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明細書 :人工血管の流量調節装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6466120号 (P6466120)
公開番号 特開2016-063889 (P2016-063889A)
登録日 平成31年1月18日(2019.1.18)
発行日 平成31年2月6日(2019.2.6)
公開日 平成28年4月28日(2016.4.28)
発明の名称または考案の名称 人工血管の流量調節装置
国際特許分類 A61F   2/48        (2006.01)
A61F   2/06        (2013.01)
FI A61F 2/48
A61F 2/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2014-193286 (P2014-193286)
出願日 平成26年9月24日(2014.9.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 (1)刊行物名 第67回日本胸部外科学会定期学術集会 発行日 平成26年9月12日 発行所 特定非営利活動法人 日本胸部外科学会
審査請求日 平成29年8月17日(2017.8.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
発明者または考案者 【氏名】根本 慎太郎
【氏名】筒井 康弘
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】寺澤 忠司
参考文献・文献 特開昭61-073668(JP,A)
特表2006-512989(JP,A)
米国特許出願公開第2003/0199806(US,A1)
特開昭61-073645(JP,A)
調査した分野 A61F 2/48
A61F 2/06
特許請求の範囲 【請求項1】
人工血管の流量調節装置であって、
変形性の内壁及び前記内壁よりも剛性が高い難変形性の外壁を備えた連続する筒状のバルーンであって、内壁と外壁により囲まれた液体注入空間を有し、内壁により囲まれる筒状の中心空間を有するバルーン;及び
前記液体注入空間に接続部で接続された可撓性のチューブであって、液体の注入口を備えたチューブ;を備え、
前記中心空間に人工血管を内挿した状態で前記チューブから前記液体注入空間に液体を注入することにより前記内壁が内側に膨らんで人工血管の径を縮小することができる、人工血管の流量調節装置。
【請求項2】
液体を前記液体注入空間に注入することで、バルーン内の液体注入量により内壁の内側への膨張の程度が調節される、請求項1に記載の人工血管の流量調節装置。
【請求項3】
前記バルーンの内壁および外壁は異なる樹脂から形成されている請求項1又は2に記載の流量調節装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血管の流量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
著しい肺動脈狭窄又は閉鎖を合併する先天性心疾患に対し、鎖骨下動脈と肺動脈を人工血管で接続するBlalock-Tausig shunt手術(以下、「BT-shunt」と略す)が行われる。この手術は、肺血流量を増加させることによりチアノーゼ(低酸素血症)改善と肺血管の成長を促す姑息手術であり、将来の心内修復手術を行うまでの準備段階として重要である。BT-shunt術では径3~5mmのポリテトラフルオロエチレン製人工血管(Gore-Tex)が全世界的に用いられている。
【0003】
サイズの決定は原疾患の種類や患児の体格等からなされるが、客観的指標はなく、多くは術者や施設の経験による場合が多い。過大な人工血管移植では肺動脈血流の過多と全身血流の著しい不足による臓器灌流の低下を来しショック状態となるまた、過少な人工血管移植では不十分な肺血流による血液の酸素化不良が生じる。よって、BT-shunt術では適正なサイズの人工血管の設置による最適な肺血流量の確保がポイントである。しかしながら、BT-shunt術における至適血流量の決定方法やその評価についての報告はない。一方、人工血管のサイズは不変であるため患児の体格の成長により人工血管の相対的狭小化から肺血流不足となり、期待する肺動脈の成長が得られないため、心内修復手術を行うまで再BT-shunt術で人工血管のサイズアップ、または追加の人工血管移植を必要とする症例も存在している。
【0004】
特許文献1は、BT-shuntの人工血管内に流量調節機構を設けているため、流量の調節が非常に複雑になる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】米国特許第5,662,711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、BT-shunt術における人工血管の血流量と患児の体格の不適合に伴う不具合を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み検討を重ねた結果、人工血管内の流量を調節する装置を用いることで人工血管サイズに関連した課題が解決できることを見出した。本発明は、以下の人工血管の流量調節装置を提供するものである。
(1) 液体注入空間を形成する易変形性の内壁及び難変形性の外壁を備えた筒状のバルーン及び前記液体注入空間に接続部で接続された可撓性のチューブを備え、前記チューブは液体の注入口を備え、前記バルーンは内壁により囲まれる筒状の中心空間を有し、前記中心空間に人工血管を内挿した状態で前記チューブから前記液体注入空間に液体を注入することにより前記内壁が内側に膨らんで人工血管の径を縮小することができる、人工血管の流量調節装置。
(2) 液体を前記液体注入空間に注入することで、バルーン内の液体注入量により内壁の内側への膨張の程度が調節される、(1)に記載の人工血管の流量調節装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の装置の人工血管への装着により、任意の人工血管流量の調節が任意に可能となり、BT-shunt術から心内修復術までの全期間で適切な人工血管流量=肺動脈血流量の維持による手術成績の向上と再手術の回避が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)チューブ4の折れ曲がりを防ぐ螺旋状の構造、(b)チューブ4が曲がったときの状態、(c)バルーン2に人工血管8を装着したときの状態。
【図2】(a)本発明の人工血管の流量調節装置、(b)流量調節装置1に皮下ポート9を接続したときの図、(c)バルーン2に人工血管を装着し、皮下ポート9を接続する前の図。バルーンに人工血管を内挿したときのチューブの接続部周辺の一部切り欠き断面図
【図3】バルーンとチューブの接続部周辺の断面図
【図4】バルーン容量と人工血管を通る流速についての血流回路シミュレーションの結果を示す。
【図5】ビーグル犬移植実験における、超音波ドップラー検査を用いた流速測定。
【図6】ビーグル犬移植3ヶ月後のカフ160μl(拡張状態)とカフ0 ml(収縮13分後)の結果
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の人工血管の流量調節装置1の概略を図1~3に示す。この流量調節装置1は、筒状のバルーン2と前記バルーンに接続部3を介して接続された可撓性のチューブ4を備えている。バルーン2とチューブ4の接続部3は、これらを接着剤で接着して構成されている。接着剤としては、例えばウレタン系接着剤が挙げられるが、バルーンとチューブの接着に適した接着剤であれば、任意に選択できる。

【0011】
チューブ4の一端に液体の注入口5が設けられ、この注入口5に皮下ポートを接続することができる。

【0012】
バルーン2は内壁2aと外壁2bにより囲まれた液体注入空間6を有している。バルーン2の内壁2aの内側には内壁2aに囲まれた筒状の中心空間7が形成されている。人工血管8は前記中心空間7内において内壁2aに密着するように内挿される。人工血管8は、内壁2aに密着した状態でBT-shunt術に使用される。人工血管8は、BT-shunt術において両端が血管と縫合されるため、バルーン2から両端がはみ出している。人工血管8は特に制限されず、公知の人工血管が広く使用され、例えばポリテトラフルオロエチレン製人工血管(Gore-Tex)などが挙げられる。人工血管8の径は、例えば3~5mm程度のものが用いられるが、本発明の人工血管の流量調節装置1はバルーン2の内壁2aを内側に膨らませることにより、内側に嵌めた人工血管の径を縮小することで流量を調節するので、人工血管の径が大きめであれば径の調節が可能である。従って、人工血管は径が大きめのものを選択することが望ましい。

【0013】
人工血管の径は、5mm、4mm、3.5mm等のサイズのものが市販されているので、これに合わせ、バルーンデバイスも各種サイズをラインアップすることができる。

【0014】
注射器などを用いて前記注入口5に接続された皮下ポート9のポート本体9aに液体を注入すると、注入された液体はチューブ4を通ってバルーン2の液体注入空間6に徐々に流入し、液体注入空間6は液体で満たされる。液体としては、特に限定されないが、水を含む水性液体が好ましく、例えば生理食塩水などが挙げられる。液体注入空間6の内部の液体注入量が増加するにつれて内壁2aが内側に膨らんで液体注入空間6の体積を大きくし、人工血管8の径を縮小し、人工血管8の血流量が低下される。皮下ポートから注射器などにより液体が抜き出されると、液体注入空間6の体積が縮小し、人工血管の径を拡張することで人工血管8の血流量を増加できる。このように、皮下ポート9のポート本体9a内の液体量を注射器などにより調節することで、BT-shunt術で体内に埋め込まれた人工血管の径及び血流量を容易に調節できる。

【0015】
バルーン2は円筒状の形状を有し、バルーン2の液体注入空間は径の小さい内壁と径の大きい外壁から構成されている。内壁は、液体を液体注入空間6に皮下ポートから注入することで内側に膨らむのに十分な変形性(可撓性、柔軟性、伸縮性)を有していればよく、例えば低硬度ポリウレタンなどの柔軟性樹脂が挙げられる。バルーン2の外壁2bは、内壁2aよりも剛性が高く、内壁2aが変形する程度の液体注入量でほとんど或いは全く変形しない(外側に膨らまない)ものであれば特に限定されず、例えば高硬度ポリウレタンなどの高強度樹脂が挙げられる。内壁2aは全体が変形性の樹脂であってもよいが、人工血管の径/血流量の調節が行われる範囲内で、一部が外壁2bと同様な高強度の樹脂であってもよい。

【0016】
チューブ4は一部が体内に存在するので、可撓性の素材であるのが好ましい。チューブが生体内で折れると液体の注入が妨げられるので、図1aに示されるようにチューブ4に螺旋構造を付与するのがよい。螺旋構造のチューブ4は、柔軟性を確保しつつ耐キンク性、耐つぶれ性を向上することができる。

【0017】
液体の注入口5は皮下ポート9に接続すればよく、このポートに液体を注入することで、人工血管8の径を調節することができる。

【0018】
本発明の好ましい実施形態では、人工血管(Gore-Tex)8の周囲にバルーンを巻き、皮下ポート9と接続する。皮下ポート9のポート本体9aから液体を出し入れすることでバルーン2の内壁2aが伸縮し、バルーン2に圧迫された人工血管内腔の断面積が変化することで、人工血管8の流量変化を可能とする。これにより、特別な装置や習得する技術なしに、かつ、場所を選ばずに医師が人工血管の至適流量を調節することが可能となる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
実施例1
バルーンの内壁が低硬度ポリウレタン、外壁が高硬度ポリウレタン、チューブがポリウレタン、チューブとバルーンの接着剤がポリウレタン系である人工血管の流量調節装置を作製し、シミュレーション回路(遠心ポンプ駆動)で試験した。図4に示すバルーン内容量を可変した圧-流量の関係を認めた。また、現在BT-shunt術に使用されている人工血管(Gore-Tex)は、径3.5mm、径4mm、径5mmであるが、径5mmの人工血管に本デバイスを装着し、バルーンの内容量を調整することで径3.5mm、径4mmの人工血管に匹敵する流量を再現可能であった(図4右側の2つのチェック)。
【実施例】
【0020】
実施例2
実施例1で用いたものと同じ人工血管の流量調節装置をビーグル犬の右側頸動脈に移植する実験を行った。超音波ドップラー検査を用いて流速を測定したところ、バルーン内容量を図5の(1)→(2)→(3)の順で変化させたところ、血管内流速の変化=血管内流量の変化を認めた。
【実施例】
【0021】
さらに、バルーンを3ヶ月にわたって拡張させた後にバルーンから生理食塩水を抜き、収縮・虚脱させると流速は上昇した(図6)。
【実施例】
【0022】
本発明の人工血管の流量調節装置は、急性期だけでなく3ヶ月後の時点でも経皮的にバルーンの拡張度を調整でき、人工血管血流量を調整できることが示された。
【符号の説明】
【0023】
1 流量調節装置
2 バルーン
2a 内壁
2b 外壁
3 接続部
4 チューブ
5 注入口
6 液体注入空間
7 中心空間
8 人工血管
9 皮下ポート
9a ポート本体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5