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明細書 :光増幅変調システムおよび光応答高速化システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年2月1日(2018.2.1)
発明の名称または考案の名称 光増幅変調システムおよび光応答高速化システム
国際特許分類 G02F   1/061       (2006.01)
FI G02F 1/061 501
国際予備審査の請求
全頁数 31
出願番号 特願2017-510102 (P2017-510102)
国際出願番号 PCT/JP2016/060390
国際公開番号 WO2016/159077
国際出願日 平成28年3月30日(2016.3.30)
国際公開日 平成28年10月6日(2016.10.6)
優先権出願番号 2015072479
優先日 平成27年3月31日(2015.3.31)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】堤 直人
【氏名】木梨 憲司
【氏名】桝村 健人
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査請求 未請求
テーマコード 2K102
Fターム 2K102AA23
2K102BA01
2K102BA13
2K102BB01
2K102BC01
2K102BD08
2K102CA18
2K102DA01
2K102DB03
2K102DD01
2K102EA02
2K102EB11
2K102EB12
2K102EB20
要約 本発明の光増幅変調システム(11)は、フォトリフラクティブ素子(1)と、互いに干渉する第1の光(B4)および第2の光(B5)をフォトリフラクティブ素子(1)上に照射して干渉させる光照射部(12)とを備え、光照射部(12)は光強度変調器(18)を備え、光強度変調器(18)は第2の光(B5)のみを変調し、第2の光(B5)は干渉時および非干渉時に対応して強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする。
特許請求の範囲 【請求項1】
フォトリフラクティブ素子と、
互いに干渉する第1の光および第2の光を生成し、前記第1の光と前記第2の光を前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させる光照射部と、
前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加する電界印加部と、を備えており、
前記光照射部は光強度変調器を備え、
前記光強度変調器は前記第2の光のみを変調し、
前記第2の光は、非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して前記光強度変調器により強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする光増幅変調システム。
【請求項2】
前記光強度変調器は、音響光学モジュレータであって、
前記音響光学モジュレータは、出力の0次光のみを前記第2の光として前記フォトリフラクティブ素子上に照射することを特徴とする請求項1に記載の光増幅変調システム。
【請求項3】
前記光照射部は、
レーザー光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザー光の光軸上に配置された第1の半波長板と、
前記第1の半波長板を通過したレーザー光を第1の分割光と第2の分割光とに分割する偏光ビームスプリッターと、
前記第1の分割光の光軸上に配置された第2の半波長板と、を備えており、
前記第2の半波長板を通過した第1の分割光、および前記音響光学モジュレータを通過した第2の分割光を前記フォトリフラクティブ素子上に照射することを特徴とする請求項2に記載の光増幅変調システム。
【請求項4】
フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化するシステムであって、
互いに干渉する第1の光および第2の光を生成し、前記第1の光と前記第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させる光照射部と、
前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加する電界印加部と、を備えており、
前記光照射部は前記第2の光の強度を変調する光強度変調器を備え、
前記光強度変調器は前記第2の光のみを変調し、
前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して前記光強度変調器により強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする光応答高速化システム。
【請求項5】
前記光強度変調器は、音響光学モジュレータであって、
前記音響光学モジュレータは、出力の0次光のみを前記第2の光として前記フォトリフラクティブ素子上に照射することを特徴とする請求項4に記載の光応答高速化システム。
【請求項6】
前記光照射部は、
レーザー光を出射する光源と、
前記光源から出射されたレーザー光の光軸上に配置された第1の半波長板と、
前記第1の半波長板を通過したレーザー光を第1の分割光と第2の分割光とに分割する偏光ビームスプリッターと、
前記第1の分割光の光軸上に配置された第2の半波長板と、を備えており、
前記音響光学モジュレータに前記偏光ビームスプリッターを通過した第2の分割光が入光することを特徴とする請求項5に記載の光応答高速化システム。
【請求項7】
高速で光増幅を変調する方法であって、
フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、
前記第2の光のみを変調し、
前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して強度の強弱を時間周期的に変化させることを特徴とする光増幅変調方法。
【請求項8】
フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化する方法であって、
前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、
少なくとも前記第2の光の強度の強弱を干渉時および非干渉時に対応して時間周期的に変化させることを特徴とする光応答高速化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅変調システムおよび光応答高速化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の物質は、良好な電荷輸送能を有することが知られており、その応用事例として次に示すフォトリフラクティブ効果がある。フォトリフラクティブ効果とは、非線形光学効果の1つであり、物質が光を吸収して屈折率が変化する現象のことである。フォトリフラクティブ効果の発現機構を説明する。光導電性および2次の非線形光学特性を有する媒体中で2本のレーザー光を干渉させると干渉縞が形成される。この干渉縞の明部において光励起による電荷キャリアが生成され、外部印加電界により正電荷キャリアが媒体中を移動し、暗部にトラップされる。その結果、明部で負、暗部で正、に帯電した電荷密度の周期的な分布ができ、空間電界が形成される。この空間電界は、1次の電気光学効果であるポッケルス効果を引き起こし、周期的な屈折率格子が形成される。この屈折率格子と光干渉縞との間には空間的にφの位相差が生じるため、2光波間で非対称なエネルギー移動が観測され、光増幅(光学利得)が得られる。
【0003】
このようなフォトリフラクティブ効果を用いることで、位相共役や、歪曲した媒体からのイメージング、実時間ホログラフィー、超多重ホログラム記録、3Dディスプレイ、3Dプリンター、さらには光増幅、光ニューラルネットワークを含む非線形光情報処理、パターン認識、光リミッティング、高密度光データの記憶等への応用が期待されている。
【0004】
上記効果を発現するフォトリフラクティブ材料として、従来、ニオブ酸リチウム(LiNbO)等の無機結晶材料が用いられていた(例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照)。しかし、この無機結晶材料では、素子の薄型化が難しく、また、強外部印加電界が必要となる。そのため、素子の信頼性に問題があった。また、広い面積のデバイスに応用することが困難であるため、実用上には大きな課題があった。
【0005】
そこで、近年、有機物からなるフォトリフラクティブ材料の開発が活発になっている。有機フォトリフラクティブ材料は、無機フォトリフラクティブ材料に比べて多くの利点がある。その利点とは、組成比率の最適化が容易、高い加工性の他、例えば、大きな光学非線形性、低誘電率、低コスト、軽量、可撓性などである。また、用途に応じて望ましいものとなり得る他の重要な特性には、記録データの長い貯蔵寿命、光学品質、および熱安定性がある。このような有機フォトリフラクティブ材料は、高度な情報通信技術にとって重要な材料となりつつある。その中でも、カルバゾール類(例えば、特許文献1を参照)、トリフェニルアミン類が知られている。
【0006】
動画記録・再生装置、高速データ記憶装置のような高性能のホログラフィック装置に適用するための十分な表示性能を得るため、応答性を格段に向上させることが求められる。そのような技術として、高速応答性フォトリフラクティブポリマー素子が開発されている(例えば、特許文献2、非特許文献3および非特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2003-322886号公報(2003年11月14日公開)
【特許文献2】国際公開第2014/038332号(2014年3月13日公開)
【0008】

【非特許文献1】R. M. Kurtz et al., “Photorefractive amplification at high frequencies”, Proc. of SPIE, vol. 7957, 79570K (2011)
【非特許文献2】R. M. Kurtz et al., “High-frequency photorefractive amplification for ATR applications”, Proc. of SPIE, Vol. 6314, 63140O (2006).
【非特許文献3】K. Kinashi et al., “Photorefractive device using self-assembled monolayer coated indium-tin-oxide electrodes”, Org. Electro., vol. 14, 2987-2993 (2013).
【非特許文献4】C. W. Christenson et al., “Grating dynamics in a photorefractive polymer with Alq3 electron traps”, Optics Express, vol. 18, 9358-9365 (2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のような従来技術でも、超高速の応答を実現することが困難であるという問題がある。例えば、高速メモリー装置、高速ディスプレイ装置等では、非常に高速で応答する素子が必要であり、また、ディスプレイ装置では従来の30Hzから180Hz以上という、より高速化が求められる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、フォトリフラクティブ素子の応答性を飛躍的に向上させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、これまで材料の改良や新規材料の開発により高速化が図られてきた一方で、それだけでは応答性に限界があると考えた。そこで、別の視点から、高速応答性を得ることができないか多くの検討を行った。その結果、2光波結合させる2本の光のうちの一方の光の強度を強弱させることによって、これまで到底達し得なかった超高速の応答性が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の光増幅変調システムは、フォトリフラクティブ素子と、互いに干渉する第1の光および第2の光を生成し、前記第1の光と前記第2の光を前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させる光照射部と、前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加する電界印加部と、を備えており、前記光照射部は光強度変調器を備え、前記光強度変調器は前記第2の光のみを変調し、前記第2の光は、非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して前記光強度変調器により強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする。
【0013】
上記光増幅変調システムによれば、フォトリフラクティブ素子に電界を印加しながら、第1の光と第2の光とを照射して干渉させるため、フォトリフラクティブ効果が生じ、光増幅(光学利得)が得られる。この際、第2の光は、強度の強弱が時間周期的に変化する。これにより、フォトリフラクティブ素子は光の強度の強弱のタイミングに追従した超高速応答性を示すことができる。
【0014】
本発明の光増幅変調システムにおいて、前記光強度変調器は、音響光学モジュレータであって、前記音響光学モジュレータは、出力の0次光のみを前記第2の光として前記フォトリフラクティブ素子上に照射することが好ましい。このような構成によれば、音響光学モジュレータの特性を用いて、強い強度の光と弱い強度の光を交互に簡単に生じさせることができる。
【0015】
本発明の光増幅変調システムにおいて、前記光照射部は、レーザー光を出射する光源と、前記光源から出射されたレーザー光の光軸上に配置された第1の半波長板と、前記第1の半波長板を通過したレーザー光を第1の分割光と第2の分割光とに分割する偏光ビームスプリッターと、前記第1の分割光の光軸上に配置された第2の半波長板と、を備えており、前記第2の半波長板を通過した第1の分割光、および前記音響光学モジュレータを通過した第2の分割光を前記フォトリフラクティブ素子上に照射することがより好ましい。このような構成によれば、互いに干渉する第1の光および第2の光を簡単に生じさせることができる。
【0016】
本発明の光応答高速化システムは、フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化するシステムであって、互いに干渉する第1の光および第2の光を生成し、前記第1の光と前記第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させる光照射部と、前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加する電界印加部と、を備えており、前記光照射部は前記第2の光の強度を変調する光強度変調器を備え、前記光強度変調器は前記第2の光のみを変調し、前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して前記光強度変調器により強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする。
【0017】
上記光応答高速化システムによれば、フォトリフラクティブ素子に電界を印加しながら、第1の光と第2の光とを照射して干渉させるため、フォトリフラクティブ効果が生じ、光増幅(光学利得)が得られる。この際、第2の光は、強度の強弱が時間周期的に変化する。これにより、フォトリフラクティブ素子は光の強度の強弱のタイミングに追従した超高速応答性を示すことができる。
【0018】
本発明の光応答高速化システムにおいて、前記光強度変調器は、音響光学モジュレータであって、前記音響光学モジュレータは、出力の0次光のみを前記第2の光として前記フォトリフラクティブ素子上に照射することが好ましい。このような構成によれば、音響光学モジュレータの特性を用いて、強い強度と弱い強度を交互に簡単に生じさせることができる。
【0019】
本発明の光応答高速化システムにおいて、前記光照射部は、レーザー光を出射する光源と、前記光源から出射されたレーザー光の光軸上に配置された第1の半波長板と、前記第1の半波長板を通過したレーザー光を第1の分割光と第2の分割光とに分割する偏光ビームスプリッターと、前記第1の分割光の光軸上に配置された第2の半波長板と、を備えており、前記音響光学モジュレータに前記偏光ビームスプリッターを通過した第2の分割光が入光することがより好ましい。このような構成によれば、互いに干渉する第1の光および第2の光を簡単に生じさせることができる。
【0020】
本発明の光増幅変調方法は、高速で光増幅を変調する方法であって、フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、前記第2の光のみを変調し、前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して強度の強弱を時間周期的に変化させることを特徴とする。
【0021】
上記光増幅変調方法によれば、フォトリフラクティブ素子に電界を印加しながら、第1の光と第2の光とを照射して干渉させるため、フォトリフラクティブ効果が生じ、光増幅(光学利得)が得られる。この際、第2の光の強度の強弱を時間周期的に変化させる。これにより、フォトリフラクティブ素子は光の強度の強弱のタイミングに追従した超高速応答性を示すことができる。
【0022】
本発明の光応答高速化方法は、フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化する方法であって、前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、少なくとも前記第2の光の強度の強弱を干渉時および非干渉時に対応して時間周期的に変化させることを特徴とする。
【0023】
上記光応答高速化方法によれば、フォトリフラクティブ素子に電界を印加しながら、第1の光と第2の光とを照射して干渉させるため、フォトリフラクティブ効果が生じ、光増幅(光学利得)が得られる。この際、第2の光の強度の強弱を時間周期的に変化させるこれにより、フォトリフラクティブ素子は光の強度の強弱のタイミングに追従した超高速応答性を示すことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、フォトリフラクティブ素子において、これまで到底達し得なかった超高速の応答性が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るフォトリフラクティブポリマー素子の一例の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における音響光学モジュレータの仕組みを説明する図である。
【図4】本発明の実施例における0次光を用いた1MHz変調に対する光増幅の結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例における0次光を用いた1MHz変調に対する光増幅の結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例における1次光を用いた1-5MHz変調に対する光増幅の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例における音響光学モジュレータの出力の0次光の強度を示す図である。
【図8】本発明の実施例における電界依存性の結果を示す図である。
【図9】本発明におけるメカニズムの仮説を説明する図である。
【図10】本発明におけるメカニズムの仮説を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る光増幅変調システムは、フォトリフラクティブ素子に対して互いに干渉する2本の光を照射することにより、フォトリフラクティブ効果を生じさせ、光増幅を行うシステムである(2光波結合)。全体構造の説明に先立ち、まず、本実施形態におけるフォトリフラクティブ素子1について説明する。

【0027】
本実施形態におけるフォトリフラクティブ素子1は、フォトリフラクティブ材料を有し、外部電界が印加される構成になっている限り特に限定されないが、一例として、図1に示すフォトリフラクティブ素子1を用いて説明する。

【0028】
図1は、本実施形態に係るフォトリフラクティブ素子1の一例における模式断面図を示す。フォトリフラクティブ素子1は、図1のように互いに略平行状に配置された一対の透明絶縁基板2、2と、これら一対の透明絶縁基板2、2の内面上2a、2aに形成された透明電極3、3と、各透明電極3の内表面3aに形成された暗電流制御層4、4と、一対の透明絶縁基板2、2間で各透明電極3および各暗電流制御層4を介して挟持されたフォトリフラクティブ複合材料5と、このフォトリフラクティブ複合材料5の周囲に設けられたスペーサー6とで構成されている。

【0029】
各透明絶縁基板2と、これら各透明絶縁基板2の内面上2aに形成された各透明電極3によって、互いに平行状に配置された一対の透明電極基板7、7が構成されている。透明絶縁基板2は限定されないが、具体例として、例えば、ソーダ石灰ガラス、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、サファイア、石英ガラス、ポリエチレンテレフタレート、およびポリカーボネート、ならびにこれらを適宜組み合わせた複合基板等が挙げられる。

【0030】
各透明絶縁基板2の内面上2aに形成された各透明電極3は導電膜であり、金属酸化物膜、金属膜、および有機膜などから選択できる。透明電極3としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛、ポリチオフェン、金、銀、白金、銅、アルミニウム、ポリアニリン、リチウム、マグネシウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、およびカーボンナノファイバー等の炭素、ならびにこれらの組み合わせからなるもの等が挙げられる。

【0031】
フォトリフラクティブ複合材料5は、例えば、主成分であるフォトリフラクティブ材料に、増感剤、非線形光学色素、可塑剤、N型有機半導体等を加えることによって得ることができる。かかる組成を有することで、非常に高い回折効率および利得係数が得られる。これにより、安定で均一な膜中での電荷輸送を効率よく利用でき、非常に高度のフォトリフラクティブ効果を得ることができる。

【0032】
フォトリフラクティブ複合材料5に含まれるフォトリフラクティブ材料は限定されないが、フォトリフラクティブポリマーであることが好ましい。フォトリフラクティブ材料としては、下記式(1)で表されるトリアリールアミン系非結晶質高分子のポリトリアリールアミン(PTAA):ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン]が挙げられる。これは、ポリトリアリールアミン半導体(Polytriarylamine Semiconductors)ともよばれる。

【0033】
【化1】
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【0034】
他のフォトリフラクティブ材料として、テトラフェニルジアミノビフェニル部位を有するフォトリフラクティブ材料が挙げられる。さらに、下記式(2)で表されるポリビニルカルバゾ-ル(PVCz)、トリフェニルアミンアクリレートポリマー(PDAA)、及びポリ(4-ジフェニルアミノ)スチレン(PDAS)等が挙げられる。

【0035】
【化2】
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【0036】
フォトリフラクティブ材料の含有量は、フォトリフラクティブ複合材料:100重量%に対して、下限値として10重量%が好ましく、20重量%がさらに好ましく、30重量%が最も好ましく、上限値としては、50重量%が好ましく、40重量%がさらに好ましい。

【0037】
増感剤は、電子受容体としての性能を有しており、フォトリフラクティブ性を高めるために配合されるものである。増感剤が配合されると、当該増感剤とフォトリフラクティブポリマーとにより、電荷移動錯体が形成され、有用なフォトリフラクティブ性が発現される。

【0038】
フォトリフラクティブ複合材料5に含まれ得る増感剤としては、下記式(3)で表される[6,6]-フェニルC61ブタン酸メチルエステル(PCBM)、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF)、(2,4,7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル(TNF-DM)、フラーレンC60、フラーレンC70、テトラシアノベンゼン(TCBN)、テトラシアノキノジノメタン(TCNQ)、ベンゾキノン(BQ)、およびその誘導体、2,6-ジメチル-p-ベンゾキノン(MQ)、2,5-ジクロロ-p-ベンゾキノン(ClQ)、2,3,5,6-テトラクロロ-p-ベンゾキノン(クロラニル)、及び2,3-ジクロロ-5,6-p-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。なお、増感剤は、1種類のものを単独で使用してもよいし、2種類以上のものを併用してもよい。

【0039】
【化3】
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【0040】
増感剤の含有量は、フォトリフラクティブ材料の種類等に応じて適宜選択すればよいが、フォトリフラクティブ複合材料:100重量%に対して、下限値としては0.1重量%が好ましく、0.3重量%がさらに好ましく、上限値としては3重量%が好ましく、1重量%がさらに好ましい。

【0041】
非線形光学色素とは、2次の非線形光学特性を示すドナーアクセプター型分子、すなわち、電場によって屈折率が変化する材料(2次非線形光学材料)のことである。フォトリフラクティブ複合材料5に含まれ得る非線形光学色素としては、下記式(4)で表される[[4-(ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)フェニル]メチレン]プロパンジニトリル(7-DCST)、下記式(5)で表される4-ピペリジノベンジリデン-マロノニトリル(PDCST)、2-(4-(アゼパン-1-イル)-2-フルオロ-ベンジリデン)-マロノニトリル(FDCST)、2,5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール(DMNPAA)、4-アミノ-4’-ニトロアゾベンゼン(ANAB)、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール(NPP)、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン(DEANST)、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、AODCST、TDDCST、及びDCDHF-6等のアミノシアノスチレン類等が挙げられる。なお、非線形光学色素は、1種類のものを単独で使用してもよいし、2種類以上のものを併用してもよい。

【0042】
【化4】
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【0043】
【化5】
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【0044】
非線形光学色素の含有量は、フォトリフラクティブ材料の種類等に応じて適宜選択すればよいが、フォトリフラクティブ複合材料:100重量%に対して、下限値としては20重量%が好ましく、25重量%がさらに好ましく、上限値としては50重量%が好ましく、40重量%がさらに好ましく、35重量%が最も好ましい。

【0045】
可塑剤は、マトリックスのガラス転移温度を低下させる役割を果たす。フォトリフラクティブ複合材料5に含まれ得る増感剤としては、下記式(6)で表されるエチルカルバゾール(ECz)、下記式(7)で表される(2,4,6-トリメチルフェニル)ジフェニルアミン(TAA)、プロピオン酸カルバゾイルエチル(CzEPA)、トリフェニルアミン(TPA)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCP)リン酸トリクレジル(TCP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、N-メチル-1-ピロリドン、N-オクチル-1-ピロリドン、N-ドデシル-1-ピロリドンなどのN-アルキル-1-ピロリドン類、ならびに2-(1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルプロピオネート(AX22)、2-(1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルブチレート、2-(1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルベンゾエート、2-(1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルアクリレート、及び2-(フタルイミド)エチルプロピオネート(AX23)等のイミド化合物等が挙げられる。なお、可塑剤は、1種類のものを単独で使用してもよいし、2種類以上のものを併用してもよい。

【0046】
【化6】
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【0047】
【化7】
JP2016159077A1_000009t.gif

【0048】
可塑剤の含有量は、フォトリフラクティブ材料の種類等に応じて適宜選択すればよいが、フォトリフラクティブ複合材料:100重量%に対して、下限値としては10重量%が好ましく、15重量%がさらに好ましく、上限値としては40重量%が好ましく、30重量%がさらに好ましく、20重量%が最も好ましい。

【0049】
N型有機半導体は、光電流の抑制の役割を果たすものである。フォトリフラクティブ複合材料5に含まれ得るN型有機半導体としては、Me-PTC、PTCDA、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸誘導体、ナフタレンカルボン酸無水物、ナフタレンカルボン酸ジイミド、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、TCE、ベンゾキノン、2,6-ナフトキノン、DDQ、p-フルオラニル、テトラクロロジフェノキノン、ニッケルビスジフェニルグリオキシム、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、BCP、及びPBD等が挙げられ、Alq3が特に好ましい。N型有機半導体は、1種類のものを単独で使用してもよいし、2種類以上のものを併用してもよい。

【0050】
N型有機半導体の含有量は、フォトリフラクティブ材料の種類等に応じて適宜選択すればよいが、フォトリフラクティブ複合材料:100重量%に対して、下限値としては0.1重量%が好ましく、0.3重量%がより好ましく、0.5重量%がさらに好ましく、上限値としては3重量%が好ましく、2重量%がより好ましく、1.5重量%がさらに好ましい。N型有機半導体の含有量が上記の範囲であると、回折効率、応答速度、耐絶縁破壊性が向上する。

【0051】
フォトリフラクティブ複合材料5の厚みは50~100μmが好適であり、厚みが50μm未満であればブラッグ回折条件を満たしにくく、100μmを超えると印加電圧の上昇や吸収の増大を招く虞があるからである。

【0052】
スペーサー6は、フォトリフラクティブ複合材料の厚みを保持できるものであれば、限定されず、耐薬品性および耐熱性などの点から例えば、ポリイミド、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂が好適である。

【0053】
各暗電流制御層4は、各透明電極基板7(ITO電極基板)の内表面7aに形成されており、当該内表面7aを覆っている。したがって、各透明電極基板7とフォトリフラクティブ複合材料5との間に各暗電流制御層4が介在しており、各透明電極3とフォトリフラクティブ複合材料5とは接触していない状態となっている。暗電流制御層4は、各透明電極基板7の双方に形成することが好ましいが、発現する性能に応じて何れかの透明電極基板のみに形成してもよい。

【0054】
暗電流制御層4としては、透明電極3(例えば、ITO電極)上で自己組織化する自己集積化単分子膜(Self-AssembledMonolayer:SAM)を用いることができる。なお、単一層の単分子膜または複数層の単分子膜は、自己集積化単分子膜には限定されない。自己集積化単分子膜は、透明電極3の内表面3aにシラン化合物を化学修飾して形成されたものである。当該シラン化合物は限定されず、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)が最も好適である。他の自己集積化単分子膜としては、トリクロロシラン類、ジメチルクロロシラン類が挙げられる。

【0055】
自己集積化単分子膜は、自己集積化または自己組織化によって形成される単分子膜であり、有機分子の化学吸着過程で固体表面上に形成される分子会合体である。吸着分子同士の相互作用によって会合体の構成分子が密に集合する。このことにより、高度に規則的な分子配向および分子配列を有する構造が自発的に形成される。

【0056】
このような構成を有するフォトリフラクティブ素子1は、例えば、特許文献2に基づき作製することができる。

【0057】
次いで、本実施形態に係る光増幅変調システム11について説明する。図2は、本実施形態に係る光増幅変調システム11の概略構成図である。光増幅変調システム11は、フォトリフラクティブ素子1と、光照射部12と、電界印加部13とを備えている。光照射部12は、互いに干渉する第1光(第1の光)B4および第2光(第2の光)B5を生成し、第1光B4と第2光B5とをフォトリフラクティブ素子1上に照射し、2光波結合させる。電界印加部13は、フォトリフラクティブ素子1に電界を印加する。

【0058】
フォトリフラクティブ素子1は、第1光B4と第2光B5との中心線に対して50°程度傾けることが好ましい。これにより、効率的な電荷の移動と効率的な光の入射を実現することができる。

【0059】
光照射部12は、レーザー光B1を出射する光源14と、光源14から出射されたレーザー光B1を反射させる第3の反射板15aと、第3の反射板15aで反射したレーザー光のB1光軸上に配置された第1の半波長板16aと、第1の半波長板16aを通過したレーザー光B1をp-偏光の第1の分割光B2とs-偏光の第2の分割光B3とに分割する偏光ビームスプリッター17と、第1の分割光B2の光軸上に配置された第2の半波長板16bと、第2の半波長板16bを通過した第1の分割光B2を反射させ、フォトリフラクティブ素子1に入光させる第1の反射板15bと、第2の分割光B3を反射させる第2の反射板15cと、第2の反射板15cで反射した第2の分割光B3が入光し、その少なくとも一部を第2光B5としてフォトリフラクティブ素子1に入光させる音響光学モジュレータ18(光強度変調器)とを備えている。なお、第1の分割光B2は第1光B4と同一である。

【0060】
光源14が出射するレーザー光B1の波長は、特に限定されないが、応答速度の観点及び用いる音響光学モジュレータ18の使用波長から、450~700nmであることが好ましく、400~540nmであることがより好ましい。光源14から出射されたレーザー光B1は、第3の反射板15aで反射される。第3の反射板15aは特に限定されない。次いで、レーザー光B1は、第1の半波長板16aに入光し、直線偏光に変換される。直線偏光に変換されたレーザー光B1は、偏光ビームスプリッター17によって、p-偏光の第1の分割光B2とs-偏光の第2の分割光B3とに分割される。

【0061】
第1の分割光B2は、第2の半波長板16bでs-偏光に変換される。s-偏光に変換された第1の分割光B2は第1の反射板15bで反射され、第1光B4として、フォトリフラクティブ素子1に入光する。第2の分割光B3は、第2の反射板15cで反射され、音響光学モジュレータ18に入光する。

【0062】
音響光学モジュレータ18の詳細を、図3を用いて説明する。図3に示すように、音響光学モジュレータ18は、結晶光学素子21と制御部22とを備えている。

【0063】
結晶光学素子21は、超音波駆動によって回折格子が機能する光デバイスである。具体的に、結晶光学素子21は、音響光学媒質21aとトランスデューサ21bとを有している。音響光学媒質21aは、二酸化テルル(TeO)やモリブデン酸鉛(PbMoO)などの単結晶およびガラス等からなり、超音波が媒質中に伝搬されることで屈折率の変調が空間周期的に生じ、格子間隔Λの回折格子を形成するようになっている。また、トランスデューサ21bは、電気信号が入力されることにより超音波(弾性波)を発生させる圧電素子であり、伝搬した超音波に応じた屈折率の空間的変調を音響光学媒質21aに生じさせる。

【0064】
これにより、トランスデューサ21bによって音響光学媒質21aに超音波が伝搬されている間は、角度θで音響光学媒質21aに入射された第2の分割光B3は、角度θの回折波(1次光)B8として出射される。なお、回折波(1次光)B8の振動数は、入射光の振動数νに、伝搬させた超音波に応じた振動数fを加算した値となる。

【0065】
また、トランスデューサ21bによって音響光学媒質21aに超音波が伝搬されていない間は、角度θで音響光学媒質21aに入射された第2の分割光B3は、角度θの透過波(0次光)B5として出射される。

【0066】
本実施形態では、音響光学モジュレータ18は、出力の0次光が第2光B5としてフォトリフラクティブ素子1に入光するように配置されている。また、音響光学モジュレータ18から出射される回折波(1次光)B8はフォトリフラクティブ素子1に入光しないように光増幅変調システム11外へ除去される。

【0067】
本実施形態では、音響光学モジュレータ18において、音響光学媒質21aへの超音波の伝搬の有無を時間周期的に切り替える。当該周期は例えば、100μs以下、好ましくは10μs以下、より好ましくは1μs(1MHz)以下とすることができる。

【0068】
ここで、図7に示すように、音響光学媒質21aに超音波が伝搬されている間でも、音響光学媒質21aに入射された第2の分割光B3の一部が、Residual(残留)光として透過する。このResidual光は、回折されずに透過した角度θの0次光である。したがって、音響光学モジュレータ18は、音響光学媒質21aへの超音波の伝搬の有無を時間周期的に切り替えることによって、0次光を強くしたり、弱くしたりすることができる。すなわち、音響光学モジュレータ18から出射される第2光B5は、音響光学媒質21aへの超音波の伝搬の有無を時間周期的に切り替えることによって、強い強度の第一期間と弱い強度の第二期間とを時間周期的に繰り返す。第一期間では、音響光学媒質21aへの超音波の伝搬が行われておらず、音響光学モジュレータ18に入光した第2の分割光B3の全てが第2光B5としてフォトリフラクティブ素子1上に照射される。一方、第二期間では、音響光学媒質21aへの超音波の伝搬が行われており、音響光学モジュレータ18に入光した第2の分割光B3の一部、すなわち0次光のみが第2光B5としてフォトリフラクティブ素子1上に照射される。

【0069】
音響光学媒質21aに超音波を伝搬する際の、音響光学モジュレータ18に入光した第2の分割光B3のうち0次光として出射される割合は、0%でない限り特に限定されないが、得られる光利得の観点から、3~80%であることが好ましい。

【0070】
第1の分割光B2の光軸上には、音響光学モジュレータ18は備えられていない。そのため、第1の分割光B2は、強度が変化することなく、第1光B4として、フォトリフラクティブ素子1上に照射される。

【0071】
第1光B4および第2光B5は、互いに干渉する性質を有する。そのため、第1光B4および第2光B5が照射されたフォトリフラクティブ素子1上では、第1光B4と第2光B5とが干渉し、干渉縞が形成される。干渉縞が形成されると、上述の2光波結合によって、フォトリフラクティブ素子1に含まれるフォトリフラクティブ材料ではフォトリフラクティブ効果が生じる。13の電源の極性が図2の例示とは逆の場合、すなわち試料の光の入射面側が負(-)の場合、第2光B5のエネルギーの一部が第1光B4に移動するため、第1の出射光B6は増幅される。一方、第2の出射光B7は減衰する。13の電源の極性が図2の例示の場合、すなわち試料の光の入射面側が正(+)の場合、第2光B4のエネルギーの一部が第1光B5に移動するため、第1の出射光B7は増幅される。一方、第2の出射光B6は減衰する。

【0072】
本実施形態では、フォトリフラクティブ素子1において、第2光B5の強度の強弱に追従する光利得が得られる。そのため、フォトリフラクティブ素子1から出射した第1の出射光B6は、第2光B5の強度の強弱に追従して、光増幅の量が増減する。

【0073】
このような光増幅変調システム11を用いれば、高速で光増幅を変調する方法であって、フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、前記第2の光のみを変調し、前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して強度の強弱を時間周期的に変化させることを特徴とする光増幅変調方法を実現することができる。

【0074】
また、本発明では、フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化するシステムであって、互いに干渉する第1の光および第2の光を生成し、前記第1の光と前記第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させる光照射部と、前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加する電界印加部と、を備えており、前記光照射部は前記第2の光の強度を変調する光強度変調器を備え、前記光強度変調器は前記第2の光のみを変調し、前記第2の光は、干渉時以外の非干渉時にも強度が0になることがなく、干渉時および非干渉時に対応して前記光強度変調器により強度の強弱が時間周期的に変化することを特徴とする光応答高速化システムも提供する。本発明の一実施形態に係る光応答高速化システムは、図2における光照射部12と電界印加部13とを備えている。一実施形態に係る光応答高速化システムにおける各構成要素の説明、動作および効果は、光増幅変調システム11と同様である。

【0075】
このような光応答高速化システムを用いれば、フォトリフラクティブ素子における光応答を高速化する方法であって、前記フォトリフラクティブ素子に電界を印加した状態で、互いに干渉する第1の光と第2の光とを前記フォトリフラクティブ素子上に照射して干渉させるステップを含んでおり、少なくとも前記第2の光の強度の強弱を干渉時および非干渉時に対応して時間周期的に変化させることを特徴とする光応答高速化方法を実現することができる。

【0076】
第2光の強度の強弱を変化させない従来技術では、2光波結合の応答性は通常数百μ秒~秒オーダーであり超高速応答は困難であった。一方、本発明では、従来技術において応答性が速い材料(例えば、後述の実施例における素子Bなど)であっても、応答性が遅い材料(例えば、後述の実施例における素子Aなど)であっても、μ秒~数十μ秒(数百kHz~1MHz)オーダーという超高速応答が実現される。また、本発明では、特に電子変位に基づく有機ポリマー材料を用いることにより、ギガヘルツ~テラヘルツのオーダーの超高速応答も実現し得る。本発明によって実現する超高速応答は、開発されてきた材料のみの応答だけでは到底達し得なかったものである。この技術を用いれば世界最速応答の光増幅変調デバイスを作り上げることができ、光通信業界を唖然とさせるほどのポテンシャルを有していることは確実である。

【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
〔フォトリフラクティブ素子の作製〕
実験に用いる2種類のフォトリフラクティブポリマー素子を製作した。各素子におけるフォトリフラクティブ複合体の成分は下記のとおりである。
【実施例】
【0080】
(素子A)
フォトリフラクティブポリマー:PVCz(Mw:370000)/44重量%
非線形光学色素:7-DCST/35重量%
可塑剤:ECz/20重量%
増感剤:TNF/1重量%
(素子B)
フォトリフラクティブポリマー:PTAA/43.5重量%
非線形光学色素:PDCST/35重量%
可塑剤:TAA/20重量%
増感剤:PCBM/0.5重量%
N型有機半導体:Alq3/1重量%
暗電流制御層にはSAMを用いた。電極にはITO電極を用いた。フォトリフラクティブ複合体の厚みは50~115μmに調整した。
【実施例】
【0081】
〔1MHz変調に対する光増幅〕
図2に示すシステムを用いた。光源から出射するレーザー光の波長は532nmとし、強度は0.53W/cmとした。音響光学モジュレータには、NEOS Technologies社製、型番35085-3 AO MODULATORを用いた。素子に30-50Vμm-1の電界を印加していない状態または印加している状態において、音響光学モジュレータにファンクションジェネレータから方形波(デューティ比1:1)を入力して超音波伝搬を1Hz-5MHzの周期でオン/オフを繰り返した。ファンクションジェネレータには、NF回路設計ブロック社製のWavefactory WF1974 (周波数帯域:0.01 μHz - 30 MHz)およびWF1968(周波数帯域:0.01 μHz - 200 MHz)を用いた。素子から出射された第1の出射光および第2の出射光の強度を、オシロスコープ(Tektronix社製、型番DPO3054, 500 MHz, 2.5 GS/s)を用いて測定した。
【実施例】
【0082】
素子Aを用いた際の結果を図4に示す。図4の(A)は電界を印加していない状態であり、図4の(B)は電界を印加している状態の結果である。横軸は1マスが0.4μ秒、縦軸は1マスが1mVである。電界を印加していない状態では、第1の出射光(グラフの上の波)の強度は変化しなかったが、第2の出射光(グラフの下の波)の強度は音響光学モジュレータにおける超音波伝搬のオン/オフに追従して変化した。一方、電界を印加している状態では、第1の出射光の強度が音響光学モジュレータにおける超音波伝搬のオン/オフに追従して変化し、また、第2の出射光の強度変化が弱まった。
【実施例】
【0083】
素子Bを用いた際の結果を図5に示す。図5の(A)は電界を印加していない状態であり、図5の(B)は電界を印加している状態の結果である。横軸は1マスが0.4μ秒、縦軸は1マスが1mVである。素子Bでも、素子Aと同様の結果が得られた。
【実施例】
【0084】
(周波数1-5MHzまでの光利得)
音響光学モジュレータの周波数を1-5MHzに変化させたときの光利得の値を図6に示す。音響光学モジュレータの応答周波数の限界で5MHzまでの実験値のプロットであり、実験はこの周波数までであるが、この周波数でも光利得の低下は見られず、より高周波テラヘルツまでの応答の可能性があることを破線で示した。
【実施例】
【0085】
比較として、図2に示すシステムにおいて音響光学モジュレータの代わりに同じ位置にオプティカルチョッパー(1-1kHz、Thorlabs社製 MC-2000、Blade: MC1F2、 MC1F10)を設置して、オプティカルチョッパーを通過した光が素子に入射するようにし、素子Bを用いて、上記と同様の実験を行った。図6に結果を示す。周波数100Hzまでは、周波数依存性は見られないが、それを超えると、光利得が大きく低下していく。つまり、オプティカルチョッパーは完全に光をオン/オフしており、オフ時には残留光は0であり、オプティカルチョッパーを使用した実験時は光利得の周波数応答は高々100Hz程度である。
【実施例】
【0086】
〔音響光学モジュレータの出力の0次光を用いた際の光強度の変化〕
0次光の場合のみ光利得を得られるメカニズムを解明するために、音響光学モジュレータにおける超音波伝搬をオン/オフした際の0次光の強度を測定した。その結果を図7に示す。オフにした場合には、音響光学モジュレータに入る光が全て0次光として出る。オンにした場合には、音響光学モジュレータに入る光の一部がResidual光(すなわち0次光)として出ていることがわかる。すなわち、音響光学モジュレータにおける超音波伝搬のオン/オフを切り替える場合、0次光は弱/強に切り替わっていることがわかる。
【実施例】
【0087】
〔電界依存性〕
正および負の光利得における電界依存性を調べた。図2に示すシステムを用い、素子Bをサンプルとした。図2に示すシステムにおいて、光照射側と反対側の電極を正(+)に印加した時に正の光利得、光照射側の電極を正(+)に印加した時に負の光利得が得られる。光利得(利得係数)は、次式(1)または(2)を用いて算出される。
【実施例】
【0088】
【数1】
JP2016159077A1_000010t.gif
【実施例】
【0089】
【数2】
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【実施例】
【0090】
d:サンプル厚、γ0=ItA(IB≠0)/ItA(IB=0)、β=IB/IA、ItA、ItB:それぞれ書き込み光の透過強度を示す。
【実施例】
【0091】
結果を図8に示す。例示例では、Residual光の強度は25%である。正の電界の強度が大きくなるにつれて、より大きな正の光利得(同図中の黒丸)となり、負の電界の強度が大きくなるにつれて、より大きな負の光利得(同図中の白丸)となった。
【実施例】
【0092】
〔メカニズムの考察〕
考えられるメカニズムを図9および図10に基づき説明する。図9に示すように、音響光学モジュレータの出力の0次光を用いる場合には、Lowの状態でもResidual光の存在により格子が形成されており、つまりHigh、Lowいずれの状態でも電荷の分布による空間電場が常時形成されている。この時は、1MHzあるいはそれ以上のオーダーの変調をかけても、利得応答が得られる。
【実施例】
【0093】
それに対して、オプティカルチョッパーを用いる場合では、図10に示すようにLowで第2光は0であり格子は形成されなく、Highになった状態で空間電場は新たに形成されることになる。したがって、Highの状態になるときの格子形成の周波数依存性が大きくかかわってくる。すなわち、材料の空間電場形成に必要な時間(応答時間)の制約を大きく受けるので、100Hz程度までの低い周波数では利得応答があるが、1kHz以上の高い周波数には応答しなくなる。
【実施例】
【0094】
なお、上記のメカニズムはあくまでも仮説であり、メカニズムの全容を解明するには、今後より深い研究を行う必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、位相共役や、歪曲した媒体からのイメージング、実時間ホログラフィー、超多重ホログラム記録、3Dディスプレイ、3Dプリンター、さらには光増幅、光ニューラルネットワークを含む非線形光情報処理、パターン認識、光リミッティング、高密度光データの記憶等への応用における利用が期待される。
【符号の説明】
【0096】
1 フォトリフラクティブ素子
2 透明絶縁基板
3 透明電極
4 暗電流制御層
5 フォトリフラクティブ複合材料
6 スペーサー
7 透明電極基板
11 光増幅変調システム
12 光照射部
13 電界印加部
14 光源
15a 第3の反射板
15b 第1の反射板
15c 第2の反射板
16a 第1の半波長板
16b 第2の半波長板
17 偏光ビームスプリッター
18 音響光学モジュレータ(光強度変調器)
21 結晶光学素子
21a 音響光学媒質
21b トランスデューサ
22 制御部
B1 レーザー光
B2 第1の分割光
B3 第2の分割光
B4 第1光(第1の光)
B5 第2光(第2の光)、透過波、0次光
B6 第1の出射光
B7 第2の出射光
B8 回折波、1次光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9