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明細書 :バイオコンジュゲートデバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6327622号 (P6327622)
公開番号 特開2015-027448 (P2015-027448A)
登録日 平成30年4月27日(2018.4.27)
発行日 平成30年5月23日(2018.5.23)
公開日 平成27年2月12日(2015.2.12)
発明の名称または考案の名称 バイオコンジュゲートデバイス
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
A61L  27/22        (2006.01)
A61L  27/36        (2006.01)
A61L  27/40        (2006.01)
A61L  27/50        (2006.01)
FI A61L 27/00
A61L 27/22
A61L 27/36
A61L 27/36 100
A61L 27/36 300
A61L 27/36 320
A61L 27/36 410
A61L 27/40
A61L 27/50
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2014-133697 (P2014-133697)
出願日 平成26年6月30日(2014.6.30)
優先権出願番号 2013136802
優先日 平成25年6月28日(2013.6.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年6月26日(2017.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】岡部 素典
【氏名】二階堂 敏雄
【氏名】吉田 淑子
【氏名】小池 千加
【氏名】葭田 隆治
【氏名】古米 保
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】石井 裕美子
参考文献・文献 米国特許出願公開第2006/153815(US,A1)
米国特許出願公開第2005/287223(US,A1)
調査した分野 A61L15/00-33/18
A61B13/00-18/18
A61F2/01
A61F13/00-17/00
A61N7/00-7/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
可溶化したフィブロインを用いて、羊膜と、半溶解処理した精練されていない生糸の絹繊維とを積層したことを特徴とするバイオコンジュゲートデバイス。
【請求項2】
前記絹繊維は生糸の絹織物であることを特徴とする請求項1記載のバイオコンジュゲートデバイス。
【請求項3】
前記生糸の絹織物は平織物であることを特徴とする請求項2記載のバイオコンジュゲートデバイス。
【請求項4】
前記絹繊維の半溶解処理は、カルシウム塩の溶液を用いたものであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のバイオコンジュゲートデバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオコンジュゲートデバイスとして利用される医用材料に関し、特に羊膜と絹繊維とを組み合せたバイオコンジュゲートデバイスに係る。
【背景技術】
【0002】
羊膜はコラーゲンと弾性繊維で構成された強靱な生体膜であり、抗炎症作用や上皮化促進効果があることから、創傷治療等に利用されている。
本出願人の発明者でもある二階堂敏雄らのグループは、これまでに羊膜の長期保存が可能な羊膜の乾燥処理方法(特許文献1)及び乾燥羊膜の医療材料への適用(特許文献2)等を提案している。
しかしながら、眼科領域で角膜穿孔時にパッチとして使用する際にコラゲナーゼ等による患部から脱落する心配があり、緑内障でのプレプ形成時における羊膜の強度増強が望まれる。
また、脳外科領域で広範囲に脳硬膜パッチとして使用する場合や、耳鼻科領域で鼓膜の破損時にパッチとして使用する場合等においても羊膜の強度向上が望まれていた。
一方、絹は、医用材料として古くから外科手術用縫合糸に用いられている。
近年、生体組織を再生する際の足場等に絹や絹タンパクを利用しようとする試みがなされている。
例えば、絹を精練してセリシンなどを除去し、埋植用の組織支持補綴用具の形成に使用するもの(特許文献3)、絹タンパクとコラーゲンとの複合体を得るもの(特許文献4)、塩縮処理した絹とキトサンとの複合体を得るもの(特許文献5)などがある。
そこで、本発明者らは、羊膜と絹繊維との結合を試みたところ、単に積層しただけでは相互に解離し、充分な性能が得られなかった。
その後にさらなる改良を重ねることによって本発明に至ったものである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第4977345号公報
【特許文献2】特許第5092119号公報
【特許文献3】特開2011-147790号公報
【特許文献4】特開平11-228837公報
【特許文献5】特開2004-131647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、羊膜をベースとした強度が改善されたバイオコンジュゲートデバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るバイオコンジュゲートデバイスは、可溶化したフィブロインを用いて、羊膜と、半溶解処理した精練されていない生糸の絹繊維とを積層したことを特徴とする。
ここで、精練されていない生糸の絹繊維としたのは、次の理由による。
蚕の繭を製糸し、引き出した繭糸は2本のフィブロイン繊維をセリシンで取り囲んだ断面構造を有し、独特の光沢があり生糸と称されている。
これに対して生糸を石鹸,灰汁,ソーダ水等のアルカリ性の液で精練し、セリシンを取り除いた絹糸を練糸と称している。
本発明は、この精練されていない生糸を半溶解処理して用いた点に特徴がある。
ここで、半溶解処理とは生糸のフィブロイン繊維を取り囲むセリシンの一部が溶解され、未だセリシンが残るように弱く精練した状態をいう。
従って、セリシンが残る程度に精練されたことを意味し、半分精練したことに限定する意味ではない。
薬液は、カルシウム塩の溶液が好ましく、半溶解に使用するカルシウム塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられるが、塩化カルシウムが好ましい。
カルシウム塩の濃度は、40~60%(重量%)であればよい。
また、加熱は、カルシウム塩水溶液を沸騰させればよく、処理時間は、5~10分間であればよい。
また、半溶解処理は、メタノール、エタノールなどの一価アルコールを添加して行ってもよい。
アルコールの添加は、カルシウム塩水溶液が沸騰した後に行うことが好ましい。
アルコールの添加も含めた半溶解処理時間は5~30分間である。
また、可溶化したフィブロインとは、生糸を精練して得られたフィブロイン繊維をゲル状に溶解したものをいう。
可溶化に用いる薬液としては、銅エチレンジアミン,臭化リチウム,塩化カルシウムの溶液が例として挙げられる。
例えば、精練された絹糸を30~50質量%の塩化カルシウム水溶液に入れ、加熱ゲル化し、透析等により中性塩を除去し、さらに濾過等により不純物を取り除くことで得られる。
なお、透析前に中和処理等を行ってもよい。
【0006】
詳細は後述するが、乾燥させた羊膜に可溶化したフィブロインを含浸させるだけでは羊膜の強度向上を図るのが不充分であった。
また、試しに生糸の絹平織物を半溶解処理し乾燥羊膜に積層したが、充分に密着しなかった。
そこで本発明は、羊膜と半溶解処理した生糸の絹繊維とを可溶化したフィブロインを用いて積層したところ、羊膜と半溶解処理した絹繊維の密着性に優れ、強度が大きく向上したものである。
可溶化したフィブロインを積合に用いる方法としては、羊膜に可溶化したフィブロインを含浸させた後に半溶解処理した生糸の絹繊維を重ね合せる例が挙げられる。
【0007】
羊膜を半溶解処理した生糸の絹繊維にて強度向上を図る点において、絹繊維の形態に制限はないが、取扱いやすい点からは絹繊維は縦糸と横糸とを1本ずつ交互に織った平組織からなる平織物が好ましい。
薄手で軽く透けている平織物としては、シルクのオーガンジーや主に日本画を描くのに用いられている絵絹が例として挙げられる。
また、半溶解処理した絹繊維と積層するのに用いる羊膜は、乾燥させた乾燥羊膜を用いるのが取り扱いやすい。
乾燥羊膜としては、ヒト羊膜やウマ羊膜を特許文献1に記載の方法を用いて乾燥させたものが好ましい。
乾燥羊膜は、グルタルアルデヒドを用いて固定化処理したものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0008】
半溶解処理した生糸の絹繊維と可溶化したフィブロインを含浸させた羊膜を積層させたバイオコンジュゲートデバイスは、その強度が羊膜単独に対して著しく向上し、新規な医用材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】羊膜等の乾燥に用いる乾燥装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を参考例,製造例,試験例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0011】
(参考例1:羊膜及びバイオコンジュゲートデバイスの乾燥方法)
図1に示す乾燥装置を用いて本発明に使用した羊膜およびバイオコンジュゲートデバイスなどの乾燥を行なった。
この乾燥装置では、マイクロ波照射装置30としては、出力1.5KWのマグネトロンを用いた。
また、遠赤外線ヒータ14の温度設定を50℃とし、遠赤外線を羊膜に対して乾燥開始から終了まで連続照射した。
更に、処理槽10内に羊膜を載置していないとき、真空ポンプ18による最高減圧到達圧力を0.4kPaとなるように設定した。

【0012】
図1に示す乾燥装置によって羊膜等を乾燥する際には、シワにならないように広げた吸水紙としてのクッキングペーパ上に、羊膜等(例えば、生羊膜50g)をシワのないように広げ、これらをトレイ上に載置した。
更に、このトレイを処理槽10内の回転テーブル12上に載置した後、回転テーブル12を回転した。
この回転テーブル12は、モータ16にて乾燥開始から終了まで連続回転した。

【0013】
遠赤外線ヒータ14をONとして、真空ポンプ18を駆動すると共に電磁弁20を開けて処理槽10内を減圧する減圧操作を開始した。
減圧開始から暫くすると減圧速度が低下してきたため、最高減圧到達圧力が0.90kPaに到達したとき、真空ポンプ18を停止すると共に電磁弁20を閉じ、電磁弁26を開いて、フィルター24によってゴミや細菌が濾過された空気を処理槽10内に導入する復圧操作を開始し、処理槽10内の圧力を4.53kPaに復圧した。

【0014】
復圧操作の開始と同時に、マイクロ波照射装置30としてのマグネトロンをONとしてマイクロ波を回転テーブル12上の羊膜に照射する加温操作を施した。

【0015】
遠赤外線ヒータ14とマグネトロンとによる加温操作を3分間施した後、マグネトロンをOFFにして、遠赤外線ヒータ14をONとしつつ減圧操作を再開した。
再開した減圧操作によって処理槽10内を0.62kPaまで減圧状態とした後、処理槽10内を4.63kPaに復圧する復圧操作と、遠赤外線ヒータ14とマグネトロンとによる3分間の加温操作とを施した。
かかる減圧操作、加温操作及び復圧操作を合計で6回施して羊膜の乾燥を終了した。
この乾燥終了は、第5回目の減圧操作による処理槽10内の最高減圧到達圧力と、処理槽10内に羊膜を載置していないときの最高減圧到達圧力とによって判断した。
すなわち、第6回目の減圧操作の最高減圧到達圧力が0.40kPaに到達し、処理槽10内に羊膜を載置していないときの最高減圧到達圧力と等しくなったため、乾燥終了と判断した。

【0016】
乾燥を終了した乾燥羊膜は、処理槽10に載置した生羊膜50gに対して1gに脱水乾燥されており、乾燥剤が封入された滅菌パック中に密閉して保存した。

【0017】
(参考例2:可溶化フィブロインの製造)
食塩(0.2%)の電気分解アルカリ水(pH9.0~10.5)を絹繊維の重量50倍量加え、株式会社東洋高圧製(TFS-2L;100MPa)エキス装置にて、70℃、1時間セリシンを除去する精練を行った。
これにより得られたフィブロイン繊維2.5gを塩化カルシウム:水(50:50w/w)50mlに投入し、加熱した。
沸騰後にエタノールを50ml添加した。
その後に冷却し、透析チューブ(セルロースチューブ)で透析し、次にシームレスセルロースチューブに入れ、流水中で5日間処理することでフィブロインが可溶化されたゲル化物(可溶化フィブロインA)が得られた。
また、冷却後、pH7.0に中和した後、流水中で1日透析処理することでゲル化物(可溶化フィブロインB)が得られた。

【0018】
(参考例3:半溶解処理オーガンジーの製造)
塩化カルシウム:純水(50:50(w/w))の混合水溶液100mlに生糸の絹平織物からなるオーガンジー2.5gを入れ、加熱し沸騰させる。
次いで、エタノール30mlを駒込ピペットで徐々に加える。
次いで、半溶解したオーガンジーを流水(15℃前後)で1時間洗浄する。

【0019】
(製造例1:可溶化フィブロインA含浸乾燥羊膜と半溶解処理オーガンジーの積層体Aの製造)
参考例1にて得られた乾燥羊膜を、グルタルアルデヒド処理(0.1%グルタルアルデヒド水溶液に30分間浸漬)した。
処理したものを生理食塩液で洗浄後、参考例1の方法で乾燥した。
次いで、可溶化フィブロインAに室温で数秒浸漬し、参考例3にて半溶解処理したオーガンジーを貼付した。
さらにグルタルアルデヒド処理・洗浄し、再度、参考例1の方法で乾燥し、乾燥羊膜と半溶解処理オーガンジーの積層体Aを得た。

【0020】
(製造例2:可溶化フィブロインB含浸乾燥羊膜と半溶解処理オーガンジーの積層体Bの製造
参考例1にて得られた乾燥羊膜を、今回はグルタルアルデヒド処理することなく、生理食塩液に30分間浸漬し、参考例1の方法で乾燥した。
次いで、可溶化フィブロインBに室温で数秒浸漬し、参考例3にて半溶解処理したオーガンジーを貼付した。

【0021】
強度を比較評価するための試料を次のとおり作成した。
試料1:参考例1にて得られた乾燥羊膜を0.1%グルタルアルデヒド水溶液に30分間浸漬後、生理的食塩水で洗浄後に再度参考例1方法で乾燥させた。
試料2:製造例1にて得られた本発明に係るバイオコンジュゲートデバイス。
試料3:参考例1の方法で得られた乾燥羊膜を参考例2にて得られた可溶化されたフィブロインAに浸漬し、含浸処理をした。
試料4:参考例3にて得られた半溶解処理したオーガンジーを0.1%グルタルアルデヒド水溶液に30分間浸漬後に生理的食塩水で洗浄し、参考例1にて乾燥させた。
試料5:参考例1にて得られた乾燥羊膜を生理的食塩水で湿潤化した。
試料6:製造例2にて得られた本発明に係るバイオコンジュゲートデバイス。

【0022】
(試験例1:引張試験)
引張強度計TENSION /UTM-(K.K.)- 500(東洋ボールドウィン社製)により強度を測定した。
<方法>
試料1~5を20mm×20mmの大きさに切断し、リン酸緩衝生理食塩水に5分以上浸した。
次いでリン酸緩衝生理食塩水に浸した試料を型紙ろ紙に貼り付けた。
型紙ろ紙ごと試料をエアジョウに固定し、エアジョウに挟まれていない部分の型紙ろ紙を取り除いた。
試料が破断するまでの引張強度を測定した。
試験条件は、引張開始距離10mm,幅20mm,引張速度10mm/minとした。

【0023】
試験結果を表1に示す。
<結果>
【表1】
JP0006327622B2_000002t.gif

【0024】
表1の結果から試料2の本発明に係るバイオコンジュゲートデバイスは、羊膜単独の試料1や半溶解処理したオーガンジーの試料4よりも強度が向上したことが分かる。

【0025】
(試験例2:引張試験)
前記試料5を今回は、10mm×10mmの大きさに切断した試料5’と比較のため同じ10mm×10mmの大きさに切断した試料6を用いて、試験例1と同様の方法にて引張試験を行った。
その結果、試料5’は579(gf),試料6は670(gf)の強度であった。
この結果からも本発明に係るバイオコンジュゲートデバイスの強度が向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係るバイオコンジュゲートデバイスは、強度の必要な脳硬膜のパッチ、強度の必要な鼓膜、人工気管・人工食道の開発等の新たな治療用の医用材料として有用である。
【符号の説明】
【0027】
10 処理槽
12 回転テーブル
14 遠赤外線ヒータ
16 モータ
18 真空ポンプ
20,26 電磁弁
22 減圧配管
24 フィルター
28 復圧配管
30 マイクロ波照射装置
図面
【図1】
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