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明細書 :止血材用スポンジ及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-068723 (P2018-068723A)
公開日 平成30年5月10日(2018.5.10)
発明の名称または考案の名称 止血材用スポンジ及びその製造方法
国際特許分類 A61L  31/14        (2006.01)
FI A61L 31/14 300
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2016-213025 (P2016-213025)
出願日 平成28年10月31日(2016.10.31)
発明者または考案者 【氏名】成田 武文
【氏名】柚木 俊二
出願人 【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
Fターム 4C081AC10
4C081BA11
4C081BB01
4C081CD151
4C081CE08
4C081DA12
要約 【課題】拡張した後に硬化する止血材用スポンジを提供すること、及び、拡張した後に硬化する止血材用スポンジの製造方法を提供すること。
【解決手段】ゲニピンと、ゼラチンと、を含む、止血材用スポンジ及びその製造方法。前記ゼラチンの含有量は、止血材用スポンジの全質量に対し、5~10質量%であることが好ましい。また、前記ゲニピンの含有量は、止血材用スポンジの全質量に対し、3質量%~20質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲニピンと、ゼラチンと、を含む、止血材用スポンジ。
【請求項2】
前記ゼラチンの含有量が、止血材用スポンジの全質量に対し、5質量%~10質量%である、請求項1に記載の止血材用スポンジ。
【請求項3】
前記ゲニピンの含有量が、止血材用スポンジの全質量に対し、3質量%~20質量%である請求項1又は請求項2に記載の止血材用スポンジ。
【請求項4】
止血材用スポンジの質量に対して、5倍の質量の純水に入れ、37℃、24時間静置した際の溶液のpHが、7.0~8.0である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の止血材用スポンジ。
【請求項5】
架橋率が5%~30%である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の止血材用スポンジ。
【請求項6】
ゲニピン溶液と、ゼラチン溶液とを混合して混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液を凍結乾燥する工程と、を含む
止血材用スポンジの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、止血材用スポンジ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝動脈塞栓術とは、肝臓がんの切除不能な腫瘍に対し、抗癌剤を投与した後、止血材料(血管塞栓材料)で血流を止めることで、腫瘍への栄養を遮断しつつ抗癌剤濃度を高く維持することができる有用な低侵襲療法である。このような血管塞栓時における血管の閉塞、血流制御、腫瘍への血流供給の遮断を可能とするには血管塞栓材料が不可欠となる。
血管塞栓材料には永久塞栓材料と一時塞栓材がある。一時的塞栓材には、これまでゼラチンスポンジ、分解性デンプン粒子(DSM)、ヨウ化ケシ油、架橋コラーゲン繊維、エチルセルロースマイクロカプセルなどが用いられているが、ゼラチンスポンジが最も一般的に用いられている。
ゼラチンスポンジの止血材料(塞栓材料)は、造影剤を投与前に含ませるかあるいは分散させた状態で、生体内に配置されたマイクロカテーテルを介して、マイクロシリンジなどにより患部に向けて注入することで目的の腫瘍に導入することができる。
【0003】
非特許文献1には、ゼラチンスポンジ細片(ジェルパート)を用いた動脈塞栓術が記載されている。
【0004】
特許文献1には、ゼラチン及びゼラチンと架橋反応する水溶性化合物の水溶液を、水に不溶性のエチルセルロースを水と相溶しない非極性有機溶剤に溶解させてなる分散媒体中に分散させて架橋反応させることを特徴とするゼラチン球場ゲルの製造法が記載されている。
【0005】
非特許文献2及び非特許文献3には、ゼラチンの架橋方法として、グルタルアルデヒドを用いた化学的架橋の方法が記載されている。
【0006】
非特許文献4には、水溶性カルボジイミドをタンパク質、ペプチド合成の縮合剤として用いることが記載されている。
【0007】
非特許文献5には、ゼラチンをはじめとするアミノ基を有する生体タンパク質の架橋剤として、ゲニピンが記載されている。
【0008】
非特許文献6には、ゲニピン等の架橋剤の毒性について記載されている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特公昭62-033263号公報
【0010】

【非特許文献1】堺 幸正,日本IVR学会総会「技術セミナー」(2007) pp.190-194
【非特許文献2】Van Luyn M J., Biomaterials, 13(14), pp.1017-1024(1992)
【非特許文献3】Van Luyn M J., J.Biomed., Mater. Res., 26(8), pp.1091-1110(1992)
【非特許文献4】Huang Lee LL., J.Biomed., Mater. Res., 24(9), pp.1185-1201(1990)
【非特許文献5】Nigi et al.,Biomaterials,23(24),pp.4827-4832(2002)
【非特許文献6】Chang et al., Biomaterials 23,pp.2447-2457(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1には、ゼラチンスポンジは塞栓材としての実績ともに優れた有用性があるが、欠点として太い血管の塞栓には向かないことが明記されている。ゼラチンスポンジは1mm角にカット後に使用し、粒状ゼラチンスポンジ(ジェルパート:特許文献1)は粒径が1mmおよび2mmで販売されているものを使用する。このジェルパートも粒径が不均一と示されており、太い血管への塞栓は不可能とされている。
また、これらの材料は熱架橋という物理的架橋で作製されたゼラチンスポンジである。物理的架橋は架橋剤を用いないため、安全性に優れた方法ではあるが、液中では拡張および硬化しないことが知られている。
本発明者らは、ゼラチンスポンジに、吸水後の拡張性及び硬化性を付与することができれば、適用範囲が広がると考えた。
【0012】
非特許文献2~4には、ゼラチンを化学的に架橋する方法としてグルタルアルデヒドや水溶性カルボジイミドを用いた架橋方法が記載されている。しかし、これらの架橋剤の多くは生体適合性に欠け、それらの毒性が懸念されている。
【0013】
非特許文献5~6に記載のゲニピンは、上述のグルタルアルデヒドや、水溶性カルボジイミドと比較して、細胞毒性が極めて低いことが知られている。具体的には、最も毒性が高いグルタルアルデヒドとゲニピンを比較すると細胞毒性が5,000~10,000倍も低いことがわかっている。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ゼラチンを含む止血材用スポンジに、ゲニピンを含有させることにより、吸水後に架橋剤によりゼラチンの架橋が行われる、すなわち、止血材用スポンジが拡張(膨潤)した後に硬化することを見出した。
このような、拡張した後に硬化する止血材用スポンジは、拡張により、より太い血管の塞栓が可能となる点、及び、硬化により止血材用スポンジの分解が抑制され、より長期間の塞栓が可能となる点において、非常に有用であると考えられる。
例えば、上記のような拡張した後に硬化する止血材用スポンジを肝動脈塞栓術に用いることにより、より長期間(硬化により止血材用スポンジの分解が抑制されるため)、より広い範囲(止血材用スポンジの拡張により、より太い血管の塞栓が可能となるため)に抗がん剤が滞留可能であると推測される。
また、上記未反応の架橋剤として、ゲニピンを選択することにより、生体への毒性が抑制された止血材用スポンジが得られていると考えられる。
【0015】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、拡張した後に硬化する止血材用スポンジを提供することである。
本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、拡張した後に硬化する止血材用スポンジの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
ゲニピンと、ゼラチンと、を含む、止血材用スポンジ。
<2>
前記ゼラチンの含有量が、止血材用スポンジの全質量に対し、5質量%~10質量%である、<1>に記載の止血材用スポンジ。
<3>
前記ゲニピンの含有量が、止血材用スポンジの全質量に対し、3質量%~20質量%である<1>又は<2>に記載の止血材用スポンジ。
<4>
止血材用スポンジの質量に対して、5~10倍の質量のリン酸緩衝生理食塩水又は純水に入れ、37℃、24時間静置した際の溶液のpHが、7.0~8.0である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の止血材用スポンジ。
<5>
架橋率が5%~30%である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の止血材用スポンジ。
<6>
ゲニピン溶液と、ゼラチン溶液とを混合して混合溶液を調製する工程と、
前記混合溶液を凍結乾燥する工程と、を含む
止血材用スポンジの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、拡張した後に硬化する止血材用スポンジを提供することができる。
本発明の他の一実施形態によれば、拡張した後に硬化する止血材用スポンジの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】架橋率測定実験の結果である。
【図2】吸水量実験の結果である。
【図3】拡張比実験の結果である。
【図4】貯蔵粘弾性(G’)を測定した結果である。
【図5】ノーマルフォース(NF)を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示について詳細に説明する。
なお、本開示において、「xx~yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
以下、本開示を詳細に説明する。

【0020】
(止血材用スポンジ)
本実施形態に係る止血材用スポンジ(以下、単に「スポンジ」ともいう。)は、ゲニピンと、ゼラチンと、を含む
本実施形態に係る止血材用スポンジは、ゲニピンを含むゼラチンが乾燥したものであることが好ましい。
本実施形態に係る止血材用スポンジは、血管内に留置された際に、血液等に含まれる水分により吸水して拡張(膨潤)した後に、体温による加温の影響等によって、ゲニピンによりゼラチン同士が架橋され、ゲル状に硬化すると考えられる。

【0021】
<ゲニピン>
本実施形態に係る止血材用スポンジは、スポンジの硬化性及び生体への毒性の観点から、ゲニピンを、止血材用スポンジの全質量に対し、3質量%~20質量%含有することが好ましく、3.5質量%~17.5質量%含有することがより好ましく、4質量%~10質量%含有することが更に好ましい。

【0022】
<ゼラチン>
本実施形態に用いられるゼラチンとしては、特に制限されず、公知のゼラチンを使用することが可能である。
本実施形態に係る止血材用スポンジは、スポンジの硬化性の観点から、ゼラチンを、止血材用スポンジの全質量に対し、5質量%~10質量%含有することが好ましく、5.5質量%~8.0質量%含有することがより好ましく、6質量%~7質量%含有することが更に好ましい。

【0023】
<その他の成分>
本実施形態に係る止血材用スポンジは、がん治療効果の観点から、抗がん剤を含有してもよい。
また、本実施形態に係る止血材用スポンジは、スポンジ位置の確認をX線写真等により可能とする観点から、造影剤を含有してもよい。

【0024】
<止血材用スポンジの特性>
〔架橋率〕
本実施形態に係る止血材用スポンジは、ゼラチンの一部がゲニピンにより架橋されていてもよく、架橋率が5%~30%であることが好ましく、5.5%~10%であることがより好ましい。
架橋率を調整することにより、スポンジが硬化前に拡張する量(拡張比)を調製することが可能となる。
前記架橋率は、Genipin crosslinking elevates the strength of electrochemically aligned collagen to the level of tendons. J Biomed Mater Res. 2012;15,176-189に記載の方法により測定される。

【0025】
〔弾性率〕
硬化後の止血材用スポンジは、強固な塞栓材を得る観点から、動脈の弾性率16kPaよりも高い弾性率(ノーマルフォース)を有していることが好ましい。

【0026】
〔pH〕
本開示に係る止血材用スポンジは、生体に適用しやすい観点から、止血材用スポンジの質量に対して、5倍の質量の純水に入れ、37℃、24時間静置した際の溶液のpHが、6.0~9.0であることが好ましく、7.0~8.0であることがより好ましい。
上記pHはpHメータ(堀場製作所社製、商品名「NAVIh F-71」)を用いて測定される。

【0027】
(止血材用スポンジの製造方法)
本実施形態に係る止血材用スポンジの製造方法は、ゲニピン溶液と、ゼラチン溶液とを混合して混合溶液を調製する工程(混合工程)と、前記混合溶液を凍結乾燥する工程(乾燥工程)と、を含む。

【0028】
<混合工程>
混合工程においては、ゲニピン溶液と、ゼラチン溶液とを混合して混合溶液を調製する。
混合方法は特に限定されず、公知の混合方法を用いればよい。
例えば、10質量%のゼラチン水溶液と、リン酸緩衝液に2mmol/Lの濃度でゲニピンを溶解したゲニピン溶液とを混合することにより、混合溶液を調製することが可能である。

【0029】
〔ゲニピン溶液〕
ゲニピン溶液としては、特に限定されないが、生体に適用しやすい観点から、リン酸緩衝液にゲニピンを溶解した溶液であることが好ましい。
上記リン酸緩衝液としては、リン酸ナトリウム緩衝液であることが好ましく、リン酸緩衝生理食塩水であることがより好ましい。
ゲニピン溶液のpHは、6.0~9.0であることが好ましく、7.0~8.0であることがより好ましい。
ゲニピン溶液中のゲニピンの濃度としては、1mmol/L~5mmol/Lが好ましく、2mmol/L~4mmol/Lがより好ましい。

【0030】
〔ゼラチン溶液〕
ゼラチン溶液としては、特に限定されず、超純水にゼラチンを溶解した溶液であってもよい。
ゼラチン溶液中のゼラチンの含有量は、スポンジの硬化性の観点から、ゼラチン溶液の全質量に対し、2質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~6質量%であることがより好ましい。

【0031】
<乾燥工程>
乾燥工程は、混合溶液を乾燥し、止血材用スポンジを得る工程である。
乾燥方法は、特に限定されず、公知の乾燥方法により乾燥すればよいが、凍結乾燥により行われることが好ましい。
乾燥工程において、同時に成形を行い、特定の形や大きさの止血材用スポンジを得ることもできる。

【0032】
<架橋工程>
本実施形態に係る止血材用スポンジの製造方法は、混合工程と、乾燥工程との間に、ゼラチンをゲニピンにより架橋する架橋工程を含むことが好ましい。
架橋工程において架橋を行うことにより、止血材用スポンジの架橋率を調整することが可能である。
前記架橋は、例えば加温により行われる。架橋時の温度及び時間は特に限定されず、得たい止血材用スポンジの架橋率に応じて調整すればよいが、例えば、30℃において2~24時間の架橋を行うことが可能である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
(実施例1~4及び比較例1~2)
<ゼラチン溶液の準備>
濃度10質量%になるようゼラチンパウダー(MP Biomedicals社)を超純水にて調整した後、70℃の水浴で溶解した。これを15mL遠心チューブにて小分けし冷蔵庫(4℃)に保管した。
【実施例】
【0035】
<リン酸緩衝液(NPB)の準備>
濃度50mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液(140mmol/Lの塩化ナトリウム含有)及び濃度50mmol/Lのリン酸二水素ナトリウム水溶液(140mmol/Lの塩化ナトリウム含有)を、超純水を溶媒として調製した。pHメータ(堀場製作所社製、商品名「NAVIh F-71」)によりpHを測定しながら、これらを撹拌、混合し,pH7.0、140mmol/L塩化ナトリウム含有50mmol/Lリン酸緩衝液を調整し,これをNPBとした。
【実施例】
【0036】
<ゲニピン溶液の準備>
ゲニピン(和光純薬工業(株)製)をNPBに溶解し,濃度2mmol/Lのゲニピン水溶液を調製した。これを50mLチューブに入れた後冷蔵庫に保管した。
【実施例】
【0037】
<吸水後硬化するゼラチンスポンジの作製>
上記で準備した、15mL遠心チューブに入ったゼラチン5gを30℃で予備加温した後にゲニピン溶液を同質量入れ、撹拌した。次いで遠心分離機(日立工機社製,商品名「himac CT6E)を用いて4000rpm、30秒間の条件で溶液を脱泡した後、真鍮コンテナ(Φ100mm×50mm)上に設置したシリコンゴム(Φ10×5mm)内にゼラチン溶液を注入し、実施例1のゼラチンスポンジ用溶液を得た。また、30℃の恒温槽内(EYELA製,商品名「SLI-400」)で20分間(0.3時間)、2、24時間架橋し、実施例2、実施例3及び実施例4のゼラチンスポンジ用溶液をそれぞれ得た。
架橋したゼラチンは液体窒素を用いて凍結した。金属パレット内にゼラチンスポンジ用溶液を載せた真鍮コンテナを設置した後、真鍮コンテナ下部のみに液体窒素を充填することで、下方から上方へゼラチンを一軸方向に凍結した。凍結したゼラチンはただちに凍結乾燥機(EYELA製,商品名:FD-5N)にて24時間凍結乾燥しスポンジ体(止血材用スポンジ)を得た。なお、未架橋ゼラチンは遠心分離機で脱泡した後、ただちに上記のように凍結乾燥した。
【実施例】
【0038】
<熱架橋したゼラチンスポンジの作製>
上記で示した止血材用スポンジの比較対象として、熱架橋スポンジを作製した。15mL遠心チューブに入ったゼラチン5gを30℃で予備加温した後、同質量の超純水を入れ、撹拌した。次いで遠心分離機(日立工機社製,商品名「himac CT6E」)を用いて4000rpm、30秒間の条件で溶液の脱泡した後、上記と同様な手順で一軸凍結、凍結乾燥しスポンジ体を得た。
このスポンジを真空オーブン(EYELA製、商品名「SLI-400」)を用いて真空度760mmHg、140℃、10時間の条件で熱架橋を実施した。
【実施例】
【0039】
<架橋率測定実験>
架橋時間が異なるスポンジの架橋率の測定はGenipin crosslinking elevates the strength of electrochemically aligned collagen to the level of tendons. J Biomed Mater Res. 2012;15,176-189に記載の方法で測定した。
【実施例】
【0040】
<吸水量実験>
凍結乾燥したゼラチンスポンジをpH7.4、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて、スポンジの吸水量を測定した。
24ウェルディッシュにスポンジをそれぞれ設置した後、37℃のPBSを2mLずつ注入し、37℃恒温槽(EYELA製,商品名「SLI-400」)に設置した。吸水量は24時間測定した。
なお、給水量は下記式により算出した。
吸水量=吸水後の重量-初期重量
【実施例】
【0041】
<拡張比実験>
24時間PBSに浸漬したスポンジの拡張比をデジタルカメラで撮影した形状の直径から拡張の比を求めた。なお、拡張比は拡張後の直径/拡張後の直径で算出した。
【実施例】
【0042】
<動的粘弾性実験>
スポンジについて動的粘弾性測定を行った。動的粘弾性装置として、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の商品名「HAAKE MARS III 」を用いた。スポンジは常温(23℃)のPBSに浸漬し、その後10分間ロータリーポンプにて真空引きを行い、スポンジ内の浸透性を高めた。以下に測定条件を示す。
ジオメトリ:パラレルセンサー(内径10mm)
測定プロファイル:CD(Controlled Deformation)モードによるオシレーション測定において温度は37℃で設定した。その後、スポンジをセンサーに設置した後、アクリル樹脂の37℃のPBSを25mL入れた後、貯蔵粘弾性(G’)およびノーマルフォース(NF)を測定した。
【実施例】
【0043】
下記表1に、各実施例及び比較例において用いたスポンジの形成時のゼラチン含有量、架橋剤含有量、溶媒、架橋時間、架橋温度を記載した。
【実施例】
【0044】
【表1】
JP2018068723A_000002t.gif
【実施例】
【0045】
(実施例1)
表1の実施例1のスポンジを用いた、架橋率測定実験の結果を図1に示す。実施例1は架橋率が最も低い5%を示した。これは、遠心分離機にて脱泡後、ただちに液体窒素にて凍結したため、未架橋ゲニピンが多く存在しているためであると考えられる。
吸水量実験の結果を図2に示した。吸水時間と共にスポンジの吸水量が増加し、24時間で0.295g吸水した。
拡張比実験の結果を図3に記載した。24時間吸水した実施例1のスポンジは、1.38倍拡張することがわかった。
図4には、貯蔵粘弾性実験の結果を示した。測定開始後からG’が増加していることから、スポンジ内の未反応ゲニピンがin situでゼラチンを架橋しており、最大7.8kPaを示した。
図5には、Fnを示した。測定時間と共にFnが増加することがわかり、測定開始15時間で最大18kPaを示した。
【実施例】
【0046】
(実施例2)
表1の実施例2のスポンジを用いた、架橋率測定実験の結果を図1に示す。実施例1のスポンジよりも架橋時間が長いため、架橋率が高くなり10%を示した。
吸水量実験の結果を図2に示した。実施例1のスポンジよりも架橋時間が長いため、スポンジの吸水量が増加し、24時間で0.313g吸水した。
拡張比実験の結果を図3に記載した。24時間吸水することで実施例2のスポンジは1.29倍拡張した。
【実施例】
【0047】
(実施例3)
表1の実施例3のスポンジを用いた、架橋率測定実験の結果を図1に示す。実施例1及び2のスポンジよりも架橋時間が長いため、架橋率は高くなり、20%を示した。
吸水量実験の結果を図2に示した。実施例1及び2よりも架橋時間が長いため、スポンジの吸水量が増加し、24時間で最大0.333g吸水し、若干ではあるが、実施例1及び2のスポンジよりも高い値を示した。
拡張比実験の結果を図3に記載した。24時間吸水した実施例3のスポンジは1.17倍拡張した。
【実施例】
【0048】
(実施例4)
表1の実施例4のスポンジを用いた、架橋率測定実験の結果を図1に示す。実施例1、2、3よりも架橋時間が長いため、架橋率が最も高い25%を示した。
吸水量実験の結果を図2に示した。実施例1、2及び3よりも架橋時間が長いため、吸水量はこれらの実施例に中で最大の0.695gを示し、最も高い値であることがわかった。
拡張比実験の結果を図3に記載した。24時間吸水した実施例4のスポンジは1.43倍拡張し実施例1、2及び3と比較しても最も高い値を示した。
図4には、貯蔵粘弾性の結果を示した。測定開始後からG’が増加しており、15時間の測定で最大11.8kPaを示し、実施例1よりも高い値を示した。図5には、NFを示した。測定時間と共に増加することがわかり、測定開始15時間で最大56kPaを示した。この値は実施例1よりも高い値を示した。
【実施例】
【0049】
(比較例1)
表1の比較例1のスポンジを用いた、吸水量実験の結果を図2に示した。その結果、測定2時間までは吸水したが、その後はPBS中に溶解した。
【実施例】
【0050】
(比較例2)
表1の比較例2のスポンジを用いた、架橋率測定実験の結果を図1に示す。その結果、架橋率13%を示した。これは化学架橋よりも架橋点が少ないために低い値を示したと考えられる。
吸水量実験の結果を図2に示した。測定開始2時間で0.205g吸水したが、その後は飽和傾向を示した。なおこの値は実施例1,2,3,4よりも低い値であった。
拡張比実験の結果を図3に記載した。比較例2のスポンジは殆ど拡張しないことがわかり、この値も実施例1,2,3,4、よりも低い値を示した。これは熱架橋でゼラチンスポンジを架橋済みのため、殆ど拡張しないことを示している。
図4には、貯蔵粘弾性の結果を示した。測定開始3時間までG’が増加し最大5kPa以下と実施1,4よりも低い値を示した。一般的に熱架橋したゼラチンスポンジはすでに架橋済みにより形状が安定しているので、in situでのG’の増加は示さないと推測される。
図5には、ノーマルフォース(NF)の測定結果を示した。図4と同様にノーマルフォースは10kPa以下から変化せず、10時間~15時間経過時点において実施例1、4よりも低い値を示した。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4