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明細書 :痺れ又は自発痛の評価方法及び薬物のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6138044号 (P6138044)
登録日 平成29年5月12日(2017.5.12)
発行日 平成29年5月31日(2017.5.31)
発明の名称または考案の名称 痺れ又は自発痛の評価方法及び薬物のスクリーニング方法
国際特許分類 G01N  27/00        (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
A61B   5/0488      (2006.01)
A61D   7/00        (2006.01)
FI G01N 27/00 Z
G01N 33/483 E
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
A61B 5/04 330
A61D 7/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2013-528073 (P2013-528073)
出願日 平成24年8月10日(2012.8.10)
国際出願番号 PCT/JP2012/070419
国際公開番号 WO2013/022080
国際公開日 平成25年2月14日(2013.2.14)
優先権出願番号 2011175334
優先日 平成23年8月10日(2011.8.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年7月27日(2015.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】安東 嗣修
【氏名】倉石 泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100088580、【弁理士】、【氏名又は名称】秋山 敦
【識別番号】100111109、【弁理士】、【氏名又は名称】城田 百合子
審査官 【審査官】加々美 一恵
参考文献・文献 特表2008-507368(JP,A)
特開2009-226037(JP,A)
特開2009-226040(JP,A)
特開2011-016730(JP,A)
国際公開第2010/029995(WO,A1)
岩瀬敏他,痛み刺激によるC およびAδ求心線維の活動電位,臨床脳波,1998年,Vol.40,No.6,p354-360
調査した分野 G01N 27/00
G01N 33/15
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)

特許請求の範囲 【請求項1】
服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物を、ヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、
投与された前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを検出するステップと、
検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有し、
前記薬物の服用により誘発される前記痺れ又は前記自発痛の評価に用いられることを特徴とする痺れ又は自発痛の評価方法。
【請求項2】
前記ヒト以外の動物に腹腔投与するステップでは、前記薬物をげっ歯類に腹腔投与し、
記発火パターンを検出するステップでは、前記げっ歯類の前記末梢神経に前記双極電極を接触する請求項1記載の痺れ又は自発痛の評価方法。
【請求項3】
服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物を、ヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、
前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物を前記ヒト以外の動物に投与するステップと、
前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを検出するステップと、
検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有し、
前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物の評価に用いられることを特徴とする痺れ又は自発痛の評価方法。
【請求項4】
服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物をヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、
投与された前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを増幅器を用いて増幅検出するステップと、
検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有することを特徴とする痺れ又は自発痛を誘発する薬物のスクリーニング方法。
【請求項5】
痺れ又は自発痛を誘発する薬物をヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、
前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物を前記ヒト以外の動物に投与するステップと、
前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを増幅器を用いて増幅検出するステップと、
検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有することを特徴とする痺れ又は自発痛を抑制する薬物のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はヒト以外の動物を用いた痺れや自発痛の評価方法及び薬物のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の服用により生じる副作用の1つに神経障害がある。
神経障害には中枢神経系、自律神経系、末梢神経系及び感覚器等の障害がある。
これらの神経障害を引き起こす恐れがある医薬品として高脂血症治療薬、抗悪性腫瘍薬(抗癌薬)、抗ウィルス薬及び抗結核薬等が知られている。
このうち、末梢神経障害は医薬品を使用してしばらく経過した後に手・足先の痺れ感、ほてり、痛み、感覚が鈍くなる等の感覚障害が起こり、次第に上方の腕や脚に広がる。
また、糖尿病など疾患においても末梢神経障害が誘発され、その症状の一つして痺れ感がある。
多くは両方の足や手の感覚障害が起こるが、片方だけのこともある。
さらに筋肉に力が入らない、手や足が動きにくい等の運動障害に至る場合もある。
しかし、「痺れ」という感覚の行動学的表現が非常に難しく、「ジンジン」、「ピリピリ」、「チクチク」、「ざわざわ」等の表現をされていても患者の主観的な「痺れ」に対する訴えは患者間で感受性が異なり、たとえ同一人物においても精神的、身体的、環境的な背景により変動する問題がある。
ましてや動物の行動実験にて痺れ感や自発痛を客観的に評価することは困難であった。
【0003】
近年、優れた抗癌薬が次々と開発されているが、抗癌薬においても副作用として末梢神経障害が問題になっている。
抗癌薬にはタキサン系薬剤(パクリタキセル,ドセタキセル等)、ビンアルカロイド系薬剤(ビンクリスチン,ビンプラスチン,ビンデシン,ビノレルビン等)及び白金製剤(オキサリプラチン,カルボプラチン,シスプラチン,ネダプラチン等)等があるが、これらの抗癌薬による神経毒性の研究は進んでいないのが現状である。
特許文献1は、ラットを用いたフォン・フライ試験にてラットの回避反応の回数を測定しているが、痺れ感や自発痛の評価に適用できるものではない。
特に痺れ感は動物の行動に出現しにくく、動物を用いた痺れ感に対する客観的評価方法がないことも「痺れ感」に対する有用な薬物の開発が進んでいない理由の1つと思われる。
【0004】
一方、ラットの座骨神経を露出させ、タングステン微小電極により交感神経信号を導出し、活動電位を測定する手法(マイクロニューログラム法)が知られている(非特許文献1)。
【0005】

【特許文献1】国際公開WO2009/028605号公報
【非特許文献1】自律神経,43(6),445-452,2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来、動物の行動実験で評価できなかった痺れ感や自発痛を電気生理学的に評価できる評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒト以外の動物の末梢神経に発生する活動電位の発火パターンを用いて痺れ又は自発痛を評価した点に特徴がある。
すなわち、本発明は、健常な末梢神経の自発的神経活動と、痺れ又は自発痛で生じる自発的神経活動を電気信号をして取り出し、それらを数値化することで、痺れ又は自発痛を評価するものである。
具体的には、例えば、末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを増幅器を用いて増幅検出する。
前記課題は、本発明によれば、服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物を、ヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、投与された前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを検出するステップと、検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有し、前記薬物の服用により誘発される前記痺れ又は前記自発痛の評価に用いられることを特徴とする痺れ又は自発痛の評価方法により解決される。
このとき、前記ヒト以外の動物に腹腔投与するステップでは、前記薬物をげっ歯類に腹腔投与し、前記発火パターンを検出するステップでは、前記げっ歯類の前記末梢神経に前記双極電極を接触すると好適である。
前記課題は、本発明によれば、服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物を、ヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物を前記ヒト以外の動物に投与するステップと、前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを検出するステップと、検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有し、前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物の評価に用いられることを特徴とする痺れ又は自発痛の評価方法により解決される。
【0008】
ここで、活動電位の発火パターンを測定する神経線維としては動物の後肢を支配している神経が好ましく、伏在神経,総腓骨神経,脛骨神経,腓腹神経等が例として挙げられ、また、背中の皮膚神経枝を対象にしてもよい。
【0009】
検出した発火パターンに関して、閾値(健常でも認められる神経活動)以上の突出した神経活動(発火頻度)を痺れ又は自発痛の電気信号として評価する。
活動電位の発火パターンのうち、刺激をヒト以外の動物に与えていない自発発火パターンを痺れの評価に用いることもできる。
また、発火パターンを検出することで、服用により痺れ又は自発痛を誘発する薬物をヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、投与された前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを増幅器を用いて増幅検出するステップと、検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有することを特徴とする痺れ又は自発痛を誘発する薬物のスクリーニング方法が得られ、また、痺れ又は自発痛を誘発する薬物をヒト以外の動物に腹腔投与するステップと、前記痺れ又は前記自発痛を抑制する薬物を前記ヒト以外の動物に投与するステップと、前記ヒト以外の動物の末梢神経に双極電極を接触し、皮膚からの活動電位の発火パターンを増幅器を用いて増幅検出するステップと、検出された前記発火パターンを数値化することにより、前記痺れ又は前記自発痛を評価するための数値を得るステップと、を有することを特徴とする痺れ又は自発痛を抑制する薬物のスクリーニング方法が得られる。
【0010】
本発明に使用される動物は、ヒト以外で実験動物として使用される動物であれば、特に限定されないが、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌなどが挙げられる。好ましい動物として、マウス、ラットなどのげっ歯類が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で痺れまたは自発痛を評価できる薬物としては、例えば、微小管重合阻害薬(ビンカアルカロイド系薬剤、ハリコンドリンB類縁体)、微小管脱重合阻害薬(タキサン系薬剤)、白金製剤、プロテアソーム阻害剤、抗結核薬、抗原虫薬、逆転写酵素阻害薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、痛風治療薬、抗不整脈薬、インターフェロン製剤などが挙げられる。
本発明のスクリーニング方法で痺れまたは自発痛の抑制を評価できる薬物としては、例えば、循環改善薬、代謝改善薬、筋弛緩薬、血管拡張薬、非ステロイド薬、局所麻酔薬などが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、活動電位の発火パターンを電気信号としてとらえ、数値化して痺れ又は自発痛を評価するものである。A繊維の閾値以上の突出した発火頻度を電気信号としてとらえてもよい。
従って、末梢神経に発生する活動電位の発火パターンにて痺れ感等を評価することがで
き、薬物の痺れ又は自発痛を誘発するレベルや抑制するレベルを電気生理学的に数値化で
きる。
これにより、痺れ感等の発生機序の解明や新薬の開発に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マウス伏在神経の自発発火パターンを示す。
【図2】投与後3日目のマウスを用いて各種機械的刺激とマウス伏在神経の発火頻度を比較したグラフを示す。
【図3】投与後3日目,10日目,32日目のマウスを用いて比較したデータを示す。
【図4】アセトンによる冷刺激とマウス伏在神経の発火頻度を比較したグラフを示す。

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に実験動物を用いた評価結果について説明する。
(実験動物)
実験には、雄性C57BL/6マウス(実験開始時6週齢)を用いた。
マウスを3群[無処置群,5%グルコース溶液(溶媒:腹腔内)投与群,オキサリプラチン(3mg/kg:腹腔内)投与群]に分けた。
(電気生理)
溶媒あるいはオキサリプラチン投与後3日目,10日目及び32日目に、マウスをペントバルビタール(80mg/kg:腹腔内注射)麻酔下、大腿部皮膚を切開し、伏在神経 saphenous nerve を露出した。
双極L字型電極(銀線)を伏在神経に接触させ、神経の電位変化を測定し、その電位変化を増幅器[Dual-Channel Bioelectric Amplifier(MEG-2100):日本光電工業]を用いて増幅(約10,000倍)し、この増幅された電気信号(アナログ信号)をアナログ/デジタル変換装置(Powerlab2/26:ADINSTRUMENTS)を用いてデジタル信号に変換し、コンピューターのモニターで表記させた。
データの記録用チャートへの出力および発火頻度等の解析は、ソフトウェア[PowerLab Chart5(v5.1.1)]を用いて行なった。
伏在神経は、マウス後肢甲(親指側)を支配している神経であるため、親指と人差し指の間を中心に刺激した。
ただし、自発の発火活動を記録する場合は,刺激しなかった。
【0014】
図1に投与後3日目のマウスの伏在神経の自発発火パターンを示す。
これにより抗癌薬を投与したマウスは溶媒投与や無処置のものと異なる自発発火パターンを示し、これが痺れ感に対応すると推定される。
【0015】
図2に投与後3日目のマウスを用いて各種機械的刺激を与えた後のマウスの伏在神経の発火頻度を比較したグラフを示す。
なお、図2のグラフ中、Spontanousは刺激を与えない自発発火であり、双極電極に伏在神経を接触させ約5分後より10分間測定した。
vFF0.69mNは、強度0.69mNのvon Frey filament(フォン・フライ線維:細いプラスチック線)を示し、vFF9.8mNは強度9.8mNのフォン・フライ線維を示す。
また、Push with toothpickは楊枝による皮膚への圧迫刺激、Brushは絵筆による皮膚を撫でる刺激を示し、これらは10secの刺激を2回繰り返した。
図3は、図2に示した投与後3日目と同様に投与後10日目及び32日目のマウスを用いて発火頻度を比較したデータを示す。
以上の結果から、機械的刺激に対する応答性がオキサリプラチンの投与により増大することが明らかになった。
【0016】
図4は、投与後3日目のマウスを用いてアセトン10μlを10分間隔で2回マウス後肢足甲部に塗布し、冷刺激を与えた伏在神経の発火頻度の変化を示す。
これにより、オキサリプラチンを投与したマウスの冷刺激応答性が高いことが明らかになった。
【0017】
これらの実験結果から、抗癌薬の種類及び投与量を変化させて自発発火のパターンの変化を刺激誘発発火のパターンの変化と共に検出し、数値化することで痺れ感の程度を評価できる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明方法は、動物を用いて、痺れ又は自発痛を計測できることから、薬剤等によって誘発される又は抑制される痺れ又は自発痛の評価方法として有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3