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明細書 :データ解析装置、静脈波モニタ装置、方法およびプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-108819 (P2017-108819A)
公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
発明の名称または考案の名称 データ解析装置、静脈波モニタ装置、方法およびプログラム
国際特許分類 A61B   5/02        (2006.01)
G01S  13/58        (2006.01)
FI A61B 5/02 310Z
G01S 13/58 210
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2015-244038 (P2015-244038)
出願日 平成27年12月15日(2015.12.15)
発明者または考案者 【氏名】鈴木 哲
【氏名】星賀 正明
【氏名】石坂 信和
出願人 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C017
5J070
Fターム 4C017AA09
4C017AB06
4C017AC40
4C017BC07
4C017BC11
4C017BD10
4C017FF05
5J070AC06
5J070AC19
5J070AD01
5J070AE09
5J070AH04
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH40
5J070AK22
5J070BA01
要約 【課題】被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から静脈波信号を正確に推定するデータ解析装置を提供する。
【解決手段】データ解析装置は、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から、当該静脈の静脈波信号を生成する波形処理部を含むデータ解析装置であって、波形処理部が、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施すことにより、被験体の動脈波信号Sarteryを再構成する再構成部52と、マイクロ波の信号と動脈波信号Sarteryとに基づいて、被験体の静脈波信号Sveinを推定する推定部53とを含む。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から、当該静脈の静脈波信号を生成する波形処理部を含むデータ解析装置であって、
前記波形処理部が、
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施すことにより、前記被験体の動脈波信号を再構成する再構成部と、
前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて、前記被験体の静脈波信号を推定する推定部と、
を含むデータ解析装置。
【請求項2】
前記再構成部が、
前記マイクロ波の信号に前記自己相関処理を施して、自己相関波形を取得する自己相関処理部と、
前記自己相関波形の所定の区間を切り出して、当該区間の前記マイクロ波の信号を代表する代表波形を取得する波形切出部と、
前記区間毎に取得した前記代表波形を時間軸方向に連結して、前記動脈波信号を再構成する波形連結部と、
を含む、請求項1に記載のデータ解析装置。
【請求項3】
前記推定部が、
正規化した前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号との差分を算出して、前記静脈波信号の候補となる候補信号を取得する差分算出部と、
前記候補信号と前記動脈波信号との位相差に基づいて、前記候補信号の良否を判定する位相差判定部と、
を含み、
良と判定した前記候補信号を前記静脈波信号と推定する、請求項1または2に記載のデータ解析装置。
【請求項4】
前記マイクロ波の信号に独立成分分析を施すことにより、非周期的な信号成分を判定し、前記非周期的な信号成分を前記マイクロ波の信号から除去する非周期的成分カットフィルタ部をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のデータ解析装置。
【請求項5】
前記静脈が内頸静脈である、請求項1~4のいずれかに記載のデータ解析装置。
【請求項6】
前記静脈波信号に基づいて、前記被験体の疾患の有無を判定する疾患判定部をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載のデータ解析装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のデータ解析装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項8】
マイクロ波を発生する発振器と、
被験体の静脈に前記マイクロ波を放出するアンテナと、
前記静脈において反射した前記マイクロ波を受信する受信器と、
請求項1~6のいずれかに記載のデータ解析装置の各部と、
を含む静脈波モニタ装置。
【請求項9】
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から、当該静脈の静脈波信号を生成するデータ解析方法であって、
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施すことにより、前記被験体の動脈波信号を再構成するステップと、
前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて、前記被験体の静脈波信号を推定するステップと、
を含むデータ解析方法。
【請求項10】
前記再構成するステップが、
前記マイクロ波の信号に前記自己相関処理を施して、自己相関波形を取得するステップと、
前記自己相関波形の所定の区間を切り出して、当該区間の前記マイクロ波の信号を代表する代表波形を取得するステップと、
前記区間毎に取得した前記代表波形を時間軸方向に連結して、前記動脈波信号を再構成するステップと、
を含む、請求項9に記載のデータ解析方法。
【請求項11】
前記推定するステップが、
正規化した前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号との差分を算出して、前記静脈波信号の候補となる候補信号を取得するステップと、
前記候補信号と前記動脈波信号との位相差に基づいて、前記候補信号の良否を判定するステップと、
良と判定した前記候補信号を前記静脈波信号と推定するステップと、
を含む、請求項9または10に記載のデータ解析方法。
【請求項12】
前記マイクロ波の信号に独立成分分析を施すことにより、非周期的な信号成分を判定し、前記非周期的な信号成分を前記マイクロ波の信号から除去するステップをさらに含む、請求項9~11のいずれかに記載のデータ解析方法。
【請求項13】
前記静脈が内頸静脈である、請求項9~12のいずれかに記載のデータ解析方法。
【請求項14】
前記静脈波信号に基づいて、前記被験体の疾患の有無を判定するステップをさらに含む、請求項9~13のいずれかに記載のデータ解析方法。
【請求項15】
マイクロ波を発生するステップと、
被験体の静脈に前記マイクロ波を放出するステップと、
前記静脈において反射した前記マイクロ波を受信するステップと、
請求項9~14のいずれかに記載のデータ解析方法の各ステップと、
を含む静脈波モニタ方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、データ解析装置および方法に関し、より詳細には、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から静脈波信号を生成するモニタ装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓疾患を有する患者の脈波をモニタする方法としては、ダイヤフラム型の圧トランスデューサを用いる方法が知られている。また、近年では、マイクロ波を用いて患者の心拍波形や血圧等の生体信号を測定することがなされている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、マイクロ波を用いて、ドップラー効果に基づいて心臓の鼓動などの振動を計測することが行われている。また、下記非特許文献1では、マイクロ波ドップラーセンサーを用いて、動脈波と相関のある信号が頸部から得られたことが開示されている(非特許文献1のFigs.3-4)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-39666号公報
【0005】

【非特許文献1】三澤他、「非接触型マイクロ波ドップラーセンサーを用いた非侵襲的生体計測」、J. Cardiol、Vol.20, No.1, Page. 209-216 (1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
種々の心臓疾患のうち、例えば右心肥大、三尖弁狭窄、三尖弁逆流、収縮性心膜炎は特殊な病態であり、診断が難しい病態である。これら病態を診断するためには、通常、患者の首筋の内頸静脈の静脈圧(JVP: jugular venous pressure)をモニタする必要がある。一般に、内頸静脈圧JVPは、患者の心臓の右心機能を評価するための代表的な指標とされている。しかしながら、静脈圧は動脈圧と比較して小さく、信号レベルが微小でノイズに埋もれやすいという性質があり、心臓疾患の病態を診断できる程度に正確に、内頸静脈圧JVPを測定することは困難であった。
【0007】
例えばダイヤフラム型の圧トランスデューサを用いる従来の方法では、検知面積が小さく、また感度の良い位置を特定することが必要となり、熟練した医師でなければ使いこなすことができなかった。静脈は動脈に比べて表層近くに位置しており、なおかつ圧トランスデューサは接触型のセンサであるので、患者の頸部にセンサを設置すると、血管が変形してしまい正確な計測が困難であった。
【0008】
また、非特許文献1では、頸静脈波に類する信号が計測されているものの、計測により得られる信号には頸動脈波の重複があり、病態を診断できる程度に正確に、静脈波信号と動脈波信号とを分離して、静脈波信号のみを抽出することは依然としてできていない(非特許文献1のFig.7)。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から静脈波信号を正確に推定するデータ解析装置およびデータ解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、以下に示す態様を含む。なお、上記非特許文献2に示すように、本願発明者らによる研究により、心拍に伴う体表面の微小な動きの速度と、マイクロ波による非接触の心拍計測との間には高い相関があることが確認されている(S.Suzuki, et al., “An approach to remote monitoring of heart rate variability (HRV) using microwave radar during a calculation task”, Journal of Physiological Anthropology 30(6), 241-249, 2011.)。すなわち、以下に示す構成によれば、被検体に直接的に接触することなく、信頼性のある静脈波信号の波形を推定することができる。
【0011】
(項1)
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から、当該静脈の静脈波信号を生成する波形処理部を含むデータ解析装置であって、
前記波形処理部が、
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施すことにより、前記被験体の動脈波信号を再構成する再構成部と、
前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて、前記被験体の静脈波信号を推定する推定部と、
を含むデータ解析装置。
【0012】
(項2)
前記再構成部が、
前記マイクロ波の信号に前記自己相関処理を施して、自己相関波形を取得する自己相関処理部と、
前記自己相関波形の所定の区間を切り出して、当該区間の前記マイクロ波の信号を代表する代表波形を取得する波形切出部と、
前記区間毎に取得した前記代表波形を時間軸方向に連結して、前記動脈波信号を再構成する波形連結部と、
を含む、項1に記載のデータ解析装置。
【0013】
(項3)
前記推定部が、
正規化した前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号との差分を算出して、前記静脈波信号の候補となる候補信号を取得する差分算出部と、
前記候補信号と前記動脈波信号との位相差に基づいて、前記候補信号の良否を判定する位相差判定部と、
を含み、
良と判定した前記候補信号を前記静脈波信号と推定する、項1または2に記載のデータ解析装置。
【0014】
(項4)
前記マイクロ波の信号に独立成分分析を施すことにより、非周期的な信号成分を判定し、前記非周期的な信号成分を前記マイクロ波の信号から除去する非周期的成分カットフィルタ部をさらに含む、項1~3のいずれかに記載のデータ解析装置。
【0015】
(項5)
前記静脈が内頸静脈である、項1~4のいずれかに記載のデータ解析装置。
【0016】
(項6)
前記静脈波信号に基づいて、前記被験体の疾患の有無を判定する疾患判定部をさらに含む、項1~5のいずれかに記載のデータ解析装置。
【0017】
(項7)
項1~6のいずれかに記載のデータ解析装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【0018】
(項8)
マイクロ波を発生する発振器と、
被験体の静脈に前記マイクロ波を放出するアンテナと、
前記静脈において反射した前記マイクロ波を受信する受信器と、
項1~6のいずれかに記載のデータ解析装置の各部と、
を含む静脈波モニタ装置。
【0019】
(項9)
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から、当該静脈の静脈波信号を生成するデータ解析方法であって、
被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施すことにより、前記被験体の動脈波信号を再構成するステップと、
前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて、前記被験体の静脈波信号を推定するステップと、
を含むデータ解析方法。
【0020】
(項10)
前記再構成するステップが、
前記マイクロ波の信号に前記自己相関処理を施して、自己相関波形を取得するステップと、
前記自己相関波形の所定の区間を切り出して、当該区間の前記マイクロ波の信号を代表する代表波形を取得するステップと、
前記区間毎に取得した前記代表波形を時間軸方向に連結して、前記動脈波信号を再構成するステップと、
を含む、項9に記載のデータ解析方法。
【0021】
(項11)
前記推定するステップが、
正規化した前記マイクロ波の信号と前記動脈波信号との差分を算出して、前記静脈波信号の候補となる候補信号を取得するステップと、
前記候補信号と前記動脈波信号との位相差に基づいて、前記候補信号の良否を判定するステップと、
良と判定した前記候補信号を前記静脈波信号と推定するステップと、
を含む、項9または10に記載のデータ解析方法。
【0022】
(項12)
前記マイクロ波の信号に独立成分分析を施すことにより、非周期的な信号成分を判定し、前記非周期的な信号成分を前記マイクロ波の信号から除去するステップをさらに含む、項9~11のいずれかに記載のデータ解析方法。
【0023】
(項13)
前記静脈が内頸静脈である、項9~12のいずれかに記載のデータ解析方法。
【0024】
(項14)
前記静脈波信号に基づいて、前記被験体の疾患の有無を判定するステップをさらに含む、項9~13のいずれかに記載のデータ解析方法。
【0025】
(項15)
マイクロ波を発生するステップと、
被験体の静脈に前記マイクロ波を放出するステップと、
前記静脈において反射した前記マイクロ波を受信するステップと、
項9~14のいずれかに記載のデータ解析方法の各ステップと、
を含む静脈波モニタ方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施して動脈波信号を再構成し、マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて静脈波信号を推定している。そのため、静脈において反射したマイクロ波の信号には、信号強度が高い動脈波信号が混入しているが、本発明によると、このような動脈波信号の混入があるなかで、信号強度がより低い静脈波信号を適切に分離して抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1および第2の実施の形態に係る静脈波モニタ装置10の概略構成を示す模式図である。
【図2】波形処理部5がデータ処理を行う際に得られる各信号の例示的なサンプル波形である。
【図3】データ解析部12が行うデータ処理手順を示すフローチャートである。
【図4】波形処理部5の構成およびデータフローを示すブロック図である。
【図5】動脈波再構成部52が行う動脈波再構成処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】動脈波再構成部52が行う動脈波再構成処理を説明するための模式図である。
【図7】静脈波信号推定部53が行う静脈波推定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態における波形処理部5′の構成およびデータフローを示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る静脈波モニタ装置10′の概略構成を示す模式図である。
【図10】内頸静脈の静脈圧JVPの例示的な波形を示す模式図である。
【図11】疾患判定部7の構成およびデータフローを示すブロック図である。
【図12】疾患有無判定部72が行う判定処理の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する説明を省略する。

【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号から静脈波信号を推定する。

【0030】
<静脈波モニタ装置の概略構成>
図1は、本発明の第1および第2の実施の形態に係る静脈波モニタ装置10の概略構成を示す模式図である。静脈波モニタ装置10は、マイクロ波レーダ装置11と、データ解析部12とを備える。マイクロ波レーダ装置11は、被験体(図示せず)の静脈にマイクロ波を照射して、静脈から反射したマイクロ波を受信する。データ解析部12は、マイクロ波レーダ装置11が受信した信号を処理して、静脈波信号の波形を推定して提示する。マイクロ波レーダ装置11は、例えばドップラー方式の公知のマイクロ波レーダモジュールであり、データ解析部12は、例えば公知のパーソナルコンピュータである。

【0031】
マイクロ波レーダ装置11は、アンテナ1と、マイクロ波発振・受信器2と、増幅部3と、アナログ-デジタル変換部4とを備える。マイクロ波発振・受信器2は、マイクロ波を発生し、被験体の静脈において反射したマイクロ波をアナログ形式で受信する。マイクロ波はアンテナ1を通じて被験体の静脈に放出される。増幅部3は、マイクロ波発振・受信器2が受信したマイクロ波の信号を増幅する。アナログ-デジタル変換部4は、アナログ形式の増幅されたマイクロ波の信号を、デジタル形式に変換する。

【0032】
データ解析部12は波形処理部5を備える。さらに、データ解析部12は、任意で表示部6備えることができる。

【0033】
マイクロ波発振・受信器2が受信するマイクロ波には、静脈において反射したマイクロ波の周波数変化、位相変化または強度変化などの情報が含まれており、波形処理部5は、後述する静脈波の推定原理に従ってデータ処理を行うことにより、マイクロ波の信号から静脈波信号を推定する。表示部6は、推定された静脈波信号の波形を表示する。

【0034】
データ解析部12は、公知のパーソナルコンピュータを用いて実現される場合、例えば、CPU、メモリ、ハードディスク装置、入出力インタフェース等を備える。CPUは、メモリを作業領域として使用し、処理に必要なデータ(例えば、処理途中の中間データ等)を適宜メモリまたはハードディスク装置に記録する。本実施形態では、後述する処理を行うためのプログラムが、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)でハードディスク装置に予め記録されており、データ解析部12は、CPUがハードディスク装置に記録したプログラムをメモリに読み出すことにより、波形処理部5として機能し、後述する処理を行う。当該プログラムは、CD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体から、データ解析部12にインストールしてもよいし、データ解析部12をインターネット(図示せず)と接続し、インターネットを介してプログラムのプログラムコードをダウンロードしてもよい。なお、波形処理部5を、論理回路等のハードウェアによって実現してもよい。

【0035】
<静脈波の推定原理>
図2に、波形処理部5がデータ処理を行う際に得られる各信号の例示的なサンプル波形を示す。被験体の静脈において反射されたマイクロ波の信号から、モニタ対象である静脈波を推定するにあたり、マイクロ波レーダ装置11によって取得されるマイクロ波の信号Srawは、静脈波に関連する信号Sveinと、動脈波に関連する信号Sarteryと、被験体の体動に関連するノイズ信号Nartifactと、外乱またはその他のノイズ信号Ndisturbanceと、の情報を含むと仮定される。
【数1】
JP2017108819A_000003t.gif

【0036】
また、信号強度の関係は次のように仮定される。
【数2】
JP2017108819A_000004t.gif

【0037】
ここで、動脈波信号Sarteryおよび静脈波信号Sveinは、心臓の鼓動に起源を有する信号であり、共に周期性を有する信号である。また、血液の循環過程からも理解されるように、動脈波信号は静脈波信号よりも大きい信号強度を有する。よって、信号強度の相違により、動脈波信号は静脈波信号から区別することができる。

【0038】
また、モニタ時には被験体は静止状態であるので、体動に関連するノイズ信号Nartifactは基本的には発生しない。さらに、被験体の体動のうち、呼吸活動はランダムであり周期性が無いので、体動に関連するノイズ信号Nartifactは、周期性の有無によって、動脈波信号および静脈波信号と区別することが可能である。仮に、呼吸活動に周期性が認められたとしても、呼吸活動による体動は、心拍の周期よりも低周波であるので、これらは任意のフィルタ回路により区別することができる。また、外乱等に関連するノイズ信号Ndisturbanceも周期性が無いので、周期性の有無によって、動脈波信号および静脈波信号と区別することが可能である。

【0039】
本願発明では、動脈波信号および静脈波信号が共に周期性を有している点と、動脈波信号が静脈波信号よりも信号強度が大きい点とに着目して、元信号であるマイクロ波の信号から静脈波信号を推定している。すなわち、信号強度が高い動脈波信号について、自己相関関数による信号の再構成により、動脈波信号Sarteryを推定し、元信号であるマイクロ波の信号Srawと推定した動脈波信号Sarteryとの差分から、静脈波信号Sveinを推定している。ここで、体動に関連するノイズ信号Nartifactおよび外乱に関連するノイズ信号Ndisturbanceは、いずれも周期性が無く、重畳することで無相関化することが可能であるので、自己相関関数による信号の再構成により適切に除去される。

【0040】
<静脈波の推定手順>
図3は、データ解析部12が行うデータ処理手順を示すフローチャートであり、図4は、波形処理部5の構成およびデータフローを示すブロック図である。

【0041】
図4に示すように、波形処理部5は、ノイズフィルタ51と、動脈波再構成部52と、正規化・差分算出部53aと、位相差判定部53bとを備え、これら各部が互いに連携して静脈波信号を推定する。正規化・差分算出部53aおよび位相差判定部53bが静脈波信号推定部53を構成する。ノイズフィルタ51は任意の構成である。波形処理部5を構成するこれらの各部は、本発明に係るプログラムをデータ解析部12に実行させることによって実現される機能ブロックであり、ノイズフィルタ51、動脈波再構成部52、および静脈波信号推定部53のそれぞれは、後述するステップS1~S3のそれぞれのステップに対応する。あるいは、波形処理部5を構成するノイズフィルタ51、動脈波再構成部52、正規化・差分算出部53a、および位相差判定部53bは、ハードウェアによって実現してもよい。

【0042】
まず、ステップS1では、元信号であるマイクロ波の信号Srawにノイズフィルタを適用する。ノイズフィルタ51は例えばハイパスフィルタであり、体動に関連するノイズ信号Nartifactをマイクロ波の信号Srawから除去する。体動に関連するノイズ信号Nartifactは、例えば被験体の呼吸活動であり、脈波の信号よりも低周波であるので、マイクロ波の信号から適切に除去される。以後、ノイズフィルタ適用後のマイクロ波の信号をSfltdと記載する。なお、ノイズフィルタ51は任意の構成であるので、以後の工程においてノイズフィルタを適用しない場合、ノイズフィルタ適用後のマイクロ波の信号Sfltdは、マイクロ波の信号Srawと適宜読み替えることとする。

【0043】
次に、ステップS2において、マイクロ波の信号Sfltdに自己相関処理を施すことにより、動脈波信号Sarteryを再構成し、ステップS3において、マイクロ波の信号Sfltdと再構成した動脈波信号Sarteryとに基づいて、静脈波信号Sveinを推定する。これらステップS2の再構成処理およびステップS3の推定処理の具体的な処理手順については、後述する図5~図7を参照してより詳細に説明する。

【0044】
最後に、ステップS4において、推定した静脈波信号Sveinの波形を提示する。静脈波信号Sveinの波形は、例えば表示部6に表示される。

【0045】
・動脈波信号Sarteryの再構成
図5は、動脈波再構成部52が行う動脈波再構成処理(ステップS2)の手順を示すフローチャートであり、図6は、動脈波再構成部52が行う動脈波再構成処理を説明するための模式図である。

【0046】
ステップS21では、マイクロ波の信号Sfltdに自己相関処理を施すことにより、自己相関波形を取得する。相関関数とは、2つの異なる波形について、一方の波形を時間軸上でずらしながら、ずらした時間(遅延時間τ)の関数として両波形間の類似度(相関度)を表した関数である。自己相関処理とは、1つの信号波形についてこのような相関関数を求める処理であり、これにより、1つの信号波形内の繰り返しの部分(すなわち周期性)を求めることができる。自己相関波形は、例えば次の式により取得される。
【数3】
JP2017108819A_000005t.gif

【0047】
ここで、f(t)は元波形であり、図4に示すマイクロ波の信号Sfltdである。nは、自己相関分析を施すデータ数であり、図6に符号Lで示す領域中の参照データ数である。符号Lで示す領域のデータが、例えばサンプリング1k/sで10秒のデータであれば、n=10000となる。kは走査量であり、例えばサンプリングが1k/sであれば、k=1msecとなる。走査量はラグ(lag)とも呼ばれる。μは元波形f(t)の平均値であり、つまりマイクロ波の信号Sfltdの平均値である。μはオフセットを0(ゼロ)にするために導入される。σは元波形f(t)の標準偏差であり、つまりマイクロ波の信号Sfltdの標準偏差である。σで除算することにより正規化がなされる。なお、μおよびσは単純に正規化を行っているだけであるので、式中において任意の構成であり、μおよびσを除外した式を用いてもよい。

【0048】
図6を参照して、本ステップでの処理をより具体的に説明する。まず、元波形である図6(a)に示すマイクロ波の信号Sfltdのうち、波形に再現性があると考えられる区間L(例えば10秒)について着目し、この着目した区間Lのマイクロ波の信号Sfltdについて自己相関処理を行うと、図6(b)に示す自己相関波形が得られる。図6(b)に示すグラフの横軸は遅延時間τであり、縦軸は相関度である。

【0049】
ステップS22では、自己相関波形の所定の区間を切り出すことにより、当該区間のマイクロ波の信号Sfltdを代表する代表波形を取得する。例えば図6(b)に示す自己相関波形のうち、2番目の単位波形を切り出して、マイクロ波の信号Sfltdの区間lの代表波形Rep1とする。

【0050】
ステップS23では、区間毎に取得した代表波形を時間軸方向に連結して、動脈波信号Sarteryを再構成する。ステップS22での処理の後、着目する区間Lを区間lだけずらして、着目する区間Lを新たに設定する。そして、この新たに設定した区間Lについて、ステップS21~ステップS22の処理を繰り返し行う。これにより、新たな区間lの代表波形Rep2を得る。以後同様に、着目する区間Lをさらに区間lだけずらして、着目する区間Lを新たに設定し、各区間lを代表する複数の代表波形RepN(N = 1, 2, 3, ...)を取得する。これら区間毎に取得した複数の代表波形RepNを時間軸方向に連結して、動脈波信号Sarteryを再構成する。

【0051】
ステップS23の処理を完了すると、引き続きステップS3の静脈波信号推定処理を行う。

【0052】
・静脈波信号Sveinの推定
図7は、静脈波信号推定部53が行う静脈波推定処理(ステップS3)の手順を示すフローチャートである。

【0053】
まず、ステップS31では、マイクロ波の信号Sfltdと再構成した動脈波信号Sarteryとの差分を算出する。マイクロ波の信号Sfltdと再構成した動脈波信号Sarteryとでは信号レベル(振幅の大きさ)が異なっているので、これらの信号の差分を算出する前に、予め信号レベルを正規化しておくのが望ましい。差分の算出により得られる信号は、静脈波信号の候補となる信号Sveincdである。

【0054】
ステップS32では、差分から得られた候補信号Sveincdと再構成した動脈波信号Sarteryとの位相差に基づいて、候補信号Sveincdの良否を判定する。血液の循環過程を考慮すると、動脈波と静脈波との間には原理的に位相差が発生していると考えられる。すなわち、或る一回の心拍に着目すると、その心拍により生じる動脈中の脈波と静脈中の脈波との間には、所定の大きさの位相差が発生していると考えられる。本ステップでは、この位相差に基づいて、候補信号Sveincdが静脈波として適切か否か(例えば「良」または「否」)を判定する。位相差を決定する方法としては、例えば2つの信号間のピーク間隔を位相差としてもよく、あるいは、2つの信号間の相互相関を求めて、ずれ(ラグ)を位相差としてもよい。

【0055】
ステップS33では、ステップS32において「良」と判定した候補信号Sveincdを、静脈波Sveinの推定信号として採用する。推定した静脈波信号Sveinの波形は、その後ステップ4において例えば表示部6に表示される。

【0056】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、データ解析部12は波形処理部5に代えて波形処理部5′を備える。波形処理部5′は、ハイパスフィルタを使用するノイズフィルタ51に代えて、非周期的な信号成分をマイクロ波の信号Srawから除去する非周期的成分カットフィルタ51′を使用する。

【0057】
図8は、本発明の第2の実施の形態における波形処理部5′の構成およびデータフローを示すブロック図である。図8に示すように、第2の実施の形態に係る波形処理部5′は、第1の実施形態のノイズフィルタ51に代えて非周期的成分カットフィルタ51′を備える。非周期的成分カットフィルタ51′は、独立成分分析部51′aおよび非周期的成分判定部51′bを備える。

【0058】
マイクロ波レーダ装置11がドップラー方式である場合、マイクロ波レーダ装置11の出力信号Srawは、同相(in-phase)成分のI信号と、直交(quadrature)成分の信号との2つの成分に分離して表すことができる。これらI信号およびQ信号の2つの信号は独立成分分析部51′aに入力されて、独立成分分析部51′aにより独立成分分析が行われる。独立成分分析により、入力されたI信号およびQ信号の2つの信号は、何らかの非周期的なノイズ信号の成分と、動脈波信号Sarteryおよび静脈波信号Sveinを含む成分との2つの信号成分に分離される。非周期的成分判定部51′bは、独立成分分析により2つに分離された信号成分のうち、動脈波信号Sarteryおよび静脈波信号Sveinを含む成分を選択して、ノイズフィルタ適用後のマイクロ波の信号Sfltdとして出力する。動脈波信号Sarteryおよび静脈波信号Sveinを含む成分を判定する方法としては、例えば周波数成分または固有値を用いて判定する。周波数成分を用いる場合は、周波数解析により、一般に安静時の心拍成分である0.8~3Hz(好ましくは0.8~2Hz)付近にピークを確認することができた方の信号成分を、非周期的なノイズ信号の成分を含まない、動脈波信号Sarteryおよび静脈波信号Sveinを含む成分であると判定する。

【0059】
なお、非周期的成分カットフィルタ51′適用後の、動脈波再構成部52および静脈波信号推定部53(正規化・差分算出部53aおよび位相差判定部53b)の一連の処理は、図5~図7に示されているデータ処理手順と同じであるので、詳細な説明は省略する。

【0060】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る静脈波モニタ装置10′の概略構成を示す模式図である。

【0061】
本発明の第3の実施の形態では、データ解析部12′はさらに疾患判定部7を備えており、疾患判定部7は、推定した静脈波信号Sveinに基づいて疾患の有無を判定する。疾患判定部7は、データ解析部12′のCPUがプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現してもよいし、論理回路等によってハードウェア的に実現してもよい。本実施形態では、測定対象の静脈が内頸静脈の場合を一例として説明する。なお、疾患判定部7以外のデータ解析部12′の構成については、第1の実施の形態または第2の実施の形態に係るデータ解析部12の構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。

【0062】
図10は、内頸静脈の静脈圧JVPの例示的な波形を示す模式図である。図10に示すように、典型的な内頸静脈の静脈圧JVP波形には、次に説明する特徴的なピークまたは谷が存在する。

【0063】
・a波
右房の収縮に伴う一過性の静脈伸展による圧力上昇
・c波
三尖弁が閉じるときの圧力
・v波
収縮期に三尖弁が閉じているときの、体循環から右房への静脈環流に伴う圧力変化
・x谷
c波に続き、右室の収縮に伴う三尖弁下方移動により生じる圧力下降
・y谷
拡張早期に三尖弁が開いて右房から右室へ素早く血液が流出することによる、右房圧の低下

【0064】
本実施形態では、JVP波形に関するこれらの特徴量に基づいて、疾患の有無を判定する。例えば、推定した被検体の静脈波信号Svein内に顕著なa波が存在する場合には、右心肥大や三尖弁狭窄の可能性があると判断される。また、顕著なv波が存在する場合には、三尖弁逆流の可能性があると判断される。また、顕著なy谷が存在する場合には、収縮性心膜炎の可能性があると判断される。さらに、JVP値自体が上昇している場合には、右心系の圧が上昇する病態として、心不全、三尖弁疾患、肺動脈狭窄、心膜疾患の可能性があると判断され、JVP値自体が低下している場合には、脱水など循環血液量が減少している可能性があると判断される。

【0065】
図11は、疾患判定部7の構成およびデータフローを示すブロック図である。図11に示すように、疾患判定部7は、特徴量抽出部71および疾患有無判定部72を備える。

【0066】
特徴量抽出部71は、ピーク検出部71aを備える。さらに、特徴量抽出部71は、任意でパラメータ算出部71bと統計値算出部71cとを備えることができる。ピーク検出部71aには、静脈波信号推定部53において推定された静脈波信号Sveinが入力されて、JVP波形におけるa波、c波、v波、x谷およびy谷の各位置および各ピーク高さ(以下、特徴量と呼ぶ)を検出する。例えば、図10に示すJVP波形の一階微分を行うと、単位時間あたりの圧力変化量(圧力変化の速度)の波形を得ることができる。JVP波形におけるa波、c波、v波、x谷およびy谷は、この一階微分波形の各変曲点に対応する。すなわち、この圧力変化量の波形に基づいて変曲点を判定し、それぞれの変曲点の時間軸上の位置と、その時間での圧力値とから、a波、c波、v波、x谷およびy谷の各位置および各ピーク高さ(特徴量)を決定することができる。

【0067】
パラメータ算出部71bおよび統計値算出部71cは、a波、c波、v波、x谷およびy谷の各特徴量についての、より詳細なパラメータおよび種々の公知の統計値を算出することができる。算出したパラメータおよび種々の統計値は、疾患有無判定部72に入力されて、後述する疾患有無判定部72の判定処理の判定精度を高めるために利用することができる。

【0068】
疾患有無判定部72は、比較部72aと、定常値保持部72bとを備える。定常値保持部72bには、例えば健常者の典型的なJVP波形についての特徴量のデータが予め記憶されている。比較部72aは、特徴量抽出部71において得られた、被検体のJVP波形についての特徴量と、定常値保持部72bに記録されている、健常者のJVP波形についての特徴量とを比較する。

【0069】
図12は、疾患有無判定部72が行う判定処理の一例を説明するための模式図である。図中、(a)に示す波形が健常者のJVP波形であり、(b)に示す波形が被検体のJVP波形である。図12に示す例では、v波のピーク位置にずれが生じていることを確認することができる。このような場合、疾患有無判定部72は、所定の大きさのしきい値を超える程度のピーク位置のずれが存在すると判断して、被検体について、三尖弁閉鎖不全の可能性があると判定することができる。

【0070】
(付記事項)
以上、本発明を特定の実施の形態によって説明したが、本発明は上記した第1~第3の実施の形態に限定されるものではない。

【0071】
上記第1~第3の実施の形態では、ドップラー方式のマイクロ波レーダ装置11を使用しているが、マイクロ波レーダ装置11の検波方式はこれに限定されず、ドップラー方式に代えて、例えばFMCW方式やパルス波を用いてもよい。また、マイクロ波レーダ装置11が使用するマイクロ波の周波数も制限されず、電波法による使用の制限の範囲内であれば、例えば1GHz,2.4GHz,10.525GHz,24.15GHz,228GHz等の周波数を使用することができる。マイクロ波の出力も制限されず、いかなる出力のマイクロ波を使用してもよい。ただし、被検体の身体への影響を考慮すると、使用する周波数に応じて出力の上限値を設定し、その上限値以下の出力とすることが望ましい。例えば10GHz以上の周波数のマイクロ波を用いる場合には、出力を10mW以下に抑えることが好ましい。

【0072】
また、上記第1~第3の実施の形態では、推定された静脈波信号の波形は、データ解析部12が備える表示部6に表示されているが、データ解析部12が備える記憶装置(図示せず)にデータとして記憶してもよい。あるいは、データ解析部12から医療機関に設置されたサーバ(図示せず)上に、インターネットを介してデータとして記憶してもよい。

【0073】
また、上記第1~第3の実施の形態では、ステップS1においてマイクロ波の信号Srawにノイズフィルタを適用していたが、ノイズフィルタ51は任意の構成である。すなわち、ステップS1以後の工程において、ノイズフィルタ適用後のマイクロ波の信号Sfltdに代えて、元信号であるマイクロ波の信号Srawをそのまま使用してもよい。

【0074】
また、上記第1または第3の実施の形態では、波形処理部5のノイズフィルタ51はハイパスフィルタを使用していたが、ノイズフィルタ51はハイパスフィルタに限定されず、ローパスフィルタまたはバンドパスフィルタを使用することができる。例えば、呼吸活動によるノイズ信号を除去するのであれば、低周波ノイズ成分を除去するハイパスフィルタを使用し、心拍の周波数以上の高周波ノイズ成分を除去するのであれば、ローパスフィルタを使用すればよく、これらハイパスフィルタおよびローパスフィルタを統合したバンドパスフィルタを使用してもよい。

【0075】
また、上記第1~第3の実施の形態では、ステップS22において、図6(b)に示す自己相関波形のうち、2番目の単位波形を切り出して、マイクロ波の信号Sfltdの区間lの代表波形Rep1としていたが、切り出す単位波形は2番目に限られず1番目であっても3番目であってもよい。

【0076】
また、上記第3の実施の形態では、測定対象の静脈が内頸静脈の場合を一例として説明しているが、測定対象の静脈は内頸静脈に限定されず、被検体のあらゆる静脈を測定対象とすることができる。疾患判定部7が有無を判定する疾患も、右心肥大や三尖弁狭窄、三尖弁逆流、収縮性心膜炎、心不全、三尖弁疾患、肺動脈狭窄、心膜疾患、脱水、三尖弁閉鎖不全等に限定されず、静脈波信号の変化に基づいて判断することができる疾患であれば、あらゆる疾患を対象とすることができる。

【0077】
また、上記第3の実施の形態では、疾患有無判定部72は、v波のピーク位置のずれに基づいて被検体の疾患の有無の可能性を判定しているが、判定に用いるJVP波形の特徴量はv波には限られず、ピーク位置のずれにも限られない。疾患有無判定部72は、JVP波形に関する種々の公知の診断手法に基づいて、上記したa波、c波、v波、x谷およびy谷の各位置および各ピーク高さ(特徴量)を適宜判定に使用することができる。また、判定に利用する特徴量も、図10に示すJVP波形の一階微分により得られる圧力変化量の波形に限らず、二階微分により得られる、単位時間あたりの圧力変化速度の変化量(圧力変化の加速度)の波形を算出して利用してもよい。

【0078】
以上、本発明によると、被験体の静脈において反射したマイクロ波の信号に自己相関処理を施して動脈波信号を再構成し、マイクロ波の信号と前記動脈波信号とに基づいて静脈波信号を推定している。そのため、静脈において反射したマイクロ波の信号には、信号強度が高い動脈波信号が混入しているが、本発明によると、このような動脈波信号の混入があるなかで、信号強度がより低い静脈波信号を適切に分離して抽出することができる。

【0079】
また、マイクロ波レーダ装置11は、非侵襲および非接触でマイクロ波を測定することができるので、接触型のセンサである従来の圧トランスデューサと比較して、より簡便に静脈波信号を観察することが可能となる。

【0080】
また、マイクロ波レーダ装置11の使用は、使用者による高度な熟練は必要とされないので、この点においても、従来よりもより簡便に静脈波信号を観察することが可能となる。マイクロ波の測定および静脈波信号の推定はリアルタイムに行うことができるので、静脈波信号をリアルタイムで観察することが可能となり、例えば医療従事者による日常の循環器診療に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 アンテナ
2 マイクロ波発振・受信器
3 増幅部
4 アナログ-デジタル変換部
5,5′ 波形処理部
6 表示部
7 疾患判定部
10,10′ 静脈波モニタ装置
11 マイクロ波レーダ装置
12,12′ 処理部
51 ノイズフィルタ
51′ 非周期的成分カットフィルタ
51′a 独立成分分析部
51′b 非周期的成分判定部
52 動脈波再構成部
53 静脈波信号推定部
53a 正規化・差分算出部
53b 位相差判定部
71 特徴量抽出部
71a ピーク検出部
71b パラメータ算出部
71c 統計値算出部
72 疾患有無判定部
72a 比較部
72b 定常値保持部
Sraw マイクロ波の信号
Svein 静脈波信号
Sartery 動脈波信号
Nartifact ノイズ信号(体動関連)
Ndisturbance ノイズ信号(外乱等)
Sfltd ノイズフィルタ適用後のマイクロ波の信号
Sveincd 静脈波信号の候補信号
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11