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明細書 :チオアミド誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6440250号 (P6440250)
公開番号 特開2016-074646 (P2016-074646A)
登録日 平成30年11月30日(2018.11.30)
発行日 平成30年12月19日(2018.12.19)
公開日 平成28年5月12日(2016.5.12)
発明の名称または考案の名称 チオアミド誘導体
国際特許分類 C07C 327/42        (2006.01)
FI C07C 327/42 CSP
請求項の数または発明の数 1
全頁数 9
出願番号 特願2014-207775 (P2014-207775)
出願日 平成26年10月9日(2014.10.9)
審査請求日 平成29年10月6日(2017.10.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】千葉 順哉
【氏名】友廣 岳則
【氏名】畑中 保丸
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査官 【審査官】吉海 周
参考文献・文献 特表2014-511371(JP,A)
特表2013-525425(JP,A)
米国特許出願公開第2012/0231470(US,A1)
米国特許第04735962(US,A)
米国特許第04618416(US,A)
欧州特許出願公開第00422765(EP,A1)
Bioorganic & Medicinal Chemistry,2014年,Vol.22, No.21,pp.6288-6296,DOI: 10.1016/j.bmc.2014.07.015
Chemical Communications,2013年,Vol.49, No.87,pp.10242-10244,DOI: 10.1039/c3cc46055j
Journal of Medicinal Chemistry,1990年,Vol.33, No.9,pp.2465-2476,DOi: 10.1021/jm00171a021
Journal of the Chemical Society,1955年,pp.1791-1797,DOI: 10.1039/JR9550001791
調査した分野 C07C 327/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記、一般式(1)で表されるチオアミド誘導体。
【化1】
JP0006440250B2_000012t.gif
「式中、Rは、アルキル基を;Rは、以下の式を意味する
【化3】
JP0006440250B2_000013t.gif
(式中、Rは、水素原子、nbは、1~6の整数を、mは、1~3の整数を、それぞれ意味する)」
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用性の高い官能基を導入したクリック反応に有用なチオアミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
高い反応性・選択性を持った反応で比較的単純な小分子パーツを多様に組み合わせ、新たな機能性分子を創出する鍵反応をクリック反応と総称し、バリー・シャープレスによって提案された。
【0003】
クリック反応は、生体直交性(通常は生体分子の構造中にない官能基の組み合わせで、これらが互いに選択的に反応しかつ、そのことが他の内因性分子には影響を与えない化学的性質)を持つ代表的な反応であり、生体に緩和な条件で新たな化学結合を導入することができるため、細胞表面の生体分子を特異的に蛍光可視化する等の高度な技術に応用されている(非特許文献1)。
アミド結合形成反応としての Staudinger 反応(非特許文献2)や、アシルスルホンアミド結合形成反応としての Sulfo Click 反応(非特許文献3)なども、生体直交性を有するクリック反応の例として挙げられる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Acc. Chem. Res., 44, 666-676 (2011)
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 124, 14893-14902 (2002)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 125, 7754-7755 (2003)
【非特許文献4】Chem. Commun., 49, 10242-10244 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、チオアミドとスルホニルアジドが効率よく結合を形成する新規クリック反応を開発した(非特許文献4)。この反応は、様々な溶媒中で反応が進行し、中でも水中で最も効率よい有用な反応である。
しかし、この反応に用いる市販のチオアミドの種類は少なく、また、ローソン試薬などのチオ化剤によるチオアミド化が利用できるものの汎用性の高いチオアミド誘導体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添加剤が不要で、温和な条件下に水溶液でも進行する汎用性の高い生体直交型の新規クリック反応に使用されるチオアミドとして、下記のチオアミド誘導体を開発した。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明において、アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖状のC1-6アルキル基;カルバメート系保護基とは、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(ZまたはCbz)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)などの基;カルボキシル基の活性された基とは、スクシンイミド、マレイイミドなど環状イミドを有するカルボキシル基およびハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモなど)化剤で誘導された基などを意味する。
【0008】
本発明の第1の発明は、以下のチオアミド誘導体である。
【化1】
JP0006440250B2_000002t.gif

【0009】
「式中、Rは、アルキル基を;Rは、水素原子またはカルバメート系保護基を、naは、1~6の整数を、それぞれ意味する」
【0010】
のアルキル基として好ましいものは、メチル基である。
カルバメート系保護基として好ましいものは、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)である。
naとして好ましいものは整数の2である。
【0011】
本発明の第2の発明は、以下のチオアミド誘導体である。
【化2】
JP0006440250B2_000003t.gif

【0012】
「式中、Rは、アルキル基を;Rは、水素原子またはカルバメート系保護基を、nbは、1~6の整数を、mは、1~2の整数を、それぞれ意味する。」
【0013】
のアルキル基として好ましいものは、メチル基である。
カルバメート系保護基として好ましいものは、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)である。
nbとして好ましいものは整数の2である。
mとして好ましいものは整数の1である。
【0014】
本発明の第3の発明は、以下のチオアミド誘導体である。
【化3】
JP0006440250B2_000004t.gif
【化4】
JP0006440250B2_000005t.gif

【0015】
「式中、Rは、アルキル基を;R4aは、環状イミドまたはハロゲン化フェニル基を、ncは、1~6の整数を、それぞれ意味する。」
【0016】
のアルキル基として好ましいものは、メチル基である。
環状イミドとして好ましいものは、スクシンイミドである。
ncとして好ましいものは整数の1である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のチオアミドとスルホニルアジドを基質とする緩和なクリック反応により、スルホニルアミジンが高収率で生成し、容易にアシルスルホンアミドへと変換可能である。また、クリック生成した結合の一部は、アシルスルホンアミドへの変換時に切断され、さらにアシルスルホンアミドもN-アルキル化後に切断可能である。また、生体直交性を有し、水溶液中室温で容易に反応が進行するため、生体系への応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のチオアミド誘導体の製造方法について説明する
<製造法1>
【化5】
JP0006440250B2_000006t.gif

【0019】
「式中、Rは、アルキル基を;Rは、水素原子またはカルバメート系保護基を、R’は、アルキル基を、R”は、アシル基を、naは、1~6の整数を、それぞれ意味する」

【0020】
一般式(2a)のジアミン誘導体に一般式(3)のジチオカルボン酸エステルを、反応させることにより一般式(1a)のチオアミド誘導体を得ることができる。この反応は、溶媒夕中で行ってもよく、用いられる溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフランなどエーテル系溶媒が挙げられる。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃~60℃、好ましくは室温である。

【0021】
別法として、一般式(2a)のジアミン誘導体の一方のアミノ基をカルバメート系保護基以外の保護基、例えば、アセチル基などで保護して一般式(2aa)とした後、ローソン試薬などチオ化剤を反応させ、一般式(1a)のチオアミド誘導体を得ることもできる。

【0022】
一般式(1a)のRが水素原子であるチオアミド誘導体は、トリフルオロ酢酸など有機酸や無機酸との塩とすることもできる。

【0023】
<製造法2>
【化6】
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【0024】
「式中、Rは、アルキル基を;Rは、水素原子またはカルバメート系保護基を、R’は、アルキル基を、R”は、アシル基を、nbは、1~6の整数を、mは、1~2の整数を、それぞれ意味する」

【0025】
一般式(2b)のジアミン誘導体に一般式(3)のジチオカルボン酸エステルを、反応させることにより一般式(1b)のチオアミド誘導体を得ることができる。この反応は、溶媒夕中で行ってもよく、用いられる溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフランなどエーテル系溶媒が挙げられる。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃~60℃、好ましくは室温である。

【0026】
別法として、一般式(2b)のジアミン誘導体の一方のアミノ基をカルバメート系保護基以外の保護基、例えば、アセチル基などで保護して一般式(2bb)とした後、ローソン試薬などチオ化剤を反応させ、一般式(1a)のチオアミド誘導体を得ることもできる。

【0027】
一般式(1b)のRが水素原子であるチオアミド誘導体は、トリフルオロ酢酸など有機酸や無機酸との塩とすることもできる。

【0028】
<製造法3>
【化7】
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【0029】
「式中、Rは、アルキル基を;R’’は、アルキル基を、R’ ’ ’は、アシル基を、R4aは、環状イミノ基を、ncは、1~6の整数を、それぞれ意味する」

【0030】
一般式(2c)の化合物に一般式(3)のジチオカルボン酸エステルを、反応させることにより一般式(1c)のチオアミドカルボン酸エステル体を得ることができる。この反応は、溶媒夕中で行ってもよく、用いられる溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフランなどエーテル系溶媒が挙げられる。
反応温度は、使用される溶媒により適宜決めればよいが、20℃~60℃、好ましくは室温である。

【0031】
別法として、一般式(2c)の化合物のアミノ基を、例えば、アセチル基などで保護して一般式(2cc)とした後、ローソン試薬などチオ化剤を反応させ、一般式(1c)のチオアミドカルボン酸エステル体を得ることもできる。

【0032】
一般式(1c)のチオアミドカルボン酸エステル体の加水分解反応など脱保護反応に付すことにより、一般式(1ca)のチオアミドカルボン酸体を得ることができる。

【0033】
一般式(1ca)のチオアミドカルボン酸体に、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどの活性化試薬を反応させることにより、一般式(1cb)のチオアミドカルボン酸の活性化体を得ることができる。
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1
【化8】
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【実施例】
【0035】
(1)N-Boc-エチレンジアミン(79μL,0.5mmol)をテトラヒドロフラン0.5mLに溶解し、その溶液にジチオ酢酸エチル(69 μL, 0.6mmol)を滴下して加えた。30分間室温で撹拌した後、分取薄層クロマトグラフィー(PLC)(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製し、無色固体のtert-butyl 2-ethanethioamidoethylcarbamate(化合物1)を108mg得た。
【実施例】
【0036】
1H NMR(400MHz,CDCl3,TMS)δ8.71(brs,1H), 4.98(brs,1H), 3.67(d,J=5.6Hz,2H), 3.43(dd,J=5.6,11.2Hz,2H), 2.55(s,3H), 1.45(s,9H).
HRMS (ESI): calcd for MNa+, C9H18N2O2SNa : 241.0987 ; found 241.0985.
【実施例】
【0037】
(2)tert-butyl 2-ethanethioamidoethylcarbamate (45mg, 0.206mmol)を50%トリフルオロ酢酸/塩化メチレンに溶解し、15分間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し真空乾燥することで、無色油状のN-(2-aminoethyl)ethanethioamide (化合物2 )の2TFA塩を69mg得た。
【実施例】
【0038】
1H NMR (400MHz,CD3OD)δ 3.91(t,J=7.0Hz,2H), 3.21(t,J=7.0Hz,2H), 2.50 (s,3H).
HRMS (ESI): calcd for MH+, C4H11N2S : 119.0643 ; found 119.0637.
【実施例】
【0039】
実施例2
【化9】
JP0006440250B2_000010t.gif
【実施例】
【0040】
(1)グリシンエチルエステル・塩酸塩(140mg, 1mmol)とトリエチルアミン(664μL, 5mmol)をテトラヒドロフラン15mLに加えた後に、ジチオ酢酸エチル(126μL, 1.1mmol)を滴下しながら加え、室温で終夜撹拌した。溶媒を減圧留去し、真空乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて精製し、淡黄色油状の2-エタンチオイミド酢酸エチルエステル(化合物3)を160mg得た。
【実施例】
【0041】
1H NMR (400 MHz,CDCl3)δ 7.75(brs, 1H), 4.37(d,J=4.4Hz,2H), 4.27(q,J=7.2Hz,2H), 2.61 (s,3H), 1.31(t,J=7.2Hz,3H).
HRMS (ESI): calcd for MNa+, C6H11NO2SNa : 184.0408 ; found 184.0403.
【実施例】
【0042】
(2)2-エタンチオイミド酢酸エチルエステル(48mg, 0.3mmol)エタノール1mL に溶解し、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で30分撹拌した。1N塩酸水溶液にて中和後、陽イオン交換樹脂(Dowex 50w x 8)を加えて、室温で10分間静かに撹拌した。樹脂を濾別し、濾液の溶媒を減圧留去後、真空乾燥することで淡黄色固体の2-エタンチオアミド酢酸(化合物4)を33mg(85%)得た。
【実施例】
【0043】
1H NMR (400 MHz,CD3OD)δ 4.34(s, 2H), 2.51 (s,3H).
HRMS (ESI): calcd for [M-H+]-, C4H6NO2S : 132.0119 ; found 132.0122.
【実施例】
【0044】
(3)2-エタンチオアミド酢酸(33mg, 0.25mmol)とN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:35mg, 0.3mmol)を 脱水アセトニトリル5 mLに溶解し、その溶液に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC:71mg, 0.37mmol)を加えて、1時間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去後、残渣に水を加え、クロロホルムで10 回抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去・真空乾燥して、無色固体の2-エタンチオアミド酢酸コハク酸アミドエステル(化合物5 )27mg(47%)得た。
【実施例】
【0045】
1H NMR(400MHz, CD3OD)δ 4.34 (s, 2H), 2.82(s, 4H), 2.51 (s, 3H).
【実施例】
【0046】
実施例3
【化10】
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【実施例】
【0047】
(1)N-Boc-ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(160mg, 0.5mmol)をテトラヒドロフラン1mLに溶解し、その溶液にジチオ酢酸エチル(69μL, 0.6mmol)を滴下して加えた。30分間室温で撹拌した後、分取薄層クロマトグラフィー(PLC)(クロロホルム:メタノール=10:1)にて精製し、淡黄色油状のtert-butyl 2-(2-ethanethioamidoethoxy)ethyl carbamate (化合物6) を188mg得た。
【実施例】
【0048】
1H NMR (400MHz, CDCl3, TMS)δ 8.61(brs,1H), 4.89(brs,1H), 3.51-3.78(m,14H), 3.18-3.25 (m,2H), 2.53(s,3H), 1.91-1.94(m,2H), 1.71-1.76(m,2H), 1.44(s,9H).
HRMS (ESI): calcd for MNa+, C17H34N2O5SNa : 401.2086 ; found 401.2084.
【実施例】
【0049】
(2)化合物6 (206mg, 0.55mmol)を 50%トロフルオロ酢酸/塩化メチレンに溶解し、15分間室温で撹拌した。溶媒を減圧留去し真空乾燥することで、淡黄色油状のN-(2-(2-アミノエトキシ)エチル)エタンチオアミド (化合物7)の二トリフルオロ酢酸塩を276mg得た。
【実施例】
【0050】
1H NMR (400MHz, CD3OD)δ 3.59-3.67 (m,12H), 3.54 (t,J=6.8Hz,2H), 3.08(t,J=6.8Hz,2H), 2.45(s,3H), 1.87-1.94(m,4H).
HRMS (ESI): calcd for MH+, C12H27N2O3S : 279.1742; found 279.1739.
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のチオアミドとスルホニルアジドを基質とする緩和なクリック反応で、スルホニルアミジンが高収率で生成し、容易にアシルスルホンアミドへと変換可能である。また、クリック生成した結合の一部は、アシルスルホンアミドへの変換時に切断され、さらにアシルスルホンアミドもN-アルキル化後に切断可能である。また、生体直交性を有し、水溶液中室温で容易に反応が進行するため、生体系への応用できる。