1の条件で接触させる請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項6】
前記含酸素炭化水素組成物が、動植物油脂に由来する組成物である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項7】
前記炭化水素組成物が、潜熱蓄熱材料として用いられる請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項8】
前記触媒中におけるP及びBの総含有量が、前記触媒の全量に対し、1質量%未満である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭化水素組成物の製造方法。
【請求項9】
含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理して炭化水素組成物を製造する反応に用いられる触媒であって、
BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、
前記担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、前記元素X1に対する前記元素X2の原子数比が0.06~0.20である活性相と、
を含み、
前記元素X1が、Moであり、
前記元素X2が、Coである、
触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素組成物の製造方法及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、天然油脂類又はその誘導体を、金属触媒又は合金触媒を用いて水素化処理することにより、炭化水素を含む組成物を製造する技術が知られている。
【0003】
例えば、天然油脂類あるいはその誘導体及び食用廃油等を原料とする炭化水素類の製造方法として、天然油脂、廃天然油脂またはその誘導体と、活性化した水素とを金属触媒、合金触媒、金属担持触媒および合金担持触媒からなる群より選ばれる触媒の存在下反応させることを特徴とする炭化水素類の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、動植物油脂および動植物油脂由来成分であるトリグリセリド含有炭化水素を原料として製造された環境低負荷型軽油基材を含有する軽油組成物として、動植物油脂および/または動物油脂由来成分を含有する原料油類を、周期律表第6A族および/または第8族金属と酸性質を有する無機酸化物を含有する水素化精製触媒と水素加圧下で接触させ、同時に/その後に結晶性モレキュラシーブを含有する担体に担持された周期律表第6A族および/または第8族金属を含有する異性化触媒と水素加圧下で接触させることにより得られる、炭素数15~18の鎖状飽和炭化水素を50質量%以上含有し、炭素数15以上の側鎖を有する鎖状飽和炭化水素含有量を炭素数15以上の直鎖飽和炭化水素含有量で除した値が0.7以上、かつ特定の式を満たす軽油組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
再生可能な起源の留出物を優れた品質の燃料に転化するための触媒として、硫黄含有の第VIB族元素によって構成された活性相を含む担持型または非担持型の触媒であって、第VIB族元素はモリブデンであり、担持型触媒の場合、触媒の全質量に関して第VIB族元素の酸化物の重量で17~35%の第VIB族元素含有量を有し、リン、ホウ素およびケイ素から選択されるドープ元素を前記担体に担持されてさらに含む、触媒が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
軽油の収率を最大にし、カルボキシル基のアルキル基への水素化脱酸素メカニズムを促進する方法として、脱炭酸/脱カルボニルによる転化が多くとも10%に制限された、再生可能な供給源に由来する仕込原料の水素化脱酸素法であって、第VIB族からの少なくとも1種の元素と第VIII族からの少なくとも1種の元素とを含む活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素は硫化物の形態であり、第VIB族からの金属(単数または複数)に対する第VIII族からの金属(単数または複数)の原子比は、厳密に0超かつ0.095未満であり、前記方法は、120~450℃の範囲の温度、1~10MPaの範囲の圧力、0.1~10h-1の範囲の毎時液空間速度で、水素/仕込原料の比が仕込原料の容積(m)当たり水素50~3000Nmとなるように仕込原料と混合される水素の全量存在下に行われる、方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、炭化水素を含む組成物を、潜熱を利用した蓄冷熱剤として用いることも検討されている。
例えば、炭素数がCのノルマルパラフィン成分(A)および炭素数がCn+2のノルマルパラフィン成分(B)の2成分をそれぞれ10重量%以上含み、炭素数がCn+1のノルマルパラフィン成分(C)の含有量は10重量%未満で、(A)+(B)+(C)=100重量%であり、かつnは10から16の範囲である実質的に上記(A)および(B)のノルマルパラフィン成分の混合物からなる蓄冷熱剤が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
また、動植物油脂を水素化処理するに際し、炭素原子奇数のn-パラフィン、及び分枝-パラフィンの両者を併せた副生物の生成を同時に抑え、炭素原子偶数のn-パラフィンを高収率で製造できる潜熱蓄熱基材炭化水素組成物の製造方法として、脱炭酸/脱カルボニルと分枝-パラフィンの生成を制限し、両者を併せた副生物が多くとも10%に制限された、動植物油脂由来の含酸素炭化水素化合物を含有する原料液の水素化脱酸素法であって、第6A族元素からの少なくとも1種の元素と第8族元素からの少なくとも1種の元素とを含む活性相を含むバルク又は担持触媒を用い、前記元素は硫化物の形態であり、第6A族元素からの金属(単数または複数)に対する第8族元素からの金属(単数または複数)の原子比は厳密に0を含み0.06未満であり、前記触媒はさらにリン及び/又はホウ素を、酸化物PあるいはBの重量で全触媒重量に対し1~6%の量で含み、前記方法は原料液が、1~250重量ppmの硫黄(硫黄元素として換算)を含有して、250~350℃の範囲の温度、1~10MPaの範囲の圧力、0.1~10h-1の範囲の液空間速度で行われる潜熱蓄熱基材炭化水素組成物の製造方法が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2003-171670号公報
【特許文献2】特開2007-308573号公報
【特許文献3】特開2010-149118号公報
【特許文献4】特開2010-209330号公報
【特許文献5】特開平6-234967号公報
【特許文献6】特開2015-30822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理して炭化水素組成物を製造するにあたり、副反応である、脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性に優れる炭化水素組成物の製造方法として、特許文献6に記載された方法以外の方法が提供されることが望ましい。
【0011】
本発明の一態様の課題は、含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理して炭化水素組成物を製造するにあたり、副反応である、脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性に優れる炭化水素組成物の製造方法並びに触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び前記炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む含酸素炭化水素組成物を含有する原料液を準備する工程と、
BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、前記担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、前記元素X1に対する前記元素X2の原子数比が0.06~0.30である活性相と、を含む触媒を準備する工程と、
前記触媒を、硫化処理する工程と、
硫化処理された前記触媒と前記原料液と水素とを接触させ、前記原料液中の前記含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理することにより、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する工程と、
を有する炭化水素組成物の製造方法。
<2> 前記元素X1が、Mo及びWの少なくとも一方であり、
前記元素X2が、Coである<1>に記載の炭化水素組成物の製造方法。
<3> 前記担体が、更に、第4族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X3の酸化物を、前記担体の全量に対して1質量%~30質量%含有する<1>又は<2>に記載の炭化水素組成物の製造方法。
<4> 前記元素X3が、Ti及びZrの少なくとも一方である<3>に記載の炭化水素組成物の製造方法。
<5> 前記多孔質材料が、γ-アルミナである<1>~<4>のいずれか1つに記載の炭化水素組成物の製造方法。
<6> 前記炭化水素組成物を製造する工程は、硫化処理された前記触媒と前記原料液と水素とを、温度200℃~450℃、圧力0.1MPa~10MPa、液空間速度0.1h-1~10h-1の条件で接触させる<1>~<5>のいずれか1つに記載の炭化水素組成物の製造方法。
<7> 前記含酸素炭化水素組成物が、動植物油脂に由来する組成物である<1>~<6>のいずれか1つに記載の炭化水素組成物の製造方法。
<8> 前記炭化水素組成物が、潜熱蓄熱材料として用いられる<1>~<7>のいずれか1つに記載の炭化水素組成物の製造方法。
<9> 前記触媒中におけるP及びBの総含有量が、前記触媒全量に対し、1質量%未満である<1>~<8>のいずれか1つに記載の炭化水素組成物の製造方法。
<10> BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、
前記担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、前記元素X1に対する前記元素X2の原子数比が0.06~0.30である活性相と、
を含む触媒。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理して炭化水素組成物を製造するにあたり、副反応である、脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性に優れる炭化水素組成物の製造方法並びに触媒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。

【0015】
本開示の炭化水素組成物の製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう)は、
炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び前記炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む含酸素炭化水素組成物を含有する原料液を準備する工程(以下、「原料液準備工程」ともいう)と、
BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、前記担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、前記元素X1に対する前記元素X2の原子数比が0.06~0.30である活性相と、を含む触媒を準備する工程(以下、「触媒準備工程」ともいう)と、
前記触媒を、硫化処理する工程(以下、「硫化処理工程」ともいう)と、
硫化処理された前記触媒と前記原料液と水素とを接触させ、前記原料液中の前記含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理することにより、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する工程(以下、「水素化脱酸素処理工程」ともいう)と、
を有する。
本開示の触媒は、上記担体と上記活性相とを含む。

【0016】
本発明者は鋭意検討した結果、上記含酸素炭化水素組成物を、元素X1と元素X2とを含有する活性相を含む触媒によって水素化脱酸素(Hydrodeoxygenation;HDO)処理するにあたり、上記触媒として、元素X1に対する元素X2の原子数比が0.06~0.30である触媒を用いると、副反応である脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性が向上することを見出した。
即ち、本開示の製造方法及び本開示の触媒によれば、副反応である、脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性が向上する。
詳細には、水素化脱酸素反応(主反応)によれば、原料としての、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び/又は炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルから、原料中の直鎖脂肪酸(又は、上記エステルを形成するための直鎖脂肪酸)の炭素数と同数の炭素原子を有する(即ち、炭素数が偶数の)直鎖炭化水素が生成される。
脱炭酸/脱カルボニル反応(副反応)によれば、上記原料から、上記原料中の直鎖脂肪酸(又は、上記エステルを形成するための直鎖脂肪酸)の炭素数よりも1つ少ない数の炭素原子を有する(即ち、炭素数が奇数の)炭化水素が生成される。
異性化反応(副反応)によれば、上記原料から、分岐鎖炭化水素が生成される。

【0017】
以下、本開示の製造方法の各工程について説明する。

【0018】
<触媒準備工程>
触媒準備工程は、本開示の触媒を準備する工程である。
本開示の触媒は、
BET法による比表面積が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体と、
担体に担持された活性相であって、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X1と第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X2とを含有し、元素X1に対する元素X2の原子数比(以下、「原子数比〔元素X2/元素X1〕」ともいう)が0.06~0.30である活性相と、
を含む。
触媒準備工程は、便宜上の工程である。
即ち、触媒準備工程は、本開示の触媒を製造する工程であってもよいし、予め製造した本開示の触媒を単に準備する工程であってもよい。

【0019】
(活性相)
本開示の触媒は、後述する担体に担持された活性相であって、元素X1と元素X2とを含有し原子数比〔元素X2/元素X1〕が0.06~0.30である活性相を含む。
触媒の活性相において、原子数比〔元素X2/元素X1〕が0.06~0.30であると、原子数比〔元素X2/元素X1〕が0.06未満である場合及び原子数比〔元素X2/元素X1〕が0.30超である場合と比較して、副反応である、脱炭酸/脱カルボニル反応と異性化反応とが抑制され、主反応である水素化脱酸素反応の選択性が向上する。
水素化脱酸素反応の選択性を更に向上させる観点から、原子数比〔元素X2/元素X1〕としては、0.06~0.25が好ましく、0.06~0.20がより好ましい。

【0020】
元素X1は、第6族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
元素X1は、水素化脱酸素反応の選択性をより向上させる観点から、Mo、W、及びCrからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Mo及びWの少なくとも一方であることがより好ましく、Moであることが特に好ましい。

【0021】
元素X2は、第8族~第10族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。
元素X2は、水素化脱酸素反応の選択性をより向上させる観点から、
Co、Rh、Tr、Fe、Ru、Os、Ni、Pd、及びPtからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、
Co、Fe、Ni、Pd、及びPtからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、
Co、Fe、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましく、
Co及びNiの少なくとも一方であることが更に好ましく、
Coであることが特に好ましい。

【0022】
水素化脱酸素反応の選択性をより向上させる観点から、元素X1と元素X2との組み合わせとして、特に好ましくは、元素X1がMo及びWの少なくとも一方であり、元素X2がCoである組み合わせである。

【0023】
元素X1は、活性相の製造適性の観点から、活性相中に元素X1の酸化物の形態で含まれることが好ましい。
元素X1の酸化物の含有量には特に制限はないが、触媒の全量(即ち、担体及び活性相の合計量)に対し、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%が更に好ましい。

【0024】
元素X2は、活性相の製造適性の観点から、活性相中に元素X2の酸化物の形態で含まれることが好ましい。
元素X2の酸化物の含有量には特に制限はなく、元素X1の酸化物の含有量、及び、原子数比〔元素X2/元素X1〕を考慮して、適宜調整できる。

【0025】
後述する担体(例えば、多孔質材料からなる担体、多孔質材料と元素X3の酸化物とを含む担体、等)に活性相を担持させる方法としては、
(1)後述する担体に対して、元素X1の酸化物の前駆体及び元素X2の酸化物を含む溶液を含浸させ、得られた複合体を焼成することにより、担体に対し、元素X1の酸化物及び元素X2の酸化物を含む活性相を担持させる方法、
(2)後述する担体に対して、元素X1の酸化物の前駆体の溶液及び元素X2の酸化物を含む溶液の一方を含浸させ、次いで他方を含浸させ、得られた複合体を焼成することにより、担体に対し、元素X1の酸化物及び元素X2の酸化物を含む活性相を担持させる方法、
(3)後述する担体に対して、元素X1(又はその酸化物)及び元素X2(又はその酸化物)を、それぞれ、蒸着、CVD(chemical vapor deposition;化学気相成長)、又はスパッタリングによって付着させる方法、
(4)後述する担体と、元素X1(又はその酸化物)と、元素X2(又はその酸化物)と、を混合する方法、
等が挙げられる。
中でも、触媒活性に優れる活性相を形成できる観点、及び、活性相の製造適性の観点から、上記(1)又は上記(2)の方法が好ましい。
元素X1の酸化物の前駆体としては、元素X1及び酸素原子を含む塩が挙げられる。
元素X2の酸化物の前駆体としては、元素X2及び酸素原子を含む塩が挙げられる。
元素X1の酸化物の前駆体及び/又は元素X2の酸化物を含む溶液としては、水溶液又はアルコール溶液が好ましく、水溶液が特に好ましい。

【0026】
(担体)
本開示の触媒は、BET法による比表面積(以下、単に「比表面積」ともいう)が100m/g~400m/gである多孔質材料を含有する担体を含む。
多孔質材料の比表面積が100m/g以上であると、本開示の担体を含む触媒の活性(以下、単に「触媒活性」ともいう)が向上する。
多孔質材料の比表面積が400m/g以下であると、担体の強度、担体の製造適性等の点で有利である。
多孔質材料の比表面積は、100m/g~350m/gであることが好ましく、150m/g~300m/gであることがより好ましい。

【0027】
上記多孔質材料は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記多孔質材料としては、触媒活性を効果的に発現させる観点から、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ジルコニア、セリア、ゼオライト、粘土、活性炭、等が挙げられ、アルミナが好ましい。
アルミナとしては、η-アルミナ、δ-アルミナ、又はγ-アルミナが好ましく、γ-アルミナが特に好ましい。

【0028】
担体中における上記多孔質材料の含有量は、担体の全量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。

【0029】
担体は、更に、第4族の元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素X3の酸化物を含むことが好ましい。
担体が、更に元素X3の酸化物を含む場合、水素化脱酸素反応の選択性がより向上する。この理由は明らかではないが、担体が更に元素X3の酸化物を含む場合には、触媒の酸性度がより低減され、その結果、副反応(特に異性化反応)をより低減できるため、と考えられる。

【0030】
担体が元素X3の酸化物を含有する場合、元素X3の酸化物の含有量は、担体の全量に対して、1質量%~30質量%であることが好ましく、3質量%~30質量%であることがより好ましく、5質量%~30質量%であることが更に好ましく、10質量%~30質量%であることが特に好ましい。
元素X3の酸化物の含有量が1質量%以上であると、上述した元素X3の酸化物による効果がより効果的に発揮され、水素化脱酸素反応の選択性がより向上する。
元素X3の酸化物の含有量が30質量%以下であると、担体の生産性(例えば、原料コスト、担体の製造工程の簡略化、等)の点で有利である。

【0031】
元素X3は、上述した元素X3の酸化物による効果をより効果的に発揮させ、水素化脱酸素反応の選択性をより向上させる観点から、Ti、Zr、及びHfからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、Ti及びZrの少なくとも一方であることがより好ましく、Tiであることが特に好ましい。

【0032】
多孔質材料と元素X3の酸化物とを含む担体の製造方法としては、
(1)多孔質材料に対して、元素X3の酸化物の前駆体を含む溶液を含浸させ、得られた複合体を焼成することにより、多孔質材料と元素X3の酸化物とを含む担体を製造する方法、
(2)多孔質材料に対して元素X3の酸化物を、蒸着、CVD、又はスパッタリングによって付着させる方法、
(3)多孔質材料と元素X3の酸化物とを混合する方法、
等が挙げられる。
中でも、本開示の製造方法の効果がより効果的に奏される点で、上記(1)の方法が好ましい。
元素X3の酸化物の前駆体としては、元素X3のアルコキシドが好ましい。
元素X3の酸化物の前駆体を含む溶液としては、アルコール溶液が好ましい。

【0033】
本開示の触媒(担体及び/又は活性相)は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
本開示の触媒は、例えば、特開2015-30822号公報に記載のP及びBを含んでいてもよい。
但し、本開示の触媒によれば、原子数比〔元素X2/元素X1〕を0.06~0.30としたことにより、水素化脱酸素反応の選択性が向上する。このため、本開示の触媒では、触媒中におけるP及びBの総含有量が、触媒の全量に対し、1質量%未満である場合においても、優れた水素化脱酸素反応の選択性が維持される。触媒中におけるP及びBの総含有量が触媒の全量に対して1質量%未満であることは、触媒の生産性(例えば、生産工程の簡略化、原料コスト)の面で有利である。
触媒中におけるP及びBの総含有量は、触媒の全量に対し、0.5質量%未満であってもよく、0.1質量%未満であってもよく、0質量%であってもよい(即ち、触媒がP及びBを含有しなくてもよい)。

【0034】
<原料液準備工程>
原料液準備工程は、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び前記炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルからなる群から選択される少なくとも1種を含む含酸素炭化水素組成物を含有する原料液を準備する工程である。
原料液準備工程は、便宜上の工程である。
即ち、原料液準備工程は、原料液を製造する工程であってもよいし、予め製造した原料液を単に準備する工程であってもよい。

【0035】
(含酸素炭化水素組成物)
原料液のうち、上記含酸素炭化水素組成物は、目的物である、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物の実質的な原料である。
即ち、本開示の製造方法では、上記含酸素炭化水素組成物が水素化脱酸素処理されて、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物が製造される。

【0036】
含酸素炭化水素組成物が、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸を含む場合、含酸素炭化水素組成物に含まれる炭素数が偶数である直鎖脂肪酸は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
また、この場合、含酸素炭化水素組成物は、炭素数14の直鎖脂肪酸、炭素数16の直鎖脂肪酸、及び炭素数18の直鎖脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくは2種以上)を含むことが好ましい。

【0037】
以下、炭素数n(例えば、炭素数18)を、「Cn」(例えば「C18」)と表記することがある。

【0038】
含酸素炭化水素組成物に含まれ得る炭素数が偶数である直鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。
含酸素炭化水素組成物に含まれ得る炭素数が偶数である直鎖脂肪酸の炭素数は、12、14、16、18、又は20であることが好ましい。
含酸素炭化水素組成物に含まれ得る炭素数が偶数である直鎖脂肪酸としては、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、アラキジン酸(C20:0)、ガドレイン酸(C20:1)、等が挙げられる。
ここで、「Cn:m」(例えば「C18:1」)との表記は、炭素数がn(例えば18)であり不飽和結合の数がm(例えば1)であることを意味する。

【0039】
含酸素炭化水素組成物が、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルを含む場合、含酸素炭化水素組成物に含まれる炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルは、1種のみであっても2種以上であってもよい。
また、この場合、含酸素炭化水素組成物は、C14の直鎖脂肪酸に由来するエステル、C16の直鎖脂肪酸に由来するエステル、及びC18の直鎖脂肪酸に由来するエステルからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくは2種以上)を含むことが好ましい。
ここで、「炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステル」とは、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸と、アルコールと、の反応によって形成されたエステルを意味する。
アルコールとして、好ましくは、グリセリン又はメタノールである。即ち、「炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステル」として、好ましくは、脂肪酸グリセリンエステル(例えば、脂肪酸トリグリセリド)又は脂肪酸メチルエステルである。

【0040】
炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルにおける直鎖脂肪酸の好ましい態様は、前述した、含酸素炭化水素組成物に含まれ得る炭素数が偶数である直鎖脂肪酸の好ましい態様と同様である。

【0041】
含酸素炭化水素組成物は、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステル以外の成分(例えば、炭素数が奇数である直鎖脂肪酸、炭素数が奇数である直鎖脂肪酸に由来するエステル、分岐鎖脂肪酸、分岐鎖脂肪酸に由来するエステル、等)を含んでいてもよい。
但し、本開示の製造方法の効果をより効果的に得る観点から、含酸素炭化水素組成物において、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルの総含有量は、含酸素炭化水素組成物の全量に対し、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。

【0042】
更に、後述する水素化脱酸素処理工程において、C16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する場合には、含酸素炭化水素組成物における、C16の直鎖脂肪酸、C16の直鎖脂肪酸に由来するエステル、C18の直鎖脂肪酸、及びC18の直鎖脂肪酸に由来するエステルの総含有量は、含酸素炭化水素組成物の全量に対し、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。

【0043】
含酸素炭化水素組成物は、バイオマス利用の観点から、動植物油脂に由来する組成物であることが好ましい。
動植物油脂に由来する組成物としては、動植物油脂、動植物油脂を精製(例えば蒸留)した組成物、動植物油脂を使用した後の廃油、などが挙げられる。
動植物油脂としては、ココナッツ油、ヒマワリ油、大豆油、オリーブ油、綿実油、菜種油、パーム油、ジャトロファ油、等が挙げられる。
含酸素炭化水素組成物は、1種の動植物油脂に由来する組成物であってもよいし、2種以上の動植物油脂に由来する組成物であってもよい。
含酸素炭化水素組成物として、好ましくは、パーム油、ジャトロファ油、又はPFAD(Palm Fatty Acid Distillate;パーム脂肪酸蒸留物)である。

【0044】
(硫黄元素)
原料液は、硫黄元素を含有することが好ましい。これにより、後述する水素化脱酸素処理工程において、触媒の活性をより高めることができる。
原料液が硫黄元素を含有する場合、硫黄元素は、原料液中に、硫黄単体の形態で含有されてもよいし、硫黄化合物の形態で含有されてもよいし、硫黄単体の形態及び硫黄化合物の形態で含有されてもよい。原料液に含有され得る硫黄化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ここでいう硫黄化合物の具体例及び好ましい態様は、後述する、硫化処理に用い得る硫黄化合物の具体例及び好ましい態様と同様である。

【0045】
原料液が硫黄元素を含有する場合、原料液全量に対する硫黄元素の含有量は、1質量ppm以上であることが好ましい。
硫黄元素の含有量が1質量ppm以上であると、後述する水素化脱酸素処理工程において、触媒活性を十分に発現させることができ、その結果、水素化脱酸素反応の選択性が寄り向上する。硫黄元素の含有量は、好ましくは5質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上である。
また、原料液が硫黄元素を含有する場合、原料液全量に対する硫黄元素の含有量は、1000質量ppm以下であることが好ましい。
硫黄元素の含有量が1000質量ppm以下であると、炭化水素組成物(目的物)の生産性が向上する。硫黄元素の含有量は、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下、特に好ましくは250質量ppm以下である。

【0046】
<硫化処理工程>
硫化処理工程は、前述した触媒を、硫化処理する工程である。
これにより、触媒(好ましくは活性相)中の金属が硫化され、その結果、触媒が水素化脱酸素反応の活性を発揮する。

【0047】
硫化処理は、前述した触媒と、硫黄元素と、を接触させることにより行うことができる。
硫化処理では、硫黄元素を、硫黄単体の形態で用いてもよいし、硫黄化合物の形態で用いてもよいし、硫黄単体の形態及び硫黄化合物の形態で用いてもよい。硫化処理に用い得る硫黄化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
硫化処理に用い得る硫黄化合物としては特に制限されないが、含硫黄炭化水素化合物が好ましく、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、チオール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ジベンジルポリスルフィド、若しくはこれらの誘導体、又は、硫黄分を含有する石油系炭化水素留分が好ましい。

【0048】
硫化処理に用い得る硫黄化合物としては、下記式(S1)で表される化合物も好ましい。
R-S-R’ … 式(S1)
式(S1)中、nは、1~10を表し、R及びR’は、それぞれ独立に有機基を表す。

【0049】
式(S1)中、nとしては、2~7が好ましく、4~6がより好ましい。
式(S1)中、Rで表される有機基の炭素数及びR’で表される有機基の炭素数の合計は、2~150であることが好ましく、2~60であることがより好ましく、2~20であることが特に好ましい。
R及びR’は、それぞれ独立に、直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基(好ましくはアルキル基)、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基が好ましい。

【0050】
式(S1)で表される化合物の具体例としては、C17-S4.8-C17(ジ(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ポリスルフィド;DIC社製CS-40)、ジメチルジスルフィド(DMDS)、などが挙げられる。

【0051】
触媒の硫化処理は、現場(in situ)で行ってもよいし、現場外(ex situ)で行ってもよい。

【0052】
<水素化脱酸素処理工程>
水素化脱酸素処理工程は、硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させ、上記原料液中の前記含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理することにより、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する工程である。

【0053】
水素化脱酸素処理工程において、硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させる際の条件としては、一般的な条件を適用できるが、特に好ましい条件は、温度200℃~450℃、圧力1MPa~100MPa、液空間速度0.1h-1~10h-1の条件である。

【0054】
硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させる際の温度(以下、「反応温度」ともいう)は、上述のとおり、200℃~450℃であることが好ましい。
反応温度が200℃以上であると、水素化脱酸素処理(水素化脱酸素反応)がより効果的に進行する。
反応温度が450℃以下であると、副反応(脱炭酸/脱カルボニル反応、異性化反応等)をより抑制できる。
反応温度は、200℃~400℃であることがより好ましく、250℃~350℃であることが特に好ましい。

【0055】
硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させる際の圧力(以下、「反応圧力」ともいう)は、上述のとおり、0.1MPa~10MPaであることが好ましい。
反応圧力が0.1MPa以上であると、水素化脱酸素処理(水素化脱酸素反応)が効果的に進行し、かつ、副反応(脱炭酸/脱カルボニル反応、異性化反応等)が抑制される。
反応圧力が10MPa以下であると、水素化脱酸素処理を行う反応器を安価な材料で製造でき、また、上記反応器の構造を簡易化できるので、生産性に優れる。
反応圧力は、1MPa~10MPaであることが好ましい。

【0056】
硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させる際の液空間速度は、上述のとおり、0.1h-1~10h-1であることが好ましい。
上記液空間速度が0.1h-1以上であると、反応器の容積をより小さくすることができるので、生産性に優れる。
上記液空間速度が10h-1以下であると、水素化脱酸素処理(水素化脱酸素反応)が効果的に進行する。

【0057】
また、硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させる際、原料液の流量に対する水素の流量の比〔水素の流量/原料液の流量〕は、50Nm/m~3000Nm/mが好ましく、70Nm/m~2000Nm/mがより好ましく、150Nm/m~1500Nm/mが更に好ましく、300Nm/m~1000Nm/mが特に好ましい。

【0058】
水素化脱酸素処理工程では、硫化処理された上記触媒と上記原料液と水素とを接触させることにより、上記原料液中の含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理する。
上記接触(即ち、水素化脱酸素処理)は、固定床反応器又は沸騰床反応器にて行うことができるが、固定床反応器にて行うことが好ましい。

【0059】
水素化脱酸素処理工程では、原料液中の含酸素炭化水素組成物を水素化脱酸素処理することにより、目的物として、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する。
詳細には、本工程では、含酸素炭化水素組成物に含まれる、炭素数が偶数である直鎖脂肪酸及び/又は炭素数が偶数である直鎖脂肪酸に由来するエステルが、水素化脱酸素処理され、目的物として、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を製造する。
この際、前述した触媒の作用により、副反応(脱炭酸/脱カルボニル反応、及び、異性化反応)が抑制され、水素化脱酸素処理における主反応(水素化脱酸素反応)が高選択で進行する。
このため、本工程によれば、原料液中の上記直鎖脂肪酸及び/又は上記エステルの炭素数と、同じ炭素数の直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を容易に製造できる。
例えば、原料液として、C16の直鎖脂肪酸又はそのエステル、及び、C18の直鎖脂肪酸又はそのエステルを含む原料液を用いた場合には、C16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を容易に製造できる。

【0060】
目的物(炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物)の用途には特に制限はない。
目的物の用途として、軽油又は潜熱蓄熱材(PCM;phase change material)が挙げられるが、潜熱蓄熱材が特に好ましい。
ここで、潜熱蓄熱材とは、相転移に伴う潜熱(例えば、液相から固相への相転移時に放出する凝固熱及び/又は固相から液相への相転移時に吸収する融解熱)を利用した蓄熱材である。潜熱蓄熱材は、顕熱を利用した蓄熱材と比較して、蓄熱材容積の縮小化、熱損失低減などの点で優れている。近年、潜熱蓄熱材を利用した、蓄熱式空調機器、蓄熱式建材、各種保温器具、装置等が数多く提案されている。潜熱蓄熱材については、特開2015-30822号公報の段落0001~0005の記載を参照できる。
即ち、本開示の製造方法は、潜熱蓄熱材としての、炭素数が偶数である直鎖炭化水素を含む炭化水素組成物を、簡単な製造工程にて製造する方法として特に好適である。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
〔実施例1〕
<触媒の作製>
触媒の担体としてアルミナ担体(γ-アルミナ担体、日本ケッチェン社製、比表面積275m/g)を準備した。このアルミナ担体(50g)をナス型フラスコに入れた。
アルミナ担体(50g)を入れたナス型フラスコに、モリブデン酸アンモニウム4水和物((NHMo24・4HO)及び硝酸コバルト6水和物(Co(NO・6HO)を含む水溶液を注入し、アルミナ担体に含浸させた。
得られた複合体を加熱しながら、ロータリーエバポレーターによって上記複合体から水分を蒸発させた。得られた固体を120℃で1時間乾燥させ、次いで500℃で焼成した。
以上により、アルミナ担体(50g)に、酸化モリブデン(MoO)及び酸化コバルト(CoO)からなる活性相が担持された構造を有する触媒を得た。
蛍光X線分析(XRF;X-ray Fluorescence Analysis)の結果、得られた触媒において、酸化モリブデンの含有量は、触媒の全量(即ち、担体と活性相との合計量)に対して20質量%であり、活性相における原子数比〔Co/Mo〕は表4に示すように0.06であった。
【実施例】
【0063】
<原料液の作製>
含酸素炭化水素組成物として、下記表1に示す脂肪酸組成のPFAD(Palm Fatty Acid Distillate;パーム脂肪酸蒸留物)を準備した。
【実施例】
【0064】
【表1】
JP0006742020B2_000002t.gif
【実施例】
【0065】
表1に示す各脂肪酸は、PFAD中に、80質量%程度が脂肪酸の形態で、20質量%程度が脂肪酸トリグリセリドの形態で、それぞれ含有されている。
【実施例】
【0066】
上記PFADに対し、硫黄化合物であるジ(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ポリスルフィド(CS-40;DIC(株))を、作製される原料液の全量に対する硫黄元素の含有量が50質量ppmとなるように添加することにより、原料液を得た。
【実施例】
【0067】
<硫化処理及び水素化脱酸素処理>
上記で作製された触媒を固定床反応器に収容した。
次いで、2質量%のCS-40を含む、軽油留分に相当する炭化水素混合物を固定床反応器に供給することにより、固定床反応器中の触媒を5時間硫化処理した。硫化処理の条件は、温度350℃、圧力1MPa、及び液空間速度5.0h-1とした。
次に、固定床反応器に供給する物質を、上記軽油留分に相当する炭化水素混合物から、上記原料液(即ち、PFADとCS-40との混合物)に切り替えて水素化脱酸素処理を行い、液体生成物を得た。水素化脱酸素処理の条件は、反応温度300℃、反応圧力3MPa、液空間速度1.0h-1、及び、水素ガス流量と原料液流量との比率(水素ガス流量/原料液流量)1000Nm/mとした。
【実施例】
【0068】
水素化脱酸素処理後の液体生成物を回収し、油水分離を行った後、油分(即ち、目的物である炭化水素組成物)をガスクロマトグラフで分析した。
その結果、原料液中の含酸素炭化水素組成物(PFAD)中の酸素原子は、水素化脱酸素反応によってほぼ除去されていた。また、得られた炭化水素組成物(目的物)中、C14以下の炭化水素及びC19以上の炭化水素は少なく、炭化水素組成物中のほとんどがC15~C18の炭化水素であった。詳細には、酸素を含む生成物、C14以下の炭化水素、及びC19以上の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して10質量%未満であり、C15~C18の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して90質量%超であった。
【実施例】
【0069】
次に、炭化水素組成物中のC15~C18の炭化水素の内訳として、
水素化脱酸素反応(即ち、主反応)によって生成したC16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素中の炭素原子の合計モル数Pe、
脱炭酸/脱カルボニル反応(即ち、副反応)によって生成したC15の直鎖炭化水素及びC17の直鎖炭化水素中の炭素原子の合計モル数Po、及び
異性化反応(即ち、副反応)によって生成したC15~C18の分岐鎖炭化水素中の炭素原子の合計モル数Piをそれぞれ求め、下記式(1)によって水素化脱酸素反応の選択性を求めた。
結果を表4に示す。
水素化脱酸素反応の選択性(モル%)=(Pe/(Pe+Po+Pi))×100 … 式(1)
【実施例】
【0070】
式(1)によって求められる水素化脱酸素反応の選択性は、C15~C18の炭化水素における、水素化脱酸素反応の主反応の生成物(即ち、C16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素)の割合(モル%)を意味する。
水素化脱酸素反応の選択性の数値が高い程、水素化脱酸素反応の選択性に優れることを意味する。
【実施例】
【0071】
〔実施例2~5、比較例1~2〕
触媒の作製において、硝酸コバルト6水和物(Co(NO・6HO)の量を変更することにより、活性相中の原子数比〔Co/Mo〕を表4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【実施例】
【0072】
また、いずれの例においても、酸素を含む生成物、C14以下の炭化水素、及びC19以上の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して10質量%未満であり、C15~C18の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して90質量%超であった。
【実施例】
【0073】
〔実施例6〕
原料油中の含酸素炭化水素組成物(PFAD)を、表2に示すトリグリセリドの脂肪酸組成のジャトロファ油に変更し、活性化処理及び水素化脱離処理に用いる硫黄化合物(CS-40)をジメチルジスルフィド(DMDS)に変更し、水素化脱酸素処理の条件(反応温度、反応圧力、及び液空間速度)を表4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【実施例】
【0074】
また、実施例6において、酸素を含む生成物、C14以下の炭化水素、及びC19以上の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して10質量%未満であり、C15~C18の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して90質量%超であった。
【実施例】
【0075】
【表2】
JP0006742020B2_000003t.gif
【実施例】
【0076】
表2に示す各脂肪酸は、実際には、脂肪酸トリグリセリドの形態でジャトロファ油に含有されている。
【実施例】
【0077】
〔実施例7〕
原料油中の含酸素炭化水素組成物を、表3に示すトリグリセリドの脂肪酸組成を有するパーム油に変更し、かつ、水素化脱酸素処理の条件(反応温度、反応圧力、及び液空間速度)を表4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【実施例】
【0078】
また、実施例7において、酸素を含む生成物、C14以下の炭化水素、及びC19以上の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して10質量%未満であり、C15~C18の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して90質量%超であった。
【実施例】
【0079】
【表3】
JP0006742020B2_000004t.gif
【実施例】
【0080】
表3に示す各脂肪酸は、実際には、脂肪酸トリグリセリドの形態でパーム油に含有されている。
【実施例】
【0081】
〔実施例8~10〕
触媒の作製において、アルミナ担体を、以下のようにして作製されたチタニア添加アルミナ担体に変更した(即ち、チタニア添加アルミナ担体に活性相を担持させた)こと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【実施例】
【0082】
また、いずれの例においても、酸素を含む生成物、C14以下の炭化水素、及びC19以上の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して10質量%未満であり、C15~C18の炭化水素の総含有量が、炭化水素組成物(目的物)の全量に対して90質量%超であった。
【実施例】
【0083】
<チタニア添加アルミナ担体の作製(実施例8~10)>
実施例8~10において、チタニア添加アルミナ担体は、以下のようにして作製した。
チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH))のエタノール溶液を調製し、ナスフラスコにいれた。ここに、実施例1で用いたアルミナ担体(50g)を入れ、室温で2時間放置することにより、チタンイソプロポキシドのエタノール溶液をアルミナ担体に含浸させた。
次に、ロータリーエバポレーターにより、上記エタノール溶液を含浸させたアルミナ担体からエタノールを蒸発させ、次いでここに適量の水を添加し、室温で12時間チタンイソプロポキシドの加水分解を行った。
得られた生成物からロータリーエバポレーターによって水を蒸発させ、次いで120℃で2時間乾燥させ、その後、600℃で4時間焼成することにより、チタニア(TiO)が添加されたアルミナ担体(即ち、チタニア添加アルミナ担体)を得た。
上述したチタンイソプロポキシドのエタノール溶液の濃度は、最終的に得られるチタニア添加アルミナ担体の全体に対するチタニアの含有量が、5質量%(実施例8)、15質量%(実施例9)、及び20質量%(実施例10)の各含有量となるように調整した。チタニア添加アルミナ担体の全体に対するチタニアの含有量は、蛍光X線分析(XRF)によって確認した。
【実施例】
【0084】
【表4】
JP0006742020B2_000005t.gif
【実施例】
【0085】
表4に示すように、触媒の活性相における原子数比〔Co/Mo〕が0.06~0.30である実施例1~10では、C15~C18の炭化水素におけるC16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素の割合(Pe/(Pe+Po+Pi))×100)(モル%)が90.3モル%以上であり、水素化脱酸素反応の選択性に優れていた。
これに対し、触媒の活性相における原子数比〔Co/Mo〕が0.06未満である比較例1では、C15~C18の炭化水素におけるC16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素の割合(Pe/(Pe+Po+Pi))×100)(モル%)が88.5モル%であり、水素化脱酸素反応の選択性に劣っていた。
また、触媒の活性相における原子数比〔Co/Mo〕が0.30超である比較例2では、C15~C18の炭化水素におけるC16の直鎖炭化水素及びC18の直鎖炭化水素の割合(Pe/(Pe+Po+Pi))×100)(モル%)が84.8モル%であり、水素化脱酸素反応の選択性に劣っていた。
【実施例】
【0086】
また、実施例1及び8~10の対比より、TiO(チタニア)添加アルミナ担体を用いると(実施例8~10)、水素化脱酸素反応の選択性がより向上することがわかる。