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明細書 :高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ、それを用いる生体高分子検出法ならびに生体高分子間相互作用検出法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4929461号 (P4929461)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
発明の名称または考案の名称 高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ、それを用いる生体高分子検出法ならびに生体高分子間相互作用検出法
国際特許分類 A61K  49/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C07C  43/166       (2006.01)
C07D 207/448       (2006.01)
C07D 207/46        (2006.01)
C07D 409/06        (2006.01)
C07F   9/48        (2006.01)
FI A61K 49/00 A
A61P 43/00
C12Q 1/68 A
G01N 21/78 C
C07C 43/166
C07D 207/448
C07D 207/46
C07D 409/06
C07F 9/48
請求項の数または発明の数 3
全頁数 17
出願番号 特願2006-544825 (P2006-544825)
出願日 平成17年10月24日(2005.10.24)
国際出願番号 PCT/JP2005/019514
国際公開番号 WO2006/054426
国際公開日 平成18年5月26日(2006.5.26)
優先権出願番号 2004315018
2005118313
優先日 平成16年10月29日(2004.10.29)
平成17年4月15日(2005.4.15)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年10月15日(2008.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】井上 将彦
【氏名】藤本 和久
【氏名】清水 久夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】野口 勝彦
参考文献・文献 特開2003-116529(JP,A)
2004年 光化学討論会 講演要旨集,2004年10月25日,43頁
Bioorganic & Medicinal Chemistry ,1995年,Vol.3,p.1667-1674
European Journal of Organic Chemistry,2004年,No.6,p.1298-1307
調査した分野 C07C 43/166
C07D 207/448
C07D 207/46
C07D 409/06
A61K 49/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式にて表記される蛍光プローブ分子。
JP0004929461B2_000014t.gif ただしR12は下記化学式(1)又は(2)である。
JP0004929461B2_000015t.gif [化学式(1),(2)中、mは0または1~5の整数であり、nは1~5の整数である。]
【請求項2】
下記化学式にて表記される蛍光プローブ分子。
JP0004929461B2_000016t.gif ただしRは下記化学式(5)である。
JP0004929461B2_000017t.gif [化学式(5)中、rは6~10の整数である。]
【請求項3】
下記化学式にて表記される蛍光プローブ分子。
JP0004929461B2_000018t.gif ただしR12は下記化学式(1)又は(2)である。
JP0004929461B2_000019t.gif [化学式(1),(2)中、mは0または1~5の整数であり、nは1~5の整数である。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ分子の開発ならびに、該蛍光プローブ分子を用いる生体高分子検出法ならびに生体高分子間相互作用検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な疎水性蛍光プローブ分子は、既存の蛍光性有機基にラベル化するための有機置換基を導入したものである。代表的な蛍光性有機基であるピレンは、モノマー発光だけでなくエキシマー発光も有するという特徴から、生体分子に対する疎水性蛍光プローブ分子として、広く応用されている[非特許文献2]。
また、フェニルエチニルピレン及びフェニルエチニルアントラセンで修飾したDNAが合成されている[非特許文献3]。該文献においては、DNAにヨウ化フェニル基を導入し、これにエチニルピレン、エチニルアントラセンを導入する手法をとっており、汎用性のラベル化試薬の開発を意図していない。
【0003】
一方、本発明者は[非特許文献1]において、ピレン骨格にエチニル基を導入することで、その吸収波長や蛍光波長が長波長側へとシフトすることを認識した。この知見を元に、生体高分子の広範なラベル化試薬の開発を目指したものである。
【0004】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 1452-1458
【非特許文献2】J. Biol. Chem. 1973, 248, 3173-3177
【非特許文献3】Tetrahedron 2004, 60, 4617-4626
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
代表的な疎水性プローブであるピレンは、励起波長が比較的短波長である、蛍光量子収率が低い、溶媒中の溶存酸素による消光が顕著であるといった問題が存在する。励起波長が300 nm付近の蛍光性有機基の場合、該励起光が生体化学種に一部吸収され、該蛍光性有機基の励起確率が低下する可能性がある。蛍光量子収率が低いことは高感度検出の妨げとなる。溶媒中の溶存酸素による消光を受けやすいということも、イン・ビボ(in vivo)条件化で使用する際には高感度検出の妨げとなる。
【0006】
本研究の発明者は、上記の問題点を克服し、高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ分子を開発するために鋭意研究を行った。その結果、ピレン骨格の1位にアリールエチニル基を導入した蛍光性有機分子を基に開発した各種高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ分子が問題点を解決することを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、第一の態様として、アリールエチニル基を有する高蛍光量子収率型疎水性蛍光プローブ分子、特にエキシマー形成可能な蛍光性有機基であることを特徴とする蛍光プローブ分子に係る。
本発明の第二の態様として、被検生体高分子を該蛍光プローブ分子でラベル化することで可能となる生体高分子検出法ならびに生体高分子間相互作用検出法に係る。
第1の発明は、置換基を有するアリールエチニル基を蛍光性有機分子に導入したことを特徴とする蛍光プローブ分子である。
アリールエチニル基は、フェニルエチニル基またはチエニルエチニル基であってよい。
置換基は以下の置換基から選ばれることを特徴とする。
JP0004929461B2_000002t.gif (式中、Xはハロゲン原子を;mは0または1~5の整数を;nおよびpは1~5の整数
を意味する。)
第2の発明は、無置換のアリールエチニル基および式
JP0004929461B2_000003t.gif (rは6~10の整数を意味する)
で示される基を蛍光性有機分子に導入したことを特徴とする蛍光プローブ分子である。
アリールエチニル基はフェニルエチニル基またはチエニルエチニル基であってよい。
第1及び第2の発明において蛍光性有機分子はピレン、アントラセン、フルオレンまた
はペリレンであることを特徴とする。
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る蛍光プローブ分子を用いたことを特徴とする生体高分子検出法である。
また上記蛍光プローブ分子のエキシマー形成能を用いた生体高分子間相互作用検出法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蛍光プローブ分子を用いることにより、被検生体高分子を溶存酸素存在下においても非常に高い感度で検出することが出来る。本発明の蛍光プローブ分子は、高い蛍光量子収率を持つので、DNAをはじめとするオリゴヌクレオチド鎖やタンパク質を該蛍光プローブ分子でラベル化することにより、また、細胞膜内へ導入することにより生体分子間相互作用の検出法に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の蛍光プローブ分子の合成例(スキーム1-1)を示す。
【図2】本発明の蛍光プローブ分子の合成例(スキーム1-2)を示す。
【図3】本発明の蛍光プローブ分子の合成例(スキーム1-3)を示す。
【図4】本発明の蛍光プローブ分子の合成例(スキーム1-4)を示す。
【図5】本発明の蛍光プローブ分子の合成例(スキーム2)を示す。
【図6】市販のピレニルマレイミドとグルタチオンの構造を示す。
【図7】化合物1とピレニルマレイミドにより、グルタチオンをラベル化した際の蛍光強度の比較を示す。
【図8】試験例2のゲル電気泳動の写真Aおよび写真B

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の蛍光プローブ分子は、溶存酸素存在下においても非常に高い感度でラベル化された生体高分子の検出を可能にする。その構造的特徴は、蛍光性有機分子にアミノ酸や核酸を修飾するための基を置換基として有するアリールエチニル基を導入しているところである。
【0011】
アリールエチニル基として、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、チエニルエチニル基が挙げられるが、フェニルエチニル基およびチエニルエチニル基が好ましい。
【0012】
本発明の蛍光プローブ分子に使用できる蛍光性有機基の例としては、ピレン、アントラセン、フルオレン、ペリレンが挙げられるが、ピレン、アントラセンが好ましい。
【0013】
アミノ酸や核酸を修飾するための基として、例えば、アミノ酸であるシステインを修飾するためのマレイミド基、リジンを修飾するためのスクシンイミジル基、DNA鎖に導入するためのホスホロアミダイト基などが挙げられる。これらの修飾基は、必ずしもスペーサーを介してアリールエチニル基に結合していなくてもよい。
具体的な基として、以下のものが挙げられる
【0014】
・マレイミド基
【化1】
JP0004929461B2_000004t.gif
(式中、mは、0または1~5の整数を意味する)
・スクシンイミジル基
【化2】
JP0004929461B2_000005t.gif
(式中、nは、1~5の整数を意味する)
・ホスホロアミダイト基
【化3】
JP0004929461B2_000006t.gif
(式中、pは、1~5の整数を意味する)
・ハロゲン化アセトアミド基
【化4】
JP0004929461B2_000007t.gif
(式中、Xは、ヨウ素、臭素などのハロゲン原子を意味する)
【0015】
また、細胞膜に導入するための基として、例えば、オキシエチレン基などが挙げられる。
具体的な基として、以下のものが挙げられる
【0016】
【化5】
JP0004929461B2_000008t.gif
(式中、rは、6~10の整数を意味する)

【0017】
本発明の蛍光プローブ分子の代表的化合物を表1-1~表1-4に示す。
【表1-1】
JP0004929461B2_000009t.gif

【0018】
【表1-2】
JP0004929461B2_000010t.gif

【0019】
【表1-3】
JP0004929461B2_000011t.gif

【0020】
【表1-4】
JP0004929461B2_000012t.gif

【0021】
本発明の蛍光プローブ分子は、使用する蛍光性有機基の種類等に応じて、適用な出発物質、中間体、及び反応条件等を適宜選択し、当業者に公知の任意の方法で合成することができる。
例えば、ハロゲン化アリールとアセチレンとのカップリングである薗頭反応を利用して本発明化合物を製造することができる。
【式1】
【0022】
JP0004929461B2_000013t.gif「式中、Aは、蛍光性有機基を;B1は、フェニル、ナフチルなどのアリール基を;B2はチエニル基を;Yは、ハロゲン原子またはトリフラート基を;Rは、上記したアミノ酸や核酸を修飾するための基または細胞膜に導入するための基を表す」
化合物aと化合物b1または化合物b2とを反応させるには、例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムなどのパラジウム触媒とヨウ化銅の組み合わせに、溶剤としてトリエチルアミンやモルホリンなどの塩基性溶媒を使用する。反応時間は1~6時間、反応温度は10℃以上で溶剤が還流する温度までを上限とする。
本発明の代表的化合物の製造ルートを図1~図5に示した。
【0023】
本発明の蛍光プローブ分子による、生体高分子検出法ならびに生体高分子間相互作用検出法は、溶存酸素存在下においても高い感度で行うことが出来る。更に、該蛍光プローブ分子のエキシマー形成能を利用することにより、より効果的な検出法となる可能性を有する。
例えば、DNAをはじめとするオリゴヌクレオチド鎖の末端もしくは核酸塩基部分を該蛍光プローブ分子で修飾することで、該蛍光プローブ分子由来のエキシマー発光を利用した生体高分子の検出が可能となる。またタンパク質やその配位子(リガンド)となるペプチド鎖を該蛍光プローブ分子で修飾することで、生体高分子間相互作用の検出も可能となる。
以下本発明に係る化合物の合成例を説明するが、化合物の番号は図1~図5中の番号を示す。
【実施例】
【0024】
実施例1
・マレイミド誘導体(化合物1)の合成[合成スキーム1-1]
(1)1-ブロモピレン(化合物10)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅の混合物にトリエチルアミンを加え、均一な溶液になるまで50℃で加熱した。続いて、4-エチニルアニリン(化合物11)のトリエチルアミン溶液を加え4時間還流させた。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を回転式エバポレーターで処理した後、クロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてヘキサン:ジクロロメタン(1:1)を使用)すると、黄色固体の4-(1-ピレニルエチニル)アニリン(化合物12)が収率67%で得られた。
化合物12の物性データは以下のとおりである。
融点:152-153℃
【0025】
(2)4-(1-ピレニルエチニル)アニリン(化合物12)のテトラヒドロフラン溶液に無水マレイン酸を0℃で加えた。反応溶液を徐々に室温に戻し、12時間攪拌した。析出した沈殿をろ別乾燥し、次の反応にそのまま使用した。得られた化合物13と酢酸ナトリウムの混合物に無水酢酸を加えて懸濁液とした。この懸濁液を100℃で1時間攪拌した後、0℃まで冷却し、さらに氷水を加えた。析出した沈殿物をろ取し、冷水ならびにヘキサンで洗浄を行った。得られた粗生成物をエタノール-クロロホルム混合溶媒から再結晶すると、橙黄色固体のマレイミド誘導体(化合物1)が収率68%で得られた。
化合物1の物性データは以下のとおりである。
融点:262-263℃
【0026】
実施例2
・スクシンイミジルエステル誘導体(化合物3)の合成[合成スキーム1-3]
(1)1-ブロモピレン(化合物10)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅の混合物にトリエチルアミンを加え、均一な溶液になるまで70℃で加熱した。続いて、4-エチニルジヒドロ桂皮酸(化合物14)のトリエチルアミン溶液を加え3時間還流させた。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣を希塩酸水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を回転式エバポレーターで処理した後、クロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンに続いてジクロロメタン:メタノール(30:1)を使用)すると、黄色固体の4-(1-ピレニルエチニル)ジヒドロ桂皮酸(化合物15)が収率63%で得られた。
【0027】
(2)化合物15、炭酸ジスクシンイミジルの混合物にアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ピリジンを加え、6時間還流させた。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣をクロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンを使用)すると、黄緑色固体のスクシンイミジルエステル誘導体(化合物3)が収率76%で得られた。
【0028】
実施例3
・ホスホロアミダイト誘導体(化合物7)の合成[合成スキーム1-2]
(1)水素化リチウムアルミニウムにテトラヒドログランを加え懸濁液とし、0℃に冷却した。続いて、化合物15のテトラヒドロフラン溶液を加え0℃で2時間攪拌した。希塩酸水溶液を加え不溶物をろ別した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣をクロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンを使用)すると、淡黄色固体の3-(4-(1-ピレンエチニル)フェニル)プロパン-1-オール (化合物16)が収率85%で得られた。
【0029】
(2)1H-テトラゾールおよび2-シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイトを含むアセトニトリル溶液に、化合物16のアセトニトリル溶液を0℃で加えた。室温で3時間攪拌させた後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣をクロマトグラフ展開(ヘキサン:トリエチルアミン(50:1)で前処理したシリカゲル;溶出液としてヘキサン:ジクロロメタン(6:1)を使用)すると、黄緑色液体のホスホロアミダイト誘導体(化合物7)が収率79%で得られた。
【0030】
実施例4
・(化合物8)の合成[合成スキーム1-4]
(1)1,6-ジヨードピレン、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅の混合物にモルホリンを加え、均一な溶液になるまで100℃で加熱した。続いて、4,7,10,13,16,19,22,25,28-ノナオキサ-1-ノナコサン(化合物18)のモルホリン溶液を加え120℃で5時間攪拌した。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣にメタノールを加え、不溶物をろ過により除去した。メタノールを回転式エバポレーターで留去した後、クロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンに続いてジクロロメタン:メタノール(60:1)を使用)すると、無色固体の1-ヨード-6-(4,7,10,13,16,19,22,25,28-ノナオキサ-1-ノナコスニル)ピレン (化合物19)が収率44%で得られた。
【0031】
(2)化合物19、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅の混合物にテトラヒドロフランとトリエチルアミンを加え、均一な溶液になるまで70℃で加熱した。続いて、フェニルアセチレンを加え1時間還流させた。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣をクロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンに続いてジクロロメタン:メタノール(300:1)を使用)すると、黄色固体の1-(4,7,10,13,16,19,22,25,28-ノナオキサ-1-ノナコスニル)-6- (フェニルエチニル)ピレン (化合物8)が収率88%で得られた。
【0032】
実施例5
・(化合物27)の合成[合成スキーム2]
(1)(2-チエニルメチル)アミン(化合物20)に無水酢酸、トリエチルアミンを0℃で加え、室温で一時間攪拌した。溶剤を回転式エバポレーターで除去した後、残渣に水を加えジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル抽出物を回転式エバポレーターで処理することで、N-(2-チエニルメチル)アセトアミド(化合物21)を得た。
1H NMR (CDCl3)δ 2.01 (s, 3 H), 4.60 (d, J = 5.5 Hz, 2 H), 5.85 (brs, 1 H), 6.95-6.98 (m, 2 H), 7.23 (dd, J = 1.5 and 5.0 Hz, 1 H)
(2)N-(2-チエニルメチル)アセトアミドのジメチルホルムアミド溶液にN-ブロモスクシンイミドを0℃で加え、室温で12時間攪拌した。溶剤を回転式エバポレーターで除去した後、残渣にテトラヒドロフランを加え、不溶物をろ別した。溶液のテトラヒドロフランを回転式エバポレーターで除去した後、クロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてジクロロメタンを使用)すると、N-(5-ブロモ-2-チエニルメチル)アセトアミド(化合物22)が得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 2.01 (s, 3 H), 4.50 (d, J = 5.5 Hz, 2 H), 5.88 (brs, 1 H), 6.72 (d, J = 4.0 Hz, 1 H), 6.88 (d, J = 4.0 Hz, 1 H)
(3)N-[(5-ブロモ-2-チエニル)メチル]アセトアミドのメタノール溶液に水酸化ナトリウム水溶液を室温で加え、60℃で二日間攪拌した。溶剤を回転式エバポレーターで除去した後、残渣に水を加えジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出物を回転式エバポレーターで処理し、(5-ブロモ-2-チエニルメチル)アミン(化合物23)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ 3.99 (s, 2 H), 6.67 (d, J = 4.0 Hz, 1 H), 6.88 (d, J = 4.0 Hz, 1 H)
(4)(5-ブロモ-2-チエニルメチル)アミンに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、懸濁液とする。そこにN-(メトキシカルボニル)マレインイミド(化合物24)を0℃で加え、その温度で30分攪拌し、さらに室温で3時間攪拌する。反応終了後、濃硫酸を加え、pH3に調整する。その水溶液を酢酸エチルで洗浄した後、酢酸エチル層を回転式エバポレーターで処理した後、クロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてヘキサン:ジクロロメタン(1:1)を使用)すると、N-(5-ブロモ-2-チエニルメチル)マレインイミド(化合物25)が得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 4.75 (s, 2 H), 6.72 (s, 2 H), 6.83 (d, J = 3.5 Hz, 1 H), 6.88 (d, J = 3.5 Hz, 1 H)
(5)化合物27の合成
N-(5-ブロモ-2-チエニルメチル)マレインイミド、1‐エチニルピレン(化合物26)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅にジメチルホルムアミドとトリエチルアミンを加え、60℃で12時間攪拌し、N-[5-(1-ピレニルエチニル)-2-チエニルメチル]マレインイミド(化合物27)が得られた。
【0033】
参考例1
3-(4-ヨードフェニル)プロピオン酸、ビストリフェニルホスフィン塩化パラジウム、ヨウ化銅の混合物にトリエチルアミンを加え、均一な溶液になるまで70℃で加熱した。続いて、トリメチルシリルアセチレンを加え1時間還流させた。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣を0.5N塩酸水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル抽出物を回転式エバポレーターで処理した後、得られた粗生成物を次の反応に使用した。この粗生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、一滴の水を加え0℃に冷却した。続いて、フッ化テトラブチルアンモニウム塩のテトラヒドラフラン溶液を加え30分0℃で攪拌した。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣をクロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてヘキサン:酢酸エチル(1:1)を使用)すると、無色固体の4-エチニルジヒドロ桂皮酸(化合物14)が収率97%で得られた。
【0034】
参考例2
1-ブロモピレン、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ヨウ化銅のトリエチルアミン溶液を調整し、エチニルチオフェンを加え60℃で一日攪拌した。室温まで戻した後、溶剤を回転式エバポレーターで除去した。残渣にヘキサンを加え、不溶物をろ過により除去した。ヘキサンを回転式エバポレーターで留去した後、残渣をクロマトグラフ展開(シリカゲル;溶出液としてヘキサンを使用)すると、固体の1-(2-チエニルエチニル)ピレンが収率85%で得られた。ここで得られた化合物の蛍光スペクトルは、1-フェニルエチニルピレンより約10nm長波長側にシフトした。
融点:131-133℃
【0035】
試験例1
実施例1で合成した化合物1と市販のピレニルマレイミド(化合物A)を用いてペプチド鎖のシステイン側鎖のチオール基をラベル化し、それらの相対蛍光強度を比較した。被ラベル化分子としてグルタチオンを用いた。グルタチオンは、アミノ末端からグルタミン酸・システイン・グリシンの三つのアミノ酸から成る生理活性ペプチドである。
化合物1ならびに化合物Aのシステインラベル化部位は、マレイミド基である。システインのチオール基とプローブ分子のマレイミド基上の炭素-炭素二重結合とが反応をする。市販品である化合物Aそのもの(ラベル化反応前)は、ピレン由来の蛍光がほとんど消光されており(図7;点線)、チオール基と反応することでその蛍光が復活する。化合物1も化合物Aと同様に、ラベル化反応前ではほとんど消光されていることが明らかとなった(図7;破線)。化合物1ならびに化合物Aのジメチルスルオキシド溶液とグルタチオン水溶液を反応させた後の蛍光スペクトルを図7に示す。グルタチオンに対して、過剰量の化合物1と化合物Aを用いた(化合物1と化合物Aは等モル)。グルタチオンと反応した化合物Aは、ピレン由来の蛍光発光を示した(図7;実線)。一方、化合物1はピレニルマレイミドに比べ約40 nm長波長側にシフトし、かつブロード化された発光が観測された(図7;太実線)。その蛍光強度を比較すると、化合物1は化合物Aの24倍以上である。
この結果より、グルタチオンをラベルした化合物1は非常に高い蛍光量子収率である。
【0036】
試験例2
タンパク質である仔牛血清アルブミン(BSA)を用いて試験例1と同様の実験を行った。BSAは分子量が約67,000で35個のシステイン残基を持つ。ラベル化反応を行った後、ゲル電気泳動で比較を行った。図8の写真Aはクマシーブルー染色を行ったもので、写真Bは312nmの光を照射することによって観測された蛍光像を示す。写真Aにおいては、分子量マーカーを含め全てのレーンにおいてバンドが観測されるが、写真Bにおいては化合物1でラベル化されたBSAのみが明瞭にそのバンドが確認される。この結果より、試験例2と同様にBSAをラベル化した化合物1は非常に高い蛍光量子収率であることが判明しただけでなく、化合物1は実際のタンパク質をラベル化する際にも非常に有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、高蛍光量子型疎水性蛍光プローブ分子の開発ならびに生体高分子の高感度検出に成功した。該蛍光プローブ分子は、溶存酸素存在下においてもほとんど消光されないことや励起波長の長波長化が達成されていることから、非常に高い有用性を兼ね備えている。また、アリール基にラベル化部位を導入することで、さまざまな生体高分子に対する蛍光プローブ分子を供与することが可能となる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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