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明細書 :亀裂検知センサー及び亀裂検知システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-105543 (P2019-105543A)
公開日 令和元年6月27日(2019.6.27)
発明の名称または考案の名称 亀裂検知センサー及び亀裂検知システム
国際特許分類 G01N  27/20        (2006.01)
FI G01N 27/20 Z
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-238382 (P2017-238382)
出願日 平成29年12月13日(2017.12.13)
発明者または考案者 【氏名】窪寺 健吾
【氏名】峯 英一
【氏名】伊東 洋一
【氏名】坂本 達朗
出願人 【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100162396、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 泰之
【識別番号】100122954、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷部 善太郎
【識別番号】100194803、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 理弘
審査請求 未請求
テーマコード 2G060
Fターム 2G060AA10
2G060AA14
2G060AE04
2G060AF02
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG04
2G060AG09
2G060AG15
2G060EA06
2G060EB05
2G060EB06
2G060HC15
2G060HD03
2G060JA05
2G060KA12
要約 【課題】現場での施工が容易であり、小さな亀裂の発生とその進展とを検出することができる亀裂検知センサーと、このセンサーを使用した亀裂検知システムを提供する。
【解決手段】経糸または緯糸のいずれか一方に、間隔を開けて織り込まれた複数本の導電性繊維を備えたeテキスタイルと、導電性ペーストから形成され、前記導電性繊維の少なくとも2本と電気的に接続されている導電性薄膜とを有する亀裂検知センサー、および、この亀裂検知センサーと抵抗計とを有する亀裂検知システム。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
経糸または緯糸のいずれか一方に、間隔を開けて織り込まれた複数本の導電性繊維を備えたeテキスタイルと、
導電性ペーストから形成され、前記導電性繊維の少なくとも2本と電気的に接続されている導電性薄膜と、
を有することを特徴とする亀裂検知センサー。
【請求項2】
前記導電性薄膜が、含浸膜形状であることを特徴とする請求項1に記載の亀裂検知センサー。
【請求項3】
前記導電性薄膜が、フィルム形状であることを特徴とする請求項1に記載の亀裂検知センサー。
【請求項4】
前記導電性繊維が、金属繊維であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
【請求項5】
前記導電性薄膜が、導電性粒子としてカーボン系粒子を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
【請求項6】
前記導電性薄膜が、低抵抗帯と高抵抗帯を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
【請求項7】
前記導電性薄膜が、4本以上の導電性繊維と接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の亀裂検知センサーと、
前記亀裂検知センサーが備える導電性薄膜と接続されている少なくとも2本の導電性繊維と電気的に接続され、前記2本の導電性繊維の間に位置する前記導電性薄膜の抵抗値を測定する抵抗計と、
を有することを特徴とする亀裂検知システム。
【請求項9】
前記抵抗計が、前記亀裂検知センサーが備える導電性繊維のうち少なくとも4本と電気的に接続され、四端子法により抵抗値を測定することを特徴とする請求項8に記載の亀裂検知システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂の発生と進展とを検知する亀裂検知センサーと、このセンサーを使用した亀裂検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やトンネル等の鉄骨やコンクリートからなる構造物において、経時疲労や劣化による亀裂を発見するために、定期的な目視検査が実施されている。目視検査は、日光、照明等の明るさ、検査者の熟練度、体調、疲労度等により結果に差異が生じる可能性がある。また、目視検査で微細な亀裂を確認するのは難しく、詳細に検査するためには、時間、人、金銭について膨大なコストが必要である。
【0003】
目視検査に代わる亀裂検査の方法として、特許文献1は、導電性塗料を塗布して亀裂検出導電層を形成し、構造物に亀裂が発生してこの導電層に破壊が生じる際の抵抗値増加から亀裂を検知する方法を提案している。特許文献1に提案されている方法は、現場で導電性塗料を塗布して亀裂検出導電層を形成するため、施工者の技量により品質にバラツキが生じ、また、現場環境や構造物の形状により施工が困難な場合があり、その際は膨大な作業時間を要する。さらに、亀裂検出導電層は導電性塗料からなるため、金属製のリード線と接続するのが煩雑である。
その他の亀裂検査の方法としては、光ファイバーの後方散乱光(レイリー散乱)を用いる方法(特許文献2)、磁粉を用いる方法(特許文献3、4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-190761号公報
【特許文献2】特開2001-194109号公報
【特許文献3】特開2004-333484号公報
【特許文献4】特開2006-300709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、現場での施工が容易であり、小さな亀裂の発生とその進展とを検出することができる亀裂検知センサーと、このセンサーを使用した亀裂検知システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.経糸または緯糸のいずれか一方に、間隔を開けて織り込まれた複数本の導電性繊維を備えたeテキスタイルと、
導電性ペーストから形成され、前記導電性繊維の少なくとも2本と電気的に接続されている導電性薄膜と、
を有することを特徴とする亀裂検知センサー。
2.前記導電性薄膜が、含浸膜形状であることを特徴とする1.に記載の亀裂検知センサー。
3.前記導電性薄膜が、フィルム形状であることを特徴とする1.に記載の亀裂検知センサー。
4.前記導電性繊維が、金属繊維であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
5.前記導電性薄膜が、導電性粒子としてカーボン系粒子を含有することを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
6.前記導電性薄膜が、低抵抗帯と高抵抗帯を備えることを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
7.前記導電性薄膜が、4本以上の導電性繊維と接続されていることを特徴とする1.~6.のいずれかに記載の亀裂検知センサー。
8.1.~7.のいずれかに記載の亀裂検知センサーと、
前記亀裂検知センサーが備える導電性薄膜と接続されている少なくとも2本の導電性繊維と電気的に接続され、前記2本の導電性繊維の間に位置する前記導電性薄膜の抵抗値を測定する抵抗計と、
を有することを特徴とする亀裂検知システム。
9.前記抵抗計が、前記亀裂検知センサーが備える導電性繊維のうち少なくとも4本と電気的に接続され、四端子法により抵抗値を測定することを特徴とする8.に記載の亀裂検知システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明の亀裂検知センサーおよび亀裂検知システムは、導電性薄膜が損傷すると抵抗値が増加することを利用したものであり、対象物の亀裂の発生、進展に追従して導電性薄膜を損傷させ、この損傷に伴う導電性薄膜の初期抵抗値からの抵抗値の増加により、亀裂の発生、進展を検知することができる。
【0008】
本発明の亀裂検知センサーは、導電性薄膜とeテキスタイルの両方が柔軟であるため、複雑な形状の対象物にも貼付することができる。本発明の亀裂検知センサーは、導電性薄膜がeテキスタイルに担持、保護されることにより、取り扱い性に優れており、導電性薄膜を折り曲げて貼付することもできる。
本発明の亀裂検知センサーは、現場で対象物に貼付するだけで設置することができ、現場での設置作業が容易であり、また、施工者の技量によらず安定した性能を発揮することができる。本発明の亀裂検知センサーは、工場で製造することができるため、均一な性能を有する亀裂検知センサーを供給することができる。
【0009】
導電性薄膜が含浸膜形状である亀裂検知センサーは、導電性薄膜がeテキスタイルを構成する繊維と一体化して補強されることにより、損傷しにくく、亀裂発生、進展の誤検知を防ぐことができる。導電性薄膜がフィルム形状である亀裂検知センサーは、導電性薄膜がeテキスタイル上に独立して付着しているため、微細な亀裂の発生を確実に検知することができる。低抵抗帯と高抵抗帯とを備える導電性薄膜を用いた亀裂検知センサーは、低抵抗帯の損傷による抵抗値の増加が大きいため感度が高く、亀裂の発生・進展を確実に検知することができる。
【0010】
導電性繊維として金属繊維を使用すると、金属繊維とリード線との接続が容易である。金属繊維とリード線とは、工場等で予め接続することもできるが、現場での接続作業も簡便に行うことができる。カーボン系粒子は錆びることがなく、耐久性に優れているため、カーボン系粒子を使用した本発明の亀裂検知センサーは、屋外で長期間に亘って使用することができる。
導電性薄膜が、4本以上の導電性繊維と接続されている亀裂検知センサーは、四端子法による抵抗値の測定が可能であり、導電性薄膜の抵抗値の増加をより確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施態様である亀裂検知センサーの概略図。
【図2】導電性薄膜が含浸膜形状である亀裂検知センサーの断面図。
【図3】導電性薄膜がフィルム形状である亀裂検知センサーの断面図。
【図4】本発明の一実施態様である亀裂検知センサーを用いた亀裂検知システムの概略図。
【図5】低抵抗帯と高抵抗帯を備える導電性薄膜の一実施態様を示す図。
【図6】低抵抗帯と高抵抗帯を備える導電性薄膜の一実施態様を示す図。
【図7】低抵抗帯と高抵抗帯を備える導電性薄膜の一実施態様を示す図。
【図8】実験1における破断伸び試験の結果を示す図。
【図9】実験2における傷長さと抵抗値の増加率との関係を示す図。
【図10】実験3における亀裂長さと抵抗値の増加率との関係を示す図。
【図11】実験4における傷長さと抵抗値の増加率との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、経糸または緯糸のいずれか一方に、間隔を開けて織り込まれた複数本の導電性繊維を備えたeテキスタイルと、このeテキスタイルが備える導電性繊維の少なくとも2本と電気的に接続されている導電性薄膜とを有する亀裂検知センサーと、この亀裂検知センサーと抵抗計とを有し、eテキスタイルが備える導電性繊維をリード線の一部として利用した亀裂検知システムに関する。

【0013】
以下、図1に示す本発明の一実施態様である亀裂検知センサーに基づいて説明する。
一実施態様である亀裂検知センサー1は、間隔を開けて織り込まれた2本の導電性繊維21を備えたeテキスタイル2と、この2本の導電性繊維と電気的に接続された導電性薄膜3とを有する。

【0014】
「eテキスタイル」
eテキスタイル2は、2本の導電性繊維21が間隔を開けて織り込まれている。eテキスタイルは、平織、斜文織、朱子織のいずれであってもよい。組織点が少ないほうが、織物として柔軟になり複雑な形状に追従しやすくなるため、斜文織または朱子織が好ましく、朱子織がより好ましい。
eテキスタイルにおいて、導電性繊維以外は、絶縁性繊維からなる。絶縁性繊維の種類は特に制限されず、天然繊維、合成繊維のいずれを用いることもできるが、吸湿性の低いポリエステル、ナイロン等の合成繊維が好ましい。また、合成繊維としては、モノフィラメントであることが、生地が伸びにくく亀裂に追従しやすいため、好ましい。

【0015】
導電性繊維は、経糸、緯糸のいずれであってもよいが、隣接する導電性繊維の間隔を変更することが容易であるため、緯糸として使用することが好ましい。また、隣接する導電性繊維は、接触や短絡により通電しない間隔で離れていればよく、検査したい領域の大きさ等に応じて適宜設定することができ、通常1cm以上100cm以下の範囲内である。
導電性繊維は、導電性を有するものであれば特に制限されず、金属繊維、炭素繊維、導電性高分子繊維、導電性フィラーが分散した繊維、表面に導電性層を有する繊維等を用いることができる。導電性繊維は、導電性薄膜と抵抗計とを電気的に接続する配線の一部を構成するため、金属製のリード線と接続が容易であり、かつ、安価な金属繊維を用いることが好ましい。本発明の亀裂検知センサーは屋外で長期間に亘って使用されるため、導電性繊維として金属繊維を用いる場合は、金属繊維は防食性に優れたものを使用することが好ましく、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等からなる金属繊維を用いることができる。

【0016】
「導電性薄膜」
導電性薄膜3は、2本の導電性繊維21と接続されている。ここで、eテキスタイルが平織の場合は、その両面に対して露出する導電性繊維の割合は同じである。しかし、eテキスタイルが斜文織または朱子織の場合は、導電性繊維は、一方の面側により多く露出する。eテキスタイルが斜文織または朱子織の場合は、導電性繊維と導電性薄膜とを確実に接続するため、導電性薄膜は導電性繊維の露出が多い側の面に設けることが好ましい。

【0017】
導電性薄膜は、導電性粒子と有機系バインダーとを含む導電性ペーストから形成される。
導電性粒子の種類は特に制限されず、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等からなるカーボン系粒子、ニッケル、銅、銀、金等からなる金属系粒子、ZnO、SnO、InO等からなる金属酸化物系粒子等を使用することができる。これらの中で、防錆性に優れたカーボン系粒子が好ましい。
有機系バインダーの種類は特に制限されず、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。ただし、本発明の亀裂検知センサーは、導電性薄膜が損傷することによる抵抗値の増加を、亀裂の発生・進展として検知するものである。そのため、導電性薄膜は亀裂の発生に追従して損傷できることが好ましく、具体的には導電性薄膜の破断伸びが2%以上10%以下となる有機系バインダーが好ましい。

【0018】
「亀裂検知センサー」
亀裂検知センサー1は、導電性薄膜3が、eテキスタイル2に間隔を開けて織り込まれた2本の導電性繊維21と電気的に接続されている。本発明の亀裂検知センサーは、導電性薄膜がeテキスタイルに保持されることにより、導電性薄膜が損傷しにくいため、取り扱い性に優れている。そのため、例えば、本発明の亀裂検知センサーを、複雑な構造の対象物に導電性薄膜を折り曲げた状態で貼付する際に、導電性薄膜が損傷することを防止することができる。

【0019】
本発明の亀裂検知センサーは、対象物に導電性薄膜側を内側にして貼付される。導電性薄膜に亀裂が生じると、導電性薄膜の電流が通る部分の断面積が狭くなるため、抵抗値が大きくなる。本発明の亀裂検知センサーは、対象物の亀裂の発生・進展に追従して導電性薄膜が損傷し、この損傷に伴う導電性薄膜の抵抗値の増加により、対象物における亀裂の発生・進展を検知することができる。

【0020】
亀裂検知センサーは、eテキスタイル上に少なくとも二本の導電性繊維と接続するように導電性薄膜を形成することにより製造することができる。製造方法としては特に制限されないが、例えば、eテキスタイル上に、導電性ペーストを含浸、乾燥して形成する含浸法、予め導電性ペーストから導電性薄膜を作成し、この導電性薄膜をeテキスタイル上に導電性ペースト、導電性接着剤等で固定する接着法等が挙げられる。

【0021】
含浸法、接着法で得られる亀裂検知センサーの断面概略図を、それぞれ図2、3に示す。なお、図2、3において、図1と同一部材には同一符号を付す。
含浸法では、導電性ペーストが、eテキスタイルを構成する繊維の隙間に浸透するため、導電性薄膜3は、eテキスタイル2と一体化した含浸膜形状となる。含浸膜形状である導電性薄膜は、eテキスタイルを構成する繊維により補強されて損傷が生じにくい。含浸膜形状である導電性薄膜は、温度変化等による収縮により損傷しにくいため、亀裂の発生、進展の誤検知が少ない利点を有する。
接着法では、導電性薄膜3は、eテキスタイル2の表面上に付着したフィルム形状となる。フィルム形状である導電性薄膜は、eテキスタイルとは独立しており、損傷しやすい。そのため、フィルム形状である導電性薄膜は、亀裂の発生・進展を高い感度で検知することができる。

【0022】
「亀裂検知システム」
図4に、一実施態様である亀裂検知センサー1を用いた亀裂検知システム10の概略図を示す。
亀裂検知センサー1は、対象物に導電性薄膜3を内側として接着剤(図示せず)により貼着される。導電性繊維21は、リード線4と接続され、導電性薄膜3と抵抗計5とを接続する配線の一部を構成する。導電性繊維が金属繊維である場合は、導電性繊維とリード線とは、ハンダ等により容易に接続することができる。接着剤は、特に制限されないが、構造物の亀裂の発生・進展に応じて破断、または延伸できるものが好ましく、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系等を好適に利用することができる。

【0023】
なお、図4に示す態様は一実施態様の概略図であり、本発明の亀裂検知システムは、これに限定されない。例えば、対象物が金属製の場合には、絶縁塗料、または、絶縁性接着剤により、対象物と亀裂検知センサーとを絶縁する。また、必要に応じて、防錆塗料、保護塗料、接着剤等により、亀裂検知センサーを被覆したり、下塗り層、中間層等を設けることができる。さらに、測定した抵抗値を遠隔地で監視するための有線または無線での通信装置や、温度センサー、振動センサー等を備えることができる。

【0024】
さらに、図5~7に示すように、低抵抗帯31と高抵抗帯32を備える導電性薄膜3を用いることもできる。低抵抗帯、高抵抗帯の形成方法は特に制限されず、抵抗率の異なる導電性ペーストを用いる、低抵抗帯を高抵抗帯よりも厚くする等の方法が挙げられる。また、低抵抗帯と高抵抗帯とは、離れて設けることもできる。
低抵抗帯と高抵抗帯とを備える導電性薄膜において、低抵抗帯に損傷が生じると初期抵抗値から抵抗値が大きく増加する。低抵抗帯と高抵抗帯とを備える導電性薄膜は、低抵抗帯を亀裂が発生する側に設置することにより、初期の微細な亀裂の発生・進展の感知に好適に利用することができる。なお、対象物において亀裂が発生する方向は過去の例等から予測可能である。

【0025】
さらに、一実施態様である図4の亀裂検知システム10は、抵抗計5が、いわゆる二端子法により接続されているが、導電性繊維とリード線の抵抗による影響を防ぐために、四端子法により接続することができる。四端子法で接続するには、導電性薄膜を4本以上の導電性繊維と接続し、導電性薄膜と接続されている4本の導電性繊維を抵抗計と接続すればよい。四端子法で抵抗値を測定することにより、正確な抵抗値を測定することができ、亀裂の発生、進展による抵抗値の増加を確実に検知することができる。なお、配線として利用する導電性繊維の間に、配線として利用しない導電性繊維が位置していたとしても、抵抗値の測定に問題はない。
【実施例】
【0026】
「実験1」
・eテキスタイルの製造
緯糸300本ごとに導電性繊維(Cu-Ni合金線、直径80μm)を1本配置して、隣接する導電性繊維の間隔が60mmであり、繊度220dtex、糸密度5本/mmのポリエステルからなり、それぞれ平織、斜文織、朱子織のeテキスタイルを製造した。
・導電性薄膜の製造
導電性粒子としてカーボン系粒子、有機系バインダーとしてポリエステル系樹脂を含む導電性ペースト1を用いた。この導電性ペースト1から、厚さがそれぞれ10μm、30μmの導電性薄膜を製造した。
【実施例】
【0027】
<破断伸び試験>
万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTC-1210A)にて、上記で製造した各eテキスタイル、及び導電性薄膜から切り出した長さ20mm、幅10mmの各サンプルの引張り破断時の伸び率及び最大点荷重を、下記条件で測定した。測定結果を図8に示す。なお、eテキスタイルは、導電性繊維が引張方向に対して垂直になるように配置した。
測定条件:つかみ間隔10mm、引張り速度0.5mm/min
【実施例】
【0028】
eテキスタイルは、平織、斜文織、朱子織で、伸び率、最大点荷重にほとんど差はなかった。導電性薄膜は、eテキスタイルと比較して、伸び率、最大点荷重が小さく、張力が加わると損傷しやすいことが確かめられた。
【実施例】
【0029】
「実験2」
上記実験1で作成した斜文織のeテキスタイルと、導電性ペースト1を用いて、導電性薄膜が含浸膜形状である亀裂検知センサーとフィルム形状である亀裂検知センサーを製造した。導電性薄膜は、長さ(導電性繊維の向きと垂直な方向)70mm、幅10mm、厚さ30μmであり、長さ方向で2本の導電性繊維と接続されている。なお、含浸膜形状である亀裂検知センサーにおける導電性薄膜の厚さは、導電性薄膜形成後の厚さとeテキスタイルのみの厚さの差である。
【実施例】
【0030】
得られた亀裂検知センサーのそれぞれについて、導電性薄膜と接続している2本の導電性繊維と抵抗計(アジレント社製、装置名:U1252B)とを二端子法で接続し、カッターナイフで導電性薄膜の長さ方向中央部の端部から中心に向かって1mmずつ傷を入れ、抵抗値を測定した。傷長さと初期抵抗値に対する抵抗値の増加率(抵抗増加率)との関係を図9に示す。
【実施例】
【0031】
含浸膜形状、フィルム形状、いずれの導電性薄膜においても、傷が長くなるに連れ通電可能な断面積が狭くなり、抵抗値が増加した。すなわち、導電性薄膜の抵抗増加率を測定することにより、導電性薄膜の損傷を検知することができるため、導電性薄膜を亀裂検知センサーに用いられることが確かめられた。
【実施例】
【0032】
「実験3」
実験2と同様にして、含浸膜形状の導電性薄膜を備える亀裂検知センサー、それぞれ厚さ10μm、30μmのフィルム形状の導電性薄膜を備える亀裂検知センサーを製造した。
各亀裂検知センサーを、長辺の中央部に亀裂の起点となる1~2mmの切れ込みを入れた模擬鋼材(材質:SS400、長辺200mm×短辺35mm×厚さ3mm)に亀裂検知センサー内の導電性薄膜の長辺中央部が模擬鋼材の切れ込みに接する様にそれぞれに貼付して試験片とした。
【実施例】
【0033】
材料試験機(株式会社島津製作所製 EHF-UG100kN-40L)を用いて各試験片の長辺方向に0.1~170Mpa、20Hzの繰返し引張応力による動的荷重を負荷した。
各亀裂検知センサーについて、導電性薄膜と接続している導電性繊維と抵抗計(アジレント社製、装置名:U1252B)とを二端子法で接続し、模擬鋼材に発生した亀裂が、1~1.5mm程度進展する毎に材料試験機を停止して亀裂の長さと抵抗値を測定し、抵抗増加率を確認した。結果を図10に示す。
【実施例】
【0034】
含浸膜形状である導電性薄膜と比べて、フィルム形状である導電性薄膜が、対象物(模擬鋼材)の亀裂の進展に伴い抵抗値が増加した。実験2では、含浸膜形状である導電性薄膜とフィルム形状である導電性薄膜とにおいて、導電性薄膜に損傷が生じた際の抵抗値の増加率はほぼ同一であった。このことから、対象物に貼り付けた際には、含浸膜形状である導電性薄膜は、フィルム形状である導電性薄膜よりも損傷が生じにくいことが確かめられた。これは、含浸膜形状である導電性薄膜は、eテキスタイルにより補強されているためである。このことから、フィルム形状である導電性薄膜を用いた亀裂検知センサーは、亀裂の発生、進展をより確実に検知できること、含浸膜形状である導電性薄膜を用いた亀裂検知センサーは、温度変化による収縮や振動等により損傷しにくいため、誤検知が少ないことが確かめられた。
【実施例】
【0035】
「実験4」
導電性粒子としてNi粒子(3~7μm)、有機系バインダーとしてポリエステル系樹脂を含む導電性ペースト2を製造した。
導電性粒子としてカーボン系粒子、有機系バインダーとしてポリエステル系樹脂を含む導電性ペースト3を製造した。
導電性ペースト1~3のみを硬化した導電性薄膜の比抵抗は、それぞれ8.0×10-2Ω・cm、8.0×10-3Ω・cm、2.0×10-1Ω・cmであった。
【実施例】
【0036】
導電性ペースト3から、長さ70mm、幅10mm、厚さ30μmのフィルム形状の導電性薄膜を得た。
この導電性薄膜の長さ方向側端部に、それぞれ導電性ペースト1、2を塗布して、幅1mm、総厚さ100μm、70μmの厚膜部からなる低抵抗帯を形成し、低抵抗帯(厚さ100μm、70μm)と高抵抗帯(厚さ30μm)とを備える導電性薄膜を得た。この導電性薄膜と斜文織のeテキスタイルとから、亀裂検知センサー(高感度C:導電性ペースト1使用)、亀裂検知センサー(高感度Ni:導電性ペースト2使用)を得た。
上記実験2と同様にして、斜文織のeテキスタイルと、導電性ペースト1を用いて、導電性薄膜がフィルム形状(厚さ30μm)である亀裂検知センサー(ノーマル)を製造した。
【実施例】
【0037】
得られた各亀裂検知センサーについて、実験2と同様にして、導電性薄膜の長さ方向中央部の端部から中心に向かって(高感度亀裂検知センサーは、低抵抗帯側から)傷を入れ、抵抗値を測定した。傷長さと抵抗増加率との関係を図11に示す。
【実施例】
【0038】
低抵抗帯を有する導電性薄膜は、損傷に伴う初期抵抗値からの抵抗値の増加が大きく、高感度なセンサーとして用いられることが確かめられた。特に、比抵抗が8.0×10-3Ω・cmと小さい導電性ペースト2で低抵抗帯を形成した亀裂検知センサー(高感度Ni)は、初期抵抗値からの抵抗値の増加が大きく、長さ1mmの傷により1mm幅の低抵抗帯に電気が通らなくなっただけで抵抗値が33%も増加した。なお、亀裂検知センサー(高感度C)、亀裂検知センサー(ノーマル)について長さ1mmの傷を入れた際の抵抗増加率は、それぞれ1.4%、0.5%であり、低抵抗帯を有する亀裂検知センサー(高感度C)は、亀裂検知センサー(ノーマル)と比較して高感度であった。
【符号の説明】
【0039】
1 亀裂検知センサー
2 eテキスタイル
21 導電性繊維
3 導電性薄膜
31 低抵抗帯
32 高抵抗帯

10 亀裂検知システム
4 リード線
5 抵抗計
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10