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明細書 :センサフィルム及び積層体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-200087 (P2019-200087A)
公開日 令和元年11月21日(2019.11.21)
発明の名称または考案の名称 センサフィルム及び積層体
国際特許分類 G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/414       (2006.01)
G01N  27/327       (2006.01)
G01N  21/17        (2006.01)
FI G01N 27/416 338
G01N 27/416 386Z
G01N 27/414 301K
G01N 27/327 353P
G01N 21/17 610
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2018-093864 (P2018-093864)
出願日 平成30年5月15日(2018.5.15)
発明者または考案者 【氏名】大矢 貴史
【氏名】梅津 信二郎
【氏名】福田 憲二郎
【氏名】染谷 隆夫
【氏名】菊地 鉄太郎
【氏名】佐々木 大輔
【氏名】清水 達也
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】110002675、【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059BB14
2G059CC18
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE11
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK02
要約 【課題】細胞組織の内部における情報を取得することができるセンサフィルム及び積層体を提供する。
【解決手段】第1細胞シートと第2細胞シートとの間にセンサフィルム12が配される。センサフィルム12は、フィルム状の基材21に複数の配線22及びセンサ部としての電極23を有している。配線22は、基材21内に埋設されており、電極23は、基材21の凹部25内に設けられ、面21a側に露出している。基材21の各面21a、21bに設けた配置領域24には、配線22と電極23を除く部分に複数の貫通孔28が形成されている。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
一対の細胞集合体の間に配されるフィルム状の基材と、
前記基材に設けられたセンサ部と、
前記基材の前記センサ部の外側の領域に形成され、前記基材の厚み方向に貫通した複数の貫通孔と
を備えることを特徴とするセンサフィルム。
【請求項2】
前記基材は、柔軟性を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサフィルム。
【請求項3】
細胞接着性成分を含むコーティング層が表面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサフィルム。
【請求項4】
前記センサ部は、導電材料で形成され、前記基材の一方の面側に露出された第1の電極であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項5】
前記センサ部は、導電材料で形成され、前記基材の他方の面側に露出された第2の電極を有することを特徴とする請求項4に記載のセンサフィルム。
【請求項6】
前記センサ部は、少なくとも細胞集合体からの光の受光機能を有する光学センサであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項7】
前記光学センサは、パルスオキシメータであることを特徴とする請求項6に記載のセンサフィルム。
【請求項8】
前記センサ部は、特定の物質と反応して電流を流すまたは抵抗値が変化する電気化学センサであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項9】
前記センサ部は、酸素感応性蛍光材料で形成された蛍光層を有する酸素センサであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項10】
前記基材の厚みが0.1μm以上1.0μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項11】
前記貫通孔の直径が10μm以上1000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項12】
前記基材と前記貫通孔だけからなる領域における開口率が10%以上80%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のセンサフィルム。
【請求項13】
第1の細胞集合体と、
第2の細胞集合体と、
前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体との間に配された請求項1ないし12のいずれか1項に記載のセンサフィルムと
を備えることを特徴とする積層体。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、センサフィルム及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の表面や心臓、心筋の細胞シート等の表面に貼り付けて筋電位を測定するセンサフィルムが知られている(例えば非特許文献1~4を参照)。このようなセンサフィルムは、柔軟性(可撓性)を有する非常に薄いフィルム状の基材に電極等が印刷や蒸着等で形成されており、貼り付けられた部位の動き、形状変化等に追従して容易に変形するように構成されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Sekitani, T. et al. “Ultraflexible organic amplifier with biocompatible gel electrodes” Nature commun 7, 11425 (2016).
【非特許文献2】L. Xu et al. “Materials and Fractal Designs for 3D Multifunctional Integumentary Membranes with Capabilities in Cardiac Electrotherapy” Advanced materials 27,1731-1737 (2015).
【非特許文献3】G. Constantinescu et al,“Epidermal electronics for electromyography: An application to swallowing therapy”, Medical Engineering and Physics 38 807-812 (2016).
【非特許文献4】大矢貴史、菊地鉄太郎、佐々木大輔、清水達也、福田憲二郎、染谷隆夫、梅津信二郎、「エレクトロニクスシートを用いた心筋シート電位測定法の開発」、 日本機械学会関東支部総会講演会講演論文集、23巻 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、創薬研究の目的等で細胞シートを積層した生体内を模擬した三次元の細胞組織を作製する場合があるが、上記のようなセンサフィルムでは、細胞組織の表面の電位等の情報しか得ることができない。より正確な薬効や毒性を評価するには細胞組織の内部における電位等の情報の取得が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細胞組織の内部における情報を取得することができるセンサフィルム及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンサフィルムは、一対の細胞集合体の間に配されるフィルム状の基材と、前記基材に設けられたセンサ部と、前記基材の前記センサ部の外側の領域に形成され、前記基材の厚み方向に貫通した複数の貫通孔とを備えるものである。
【0007】
本発明の積層体は、第1の細胞集合体と、第2の細胞集合体と、前記第1の細胞集合体と前記第2の細胞集合体との間に配された上記センサフィルムとを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センサフィルムの基材に貫通孔を設けたのでセンサフィルムを挟む細胞集合体が一体になった細胞組織の内部における情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る積層体の外観を示す斜視図である。
【図2】センサフィルムを示す斜視図である。
【図3】電極及び配線と貫通孔との位置関係を示す説明図である。
【図4】センサフィルムの表面に形成されたコーティング層を示す要部断面図である。
【図5】電極及び配線を基材に埋め込んだ状態にするまでのセンサフィルムの作製手順を示す説明図である。
【図6】凹部および貫通孔の形成からセンサフィルムを取得するまでのセンサフィルムの作製手順を示す説明図である。
【図7A】第1細胞シートと第2細胞シートの電位の変化を示すグラフである。
【図7B】第1細胞シートと第2細胞シートの電位の変化を拡大して示すグラフである。
【図8】細胞シートを10層に積層した細胞組織に複数のセンサフィルムを配して例を示す説明図である。
【図9】基材の各面に露出する電極をそれぞれ設けたセンサフィルムの例を示す要部断面図である。
【図10】センサ部として反射型のパルスオキシメータを設けた例を示す説明図である。
【図11】センサ部としてグルコースセンサを設けた例を示す説明図である。
【図12】センサ部として酸素濃度センサを設けた例を示す説明図である。
【図13】センサ部としてRNA検出センサを設けた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、積層体10は、センサフィルム12と、第1細胞シート14及び第2細胞シート15とを備えており、第1細胞シート14と第2細胞シート15との間にセンサフィルム12が配されている。この例におけるセンサフィルム12は、第1細胞シート14と第2細胞シート15とが一体になった細胞組織において第1細胞シート14の電位を測定するように構成されており、電位測定のための外部機器に接続する接続部16が設けられている。

【0011】
第1細胞シート14と第2細胞シート15は、細胞を凝集させてシート状に組織構築させた細胞集合体である。第1細胞シート14と第2細胞シート15は、生体から採取した細胞を培養してシート化したもの、iPS細胞から分化誘導してシート化したもの等を用いることができる。この例では、心筋細胞をシート化したものを、第1細胞シート14及び第2細胞シート15としている。細胞シートの細胞の種類は限定されない。

【0012】
図2において、センサフィルム12は、フィルム(シート)状の基材21と、複数の配線22と、センサ部としての複数の電極23とを有している。基材21には、面21a、21bにそれぞれ配置領域24が設けられている。第1の細胞集合体としての第1細胞シート14は、面21aの配置領域24に配されて接着しており、第2の細胞集合体としての第2細胞シート15は、面21bの配置領域24に配されて接着している。

【0013】
配線22は、基材21の厚み方向のほぼ中心に配されており、基材21内に埋設されている。配線22の一端22aは、接続部16に配されている。接続部16では、面21a側の基材21を取り除いた開口16aが形成されており、配線22の一端22aは、面21a側に外部機器に接続するために露出している。配線22の他端は、配置領域24内にまで延びている。

【0014】
複数の電極23は、配置領域24内に配され、センサフィルム12の面方向で所定のパターンで配列されている。これにより、第1細胞シート14の電位を二次元にマッピングできる。各電極23に対応して、面21aに開口した凹部25が基材21に設けられている。各電極23は、凹部25の底面に配され、配線22と同様に基材21の厚み方向のほぼ中心に配されている。各電極23は、それぞれ対応する配線22の他端に一体に形成されている。このように、各電極23は、面21a側が基材21によって被覆されていない状態とされ、面21a側に露出している。これにより、電極23が第1細胞シート14に接触する。なお、図2に示される電極23の配列パターンは、一例であり、これに限定されない。

【0015】
上記配線22及び電極23は、安定性及び生体適合性が高い導電材料で形成されている。配線22及び電極23の材料としては、この例ではAu(金)を用いているが、この他にPEDOT-PSS、Ag(銀)、白金(Pt)等を用いることができる。配線22及び電極23は、薄膜状に形成され、基材21とともに変形可能になっている。

【0016】
基材21は、絶縁性、柔軟性(可撓性)及び生体適合性を有する材料で形成されている。この例では、基材21は、パリレンにより形成されているが、この他にポリエチレンナフタレン、キトサン、アルギン酸ナトリウム等を用いることができる。基材21に絶縁性を持たせることにより、基材21を通しての配線22同士が短絡しないようにしながら、基材21を通して配線22と第1細胞シート14及び第2細胞シート15とが電気的に導通することを防止している。

【0017】
また、基材21に柔軟性を持たせることによって、第1細胞シート14及び第2細胞シート15との収縮運動に追従して変形できるようにするとともに、生体内に埋め込んだ場合に生体内の組織の形状や変形に追従させて変形できるようにしている。なお、第1細胞シート14及び第2細胞シート15が変形や収縮しない場合、細胞組織の形状や変形に追従させて変形させる必要がない場合には、基材21に柔軟性を持たせなくてもよい。

【0018】
基材21の配置領域24内には、基材21をその厚み方向に貫通する複数の貫通孔28が設けられている。図3に示すように、貫通孔28は、配置領域24内の配線22と電極23を除く部分に設けられている。貫通孔28は、それを通して、センサフィルム12を挟んで配される第1細胞シート14と第2細胞シート15の細胞同士の細胞結合を可能とし、第1細胞シート14と第2細胞シート15とを一体の組織として機能させる。また、貫通孔28は、第1細胞シート14と第2細胞シート15にまたがる血管網の構築を可能にしている。

【0019】
この例では、基材21の厚み、すなわち貫通孔28の深さが0.5μmであり、貫通孔28の直径が300μmであるが、これらに限定されない。基材21の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下の範囲内であることが好ましく、0.1μm以上0.3μm以下の範囲内であることがより好ましい。基材21の厚みを0.1μm以上とすれば、センサフィルム12のより高いハンドリング性を担保することができる。なお、基材21の一方の面にポリビニルアルコール等の水溶性の支持材を設け、この支持材とセンサフィルム12とを一体にハンドリングしてもよい。また、基材21の厚みを1.0μm以下とすれば、心筋シート等の動きのある細胞シートの動きに基材21がより追従しやすく、0.3μm以下とすれば、心筋シートの微小な凹凸に対して基材21をより強く密着させることができ、さらに酸素や栄養分の透過性を高められる点で有利である。

【0020】
貫通孔28の直径は、10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましく、200μm以上1000μm以下の範囲内であることがより好ましい。貫通孔28の直径を1000μm以下とすれば、センサフィルム12のハンドリングに必要な剛性を得る上でより有利である。また、貫通孔28の直径を10μm以上とすれば、第1細胞シート14と第2細胞シート15との間でセンサフィルム12を介した毛細血管網を構築するうえでより有利であり、貫通孔28の直径が200μm以上とすれば、センサフィルム12を挟む組織(細胞シート)間に細動脈サイズの血管を構築するうえでより有利である。

【0021】
配置領域24を法線方向から見たときに、基材21と貫通孔28だけからなる領域、すなわち配置領域24の配線22及び電極23を含まない部分(以下、無配線領域と称する)における単位面積をS1、無配線領域の単位面積S1における貫通孔28の開口面積S2としたときに、(S2/S1)×100で求められる開口率SR(単位;%)は、10%以上80%以下の範囲内であることが好ましく、50%以上80%以下の範囲内であることがより好ましい。開口率SRを80%以下とすることにより、細胞シート上の任意の位置に測定点を配置するためのハンドリングをより容易にするためのセンサ剛性を確保することができる。また、開口率SRを10%以上とすることにより、第1細胞シート14と第2細胞シート15の化学的なコンタクトがより成立しやすくなり、開口率SRを50%以上とすることにより、貫通孔28を介して第1細胞シート14と第2細胞シート15との間での血管網の構築に必要なより十分な開口面積が得られる。開口率SRは、貫通孔28に直径と貫通孔28の配列パターン(配列ピッチ)とで調整することができる。

【0022】
図4に示すように、センサフィルム12の表面には、第1細胞シート14及び第2細胞シート15の細胞を、センサフィルム12の表面に接着させるコーティング層29が形成されている。コーティング層29が形成されるセンサフィルム12の表面としては、貫通孔28の内面等を含む基材21の露呈されている表面、電極23の表面である。コーティング層29は、細胞接着性成分として例えばフィブロネクチンを含有する。コーティング層29に含まれる細胞接着性成分は、これに限定されるものではなく、この他にウシ胎児血清、ラミニン、マトリゲル等が挙げられる。

【0023】
次に、センサフィルム12の作製手順について図5、図6を参照して説明する。なお、以下に示す手順は、一例であり、これに限定されない。ガラス基板31の一方の表面に、基材21の材料、この例ではパリレンを剥離しやすくするための離型層32を形成する(図5(A))。この後に、離型層32を形成したガラス基板31の表面に、パリレンを蒸着してパリレン層33aを形成し、そのパリレン層33aの上面(離型層32側の表面)に配線22及び電極23に対応した開口34a、34bを有するマスク34を形成する(図5(B))。

【0024】
マスク34の開口34a、34bを通してパリレン層33aの上面にAuを蒸着する。これにより、配線22及び電極23を形成する(図5(C))。マスク34の除去後、再びパリレンを蒸着することにより、配線22及び電極23を埋め込んだパリレン層33bを形成する(図5(D))。

【0025】
パリレン層33bの上面に、接続部16、電極23に対応した開口35a、35bを有するマスク35を形成し、続いてドライエッチングを行いパリレン層33aの一部を除去して、開口16a、凹部25を形成する(図6(A))。マスク35の除去後、各貫通孔28に対応した開口36aを有するマスク36をパリレン層33aの上面に形成してから、ドライエッチングを行って貫通孔28を形成する(図6(B))。マスク36の除去後、パリレン層33bの両端部を切り離してから、パリレン層33bを離型層32から剥離してセンサフィルム12を得る(図6(C))。

【0026】
第1細胞シート14及び第2細胞シート15をセンサフィルム12に転写して積層体10を形成する場合には、まず上記のように得られるセンサフィルム12をフィブロネクチン希釈溶液に浸漬して、コーティング層29をセンサフィルム12の表面に形成する。フィブロネクチン希釈溶液は、例えばフィブロネクチンをリン酸緩衝生理食塩水で希釈してその濃度が5μg/mlとなるように調製したものが用いられ、37℃に維持したフィブロネクチン希釈溶液にセンサフィルム12を24時間浸漬する。この後、フィブロネクチン希釈溶液から取り出したセンサフィルム12の各配置領域24に、別途細胞を培養して作製しておいた第1細胞シート14、第2細胞シート15をそれぞれ転写する。

【0027】
例えば、第1細胞シート14及び第2細胞シート15は、温度応答性培養皿上でそれぞれ別個に培養して作製する。温度応答性培養皿内で第1細胞シート14にセンサフィルム12を載せて押圧した状態にし、温度応答性培養皿の温度を例えば20℃に下げる。これにより、第1細胞シート14がセンサフィルム12の面21aに転写される。第2細胞シート15については、スタンプ法を用いることが好ましい。すなわちゼラチンゲル等からなる支持体を取り付けた転写器具を用い、いったん第2細胞シート15を温度応答性培養皿から転写器具の支持体に転写し、その後支持体からセンサフィルム12の面21b側に転写する。なお、スタンプ法については、文献「Haraguchi, Y. et al.”Fabrication of functional three-dimensional tissues by stacking cell sheets in vitro”, Nature Protocols volume 7, pages 850-858 (2012)」に詳細が記載されている。

【0028】
上記のようにして、一方の面21aに第1細胞シート14が接着し、他方の面21bに第2細胞シート15が接着した積層体10が得られる。積層体10は、例えば培地内に置かれた状態とされ、第1細胞シート14と第2細胞シート15とを貫通孔28を通して細胞結合した状態にし、この後に第1細胞シート14の電位を測定する。

【0029】
接続部16に露呈されている各配線22の一端22aに測定機器が接続され、例えば培地の電位を基準電位として、各電極23が接触している第1細胞シート14の各部の電位が測定される。センサフィルム12には、上述のように複数の貫通孔28を設けてあるので、第1細胞シート14と第2細胞シート15とが一体となった1つの細胞組織内の情報として第1細胞シート14の電位が測定される。

【0030】
心筋の第1細胞シート14と第2細胞シート15とについて、それぞれ実際に測定した電位の変化を図7A、及び図7A中の破線で囲む部分を拡大した図7Bに示すように、第1細胞シート14と第2細胞シート15の電位が同期して変化しており、それら第1細胞シート14と第2細胞シート15が一体となった1つの組織として収縮運動していることが分かる。また、センサフィルム12には、複数の電極23が設けられており、第1細胞シート14の電位を二次元にマッピングできる。なお、上記図7A、図7Bに示される第1細胞シート14と第2細胞シート15の各電位は、下側からセンサフィルム12、第2細胞シート15、センサフィルム12、第1細胞シート14を順番に配した積層体を用いて測定しており、各センサフィルム12は上側の細胞シートの電位を測定している。

【0031】
上記では、2層の細胞シートの間にセンサフィルムが配された積層体の例について説明しているが、センサフィルムの面上に積層される細胞シートの層数は、これに限定されず3層以上であってもよい。図8に示す、積層体40では、10層の細胞シート41を積層した細胞組織の任意の細胞シートの間に3つのセンサフィルム12を配している。各センサフィルム12を挟む細胞シート41同士はセンサフィルム12に設けた貫通孔28(図2参照)を通して細胞結合するため、センサフィルム12によって、1つの細胞組織内における細胞シート41の電位を図ることができ、組織内における細胞シート41の電位を3次元にマッピングできる。細胞集合体としては、細胞シートに限らず、スフェロイドであってもよい。

【0032】
また、図9に示すように、センサフィルム12に、その一方の面21aに露出した第1の電極23aと、他方の面21bに露出した第2の電極23bとを設けてもよい。この構成によれば、1つのセンサフィルム12を用いて、そのセンサフィルム12を挟むように設けた一対の細胞シートのそれぞれの電位を測定することができる。なお、図9では、コーティング層の図示を省略している。

【0033】
図10は、光学センサとしての反射型のパルスオキシメータ45をセンサ部として設けた例を示している。パルスオキシメータ45は、赤色光を細胞シートに照射する発光ダイオード(LED)45a、緑色光を細胞シートに照射する発光ダイオード45b、細胞シートからの光を受光する光検出器45cで構成されている。これらの発光ダイオード45a、45b、光検出器45cが基材21内に埋設され、それぞれ配線22を介して外部の機器に接続される。なお、発光ダイオード45a、45b、光検出器45cは、透明な基材21に覆われていてよい。発光ダイオード45a、45b、光検出器45cとしては、柔軟性を有し薄く形成できる点からポリマー発光ダイオード、有機光検出器を用いることが好ましい。なお、ポリマー発光ダイオード、有機光検出器を用いたパルスオキシメータの詳細については、文献「T. Yokota, et al.. “Ultraflexible organic photonic skin”, Science Advances, vol. 2, p. e1501856, 2016」に記載されている。センサ部としての光学センサは、パルスオキシメータに限定されず、少なくとも細胞集合体からの光の受光機能を有するものであればよい。

【0034】
センサ部として特定の物質と反応して電流を流す電気化学センサを設けることもできる。図11は、電気化学センサであるグルコースセンサ46をセンサ部として設けた例を示している。グルコースセンサ46は、作用電極46aと、対電極46bと、参照電極46cを有しており、それぞれ配線22を介して外部の機器に接続される。作用電極46a、対電極46b、参照電極46cは、開口(図示省略)を介して、基材21の一方の面側に露出される。作用電極46aは、その表面にグルコースオキシダーゼを含む酵素層が設けられている。グルコースオキシダーゼに代えて、ラクターゼオキシダーゼ等の酵素を用いてもよい。このように構成されるグルコースセンサ46は、例えば文献「W. Dungchai, et al. “Electrochemical detection for paper-based microfluidics”,Analytical chemistry, vol. 81, no. 14, pp. 5821-5826, 2009」等に記載されるような周知のグルコースセンサと同様な構造であり、その動作についても同様である。

【0035】
また、センサ部として、図12の例のように酸素センサ47を設けることもできる。酸素センサ47は、酸素感応性蛍光材料、例えば白金オクタエチルポリフィリン(PtOEP)を混合したポリスチレンからなる蛍光層47aが凹部25内に設けられ、面21a側に露出している。凹部25の内面には、凹部25内への酸素の透過を防止する遮断層47bが形成されている。遮断層47bは、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられている。このような構成により、凹部25内に形成されている空間の酸素濃度を、蛍光層47aの蛍光を外部から観察することで測定でき、第1細胞シート14が消費する酸素量を図ることができる。なお、このような酸素センサ47については、例えば文献「M. Kojima et al. “Flexible Sheet-Type Sensor for Noninvasive Measurement of Cellular Oxygen Metabolism on a Culture Dish”, PLoS One, 10e0143774. doi:10.1371/journal.pone.0143774, 2015」に記載されている。また、この例では、蛍光層47aと第1細胞シート14との間に空間を設けているが、蛍光層47aに第1細胞シート14が接触する構成としてもよい。

【0036】
さらに、センサ部は、核酸を検出するバイオセンサでもよい。例えば、図13の例では、センサ部をRNA検出センサ51としている。このRNA検出センサ51は、カーボンナノチューブFET(電界効果トランジスタ)をベースにRNA検出するようにしたものである。RNA検出センサ51は、基材21中に設けられた例えばSiO2膜からなる絶縁層52上にドレイン53とソース54とが設けられている。ドレイン53とソース54とは、いずれも例えばAu(金)で形成されている。ドレイン53とソース54とは、チャンネルとなるカーボンナノチューブ55によって接続されている。

【0037】
カーボンナノチューブ55は、単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single-walled carbon nanotube)であり、その表面にsiRNA(small interfering RNA)結合タンパク質で装飾されたものが用いられている。siRNA結合タンパク質は、検出するRNAに応じたものが用いられる。siRNA結合タンパク質としては、p19 siRNA結合タンパク質(19 kDa)等が挙げられる。ドレイン53及びソース54は、基材21に覆われ、カーボンナノチューブ55は、その一部分が凹部25内に設けられ、一方の面側に露出している。なお、このようなRNA検出センサ51の詳細については、文献「P. Ramnani et al. “Electronic Detection of MicroRNA at Attomolar Level with High Specificity”, Anal, Chem., 85, 8061 (2013)」に記載されている。なお、図13では、カーボンナノチューブ55を誇張して描いてある。

【0038】
上記のように構成されるセンサフィルム12は、特定の物質(RNA)と反応して抵抗値が変化する電気化学センサとなり、RNAがsiRNA結合タンパク質と結合したときのドレイン53とソース54との間の抵抗値が変化する。この抵抗値の変化からRNA量を検出する。センサフィルム12を積層される細胞シート間に挿入して測定することで、三次元の細胞組織の内部から分泌されるRNA量を検出することができる。

【0039】
上記では、細胞シートの間にセンサフィルムを配した例について説明しているが、生体内の肝臓や心臓等の細胞組織の内部にセンサフィルムを配してもよい。この場合には、例えば細胞組織の一部を切開して開かれた部分にセンサフィルムを挿入すればよく、センサ部、配線の部分を除く挿入される基材の全領域に貫通孔を設ければよい。貫通孔を通して組織の細胞が細胞結合し、また血管の構築等が行われる。
【符号の説明】
【0040】
10、40 積層体
12 センサフィルム
14 第1細胞シート
15 第2細胞シート
21 基材
23 電極
25 凹部
28 貫通孔
29 コーティング層
41 細胞シート
45 パルスオキシメータ
46 グルコースセンサ
47 酸素センサ
51 RNA検出センサ

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
6
【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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