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明細書 :心機能診断表示システム、表示方法及び表示プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5311330号 (P5311330)
公開番号 特開2009-078138 (P2009-078138A)
登録日 平成25年7月12日(2013.7.12)
発行日 平成25年10月9日(2013.10.9)
公開日 平成21年4月16日(2009.4.16)
発明の名称または考案の名称 心機能診断表示システム、表示方法及び表示プログラム
国際特許分類 A61B   8/08        (2006.01)
FI A61B 8/08
請求項の数または発明の数 5
全頁数 21
出願番号 特願2008-228078 (P2008-228078)
出願日 平成20年9月5日(2008.9.5)
優先権出願番号 2007231307
優先日 平成19年9月6日(2007.9.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年8月5日(2011.8.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 隆英
【氏名】北浦 泰
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100108084、【弁理士】、【氏名又は名称】中野 睦子
【識別番号】100115484、【弁理士】、【氏名又は名称】林 雅仁
【識別番号】100129665、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 順子
審査官 【審査官】後藤 順也
参考文献・文献 特開平08-206117(JP,A)
特開2004-195028(JP,A)
特開平07-303642(JP,A)
特開2003-325521(JP,A)
特開平05-337110(JP,A)
川西泰徳等,左室収縮能を加味した新しい左室ディスシンクロニー表示:組織ドプラ法を用いた方法,超音波医学 Vol.35, Supplement JAPANESE JOURNAL OF MEDICAL ULTRASONICS,(社)日本超音波医学会,2008年 4月15日,第35巻,増刊号,第S330頁
調査した分野 A61B 8/00-8/15
特許請求の範囲 【請求項1】
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示システムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する手段と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する手段と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する手段を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示においては、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対方向に向かうように配置することを特徴とするシステム。
【請求項2】
更に、算出されたベクトルの全て又は一部の終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する手段を備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
更に、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する手段を備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示方法であって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する工程と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する工程と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する工程を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置する方法。
【請求項5】
心臓機能に関する情報を処理して表示する段階をコンピュータに実行させる心機能表示プログラムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する段階と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する段階と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する段階をコンピュータに実行させ、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含み、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを実行させるプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、心機能の診断に有用な心機能表示システム、心機能表示方法、及び心機能表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の機能を評価するための指標として、心臓の収縮に際して拍出される血液量などを解析する心臓のポンプ機能を評価する指標や、心筋収縮力の強さなどを解析する心筋機能を評価する指標などが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
ポンプ機能を評価する指標の代表的なものとしては、駆出率、dp/dt、等容収縮時間な
どが知られている。また、心筋機能を評価する指標の代表的なものとしては、組織ドプラ法、ストレイン法、ストレインレート法などによる指標などが挙げられる。
【0004】
また、心臓超音波検査などの心臓イメージング検査から得られる画像等に基づき心機能を評価するための様々な方法が報告されている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
これまでの指標や評価方法は、ポンプ機能単独あるいは局所心筋機能単独というように、単一の心機能を評価することに主眼がおかれていた。しかし、臨床上病態を正確に把握するためには、同時に複数の機能の評価が必要になることが少なくない。そのため、心臓全体の機能と局所の機能を同時に簡便に評価する指標が必要とされていた。

【特許文献1】特開2003-325521号公報
【特許文献2】特開2004-208807号公報
【非特許文献1】Jpn.J.Med.Ultrasonics, Vol.33,No.3,2006,pp.371-381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。即ち、本発明は、心臓全体、特に左心室の全体的な機能に加え、心筋局所の機能をも簡便なかたちとして表示し診断可能とする心機能表示システム、その表示方法及び表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを主な目的として種々検討した結果、心臓の時間に関するパラメーターを一定の手法で表示することにより上記目的が達成し得ることを見出し、更に検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記心機能表示システム、心機能表示方法及びプログラムに関する。
【0009】
(項1)心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示システムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する手段と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する手段と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する手段を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示においては、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、
かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対方向に向かうように配置することを特徴とするシステム。
【0010】
好ましくは、前記画像が、前壁中隔と後壁を通る像、前壁と下壁を通る像、中隔と側壁
を通る像からなる群から選ばれる1以上の像である
項1に記載のシステム。
【0011】
好ましくは、前記時間情報が、
心電図波形におけるQRS波の開始点を始点とし、
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時からなる群から選ばれるいずれかの時点を終点とする時間である
項1に記載のシステム。
【0012】
好ましくは、前記サンプルポイントが、前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔からなる群から選ばれる少なくとも4以上の領域におけるポイントを含んでいる項1に記載のシステム。
【0013】
好ましくは、前記サンプルポイントが、前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔の6つの領域におけるサンプルポイントを含んでおり、
前記表示においては
前壁中隔のサンプルポイントに関するベクトルに対し、時計回りに、
前壁のサンプルポイントに関するベクトルが60度、
側壁のサンプルポイントに関するベクトルが120度、
後壁のサンプルポイントに関するベクトルが180度、
下壁のサンプルポイントに関するベクトルが240度、及び
中隔のサンプルポイントに関するベクトルが300度
の角度をなすように配置する
項1に記載のシステム。
【0014】
好ましくは、前記表示が、目盛を付した直線と共に行うものである項1に記載のシステム。
【0015】
好ましくは、前記サンプルポイントが、心室基部における2以上のサンプルポイントと、心室中部における2以上のサンプルポイントを含んでおり、
前記表示が、心室基部に関するベクトル又はベクトルの終点を結んで形成される図形又は合成ベクトル、及び、心室中部に関するベクトル又はベクトルの終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを独立して表示する項1に記載のシステム。
【0016】
(項2)更に、算出されたベクトルから選択されるベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する手段を備えた項1に記載のシステム。
【0017】
好ましくは、更に、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の割合を算出する手段を備えた項2に記載のシステム。
【0018】
(項3)更に、算出されたベクトルから選択されるベクトルの合成ベクトルを算出する手段を備えた項1又は2のいずれかに記載のシステム。
【0019】
更に、合成ベクトルを表示する手段を備えた項3に記載のシステム。好ましくは、更に
、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する手段を備えた項3に記載のシステム。
【0020】
(項4)心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示方法であって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上に基づき設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する工程と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する工程と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する工程を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置する方法。
【0021】
(項4-2)更に、算出されたベクトルの全て又は一部の終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する工程を備えた項4に記載の表示方法。
【0022】
好ましくは、更に、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の割合を算出する工程を備えた項4-2に記載の方法。
【0023】
(項4-3)更に、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する工程を備えた項4又は項4-2に記載の表示方法。
【0024】
好ましくは、更に、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する手段を備えた項4-3に記載の方法。
【0025】
(項5)心臓機能に関する情報を処理して表示する段階をコンピュータに実行させる心機能表示プログラムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上に基づき設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する段階と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する段階と、
算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形又は合成ベクトルを表示する段階をコンピュータに実行させ、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2点を含み、
前記表示は、ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2点について算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを実行させるプログラム。
【0026】
(項5-2)更に、算出されたベクトルの全て又は一部の終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する段階を実行させる項5に記載のプログラム。
【0027】
好ましくは、更に、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の割合を算出する段階を実行させる項5-2に記載のプログラム。
【0028】
(項5-3)更に、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する段階を実行させる項5又は項5-2に記載のプログラム。
【0029】
好ましくは、更に、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する段階を実行させる項5-3に記載のプログラム。
【0030】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0031】
心臓機能に関する情報とは、公知の検査装置又は診断装置により被験者の心臓を測定することにより得られる心臓の働きに関する情報であって、実際に測定した値だけでなく、測定値を更に処理して得られる情報を含む。
【0032】
例えば、超音波検査、心電図検査、コンピュータ断層(CT)検査、磁気共鳴撮像(MRI
)検査によって得られる情報が含まれる。
【0033】
心臓イメージング検査とは、心臓超音波検査、CT検査、MRI検査など、公知の心臓イメ
ージング方法を用いて行われる検査を意味する。
【0034】
心臓イメージング検査によって得られる左心室画像とは、これらの公知の心臓イメージング検査によって得られた画像を指す。具体的には、左心室長軸像、左心室短軸像などが挙げられる。このうち、左心室長軸像が、好ましく用いられる。
【0035】
左心室長軸像とは、心臓の左心室を縦に切断した形で示される画像であって、例えば、図2左上(図2A)に示されるような形状を有する像である。
【0036】
左心室長軸像としては、具体的には、前壁及び下壁を通る長軸像(以下、2C像ともい
う)、前壁中隔及び後壁を通る長軸像(以下「LAX像」ともいう)、側壁及び中隔を有す
る像(以下「4C像」ともいう)などが挙げられる。
【0037】
左心室長軸像は、例えば、CT装置やMRI装置によって得ることができるが、超音波装置
によって得られる長軸像が、より簡便で一般的である。
【0038】
画像の種類及び数は適宜設定し得るが、前壁中隔と後壁を通る像、前壁と下壁を通る像、側壁と中隔を通る像からなる群から選ばれる1以上の長軸像を含んでいることが好ましく、特にこれら3つの長軸像を全て含んでいることが好ましい。
【0039】
サンプルポイントは、前記画像において目的とする領域に設定される点乃至部分であり、通常心筋壁あるいは僧帽弁輪上から設定される。また、サンプルポイントとして、関心領域を用いることもできる。
【0040】
本発明において、サンプルポイントは、1枚の画像において、心腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つ以上のポイントが対になるようにして設定する。
【0041】
通常は左心室基部あるいは中部の2点を含むように設定するが、心尖部の2点を更に含むように設定してもよい。また、対峙するポイントは、心室基部のポイント同士を対にして設定してもよく、心室中部同士のポイントを対にして設定してもよい。また、心室基部のポイントと心室中部のポイントが対になるように設定してもよい。
【0042】
具体的に、LAX像の場合、サンプルポイントは、前壁中隔及び後壁における2点の組み
合わせとすることができる。2C像の場合、前壁及び下壁における2点の組み合わせとす
ることができる。4C像の場合、側壁及び中隔の2点の組み合わせとすることができる。
好ましくは、これらの組み合わせを2以上含んでいることが好ましく、特に、前壁中隔、
前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔における6つのサンプルポイントを含んでいることが好ましい。
【0043】
サンプルポイントの時間情報とは、サンプルポイントの経時的な変化量に関する情報である。例えば、サンプルポイントにおける速度、加速度、位置、歪み、圧力等の変化にかかる時間の長さが含まれる。また、実際に測定した時間だけでなく、測定した時間を、心拍数などで補正処理した時間も含まれる。
【0044】
例えば、時間情報は、
心電図波形におけるQRS波の開始点を始点とし、
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時からなる群から選ばれるいずれかの時点を終点とする時間とすることができる。
【0045】
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時などの時点は、組織ドプラ法、ストレイン法、ストレインレート法などを用いて得ることができる。
【0046】
ベクトルは、上記時間情報に基づき、算出できる。例えば、ベクトルには、サンプルポイントにおける心電図上QRS波の開始から収縮期における速度のピーク時までの時間の長
さをベクトルの大きさとして算出することができる。また、例えば、サンプルポイントにおける心電図上QRS波の開始から収縮期における速度のピーク時までの時間を心拍数等で
補正した値をベクトルの大きさとして算出することができる。
【0047】
表示は、上記算出したベクトルを以下のように配置して行う。
【0048】
算出したベクトルを、同一の画像における対峙するポイントに関して算出されたベクトルとペアとなって対角線を形成するように配置する。また算出したベクトルは、他のベクトルと始点を一致させるように配置する。
【0049】
別言すると、ベクトルは、始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのサンプルポイントについて算出されたベクトルが互いに反対方向に向かうように配置する。
【0050】
例えば、前壁中隔と後壁を通る長軸像において、対峙する2点として前壁中隔基部におけるサンプルポイントと後壁基部におけるサンプルポイントを設定する場合、前壁中隔基部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、後壁基部におけるサンプルポイントに関するベクトルとは、始点を平面上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。また前壁中隔基部におけるサンプルポイントと後壁中部におけるサンプルポイントを設定する場合、前壁中隔基部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、後壁中部におけるサンプルポイントに関するベクトルとは、始点を空間上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。
【0051】
前壁と下壁を通る長軸像において、対峙する2点として前壁基部におけるサンプルポイントと、下壁基部におけるサンプルポイントを設定する場合、前壁基部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、下壁基部におけるサンプルポイントに関するベクトルは、始点を平面上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。また前壁基部におけるサンプルポイントと下壁中部におけるサンプルポイントを設定する場合、前壁基
部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、下壁中部におけるサンプルポイントに関するベクトルとは、始点を空間上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。
【0052】
側壁と中隔を通る長軸像において、対峙する2点として側壁基部におけるサンプルポイントと、中隔基部におけるサンプルポイントを設定する場合、側壁基部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、中隔基部におけるサンプルポイントに関するベクトルは、始点を平面上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。また側壁基部におけるサンプルポイントと中隔中部におけるサンプルポイントを設定する場合、側壁基部におけるサンプルポイントに関するベクトルと、中隔中部におけるサンプルポイントに関するベクトルとは、始点を空間上の同一の点として、互いに反対方向に向かうように配置する。
【0053】
心室基部のサンプルポイントに関するベクトルのみを表示する場合は、全て同一平面上に配置することが好ましい。同様に心室中部のサンプルポイントに関するベクトルのみを表示する場合は、全て同一平面上に配置することが好ましい。
【0054】
例えば、前壁中隔基部、前壁基部、側壁基部、後壁基部、下壁基部及び中隔基部におけるサンプルポイントに関する6つのベクトルを、同一平面上に配置する。
【0055】
このように同一平面上に配置されたベクトルの終点を結ぶ場合は、多角形が形成される。例えば、6つのベクトルを用いた場合、ベクトルの終点を結ぶと、6角形が形成される。この6角形を用いた心機能の解析手法を「ヘキサゴン解析手法」とも称する。
【0056】
また、例えば、心室基部及び心室中部におけるサンプルポイントに関するベクトルを、同時に、3次元に渡って配置することもできる。この場合、ベクトルの終点を結ぶと、多面体が形成される。
【0057】
ベクトルの配置は、ベクトルの向きが、検体のサンプルポイントの設定位置に対応する角度をなすように、配置させることが好ましい。
【0058】
例えば、ヘキサゴン解析手法において、前壁中隔基部、前壁基部、側壁基部、後壁基部、下壁基部及び中隔基部におけるサンプルポイントに関する6つのベクトルを、同一平面上に配置する場合、
前壁中隔基部のサンプルポイントに関するベクトルに対し、時計回りに、
前壁基部のサンプルポイントに関するベクトルが60度、
側壁基部のサンプルポイントに関するベクトルが120度、
後壁基部のサンプルポイントに関するベクトルが180度、
下壁基部のサンプルポイントに関するベクトルが240度、
中隔基部のサンプルポイントに関するベクトルが300度
の角度をなすように配置することが好ましい。
【0059】
この場合、基準とする図形が正6角形となることから、得られる図形の形状のずれなどを理解しやすい。
【0060】
表示は、算出したベクトルの全て又は一部を上記のように配置したベクトル又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを画面上に表示することにより行うことができる。
【0061】
例えば、算出したベクトルの全て又は一部を上記のように配置した形で表示してもよい
。また、算出したベクトルの全て又は一部の終点を結んで形成される図形を画面上に表示してもよい。また、算出したベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを画面上に表示してもよい。
【0062】
なお、算出したベクトルの全てとは、各サンプルポイントに関して算出したベクトルの全てを意味する。また算出したベクトルの一部とは、算出したベクトルから目的に応じて選択したベクトルを意味する。例えば、算出したベクトルから心室基部におけるサンプルポイントに関するベクトルのみを選択して表示することができる。
【0063】
これらのベクトル、図形又は合成ベクトルの表示は同時に行うこともできる。また、独立して行うこともできる。例えば、配置したベクトルの終点を結んで得られる図形と合成ベクトルを同時に画面上に表示することができる。また、心室基部に関するベクトル又はその図形又は合成ベクトルと、心室中部に関するベクトル又はその図形或いは合成ベクトルとを独立して表示することもできる。例えば、心室基部に関するベクトルの終点を結んで形成される図形と、心室中部に関するベクトルの終点を結んで形成される図形とを、並べて表示することができる。
【0064】
表示は、目盛りを付した直線、例えばベクトルの大きさの基準となる目盛を付した直線と共に行うことができる。
【0065】
直線は、目的に応じて適宜設定し得るが、例えば、ベクトルの始点から、ベクトルの延長線上に延びる直線とすることができる。
【0066】
目盛りも、目的に応じて適宜設定し得るが、例えば、予測される最大時間や予め設定した単位時間とすることができる。例えば、心電図上QRS波の開始から収縮期における速度
のピーク時までの時間の長さにより算出されたベクトルを表示する場合には、公知の知見から予測される最大時間を目盛りとして付することができる。
【0067】
直線及び目盛りの配置は特に限定されないが、例えば、以下のように配置する。
【0068】
前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔について6つの直線を定め、これらの直線が、1端で交わり、かつ他端が放射状に延びるように配置する。更に6つの直線に一定間隔で目盛りを付し、隣接する直線の対応する目盛りを線分で結ぶこととする。これにより、6角形が形成される。
【0069】
好ましくは、6つの直線は、前壁中隔についての直線に対し、時計回りに、前壁についての直線が60度、側壁についての直線が120度、後壁についての直線が180度、下壁についての直線が240度、及び中隔についての直線が300度の角度をなすように表示する。この場合、対応する目盛りを結んで形成される6角形は、正6角形となる。
【0070】
表示を、目盛りを付した直線と共に行う場合は、当該直線又は直線又は目盛りを結んで形成される図形が表示された画面上にベクトル又はベクトルから得られる図形又は合成ベクトルを表示すればよい。
【0071】
例えば、前記目盛りを結んで形成される6角形を有する画面上に、算出したベクトルを表示する場合は、始点を直線の交点に合わせ、対応する直線にベクトルが沿うように表示すればよい。例えば、前壁中隔のサンプルポイントに関するベクトルであれば、前記前壁中隔についての直線に沿うように表示する。
【0072】
上述の表示から、例えば、以下のような情報を得ることができる。
【0073】
1)面積率
面積率とは、予め設定された直線上の目盛りを結んで決定される多角形の全面積に対する、ベクトルの各終点を連結することによってできる多角形の面積の割合を示す。
【0074】
例えば、ヘキサゴン解析手法の場合、面積率は、予め設定された目盛りを結んで決定される6角形の面積に対する、6つのベクトルの終点を連結して形成される6角形の面積の割
合を示す。(以下、「%area-hexagon」とも称する。)
これらの値から、左心室のグローバルな収縮能、換言するとポンプ機能を把握することができる。例えば、得られる値が小さい程、グローバルな収縮能乃至ポンプ機能が改善乃至良好と判断できる。予め設定された目盛りとしては、例えば、予測される最大値として設定した目盛りを挙げることができる。
【0075】
2)遅延度「time-delay magnitude」
遅延度とは、ベクトルを統合して得られる合成ベクトルの長さを示す。
【0076】
この長さ(=程度magnitude)からは、例えばベクトルが心電図上QRS波の開始から収縮
期における速度のピーク時までの時間の長さを大きさとするベクトルであれば、左心室の収縮のずれが全体としてどれだけずれているかを把握することができる。このずれを「ディスシンクロニー(収縮の非同期性)」とも称する。
【0077】
3)遅延部位「time-delay angle」
遅延部位とは、ベクトルを統合して得られる合成ベクトルの終点の位置を示す。この位置からは、左心室のどの部位に遅延部位があるのかを把握することができる。例えば、遅延部位は、例えば、基準となるベクトルからの角度(°)で表すことができる。例えば、ヘキサゴン解析法において、前壁中隔基部、前壁基部、側壁基部、後壁基部、下壁基部及び中隔基部におけるサンプルポイントに関する6つのベクトルを等間隔に60°で配置する場合、基準となるベクトルを前壁中隔のサンプルポイントに関するベクトルとする場合、time-delay angleが120°であれば,遅延部位は「側壁」となる。
【0078】
表示システム
本発明のシステムは、上述の表示を行う手段を備えたシステムである。即ち、
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示システムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する手段と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する手段と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する手段を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示においては、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対方向に向かうように配置することを特徴とする。
【0079】
本システムの概略を図1にブロック図で示す。
【0080】
尚、本明細書において、システムとは、上述の表示のような機能を発揮するための仕組みを意味し、例えば、当該機能を発揮する装置を含む。
【0081】
本発明のシステムの一態様としては、
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示システムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室長軸像上で設定される前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔からなる群から選ばれる少なくとも4以上の領域におけるサンプルポイントの時間情報を入力する手段と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する手段と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する手段を備えており、
前記時間情報は、心電図波形におけるQRS波の開始点を始点とし、
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時からなる群から選ばれるいずれかの時点を終点とする時間であり、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示においては、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対方向に向かうように配置することを特徴とするシステム
が挙げられる。
【0082】
また、本発明における表示システムには、算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する手段を備えることができる。例えば、形成される図形が多角形であれば面積を算出する手段、多面体であれば体積を算出する手段を設けることができる。更に、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の割合を算出する手段を備えることもできる。
【0083】
また、本発明における表示システムには、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する手段を備えることができる。更に、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する手段を備えることができる。
【0084】
また、本発明における表示システムには、上記以外の他の手段を、目的に応じて設けることもできる。
【0085】
例えば、他の手段としては、時間情報を算出するための手段、複数のベクトル長の平均手段、標準偏差又は標準偏差/平均(coefficient of variation)の算出手段、ばらつき
(dispersion)の算出手段などを揃えることもできる。また、補正した場合と補正しない場合とを独立して表示する手段を備えることもできる。
【0086】
表示方法
本発明の表示方法は、上述の表示を行う工程を備えた方法である。即ち、
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示方法であって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する工程と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する工程と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する工程を備えており、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを特徴とする。
【0087】
本発明の表示方法の一態様としては、
心臓機能に関する情報を処理して表示する心機能表示方法であって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室長軸像上で設定される前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔からなる群から選ばれる少なくとも4以上の領域におけるサンプルポイントの時間情報を入力する工程と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する工程と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する工程を備えており、
前記時間情報は、心電図波形におけるQRS波の開始点を始点とし、
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時からなる群から選ばれるいずれかの時点を終点とする時間であり、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含んでおり、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを特徴とする方法が挙げられる。
【0088】
本発明における表示方法には、算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する工程を備えることができる。
【0089】
また、更に、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の割合を算出する工程を備えることもできる。
【0090】
また、本発明における表示方法には、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する工程を備えることができる。更に、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する工程を備えることができる。
【0091】
本発明には、上記以外の他の工程を目的に応じて設けることができる。例えば、時間情報を算出する工程、複数のベクトルの長さの平均を算出する工程、標準偏差又は標準偏差/平均(coefficient of variation)を算出する工程、ばらつき(dispersion)を算出す
る工程、測定値の補正処理を行う工程などが挙げられる。
【0092】
これらの他の工程は、1つ追加してもよく、2種以上を組み合わせて追加してもよい。
【0093】
表示プログラム
本発明の表示プログラムは、上述の表示を実行させる機能を備えたプログラムである。即ち、心臓機能に関する情報を処理して表示する段階をコンピュータに実行させる心機能表示プログラムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室画像上で設定される2個以上のサンプルポイントの時間情報を入力する段階と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する段階と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する段階をコンピュータに実行させ、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含み、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを実行させるプログラムである。
【0094】
本発明の表示プログラムの一態様としては、
心臓機能に関する情報を処理して表示する段階をコンピュータに実行させる心機能表示プログラムであって、
心臓イメージング検査によって取得される左心室長軸像上で設定される前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔からなる群から選ばれる少なくとも4以上の領域におけるサンプルポイントの時間情報を入力する段階と、
入力された時間情報に基づき各サンプルポイントに関するベクトルを算出する段階と、
算出されたベクトルの全て又は一部又はその終点を結んで形成される図形或いは合成ベクトルを表示する段階をコンピュータに実行させ、
前記時間情報は、心電図波形におけるQRS波の開始点を始点とし、
心臓全体あるいは心筋の収縮終了時、拡張の終了時、収縮期における速度のピーク時、拡張期における速度のピーク時、収縮期における加速度のピーク時、及び拡張期における加速度のピーク時からなる群から選ばれるいずれかの時点を終点とする時間であり、
前記サンプルポイントは、前記画像において左心室腔あるいは僧帽弁輪をはさんで対峙する2つのポイントを含み、
前記表示は、前記ベクトルをその始点を同一の点に合わせて放射状に配置し、かつ、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルが互いに反対の方向に向かうように配置することを実行させるプログラム
が挙げられる。
【0095】
本発明における表示プログラムには、算出されたベクトルの全て又は一部或いはその終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積を算出する段階を実行する機能を更に備えることもできる。また、予め設定された面積及び/又は体積に対する、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積及び/又は体積の比率を算出する段階を実行する機能を更に備えることもできる。
【0096】
また、本発明における表示プログラムには、算出されたベクトルの全て又は一部の合成ベクトルを算出する段階を実行させる機能を更に備えることができる。また、合成ベクトルと、基準となるサンプルポイントに関するベクトルとがなす角度を算出する段階を実行させる機能を更に備えることもできる。
【0097】
また、本発明における表示プログラムには、上記以外の他の段階を更にコンピュータに実行させることもできる。他の段階としては、例えば、2以上のベクトルの頂点を連結した図形の形成段階、時間情報の算出段階、複数のベクトル長の平均値の算出段階、標準偏差,標準偏差/平均(coefficient of variation)の算出段階、ばらつき(dispersion)
の算出段階、測定値の補正処理段階などが挙げられる。
【0098】
これらの他の段階は、1つ追加してもよく、2種以上を組み合わせて追加してもよい。
【0099】
また、本発明の表示システム、表示方法及び表示プログラムには、必要に応じて、心機能の診断、検査に関する公知の技術を付加し得る。
【0100】
このような本発明における表示システム、表示方法及び表示プログラムは、心機能の診断、検査、更に心機能の障害に起因する疾患の診断、検査等に有用に用いられる。特に、左心室の収縮および拡張の同期性に関する判断や、同期性の障害に起因し得る疾患の診断などに有用に用いられる。
【発明の効果】
【0101】
本発明によれば、左室の全体的な機能、左室の同期性の程度、及び収縮遅延部位の位置
を同時にかつ一目で把握できるように表示することができる。 更に、全体的な収縮の度
合、収縮遅延度及び収縮遅延部位等を、簡便な形式で明確に表示することもできる。
【0102】
このような特徴により、本発明によれば、心臓機能、特に、左室の全体的な機能、及び、心筋局所の機能を、同時にかつ簡便に診断可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0103】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例及び試験例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0104】
1.解析手順
1)サンプルポイントの設定
被験者の心臓超音波検査を行い、2C像、LAX像及び4C像の左心室長軸像を取得した。得られた画像に基づき、左室の前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔の各領域においてサンプルポイントを設定した。設定例を図2左上(図2A)に示す。尚、図中、aspは
前壁中隔、antは前壁、latは側壁、pstは後壁、infは下壁、spは中隔を示す。
【0105】
2)時間情報及びベクトルの算出
組織ドプラ法を用い、各サンプルポイントについて、心電図上QRS波から、収縮速度が
ピークになるまでの時間(以下、「time-to-peak velocity [TPV]と表示する」)を測定
した。更に、測定した値を、心電図上の√RRで割ることにより、心拍数で補正した。TPV
の測定例を図2右上(図2B)に示す。
【0106】
上記TPVの補正値を長さとして、各サンプルポイントに関するベクトルを算出した。
【0107】
3)ベクトルの表示
得られたベクトルについて、全てのベクトルの始点を同一の点に合わせ、更に、同一の画像において対峙する2つのポイントについて算出されたベクトルは互いに反対方向に向かうようにして、各ベクトルを放射状に平面に並べて表示した。
【0108】
各ベクトルの終点を結ぶことにより、2つのサンプルポイントに関するベクトルのペア
を対角線とした6角形が形成された(図2左下(図2C)参照)。この6角形のグラフを、以下、「ヘキサゴン解析グラフ」とも称する。また当該6角形に基づく解析手法を、以下「ヘキサゴン解析手法」とも称する。
【0109】
更に、上記表示を、ベクトルの大きさの基準となる目盛りを付した直線と共に表示した。
【0110】
当該直線は、ベクトルと始点が同一でベクトルの延長上に延びるものとし、設定したサンプルポイントに応じて、前壁中隔、前壁、側壁、後壁、下壁及び中隔に関する6つの直線を定めた。
【0111】
目盛りは、100msecを一単位として各直線に目盛りを付した。更に、各直線の対応する
目盛りを線分で結んだ。
【0112】
図2右下(図2D)に、当該目盛りを付した直線と共に、ヘキサゴン解析グラフを表示した例を示す。
【0113】
4)面積率(%area-hexagon)
更に、各ベクトルの終点を結んで形成される図形の面積を求め、各ベクトルの長さが全て500msecである場合に形成される6角形の面積を100%とする場合に対する割合を求めた。以下、当該面積の割合を「%area-hexagon」とも称する。「%area-hexagon」の計算式を式1に示す。
【0114】
【数1】
JP0005311330B2_000002t.gif
5)合成ベクトル
更に、各ベクトルを統合して合成ベクトルを算出した。
【0115】
合成ベクトルの長さは遅延時間を示すと考えられることから、以下、「time-delay magnitude」とも称する。合成ベクトルの長さは、「net-delay magnitude」とも称することができる。
また、合成ベクトルの角度は、遅延している部位を示すと考えられることから、以下、「time-delay angle」とも称する。合成ベクトルの角度は、「delayed contraction site」とも称することができる。
【0116】
式2に「time-delay magnitude」の計算式を示す。また式3に「time-delay angle」の計算式を示す。
【0117】
合成ベクトルの計算
【0118】
【数2】
JP0005311330B2_000003t.gif

【0119】
【数3】
JP0005311330B2_000004t.gif

【0120】
試験例
健常者50名および心疾患患者40名に対し、上述の解析方法を用いてヘキサゴン解析を行った。心疾患患者40名のうち17名は、左室駆出率が40%未満の重症心不全患者であった。
【0121】
上述の解析手順に従って、各対象者のTPVを計測して時間情報を求めた。
【0122】
更に、事前に作成したプロトタイプのヘキサゴン解析プログラムソフトを使用して、時間情報に基づきベクトルを算出した。更に、算出されたベクトルの配置を行い、配置したベクトルから得られる図形及び合成ベクトルの表示を行った。更に、前述の%area-hexagon、time-delay angle、およびtime-delay magnitudeの算出を行った。
【0123】
ヘキサゴン解析の妥当性を検証するため、これまでの心機能診断の代表的な指標である左室駆出率および等容収縮時間と比較検討した。
【0124】
まず、各対象者について、公知の方法に従って左室駆出率および等容収縮時間を求め、%area-hexagonとの相関を調べた。
【0125】
更に、左室のパフォーマンスを反映する指標である心電図上のQRS幅との比較検討を行
った。
【0126】
図3右上(図3B)に、%area-hexagonと左室駆出率(「LVEF」)との関係を示したグ
ラフを示す。また、図3左上(図3A)に、%area-hexagonと等容収縮時間(ICT)の関係を示したグラフを示す。さらに、図3左下(図3C)に%area-hexagonとQRS幅(QRS width)との関係を示したグラフを示す。
【0127】
その結果、%area-hexagonは、両者と有意な相関を示し、左室駆出率(LVEF)とは相関
係数0.68、等容収縮時間(ICT)とは相関係数0.80を示した。また、QRS幅(QRS width)
とが、相関係数0.72を示した。
【0128】
また、別のカテーテル検査にて評価した患者群を対象として、%area-hexagonとdp/dtとの比較検討を行った。その結果、%area-hexagonはdp/dtとも良好な相関を示した(相関係数0.62)。
【0129】
TPVは左室dp/dtや左室駆出率(EF)と相関することが知られており(文献:Yamada H, Oki T, Tabata T, Iuchi A, Ito S. Assessment of left ventricular systolic wall motion velocity with pulsed tissue Doppler imaging: comparison with peak dp/dt of the left ventricular pressure curve. J Am Soc Echocardiogr 1998; 11: 442-449.),TPVは等容収縮時間(ICT)を含んでいることから,TPVの総計を指標化した%area-hexagonは左室収縮能を反映するものと考えられる。
【0130】
これらのことから、%area-hexagonはグローバルな心機能を反映する極めて有用な指標
と考えられた。
【0131】
更に、心疾患患者と、健常者の解析結果を比較して、ヘキサゴン解析手法の妥当性を検証した。図4に、心疾患患者と健常者の組織ドプラ曲線の解析例を示す。図4左(LBBB)が、心疾患患者の解析例、図4右(Normal)が、健常者の解析例を示す。矢印は、収縮期
の速度のピークを示す。
【0132】
図5に、図4の解析例に対応するヘキサゴン解析手法の解析例を示す。図5左(図5A)が、心疾患患者の解析例、図5右(図5B)が、健常者の解析例を示す。
【0133】
その結果、心疾患患者のヘキサゴン解析グラフは、健常者のグラフより明らかに面積が大きく、一目でグローバルな機能の程度の違いが把握できた。更に、算出した合成ベクトルにより、遅延時間の程度、及び遅延部位が一目で明らかになった。更に、%area-hexagon、time-delay angle、およびtime-delay magnitudeを算出することにより、グローバル
な機能、遅延時間及び遅延部位を同時に数値化して示すことができた。このように、心臓のグローバルな機能及び局所的機能を同時に計測表示することで、より正確な病態の把握が可能になると考えられる。
【0134】
更に、心疾患患者の治療前後における解析結果を比較して、ヘキサゴン解析手法の妥当性を検証した。
【0135】
図6に、心疾患患者に対する心臓再同期療法の実施前と後に行ったヘキサゴン解析手法の解析例を示す。図6左(図6A)は、治療前の解析例、図6右(図6B)は、治療後の解析例を示す。その結果、図形面積の縮小から治療後にグローバルな機能の改善が見られたこと、更に、遅延度及び遅延部位の変化から局所的なずれの改善が見られたことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の表示システムの概略を示すブロック図である。
【図2】図2左上(図2A)は左室長軸像3断面上で設定したサンプルポイントの部位の一例を示す図面である。図2右上(図2B)は、1つのサンプルポイントにおける組織ドプラ法に基づく速度曲線を示す。TPVは、心電図QRS波から収縮期のピークまでの時間を示す。図2左下(図2C)は、TPVを心拍数で補正した値を用いて算出した6つのベクトルを用いた表示例を示す。図2右下(図2D)は、目盛を付した直線を用いた表示の1例を示す。
【図3】図3左上(図3A)は、%area-hexagonと等容収縮時間(ICT)の関係を示すグラフである。図3右上(図3B)は、%area-hexagonと左室駆出率(「LVEF」)との関係を示すグラフである。図3左下(図3C)は%area-hexagonとQRS幅(QRS width)の関係を示すグラフである。
【図4】組織ドプラ速度曲線の解析例を示す。左は、心疾患患者(LBBB)の解析例を示す。右は、健常者(Normal)の解析例を示す。
【図5】図4の解析例に対応するヘキサゴン解析例を示す。左(図5A)は、心疾患患者(LBBB)の解析例を示す。右(図5B)は、健常者(Normal)の解析例を示す。
【図6】疾患患者の治療前後のヘキサゴン解析例を示す。左(図6A)は治療前を示す。右(図6B)は治療後を示す。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図2】
4
【図4】
5