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明細書 :熱電発電装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-037542 (P2018-037542A)
公開日 平成30年3月8日(2018.3.8)
発明の名称または考案の名称 熱電発電装置
国際特許分類 H01L  35/32        (2006.01)
H01L  35/30        (2006.01)
H01L  35/14        (2006.01)
FI H01L 35/32 A
H01L 35/30
H01L 35/14
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-170003 (P2016-170003)
出願日 平成28年8月31日(2016.8.31)
発明者または考案者 【氏名】渡邉 孝信
【氏名】徐 泰宇
【氏名】橋本 修一郎
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100137800、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 正義
【識別番号】100148253、【弁理士】、【氏名又は名称】今枝 弘充
【識別番号】100148079、【弁理士】、【氏名又は名称】梅村 裕明
【識別番号】100158241、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 安子
審査請求 未請求
要約 【課題】微細化して高出力を得ることができる熱電発電装置を提供する。
【解決手段】基板12と、前記基板12の表面上の熱電変換素子14と、前記熱電変換素子14と熱的に接続された熱伝導部16とを備え、前記熱電変換素子14は、少なくとも一対のP型熱電変換部18とN型熱電変換部20を有し、前記熱伝導部16は、前記P型熱電変換部18と前記N型熱電変換部20の前記基板12表面に平行な方向の一端24,22側と、熱的に接続されていることを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、
前記基板の表面上の熱電変換素子と、
前記熱電変換素子と熱的に接続された熱伝導部と
を備え、
前記熱電変換素子は、少なくとも一対のP型熱電変換部とN型熱電変換部を有し、
前記熱伝導部は、前記P型熱電変換部と前記N型熱電変換部の前記基板表面に平行な方向の一端側と、熱的に接続されている
ことを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
前記P型熱電変換部と前記N型熱電変換部は、前記基板表面に平行な方向の一端と他端の間に温度勾配が生じることを特徴とする請求項1記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記熱電変換素子は、Si及びGeの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記熱電変換素子は、前記基板の面方向長さが200nm以下のナノワイヤであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の熱電発電装置。
【請求項5】
前記基板が、SiOの表面層を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の熱電発電装置。
【請求項6】
前記P型熱電変換部と前記N型熱電変換部の間に挟まれた電気伝導部を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の熱電発電装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電発電装置は、環境の温度差から電気エネルギーを作り出すもので、再生可能エネルギーを利用するデバイスである。熱電発電装置は、熱電変換素子中に大きな温度勾配を形成することにより、出力を大きくすることができる。温度勾配を形成するには、熱電変換素子以外の寄生熱抵抗を相対的に小さくするため、熱電変換素子の長さを長くすることが有利であると考えられていた。
【0003】
熱電発電装置として、例えば特許文献1が開示されている。上記特許文献1の熱電発電装置は、複数の熱電変換素子と、熱電変換素子の上下端に接続された電気配線基板とを備え、上端の電気配線基板が加熱され、下端の電気配線基板が冷却されている。特許文献1の熱電変換素子は、高さ方向において温度勾配が生じる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2016-9779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7に、従来の熱電発電装置100におけるスケーリング則を求めた結果を示す。熱電発電装置100は、高さ方向の長さが長いP型熱電変換部108及びN型熱電変換部110を備える。P型熱電変換部108及びN型熱電変換部110は、下端が電極106、上端が電極112に電気的に接続されている。P型熱電変換部108及びN型熱電変換部110の幅をそれぞれL、高さをHとすると、寄生熱抵抗が無視できる場合の最大出力Pは、P=(SHσΔT)/(32H)である。ここでSおよびσはそれぞれ、熱電変換部のゼーベック係数および電気伝導率を表す。ΔTは熱電変換部の両端の温度差である。したがって従来の熱電発電装置100の場合、幅Lを小さくしても高出力化することができない。すなわち従来の熱電発電装置100は、微細化しても高出力を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、微細化して高出力を得ることができる熱電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱電発電装置は、基板と、前記基板の表面上の熱電変換素子と、前記熱電変換素子と熱的に接続された熱伝導部とを備え、前記熱電変換素子は、少なくとも一対のP型熱電変換部とN型熱電変換部を有し、前記熱伝導部は、前記P型熱電変換部と前記N型熱電変換部の前記基板表面に平行な方向の一端側と、熱的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱電変換素子の長さ及び幅を最小化し、微細化することにより高出力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る熱電発電装置の使用状態を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る熱電発電装置の構成を示す平面図である。
【図3】本実施形態に係る熱電発電装置の製造方法を段階的に示す縦断面図であり、図3Aは絶縁層上にn型ドープをした段階、図3Bは選択的にp型ドープをした段階、図3Cは酸化膜上にパターンを形成した段階、図3Dは金属膜を形成した段階、図3Eは金属膜及びパターンを除去した段階、図3Fは熱伝導部を形成した段階である。
【図4】図4Aはシミュレーションの結果、図4Bは図4Aの温度分布を等高線で表した結果を示す図である。
【図5】熱電変換素子の位置と温度の関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態に係る熱電発電装置におけるスケーリング則の説明に供する斜視図である。
【図7】従来の熱電発電装置におけるスケーリング則の説明に供する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1に示す熱電発電装置10は、基板12と、前記基板12の表面上の熱電変換素子14と、前記熱電変換素子14と熱的に接続された熱伝導部16とを備える。熱電発電装置10は、熱伝導部16を通じて、熱源と熱的に接続されている。

【0011】
基板12は、表面に絶縁層としてのSiO層17を有する。基板12は、Si基板を用いることができる。基板12にダイヤモンド基板を用いることもでき、この場合は絶縁層17が不要となる。本実施形態の場合、基板12は、Si層15と、当該Si層15上にSiO層17を有する。

【0012】
熱電変換素子14は、一対のP型熱電変換部18とN型熱電変換部20を1個以上(本図の場合2個)有する。P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の材料は、Si、Ge、SiGe、CrSi、FeSi、MnSi、MgSi、MgGe、CoSb、AgSbTe、SnTe、PbTe、BiSe、SbTe、BiTeから選択される。微細加工を施すには、P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の材料は、Si、Ge又はSiGeが好ましい。熱電変換部にSiを用いる場合、P型ドーパントとしてはB、Al、Ga、N型ドーパントとしてはP、As、Sbである。

【0013】
P型熱電変換部18とN型熱電変換部20は、基板12表面に平行な方向の一端から他端までの長さLが500nmあれば、十分な温度勾配が得られる。P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の長さLは、200nm以下であるのがより好ましい。P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の長さLの下限は、特に限定されないが、加工性の観点から本特許出願の時点においては10nm程度である。P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の高さHは、長さL以上であるのが好ましい。

【0014】
熱電変換素子14は、P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の間に、電気伝導部26を有する。電気伝導部26の材料は、NiSi、NiSi、CoSi、TiSi、ErSiから選択される。

【0015】
本実施形態の場合、熱電変換素子14は、電気伝導部26を間に挟んでP型熱電変換部18とN型熱電変換部20が二組と、当該二組のP型熱電変換部18とN型熱電変換部20の間に挟まれた電気伝導部26と、基板12の両側に配置された電極32,34とを有する。電極32は隣接するN型熱電変換部20に、電極34は隣接するP型熱電変換部18に、それぞれ電気的に接続されている。

【0016】
熱伝導部16の材料は、熱伝導性を有すると共に絶縁性の材料、例えば、AlN、BN、BeO、Siから選択される。熱伝導部16は、熱電変換素子14と、電気伝導部26、電極32,34からなる熱電変換素子14上に、複数(本図の場合3個)設けられている。本実施形態の場合、熱伝導部16同士の間の空間30は熱電発電装置10の周囲と同じ大気などの気体が存在する。

【0017】
中央の熱伝導部16Aは、中央の電気伝導部26A上に配置されている。熱伝導部16Aの長さ方向の一端は、電気伝導部26Aの一側に配置されたP型熱電変換部18Aの一端24と、他側に配置されたN型熱電変換部20Aの一端22にそれぞれ熱的に接続されている。P型熱電変換部18Aの一端24とN型熱電変換部20Aの一端22の間には、電気伝導部26Aが配置されている。

【0018】
基板12表面の一側(図中左側)の熱伝導部16Bは、電極32上に配置されている。熱伝導部16Bの長さ方向の一端は、電極32に電気的に接続されたN型熱電変換部20の一端22と熱的に接続されている。

【0019】
基板12表面の他側(図中右側)の熱伝導部16Cは、電極34上に配置されている。熱伝導部16Cの長さ方向の一端は、電極34に電気的に接続されたP型熱電変換部18の一端24と熱的に接続されている。

【0020】
上記のように熱伝導部16は、前記基板12表面に平行な方向の、前記P型熱電変換部18の一端24と、前記N型熱電変換部20の一端22に熱的に接続されている。P型熱電変換部18Aの他端25とN型熱電変換部20Bの他端23の間には、電気伝導部26Bが配置されている。P型熱電変換部18Bの他端25とN型熱電変換部20Aの他端23の間には、電気伝導部26Cが配置されている。

【0021】
P型熱電変換部18は、熱伝導部16と熱的に接続された一端24が高温部、他端25が低温部となる。N型熱電変換部20は、熱伝導部16と熱的に接続された一端22が高温部、他端23が低温部となる。P型熱電変換部18及びN型熱電変換部20は、高温部と低温部の間に温度勾配が生じる。

【0022】
熱伝導部16の他端は、熱浴28と熱的に接続される。熱浴28は、例えば、Cu、Au、Ag、BN、ダイヤモンドとすることができる。

【0023】
図2に示すように、熱電変換素子14は、幅Dが上記長さLと同じであってもよい。熱電変換素子は、電極32から電極34へ直線状に延びるナノワイヤ形状を有し、複数(本図の場合、8個)が並列に配置され、電極32,34に接続されている。

【0024】
次に、上記熱電発電装置10の製造方法について、図3を参照して説明する。まず絶縁層としてのSiO層17上のSi層にN型ドーピングをし、N型熱電変換層(n-Si層)40を形成する(図3A)。次いでホトレジストマスク44を選択的に形成した後、ホトレジストマスクの開口部のN型熱電変換層にP型ドーピングをし、P型熱電変換部(p-Si部)18を形成する(図3B)。

【0025】
その後、有機溶媒を用いてホトレジストマスク44を除去する。次いで、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いて、酸化膜46を形成する。当該酸化膜46上にホトレジストマスク48を選択的に形成する(図3C)。

【0026】
ホトレジストマスク48の開口部の酸化膜をエッチングにより除去し、酸化物マスク47を形成する。その後、有機溶媒を用いてホトレジストマスクを除去する。次いで、スパッタリング法を用いて、金属膜として例えばNi膜50を形成する(図3D)。その後、400~600℃の条件でアニール処理をする。アニール処理により、酸化膜物マスク47で覆われていないN型熱伝導変換層(n-Si層15)40の一部が合金(NiSi)化する。アニール処理後、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により、金属膜、酸化物マスクを除去すると共に平坦化する(図3E)。このようにして基板12上に熱電変換素子14が形成される。

【0027】
次いで、ホトレジストマスクを選択的に形成した後、熱伝導材料層としてのAlN層を形成する。有機溶媒を用いて上記ホトレジストマスクを除去することにより、ホトレジストマスクの上に形成された熱伝導材料層もリフトオフにより除去され、熱電変換素子14上に熱伝導部16が形成される(図3F)。上記のようにして、熱電発電装置10を製造することができる。

【0028】
本実施形態の熱電発電装置10は、熱伝導部16の他端を熱浴28と熱的に接続して用いられる。熱浴28の熱は、熱伝導部16の他端から一端へと伝わり、P型熱電変換部18の一端24側と、N型熱電変換部20の一端22側を加熱する。

【0029】
P型熱電変換部18は、一端24のみが熱伝導部16と熱的に接続されているので、一端24と他端25の間に温度差が生じる。すなわちP型熱電変換部18は、一端24から他端25に向かって温度が低下していく温度勾配が生じる。N型熱電変換部20は、一端22のみが熱伝導部16と熱的に接続されているので、一端22と他端23の間に温度差が生じる。すなわちN型熱電変換部20は、一端22から他端23に向かって温度が低下していく温度勾配が生じる。この温度勾配により、P型熱電変換部18中の正孔は、一端24から他端25へ移動し、N型熱電変換部20中の電子は、一端22から他端23へ移動する。このようにしてP型熱電変換部18の正孔と、N型熱電変換部20の電子が、電気伝導部26を通じて再結合することにより、電圧が生じる。この電圧は、両端の電極32,34より、外部へ出力される。

【0030】
本実施形態の熱電発電装置10は、熱電変換素子14における基板12表面に平行な方向の数100nmの領域に、熱伝導部16から伝導された熱によって生じる温度勾配を利用している。

【0031】
図4A,図4Bに示す図は、本実施形態の熱電発電装置10に類似する熱電発電装置において、温度変化をシミュレーションした結果を示す。本図における熱電発電装置は、SiO層54上に複数のワイヤ状の熱変換素子56と、熱変換素子56上に熱伝導部52とを有する。熱電変換素子56の材料はSiとし、熱伝導部52の材料はAlNとした。本図において温度は、白色が最も高く、色が濃くなるにしたがって低くなること示している。熱伝導部52の温度が最も高く、熱伝導部16の周囲に向かって温度が徐々に低下していることが確認された。

【0032】
図4,図4Bの結果から、熱電変換素子56における熱伝導部52からの距離と、温度との関係を、熱電変換素子14の長さ別に調べた結果を図5に示す。図5は、横軸が熱電変換素子の位置(μm)、縦軸が温度(K)を示す。熱電変換素子56の長さは、10,50,100,500nmとした。

【0033】
本図から、熱電変換素子56の長さが500nmの場合でも、50K程度の温度勾配が生じていること、長さが短くなるほど、特に200nm以下において、急峻な温度勾配が得られることが確認された。

【0034】
図6に本実施形態に係る熱電発電装置10におけるスケーリング則を求めた結果を示す。熱電変換素子14の長さ及び幅をL、高さをHとすると、出力Pは、P=(SHσΔT)/(32L)である。すなわち、本実施形態の熱電発電装置10の場合、熱電変換素子14の長さ及び幅Lを最小化し、微細化することにより高出力化を図ることができる。

【0035】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。

【0036】
例えば、上記実施形態の場合、P型熱電変換部18とN型熱電変換部20の間には、電気伝導部26が設けられている場合について説明したが、本発明はこれに限らず、電気伝導部26を省略してもよい。

【0037】
熱電変換素子14は、電気伝導部26を間に挟んでP型熱電変換部18とN型変換素子を二組有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、一組又は三組以上としてもよい。

【0038】
熱電発電装置10は、8個の熱電変換素子14を備える場合について説明したが、本発明はこれに限らず、7個以下又は9個以上でもよい。

【0039】
熱伝導部16同士の間の空間30は熱電発電装置10の周囲と同じ大気などの気体が存在する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、熱伝導性が低く、絶縁性の材料、例えばペリレン系やエポキシ系の樹脂、多孔質シリカで空間30を充填してもよい。空間30を真空にしてもよい。空間30の内部に非蒸発型ゲッター材料を配置し、空間30内の活性ガスを非蒸発型ゲッター材料に吸着することにより、空間30を真空にすることができる。非蒸発型ゲッター材料は、Ti、Zr、Nb、Ta、V、Hfおよびこれらの混合部から選択される。

【0040】
熱電発電装置10は、基板12に対して熱浴28を低温にしても動作する。この場合、電極32と34に生じる起電力の極性が反転する。

【0041】
熱電発電装置10はペルチェ冷却器としても動作する。電極32と34の間に電流を流すことにより、熱浴28と基板12の間で温度差を設けることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 熱電発電装置
12 基板
14 熱電変換素子
15 Si層
16 熱伝導部
16A、16B、16C 熱伝導部
16B 熱伝導部
16C 熱伝導部
17 SiO
18 P型熱電変換部
20 N型熱電変換部
22 一端
24 一端
26 電気伝導部
26A、26B、26C 電気伝導部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6