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明細書 :繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-104861 (P2019-104861A)
公開日 令和元年6月27日(2019.6.27)
発明の名称または考案の名称 繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステム
国際特許分類 C08J  11/08        (2006.01)
FI C08J 11/08 ZAB
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2017-239250 (P2017-239250)
出願日 平成29年12月14日(2017.12.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人強化プラスチック協会 62nd FRP CON-EX 2017 講演会 講演要旨集 第106頁~108頁 平成29年11月13日
発明者または考案者 【氏名】坂本 大輔
出願人 【識別番号】591267855
【氏名又は名称】埼玉県
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100145920、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 聡
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100109966、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 哲夫
審査請求 未請求
テーマコード 4F401
Fターム 4F401AA09
4F401AA10
4F401AA17
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA28
4F401AB06
4F401AD08
4F401BA06
4F401CA05
4F401CA32
4F401CA54
4F401CA55
4F401CB15
4F401EA54
4F401EA55
4F401EA58
4F401EA59
4F401EA61
4F401EA62
4F401FA20Y
要約 【課題】溶剤を使った常圧で、且つ、温和な条件下での溶解により、繊維強化樹脂複合材による廃材から無劣化の繊維(炭素繊維又はガラス繊維を含む)と樹脂(樹脂+溶剤)とを容易に分離できるようにする。
【解決手段】樹脂に繊維を混合させ強度を増してなる繊維強化樹脂複合材の廃材から、樹脂の溶解度の高い溶剤によって繊維を分離し、繊維分離後の溶解液から樹脂と溶剤とを分離回収する。すなわち、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理し、溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する繊維樹脂分離工程Aと、溶剤を含む樹脂から溶剤と樹脂とに分離する樹脂溶剤分離工程Bと、繊維樹脂分離工程Aによって分離された繊維及び樹脂を別個に回収する繊維・樹脂リサイクル回収工程C1,C2とを有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
樹脂に繊維を混合させ強度を増してなる繊維強化樹脂複合材の廃材から、前記樹脂の溶解度の高い溶剤によって繊維を分離し、繊維分離後の溶解液から樹脂と溶剤とを分離回収することを特徴とする繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項2】
繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理する溶解工程と、該溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する繊維樹脂分離工程と、該溶剤を含む樹脂から溶剤と樹脂とに分離する樹脂溶剤分離工程と、前記繊維樹脂分離工程によって分離された繊維及び樹脂を別個に回収する繊維・樹脂リサイクル回収工程と、を有してなることを特徴とする請求項1記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項3】
繊維樹脂分離工程は、撹拌、振とう、超音波処理のいずれかであることを特徴とする請求項2記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項4】
樹脂溶剤分離工程によって分離された溶剤は、前記繊維樹脂分離工程に再利用する溶剤リサイクル工程を含むことを特徴とする請求項2又は3記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項5】
繊維樹脂分離工程に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項6】
繊維強化樹脂複合材の樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリルを含む熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項7】
ポリカーボネートの溶剤は、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする請求項6記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項8】
ポリアミドの溶剤は、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノールを含む芳香族アルコール又は1,4ジオキサン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤に塩酸、硫酸を含む酸溶液又は水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液を混合して用いたものであることを特徴とする請求項6記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項9】
ポリプロピレン、ポリエチレンの溶剤は、ベンゼン、トルエンを含む芳香族炭化水素又はオルトジクロロベンゼン(ODCB)を含む芳香族ハロゲン化炭化水素系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする請求項6記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項10】
ポリエステルの溶剤は、オルトクロロフェノールを含む芳香族ハロゲン化有機溶剤又はフェノール、クレゾールを含む芳香族有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする請求項6記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項11】
アクリルの溶剤は、クロロホルム、塩化メチレンを含む脂肪族ハロゲン化炭化水素又はアセトン、メチルエチルケトンを含むケトン系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする請求項6記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法。
【請求項12】
繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する溶解槽と、該溶解槽によって分離した繊維を溶剤によって洗浄して取出すための洗浄槽と、該溶解槽の樹脂溶解液及び洗浄槽の洗浄液を蒸留するための蒸留塔と、該蒸留塔による蒸留液から固液分離を行い樹脂と溶剤を分離する固液分離機と、該蒸留塔による低沸点溶剤及び固液分離機によって生じた高沸点溶剤を回収する溶剤回収槽と、を備えてなることを特徴とする繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステム。
【請求項13】
溶解槽及び洗浄槽は、撹拌装置、振とう装置、超音波装置を備えてなることを特徴とする請求項12記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステム。
【請求項14】
溶剤回収槽の溶剤は、溶解槽及び洗浄槽の溶剤として再利用することを特徴とする請求項12又は13記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステム。
【請求項15】
溶解槽及び洗浄槽に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか記載の繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄処分となった、例えば、繊維強化熱可塑性樹脂複合材や炭素繊維強化ナイロン複合材等の繊維強化樹脂複合材から、有機溶剤を用いた溶解処理により、再利用可能な状態で分離回収する繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂にガラス繊維、炭素繊維(CF)等を混合させ強度を増した繊維強化プラスチック(FRP)は、浴槽から航空宇宙分野まで幅広い用途で利用されている。中でも、熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)は、成形時間の短縮が可能であることから、今後、自動車産業を含め様々な産業への普及が見込まれている。一方、これら繊維強化樹脂の使用量の増加は、廃材の大量発生につながり、環境負荷の増大が懸念されている。
【0003】
従来より、炭素繊維強化樹脂複合材から、再利用可能な状態で炭素繊維と樹脂とを分離回収する方法として、樹脂の種類によらずに500~700℃で熱分解する熱分解法、樹脂の種類によらずに超臨界流体による高温高圧で分解する超臨界流体法、溶媒と触媒により常圧で分離する常圧溶解法、破砕から再成形するマテリアルリサイクル法等が公知である。
【0004】
上記した超臨界流体法としては、例えば、特許文献1に開示されているように、繊維強化樹脂を分解処理するための超臨界状態又は亜臨界状態の維持時間を短くして処理効率を向上させることができるリサイクル繊維の製造方法及びリサイクル繊維製造システムが提供されている。
【0005】
すなわち、特許文献1によるリサイクル繊維の製造方法は、樹脂分解用溶媒を超臨界状態又は亜臨界状態とした反応処理容器内でマトリックス樹脂を分解した後、反応処理容器内に液体状態の樹脂分解用溶媒を導入して反応処理容器内の温度を低下させながら反応処理容器内の流体を排出させている。
【0006】
具体的には、繊維強化樹脂を構成するマトリックス樹脂を超臨界流体又は亜臨界流体で可溶化した後、液体状態のアセトンからなる樹脂分解用溶媒を反応処理容器内に導入することによって反応処理容器内の温度を下げながら繊維強化樹脂を構成する繊維成分内や反応処理容器内で前記可溶化したマトリックス樹脂の分解生成物を溶解させている。これにより、繊維強化樹脂の分解処理過程において、超臨界状態又は亜臨界状態の短い維持時間の下で効率的に繊維部分を回収してリサイクル繊維を生成している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-203826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した熱分解法では、樹脂の回収は不可能であり、しかも繊維の劣化を伴うものであった。また、高温維持のための高エネルギーを必要とし、更に、二酸化炭素の排出による大気汚染の増大が懸念されていた。
【0009】
また、上記した超臨界流体法では、複雑な高温高圧装置を必要とするとともにコストアップとなっていた。
【0010】
更に、上記した常圧溶解法は、常圧反応であるために、分離に要する処理時間が、例えば、10時間程度も長くなる欠点があった。
【0011】
また、上記したマテリアルリサイクル法は、簡易な方法ではあるが、前処理としての破砕や粉砕が必要となり、これにより繊維の長さの維持が困難となっていた。従って、再生後の繊維材料の強度が低下する欠点があった。
【0012】
更に、上記した特許文献1においては、樹脂分解用溶媒を所定の温度に加熱する熱電コイルを用いた加熱装置やこれを制御する制御装置、更には反応処理容器内に供給する超臨界状態の樹脂用分解用溶媒及び液体状態の樹脂用分解溶媒の流量調節装置や圧力調整装置等、多くの非常に複雑な装置を必要とした。
【0013】
また、従来より、樹脂の溶解性と溶剤(溶媒)の回収性の両面から最適な溶剤(溶媒)系を探索することが課題となっていた。
【0014】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、溶剤を使った常圧で、且つ、温和な条件下での溶解により、繊維強化樹脂複合材による廃材から無劣化の繊維(炭素繊維又はガラス繊維を含む)と樹脂(樹脂+溶剤)とを容易に分離できると同時に、樹脂と溶剤とを分離して繊維とは個別に回収可能にする低エネルギーで簡易な構成による繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法にあっては、樹脂に繊維を混合させ強度を増してなる繊維強化樹脂複合材の廃材から、前記樹脂の溶解度の高い溶剤によって繊維を分離し、繊維分離後の溶解液から樹脂と溶剤とを分離回収することを特徴とする。
【0016】
また、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する繊維樹脂分離工程と、溶剤を含む樹脂から溶剤と樹脂とに分離する樹脂溶剤分離工程と、前記繊維樹脂分離工程によって分離された繊維及び樹脂を別個に回収する繊維・樹脂リサイクル回収工程と、を有してなる繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法を特徴とする。
【0017】
前記繊維樹脂分離工程は、撹拌、振とう、超音波処理のいずれかであることを特徴とする。
【0018】
前記樹脂溶剤分離工程によって分離された溶剤は、前記繊維樹脂分離工程に再利用する溶剤リサイクル工程を含むことを特徴とする。
【0019】
前記繊維樹脂分離工程に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であることを特徴とする。
【0020】
前記繊維強化樹脂複合材の樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリルを含む熱可塑性樹脂であることを特徴とする。
【0021】
ポリカーボネートの溶剤は、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする。
【0022】
また、ポリアミドの溶剤は、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノールを含む芳香族アルコール又は1,4ジオキサン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤に塩酸、硫酸を含む酸溶液又は水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液を混合して用いたものであることを特徴とする。
【0023】
更に、ポリプロピレン、ポリエチレンの溶剤は、ベンゼン、トルエンを含む芳香族炭化水素又はオルトジクロロベンゼン(ODCB)を含む芳香族ハロゲン化炭化水素系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする。
【0024】
前記ポリエステルの溶剤は、オルトクロロフェノールを含む芳香族ハロゲン化有機溶剤又はフェノール、クレゾールを含む芳香族有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする。
【0025】
前記アクリルの溶剤は、クロロホルム、塩化メチレンを含む脂肪族ハロゲン化炭化水素又はアセトン、メチルエチルケトンを含むケトン系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであることを特徴とする。
【0026】
一方、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステムにあっては、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する溶解槽と、該溶解槽によって分離した繊維を溶剤によって洗浄して取出すための洗浄槽と、該溶解槽の樹脂溶解液及び洗浄槽の洗浄液を蒸留するための蒸留塔と、該蒸留塔による蒸留液から固液分離を行い樹脂と溶剤を分離する固液分離機と、該蒸留塔による低沸点溶剤及び固液分離機によって生じた高沸点溶剤を回収する溶剤回収槽と、を備えてなることを特徴とする。
【0027】
前記溶解槽及び洗浄槽は、撹拌装置、振とう装置、超音波装置を備えてなることを特徴とする。
【0028】
前記溶剤回収槽の溶剤は、前記溶解槽及び洗浄槽の溶剤として再利用することを特徴とする。
【0029】
前記溶解槽及び洗浄槽に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、溶剤を使った常圧で、且つ、温和な条件下での溶解により、繊維強化樹脂複合材による廃材から無劣化の繊維(炭素繊維又はガラス繊維を含む)と樹脂(樹脂+溶剤)とを容易に分離できると同時に、樹脂と溶剤とを分離して繊維とは個別に回収可能にする低エネルギーで簡易な構成による繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステムを提供することができる。
【0031】
すなわち、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法にあっては、樹脂に繊維を混合させ強度を増してなる繊維強化樹脂複合材の廃材から、前記樹脂の溶解度の高い溶剤によって、繊維を分離し、繊維分離後の溶解液から樹脂と溶剤とを分離回収することができる。
【0032】
更に具体的には、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する繊維樹脂分離工程と、溶剤を含む樹脂から溶剤と樹脂とに分離する樹脂溶剤分離工程と、前記繊維樹脂分離工程によって分離された繊維及び樹脂を別個に回収する繊維・樹脂リサイクル回収工程と、を有してなるので、繊維と樹脂と溶剤とを相互に分離して個別に回収可能にする低エネルギーで簡易な構成による繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法を提供することができる。
【0033】
前記繊維樹脂分離工程は、撹拌、振とう、超音波処理のいずれかであるので、溶解に要する処理時間が短縮され、繊維及び樹脂の回収率の向上を図ることができる。
【0034】
前記樹脂溶剤分離工程によって分離された溶剤は、前記繊維樹脂分離工程に再利用する溶剤リサイクル工程を含むので、溶剤循環型の効率的で安価なリサイクル方法を提供することができる。
【0035】
前記繊維樹脂分離工程に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であるので、樹脂を短時間で効率良く溶解させることができ、繊維を確実に分離することができる。
【0036】
前記繊維強化樹脂複合材の樹脂は、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリルを含む熱可塑性樹脂であるので、熱可塑性樹脂の溶剤によるリサイクルが低コストで、且つ、短時間に行える。
【0037】
前記ポリカーボネートの溶剤は、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤を単独又は混合して用いたものであるので、溶剤によるポリカーボネート樹脂の溶解性が高いことから低コストで、且つ、短時間に樹脂のリサイクルが行える。
【0038】
前記ポリアミドの溶剤は、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノールを含む芳香族アルコール又は1,4ジオキサン、テトラヒドロフランを含む環状エーテル系有機溶剤に塩酸、硫酸を含む酸溶液又は水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液を混合して用いたものであるので、溶剤によるポリアミド樹脂の溶解性が高いことから低コストで、且つ、短時間に樹脂のリサイクルが行える。因みに、ナイロン樹脂のアミド基間の水素結合は、ベンジルアルコールと塩酸(10mol/L-塩酸:5%)との混合溶剤によって分解される。
【0039】
前記ポリプロピレン、ポリエチレンの溶剤は、ベンゼン、トルエンを含む芳香族炭化水素又はオルトジクロロベンゼン(ODCB)を含む芳香族ハロゲン化炭化水素系有機溶剤を単独又は混合して用い、必要に応じて溶媒を室温以上溶媒の沸点以下の温度に加熱することにより、低コストで樹脂のリサイクルが行える。
【0040】
前記ポリエステルの溶剤は、オルトクロロフェノールを含む芳香族ハロゲン化有機溶剤又はフェノール、クレゾールを含む芳香族有機溶剤を単独又は混合して用い、必要に応じて溶媒を室温以上溶媒の沸点以下の温度に加熱することにより、低コストで樹脂のリサイクルが行える。
【0041】
前記アクリルの溶剤は、クロロホルム、塩化メチレンを含む脂肪族ハロゲン化炭化水素又はアセトン、メチルエチルケトンを含むケトン系有機溶剤を単独又は混合して用い、必要に応じて溶媒を室温以上溶媒の沸点以下の温度に加熱することにより、低コストで樹脂のリサイクルが行える。
【0042】
一方、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステムにあっては、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する溶解槽と、該溶解槽によって分離した繊維を溶剤によって洗浄して取出すための洗浄槽と、該溶解槽の樹脂溶解液及び洗浄槽の洗浄液を蒸留するための蒸留塔と、該蒸留塔による蒸留液から固液分離を行い樹脂と溶剤を分離する固液分離機と、該蒸留塔による低沸点溶剤及び固液分離機によって生じた高沸点溶剤を回収する溶剤回収槽と、を備えてなるので、繊維と樹脂と溶剤とを相互に分離して個別に回収可能にする低エネルギーで簡易な構成による繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステムを構築することができる。
【0043】
前記溶解槽及び洗浄槽は、撹拌装置、振とう装置、超音波装置を備えてなるので、溶解及び洗浄に要する処理時間が短縮され、繊維及び樹脂の回収率の向上を図ることができる。
【0044】
前記溶剤回収槽の溶剤は、前記溶解槽及び洗浄槽の溶剤として再利用するので、溶剤循環型の効率的で安価なリサイクルシステムを構築することができる。
【0045】
前記溶解槽及び洗浄槽に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータによる樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤であるので、樹脂を短時間で効率良く溶解させることができ、繊維を確実に分離することができる効率的で安価な混合溶剤による繊維強化樹脂複合材の化学処理リサイクルシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を実施するための一形態における繊維強化熱可塑性樹脂複合材のリサイクル方法を示す工程図である。
【図2】同じく繊維強化熱可塑性樹脂複合材のリサイクルシステムの一例を示す分離回収装置である。
【図3】本発明の第1実施例における溶剤溶解法による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックのリサイクル方法を示す工程図である。
【図4】混合溶剤を用いた溶解実験方法を説明する図である。
【図5】図3中、(a)乃至(c)は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)による樹脂の溶解性評価を示す説明図である。
【図6】3種の混合溶剤による樹脂ペレットの溶解率を示す図である。
【図7】熱可塑性炭素繊維強化プラスチックの溶解実験による混合溶剤の選定結果を示す図である。
【図8】超音波処理による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックの溶解性評価を説明する図である。
【図9】超音波処理による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックの溶解実験結果を説明する図である。
【図10】炭素繊維の溶解処理後のSEM画像を示す図面代用写真である。
【図11】炭素繊維の溶解処理後の表面のXPSスペクトルを示す図である。
【図12】超音波処理による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックシートの溶解状態を示す図面代用写真である。
【図13】熱可塑性炭素繊維強化プラスチック溶解液から樹脂・溶剤の回収実験を示す説明図である。
【図14】回収した樹脂のFT-IRスペクトルを示す図である。
【図15】溶剤溶解法による熱可塑性炭素繊維強化プラスチックのリサイクル方法を示す工程図である。
【図16】炭素繊維強化プラスチックに用いられる樹脂の種類を示す図である。
【図17】ナイロン樹脂の特徴を説明する図である。
【図18】本発明の第2実施例におけるナイロンの溶剤を示す図である。
【図19】(a)及び(b)はハンセン溶解度パラメータ(HSP)を説明する図である。
【図20】ナイロン(N6)の溶解試験結果及びハンセン溶解球を示す図である。
【図21】溶剤と10mol/L塩酸添加(10%)による溶解試験結果及びハンセン溶解球を示す図である。
【図22】2-フェノキシエタノールのハンセン溶解度パラメータ(HSP)を基準とした溶剤検索リストを示す図である。
【図23】溶剤と10mol/L塩酸添加(10%)による追加試験結果及びハンセン溶解球を示す図である。
【図24】溶剤と5mol/L塩酸添加(10%)による溶解試験結果を示す図である。
【図25】ベンジルアルコール(BZA)の化学的特性を示す説明図である。
【図26】ベンジルアルコール(BZA)と10mol/L塩酸(HCl)の配合比及びナイロン(N6)の溶解性を示す図である。
【図27】ベンジルアルコール(BZA)+0~12mol/L塩酸(HCl)と、ナイロン(N6)の溶解性を示す図である。
【図28】ナイロンの溶解・分解メカニズムを模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。

【0048】
本発明においては、主として常温常圧下で炭素繊維、樹脂(ポリカーボネート:PC)及び溶剤を回収することを目的として、混合溶剤による熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)の化学処理リサイクルについて創案したものである。

【0049】
すなわち、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル等の熱可塑性樹脂に、炭素繊維やガラス繊維等の繊維を混合させ強度を増してなる繊維強化樹脂複合材の廃材から、前記熱可塑性樹脂の溶解度の高い溶剤である、例えば、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の3種混合溶剤によって繊維を分離し、繊維分離後の溶解液から樹脂と溶剤とを分離回収する。

【0050】
具体的には、図1及び図3に示すように、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって常圧下で溶解処理し、撹拌、振とう、超音波処理を加えながら溶剤を含む樹脂と繊維とに溶解・分離する繊維樹脂分離工程Aと、溶剤を含む樹脂から溶剤と樹脂とに分離する樹脂溶剤分離工程Bと、前記繊維樹脂分離工程Bによって分離された繊維及び樹脂を別個に回収する繊維・樹脂リサイクル回収工程C1,C2と、前記樹脂溶剤分離工程Bによって分離された溶剤を前記繊維樹脂分離工程Aに再利用する溶剤リサイクル工程Dを有してなる。

【0051】
また、本発明に係る繊維強化樹脂複合材のリサイクルシステムとしては、図2に示すように、繊維強化樹脂複合材による廃材を溶剤によって溶解処理して溶剤を含む樹脂と繊維とに分離する溶解槽1と、該溶解槽1によって分離した繊維を溶剤によって洗浄して取出すための洗浄槽2と、該溶解槽1の樹脂溶解液及び洗浄槽2の洗浄液を蒸留するための蒸留塔3と、該蒸留塔3による蒸留液から固液分離を行い樹脂と溶剤を分離する固液分離機4と、該蒸留塔3による低沸点溶剤及び固液分離機4によって生じた高沸点溶剤を回収する溶剤回収槽5とを備えている。そして、該溶解槽1及び洗浄槽2は、撹拌装置、振とう装置、超音波装置を備え、また、該溶剤回収槽5の溶剤は、該溶解槽1及び洗浄槽2の溶剤として再利用することができる。

【0052】
前記繊維樹脂分離工程A、溶解槽1及び洗浄槽2に使用される溶剤は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)による樹脂の溶解性評価データに基づき種類と配合比が決定される混合溶剤である。例えば、ポリカーボネート(PC)の溶剤は、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)を含む環状エーテル系有機溶剤を単独又は混合して用いたものである。また、ポリアミドの溶剤は、ベンジルアルコール(BZA)、2-フェノキシエタノールを含む芳香族アルコール又は1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)を含む環状エーテル系有機溶剤に塩酸、硫酸を含む酸溶液又は水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液を混合して用いたものである。
【実施例1】
【0053】
以下に実施例1について説明する。図4は、例えば、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の3種混合溶剤を使用した溶解実験方法を示すもので、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いた溶解性評価用の樹脂として、PCペレット(パンライト(登録商標)、帝人)を使用した。CFRTPにはPCをマトリックス樹脂として3K平織のCFを8層積層した市販のCFRTPシート(一村産業)を用いた。先ず、PCペレット0.3gに混合溶剤10mLを添加し、25℃の恒温振とう器で所定時間、例えば、100rpmにて10分間振とうした。傾斜法により分離した残留物を洗浄後、105℃で乾燥し、処理前後の質量(秤量)から溶解率を算出した。
【実施例1】
【0054】
次に、縦横厚さが15mm×15mm×2mmのCFRTP1枚を50mLの共栓付き三角フラスコに加え、混合溶剤を10mL添加し、25℃の恒温振とう器で100rpmにて所定時間振とうした。また、溶解処理の比較として、図8に示すように、上記の試料を周波数28kHzの超音波洗浄器により、所定時間、超音波処理した。処理後、試料を取り出し、溶剤で洗浄した後、105℃で乾燥し、処理前後の質量から溶解率を算出した。
【実施例1】
【0055】
図5は、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)による樹脂の溶解性評価方法を示す。すなわち、図5(a)は、ヒルデブランドの溶解度パラメータ(SP値)を分散項(dD)、極性項(dP)、水素結合項(dH)の3つに分解して3次元ベクトルとして表す。そして、以下の式(1)にて求められるベクトル間距離(HSP-D)が近い程、溶解性が高いと判断する。
HSP‐D={4*(dD‐dD+(dP‐dP+(dH‐dH0.5 … (1)
【実施例1】
【0056】
更に、図5(b)に示すように、2成分混合溶剤のHSP[dDm(分散項)、dPm(極性項)、dHm(水素結合項)]は、ベクトルの足し算で表現することができる。溶剤1と溶剤2の体積比をa:bで混合すると、混合溶剤のHSPは、以下の式(2)となる。
[dDm,dPm,dHm]=[(a*dD+b*dD),(a*dP+b*dP),(a*dH+b*dH)]/(a+b) … (2)
【実施例1】
【0057】
図5(c)は、前記PCペレットの溶解実験から、溶解、不溶を目視で判定し、ハンセンの3Dグラフ上にプロットしたハンセン溶解球である。溶解した溶剤は略溶解球内に集まっていることが分かる。
【実施例1】
【0058】
図6に、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の3種混合溶剤によるPCペレット溶解率を示す。PCの溶剤としては、塩化メチレン等の有機塩素系炭化水素が利用されているが、環境面、人への有害性の観点から代替溶剤が求められている。これまでのハンセン溶解度パラメータ(HSP)を利用した溶解実験の検討により1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の3種混合溶剤がPCの良好な溶剤となることが分かった。ここでは1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の3種混合溶剤の3種のうち単独(体積100Vol.%)及び体積比50:50で混合し、最適溶剤を検討した結果を図6に示した。
【実施例1】
【0059】
なお、ポリカーボネート(PC)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、市販のソフトウェアHansen Solubility Parameter in Practice (HSPiP ver. 4.1)に記載のPolycarbonate (PC) (dD、dP、dH)=(18.2、5.9、6.9)の値を用いた。溶解率が高い良好な組成ほどHSP-Dの値が小さくなっており、HSPにより溶解性を予測できると考えられる。1,3ジオキソラン:テトラヒドロフラン(THF)=50:50(Vol.%)の混合溶剤では、溶剤単独よりも溶解率が向上し、73.9%と最も高い値を示した(HSP-Dは2.3(J/cm0.5)。この結果、1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)系混合溶剤が選定される。
【実施例1】
【0060】
次に、CFRTP溶解実験及びHSPによる評価について説明する。試料には15mm四方のCFRTPを用い、有機溶剤として1,3ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)系溶剤を各種比率で混合し、最適混合比を検討した結果を図7(混合溶剤の配合比とCFRTPの溶解率及びHSP-Dの関係)に示した。HSP-Dの計算から、HSP-D値が3.0以下、好ましくは2.5以下となるような配合比、すなわち、1,3ジオキソランが50~75(Vol.%)付近でHSP-D値は低い値を示し、この範囲で良好な溶解性を示すことが予測された。溶解実験の結果からは1,3ジオキソランの混合比が75(Vol.%)付近で最も高い溶解率を示し、HSP-Dによる予測と類似の傾向を示した。以上の結果から、PCの溶剤として1,3ジオキソラン:テトラヒドロフラン(THF)=75:25(Vol.%)の混合溶剤を選定した。
【実施例1】
【0061】
次に、超音波処理によるCFRTPの溶解実験及び回収CFの評価について説明する。1,3ジオキソラン:テトラヒドロフラン(THF)=75:25(Vol.%)の混合溶剤を用い、15mm四方のCFRTPを超音波処理し、振とう法による処理と比較を行った結果を図9に示す。図9は、CFRTP溶解率の経時変化、すなわち処理時間と溶解率(炭素繊維の層関剥離)との関係として示す。振とう処理では、樹脂を100%溶解するためには180分要するが、超音波処理では60分となり、処理時間を1/3に短縮することができた。
【実施例1】
【0062】
溶解処理により得た炭素繊維(CF)の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した画像を図10に示した。比較として、未使用の炭素繊維(CF)についても併せて示した。回収した炭素繊維(CF)のSEM画像からは、未使用の炭素繊維(CF)と比較してわずかに微小の残留物が確認できたものの、炭素繊維(CF)の劣化は見られなかった。
【実施例1】
【0063】
次に、溶解処理したCF表面の化学結合状態を調べるため、X線光電子分光(XPS)分析した結果を図11に示した。溶解処理後のCF表面のスペクトルには、未使用CFに塗付されるサイジング剤由来エポキシのC-O結合のピークは確認されなかった。
【実施例1】
【0064】
図12は、CFRTPシートの溶解及び溶解液からの溶剤・樹脂の回収実験において、1,3ジオキソラン:テトラヒドロフラン(THF)=75:25(Vol.%)の混合溶剤300mLを用い、縦横厚さが150mm×30mm×2mmのCFRTPシートを、室温にて周波数28kHzの超音波処理により約60分×2~3回だけ溶解し、分離・回収したCFとPCを示す。シートのサイズを大きくすると60分間での溶解率は91.5%であり、15mm四方のCFRTPでの溶解率よりも低下した。これはCFRTPと溶剤の接触面積が低下したためと考えられる。
【実施例1】
【0065】
そこで、溶剤を入れ替え、同じ処理を再度行うことで樹脂を完全に溶解することができた。この処理によるCF回収率は95%であった。CFを分離した溶解液から蒸留を行った結果、溶剤の回収率は89.8%となった。更に、蒸留後の高粘液にエタノールを添加することでPCを分離回収することができ、PCの回収率は98.1%であった。以上のことから、混合溶剤を用いて熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)を溶解することにより、CF・PC・溶剤を高効率に分離回収可能であることが分かった。
【実施例1】
【0066】
図13は、蒸留を使用してのCFRTP溶解液からの樹脂・溶剤の回収実験を示す。蒸留は、原理的には、物質ごとの蒸気圧の差を利用して混合物の特定成分を濃縮する操作である。蒸留したい混合物を加熱していくと、液面から各成分が徐々に蒸発していく。各成分の蒸気圧の和が系の圧力と一致すると沸騰が始まる。そのとき、発生する蒸気の組成はラウールの法則に従い、液面の成分組成と、その温度での各成分の蒸気圧(分圧)の両方から決定される。溶解液中の1,3ジオキソランの沸点は75℃、テトラヒドロフラン(THF)の沸点は66℃であり、蒸留後には溶剤と残留液とに分離される。この場合の溶剤回収率は90%である。また、残留液はエタノールを添加し、沈殿物を乾燥することで樹脂を分離回収することができ、樹脂の回収率は98%であった(図15も参照)。
【実施例1】
【0067】
図14は、回収物をFT-IRを用いて1回反射ATR法により測定した結果である。回収物はPCの波形であり、PCペレットと比較して、いずれの回収方法でもスペクトルに大きな差異はないことが確認できた。
【実施例1】
【0068】
図15では、溶剤溶解法によるポリカービネート(PC)樹脂のリサイクル工程において、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)ソフトを使って、溶剤の種類と配合比が決定される。この場合、1,3ジオキソラン:テトラヒドロフラン(THF)=75:25(Vol.%)の混合溶剤を用い、超音波処理では60分×2回とし、蒸留後の残留液にエタノールを添加することでPCを分離することができ、溶剤回収率は98%、樹脂回収率は98%、炭素繊維回収率は95%であった。
【実施例2】
【0069】
次に、実施例2について説明する。この実施例2では、繊維強化樹脂複合材として炭素繊維強化ナイロン複合材を適用し、これに対応して繊維樹脂分離工程Aで使用する溶剤をハンセン溶解度パラメータ(HSP)による樹脂の溶解性評価データに基づき選定している。
【実施例2】
【0070】
図16は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に用いられる樹脂の種類を示すもので、溶剤溶解性を有するものはポリカーボネート(PC)と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を含むナイロンである。
【実施例2】
【0071】
図17は、ナイロン樹脂の化学的特性を示すもので、アミド基間の水素結合によって緻密な結晶配列となったポリアミド合成樹脂であり、耐熱性・耐薬品性・高い機械的特性を有し、自動車部品の主要資材となっている。このようなナイロン樹脂は溶剤には溶け難い性質がある。そこで、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を利用して、安全性が高い溶剤を探索した。
【実施例2】
【0072】
ナイロン樹脂の溶剤としては、図18に示すように、強酸・劇物である濃硫酸・濃硝酸・濃塩酸、腐食性・刺激性を有するギ酸、強酸・腐食性を有するトリフルオロ酢酸、有機塩素化合物・劇物であるクロロ酢酸及びエチレンクロルヒドリン、芳番族化合物・劇物であるフェノール・クレゾール・(クレゾール+クロロベンゼン)、難溶性ポリマーの良溶媒・腐食性・高価であるヘキサフルオロイソプロパノール、比較的安全だが溶解処理後の樹脂・溶剤分離が困難な塩化カルシウム飽和メタノール溶液等がある。これら溶剤は芳香族炭化水素や塩素化炭化水素等人体への毒性、環境負荷が懸念されるものが殆どである。
【実施例2】
【0073】
図19に示すように、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、ヒルデブランドの溶解度パラメーター(SP値)を分散項(dD)、極性項(dP)、水素結合項(dH)の3つに分解し、3次元ベクトルとして表したものである。また、そのベクトルが似ているもの同士(ベクトル間の距離(HSP-D)が短い)は溶解性が高いと判断される。溶解する溶媒は似たところに集まり、ハンセンの溶解球が形成される。
【実施例2】
【0074】
図20は、ナイロン(N6)の溶解試験結果とハンセンの3Dグラフ上にプロットしたハンセン溶解球を示す。ギ酸、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)には、略溶解する。
【実施例2】
【0075】
図21は、2mLの混合溶剤に10mol/L塩酸(10%)を添加した場合のナイロン(N6)0.1gの溶解試験結果及びハンセン溶解球を示す図である。塩酸添加で水素結合を弱めることから、2-フェノキシエタノールが24時間溶解性が最も良好であった。
【実施例2】
【0076】
図22は、2-フェノキシエタノールのハンセン溶解度パラメータ(HSP)を基準とした溶剤検索リストを示す。ベンジルアルコールは、HSP値がdD=18.4、dP=6.3、dH=13.7であり、ベクトル間の距離(HSP-D)が1.47と最も短かかった。
【実施例2】
【0077】
図23は、溶剤と10mol/L塩酸添加(10%)による追加試験結果及びハンセン溶解球を示す図である。1,4ジオキサン、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、エチルラクテート、テトラハイドロフラン(THF)の6種の溶剤が24時間溶解性が良好であった。
【実施例2】
【0078】
図24は、溶剤と5mol/L塩酸添加(10%)による溶解試験結果を示す図である。すなわち、図23の良溶剤6種を選定し、塩酸濃度を10mol/Lから5mol/Lに半減して絞込み試験を行った。本図に示すように、ベンジルアルコールが24時間溶解性が良く、沸点は205℃であることから、これが溶剤として選定可能であると判断できる。
【実施例2】
【0079】
図25は、ベンジルアルコール(BZA)の化学的特性を示す。性状は無色透明の液体で僅かな芳香臭と低毒性を有する。沸点は205℃、分子量は108.14、溶解度は水:3.8g/100g(20℃)、主な用途はインク・塗料等の高沸点溶剤やナイロン繊維の膨潤剤である。因みに、膨潤剤としてのベンジルアルコールがナイロン繊維の非結晶部分に侵入し、その体積を増大させることは公知である(図28のナイロンの溶解・分解メカニズム参照:特開2005-42222号公報)。
【実施例2】
【0080】
図26は、ベンジルアルコール(BZA)と10mol/L塩酸(HCl)との配合比、及びナイロン(N6)の溶解性を示す。塩酸とベンジルアルコールの配合比、及び完全溶解時間との関係から、塩酸の配合比0.05(5%)以上で溶解する。24時間後の状態を配合比別に調べると、配合比0(ベンジルアルコールのみ)では不溶、配合比0.05~0.2では透明粘調液、0.3~1.00(塩酸のみ)では白濁液となり、この白濁の原因はナイロンの加水分解の影響と推定される(図28のナイロンの溶解・分解メカニズム参照)。
【実施例2】
【0081】
図27は、ベンジルアルコール(BZA)+0~12mol/L塩酸(HCl)と、ナイロン(N6)の溶解性を示す。すなわち、本図において、塩酸の配合比0.05においては、塩酸濃度と完全溶解時間との関係から、塩酸濃度7.5mol/L以下ではナイロン(N6)は不溶となる。従って、ナイロンの溶剤として、ベンジルアルコール(BZA)+10mol/L塩酸(5%)というように、有機溶剤+少量の酸の複合系が最も好ましいものとなる。
【実施例2】
【0082】
以上、説明したように、本発明は、溶剤を使った常圧で、且つ、温和な条件下での溶解により、繊維強化樹脂複合材による廃材から無劣化の繊維(炭素繊維又はガラス繊維を含む)と樹脂(樹脂+溶剤)とを容易に分離できると同時に、樹脂と溶剤とを分離して繊維とは個別に回収可能にする低エネルギーで簡易な構成による繊維強化樹脂複合材のリサイクル方法及びそのシステムを提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
A 繊維樹脂分離工程
B 樹脂溶剤分離工程
C1 繊維リサイクル回収工程
C2 樹脂リサイクル回収工程
D 溶剤リサイクル工程
1 溶解槽
2 洗浄槽
3 蒸留塔
4 固液分離機
5 溶剤回収槽
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27