TOP > 国内特許検索 > 診断支援装置及びコンピュータプログラム > 明細書

明細書 :診断支援装置及びコンピュータプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6484787号 (P6484787)
公開番号 特開2016-116605 (P2016-116605A)
登録日 平成31年3月1日(2019.3.1)
発行日 平成31年3月20日(2019.3.20)
公開日 平成28年6月30日(2016.6.30)
発明の名称または考案の名称 診断支援装置及びコンピュータプログラム
国際特許分類 A61B   5/02        (2006.01)
A61B   5/0215      (2006.01)
A61B   8/08        (2006.01)
FI A61B 5/02 A
A61B 5/0215 B
A61B 8/08
請求項の数または発明の数 12
全頁数 22
出願番号 特願2014-257189 (P2014-257189)
出願日 平成26年12月19日(2014.12.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 日本小児循環器学会により平成26年6月20日付で頒布された、日本小児循環器学会雑誌第30巻Supplement第s235頁に掲載されている第50回日本小児循環器学会総会・学術集会予稿集において、抄録「波動解析法を応用した”肺動脈閉塞度を評価する”新しい肺循環評価法の開発(第1報)」が公開され、平成26年7月4日に開催された第50回日本小児循環器学会総会・学術集会において、「波動解析法を応用した”肺動脈閉塞度を評価する”新しい肺循環評価法の開発(第1報)」が発表された。平成26年10月17日付で、第34回日本小児循環動態研究会学術集会のプログラムが発送され、同年10月26日、第34回日本小児循環動態研究会学術集会において、「肺動脈閉塞度の新たな評価方法の開発」が発表された。
審査請求日 平成29年11月24日(2017.11.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
発明者または考案者 【氏名】宇津野 秀夫
【氏名】根本 慎太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100125645、【弁理士】、【氏名又は名称】是枝 洋介
【識別番号】100166774、【弁理士】、【氏名又は名称】右田 敏之
審査官 【審査官】清水 裕勝
参考文献・文献 特開2007-029137(JP,A)
特表2005-523064(JP,A)
特表2012-501703(JP,A)
特表2005-533577(JP,A)
特開2013-169464(JP,A)
特開2013-106641(JP,A)
特表2010-521267(JP,A)
米国特許出願公開第2007/0293760(US,A1)
国際公開第2014/192504(WO,A1)
調査した分野 A61B 5/00-5/03
A61B 8/00-8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者の血圧脈波の位相を反映する第1位相情報を取得する第1位相情報取得部と、
前記被験者の血流速の位相を反映する第2位相情報を取得する第2位相情報取得部と、
前記第1位相情報取得部によって取得された前記第1位相情報と、前記第2位相情報取得部によって取得された前記第2位相情報とによって得られる前記血圧脈波と前記血流速との位相差に基づき、血管の閉塞に関する診断支援情報を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記診断支援情報を出力する出力部と、
を備える、
診断支援装置。
【請求項2】
前記第1位相情報取得部及び前記第2位相情報取得部は、前記被験者の血管の同一箇所において前記第1位相情報及び前記第2位相情報を取得するように構成されている、
請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管の一の箇所における前記第1位相情報を取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記一の箇所とは異なる箇所であって、且つ、前記一の箇所からの距離が1m未満の箇所における前記第2位相情報を取得するように構成されている、
請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記第1位相情報取得部は、所定期間において前記被験者の血圧脈波を連続測定することによって得られた測定値を前記第1位相情報として取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記所定期間において前記被験者の血流速を連続測定することによって得られた測定値を前記第2位相情報として取得するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記被験者の血管に挿入されるカテーテルと、
前記カテーテルの先端に取り付けられ、前記血管の内部に配置される圧力センサと、
前記カテーテルの先端に取り付けられ、前記血管の内部に配置される流速センサと、
をさらに備え、
前記第1位相情報取得部は、前記圧力センサによる前記被験者の血圧脈波の測定値を取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記流速センサによる前記被験者の血流速の測定値を取得するように構成されている、
請求項4に記載の診断支援装置。
【請求項6】
前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第1位相情報として取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心臓の拍出速度の位相を反映した情報を前記第2位相情報として取得するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の診断支援装置。
【請求項7】
前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第1位相情報として取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心室の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第2位相情報として取得するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載の診断支援装置。
【請求項8】
前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の動画像に基づいて、前記第1位相情報を取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心臓の動画像に基づいて、前記第2位相情報を取得するように構成されている、
請求項7に記載の診断支援装置。
【請求項9】
前記第1位相情報取得部は、超音波測定により得られた前記被験者の血管壁の動画像に基づいて、前記第1位相情報を取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、超音波測定により得られた前記被験者の心臓の動画像に基づいて、前記第2位相情報を取得するように構成されている、
請求項8に記載の診断支援装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記血管の閉塞度を示す前記診断支援情報を生成するように構成されている、
請求項1乃至9の何れかに記載の診断支援装置。
【請求項11】
前記第1位相情報取得部は、肺動脈における血圧脈波の位相を反映する前記第1位相情報を取得するように構成されており、
前記第2位相情報取得部は、肺動脈における血流速の位相を反映する前記第2位相情報を取得するように構成されており、
前記生成部は、肺動脈閉塞に関する前記診断支援情報を生成するように構成されている、
請求項1乃至9の何れかに記載の診断支援装置。
【請求項12】
血管の閉塞に関する診断支援をコンピュータが行うためのコンピュータプログラムであって、
被験者の血圧脈波の位相を反映する第1位相情報を取得するステップと、
前記被験者の血流速の位相を反映する第2位相情報を取得するステップと、
取得された前記第1位相情報と、取得された前記第2位相情報とによって得られる前記血圧脈波と前記血流速との位相差に基づき、血管の閉塞に関する診断支援情報を生成するステップと、
生成された前記診断支援情報を出力するステップと、
を前記コンピュータに実行させる、
コンピュータプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の閉塞に関する診断を支援するための診断支援装置、診断支援方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症の原因には肺動脈閉塞と心室中隔欠損とがあり、これらを弁別することが臨床上重要である。従来の弁別方法は、肺高血圧症の患者(被験者)の心臓にカテーテルを挿入して右心室の血液サンプルを抽出し、血中酸素濃度を測定することにより、医師が心室中隔欠損の有無を判断し、心室中隔欠損でなければ肺動脈閉塞と判断していた。また、非特許文献1には、心エコー検査と肺血圧抵抗(Pulmonary Vascular Resistance:PVR)の測定値とを用いて、肺高血圧症を評価する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】キンバリー・B・ウレット(Kimberly B. Ulett)、トーマス・H・マーウィック(Thomas H. Marwick)著、"Incorporation of Pulmonary Vascular Resistance Measurement into Standard Echocardiography:Implications for Assessment of Pulmonary"、エコカーディオグラフィー:ア・ジャーナル・オブ・CVウルトラサウンド・アンド・アライド・テック(ECHOCARDIOGRAPHY: A Jrnl. of CV Ultrasound & Allied Tech.)、ブラックウェル・パブリッシング・インコーポレーテッド(Blackwell Publishing, Inc.)、2007年、第24巻(Vol.24)、第10号(No.10)、p.1020-1022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の方法では、血管の閉塞を正確に評価することはできない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる診断支援装置、診断支援方法、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の診断支援装置は、被験者の血圧脈波の位相を反映する第1位相情報を取得する第1位相情報取得部と、前記被験者の血流速の位相を反映する第2位相情報を取得する第2位相情報取得部と、前記第1位相情報取得部によって取得された前記第1位相情報と、前記第2位相情報取得部によって取得された前記第2位相情報とによって得られる前記血圧脈波と前記血流速との位相差に基づき、血管の閉塞に関する診断支援情報を生成する生成部と、前記生成部によって生成された前記診断支援情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
この態様において、前記第1位相情報取得部及び前記第2位相情報取得部は、前記被験者の血管の同一箇所において前記第1位相情報及び前記第2位相情報を取得するように構成されていてもよい。
【0008】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管の一の箇所における前記第1位相情報を取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記一の箇所とは異なる箇所であって、且つ、前記一の箇所からの距離が1m未満の箇所における前記第2位相情報を取得するように構成されていてもよい。
【0009】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、所定期間において前記被験者の血圧脈波を連続測定することによって得られた測定値を前記第1位相情報として取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記所定期間において前記被験者の血流速を連続測定することによって得られた測定値を前記第2位相情報として取得するように構成されていてもよい。
【0010】
上記態様において、前記診断支援装置は、前記被験者の血管に挿入されるカテーテルと、前記カテーテルの先端に取り付けられ、前記血管の内部に配置される圧力センサと、前記カテーテルの先端に取り付けられ、前記血管の内部に配置される流速センサと、をさらに備え、前記第1位相情報取得部は、前記圧力センサによる前記被験者の血圧脈波の測定値を取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記流速センサによる前記被験者の血流速の測定値を取得するように構成されていてもよい。
【0011】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第1位相情報として取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心臓の拍出速度の位相を反映した情報を前記第2位相情報として取得するように構成されていてもよい。
【0012】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第1位相情報として取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心室の拡張収縮の位相を反映した情報を前記第2位相情報として取得するように構成されていてもよい。
【0013】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、前記被験者の血管壁の動画像に基づいて、前記第1位相情報を取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、前記被験者の心臓の動画像に基づいて、前記第2位相情報を取得するように構成されていてもよい。
【0014】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、超音波測定により得られた前記被験者の血管壁の動画像に基づいて、前記第1位相情報を取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、超音波測定により得られた前記被験者の心臓の動画像に基づいて、前記第2位相情報を取得するように構成されていてもよい。
【0015】
上記態様において、前記生成部は、前記血管の閉塞度を示す前記診断支援情報を生成するように構成されていてもよい。
【0016】
上記態様において、前記第1位相情報取得部は、肺動脈における血圧脈波の位相を反映する前記第1位相情報を取得するように構成されており、前記第2位相情報取得部は、肺動脈における血流速の位相を反映する前記第2位相情報を取得するように構成されており、前記生成部は、肺動脈閉塞に関する前記診断支援情報を生成するように構成されていてもよい。
【0018】
本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、血管の閉塞に関する診断支援をコンピュータが行うためのコンピュータプログラムであって、被験者の血圧脈波の位相を反映する第1位相情報を取得するステップと、前記被験者の血流速の位相を反映する第2位相情報を取得するステップと、取得された前記第1位相情報と、取得された前記第2位相情報とによって得られる前記血圧脈波と前記血流速との位相差に基づき、血管の閉塞に関する診断支援情報を生成するステップと、生成された前記診断支援情報を出力するステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、血管の閉塞を正確に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1に係る診断支援装置の構成を示す模式図。
【図2】データ処理部の構成を示すブロック図。
【図3】肺動脈の構成を模式的に示す図。
【図4】血管閉塞評価処理の手順を示すフローチャート。
【図5】血圧脈波及び血流速の位相角と血管の閉塞度との関係を示すグラフ。
【図6】診断支援情報の表示画面例を示す図。
【図7】実験モデルの構成を示す図。
【図8A】両端を開放した場合の分岐手前の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図8B】両端を開放した場合の分岐後の一方の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図8C】両端を開放した場合の分岐後の他方の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図9A】両端を開放した場合の分岐手前の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図9B】両端を開放した場合の分岐後の一方の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図9C】両端を開放した場合の分岐後の他方の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図10A】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐手前の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図10B】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐後の一方の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図10C】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐後の他方の評価点における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフ。
【図11A】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐手前の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図11B】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐後の一方の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図11C】一端を閉塞し、他端を開放した場合の分岐後の他方の評価点における圧力及び流速の実測値を示すグラフ。
【図12】実施の形態2に係る診断支援装置及びその周辺の構成を示す模式図。
【図13】実施の形態2に係る診断支援装置の構成を示すブロック図。
【図14】血管閉塞評価処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。

【0022】
(実施の形態1)
<診断支援装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る診断支援装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、診断支援装置100は、カテーテル10と、圧力センサ11と、流速センサ12と、信号処理部20と、データ処理部30とを備えている。

【0023】
カテーテル10の先端に、小型の圧力センサ11及び流速センサ12が取り付けられている。カテーテル10は、被験者の肺大動脈に経皮的に挿入される。圧力センサ11及び流速センサ12は、信号処理部20に接続されている。圧力センサ11は、肺大動脈における血圧脈波を測定し、測定値を信号処理部20に出力する。流速センサ12は、肺大動脈における血流速を測定し、測定値を信号処理部20に出力する。圧力センサ11と流速センサ12とは、圧力脈波と血流速とをそれぞれ同時に測定する。

【0024】
信号処理部20は、データ処理部30に接続されている。信号処理部20は、圧力センサ11及び流速センサ12の出力信号を処理し、デジタル信号としてデータ処理部30に出力する。

【0025】
図2は、データ処理部30の構成を示すブロック図である。データ処理部30は、コンピュータ3によって実現される。図2に示すように、コンピュータ3は、本体31と、入力部32と、表示部33とを備えている。本体31は、CPU311、ROM312、RAM313、ハードディスク314、入出力インタフェース315、及び画像出力インタフェース316を備えており、CPU311、ROM312、RAM313、ハードディスク314、入出力インタフェース315、及び画像出力インタフェース316は、バスによって接続されている。

【0026】
CPU(Central Processing Unit)311は、RAM313にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。診断支援用のコンピュータプログラム310をCPU311が実行することにより、コンピュータ3がデータ処理部30として機能する。

【0027】
コンピュータプログラム310は、肺動脈の血管閉塞度を演算し、診断支援情報を出力するためのものである。

【0028】
ROM(Read Only Memory)312には、CPU311に実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。

【0029】
RAM(Random Access Memory)313は、ハードディスク314に記録されているコンピュータプログラム310の読み出しに用いられる。また、CPU311がコンピュータプログラムを実行するときに、CPU311の作業領域として利用される。

【0030】
ハードディスク314は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU311に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。コンピュータプログラム310も、このハードディスク314にインストールされている。

【0031】
入出力インタフェース315は、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース315には、キーボード及びマウスからなる入力部32が接続されており、ユーザが当該入力部32を使用することにより、コンピュータ3にデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース315には、信号処理部20が接続されている。

【0032】
画像出力インタフェース316は、LCD(Liquid Crystal Display)またはCRT(Cathode Ray Tube)等で構成された表示部33に接続されており、CPU311から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部33に出力するようになっている。表示部33は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。

【0033】
<血管の閉塞に関する評価の原理>
以下、診断支援装置100による血管の閉塞に関する評価原理について説明する。

【0034】
血管脈波の伝搬において、脈波圧力変動をp(t)、血流速変動をu(t)、両者の比をインピーダンスzとすると、次式が成り立つ。
【数1】
JP0006484787B2_000002t.gif

【0035】
インピーダンスzは圧力と流速変動の評価点、即ち、血圧脈波及び血流速の測定位置から、血流方向下流側の閉塞状況に関する条件であり、管路末端の境界条件が含まれる。

【0036】
管路末端が無反射端の場合、次式が成り立つ。
【数2】
JP0006484787B2_000003t.gif
ここで、ρは血液の密度、cは脈波の伝搬速度を表す。

【0037】
無反射端の場合、インピーダンスzは実数である。血管に閉塞のない健常者では、血管が末梢に向かって細分化されていき、粘性による血管壁と血液との摩擦によって反射波が戻ってこない。したがって、閉塞が生じていない血管については、境界条件が無反射に近くなる。

【0038】
一方、末端が完全に閉塞した管路では、圧力波及び流速変動の両方が端部で反射して上流側に伝わる。かかる閉塞した血管では、閉塞により血流がなくなり、さらに閉塞部での反射により局所的に逆流が生じる。評価点から末端までの距離をLとすると、インピーダンスzは次式で表される。
【数3】
JP0006484787B2_000004t.gif
ここで、ωは角速度を表す。脈波の周波数をf[Hz]とすると、ω=2πfの関係にある。完全閉塞の場合、インピーダンスzは純虚数となる。

【0039】
健常者、即ち管路が無反射端の場合、インピーダンスzは実数であり、血圧脈波と血流速変動とは同位相、即ち位相差が0度となる。完全閉塞の場合、インピーダンスzは純虚数であり、血圧脈波と血流速変動とには90度の位相差が生じる。一部閉塞の場合、閉塞の程度に応じて0度と90度との間の値を取る。

【0040】
以上より、血管の同一点(評価点)で脈波圧力変動p(t)と血流速変動u(t)とを同時測定し、両者の位相差を調べることで、評価点より血流方向下流側の血管の閉塞状況を評価することができる。なお、位相特性がそろった計測器により、脈波圧力変動p(t)の計測器と、血流速変動u(t)とを測定することが好ましい。

【0041】
<診断支援装置の動作>
本診断支援装置を使用する場合、医師が被験者の内頸静脈から肺動脈にカテーテル10を挿入する。カテーテル10の先端が位置する部位における血圧脈波が圧力センサ11によって検出され、同一部位における血流速が流速センサ12によって検出される。

【0042】
医師は、肺動脈の閉塞を評価したい部位に応じて、カテーテル10を挿入する位置、即ち、圧力センサ11及び流速センサ12を配置する評価点を選択することができる。図3は、肺動脈の構成を模式的に示す図である。肺動脈は、心臓に繋がる主肺動脈から血流方向下流側に向かって、右肺動脈と左肺動脈とに分岐し、さらに右肺動脈が上葉肺動脈と中葉肺動脈と下葉肺動脈とに分岐し、左肺動脈が上葉肺動脈と下葉肺動脈とに分岐する。

【0043】
上述したように、評価点から血流方向下流側の閉塞状況を評価することができる。したがって、医師は、肺動脈全体を評価したい場合には、主肺動脈中の評価点40を選択すればよく、肺全体を評価したい場合には、主肺動脈中の評価点40を選択すればよく、右肺全体を評価したい場合には、右肺動脈中の評価点41を選択すればよく、左肺全体を評価したい場合には、左肺動脈中の評価点42を選択すればよく、右上葉、右中葉、右下葉の何れかを評価したい場合には、右肺の上葉肺動脈中の評価点43、中葉肺動脈中の評価点44、下葉肺動脈中の評価点45の何れかを選択すればよく、左上葉、左下葉の何れかを評価したい場合には、左肺の上葉肺動脈中の評価点46、下葉肺動脈中の評価点47の何れかを選択すればよい。

【0044】
圧力センサ11は、所定期間(例えば、1分間)の血圧脈波を連続測定し、測定信号を出力する。流速センサ12は、圧力センサ11と同一期間の血流速を連続測定し、測定信号を出力する。信号処理部20は、測定信号のノイズを除去し、A/D変換を行って、血圧脈波及び血流速の時系列データを出力する。

【0045】
図4は、データ処理部30における血管閉塞評価処理の手順を示すフローチャートである。

【0046】
CPU311は、信号処理部20から出力された血圧脈波データを第1位相情報として取得し(ステップS101)、血流速データを第2位相情報として取得する(ステップS102)。

【0047】
次に、CPU311は、血圧脈波データから血圧脈波の位相を抽出し、血流速データから血流速の位相を抽出する(ステップS103)。この処理では、フーリエ変換、ヒルベルト変換等の公知の周波数解析手法を用いることができる。

【0048】
次に、CPU311は、血圧脈波と血流速との位相差を算出する(ステップS104)。

【0049】
次に、CPU311は、位相差から血管の閉塞度の推定値を診断支援情報として生成する(ステップS105)。

【0050】
図5は、血圧脈波及び血流速の位相角と血管の閉塞度との関係を示すグラフである。図5に示すように、位相差と閉塞度とは一対一に対応する。この対応関係は、予めハードディスク314に記憶されている。この場合、ステップS105では、CPU311が、ハードディスク314に記憶された対応関係のデータを参照し、位相差から血管の閉塞度を推定する。

【0051】
再び図4を参照する。次に、CPU311は、生成した診断支援情報を表示部33に出力し(ステップS106)、処理を終了する。

【0052】
図6は、診断支援情報の表示画面例を示す図である。図6に示すように、表示部33には、診断支援情報として血管の閉塞度の推定値51を含む画面50が表示される。これにより、医師は、被験者の肺動脈の閉塞度の推定値を得ることができ、この推定値を用いて肺高血圧症の診断を行うことができる。また、診断支援装置100で得られる肺動脈の閉塞状況に関する診断支援情報は、肺高血圧症を生じる疾患である特発性肺高血圧症、慢性肺動脈塞栓症、膠原病、慢性肺線維症の診断に有用である。

【0053】
<診断支援装置の性能評価>
発明者らは、実施の形態1に係る診断支援装置100の性能を評価するための実験を行った。以下、性能評価実験について説明する。

【0054】
発明者らは、肺動脈を模した実験モデルを用いて実験を行った。図7は、実験モデルの構成を示す図である。実験モデル60は、分岐点63において二股に分かれるシリコンチューブによって構成されている。シリコンチューブは、血管と同様に柔軟性を有する。分岐した先の両端61,62では、閉塞したり開放したりすることによって境界条件を変更可能とされている。また、実験モデル60の管路の分岐側とは反対側の端部64には、ピストン65が挿入される。分岐点63と端部64との中間位置に置いても管路が分岐しており、分岐先の端部66がセンサ投入口とされる。実験モデルの大きさは、図示の寸法どおりである(単位はmm)。

【0055】
実験では、シミュレーションモデルを用いた数値演算と、上記の実験モデルを用いた実測実験とを実施した。シミュレーションモデルでは、実験モデルと同様の構成の管路を数式により表現したシミュレーションモデルをコンピュータで構築し、数値演算を行った。実測実験では、上述した実験モデル60に粘性のある液体を充填し、ピストン65によって端部64側を加振させ、分岐手前の評価点671と、分岐後の一方の評価点672と、分岐後の他方の評価点673とのそれぞれにおいて、圧力及び流速を測定した。数値演算及び実測実験の両方において、「両端を開放した場合」、「一端を閉塞し、他端を開放した場合」のそれぞれの境界条件について、実験を行った

【0056】
[両端を開放した場合]
開放した端部は、無反射端に相当する。図8Aは、分岐手前の評価点671における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフであり、図8Bは、分岐後の一方の評価点672における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフであり、図8Cは、分岐後の他方の評価点673における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフである。各図において、縦軸は正規化した圧力及び流速のレベルを、横軸は時間を示す。

【0057】
図8A乃至図8Cに示すように、圧力の波形と流速の波形は完全に一致し、1つの波形として表れている。つまり、両端を開放した場合、全ての評価点671,672,673において、数値演算された圧力と流速の波形の位相がそろっていた。

【0058】
図9Aは、分岐手前の評価点671における圧力及び流速の実測値を示すグラフであり、図9Bは、分岐後の一方の評価点672における圧力及び流速の実測値を示すグラフであり、図9Cは、分岐後の他方の評価点673における圧力及び流速の実測値を示すグラフである。各図において、縦軸は正規化した圧力及び流速のレベルを、横軸は時間を示す。また、実線は圧力を、破線は流速を示す。

【0059】
図9Aに示すように、両端を開放した場合、評価点671において、実測された圧力と流速の波形の位相がそろっていた。また、図9B、図9Cに示すように、評価点672における実測値、及び評価点673における実測値についても、評価点671と同様の傾向が見られた。

【0060】
[一端を閉塞し、他端を開放した場合]
閉塞した端部は、剛壁に相当する。図10Aは、分岐手前の評価点671における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフであり、図10Bは、分岐後の一方の評価点672における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフであり、図10Cは、分岐後の他方の評価点673における圧力及び流速の数値演算結果を示すグラフである。各図において、縦軸は正規化した圧力及び流速のレベルを、横軸は時間を示す。また、実線は圧力を、破線は流速を示す。

【0061】
図10Aに示すように、分岐先の一端を閉塞し、他端を開放した場合には、分岐手前の評価点671において、数値演算された圧力及び流速の位相が少しずれていた。また、図10Bに示すように、閉塞側の評価点672において、数値演算された圧力及び流速の位相差は90度であった。その一方、図10Cに示すように、開放側の評価点673においては、圧力の波形と流速の波形が完全に一致し、1つの波形として表れている。つまり、数値演算された圧力と流速の波形の位相がそろっていた。

【0062】
図11Aは、分岐手前の評価点671における圧力及び流速の実測値を示すグラフであり、図11Bは、分岐後の一方の評価点672における圧力及び流速の実測値を示すグラフであり、図11Cは、分岐後の他方の評価点673における圧力及び流速の実測値を示すグラフである。各図において、縦軸は正規化した圧力及び流速のレベルを、横軸は時間を示す。また、実線は圧力を、破線は流速を示す。

【0063】
図11Aに示すように、分岐先の一端を閉塞し、両端を開放した場合、評価点671において、実測された圧力と流速の波形の位相がすこしずれていた。また、図11Bに示すように、閉塞側の評価点672における実測値については、圧力及び流速の位相が大きくずれていた。その一方で、図11Cに示すように、開放側の評価点673における実測値については、圧力及び流速の位相がそろっていた。

【0064】
以上のように、数値演算結果と実測結果とがよく一致しており、圧力及び流速の位相差によって、下流側の閉塞状況を十分に評価可能であることがわかった。

【0065】
<臨床実験>
複数の被験者の主肺動脈、右肺動脈、及び左肺動脈のそれぞれにおいて、血圧脈波と血流速とを測定し、位相角を調べる実験を行った。実験では、被験者の血圧脈波及び血流速を測定した期間を10に分割し、分割された各期間で位相角を求めた。

【0066】
被験者1についての解析結果を下表に示す。左の表は、右肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、中央の表は、主肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、右の表は、左肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示す。以下において、「番号」とは、分割された期間の番号である。
【表1】
JP0006484787B2_000005t.gif

【0067】
解析の結果、被験者1については、右肺動脈、主肺動脈、左肺動脈の何れについても、血圧脈波と血流速との位相差がほとんどなかった。したがって、被験者1の肺動脈は正常であり、狭窄はないと推定される。

【0068】
被験者2についての解析結果を下表に示す。左の表は、右肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、中央の表は、主肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、右の表は、左肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示す。
【表2】
JP0006484787B2_000006t.gif

【0069】
解析の結果、被験者2については、右肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角が約32度であり、左肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角が約22度であった。また、主肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角はばらつきが大きかった。右肺動脈及び左肺動脈における位相差が大きく、このことから、被験者2の肺動脈はかなり狭窄していると推定される。

【0070】
被験者3についての解析結果を下表に示す。左の表は、右肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、中央の表は、主肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、右の表は、左肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示す。
【表3】
JP0006484787B2_000007t.gif

【0071】
解析の結果、被験者3については、右肺動脈における位相角が約15度、主肺動脈における位相角が約21度、左肺動脈における位相角が約26度であった。このことから、被験者3の肺動脈はかなり狭窄していると推定される。

【0072】
被験者4についての解析結果を下表に示す。左の表は、右肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、中央の表は、主肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示し、右の表は、左肺動脈における血圧脈波と血流速との位相角を示す。
【表4】
JP0006484787B2_000008t.gif

【0073】
解析の結果、被験者4については、右肺動脈における位相角が約59度であり、主肺動脈における位相角が約50度であり、左肺動脈における位相角が約65度であった。それぞれの位相差は非常に大きく、被験者3の肺動脈の閉塞度は非常に高いと推定される。

【0074】
(実施の形態2)
<診断支援装置の構成>
図12は、実施の形態2に係る診断支援装置及びその周辺の構成を示す模式図である。図12に示すように、診断支援装置200は、2つの超音波測定装置300及び400のそれぞれと接続される。

【0075】
超音波測定装置300及び400は、医療用の超音波検査装置である。超音波測定装置300は、超音波プローブ301と、データ解析部302とを備え、超音波測定装置400は、超音波プローブ401と、データ解析部402とを備える。超音波プローブ301及び401は、被験者の身体に当てて使用される。超音波プローブ301及び401は、被験者の身体に当接された状態で超音波を発生させ、反射した超音波を受信し、画像データを生成する。画像データは、データ解析部302及び402に出力され、画像処理が施された後、データ解析部302及び402に設けられた表示部に動画像として表示される。

【0076】
図13は、診断支援装置200の構成を示すブロック図である。診断支援装置200は、コンピュータ201によって実現される。図13に示すように、コンピュータ201は、本体210と、入力部220と、表示部230とを備えている。本体210は、CPU211、ROM212、RAM213、ハードディスク214、入出力インタフェース215、及び画像出力インタフェース216を備えており、CPU211、ROM212、RAM213、ハードディスク214、入出力インタフェース215、及び画像出力インタフェース216は、バスによって接続されている。

【0077】
CPU211は、RAM213にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。診断支援用のコンピュータプログラム240をCPU211が実行することにより、コンピュータ201が診断支援装置200として機能する。

【0078】
コンピュータプログラム240は、肺動脈の血管閉塞度を演算し、診断支援情報を出力するためのものである。

【0079】
ROM212には、CPU211に実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。

【0080】
RAM213は、ハードディスク214に記録されているコンピュータプログラム240の読み出しに用いられる。また、CPU211がコンピュータプログラムを実行するときに、CPU211の作業領域として利用される。

【0081】
ハードディスク214は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU211に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。コンピュータプログラム240も、このハードディスク214にインストールされている。

【0082】
入出力インタフェース215は、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又は IEEE1284等のパラレルインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース215には、キーボード及びマウスからなる入力部220が接続されており、ユーザが当該入力部220を使用することにより、コンピュータ201にデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース215には、超音波測定装置300及び400が接続されている。

【0083】
画像出力インタフェース216は、LCDまたはCRT等で構成された表示部230に接続されており、CPU211から与えられた画像データに応じた映像信号を表示部230に出力するようになっている。表示部230は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。

【0084】
<血管の閉塞に関する評価の原理>
以下、診断支援装置200による血管の閉塞に関する評価原理について説明する。

【0085】
脈波圧力変動p(t)が生じると、血管の半径も変化する。正圧の場合、血管は半径方向に拡張し、負圧の場合、血管は半径方向に収縮する。血管外径の時間変動をd(t)とすると、次式が成り立つ。
【数4】
JP0006484787B2_000009t.gif
ここで、Eは血管のヤング率、hは血管壁の厚さ、aは血管の半径である。上式からわかるように、脈波圧力変動p(t)と血管外径の時間変動d(t)とは同相の関係にある。このため、脈波圧力変動p(t)に代えて、血管外壁の時間変動d(t)を用いることができる。つまり、血管外壁の時間変動d(t)は、血圧脈波の位相を反映しているといえる。

【0086】
血流速変動u(t)は、心臓の拍動によって生じる。上述した血圧脈波の伝搬速度cは、健常者で10m/s程度、動脈硬化の患者では16m/s程度といわれている。ここで、伝搬速度cと周波数fと波長λとの間には、次式が成り立つ。
【数5】
JP0006484787B2_000010t.gif

【0087】
拍動の周期は一般的にf=1[Hz]であり、伝搬速度はc=10[m/s]程度である。これより、周期が1[Hz]の脈波の波長は、λ=10[m]となる。この結果から、心臓からの距離が1m未満、特に20cm未満の位置では、位相差を無視することができ、心臓拍出速度v(t)が、血管の計測点における血流速変動u(t)と同相として扱うことができる。したがって、血流速に代えて、心臓拍出速度v(t)を用いることができる。つまり、心臓拍出速度v(t)は、血流速の位相を反映しているといえる。

【0088】
以上より、心臓拍出速度v(t)と血管壁の時間変動d(t)との位相差を観測することで、血管壁の時間変動d(t)の計測点より血流方向下流側の血管の閉塞度を評価することができる。つまり、無反射の場合(閉塞がない場合)、心臓拍出速度v(t)と血管壁の時間変動d(t)とは同相となり、完全閉塞の場合、心臓拍出速度v(t)と血管壁の時間変動d(t)との位相差は90度となる。

【0089】
また、心臓拍出速度v(t)に代えて、心臓の等価直径の時間変動D(t)を用いることもできる。この場合、速度は変位を一回微分して求められるので、一般的に次式が成り立つ。
【数6】
JP0006484787B2_000011t.gif

【0090】
上式からわかるように、速度と変位との間には90度の位相差が存在する。つまり、心心臓の等価直径の時間変動D(t)は、血流速の位相を反映しているといえる。以上より、心臓等価直径の時間変動D(t)と血管壁の時間変動d(t)との位相差を観測することで、血管壁の時間変動d(t)の計測点より血流方向下流側の血管の閉塞度を評価することができる。つまり、無反射の場合(閉塞がない場合)、心臓等価直径の時間変動D(t)と血管壁の時間変動d(t)との位相差は90度となり、完全閉塞の場合、心臓等価直径の時間変動D(t)と血管壁の時間変動d(t)とは同相となる。

【0091】
<診断支援装置の動作>
本診断支援装置を使用する場合、医師が被験者の胸部の2箇所に超音波プローブ301及び401を当て、心臓と肺動脈とを超音波測定する。心臓の動画像が超音波測定装置300によって得られ、肺動脈の動画像が超音波測定装置400によって得られる。

【0092】
医師は、肺動脈の閉塞を評価したい部位に応じて、超音波プローブ401を当てる位置、即ち、血管壁の時間変動の計測位置(以下、「評価点」という)を選択することができる。上述したように、評価点から血流方向下流側の閉塞状況を評価することができる。評価点の選択については、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。

【0093】
超音波測定装置300は、所定期間(例えば、1分間)、心臓の超音波測定を行い、同期間の心臓の動画像を得る。超音波測定装置400は、超音波測定装置300と同一期間、肺動脈の超音波測定を行い、同期間の肺動脈の動画像を得る。超音波測定装置300及び400のそれぞれは、診断支援装置200に動画像のデータを出力する。

【0094】
図14は、診断支援装置200における血管閉塞評価処理の手順を示すフローチャートである。

【0095】
CPU211は、超音波測定装置300及び400のそれぞれから出力された動画像データを受信する(ステップS201)。

【0096】
次に、CPU211は、肺動脈の動画像を解析し、肺動脈の血管壁の時間変動を第1位相情報として取得する(ステップS202)。ステップS202の処理では、評価点における血管像の幅を特定し、その幅の時間変動を血管壁の時間変動とすることができる。

【0097】
次に、CPU211は、心臓の動画像を解析し、心臓の等価直径の時間変動を第2位相情報として取得する(ステップS203)。ステップS203の処理では、心臓像の幅を特定し、その幅の時間変動を心臓の等価直径の時間変動とすることができる。また、心臓像における特定の2点を定め、その2点間の距離の時間変動を心臓の等価直径の時間変動とすることもできる。また、肺動脈は右心室に繋がっているため、右心室における特定の2点間の距離の時間変動を心臓の等価直径の時間変動としてもよい。さらに、心臓の右心室以外の部位における特定の2点間の距離の時間変動を心臓の等価直径の時間変動としてもよい。

【0098】
次に、CPU211は、肺動脈血管壁の時間変動データから肺動脈の血管壁の時間変動の位相を抽出し、心臓の等価直径の時間変動データから心臓の等価直径の時間変動の位相を抽出する(ステップS204)。この処理では、フーリエ変換、ヒルベルト変換等の公知の周波数解析手法を用いることができる。

【0099】
次に、CPU211は、肺動脈の血管壁の時間変動と心臓の等価直径の時間変動との位相差を算出する(ステップS205)。

【0100】
次に、CPU211は、位相差から血管の閉塞度の推定値を診断支援情報として生成する(ステップS206)。位相差と閉塞度とは一対一に対応する。この対応関係は、予めハードディスク214に記憶されている。この場合、ステップS206では、CPU211が、ハードディスク214に記憶された対応関係のデータを参照し、位相差から血管の閉塞度を推定する。

【0101】
次に、CPU211は、生成した診断支援情報を表示部230に出力し(ステップS207)、処理を終了する。

【0102】
以上のような構成により、診断支援装置200では、非侵襲的に肺動脈の閉塞状況を評価することが可能となる。また、診断支援装置200で得られる肺動脈の閉塞状況に関する診断支援情報は、肺高血圧症を生じる疾患である特発性肺高血圧症、慢性肺動脈塞栓症、膠原病、慢性肺線維症の診断に有用である。

【0103】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1及び2においては、肺動脈の閉塞状況を評価する構成について述べたが、これに限定されるものではない。肺動脈以外の血管の閉塞状況を評価することも可能である。この場合、実施の形態1に示した構成の診断支援装置100では、評価したい血管部位より血流方向上流側に評価点を設定し、その評価点に圧力センサ11及び流速センサ12を配置すればよい。また、実施の形態2に示した構成の診断支援装置200では、超音波測定装置300によって心臓を超音波測定し、これと同時に、超音波測定装置400によって評価点における血管を超音波測定すればよい。このようにすることで、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、各種膠原病に伴うレイノー症状等の診断を支援することができる。

【0104】
また、上記の実施の形態1及び2においては、評価点を1点設定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。評価点を複数設定してもよい。例えば、超音波測定装置を3台以上、診断支援装置に接続し、1つの超音波測定装置によって心臓の超音波測定を行い、他の複数の超音波測定装置によって複数の評価点それぞれにおける血管の超音波測定を行う構成とすることができる。この結果、一方の評価点においては第1位相情報と第2位相情報との間に位相差があり、その評価点より血流方向下流側の他方の評価点においては位相差がない場合、一方の評価点と他方の評価点との間において閉塞が生じていると推定することができる。つまり、閉塞の位置を推定することができる。

【0105】
また、上記の実施の形態1及び2においては、第1位相情報として、血圧脈波のデータ及び心臓の等価直径の時間変動のデータを用いる構成について述べたが、これらに限定されるものではない。血圧脈波の位相を反映した情報であれば、上記以外の情報を用いることも可能である。例えば、血圧脈波から位相成分を抽出した位相情報を用いることも可能である。

【0106】
また、上記の実施の形態1及び2においては、第2位相情報として、血流速のデータ及び血管壁の時間変動のデータを用いる構成について述べたが、これらに限定されるものではない。血流速の位相を反映した情報であれば、上記以外の情報を用いることも可能である。例えば、血流速から位相成分を抽出した位相情報を用いることも可能であるし、心臓拍出速度を測定し、これを用いることも可能である。

【0107】
また、上記の実施の形態1においては、圧力センサ11によって血圧脈波を測定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。評価点を腕又は脚の血管とする場合、カフを備える血圧計によって血圧脈波を測定する構成とすることも可能である。実施の形態2の構成で、超音波測定装置400に代えて、カフを備える血圧計によって血圧脈波を測定し、診断支援装置によって、血管壁の時間変動の位相ではなく、血圧脈波の位相を取得するように構成してもよい。

【0108】
また、上記の実施の形態2においては、超音波測定装置により心臓と血管の動画像を得る構成について述べたが、これに限定されるものではない。超音波測定以外の手段、例えば、X線による心臓血管造影によって、心臓と血管の動画像を得る構成であってもよい。

【0109】
また、上記の実施の形態1及び2においては、診断支援情報として、血管の閉塞度の推定値を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。血圧脈波及び血流速の位相差、又は血管壁の時間変動及び心臓の等価直径の時間変動の位相差から、閉塞の度合いを軽度、中度、重度のように多段階で推定し、推定結果を診断支援情報として表示する構成であってもよい。また、血圧脈波及び血流速の位相差、又は血管壁の時間変動及び心臓の等価直径の時間変動の位相差から、「肺高血圧症であると推定される」、「肺高血圧症でないと推定される」のように、肺高血圧症であるか否かを推定し、その推定結果を診断支援情報として表示する構成としてもよい。また、血圧脈波及び血流速の位相差、又は血管壁の時間変動及び心臓の等価直径の時間変動の位相差を、診断支援情報として表示する構成としてもよい。また、血圧脈波及び血流速の位相差、又は血管壁の時間変動及び心臓の等価直径の時間変動の位相差を把握することができるグラフを診断支援情報として表示する構成としてもよい。例えば、血圧脈波のグラフ及び血流速のグラフを一つの座標空間に重畳表示することで、位相差を把握可能に表示する構成としてもよい。

【0110】
また、上記の実施の形態1及び2においては、表示部33及び230に診断支援情報を表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。プリンタに診断支援情報を印刷することで、出力する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の診断支援装置、診断支援方法、及びコンピュータプログラムは、血管の閉塞に関する診断を支援するための診断支援装置、診断支援方法、及びコンピュータプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0112】
100,200 診断支援装置
10 カテーテル
11 圧力センサ
12 流速センサ
20 信号処理部
30 データ処理部
310,240 コンピュータプログラム
311,211 CPU
314,314 ハードディスク
33,230 表示部
300,400 超音波測定装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A】
7
【図8B】
8
【図8C】
9
【図9A】
10
【図9B】
11
【図9C】
12
【図10A】
13
【図10B】
14
【図10C】
15
【図11A】
16
【図11B】
17
【図11C】
18
【図12】
19
【図13】
20
【図14】
21