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明細書 :画像解析プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-185407 (P2019-185407A)
公開日 令和元年10月24日(2019.10.24)
発明の名称または考案の名称 画像解析プログラム
国際特許分類 G06T   7/60        (2017.01)
G06T   7/13        (2017.01)
G06T   7/00        (2017.01)
G06M   9/00        (2006.01)
FI G06T 7/60 200H
G06T 7/13
G06T 7/00 350D
G06M 9/00 A
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2018-075772 (P2018-075772)
出願日 平成30年4月10日(2018.4.10)
発明者または考案者 【氏名】佐藤惇哉
【氏名】山田貴孝
【氏名】小出トオル
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147038、【弁理士】、【氏名又は名称】神谷 英昭
審査請求 未請求
テーマコード 5L096
Fターム 5L096EA05
5L096EA06
5L096FA03
5L096FA18
5L096FA24
5L096FA53
5L096FA54
5L096FA59
5L096FA60
5L096FA66
5L096GA02
5L096GA51
5L096GA55
要約 【課題】特別な装置・機材を必要とすることなく、特にこれまで少枚数で薄紙であったために手作業で行われていた脂取り紙などの計数に適した画像解析プログラムを提供する。
【解決手段】重ねられた紙葉の画像から紙同士の境界を計数する画像解析プログラムであって、入力画像を、遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法によって紙同士の境界線(エッジ)を抽出するステップと、エッジの縦横比と画素数とからのノイズを除去するステップと、ハフ変換により各エッジの直線らしさ(投票値)を取得し、最大の投票値に該当する直線を取得し、取得した直線に該当するエッジを除去するステップを繰り返し、全てのエッジが無くなるまでこの処理を繰り返すステップと、前記取得された直線の数を紙の枚数として算出するステップとを情報処理装置に実行させる像解析プログラム。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
重ねられた紙葉に関して入力された画像から紙同士の境界を特定し計数する画像解析プログラムであって、
入力画像を、遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法によって紙同士の境界線(エッジ)を抽出(境界線を抽出した画像を「エッジ画像」という。)するステップと、
エッジの縦横比と画素数とからエッジ画像中のノイズを除去するステップと、
エッジ画像に対してハフ変換を適用して各エッジの直線らしさ(「投票値」という)を取得し、最大の投票値に該当する直線を取得するステップ、
取得された直線に該当するエッジとそれに近いエッジを、両方共にエッジ画像から除去するステップと、
再び前記ハフ変換を適用して、エッジ画像から直線に該当するエッジを除去するまでの2ステップを繰り返し、全てのエッジが無くなるまでこの処理を繰り返すステップと、
前記取得された直線の数を紙の枚数として算出するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする画像解析プログラム。
【請求項2】
前記ノイズを除去するステップにおいて、エッジの縦横比(アスペクト比)が10以下であることを条件にノイズと判断して除去することを特徴とする請求項1に記載の画像解析プログラム。
【請求項3】
前記エッジ画像からエッジを除去するステップにおいて、除去されたエッジの重心座標から、15画素未満の重心座標を有する他のエッジを、前記それに近いエッジとして判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像解析プログラム。
【請求項4】
前記直線を取得するステップにおいて、各直線の中点のx座標を取得して昇順にソートし、隣り合う直線のx座標間の距離が8画素以下である場合、一つの直線として纏めることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像解析プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析プログラムに係り、特に紙葉等が積み重ねられた画像を解析して枚数を計測するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された紙類の枚数を算出する簡単な方法としては、全体の質量を1枚辺りの質量で除して枚数を求めるもの、紙葉に光りを照射して、その透過光量を光学センサにより検知するもの、紙葉を挟んで電極を配置し、静電容量を測定する方法などがある。これらは紙葉の数を直接計数するのではなく、代用特性として質量、透過光量や静電容量をとらえ、これに基づいて判定するものである。
【0003】
しかし、薄紙の場合や嵩張る場合などには正確に計数することが困難であり、処理量が多い場合には作業性に問題があるため、以下に述べるような種々の提案がなされてきた。
【0004】
例えば、「搬送紙葉厚み検知装置」(特許文献1)には、紙葉の搬送路上に配置された基準ローラと、この基準ローラに弾性的に押しつけられ前記基準ローラと共に紙葉を挟持する検知ローラと、紙葉が挟持されたとき検知ローラが紙葉の厚みに対応して生じる変位を検知して電気信号に変換する検知器などを備えた装置が提案されている。この装置は重なって搬送された場合でも識別可能であり、連続的に計数できる点で優れているが、紙葉が薄い場合には、検知することが困難である。
【0005】
「冊子類の員数装置」(特許文献2)には、冊子の背の部分を光源で照射し、反射光をプリズムと集光レンズを介してホトトランジスタに導き、冊子の凹凸に応じた電気信号に変換する装置が記載されている。同様な思想で「板紙の積み上げ枚数計測装置」(特許文献3)には、2つ折り部をコンベア側方に向けて積み上げられた段ボールシートをCCDカメラで撮像し、明暗パターンの数をカウントして計数するという例や、「折り加工された用紙の枚数の計数方法」(特許文献4)には、背部の前方斜めより光りを照射し、凹部に影部を生じさせ、カラーで撮像して三原色に分離したのち、色の強さによる多値化した色信号に変換し、色の強さによって凹部の影と非影部を判別して計数する例がある。これらはある程度の厚みと明暗が現れやすい場合には有効であるが、やはり薄紙などに適用することは難しいと思われる。
【0006】
また、「束数計数装置」(特許文献5)には、積み重ねたシート束の側面にスリット光を照射して画像を取得し、映像信号を二値化して破線状の明線像とし、この破線状像の明部の数を計数する装置が示されている。スリット光照明によって、照明部分と非照明部分とのコントラストが大きいので、ノイズの影響が小さく、信号の二値化によって個々のシート束が検出できるが、束を構成する一枚単位での検出を意図したものではない。
【0007】
さらに、「シート積み重ね体のシート枚数自動計数方法および装置」(特許文献6)は、シート積み重ね体の1側面に沿ってカメラを一定速度で移動させながら、所定枚数のシートからなる撮影単位を順次撮影し、画像中のシート間隙画像の2値化像を、所定の構成を有するウインドセグメント群に対比することによって次の撮影タイミングの補正制御を行うというものである。従来手めくり計数以外に計数方法のなかった厚紙などの自動計数には有効であるが、薄紙や枚数の少ない場合の計数には適用が困難と思われる。
【0008】
その他、「枚数計測方法および枚数計測装置」(特許文献7)は、紙山の高さ方向に沿ってラインCCDセンサをスキャンして得られた画像において、紙境界部を強調化するフィルタリング処理を行い、境界部分の濃淡データを加算して得られた濃淡分布に対して閾値を算出して境界を抽出するというものである。紙境界方向に加算することでノイズ情報成分が弱められる、境界情報がより強くなる点で優れており、210μm(プリンタ用紙)の厚みまでの測定は可能であるが、更に薄い厚みの紙(例えば脂取り紙など)について記載の装置が適用できるかは不明である。また、「紙葉計数装置」(特許文献8)は、発光ダイオード等の光源により照明された紙葉の端面と紙葉間の隙間による反射光パターンを検出し、端面対応の信号及び隙間対応の信号と閾値を比較して、端面の出力信号を検出し枚数を求めるというものである。紙葉の端面の反射率と、隙間の反射率の違い(隙間の方が、信号レベルが低い)により、閾値と比較して枚数を求めることが可能であるが、適当な紙の種類ごとに閾値を設定することが課題と思われる。
【0009】
前記のいずれの提案においても薄い紙(特に脂取り紙など)で検討された例はなく、また低価格で入手可能な装置などを利用した構成にすることや、画像解析等の専門的な知識を必要としないこと(例えば閾値の設定)などの要望に十分に答えられるとは言い難い面もあった。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平1-209310号公報
【特許文献2】特開昭61-272892号公報
【特許文献3】特開2004-171435号公報
【特許文献4】特開平9-62824号公報
【特許文献5】特開平3-238579号公報
【特許文献6】特開平5-6471号公報
【特許文献7】特開2004-94442号公報
【特許文献8】特開2002-163630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特別な装置・機材を必要とすることなく、処理手法も簡単な紙葉計数方法を提案することであり、特にこれまで少枚数で薄紙であったために手作業で行われていた脂取り紙などの計数に適した画像解析プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、重ねられた紙葉に関して入力された画像から紙同士の境界を特定し計数する画像解析プログラムであって、入力画像を、遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法によって紙同士の境界線(エッジ)を抽出(境界線を抽出した画像を「エッジ画像」という。)するステップと、エッジの縦横比と画素数とからエッジ画像中のノイズを除去するステップと、エッジ画像に対してハフ変換を適用して各エッジの直線らしさ(「投票値」という)を取得し、最大の投票値に該当する直線を取得するステップ、取得された直線に該当するエッジとそれに近いエッジを、両方共にエッジ画像から除去するステップと、再び前記ハフ変換を適用して、エッジ画像から直線に該当するエッジを除去するまでの2ステップを繰り返し、全てのエッジが無くなるまでこの処理を繰り返すステップと、前記取得された直線の数を紙の枚数として算出するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする。
【0013】
入力画像から紙同士の境界線を抽出するためのキャニー法は、J. Canny,“A Computational Approach to Edge Detection,”IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 1986, vol. PAMI-8, No. 6, pp. 679~698(以下、この文献を参考文献1と呼ぶことがある)を参照することができる。キャニー法は、隣り合う画素値の変化量を計算し、その変化量が事前に指定した2つの閾値以上であれば、境界線として出力するものである。
【0014】
このキャニー法の欠点としては、2つの閾値はユーザが事前に設定しておかなければならない点である。この閾値設定が不適切だと、境界線の抽出が不十分であったり、ノイズが抽出されてしまう。また最適な値を設定したとしても、画像取得時の撮影環境などにより、この値も変化するため、ユーザにその都度閾値調整を行わせることは、産業上好ましくない。本発明では遺伝的アルゴリズムを適用することで、この課題を解決している。
【0015】
遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法により可能な限りノイズを抑えることができるが、それでも多少のノイズが残る場合がある。ノイズは解析結果に影響を及ぼすことがあるので、エッジ画像に対してノイズ除去が行われる。
【0016】
ノイズ除去後のエッジ画像から直線を取得する方法としてハフ変換が用いられる。ハフ変換は各エッジの直線らしさ(投票値)を数値的に取得できる手法であり、ハフ変換の後にユーザが事前に指定した閾値以上の投票値を持つ直線を出力する。しかし、指定する閾値によっては同じエッジから複数の直線が取得されてしまうという問題もあるため、ハフ変換の閾値も自動化する必要がある。本発明では、最大の投票値に該当する直線を取得し、これに近いエッジと共にエッジ画像から除去する。これにより取得済みのエッジから再び直線を取得することを防止するのである。
【0017】
あとは、上記ハフ変換を繰り返すことで、エッジ画像から全てのエッジが無くなるまで処理すれば、取得された直線の数が紙の枚数として算出される。
【0018】
本発明ではノイズを除去するステップにおいて、例えばエッジの縦横比(アスペクト比)が10以下であることを条件にノイズと判断して除去することが好ましい。紙同士の境界線となるエッジ部分は、ノイズ部分と比べて一方向に長く繋がっている。従ってエッジ部分のアスペクト比はノイズ部分よりも全体に大きくなる。また仮に本来一つの境界線であるべきものが、エッジ画像では2以上に分割して表示され、その一部がノイズと判断されて除去されてしまっても、残ったエッジは次のハフ変換で一つのエッジとして処理されるので、問題はない。
【0019】
本発明のエッジを除去するステップにおいて、除去されたエッジの重心座標から、15画素未満の重心座標を有する他のエッジを、近いエッジとして判断し、両者を共に削除することが好ましい。取得済みのエッジから再び直線を取得することのないようにするためである。
【0020】
直線を取得するステップにおいて、各直線の中点のx座標を取得して昇順にソートし、隣り合う直線のx座標間の距離が8画素以下である場合、一つの直線として纏める処理をすることが好ましい。紙の影の影響で、境界線に二本の直線が取得されてしまうことを精度良く防止するためである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像解析プログラムは、画像の入手に際して特別な機材や高価なカメラなどが不要である。市販のウェブカメラと電気スタンドのような安価な装置をそろえることで、撮影された画像から、パソコンなどの情報処理端末で解析することができるので、これまで脂取り紙などを小ロットで扱ってきた中小企業であっても簡単に導入することができる。
【0022】
また、これまでユーザが事前に閾値を設定して解析をする必要があったが、本発明では遺伝的アルゴリズムを取り入れることによって自動的に閾値が設定されるために、撮影条件などを厳密に設定しなくても、柔軟に対応可能となった。
【0023】
さらに、これまで人の手作業によって紙の計数を行っていたような製品と比較すると、画像解析という非接触で行うことができるため、接触によるごみの付着や皺が生じることを防止でき、最終段階で不良品が発生することがない点で産業的に非常に効果の高い手法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明に利用する画像を撮影する構成例を示す図である。
【図2】図2は、入力画像をグレースケールに変換した後の例を示す図である。
【図3】図3は、非極大値抑制を示す図である。
【図4】図4は、ヒステリシス閾値処理を示す図である。
【図5】図5は、(a)エッジを検出しきれていないエッジ画像の例、(b)ノイズが多く検出されたエッジ画像の例、を示す図である。
【図6】図6は、各エッジから面積とアスペクト比を基に、適応度関数の設定例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の遺伝的アルゴリズムで取得した閾値を用いたエッジ画像の例を示す図である。
【図8】図8は、図8の画像にノイズ除去ステップを行った後のエッジ画像の例を示す図である。
【図9】図9は、ハフ変換の問題点を示す図である。
【図10】図10は、取得された直線に該当するエッジとそれに近いエッジを、両方共にエッジ画像から除去するステップについて示した図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例について示した図である。
【図12】図12は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図13】図13は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図14】図14は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図15】図15は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図16】図16は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図17】図17は、本発明のその他の実施例について示した図である。
【図18】図18は、従来法(比較例)について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の画像解析プログラムは、コストを掛けず導入し易い撮影装置を利用して得られた画像を用いて、解析手法に専門的な知識を有していなくても目的とする画像解析を精度良く行うことができることを目的として開発されたものである。

【0026】
本発明は、重ねられた紙葉に関して入力された画像から紙同士の境界を特定し計数する画像解析プログラムであって、(A)入力画像を、遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法によって紙同士の境界線(エッジ)を抽出(境界線を抽出した画像を「エッジ画像」という。)するステップと、(B)エッジの縦横比と画素数とからエッジ画像中のノイズを除去するステップと、(C)エッジ画像に対してハフ変換を適用して各エッジの直線らしさ(「投票値」という)を取得し、最大の投票値に該当する直線を取得するステップ、(D)取得された直線に該当するエッジとそれに近いエッジを、両方共にエッジ画像から除去するステップと、(E)再び前記ハフ変換を適用して、エッジ画像から直線に該当するエッジを除去するまでの2ステップを繰り返し、全てのエッジが無くなるまでこの処理を繰り返すステップと、(F)前記取得された直線の数を紙の枚数として算出するステップ、とを情報処理装置に実行させることを特徴とする。

【0027】
以下では紙葉の対象として、「脂取り紙」を例に用いているが本発明では必ずしも対象がこれに限定されるものではなく、コピー用紙、はがき等にも適用可能である。

【0028】
脂取り紙の枚数を画像解析により計数するため、画像入力から説明する。脂取り紙は、坪量(紙の基本となる規格の一つで、紙の厚みを表す際に紙業界で使用されている)が16g/m程度と極めて薄いため(一般的なコピー用紙は64g/m)、重ねられた状態で厚み方向の側面画像を解析しても、紙一枚ごとの境界線を取得することは困難である。特に本発明では画像取得のために特別な機材を使用しない(すなわち設備にできるだけコストをかけない)ことを前提としているので、このような条件下で撮像される側面画像からは、当該画像をコンピュータで処理等しても紙の境界線を見いだすことができないからである。もちろん(顕微鏡写真など拡大して撮影することを含め)境界線が認められうる画像を用いるのであれば、下記に示すような配置をしなくても重なり合った状態のままで側面画像(例えば厚紙や段ボール、雑誌などの側面画像の場合)を本発明の画像解析プログラムに利用することができる。

【0029】
脂取り紙の入力画像として境界線が判るような画像を取得するためには、紙を1枚ずつ横にずらして、紙同士の境界線が目視で確認できる程度に配置する方法がある。具体的には、紙の間隔が3mm程度以上にずらすことが好ましい。紙をずらす方法は、例えば紙の製造工程において裁断後の紙の集積工程に30°程度以下の傾きを有する壁面に対して紙の端が当たるように重ねる工程を入れたり、積層された紙の側面に定規などを斜めに押し当てたり、或いは紙を手作業によりずらして並べても良い。これらの一手間は必要になるものの、先に述べたように画像取得のための特別な機材を準備する必要がないので、どのような事業規模でも導入が容易という利点があるのである。

【0030】
より具体的な画像取得装置の構成例を図1に示す。図には照明1、ウェブカメラ(Logicool社製 商品名:Logicool Webcam C930e)2、紙葉を置く台座3が示されており、簡単な装置であることが判る。この図はあくまでも例示であるので、境界線が判る画像が取得できれば、ウェブカメラなどを他の商品で代替することはもちろん可能である。

【0031】
実際の入力画像の例を図2に示す。図には、脂取り紙4がずらして並べられ紙の境界線5が映し出されている。この図では紙毎の間隔は整然と並べられているが、ランダムであってもよい(手作業によって並べることを考慮すれば、均等な間隔で並べることは手間がかかるので、むしろランダム間隔である方が作業性は高い)。また、縦方向に境界がある状態の画像であるが、(90°回転すればどちらであっても同じなので)横方向であっても良い。

【0032】
なお、入力画像から紙の境界線が認められることと、紙の計数が処理装置により実行可能なこととは全く別の話である。画像を見て人が視認でき、目視によって枚数をカウントすることができるとしても、それはあくまで従来の人手によって作業者が枚数を確認していたことに映像が加わっただけであり、そこには依然としてヒューマンエラーが存在するからである。一方、本発明の画像解析プログラムによる計数は入力画像から計数の結果表示までを自動で行うので、前記エラーの解消はもちろんであるが、プログラムの実行処理において従来の画像処理技術と比較しても精度が格段に向上しているのである(実際の効果に関しては後述する)。

【0033】
入力画像に対して、紙の境界線をエッジ画像として抽出する処理が行われる。はじめに入力画像をグレースケールに変換する。色情報を利用する必要がなく、空間情報(オブジェクトの形状)に着目しているからである。また計算量削減や作業メモリが少なくても処理ができ、より早く解析することができるからでもある。なお、前記図2はグレースケールに変化した後の画像の例である。

【0034】
この画像からエッジを抽出するために、遺伝的アルゴリズムを用いたキャニー法を使用する。通常、キャニー法では、二つの閾値を事前にユーザが指定する必要がある。しかし照明などの撮影環境が変化するとこのパラメータも変更する必要があり、計数の対象範囲(脂取り紙以外の紙類)を拡げることも考えると、自動で取得できることが望ましい。そこで、本発明では遺伝的アルゴリズムを適用している。

【0035】
キャニー法は前記の通り、隣り合う画素値の変化量を計算し、その変化量が事前に指定した2つの閾値以上であれば、エッジ(境界線)として出力するものである。具体的には以下の手順でエッジが抽出される。

【0036】
まず、ガウシアンフィルタで画像を平滑化する。ガウシアンフィルタは、注目画素に近いほど、平均値を計算するときの重みを大きくし、遠くなるほど重みを小さくなるようガウス分布の関数
【数1】
JP2019185407A_000002t.gif

を用いて重みを計算するフィルタ(以下「平滑化フィルタ」ともいう。)である。平滑化された画像に、x方向とy方向に対してソーベルフィルタを適用しエッジ画像を得る。ソーベルフィルタは、平滑化フィルタと微分フィルタを組み合わせることでノイズの影響を抑えながらエッジを抽出する。

【0037】
平滑化フィルタを適用する際に以下のカーネルを用いて注目画素との距離に応じて重み付けを変化させる。
【数2】
JP2019185407A_000003t.gif
【数3】
JP2019185407A_000004t.gif

【0038】
エッジ画像から、以下の式を用いてエッジの勾配の大きさとその方向を求める。横と縦の変化量をGx、Gy、エッジの勾配強度をG、勾配方向をθとすると、
【数4】
JP2019185407A_000005t.gif
【数5】
JP2019185407A_000006t.gif
で求められる。

【0039】
次に画像の中のエッジ部分と、エッジと関係のない部分(ノイズ)を区別し、ノイズを取り除くために非極大値抑制を行う(図3参照)。各画素について、勾配方向に沿って画素が極大値かどうかをチェックし、極大だった画素をエッジの候補として残す。

【0040】
その後、2つの閾値を用いて、最終的なエッジを出力する。はじめに、勾配強度が高い1点の近傍を探索し、注目画素と連結していて勾配強度が存在する画素を決定する。その画素が持つ勾配強度が2つの閾値のうち、高い方(HT)以上であればエッジとみなす。逆に低い方(LT)以下であればエッジではないとみなして除外する。HTとLTの間にあるエッジは、HT以上のエッジと繋がっている場合、エッジとして出力してそうでなければ出力しない。この処理をヒステリシス閾値処理と呼び、その例を図4に示す。Aの画素はエッジとして表示され、BのLT以下の画素とCの画素はノイズとして表示されない。

【0041】
前記のように閾値の最適値は入力画像によって異なり、閾値が高すぎると必要なエッジが検出されず、低すぎると不要なノイズが検出されてしまう。図5(a)は、エッジを検出しきれていないエッジ画像の例、図5(b)はノイズが多く検出されたエッジ画像の例である。適切な値をユーザが見極めるのは手間がかかるので、本発明では遺伝的アルゴリズムを適用して閾値を自動で取得する。

【0042】
遺伝的アルゴリズムとは、生物の遺伝の仕組みに着想を得たアルゴリズムで、遺伝的アルゴリズムでは、複数の遺伝子で表現した個体を複数含む個体群を用意し、適応度の高い個体を優先的に選択して交叉などの遺伝的操作を行い、個体群を進化させ、最適な近似解が探索される。

【0043】
これを実現するためには、どのようなエッジ画像を得ることが出来ればその値が最適な閾値になるかを適応度関数として設定しなければならない。紙同士の境界線となるエッジ部分は、エッジでないノイズ部分と比べて1つの方向に長く細く繋がっている。そのような違いからエッジとノイズの区別をつけた。具体的には、ラベリングされた各エッジの外接矩形のアスペクト比を計算し、エッジの外接矩形の面積とアスペクト比を基にした適応度関数を作成した(図6を参照)。適応度関数tは各ラベルのアスペクト比の総和となる。ノイズの検出を抑える為、アスペクト比と面積の大きさに従ってアスペクト比の係数を式6に従って変更した。アスペクト比の係数をa、ラベルの総数をn、面積をsとして、各アスペクト比をaspectとすると、tは以下の式で表される。
【数6】
JP2019185407A_000007t.gif

【0044】
この適応度関数tを最大化するように個体集団を世代交代させていくことで、ノイズを抑えながら紙と紙の境界線を長いエッジとして取得することができる。その結果を図7に示す。このエッジ画像にはまだノイズが発生していることがあり、そのままハフ変換を適用して直線を検出すると、計数結果に誤りが生じることがある。

【0045】
そこで、エッジの縦横比と画素数とからエッジ画像中のノイズを除去する。具体的な方法は遺伝的アルゴリズムの適応度関数と同じであり、エッジ画像にラベリング処理を施して外接矩形を取得し、そのアスペクト比が10以下であればノイズとして除去する。この処理を加えることにより、図7の右上領域に表れているノイズが除去できる(図8)。

【0046】
次に、このエッジ画像に対してハフ変換を適用して各エッジの直線らしさ(「投票値」という)を数値的に取得する。通常、このハフ変換の後にユーザが事前に指定した閾値以上の投票値を持つ直線を出力することで、直線が得られる。しかし、画像毎に適切な閾値が異なり、指定する閾値によっては同じエッジから複数の直線が取得されてしまうという問題も生じうる。図9は閾値の設定を200とした場合に、本来1本の直線であると思われるものが3本選択される可能性がある例を示している。そこで、本発明では以下の方法を導入している。

【0047】
ハフ変換を適用して各エッジの投票値を取得するところまでは、従来と同様である。その後、最大の投票値に該当する直線を取得して保存する。その取得された直線に該当するエッジをエッジ画像から除去する。このときに「除去されたエッジ」と「近いエッジ」も同様に除去する。この「近いエッジ」の数学的定義は、「除去されたエッジ」から得られる直線の重心座標と、他のエッジから得られる直線の重心座標が15画素未満であることである。図10は本発明の、取得された直線に該当するエッジとそれに近いエッジを、両方共にエッジ画像から除去するステップおよび、それを繰り返すステップについて示した図である。この処理を全てのエッジが無くなるまで繰り返すことで、重複を避けて直線が取得可能となる。また、常に更新中のエッジ画像から「最大の投票値」が選択されるので、ユーザによる閾値設定を不要とすることができる。

【0048】
こうして取得された直線の数は、紙同士の境界線の数と一致するので、これが紙の枚数となる。ただ、撮影環境や紙の厚み等によっては紙同士に現れる影の影響で、境界線に二本の直線が取得されてしまう場合がある。そのような影響を除去するために、本発明では次のステップを導入しても良い。

【0049】
前記直線を取得するステップにおいて、各直線の始点と終点から中点を計算し、x軸を基準として昇順にソートする。そこからx軸方向に8画素分の範囲内に、他の直線の中点が存在していた場合、同じ紙の境界線から得られた直線と判定する。全ての直線の数から、同じ境界線から得られた直線を除いた数を最終的な紙の数として決定することによって影の影響を除去することができる。

【0050】
以下本発明をより具体的に明らかにするために、実施例を用いて説明する。

【0051】
(実施例)
図1に示すような撮影装置であり、ウェブカメラはLogicool社製 商品名:Logicool Webcam C930eを使用した。ウェブカメラで撮像される画像サイズは480×640ピクセルである。

【0052】
使用した脂取り紙のサンプルは、紙同士の間隔を約3mmとして、15枚、20枚、25枚を重ねた3種類と、間隔を約5mmとして15枚、間隔をランダムとして、8枚、10枚、13枚を重ねた3種類を合わせて7種類用意した。また、照明を当てる向きの違いを調べるために、紙を上に重ねる方向に照明を当てる順方向と、その逆向きに照明を当てる逆方向とし、合計14種類の入力画像を用いた。

【0053】
また、従来法として積み重ねられた紙をラインスキャンカメラで1次元画像を撮影し、その周波数ピークを検出することで枚数を計測する方法を比較として用いた。この比較手法では、複数のパラメータを変化させることが必要であるため各入力画像で最適なパラメータを入力した。

【0054】
各入力画像について、本発明を適用した場合の結果を図11~図17に示す。図には境界線を直線で示し、その直線の中点を○印で、紙の計測番号を数字で示している。この結果を表に纏めると、表1及び表2の通りである。

【0055】
【表1】
JP2019185407A_000008t.gif

【0056】
【表2】
JP2019185407A_000009t.gif

【0057】
表1および表2に示すように、紙の並び方がランダムであっても本発明の計数に誤差はなく、また、照明が順方向、逆方向に関わりなく正確に枚数が計測できている。一方、従来法を用いた場合の結果の一例を図18(15枚、3mm幅の例)に、全14種類の結果を表3にまとめて示す。

【0058】
【表3】
JP2019185407A_000010t.gif

【0059】
従来法では、照明が順方向の場合には問題はないが、逆方向の画像はすべて計数に誤差が生じた。この理由としては、従来法は紙と紙の境界線は最も輝度値が高くなるという前提があるからと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の画像解析プログラムは、市販のウェブカメラと電気スタンドのような安価な装置をそろえることで、撮影された画像から、パソコンなどの情報処理端末で解析することができるので、これまで脂取り紙などを小ロットで扱ってきた中小企業であっても簡単に導入することができる。
【0061】
また、これまでユーザが事前に閾値を設定して解析をする必要があったが、本発明では遺伝的アルゴリズムを取り入れることによって自動的に閾値が設定されるために、撮影条件などを厳密に設定しなくても、柔軟に対応可能となった。
【符号の説明】
【0062】
1 照明
2 ウェブカメラ
3 紙葉を置く台座
4 紙
5 紙の境界線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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