TOP > 国内特許検索 > 分析デバイス > 明細書

明細書 :分析デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年1月18日(2018.1.18)
発明の名称または考案の名称 分析デバイス
国際特許分類 G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI G01N 33/543 521
G01N 33/53 Y
G01N 33/543 525E
G01N 37/00 101
国際予備審査の請求
全頁数 23
出願番号 特願2017-508280 (P2017-508280)
国際出願番号 PCT/JP2016/058447
国際公開番号 WO2016/152702
国際出願日 平成28年3月17日(2016.3.17)
国際公開日 平成28年9月29日(2016.9.29)
優先権出願番号 2015060845
優先日 平成27年3月24日(2015.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】笠間 敏博
【氏名】馬場 嘉信
【氏名】渡慶次 学
【氏名】西脇 奈菜子
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100167689、【弁理士】、【氏名又は名称】松本 征二
審査請求 未請求
要約 複数項目の検体を一つの光学系で検出可能なデバイスを提供する。特異的結合試薬を光硬化した親水性樹脂中に保持させた微小構造物を流路に配置することにより、デバイス作製時に試薬が混ざることがなく、複数項目検出可能なデバイスを作製することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
基板には少なくとも1つ以上の流路が設けられ、
個々の流路内には、
光硬化した親水性樹脂中に混合された一種類の特異的結合試薬又は一種類の検体が架橋により保持された微小構造物が少なくとも一つ以上配置されているマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ流体デバイスであって、
前記微小構造物には夫々異なる特異的結合試薬及び/又は検体が架橋により保持されているマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマイクロ流体デバイスであって、
前記特異的結合試薬が、抗体、抗原、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチンのいずれか1つ以上であるマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のマイクロ流体デバイスであって、
前記検体が、細胞、細胞塊、細胞膜、オルガネラ、エクソソームを含むものであるマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載のマイクロ流体デバイスと
検出対象に特異的に結合する標識された試薬を含む分析キット。
【請求項6】
請求項5記載の分析キットであって、
前記標識された試薬が単一の光学系によって検出可能である分析キット。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項記載のマイクロ流体デバイスの分析に用いるシステムであって、
測定を実行するための測定開始手段と、
マイクロ流体デバイス上をスキャンしながら蛍光強度を測定する単一の蛍光を検出するための検出手段と、
蛍光強度を数値として表示する表示手段とを備えるマイクロ流体デバイス用分析システム。
【請求項8】
マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、
流路を少なくとも1つ含む基板を準備する基板準備工程、
一種類の特異的結合試薬又は一種類の検体と親水性光硬化性樹脂を混合した溶液を前記流路内に充填する充填工程、
前記流路内に充填された前記親水性光硬化性樹脂の一部に対してフォトマスクを用いて露光を行い樹脂を光硬化させる露光工程、
未硬化の樹脂を前記流路から洗浄除去する洗浄工程、
を含むマイクロ流体デバイス製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のマイクロ流体デバイスを製造する方法であって、
前記洗浄工程の後に、
前記特異的結合試薬又は検体とは異なる特異的結合試薬又は検体を親水性光硬化性樹脂と混合した溶液を前記流路内に充填する再充填工程、
前記流路内に充填された前記親水性光硬化性樹脂に対して、未硬化の光硬化性樹脂の存在する部位を露光可能なフォトマスクを用いて露光を行う再露光工程、
未硬化の樹脂を前記流路から洗浄除去する再洗浄工程、
再充填工程から再洗浄工程を繰り返し、複数の異なる特異的結合試薬及び/又は検体を流路内に固定するマイクロ流体デバイス製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的結合を利用した検査デバイス、検査キット及び検査システムに関する。また、当該デバイスの製造方法に関する。特に、複数項目を一度で分析できるマイクロ流路を備えたマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
抗原に対する抗体の親和性を利用した免疫アッセイのように特異的結合を利用した分析方法は、従来から臨床検査や、創薬分野で広く用いられてきた。用いる検体量や試薬の量が少なくてもすむことや、アッセイに要する時間を短縮することができることから、いわゆる96穴プレートのようなプレートを用いたアッセイに代えて、反応系の容量が少ないマイクロデバイスを用いたアッセイが開発されてきた。
【0003】
さらに、担体としてプレートを用いるよりも、流路を用いることにより、アッセイに要する時間が短縮される。本発明者らも、光硬化した親水性樹脂中に抗体を固相化したビーズを均質に分散保持させたピラー状の構造物として流路に配置した免疫分析用マイクロ流体デバイスを開示している(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
図8Aは、直径1μm程度のポリスチレン製の微細ビーズに一次抗体を固相化し、光硬化性樹脂で流路内にピラー状の微量構造物を設けたマイクロ流体デバイスを示している。このマイクロ流体デバイスは、一次抗体を固相化した微細ビーズを親水性光硬化性樹脂溶液に懸濁し、懸濁液の状態で流路内に満たしたものを露光処理によりパターニングして硬化した単一項目の分析デバイスである。
【0005】
このデバイスは、以下のようにして使用する。まず、流路内に血清、尿などの検体を満たして、インキュベーションし、検体に含まれている抗原をビーズ上の一次抗体に結合させる。検体を洗浄液で洗浄した後、蛍光標識抗体を注入してインキュベーションし、一次抗体に結合している検出対象である抗原と結合させる。次に、洗浄液で結合していない蛍光標識抗体を洗浄後、蛍光検出器により標識抗体の蛍光の検出を行う。
【0006】
また、図8Bは、三種の異なる抗原を一度のアッセイで検出可能な三項目分析デバイスを示している。このデバイスは、異なる抗原を認識する3種類の抗体を固相化した微細ビーズを混合して光硬化性樹脂に懸濁して、同様に流路内で露光処理を行い硬化することにより固定している。
【0007】
この方法では、異なる抗体が固相化された三種の微細ビーズが、ピラー状の一つの構造物の中に固定されている。これを異なる三種の蛍光色素を結合させた二次抗体を用いて検出する。このとき、同一の構造物中に三種の抗原、蛍光標識が結合し得ることから、検出に用いる蛍光色素は異なる波長によって、励起するものを用いる必要がある。また、各蛍光標識由来のシグナルが混じり合って観察されないように励起スペクトル、蛍光スペクトルが十分離れた蛍光標識を用いる必要がある。例えば、検出に用いる抗体の蛍光標識として、FITC、Alexa FLUOR 555(商標)、DyLight 650(商標)のような蛍光色素を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4717081号公報
【特許文献2】特公昭55-40号公報
【特許文献3】特公昭55-20676号公報
【特許文献4】特公昭62-19837号公報
【特許文献5】特開2009-48833号公報
【0009】

【非特許文献1】Ikami M., et al., Lab on a Chip, 2010, Vol.10, pp.3335-3340
【非特許文献2】Ito, Y., et al., Biomaterials, 2005, Vol.26, pp.211-216
【非特許文献3】Ito, Y., & Nagawa, M., Biomaterials, 2003, Vol.24, pp.3021-3026
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図8Aに示した単一項目分析デバイスは、一つの蛍光を検出する検出器を用いれば良いことから検出器も小型であり、短時間で感度良く検出を行うことができるものの、複数項目の分析を行うことができないという問題があった。また、図8Bに示した三項目分析デバイスの場合には、励起スペクトルが十分に離れた光源を選択する必要があることから、一つのデバイスによって検出できるのは最大で三種の抗原までである。また、蛍光色素の種類に合わせた光学系が必要であり、複数の光学的フィルターを切り替えるための光学系の切替装置も必要となる。そのため、蛍光検出器の小型化、低価格化を実現することが困難である。
【0011】
そこで、複数項目を単一のデバイスで検出するために、異なる抗体を固相化したビーズを個別に懸濁した光硬化性樹脂を用意して、多重露光を行い、異なるビーズを個別に流路へ固定することを試みた(図9)。
【0012】
図9Aに示すように、単一の一次抗体Aを固相化したビーズを光硬化性樹脂溶液に懸濁し、流路に満たす。樹脂を硬化したい部分のみ露光できるように孔を開けたフォトマスクで流路を覆い、UVを照射することによって樹脂を硬化する。未硬化の樹脂は洗浄し、流路から排出することによって、A抗体固相化ビーズが流路に固定される(図9A右)。次に、B抗体を固相化したビーズを光硬化性樹脂溶液に懸濁し流路に満たす(図9B)。樹脂を硬化したい部分のみ露光できるようにしたフォトマスクで流路を覆い、UV照射によってB抗体固相化ビーズを光硬化性樹脂とともに硬化する。樹脂を光硬化した後、未硬化の樹脂を洗浄する。
【0013】
この方法によって、順次異なる抗体を固相化したビーズを光硬化性樹脂とともに流路の異なる部分に硬化させた構造物を作製した(図9C)。図9Dは、この方法によって抗体を被覆したビーズを用いて作製した複数項目デバイスを用いて測定した結果を示している。
【0014】
図9Dの複数項目デバイスは以下のようにして作製した。抗CRP抗体、抗CEA抗体は、ポリスチレンビーズに夫々被覆したものを使用した。光硬化性樹脂としては、ポリエチレングリコールを基本骨格とする光架橋性のあるプレポリマー溶液(MI-1、関西ペイント社製)、光硬化開始剤溶液(PIR-1、関西ペイント社製)と精製水を混合した樹脂混合液を用いた。
【0015】
樹脂混合液と抗CEA抗体で被覆したビーズを混合した溶液を流路に満たし、紫外線を照射して樹脂と抗体被覆ビーズの混合物を光硬化させ、流路内にウォール状の直方体の構造物を作製した。未硬化の樹脂を吸い出し、洗浄液で洗浄を行った(図9A、A抗体固相化ビーズの固定工程に相当)。
【0016】
次に、樹脂混合液と抗CRP抗体を被覆したビーズと混合し、抗CRP抗体が固定されている領域とは別の領域に固定した(図9B、B抗体固相化ビーズの固定工程に相当)。同一流路内に、抗CEP抗体、抗CRP抗体が固定されている複合項目をアッセイするデバイスが作製された。
【0017】
しかしながら、CRP抗原のみを含む溶液を検体として用い検出を行なったところ、抗CEA抗体を固定した領域内にも蛍光が検出された(図9D右上、CEA蛍光顕微鏡像)。図9Cに模式的に示すように、抗CRP抗体を被覆したビーズが最初に光硬化した領域に引っかかっているものと考えられる。走査型電子顕微鏡で観察したところ、硬化した光硬化性樹脂がポーラス構造となっていた。そのため、デバイスを作製する過程で、ビーズが硬化後の樹脂の細孔にひっかかり、構造物中にはまり込むために複数種の抗体固相化ビーズが一つのピラー状構造物に含まれるものと考えられる。すなわち、未硬化の樹脂を洗浄する過程で、構造物の細孔に抗体固相化ビーズがはまり込むものと考えられる。
【0018】
上記問題点を解決するためにマイクロ流路系ではなく、マイクロアレイを用いることによって、複数の抗体を固相化する場合の汚染を防ぐことはできる。今までに光硬化性樹脂を用いたマイクロアレイは開示されていたが、いずれも樹脂を塗布し、その上に抗体等タンパク質溶液を塗布してから光硬化を行い固相化するというものであった(非特許文献2、3)。そのために、抗体等の特異的結合試薬と検出対象が反応する反応場が、特異的結合試薬が塗布されている光硬化性樹脂の表面だけに限られる。その結果、反応場が狭く検出感度が低いという問題があった。また、表面に塗布することによって、特異的結合試薬を固相化するためにロット間で固相化された特異的結合試薬の量に差が生じるため、ロット間誤差が大きいという問題があった。
【0019】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明で、短時間で感度よく検出結果が得られるというマイクロ流路を備えたデバイスの長所はそのままに、複数項目であっても一つの光学系で一度に検出することが可能なマイクロ流体デバイスを提供することを課題とする。具体的には、流路中の複数の構造物に個別に特異的結合試薬を固定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以下のマイクロ流体デバイス、分析キット、マイクロ流体デバイス用分析システム、及びマイクロ流体デバイスの製造方法に関する。
(1)基板には少なくとも1つ以上の流路が設けられ、
個々の流路内には、
光硬化した親水性樹脂中に混合された一種類の特異的結合試薬又は一種類の検体が架橋により保持された微小構造物が少なくとも一つ以上配置されているマイクロ流体デバイス。
(2)前記(1)のマイクロ流体デバイスであって、
前記複数の微小構造物には夫々異なる特異的結合試薬及び/又は検体が架橋により保持されているマイクロ流体デバイス。
(3)前記(1)又は(2)記載のマイクロ流体デバイスであって、
前記特異的結合試薬が、抗体、抗原、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチンのいずれか1つ以上であるマイクロ流体デバイス。
(4)前記(1)~(3)のいずれか1記載のマイクロ流体デバイスであって、
前記検体が、細胞、細胞塊、細胞膜、オルガネラ、エクソソームを含むものであるマイクロ流体デバイス。
(5)前記(1)~(4)のいずれか1記載のマイクロ流体デバイスと
検出対象に特異的に結合する標識された試薬を含む分析キット。
(6)前記(5)記載の分析キットであって、
前記標識された試薬が単一の光学系によって検出可能である分析キット。
(7)前記(1)~(4)のいずれか1記載のマイクロ流体デバイスの分析に用いるシステムであって、
測定を実行するための測定開始手段と、
マイクロ流体デバイス上をスキャンしながら蛍光強度を測定する単一の蛍光を検出するための検出手段と、
蛍光強度を数値として表示する表示手段とを備えるマイクロ流体デバイス用分析システム。
(8)マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、
流路を少なくとも1つ含む基板を準備する基板準備工程、
一種類の特異的結合試薬又は一種類の検体と親水性光硬化性樹脂を混合した溶液を前記流路内に充填する充填工程、
前記流路内に充填された前記親水性光硬化性樹脂の一部に対してフォトマスクを用いて露光を行い樹脂を光硬化させる露光工程、
未硬化の樹脂を前記流路から洗浄除去する洗浄工程、
を含むマイクロ流体デバイス製造方法。
(9)前記(8)記載のマイクロ流体デバイスを製造する方法であって、
前記洗浄工程の後に、
前記特異的結合試薬又は検体とは異なる特異的結合試薬又は検体を親水性光硬化性樹脂と混合した溶液を前記流路内に充填する再充填工程、
前記流路内に充填された前記親水性光硬化性樹脂に対して、未硬化の光硬化性樹脂の存在する部位を露光可能なフォトマスクを用いて露光を行う再露光工程、
未硬化の樹脂を前記流路から洗浄除去する再洗浄工程、
再充填工程から再洗浄工程を繰り返し、複数の異なる特異的結合試薬及び/又は検体を流路内に固定するマイクロ流体デバイス製造方法。
【発明の効果】
【0021】
今まで直接特異的結合試薬と光硬化性樹脂を混合し、架橋することによって固相化したデバイスはなかった。本発明の方法により微細ビーズを用いずに特異的結合試薬を流路に固定することが可能となったことから、各構造物に固定した特異的結合試薬が混じり合うことがない。微小構造物ごとに異なる試薬を固定することができるため、単一の標識を付与した検出試薬によって異なる検出対象を検出することが可能となった。その結果、検出器の小型化を図ることができ、より簡易なシステムで複数項目の分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マイクロ流体デバイスの作製方法の手順を示す図。
【図2】図2A~Bは、本発明の光硬化性樹脂を用いたマイクロ流体デバイスの作製方法を模式的に示す。図2Cは基板の写真及びマイクロ流路の位置を示す。
【図3】イムノアッセイの手順を示す図。
【図4】疾病マーカーを用いて測定した結果を示す図。図4Aは蛍光強度の測定結果を示す。図4BはCRPを固相化したデバイスを用い、抗原濃度を変えて反応を行った蛍光顕微鏡写真を示す。
【図5】複数項目アッセイの結果を示す図。図5AはCEA濃度を変えて、図5BはCRP濃度を変えて測定した結果を示す。
【図6】他の実施形態を示す図。ストレプトアビジンを用いた例を示す。図6Aはコントロール、図6Bはストレプトアビジンを介して抗EGFR抗体を固相化したもの、図6Cは直接抗EGFR抗体を固相化して検査を行った例を示す。
【図7】他の実施形態を示す図。検体固相化の例を示す。
【図8】従来法によるマイクロ流体デバイスの作製法を模式的に示す図。図8Aは単一項目分析デバイスを、図8Bは三項目分析デバイスを示す。
【図9】抗体を固相化した複数種の微細ビーズを個別に光硬化性樹脂とともに硬化させる試みを模式的に示す図。図9A~Cは複数種の微細ビーズの固相化工程を示す模式図。図9Dは検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、抗体を用いた免疫アッセイのデバイスを中心に説明するが、特異的に結合する分子であればどのようなものを用いてもよい。例えば、本発明のマイクロ流体デバイス(以下、単にデバイスと記載することもある。)は、抗体、抗原、アプタマー、DNA、RNA、細胞溶解液など、検出目的の物質に特異的に結合するものであればどのようなものを特異的結合試薬として固相化してもよい。抗体は、抗体分子そのものを用いてもよいし、Fab、Fabのように、抗原と特異的に結合する領域のみを用いてもよい。抗原は、抗原分子全体として用いてもよいし、エピトープ領域のみを含む構成としてもよい。

【0024】
また、抗体をデバイスに結合させるために、プロテインA、プロテインG等、抗体と特異的に結合する試薬を特異的結合試薬として固相化してもよい。さらに、ストレプトアビジンを本発明のデバイスに固定し、検出対象に特異的に結合する抗体等の分子をビオチン化してデバイスに固相化することも可能である。

【0025】
本発明のデバイスを用いて分析することのできる検体としては、被験物質を含む可能性のあるものであればどのようなものを用いてもよい。例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液のような体液や、細胞、組織や擦過検体を生理的食塩水や緩衝液のような溶媒によって抽出した抽出液を用いることができる。全血、唾液、組織の抽出物のように血球や固形物を含むサンプルの場合には、流路の入り口にプレフィルターを設けて濾過できる構成としてもよい。また、微細な細胞片、細胞膜であれば、濾過せずそのまま用いて結合を確認することも可能である。

【0026】
また、検体をデバイスに固相化して用いることも可能である。固相化する検体としては、どのようなものを用いてもよいが、感度の点から濃縮することができるものを選択することが好ましい。例えば、細胞、細胞塊、細胞膜、オルガネラ、エクソソームなどを挙げることができる。これらを含む検体を直接固相化することによって、検出しようとしているものが本当に検体の中に入っているかを調べたい場合などに非常に有用である。例えば、細胞を樹脂と混ぜて硬化し、樹脂の中に閉じ込め、蛍光標識抗体をいれると、細胞にどのような膜タンパクが存在するかを調べることができる。したがって、研究目的でデバイスを使用する場合に非常に有効なツールとなり得る。また、同一の抗原を認識する複数の抗体を固相化したデバイスを作製して検出感度の良い抗体を選択したり、サンドイッチアッセイに用いる抗体の組合せを得るなど、デバイス作製に有用な情報を得ることができる。

【0027】
検出は感度が高いことから、蛍光検出器を用いることが好ましい。また、本発明のマイクロ流体用デバイスシステムは、一種類の蛍光を検出すればよいため、蛍光を切り替えるための装置を必要とせず、小型化することができる。マイクロ流体デバイスを載置する載置台を設け、デバイス上をスキャンしながら蛍光強度を測定し数値として表すような装置とすれば、顕微鏡のように複雑な光学系を必要としないことから、装置の低価格化、小型化、軽量化を図ることができる。実際に試作した装置は重さが1kg程度であり、乾電池でも駆動することができるように設計されておりどこにでも持ち運ぶことができる。また、検出手段を蛍光検出器とすることにより、顕微鏡操作のように熟練を要する必要がない。例えば、スタートボタンのような測定開始手段により測定を開始させ、データが表示されるような表示手段を設ければ、誰もが測定可能なシステムを構築することができる。さらに、蛍光検出器にはメモリ機構を備え、蛍光強度に対する検体の濃度を予め測定した検量線のデータをインプットすることが好ましい。蛍光測定後、すぐに検出対象物の濃度を算出し、表示手段によって表示することにより、使用者は検出対象物の検体中の濃度を知ることができる。

【0028】
蛍光標識としてはどのようなものを使用してもよいが、基板や樹脂の自家蛍光と波長が重ならないことが望ましい。有機化合物タイプの蛍光標識としては、Dylight650(商標)等の励起波長が600nm付近のものが、基板の自家蛍光と波長が重ならないため、バックグラウンドを低く抑えることができる。また、無機化合物タイプの蛍光標識も利用することができ、例えば量子ドットは蛍光寿命が非常に長いため、観察に便利である。さらに、蛋白質などの生体分子タイプの蛍光標識も利用できる。

【0029】
本発明で用いる光硬化性樹脂としては、親水性光硬化性樹脂であればどのようなものを用いてもよい。例えば、アジド系感光基を有するものや、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するものなどを用いることができる。1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する水溶性光硬化性樹脂は、一般に、300~30000、好ましくは500~20000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散する十分なイオン性または非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合などを含み、かつ波長が約250~約600nmの範囲内の光を照射したとき、硬化して水に不溶性の樹脂に変わるものが好適に使用される(特許文献2~5参照)。

【0030】
ポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば下記の化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。

【0031】
代表的な親水性光硬化性樹脂としては以下のようなものが挙げられる。
(1)分子量400~6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(2)分子量200~4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(3)分子量400~6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物
(4)分子量200~4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物。

【0032】
また、親水性光硬化性樹脂には必要に応じて、光重合開始剤を含ませる。この光重合開始剤は、重合開始種となって重合性不飽和基を有する樹脂間に架橋反応を起こさせるものであり、例えば、ベンゾインなどのα-カルボニル類、ベンゾインエチルエーテルなどのアシロインエーテル類、ナフトールなどの多環芳香族化合物類、メチルベンゾインなどのα-置換アシロイン類、2-シアノ-2-ブチルアゾホルムアミドなどのアゾアミド化合物などを挙げることができる。この場合、親水性光硬化性樹脂と光重合開始剤との使用割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類などに応じて広範囲にわたって変えることができる。一般的には、親水性光硬化性樹脂100質量部に対し、光重合開始剤は0.1~5質量部、好ましくは0.3~3質量部の割合で使用するのが適当である。

【0033】
本発明では、光硬化性樹脂としてAWP(Aside-unit Pendant Water-soluble Photopolymer)を用いているが、アミノ基を架橋することができる樹脂であれば好適に用いることができる。以下、光硬化性樹脂としてAWPを用いる場合について詳述するが、AWPを用いる場合は、特異的結合試薬又は検体との体積比33~100%で用いることができる。樹脂濃度が高い方が洗浄時に流失しにくい構造物を作ることができるが、デバイスの感度が低下する。特異的結合試薬の対象に対する親和性によって、最適なAWP濃度を選択すればよい。また、特異的結合試薬として抗体を用いる場合には、抗体濃度1μg/ml~10mg/mlで樹脂と混合している。抗体濃度が高いほど、検出感度の高いデバイスを作成できる。抗体濃度は抗体の親和性や、検出感度によって適宜選択すればよい。また、通常、抗体とAWPは、体積比2:1で混合すればよいが、混合割合も用いる抗体や抗体の検出対象に対する感度に応じて適宜選択することができる。

【0034】
光硬化は波長310nm付近において照射強度が20mW/cm程度の紫外線照射装置であればどのようなものを用いても良く、1秒~3分で硬化を行う。硬化の時間はAWP、特異的結合試薬や検体の濃度に依存する。AWP濃度が高いほど短時間で硬化する。また、樹脂の硬化は、位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡を用いて確認することができる。特異的結合試薬や検体を混合した光硬化性樹脂の構造物の形状は、円柱状のピラー状、直方体のウォール状など、フォトマスクの形状によってどのような形にしてもよい。一般的には、検体の体積に対する反応場の表面積の割合である比表面積の大きい形状の方が検出感度が高くなるので好ましい。

【0035】
基板は、どのようなものを用いてもよいが、光硬化性樹脂を用いることから、光透過率が高いものが好ましい。また、蛍光標識などを光学的測定により検出する場合には、透明度の高い材質や、検出波長付近に自家蛍光を発することのない材質が適している。中でも、環状オレフィンポリマー基板や環状オレフィンコポリマー基板が、射出成型による加工精度が高く、微細加工によりマイクロ流路を作製するのに適している。また、基板には少なくとも一つ以上のマイクロ流路が設けられていればよい。

【0036】
特異的結合試薬を固定した後に用いる洗浄液としては、一般に免疫測定に用いる洗浄液、ブロッキング液を用いることができる。例えば、緩衝液としては、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、炭酸緩衝液、PBS(Phosphate buffered saline)、TBS(Tris buffered saline)などの緩衝液を用いることができる。また、抗体などのタンパク質をデバイスに固定する場合には、非特異吸着を防止するために、BSA(ウシ血清アルブミン)、スキムミルク、ウシ血清、アルブミンなどのタンパク質をブロッキング剤として用いることができる。また、DNAなどの核酸を固定化する場合には、ブロッキング剤としてサケ精子DNAなど通常核酸のブロッキングに用いられているものを用いれば良い。界面活性剤としては、TritonX-100、Tween20、Briji 35、Nonidet P-40、SDSなどを用いることができる。

【0037】
マイクロ流体デバイスは図1に示すようにして作製する。流路が形成されている基板を用意する。光硬化性樹脂と特異的結合試薬又は検体を混合し、デバイスの流路に満たす。所望の箇所のみ光が透過するようにデザインされたフォトマスクでデバイスを覆い、紫外線を照射し特異的結合試薬が混合されている樹脂を光硬化させる(図2A)。未硬化樹脂を吸い出し、洗浄液によって洗浄する。複数項目の特異的結合試薬等をデバイスに固相化する場合には、この手順を繰り返し、流路に特異的結合試薬等を光硬化性樹脂とともに固定する(図2B)。デバイス作製後は、洗浄液で流路を満たし、アッセイまで低温で保存しておけばよい。抗体等のタンパク質を固相化した場合は、乾燥しないように湿潤下、4℃で保存すれば、1年程度は安定である。

【0038】
代表的なアッセイ方法であるイムノアッセイについて説明する。図3には、抗体をデバイスに固定して検出を行う場合の手順を示している。デバイスの流路は作製時に洗浄液やブロッキング液等の緩衝液が満たされているから、緩衝液の除去を行う。次に、検体を流路に入れてインキュベートする。流路サイズが1000μm×6500μm×50μm程度の大きさの場合には、一つの流路には0.5~1.5μlの検体を注入する。検体の種類、検出対象の濃度にもよるが、通常室温で10分程度インキュベートすれば十分である。また、37℃に設定してあるインキュベーター等を用いることにより、より短時間で検出対象と特異的結合試薬との結合を行うことができる。デバイスに固定する特異的結合試薬の検出対象に対する親和性、検出対象の濃度によって、1分~24時間程度の範囲で適宜反応させる時間を設定すればよい。次に、検体を吸い出し、洗浄液を入れ、1分程度静置する。洗浄液を入れ替えて、同じ操作を繰り返して洗浄を行う。通常5回程度洗浄操作を繰り返すことによって、完全に洗浄される。また、洗浄は、静置を行わずすぐに洗浄液を入れ替えて、7~8回程度洗浄液を交換することによって行っても良い。検出対象や、固相化している特異的結合試薬によって、洗浄回数、洗浄時間は適宜調整すればよい。

【0039】
次に、検出対象に結合する二次抗体を流路に入れる。二次抗体の濃度、検出対象の濃度にも依存するが30秒程度で反応は完了する。二次抗体を吸い出し、洗浄液を入れる。上記と同じ洗浄操作を繰り返す。次に蛍光標識等によって標識された三次抗体を流路に入れてインキュベートする。通常は、二次抗体と同様30秒程度インキュベートすれば十分である。その後、同様に洗浄を行い、標識の検出を行う。蛍光標識によって標識した三次抗体を用いた場合には、蛍光検出器、蛍光顕微鏡で観察すればよい。アッセイに要する時間は30分以下である。したがって、緊急を要する検査等、短時間で結果を出す必要がある場合に非常に有効なアッセイである。二次抗体が蛍光標識されている場合には、三次抗体を用いる必要はないため、さらにアッセイ時間を短縮することもできる。

【0040】
本発明で、「検出対象に特異的に結合する標識された試薬」とは、検出対象に結合する標識された二次抗体や、検出対象に特異的に結合する二次抗体と二次抗体に結合する標識された三次抗体のセットのように、検出対象を検出することができる標識された試薬を含む組合せであってもよい。

【0041】
ここでは、抗体を流路に固定したイムノアッセイについて説明したが、検体を固定した場合には、検出対象に特異的に結合する標識した抗体で検出を行ってもよいし、検出対象に特異的に結合する抗体とこれを認識する標識抗体を組み合わせて検出を行っても良い。また、核酸を固定した場合には定法にしたがって、ハイブリダイゼーションにより検出すればよい。

【0042】
本発明の方法によって製造したマイクロ流体デバイスは複数の異なる特異的結合試薬を微小構造物毎に混じり合うことなく固定することができるが、単一の特異的結合試薬を固定するために使用することができることは言うまでもない。

【0043】
以下、実施例を示しながら本発明について説明するが、実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0044】
≪マイクロ流体デバイスによる各種抗原の検出限界≫
環状オレフィンポリマー(BS-X2194、住友ベークライト社製)のマイクロチップ基板(70mm×30mm×1.25mm)を用いた(図2C、写真参照。)。基板には直方体(1000μm×6500μm×50μm)のマイクロ流路が40か所設けられている。マイクロ流路の入り口、及び出口の直径は1.0mmである。
【実施例1】
【0045】
前立腺がんマーカーであるPSA(前立腺特異抗原)、炎症マーカーであるCRP(C-リアクティブ プロテイン)、腫瘍マーカーであるCEA(がん胎児性抗原)を夫々検出するマイクロ流体デバイスの作製を行った。抗PSA抗体、抗CRP抗体、抗CEA抗体を別々に固定したマイクロ流体デバイスを作製し、精製された抗原を用いて検出限界の検討を行った。
【実施例1】
【0046】
PSAアッセイは以下の試薬を用いた。
一次抗体: 抗PSA抗体(アブカム社製、ab10189、2mg/ml)
抗原: ヒトPSA(Acris Antibodies社製、P117-7)
二次抗体: 抗PSA抗体(Cell Signaling Technology社製、5365)
三次抗体: DyLight650(商標)標識ヤギ抗ウサギIgG(アブカム社製、ab96902)
【実施例1】
【0047】
CRPアッセイは以下の試薬を用いた。
一次抗体:抗CRP抗体(アブカム社製、ab136176,2mg/ml)
抗原:CRP(Acris Antibodies社製、P100-0)
二次抗体:抗CRP抗体(アブカム社製、ab31156)
三次抗体:DyLight650(商標)標識ヤギ抗ウサギIgG(アブカム社製、ab96902)
【実施例1】
【0048】
CEAアッセイには以下の試薬を用いた。
一次抗体:抗CEA抗体(アブカム社製、ab4451、2mg/ml)
抗原:ヒトCEA(R&D社製、4128-CM—050)
二次抗体:抗CEACAM5抗体(ウサギ)(アブカム社製、ab131070)
三次抗体:DyLight650(商標)標識ヤギ抗ウサギIgG(アブカム社製、ab96902)
【実施例1】
【0049】
一次抗体はすべて2mg/mlの濃度で、光硬化性樹脂AWPと、体積比で樹脂1に対して抗体が1になるようにして混合し流路に満たし、紫外線照射装置によって5秒間紫外線を照射し光硬化した。
【実施例1】
【0050】
各抗原は、1%BSAを含むPBSで所望の濃度に希釈し、流路に満たして10分間室温でインキュベートした。その後、10μlの洗浄液を用い7~8回に分けて洗浄を行った。具体的には、以下のようにして洗浄を行った。抗原をアスピレーターで吸い出す。マイクロピペットに10μlの洗浄液をとり、流路が満たされるように約1.3μlの洗浄液で満たす。洗浄液をアスピレーターで吸い出し、洗浄液で満たすことを繰り返し、一流路につき10μlの洗浄液を用いて洗浄を行った。なお、洗浄液は0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)、0.5%Tween20を加えたPBSを用いた。
【実施例1】
【0051】
二次抗体、三次抗体は、50μg/mlになるように1%BSAを含むPBSで希釈し、夫々30秒間流路に満たした後、上記と同様10μlの洗浄液で洗浄を行った。
【実施例1】
【0052】
蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製、Ni-E)で蛍光画像を撮影した。図4Aに示すように、いずれの抗原も非常に低濃度で検出できることが明らかである。この結果から計算されるPSA、CRP、CEAの検出限界は夫々2.29ng/ml、1.61ng/ml、0.49ng/mlであった。PSAの前立腺疾患のカットオフ値は4ng/ml、CRPの動脈硬化マーカーとしてのカットオフ値は10ng/ml、CEAのがんマーカーとしてのカットオフ値は5ng/mlであることから、このデバイスが疾病の診断に適用可能であることは明らかである。各疾患マーカーとも実用に十分な検出限界まで測定することが可能であった。また、検体注入から検出までに要する時間は15分という非常に短い時間であった。
【実施例1】
【0053】
図4Bは上記と同様のCRPデバイスを用い、0~1610ng/mlまで抗原濃度を変えて反応させた後、二次抗体、三次抗体と反応させ、蛍光顕微鏡を用いて観察したマイクロ流路内の光硬化性樹脂と抗体が固定された構造物の写真を示す。光源は高圧水銀ランプ、フィルターはCy5用フィルターを用い、浜松ホトニクス製デジタルCCDカメラORCA-R2で撮影を行っている。バックグラウンドはほとんど観察されず、検体濃度に依存して蛍光強度が高くなっているのが観察される。蛍光顕微鏡観察によっても1.61ng/ml以上のCRPであれば検出可能であることを示している。
【実施例1】
【0054】
また、ここでは示さないが、本発明の製造方法により作製したデバイスは、直接抗体などの特異的結合試薬を光硬化性樹脂に混合して固定するので、デバイスの製造ロット間のばらつきが、微細ビーズを用いて作製した場合に比べて少ない。
【実施例2】
【0055】
≪マイクロ流体デバイスによる複数項目の検出≫
次に、複数項目を同時に検出するデバイスを作製し検討を行った。抗CEA抗体、抗CRP抗体を1つの流路内に配置したマイクロ流体デバイスを作製した。固相化に用いた抗体、検出に用いた抗体、抗原は実施例1と同じものを用いている。
【実施例2】
【0056】
実施例1と同様の手順で、抗CEA抗体をAWP樹脂と混合し、基板に設けられた流路を満たした。次に、所望の領域(以下、第1領域という。)に光を照射するようにデザインされたフォトマスクで覆い、紫外線を照射して樹脂と抗体の混合物を光硬化させ、流路内にウォール状の直方体の構造物を作製した。未硬化の樹脂を吸い出し、洗浄液で洗浄を行った。
【実施例2】
【0057】
次に、抗CRP抗体をAWP樹脂と混合し、流路に満たした。抗CEA抗体が固定されている第1領域とは別の領域(以下、第2領域という。)に光を照射するようにデザインされたフォトマスクで覆い、紫外線を照射して樹脂と抗CRP抗体の混合物を光硬化させた。同一流路内に、第1領域には抗CEA抗体が、第2領域には抗CRP抗体が固定されている複合項目をアッセイするデバイスを作製した。
【実施例2】
【0058】
各抗原、抗体は実施例1で用いたものと同じものを使用した。各抗原を種々の濃度で流路に満たし反応させ、二次抗体は抗CRP抗体、抗CEA抗体をそれぞれの濃度が50μg/mlになるように混合し反応させた。三次抗体は二次抗体がウサギ抗体であることから、DyLight650(商標)標識ヤギ抗ウサギIgGで検出を行った。検出は、蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製、Ni-E)を用いた。結果を図5に示す。
【実施例2】
【0059】
図5は、CEA抗原、CRP抗原の濃度を変えて、上記で作製した複数項目アッセイデバイスで測定した結果を示している。第1領域の抗CEA抗体が固定された領域での測定結果を■で、第2領域の抗CRP抗体が固定された領域の測定結果を●で示している。
【実施例2】
【0060】
図5Aは、CEA抗原の濃度を変えて測定した蛍光強度を、図5BはCRP抗原の濃度を変えて測定した蛍光強度を示している。図5Aに示すように、CEA抗原は、抗CEA抗体が固相化されている第1領域(■)では濃度に依存して蛍光強度の増加が観察される。一方、高いCEA抗原濃度である5000ng/mlを用いた場合でも抗CRP抗体を固相化している第2領域(●)ではバックグラウンドレベルと同等の蛍光強度しか観察されなかった。
【実施例2】
【0061】
また、図5Bに示すように、CRP抗原の濃度を変えて蛍光強度を測定した場合には、抗CRP抗体が固相化されていない第1領域(■)ではバックグラウンドレベルの蛍光強度が測定されるのみであった。すなわち、第1領域には抗CEA抗体のみが、第2領域には抗CRP抗体のみが固相化されていることを示している。また、図5に示すように、いずれの抗原も図4で示した単一項目のアッセイデバイスと同様の非常に低濃度の検出限界まで検出できている。
【実施例2】
【0062】
実施例2で示したように、同一検体で同時にアッセイを行うことができるので、抗CRP抗体、抗CEA抗体のような同時にアッセイを行うことが望ましい項目の測定に適している。ここでは、2種類の抗体の複合アッセイを示したが、同時に検出したい抗体を固定することによって、何種類でもマイクロ流体デバイスに組み込むことが可能である。
【実施例3】
【0063】
流路に抗体以外の特異的結合試薬を固相化した例を示す。マイクロ流路に固定する特異的結合試薬としてストレプトアビジンを用いた。10mg/mlの濃度でストレプトアビジンをPBS(pH7.4)に溶解し、体積比でAWP1に対して1の割合で混合した。混合後に実施例1と同様にして紫外線によって硬化した。
【実施例3】
【0064】
次に、50μg/mlの濃度の一次抗体(ビオチン修飾された抗EGFR抗体、アブカム社製、ab113645)を流路に満たし、室温で1時間ストレプトアビジン-ビオチンの結合反応を行った。その後、アスピレーターで抗EGFR抗体を吸い出し、洗浄液10μlで洗浄した後、アッセイに使用した。抗原を含む検体には、肺癌患者の胸水沈渣をライシスバッファ(Cell Signaling Technology社製、9803)に溶解したものを用いた。二次抗体は抗L858R遺伝子変異型EGFR抗体(Cell Signaling Technology社製、3197)、三次抗体はDyLight650(商標)標識ウサギ抗ヤギIgG(アブカム社製、ab102343)を、それぞれ1%BSAを含むPBSで希釈して50μg/mlに調整してから用いた。実施例1と同様の手順でアッセイした結果を図6に示す。図6A,Bはストレプトアビジンを介して抗EGFR抗体を固相化している領域、図6Cは直接抗EGFR抗体を固相化している領域の蛍光顕微鏡写真である。図6Aはコントロールとして検体を用いずにその後のアッセイを行ったもの、図6B、6Cは検体とのインキュベーション以降は同一にしてアッセイを行ったものである。
【実施例3】
【0065】
図6に示すように、ストレプトアビジンを用いることによって、直接抗EGFR抗体を固相化した場合に比べて、100倍程度高い感度が得られている。分子量が小さく、また、高濃度のストレプトアビジンを用いることが可能であることから、高密度に抗体を固定することができるためと考えられる。
【実施例3】
【0066】
以上示してたように、抗体だけではなく、特異的結合を示すものであればどのようなものを用いて固相化してもよく、また、互いの領域間で汚染が生じることもないため、感度よく対象を検出することが可能である。
【実施例4】
【0067】
次に、検体を固相化した例を示す。肺がんの原因となるEML4-ALK融合タンパク質の検出を行った。EML4-ALK融合タンパク質は、EML4遺伝子とALK遺伝子が融合して、EML4タンパク質のアミノ末端側約半分とALK受容体型チロシンキナーゼの細胞内領域が融合している異常たんぱく質である。EML4-ALK融合タンパク質が発現している細胞株H3122、EML4-ALK融合タンパク質が発現していない細胞株H358を用いた。細胞溶解液は、集めた培養細胞を遠心分離により細胞と上清とに分け、上清を取り除き、細胞にライシスバッファ(Cell Signaling Technology社製、9803)を加えることによって調製した。
【実施例4】
【0068】
AWPと、2つの細胞株から調製した細胞溶解液を体積比1:1で混合し、夫々マイクロ流路内に充填し、紫外線を露光し光硬化した。洗浄液で洗浄を行い、各細胞溶解液が固相化されている微小構造物を備えたデバイスを作製した。
【実施例4】
【0069】
検出は次のようにして行った。EML4-ALK融合タンパク質に特異的に結合するマウス抗体(SantaCruz社製、SC-57024)を流路に導入し、30秒間インキュベーションを行った。洗浄液で洗浄を行った後、DyLight650標識抗マウスIgG抗体(アブカム社製、ab98797)を流路に導入し、30秒間インキュベーションを行った。洗浄液で洗浄し、蛍光顕微鏡、及び明視野で観察を行った。結果を図7に示す。
【実施例4】
【0070】
図7上段の明視野像に示すように、H3122、H358どちらの細胞溶解液を用いて固相化したデバイスにも細胞膜の断片が観察される(図中、観察される細胞膜のうちの一部を矢印で示す。)。しかしながら、図7下段に示す蛍光顕微鏡像では、EML4-ALK融合タンパク質陽性細胞であるH3122のみで蛍光が観察される。観察される蛍光は明視野像で細胞膜を示す黒い点が観察される領域と一致する(蛍光顕微鏡像でも対応する位置を矢印で示す。)。
【実施例4】
【0071】
以上のように、検体を直接固相化することにより、検出対象が含まれていることを確認することができる。また、検体に対する抗体の特異的結合を確認することができるため、アッセイに用いる特異性の高い抗体、結合性の高い抗体を選択する際に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の方法によれば、短時間で感度よく検出が可能であり、複数項目を検査する場合であっても検出器を小さくすることができる。したがって、患者のベッドサイドで検査を行うPOCT(Point-of-care testing)や、短時間で検査結果を必要とする場合に非常に有用である。また、検体を直接固相化することにより、検出対象が含まれているかを確認したり、抗体が特異的に検出対象に結合することを、非常に短時間で確認することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8